ラビット・アンダーグラウンド 15 話
「武装ヘリはオートパイロット……武器はマニュアルですか。ではミサイルを PPP に撃ち込んで見ましょう」
クリムゾンは片手でカイザー・プリンスの全身の水分を抜きながら片手でパネルを操作して 2 発のミサイルを発射、前方 500m ほど先にある城の形をしたホストクラブに命中した。
「ごほごほ……なにしやがる……俺の城が……」
急激に水分を抜かれ皺だらけのカイザー・プリンス。
「さて、質問に答えなさい」
「言ったら助けてくれるんだろうな?」
「嘘でなければ」
「ここで俺が嘘を言った場合どうなる? 真偽を確かめるまでヘリでお散歩か?」
「面倒な男ですわね……このまま院瀬見ビルに突撃して思う存分暴れましょうか。出資者が巻き込まれて死ねばそれで良し違ってもそれはそれですわね」
クリムゾンはカイザー・プリンスを後部座席に投げ込む。
「何を考えている! イカれてんのか?」
「馬鹿な女を今まで騙してきて調子に乗ってきたようですけど、わたくしには通じませんよ。わたくしはやりたいことをやりたいようにやるだけ」
「狂人め……」
「見抜けなかったあなたが愚かでしたね。……そうですわ、良い事を思いつきました! ミサイルにあなたを装着して院瀬見ビルにブチ込みましょう。最高に派手な死に様ですわよ? きっとみんなしばらくは話題にしてくれるでしょう。ホスト界の伝説になれますわ!」
「はぁ! ? ふざけんな! やめろ!」
「叫んで喚いてもどうにもできないですわよ。自力で逃げてみなさい」
クリムゾンはカイザー・プリンスの高級スーツに触れると錬金術で漁網に変えた。漁網に変える際に高熱を発した為カイザー・プリンスの全身には網の跡が付いた。
「ぐぎゃああああああああっ!」
「さぁ、伝説になりましょう?」
「やめろー! ババアの事を教える! 教えるから!」
「ではどうぞ」
「【生城山(ふきの)もみじ】だ!」
「ありがとうございます。でもそれはそれ、これはこれですの。ナンバーワンホストミサイル突撃とか面白い事思いついてしまったのでやります」
「なんでだよ! 約束がちげえだろうが!」
「約束?」
「嘘じゃなきゃ助けるっていったよな !? 」
「それが嘘かどうか確かめて見ては? 好きでしょう? こう言う言葉遊び」
「なに……」
「ナンバーワンホストなんでしょう? この場でわたくしを楽しませて気分を変えてみなさい。そうすればミサイル発射止めるかもしれませんわよ?」
クリムゾンは漁網のカイザー・プリンスを抱えて操縦席のハッチを開けて翼に装着されているミサイルに向かって歩き出す。
カイザー・プリンスは街の噂、 LavaGarden の事、クリムゾンの見た目、流行りのグルメなど思いつく限りの話題を次々と言い放つ。
「はいはい、それで?」
「……だから今度一緒に……」
クリムゾンは相槌を打ちながらミサイルにカイザー・プリンスを取り付ける。
「おい、おい! やめろよ!」
「辞世の句を読みなさい」
「ジセーノク? 何だそれは!」
「はぁ……ではさよならです」
「待て待て待て! 教えてくれよ! 覚えるから! それになんでもやる絶対俺はアンタの役に立つ! ナンバーワンホストと組めば最強だろう?」
「……残念ですがそういう者はもう確保する予定ですの。あなたよりずっと優秀でデキる者です。あ、そうそう。 LavaGarden のにミサイルを撃ち込んだ時点であなたは詰んでますので」
操縦席に戻るクリムゾン。ミサイルの照準を院瀬見ビルに向ける。
「このヘリも追撃で突っ込ませましょう。オートパイロットで進路指定。衝突回避システムは……来夢、解除お願いしますわ」
『はい、ご主人様』クリムゾンに取り付いている SliME の来夢が答えた。
「発射」
カイザー・プリンスを装着したミサイルが放たれる。
「地獄に落ちろオオオオオオオオオオオおおオオオオオオオオオオオッ!」
カイザー・プリンスの声が響き渡った。ミサイルは院瀬見ビルの直前でフォースフィールドで阻まれ爆発四散した。
「流石にもう防衛システムは万全ですのね。確認できましたわ。ではこの武装ヘリの突撃を止められるほどの強度があるか確かめますわ……速度はゆっくりと」
フォースフィールドは速度の出ている物に反応し強固なエネルギーフィールドとなる。通常は鳥も無害で通り抜ける事ができる。
クリムゾンはオートパイロットで院瀬見ビルを指定し飛び降りる。外套を翼のように広げ減速、羽毛のように LavaGarden の屋上に着地した。
武装ヘリは院瀬見ビルに到達することなく警備ドローンの一斉射撃で撃墜され公園に墜落した。
「警備ドローン……わたくしも大量に欲しいですわね。警察に警戒されますが……」
「ご主人様」
クリムゾンの横の床からぬるりと現れたハート。
「七曲キョウヤを確保しました」
生体保護パックに入れた七曲キョウヤの頭部を見せるハート。
「ご苦労様。燐火に渡しましょう、ハートお願いしますわ」
「承知致しました」
床に沈んで消えるハート。
「近いうちにお兄様と会える気がしますわ」
院瀬見ビルに黄金の杖を向けて呟くクリムゾン。
***
なゆかが LavaGarden に到着すると、消防と警察が店を取り囲んでいた。「あ、ヤバい!」パトカーの傍に大澤垓を見つけ咄嗟に身を隠した。
「どうしようポポリン、お店に入れないよ」
『裏口の方にも消防がいるね。屋上から入ろう、ポポからクリムゾン様に連絡しておく』
なゆかはポポリンを全身に纏い工事業者風に変装、 LavaGraden の路地を挟んで隣のビルの壁を登っていく。
「なんか映画のレディ・アラクニドみたいだね」
『蜘蛛の力を身に着けたヒーローの映画だね。確かに今やってる事それっぽい』
隣のビルから LavaGarden の屋上に飛び移るなゆか。屋上の扉を開けるとクリムゾンが待っていた。
「来ましたわね。付いてきて、省羅とあなたに話がありますの」
深紅のドレスのクリムゾン、前にあった時よりも少し怖い気がしたなゆか。
「(ねぇポポリン、クリムゾンさん何かあったの?)」
『 SliME ネットで聞いた所、襲撃者に対処されたんだって。暴れた後だから少し興奮されてるのかも』
「(そうなの? そんな武闘派なんだ……)」
『そうだよ』
ポポリンとなゆかのやり取りは全てクリムゾンの SliME の来夢が把握している。そしてテンゾウとの戦いのデータを今まさにクリムゾンは来夢を通じて見ている。
二人はオフィス移動する。部屋の壁際には丹羽省羅が既に待機していた。
「二人ともかけて、警察が来た時の対応を話合いましょ」
クリムゾンが言った。
なゆかは他の従業員に変装し ID も LOKI が用意した何名かの行方不明者のを使用。省羅はいつも通り。クリムゾンはいつも通り江藤紅子の ID を使うと伝える。
「私は兎川伊奈(とがわいな)ですね」となゆか。
「ええ、なので今この瞬間からなゆかは LavaGarden での呼び方は【ラビット】とします」
「はい!」
クリムゾンは飛び跳ねるなゆかの姿をデータで見てイメージの合う名前の ID を探しラビットと名付けた。彼女の中ではもうなゆかは LavaGarden の歌劇団入りを決めている。
「(ラビット! 私は今日から LavaGarden のラビットだ!)」
テンションを上げるなゆか。体の内側から力が沸き上がるのを感じる。サキュバスハーフの力が増しより一層馴染んでいくのを感じる。
「ラビット、明日から舞台のレッスンに参加しなさい。省羅、ラビットのシフト調整お願いしますわ」
「はい!」「はい」
「それからラビット、明日の院瀬見のオープンカンパニーに参加してもらいますわ。兎川伊奈の名前で登録済みです。大学側に兎川伊奈のデータを送っているので心配ありません」
「そうなんですか、クリムゾン様凄い……」
「少し前まで院瀬見の傀儡の学長が好き放題していましたが今はわたくしの仲間が学長ですので色々融通がきくのです」
クリムゾンの SliME の来夢に連絡が入る。
「……警察が来たようですね。では省羅はカフェで対応を、ラビットは舞台で練習している様子を見せながら警察としっかり目を合わせるのですよ」
「はい」「はい!」
カフェのフロアーに入ってきたのは眠そうな中年警官と大澤垓。
「ど~も~黒防といいます~隣の若いのは大澤です~」
「丹羽省羅です」
営業スマイルで対応する省羅。
「なるほど~これは娘も一度行ってみたいっていうわけだ。只のカフェじゃない、高級感というか別世界感が凄い。カミさんと初めてベガスに旅行に行った時を思い出しますね」
頭をかきながら周囲を見渡す黒防刑事。よれて覇気のない中年男性と思いきや鋭い目つきを一瞬見せた。
「外の爆破事件の事でちょいとだけ聞きたいことがありましてね」
「はい」
「何か心当たりはありませんかね? ついこの前もここの従業員が狙われたりしましたよね?」
「心当たりと言うほどではありませんが……会員証を不正に使用したりスタッフに付きまとう人がいたりはしました」
「それはいつ頃の話ですか? その後は?」
「少しお待ちを……メモしているので……」
端末を操作する省羅。監視カメラで撮った写真を黒防刑事に見せる。
「派手な格好の男に……もう一つは店の外で……コイツは街で有名な探偵ですなぁ」
「探偵さんだとは聞いていますが女性スタッフに付きまとうのが怖くて……」
「良い噂聞きませんからねぇこの七曲キョウヤって男は。ただ、この男は性欲で近づくような人物じゃないんですよ。なにかネタを掴んだか何かを追っている最中でスタッフにからんでたんだとあたしゃ思いますがねぇ~」
「ウチは健全なお店ですしそんな危ない人が興味を持つようなものは無いと思いますが」
「ええ、そうでしょうとも。【普通の従業員】はそうでしょうなぁ。しかしこのお店、裏社会ではかなり注目されてるんです。この街の裏の連中から恐れられている LOKI と関係あるんじゃないかってね。名前くらい知ってるでしょ?」
「はい、 LOKI の名前は噂では」
「このお店に LOKI のメンバーが出入りしている可能性はあると思いますがねぇ~」
「そうなんですか?」
「あなたが知っている従業員も実は LOKI だったなんて事もあり得るわけですよ。恐縮ですが従業員の履歴書を確認させてもらう事はできますかね~?」
「それは私の一存では決めれません。少々お待ちください」
スタッフルームに向かう省羅。黒防刑事は後ろを向いた省羅の背中に小さな盗聴器を指ではじいて着けた。
「黒防さん、いいんですか?」大澤垓が呟いた。
「バレなきゃ何やってもいいんだよ~この街でキレイごと言ってたら警察なんざ何の役にも立たないからね~」
「バレたら?」
「開き直って知らんふりすればいい。他の刑事に知られようがどうでもいい~自分なんて可愛いもんさとんでもねぇ悪徳汚職警官なんてこの街にはいくらでもいる」
「そうですか……(黒防さんは駄目だな……)」
スタッフルームに入った省羅。そこには江藤紅子に変身したクリムゾンがソファに座っている。ゆっくりと立ち上がり、口に指を当て声を出さないように指示すると省羅の背中から盗聴器を摘まみ取った。そして自分の背中に装着しクリムゾンは省羅に変身して携帯端末を持って黒防と大澤の元に歩き出す。残された省羅は胸に手を当て大きく息を吐いた。
「お待たせしました」
省羅(クリムゾン)は来夢で包んだ携帯端末を黒防刑事に渡した。
「すみませんね~ちょっと見させてもらいますよ~」
黒防の右目は録画機能付きのサイバネアイでありこれは違法品で軍使用の横流し物をサイバネ闇医者に施術させたものである。
「ええっと……(このリストは後々役に立つねぇ)」
携帯端末から黒防のスーツに移り頭部に移動する来夢の分身。
「ん? ……おかしいな……」
一瞬右目の見えている景色が乱れた。
「黒防さんどうしました?」大澤垓が顔を覗き込む。
「何でもねぇちょっと右目の調子が悪かっただけだ」
来夢の分身はサイバネアイに取りつきデータを全て削除。録画機能を停止させる。エラー表示をさせないように関係の無いデータをインストールした。
「よろしいでしょうか?」
省羅(クリムゾン)が言った。
「あ、ああ確認した。協力感謝しますよ~」
「次に行きましょう黒防さん」
「ではこちらに」
背中に取り付いた盗聴器を大澤垓の背中にさりげなく付け替える省羅(クリムゾン) 2 階の舞台があるフロアーに案内する。
「ここが特別会員しかは入れないフロアーですか~いや~カミさんと見たベガスのバーレスクを思い出します~」
「今舞台で練習しているのが兎川伊奈です。最近雇った者です」
「白いドレスに兎を思わせた仮面……なかなか可憐な動きをする子ですなぁ~やっぱりダンスとかの経験者を雇うので?」
黒防と大澤垓は舞台で踊っている兎川伊奈(なゆか)を凝視している。舞台の上のなゆかは大澤垓の姿に驚いたが平静を装いサキュバスハーフの力で桜色に輝く目で刑事の二人を見つめ返した。
「ほう……ポールダンスまで。いやはや、ポールダンスなんて脱ぐほうのしかあたしゃ見たことありませんわ。あの子ももしかして?」
黒防は舞台に設置されているポールと兎川伊奈を舐め回すように見ながら言った。
「まさか。このお店は健全をモットーにしておりますのでそのような行為は致しません。衣装変え程度の事しかしませんよ」
一瞬省羅(クリムゾン)の目に殺意が宿るもすぐに収めた。
「ああ……いい……」
大澤垓は兎川伊奈を見て中高時代のなゆかを思い出し、現在のなゆかの姿を当てはめてじっとダンスの様子を眺めている。目の前にいるのがなゆかだと気付かないまま。
黒防は右目の偽りのデータを確認する。院瀬見のインターンで行方不明になった兎川伊奈と判明し首をかしげる。
「(他の従業員のリストも……どいつもこいつも院瀬見がらみで姿を消した者ばかりだな……どうなっている? LavaGarden は院瀬見と関係あるのか? LOKI ではないのか?)」
続く
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