ひこじいさんのブログ
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仏教の「欲界・冥界・六道、また十界」の最下層に位置付けられている地獄は、生前悪行をなした者の霊魂が死後に厳しい責め苦を受ける世界と定義されている。多くは、地面のはるか下に位置するとされていることが多い。地獄はサンスクリット語でナラカといい、漢字の奈落が当てられた。ここから暗い舞台の下の空間を指して、奈落と言うようになった。奈落の底に落ちるという言葉があるが、地面の遥か下のさらにその下の意で、決して抜け出すことのできない底知れない深い場所という意味である。日本で地獄という概念が定着したのは平安~鎌倉時代とされ、釈尊の入滅後時代と共に正しい教法が衰滅することを説いた末法思想の流行以来のこととされている。地獄には①等活地獄、②黒縄衆合、③衆合地獄、④叫喚地獄、⑤大叫喚地獄、⑥焦熱地獄、⑦大焦熱地獄、⑧阿鼻地獄の八つの地獄があるという。仏の教えとは相容れない考えを「邪見」といい、邪見の罪を犯せば焦熱地獄に堕ちるとされている。「観音を悪口すれば、地獄の釜へ流さるべき也」と源平盛衰記に出てくるが、「邪見の罪」の戒めから出たものであろう。ここでは熱鉄の地面に寝かされ、煎餅のように押しつぶされ熱い鉄鍋で炙られるのだという。類推するところ焦熱地獄あるいは大焦熱地獄に、地獄の釜があるという設定なのであろうか。 地獄の釜に蓋がある絵画にお目にかかったことは無いが、「地獄の釜の蓋が開く」の慣用句があるから蓋がある設定になっているのであろう。正月や盆の16日は地獄の釜の蓋が開く日とされ地獄の鬼さえ仕事を休むというところから、この世の者もそれに倣って仕事をしないで休もうという意味でこの慣用句が使われ、使用人や奉公人に藪入と称して暇を与える習慣があった。ただ、釜の蓋があっては、罪人を釜に投げ込むことはできないのにと思うのは考え過ぎか。普通に考えると蓋が開くのではなく閉める方が仕事を休むことを意味すると思うのだが、地獄では蓋を開ける方が休むことになっていて現世と冥界との考え方が逆になっているのは面白い。地獄で無くても古代中国では三本脚の銅製の巨大な「鼎」や大釜に湯をたぎらせ、罪人を放り込んで茹で殺す釜茹でが盛んに行われたという。日本では1594年に京都の三条河原で執行されたと伝わる、安土桃山時代の盗賊の首領とされる石川五右衛門の釜茹が有名である。 「地獄の釜の蓋」の、名前の付いた野草がある。正式にはキランソウといい名称の由来として「き」は紫の古語で「らん」は藍色の意味で花の色からとの説や、咲き広がる様子が金襴の織物の切れはしのように見えるところからとする説などある。全体に毛が多く茎は高く伸びず、草全体がロゼット状に地表に張り付いて円盤状の形になる。イチゴのランナーのように四方八方に伸びる茎は地表を這い、その先端部もまたロゼット状に葉を広げ花を着ける。シソ科では茎の断面が正方形のものが多いが、キランソウでは断面が丸い。 葉の先端側が幅広く、基部は次第に狭くなる。また葉の縁には、波状の鋸歯がある。表面は深緑で艶がある。 3 ~ 5月に開花し濃紫色の唇形花で、上下二つに分かれた上唇は小さい。下唇は平らに大きく発達して三裂となり、中央は長く突出す。 本州、四国、九州に自生し、明るい岩の多い草地や道端でよく見られる。局法には収載されていないが民間療法では筋骨草といい、高血圧・鎮咳・去淡・解熱・健胃・下痢止めなどに効果があるとされ花の時期に採取して利用される。キランソウが地獄の釜の蓋と言われるのは、ランナーを出した茎や葉が円盤状に地を覆う様子から、あるいは薬効によって地獄へ行く釜に蓋をするほどの効き目があるとのことで名づけられたとも言われる。ここでは逆に、蓋を閉めれば罪人が放り込まれないことを意味している。日本に雑草として自生するジュウニヒトエ(キランソウ)の近縁種で、観賞用として持ち込まれた別名セイヨウジユウニヒトエ(セイヨウキランソウ)という植物がある。キランソウは茎が伸びず地面に這うように花を咲かせるが、セイヨウキランソウの花茎は穂状に20~30cmにも花茎を伸ばす。セイヨウキランソウは一般には、「アジュガ」または「セイヨウジュウニヒトエ」などと呼ばれている。ジュウニヒトエの名は花が幾重にも重なって咲く様子を、宮中の女官の正装「十二単」に見立てたものである。群生して穂状の花序に多数の花が咲いている様子は、なかなか見事で華やかある。ただ気を付けなければならないのは、厭地現象が強く現われることである。栽培一年目に一株が1平方m以上にも増殖して喜んでいると、3年目には枯れて殆どその姿を見なくなってしまう。植え替えは非常に容易なので、三年目には必ず土を替えるか植え場所を替えて植え継いで行かないと絶えてしまうことになる気難しい花でもある。
2019年04月10日