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新しい展開(続続)ここは水原出入国管理事務所。今も審査官の取り調べ(?)が続いている。最初はちょっとつまずいたが、しかしなんとか一通りの質問に無事答えると、審査官が最後にこう質問してきた。「で、いつ韓国に戻ってくるの?」「1月30日です。ですから31日にお返しにあがれます。(でも考えてみればこれは私のパスポートじゃないか)」実は私の会社の旧正月連休は1月27日~31日である。一方私の日本帰国のフライトは1月26日~30日。 つまり31日なら会社は休みで、誰にも気兼ねすることなく、ここにまた来ることができるのである。「31日ねぇ… いや、こうしよう! ちょっとメモして。ペンある?」「はい。ここに」と言って、すかさず胸の手帳と、ペンをさっと取り出し、筆記の構えをとって、審査官を見つめると、「う~ん、じゃぁ ねぇ え~と…」なかなかはっきり言わない。でもまた筆記の構えを取りながらじぃ~と待っていると「まず、給料明細の証明書みたいなもの ある?」「年末清算の領収書でいいですか?」「あっ それでいい。 それと…う~ん 貯金通帳ある? 奥さんのでもいいんだけど」「ありますけど ほとんど残額はありませんし、あちこちに通帳があってひとつの通帳の額は小さいんですが…」「全部合わせると、お金いくらぐらいあるの?」「そうですね。4000万ウォンくらい…」とおおぼらを吹いた。きっと少ないと問題になりそうだからだ。いざとなったらお金持ちの友人から工面しよう。そうだ新谷さんとかならお金持ちだから…原田さんも最近金運がついて儲けたと言ってたし...と、考えていると、また審査官が言葉を続けた。「あと、今住んでる家の契約書を持って来ること。いいね」「はい、で31日の何時ごろに来ればいいですか?」「いや、2月の… そう1日、2月1日にしよう。時間は10時、いいね。」「は、はい。2月1日10時に、この3つの書類を持参してお伺いします。」「じゃぁ、これ 受け取って。」と言いながら、やっと待ちに待った私のパスポートとレジストレーションカードを審査官は渡してよこした。2月1日は日曜日ではない。立派な水曜日!しかも旧正月の連休が27日から31日までで、なんとそのすぐ翌日! だから私が31日とわざと言ったのに... 審査官はきっと31日まで休むのだろう。私の期待は無残に裏切られたのだ。また 会社休まなくちゃ。でも連休あけ、私だけ7連休になる。こんなことをあの上司が許すとは思えない。「ミッチョッソ?(気でも違ったのか!)」と怒られるだろう...なんて言ったらいいんだ...帰ったら急に叔父さんが亡くなったどでも言おうか? でもそんなうそ、きっとばればれだ。 どうしよう...そんなことを考えながら狭い階段を降りて外に出た。少しでも早くここから去りたいという思いがエレベータを待つという考えに勝ったからだ。 しばし冷たい外気に当たりながら、冷静にさっきの取り調べ(?)の意味を考えた…いったいあれはなんだったんだろう? どうなってんだ? 簡単に整理してみた。まず良いほうに解釈したら、永住権のための最後の面接を2月1日にしてくれる、そしてその1週間後には 晴れて永住権を手にできる…しかしそんなに甘いだろうか? 悪いほうに考えたら、それでも2月1日にまた最初から永住権の申請が始まるだけ… するとうまくいって6月、最悪だったらそれ以降...遠い...いったいどっちなんだろう。しかしいくらあれこれ考えてもわからないものはわからない。誰に聞いてもわからないだろうし、聞く人もいない。「は~っ」大きく深呼吸をすると、冷たい空気が心地よく胸の中を駆け巡った。誰に言うでもなく自然に次の言葉が私の口をついて出てきたのであった。「まぁ なんとか なるさ! 2月1日になればみんなわかる。」私は車のエンジンを始動させて会社に行くため車を走らせ大通りに乗り入れた。今日の水原市の空は 限りなく青かった。 (つづく)
2006.01.20
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新しい展開(続)2006年1月18日 10:00審査官が入って行ったところは事務所の一角に位置する資料保管室らしい部屋だった。鍵をあけ、中に入ったかと思うと、しばらくして文書保管用の箱をいくつか抱えて出てきた。 私は思わず飛んでいってその中身を見たい衝動に駆られたが、「呼ぶまでそこで待ってろ!」と きっと言われそうな気がし、はやる思いをひたすら抑えつづけた。彼の手が箱の中に入り、旅券がクリップではさまった書類を1冊ずつ取り上げては、そこに張ってある写真の顔を私と照らし合わせていく。 しばらくこの動作が何回も何回も繰り返された。 1冊、また1冊、また… なんであんなにたくさんあるんだろうと思うほど、後から後からパスポート付の書類が取り出された。そうして多分20冊か30冊ほど取り出したころだろうか、もう殆んど残っていないなと思った時、あるいは最後の書類ではないだろうかと思ったその時、その書類に付いていたパスポートの写真を審査官がじぃっと見つめだした。そしておもむろに私の受付用紙を手にしたかと思うと、「おい!」と、ぶっきらぼうに私を手招きして呼びつけた。私が彼のそばに行くと、「そうだねぇ…え~と、じゃぁ こっちに来て。」と、小さな取調室らしき部屋に向かって自分から歩き出して行った。私はついて行こうとしながら、ふとあたりに散らばっている数々の書類とパスポートを見やった。みんな私を見つめているような、そして「うらやましい。私も連れてって」といわんばかりの顔があちこちに見え隠れしていた。「この場でもらって帰れるんじゃぁないのかなぁ?」と思いつつ、しかしいまさら逃げるわけにも行かず、恐る恐る後に続いて私も取調室(?)に入っていった。審査室...そこはちょうど映画なんかでおなじみの、タバコの煙が立ち込めた、暗く、西日だけが入る あの取り調べ室みたいな...と、思いきや、以外にもコンピュータがセットされている、いちおう日当たりがよくてこぎれいに整理された部屋だった。ついでにコーヒーでも入れてくれたら...と思ったが、やはりなんにも出してくれる様子はなかった。彼がまず座るのを見届けてから、ゆっくり手元の椅子にすわり、かれの言葉を待った。いったい何のために、何を聞かれるのかもわからずに、撤回なのか、あるいは保留なのかもわからない。よっぽどはっきり聞こうかとも思ったが、ここはひたすら受身でいったほうがいいと判断し、だんまりをきめた。机に座ると審査官はすぐさま、私が3ヶ月前に提出した書類を1枚1枚ゆっくりめくっていった。そしてしばらくして彼の質問が始まったのであった。「う~ん、と、じゃぁ今、どこに住んでんの?」「スジです。」「ふぅん。スジ、スジっと ああ これね。で、ここ何坪?」「確か42坪くらいです。」「そんなに大きな家に住んでんの? 奥さん名義のこの登記の家?」「いえ、そこじゃなくて住んでるのは別のところです。」「なんだって? じゃぁ奥さんと別居してるの?」「いえ、もちろん同居してます。ただ…」と、なんかまた舌が回らなくなってきた。(つづく)
2006.01.20
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新しい展開2006年1月18日 09:30今、9時25分。昨日、管理事務所に行くため上司に休暇を申請した。 だが鬼の上司が許すはずも無く、結局 午後出勤ということで折り合いがついた。しかし久々のヌッチャム(朝遅くまで寝ていること)に私の身の心も元気回復していた。「今日こそは なにかいいことがあるに違いない。」そういう予感に包まれながら午前9時、水原出入国管理事務所に向け、車を出発させた。ラッシュ時間がちょうど終わった時間とあって、たいした交通渋滞もなく、私の車は予定通り約束の5分前に到着した。もうこの道を何度来たことか。おかげで路面駐車の穴場もしっかり見つけてしまっていた。よし、行くぞ!受付用紙も持った。ペンと手帳も胸のポケットに収まっている。今日は今までのような作業服じゃない。3つ揃えの縦じまのスーツをまとってきた。どこから見てもちょっと中老の、それでも先端技術を身につけた、そしていつもパスポートを左手に持ちながら海外を飛びまわる立派な技術指導者だ。(中身はまったく違うが...)もう多くの外国人でいっぱいの2階をよそ目に、私はまっすぐ4階を目指した。そう 今日は審査課に行くのだ。 昨日までは いったい誰が私の対戦相手なのかわからなかったが、しかし今日は違う。 あのポストイットを貼り付けた、あの机に座っている人物が私の今日の対戦相手なのだ。4階に着いた。扉をノックして入り、まっすぐ目的の人物が座っている机まで進んでいった。「あのぅ すみません。キムxx係長さまでいらっしゃいますか?」と呼びかけると、その人物はおもむろに振り向き、私の顔から胸元、そして臍のあたりまでにらんだ。でもなんにも言わない。私が「あのぅ 今日の9時半に約束した者なんですが。」「えっ 誰?」なんだ、自分で時間まで決めておいて誰?はないもんだ、と思ったが、しかしそんなことは顔には億尾もださず…「あの昨日5時に電話を差し上げた者です。 それにポストイットで…」ここまで言ってもまだぴんとこない様子。もうこれ以上言ってもわからないと思い、私もしばし沈黙。すると、にわかに はっとしたかと思うと、「あっ あぁ で、本人?」「はい。本人以外の何者でもありません。」「そう。で?何?」まだ話が見えていない様子。「あのぅ 永住権を申請しておる者なんですが、会社の事情で(本当は父の一回忌) 急に日本に行かねばならないんです。 実はもう3ヶ月も前に申請してあるんですが…」「そう、あっ そう… そうねぇ じゃぁ ちょっとあっちで待ってて。」と入ってきたほうのドアを 私に指で示しながらやっと重い腰をあげた。ふぅ… なんか大丈夫かなぁ、と急に不安な思いに駆られながら、私はドア近くまで移動した。そこには小さな椅子置かれてあった。もちろん椅子なんかに悠長に腰掛けていられるような余裕は私にはなく、ただ、立ち尽くしながら、横目で彼の行く先を追いかけていた。 (つづく)
2006.01.20
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必死のもがき!活路を見出せ!(続続)2006年1月17日 17:00水原出入国管理事務所から帰っても仕事が手につかない私はただひたすら5時になるのを待っていた。そしてやっと5時になった。すぐさま私は手元の電話機を引き寄せ、先ほど教えてもらった番号に電話をした。「278の xxxxっと」教えてもらった番号に電話をしてみたが しかし「ぷっぷっぷ」という通話中の発信音しか聞こえてこない。さらに3分後。 私はまたダイヤルを回した(いや番号を押した)。しかしやっぱり今回も「ぷっぷっぷ」という通話音。さらに10分待った。もう5時15分を回っている。しかし待った甲斐があって今度は5回目のコール音に続いて男性が出た。「もしもし、キムxx係長ですか? 実は私...」と、今日の昼から何度も繰り返してきた内容を 私はまた長々と説明した。「...というわけで相談したいと思い、こうしてお電話差し上げた次第なんですが...」と、長い説明を終え、一息区切ると、先方の男性からこういう返事が聞こえてきた。「ちょっと待ってね。いまそのキム係長に代わるから。」なんなんだ!別の人に説明してたのか!でもしかたない。じっと耐えるしかない。それから1分後、やっとつながった本当のキム係長に最後の力を振り絞って説明した。「...と言うわけなんです。 どうしたものでしょうか? ご高見を伺いたいのですが。」そう、説明を締めくくると、電話の向こうからこういう返事が返ってきた。「そう わかった。連絡は受けていた。じゃぁ そうだね、とりあえず明日また来てみて。」「えっ明日また行かなくちゃならないんですか?」「そう、早いほうがいいね。 そうだね 9時30分までに来てね。 じゃぁそのとき。」と言って電話は切れた。また明日行かねばならない。しかも午前9時30分。ということは会社には来れない...隣で帰り支度をしている上司の腕を、私はとっさにすがるような思いで引っ張っていた。(つづく)
2006.01.19
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必死のもがき!活路を見出せ!(続)「あんたね。撤回なんて 絶対に言っちゃだめだよ。」急に小さな声で審査官が説明しだした。「とにかくここには書類がないから 4階に行かなきゃならないんだけどね。」「以前はここにありましたよ。」「あっそんなこともあったけ。まぁとにかく今はここにはないんだ。だから4階に行ってだね。どうしても日本にいかなきゃならないんで困っている。どうしたらいいだろうかと、相談しに来たと、言うんだ。いいかい、絶対に撤回といっちゃだめだよ。そんなことを言ったら2度とこの事務所には来れなくなるからね。そしてそれはつまり韓国にもいられなくなるということにつながるんだからね。いいかい。」急にやさしくされて拍子抜けした私は、しかしまだ活路があるかもしれないという思いになった。突然どこからともなく一筋の光が差し込んでくるような錯覚を見たような思いになったのだ。「は、はい、ありがとうございます。とにかく4階に行ってみます。」と言ってその場を去ろうとする私の後ろから「いいかい、絶対に撤回と言っちゃだめだよぉ!」という大きな声が今度は聞こえてきた。さっきは小さな声で言ったのに、なんで最後になって大きな声になるんだ、と、私の常識では理解できない審査官の態度にしばし戸惑いを感じながら、でも一気に私は4階まで階段を駆け上がった。ここは4階...もう2度目になったこの場所。今日も人がほとんどいない。やはり一番奥のほうの机にぽつんと1人、男性が電話に応対しているだけだった。とにかくあの人に当たってみるしかない、と思い電話が終わるまで待つことにした。待つこと5分。やっとその男性は受話器を戻した。「あのぅ」と私が呼び止めると「何しに来たの?」と、審査課の経験を多く積んでいそうなこの男性の対応は、やはり冷たい。でも こういう返事にも、もう慣れっこになっている自分を発見しながら、私はまた2階で説明した内容を繰り返した。「...と、こういうわけで日本に帰らなきゃならないんで、相談にあがりました。」2階の審査官の忠告どおり撤回という言葉は使わないで、とにかく困ったような表情を作り、私としてはめいっぱいの演技をし続けた。するとその男性、おもむろに私の受付け用紙を見ながら、近くにあったポストイットに何か書き始めた。「??何してんだろう」それからその男性、おもむろに反対側の机の上に置いてあったコンピューターのモニターにそれを貼り付けたかと思うと私に向かってこう言った。「今、担当の者がみんな外勤なんだ。悪いけど 夕方電話してくれる?」「は? 外勤?」「うん、君の名前はこうしてメモしておいたから 5時過ぎにこの人に電話すれば彼が相談に乗ってくれると思うよ。」「5時過ぎ...」「そう、で、そういうわけだから 今回はいったん帰ってね。」といいながら私の受付用紙の裏にこう書き記した。「キムxx係長 031-278-xxxx」先ほど見たわずかな光がまた見えなくなっていた。(つづく)
2006.01.19
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シックスシグマは「魔法の玉手箱」ではない 出版される文献も、コンセプトベースのものから、事例や方法論、統計手法を含むものまでと幅広くなっています。また、シックスシグマ導入企業が実際の活動で使用しているソフト(主として統計やプロセスマッッピング用)も続々と日本語バージョンが開発・販売開始となっており、事業としてのシックスシグマ市場は広がっています。 標準的なシックスシグマ・トレーニングで学ぶアプローチや方法論には、日本企業の多くが慣れ親しんできたQCなどのツールが、多く含まれていることは以前にもご紹介しました。そうしたバックグラウンドもあり、「方法論としてのシックスシグマ」をマスターした企業、方々は確実に増えてきています。 目的達成、課題解決の方法論は、シックスシグマだけではありません。方法論として有効なもの、また、各企業の事情に合った方法論は、他にもたくさんあるはずです。アプローチの仕方や入り口が異なっている場合はあるでしょう。しかし、シックスシグマやその他の方法論で共通していることがあります。それは、その目的です。 したがって、「経営成果を出す」ことを実現、継続していくためには、一過性の活動に留めず、経営の仕組み(ビジネスシステム)として組み込むこと、自社が「経営成果」として狙っていることを明確にし、目標を具体的に設定することが重要となります。改めて言うまでもないことですが、「とにかく改革したい」などの強くはありながら漠然とした“思い"を改革手法という“箱"に入れれば答えが出てくるわけではないのです。 しかし、残念なことに、シックスシグマ導入済み/導入を検討している企業の中にも、まだまだこのような期待、誤解があることも少なくありません。テーマ・セレクションの重要性は既にご紹介しましたが、その後プロジェクトを実施する際、その中で目指す目標と目標値の設定は、さらに経営的、戦略的に検討しなければならないのです。 ※ 「どこが問題なのか・・・実は分かっているようで分かっていない」という場合には、SSRIでは『事業戦略クリニック』というアプローチでのご支援もしています。 出所:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.19
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誕生時期や注目が集中した時期からしても、シックスシグマが「最新の経営手法ではない」ということは言うまでもありません。しかし、着実に「経営改革手法の1つ」として根づきつつあることをお感じいただけるのではないかと考えています。 シックスシグマは国内でも、広さ・深さともにさらに拡大しています。これは、数年前とは大きく異なる状況です。その主要な理由として考えられるものをまとめたのが下図です。※今回は下図の(3)~(5)を紹介(3)各種情報公開前回の「(1)シックスシグマ導入企業の増加」にも関連します。また、これまでも、「シックスシグマ情報は増えています!」とご紹介して参りました。シックスシグマの導入を公開していない企業もまだまだたくさんあります。しかし、その一方で着実に自社化を進め、大きな成果を上げている企業が公に紹介されるようになってきました。比較的最近のものでは、日経BP社の日経情報ストラテジー9月号に、シマノのシックスシグマ活動が紹介されています(同誌P.62・戦略研究シマノ「ゴールなき競争に勝つ 品質にこだわり最強ブランドを創造」)。シマノがシックスシグマの全社導入を決定したタイミングは、国内企業の中でも非常に早い時期です。ご興味のある方は、同誌をぜひご覧いただきたいと思います。シックスシグマ導入企業が「その成果を実感している」と推定できる事象として、販促ツールとしての活用やビジネス化が挙げられます。顧客サービスの一環、また販促活動の1ツールとして、事例紹介や実際にノウハウを供与するのです。GE関連企業がその先鞭をつけ、こうした志向は他社にも広がりを見せています。また、東芝がこれまでの経験に、新たなノウハウも付加して事業として立ち上げたことは今春、大きく報じられました。欧米のトレーニング機関も新たな日本市場参入の他、既存メニューを主として短期化するなど、工夫を凝らし始めました。また、国内各種団体も、セミナー/研究会の実施、トレーニング提供や独自シックスシグマ・コンセプトの確立などが、最近は見られるようになっています。日本能率協会コンサルティング(JMAC)が実施したシックスシグマに関するアンケート結果については、2002年8月末から9月にかけて、いくつかのメディアが報じていました。シックスシグマの認知度、導入状況、日本企業としての取り組み方など、既に導入した企業、導入を検討している企業にとっても参考になることが少なくないはずです。 (4)シックスシグマ・トレーニング費用の低下 先のJMACアンケート結果の中にも、「シックスシグマは投資負担が大きい」(化学工業日報 09/02 など)という内容がありました。SSRIメンバーも、シックスシグマに関する研究を始めた当初、その価格には驚嘆しました。米国の文献にも「高い、高い」とは書かれていましたが、現地を訪問、ある見積を依頼しました。何分も待たずに出てきた金額は、ブラックベルト1名当りに換算すると500万円から1千万円近くとなってしまうものでした(この費用には、チャンピオン/ブラックベルト・トレーニング、テキスト他のロイヤリティや講師の来日滞在費用などが含まれます)。その後、オープン制のブラックベルト・トレーニングを行う機関が続々登場、それも当初は1人3万~4ドル以上という、高価なものが主流だったのです。 ご存知の方も少なくないと思いますが、この費用は公開制のトレーニングを始め、劇的(?)に下がっています。インターネットを通じてのeラーニングでブラックベルト資格がとれるというようなものもあり、形態も広がっています。SSRIでも、そうしたトレーニングの内容、資格取得難易度など、すべてを把握しているわけではありませんが、価格レンジは非常に広がっています。国内でも大規模に一括導入する場合のトレーニングに関しては、「叩ける」という風評が聞かれるようになりました。 (5)所属組織内でシックスシグマを経験した人のスピンアウト トレーニング機関にとっては、リクルート対象であり、コンペティターとなっているのが、この方々です。一通りのトレーニング受講経験に留まらず、実際にさまざまな困難や障害を乗り越え、実際に企業内でシックスシグマのインプリメンテーションに携わり、成果を出してきたような方々が、市場に出始めました。コンサルティング会社やトレーニング機関に入社される方もありますが、個人で活躍されている場合もあり、公式/非公式での情報流通の加速にもつながっています。 既に「シックスシグマは卒業した」という企業のみなさまも、きっとあることと思います。またご存知の通り、シックスシグマは「日本発米国育ち」で日本に本格的に戻ってきて数年というところです。シックスシグマに限らず、万能な改革手法などありません。しかし、シックスシグマのコンセプトをきちんとレビュー、考えることによって、企業や組織に今不足しているもの、気づかないうちに弱体化してきてしまっていることをきっと見つけることができるはずです。これに気づくことができたとき、シックスシグマの成果獲得とともに、市場優位性を発揮できる独自の経営スタイル、改革手法を確立することができるでしょう。
2006.01.19
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最近の国内シックスシグマ動向(1) 今回・次回は、最近の国内におけるシックスシグマ動向をレポートしたいと思います。 シックスシグマは国内でも、広さ・深さともにさらに拡大しています。これは、数年前とは大きく異なる状況です。その主要な理由として考えられるものをまとめたのが下図です。※今回は下図の(1)、(2)を紹介 (1)シックスシグマ導入企業数の増加 これは、「シックスシグマを(何らかの形で)導入した企業が増えた」というのが最大の理由と考えられます。最近では、浸透率(導入率)の違いはあれ、「導入していない業種」は皆無に近いのではないでしょうか。こうした影響もあり、シックスシグマに関する情報を入手することは、飛躍的に“簡単”になりました。 全社的導入を展開している一部の企業間では、情報交換やベンチマーキングが積極的に行われているようです。また、これから導入を考えている企業では、トレーニングを依頼する機関を選定する前に、まず先進導入企業を訪問することから始めていることが少なくありません。 また、シックスシグマを前面に出す形式をとらず、経営プロセス改革の方法論として体系的に、または部分的にツールを活用している企業もあります。 (2)導入企業の「活動強化」 シックスシグマの自社化を着実に進めている企業もあれば、やはり、「どうも所期の期待通りには・・・」という企業もあります。 自社化が進展している企業には、一般的に自前のMBBがいます。企業によってはテキストもオリジナルを完成させ、外部トレーニング機関やコンサルティング会社の手やノウハウを借りずに、活動を展開できる、深める体制が整備できているのです。また、概してこうした企業では、関係会社や取引企業に対してもノウハウを公開しています。その結果、シックスシグマは面的にも着実に広がっているのです。 一方、SSRIに思いの外、ご相談をいただくことが多いのは後者のケースです。統計など、個別の方法論についてのご質問を受けることは、“シックスシグマ初期時代”の頃と比べ、ほとんどありません。ご相談・ご依頼として多いのは、「どこに問題があるのか・・・」に始まり、・目標設定(尺度の設定)・目標設定とブレークダウン・目標数値設定・評価方法(効果測定)・COPQの考え方・プロジェクト/テーマ設定(6:テーマ・セレクション(1)/7:テーマ・セレクション(2)) などの、いわば活動の入り口、スタートに関するもの、そして評価に関する内容です。 面白いことに、これらのテーマについては、シックスシグマ活動以外の活動を展開している企業からも依頼されることが増えています。増加はここ数年のことでしょうか。・何を改革のターゲットとするか?・目標値を具体的にどうブレークダウンするか?・成果は何で評価するか? などが、方法論の習熟度とは裏腹に、確定されていない日本企業の状況があるようです。この辺りをサポートする考え方として、BSC(バランス・スコアカード)は有効です。海外、国内でも、導入の順序はさまざまながら、シックスシグマとBSCをともに導入している企業はたくさん存在しています。 方法論が浸透した企業では、自社化や活動の梃入れを目的に、他のノウハウをもつ外部機関を新たに投入する場合が多いようです。こうした各社の努力が、シックスシグマの浸透・進化を促し、ひいては今後、新しいコンセプトとして確立されていくことになるでしょう。
2006.01.19
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Y=f(x)- 統計を使う前に必要な論理性 シックスシグマでは、「Y=f(x)」という表現を頻繁に用います。このような「式」が出てくると、「数学や統計はちょっと苦手・・・」という方に誤解を与えてしまうことがあります。ですが、ここではそのような心配は無用です。Y=f(x)すべての事象(Y)は、さまざまな要因(x)がプロセス(f)を経ることによって発生している 「Y=f(x)」を難しく考える必要はまったくありません。むしろ、極めてシンプルといえるものなのです。「Y」は、現象として現れている問題や事象です。例えば、「受注が上がらない」「利益率が低い」「新事業が育たない」「マーケティング戦略が成果を上げていない」といったものが対象となります。シックスシグマなど、プロセス改革の過程では、解決したい課題を現象として表現したものが、一般的には「Y」となります。 図は「納期遅延」を例にとっています。では、「納期遅延」の原因となっている要因は何でしょうか? そこで原因となっている要因群が「x」です。一般的に、問題を起こしている原因「x」は1つとは限りません。この例では9個の「x」が存在しています。 「特急品対応が日常化しており、常に変則的な生産となっているから納期遅延が起こる」、「そもそも営業が生産能力を考えずに、顧客主導で納期を決めてくるものだから、最初から納期など守れるわけがない」、「現場は生産計画通りの生産体制をとっているが、資材調達に問題があり、欠品だらけで生産どころではない」、「技術者は1つ製品開発を終えると、即、次の開発に移行する。製造仕様書は不備だらけで、現場で機能出しをしている状態なのだから、納期以前の問題だ」…など、各種の要因が出てきます。こうした要因候補を出す方法は、各種の活動で幅広く使われているブレーンストーミングが、シックスシグマでも使われています。シックスシグマはデータを用いて論理的に活動を展開するアプローチですが、この場面ではKKD(勘・経験・度胸)が生きてきます。ただし、ここでのブレーンストーミングで出てきた「要因すべてを対象とするわけではない」ということを決して忘れないでください。 問題はこの9つの「x」のうち、 “どれが「納期遅延」に一番影響しているか” ということです。これらのすべてを「1度に解決してしまおう」というアプローチをとる企業もあるかも知れません。シックスシグマやプロセス改革は、そうしたアプローチを否定しているのではありませんが、 「課題はたくさんある。しかし、それにかけることのできる経営資源は限られている。 だから重点に絞り、優先順位をつけて改革をしていこう。」 ※ 経営資源:人・モノ・金・時間などを含む を、アプローチの基本的な考え方としています。そこで、ブレーンストーミングによって出された候補は、具体的な改善対象となるべき、一番大きな「x」を見つけ出すために定量的に評価していきます。従来型のアプローチでは、この選択の部分までもKKD偏重となってしまっていることが少なくありませんでした。 「KKDによる要因抽出」を論理的に検証していくことが、シックスシグマでは求められます。そこで使用するツールが「統計手法」なのです。ただし、「統計はツールである」という認識をもつことが、ここでは重要です。何も考えないで(仮説をもたないで)、ただ統計アプリケーションやソフトを利用しても、必要な答えを得ることはできません。当たり前といえば当たり前のことなのですが、統計手法が問題を解決してくれるわけはないのです。 データを収集して分析することによって実現できる「情報化」は、個々人が思っていたことを「組織に蓄積」することを可能にします。これが「共有化」です。「思いつき」を「仮説として構築し、検証、共有化する」ツールの1つとして、統計手法は有効なものであることは間違いありません。
2006.01.18
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プロセスマップ~プロセス改革、プロセス思考のために シックスシグマは「プロセス改革のツール」です。経営改革をするとき、その対象を目の前に現れている現象や問題にフォーカスするのではなく、そうした事柄を起こしてしまっている「プロセス」に注目します。そこで、シックスシグマでは、課題の現状や改革後のイメージを示すために、プロセスマップを作成・使用します(=プロセスマッピング)。プロセスマップは、課題の現状を知るためだけではなく、改革テーマの本質にアプローチしていく手法として有効です。シックスシグマでは、改革の目標値を設定することが必須ですが、実はこの目標値を適切に設定するためにも、本来、プロセスマップは必要なのです。目標設定とプロセスマップの関係については、また別の機会にご紹介させていただきたいと思います。以前はプロセスというと「製造業、中でも生産関連の専売特許」と思われる傾向がありました。「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」が、90年代初めに経営改革のキーワードとして登場、プロセスに対する認識は、最近までにだいぶ変わってきました。しかし、それでもまだ、間接部門や非製造の業種などでは、完全に浸透したというレベルには至っていません。今回はみなさんに、身近な例を使って、「プロセスはどこにでもある」「プロセスマップを知っていただく」ことに主眼を置きたいとして考えています。上図は、A氏の「朝起きてから出社するまで」のプロセスを描いたものです。 A氏は、起床してから、洗顔、朝食、身支度、交通機関を乗り継いで、最後は徒歩で会社に到着します。「通勤」と一言で言われるものも、実はこのようなプロセスを経ているということです。少し進めて考えてみます。例えば、「朝食」という機能(プロセスの1ステップ)ですが、朝食をとるためには、調理された料理が必要です。すると、そこには「料理のプロセス」が、通勤全体のプロセスに対して、サブ的に存在しています。なぞなぞのような問いかけですが、朝食をなぜ、とるのでしょうか? 「1日に必要なエネルギー摂取量達成のための1部」と思う人もいれば、「家族のコミュニケーションの場」として位置づけている人もあるかも知れません。さらに、「新聞読み」というステップを見てみましょう。この機能が成立するためには、新聞が配達されていなければなりません。また、A氏はメガネがなければ新聞を読むことはできないので、眼鏡も必要です。つまり新聞を読むためにも、各種の要因やプロセスが存在していることになります。このように、いろいろな要因やサブプロセスから、全体プロセスを構成する各機能は成立しています。プロセスマッピング初心者の方には、機能の区分が難しいかも知れませんが、これは、「目的があるかどうか」をヒントにしてください。そして、各機能が最終的にプロセスを形成しているのです。プロセスを定義する際、チェックポイントとして有効な考え方の1つとして、今回は、既に30年以上も前にナドラーが定義した「システム機能定義」をご紹介します(下図)。この7項目は、その当時、システム設計が「目的化」してしまい、本来のシステム構築の目的を誤りがちであった「システム設計者」から、大きな支持を得たものです。 シックスシグマなどを活用して、私たちがこれから実施しようとしているプロセス改革では、この7つの項目で十分でしょうか? 基本的には十分に対応するはずなのですが、ここに、自社の経営風土、既存の経営システムなどの視点を付加することが必要です。一般的に共通点としてできるものには、「時間ファクター」「スキル・ファクター」があります。また、標準に示されている用語を自社流に解釈/定義することも必要です。このようなカスタマイズは「絶対に必要なこと」と心得てください。現象として発生している課題は、表面的にはどの企業にとっても同じように見えることがあります。しかし、そこに内在する原因や障害、そしてプロセスは、一筋縄ではないのです。最終的な結果は、組織的に共有化して、コア資産としていくことを目指しましょう。
2006.01.18
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第1メトリックと第2メトリック 活動の成果を評価する上で、「メトリック」を設定することの重要性については前回ご紹介しました。実は、メトリックには「第1メトリック」と「第2メトリック」と呼ばれるものがあります。 前回、「顧客満足」を例にとりましたが、今回もそこから考えてみましょう。「顧客満足がビジネスに貢献する」ということは、一般的に「正しい」とされている認識です。実際、米国のシックスシグマ導入企業などには、「顧客満足度が上がると、事業利益が××%向上する」というロジックまで保有しているところもあります。以前からも、顧客満足度と“儲け”の関係は、特に消費財や民需をターゲットとしている企業では重視されてきました。しかし一方で、「顧客満足度は上がったのに、売上が落ちた」という話も、最近(やっと?)、聞かれるようにもなってきました。 ここでちょっと、みなさんに「お客さま」の立場になっていただきたいと思います。「タダほど高いものはない」とは言われるものの、市場や製品・サービス機能の成熟化によって、供給サイドも「価格だけの差別化」に走らざるを得ない事業環境が一部にはあります。そうした製品やサービスを買おうとした場合、つまり、「どれも同じなので、1番安いものを」という場面を経験したことがあるのではないでしょうか? 特にこのような時、顧客の心理としては「値段は安ければより安い方が良い」ということになります。CSの解釈を誤ると、「価格競争の泥沼」、「過剰サービスの泥沼」に落ちて行ってしまうのです。 この価格に対する顧客の欲求に関して満足してもらうために、企業は日々、コストダウン努力をしているわけです。長期的には「損して得する」戦略もありますが、基本的には「赤を出してでも・・・」というのは、恒常的には良い経営の姿勢ではありません。 当たり前のことだと思う方は少なくないと考えますが、「顧客満足」の裏側には、「経営への貢献」(売上や利益の拡大など)が必ず存在しているのです。この例でいくと、「顧客満足=第1メトリック」、「経営への貢献=第2メトリック」ということになります。第1メトリックは達成すべき目標であり、第2メトリックは、第1メトリックを達成するために「悪くしてはいけない/気にしておかなければならない指標」です。 「売上」という第1メトリックを設定した場合、「利益」や「販促費用」、「固定費」などが第2メトリック候補です(第2メトリックを「たくさん設定し過ぎてしまう」ことには注意しましょう)。また、前回・今回の例では、「顧客満足」を例にとりましたが、メトリックという考え方の導入初期では、「第1」と「第2」メトリックの関係が定量的に、もしくは組織的にオーソライズされているものを採用する方が良いでしょう。片方、もしくは双方の関係が抽象的なものは、「管理指標としては不適切」と考えることが、効果を評価するには有効です。 メトリックの考え方は、シックスシグマに限らず、日々の業務でもすぐにも使えるはずです。また、シックスシグマでは、メトリックの現状値・目標値のギャップからCOPQを算出したり、改革案の検討を実施します。メトリックを明確にすることは、時にKKDや「あうん」とのコンフリクトを生じさせることもありますが、「成果を測定できなければ、活動・改革は意味がない」と考え、設定していただきたいと思います。
2006.01.18
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メトリックの重要性 今回からは、シックスシグマを展開する上で、最も重要な「キー」となるメトリックについてご紹介します。メトリックは「metrics」のことで、「メトリックス/メトリクス」、「(評価)尺度」、「基準」などと表記・訳出されている場合があります。 「メトリックはシックスシグマのキー」と書きましたが、この考え方は企業活動や、みなさんの日頃の業務でもすぐに使える考え方です。むしろ「使っていただきたい」考え方と言ったほうが適切かも知れません。 「顧客満足」を例に考えてみたいと思います。日本に限らず、世界中の企業でも、「顧客満足No.1を目指す」、「顧客満足を上げよう!」といったことを標榜しているところは少なくありません。では、この顧客満足が「No.1」、「上がった」ということは、『何をもって』判断するのでしょうか? この『何をもって』がメトリックなのです。最近は、各業界やマスコミで統一的に行われる顧客満足度調査や独自に調査を実施している企業も多くなっています。そこで、そのインデックスの評価点や調査結果をもとに、「上がった、下がった」と評価しているのではないでしょうか。「上がった、下がった」というからには基本的に、そこには定量的なポイントが存在しているはずです。そのポイントは、それぞれの設定によって点数であったり、パーセント、人数や件数である場合もあるかもしれません。つまり、一見、同じ顧客満足を基準にして評価しているようでも、その「単位(指標)」は、企業によって全く異なるのが現状です。逆に、ただ「顧客満足を上げよう」と言うだけで、そこに何も基準や単位、つまりメトリックがなければ、その成果は分からない、評価できないことになります。「顧客満足を上げよう」をスローガンとして使うのであれば、結果や評価が不明でも「良いのかも」知れません。しかしながら、顧客満足に限らず、企業内で行われる活動に対しては、「経営に実質的な成果として貢献するもの」が要求されるのが最近の傾向です。具体的な成果、経営にインパクトのある効果を生み出すことを基本としているシックスシグマでは、このメトリックは欠かせないものとなっています。「何となく良くしよう」という改革活動を認めないのがシックスシグマです。また、シックスシグマの具体的なプロジェクト活動では、このメトリックはさらにブレークダウンされるのが一般的です。仮に「顧客満足を上げる」というのが大命題だったとします(SSRIのスタンスとしては、余りお勧めしていませんが)。すると、この顧客満足を生み出すプロセスが改革の対象となります。このプロセスを構成している機能や要因の中で、最初に設定してある顧客満足(のメトリック)に効くものがどれなのかを追及していきます。その機能なり、要因なりを測定・評価する基準が、そのプロジェクトのメトリックになるというわけです。どのようなテーマであれ、誰もがその成果を評価することができる基準、それがメトリックなのです。
2006.01.18
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COPQを計算してみよう! 前回、前々回とCOPQを紹介してきました。今回はその復習の意味も含めて、みなさんにCOPQを計算していただこうと思います。 算出結果は次回の掲載とさせいただきます。※ 以下はフィクションです。現実の業種や業務の実状を反映していない場合があります。【状況】ある日、製造業A社にお得意様から「今日、納品された製品に不良品が1つ入っていた。大至急、代わりのものを納めて欲しい」との連絡がありました。運の悪いことに部材・製品ともに在庫はなかったため、、お得意様に何とか3日の猶予を了解いただき、納品を完了することができました。さて、この「不良品1個」は、A社にどれだけのCOPQをもたらしたと考えることができるでしょうか?【検討手順1】COPQ項目として、どのようなものが考えられるでしょうか?図を参考にして考えてみましょう。【検討手順2】 以下の情報から算出できるCOPQを計算してみましょう。 (1) 生産方式はすべて「標準品単品生産」(2) 従業員の規定労務時間は部署にかかわらず「1日8時間」(3) A社の製品1個当たり製造原価は5,000円 参考:類似している競合他社の製造原価は「4,500円」(4) 生産計画部門で、今回の件に費やした工数は「1人X1日」(計画調整、資材発注などを含む)(5) ライン変更のためのセットアップは、平均で「1人1時間」の対応/処理、生産1時間(6) 製品1個当たりの検査「1人4時間」(7) 通常、@500円の部材を今回は800円で調達(1個)(8) 1日当たりローディングは、部門ごとに以下となっている 営業部: 8,000円、検査部:11,000円、生産部:9,000円、間接:12,000円(9) 製品1個あたりの物流費用は200円解答です。1つの不良品が生じされるCOPQの大きさを理解する一助としていただきたいと思います。※ 「解答」は“標準例”としてご覧ください。シックスシグマを導入している企業、COPQの考え方を使って算出を試みている企業によって、その算出基準は異なる場合があります。【解答例】項目 金額(円) 算出基準、など 営業顧客緊急対応コスト 8,000 担当営業1日:8000円×1日 関連部門調整コスト 29,000 営業、生産計画、生産各部1日 (8,000+12,000+9,000) 生産部門内処置コスト 9,000 1日×1人:間接部門ローディング=9,000 ライン再セットアップ 9,000 生産部門1日×1人(=9,000) 部材調達コスト 800 特別調達:800円/個 再生産(製造)コスト 1,125 生産1時間(9,000×1÷8) 再検査コスト 5,500 検査時間:1時間/個、11,000×4÷8 廃棄コスト 5,000 1個の製造原価 不良品回収物流コスト 200 物流コスト:1個(=200) 再生産品発送物流コスト 200 物流コスト:1個(=200) 特別納入(お詫び)コスト 10,000 営業、幹部:各半日=(8,000+12,000) COPQ 77,825 いかがでしょうか? 製造原価が1個5,000円である製品の不良が、こんなにも大きなインパクトを発生させていたのです。上記のCOPQ項目の一部は、通常行っているオペレーションで吸収できてしまうものもあるので、いつも必ずこれだけが発生しているとは限りません。しかし、そのように吸収できてしまいこともまた、見えないCOPQ、各種の機会損失の原因となっている場合があるので、注意しましょう。 また課題に、「競合他社製品の製造原価は4500円」とあります。シックスシグマのプロジェクトで目標設定をするときには、自社と競合製品との差(当ケースの場合は、「A社5,000円-競合4,500円=差額500円」)を自社にとっての「欠陥」として捉えることがあります。この「欠陥」を発生させているプロセスを改革する対象として定義し、活動を展開することになるのです。
2006.01.18
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必死のもがき!活路を見出せ!2006年1月17日このままでは日本に帰れない。父の1回忌に喪主がいないなんて考えられない! どうしたらいいんだ。永住権はほしいが、今日はもう17日今日、面接後、さらに1週間かかると聞いている。明日までに面接の連絡が出入国管理事務所からなければ、26日の帰国はどう考えても無理だ。必死に祈って出した私の結論はこの2文字だった。--撤回--仕方ないじゃないか、また次があるさ。長男として、いままでまったく親孝行をしてあげられなかったのに。亡くなってからもまだ親不孝はできない。親父に申し訳ない。帰ってきてから、また4ヶ月かけてもらえばいいさ。そう決心して私はまた昼休み、現場の作業服のまま、管理事務所に向かった。午後1時到着。もう30人も待機している。でもそれが苦痛とも感じられないほど私の気持ちは落ち込んでいた。「3ヶ月も待ってたのに。結局もとの木阿弥か。」という思いが私の頭の中を渦巻いて、私を放そうとしない。やがて私の番が来た。今までは愛想のない審査官ばかり当たったのに今日はどうしたことだろう。今までとは打って変わって優しそうな男性の審査官にあたったのである。これもなんとかの法則か、ほんと あの法則は真実だ、と独り言をいいながら もう3ヶ月も持ち歩いていたためよれよれになってしまっている受付用紙をおもむろに審査官に差し出した。そしていつもの愛想笑いも、お世辞言葉も一切言わず、たった一言だけ、しかもはっかり聞こえるように相手の目を見据えながらこう切り出した。「撤回に来ました。」「ええ? またどうして?」「日本に行かねばならないんです。日本のどこかで私を待ってる人がいるんです。」あれ、どっかの歌の文句みたいだ、と思いながら返事を待ってると...「う~ん、3ヶ月待っておられたんですねぇ。」「はい。でも もういいんです。撤回します。 とぅぇっかいしますぅ!」と私はきっぱり言い放った。するとどうしたことだろう。目の前の審査官が 急に誰にも聞こえないような小さな声で私にこうささやいたのである。 (つづく)
2006.01.17
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2度目の海外出張 キャンセル!2005年12月20日どうしてこうなるんだろう。この会社に勤めて今まで海外出張がこうも立て続けにあったことはない。まさに誰かの法則は真実だったというところか。実はまた海外に飛べとの命令が下ったのだった。しかし、またあの入国管理事務所に出向いてゆくだけの勇気はもう私には残っていなかった。それでただ電話で管理事務所に問い合わせることにした。「だめでしょうね?」「もちろん!」電話を受けた管理事務所の審査官の回答は簡単だった。たった一言だけの会話を交わすだけに止まってしまったのである。これほど永住権が難しいものとは夢にも思っていなかった。2006年1月12日それからさらに3週間が過ぎ去った。もう 年が変わって2006年、だんだん旧正月の日本帰国が危なくなってきた。で、とにかく3ヶ月も待っていると言うことだけでもアピールしようと思い、管理事務所に電話をした。「あのぅ。3ヶ月前に申請したんですが、まだ連絡がないんですよねぇ。」「永住権ですかぁ。 あれって結構審査が長いんですよね。」と他人ごとのような対応。「でも3ヶ月ですよ。」と食い下がると「普通、4~5ヶ月って聞いてますよ。まぁもう少し待ってみてください。」このままではいかん!2ヶ月って言ってたのが今は5ヶ月になってしまっている。何か手を打たないと きっと父の1回忌に帰れなくなる! なんとかしなくちゃ。なにかいい方法はないものだろうか? 真剣に考える私であった。 (つづく)
2006.01.17
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中国出張 キャンセル!(続)2005年12月2日ここは4階の審査課。そう、韓国水原市にある水原出入国管理事務所の4階にある泣く子もだまる鬼の審査課である。その入り口のドアには窓もなく、しっかり閉ざされていた。ここまで来たんだ。入らないわけには行かない。 勇気を奮い立たせてその重たいドアを開けた。初めて見る審査課のフロア-。 中央に事務用の机が集中し、フロア-の周囲に取り調べ(事情徴集?)のための小さな部屋がいくつかあった。で、 審査官は と見渡すと奥のデスクのほうに男性の影が1人 ついたての後ろに見え隠れしている。とにかく、話して見よう とその見え隠れする影のほうに向かっていった。「あのう、下で聞いてきたんですが、実は永住権審査中の日本人なんですが。」自分でも舌がまわらないのがわかる。「で?なんなの?」思ったより真面目そうな男性であった。「なんとかパスポートだけでも返してもらえないでしょうか?」「受け付け用紙を見せて」「はいこれです。」そしてひとしきり私の受付番号をコンピューターに入力していたが、突然、ぽつっと。「ないねぇ」「えっ?何がないんですか?」「書類がまだここにあがって来てないということさ。」「とすると、私のパスポートはどこに?」「下さ。」「でも、上にあるって言われてここにきたんですけど。」「でもないものはないんだ!」だんだんトーンが高くなってくる。「は、はい。わかりました。もう1度下で聞いて見ます。」と言い残し、あたふたとまた2階に下りていった。もう番号札なんてかまっていられない。審査官の前に座っている外国人にもなんの挨拶もせず、さっき上に行けと教えてくれた審査官に向かって話し掛けた。「あのう、書類がないって言ってましたけど...」「そんなことないよ。」「でも確かにないって」「もぅめんどうくさいなぁ。ちょっと腰掛けて待ってて。」待つこと5分。奥のほうで「どうしてここにこんな書類があるんだ!おれじゃないぞ!」という声が聞こえてきた。どうやら私の書類は誰からも関心をもたれないまま誰かの机の中にしまいこまれていたらしい。とにかく あってよかった、という思いと、なんというずさんな管理なんだ。人のパスポートをなんだと思ってるんだ!という憤りの思いがふつふつと湧いてきたが、しかしここは敵陣の真っただ中、四面楚歌の立場にある今の私にとって最善の策は、じっとこらえて笑顔を絶やさないことだった。しかしそんな私をあの以前私の担当だったあの女性が呼びつけた。「ちょっと、あんた!」「は、はい」「どうしてもパスポートが必要なの?」「え? え~と はい。どうしても...です。」「だったら撤回するんだね。」「テッカイ?テッカイって撤回ですか?」「そうだよ。だって書類に最終入国日が記入されてるの、知ってるでしょ。その日付が変わっちゃうんだから、一度撤回してからまた申請するしかないんだよ。あっ この印紙はまた使えるわよ。」撤回...なんて融通が利かないとこなんだ!と自分でも顔がこわばってくるのがわかった。しかし如何せん。なんともしがたい。忍びがたきを忍ぶ思いで、「わかりました。出張あきらめます。パスポートはいりません。どうかよろしく審査を継続してください。お願いします。」と言い残して私は管理事務所を後にした。会社に帰って、上司からこっぴどくいやみを言われたのは当然のことであった。 (つづく)
2006.01.17
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中国出張キャンセル!2005年12月2日月が変わって12月。月初めの2日、出勤するや否や上司からお呼びがあった。理事「ヨ ブジャン。中国に飛んでくれ。」(ちなみに私は会社では“ヨ ブジャン”と呼ばれている。吉田のヨ、そして部長と言う意味のブジャンである。)「わかりました。ただパスポートが今、ないので管理事務所に掛け合ってきます。」そして私は申請してまだ1週間なのにまた、あの誰もが敬遠する管理事務所に出向くことになったのである。海外で一番行きたくない場所、それが入国管理事務所!しかし会社の命令には逆らえず、勇気を奮って出かけていった。到着するとやはり今日も20人ほど先客がいた。しばらく居眠りをしながら待ち、とうとう私の番になった。「あのぅ実は会社の出張で...かくかくしかじか...」と説明した。 すべて説明が終わった後、それまでしばらくだまって聞いていた窓口担当の審査官が「だったら4階の審査課に行って説明するんだね。書類はみぃんなあそこにあるから。」と、いかにも面倒くさそうに答えた。 ごたぶんにもれず、やはり今日も冷たくあしらわれてしまったのである。今日は男性審査官に当たった。男性も女性も 同じ対応だ。仕方ない、前人未踏(?)の地 4階に向かってそこから出た。4階の審査課...2階の受け付けよりももっとすごいのがうようよしてるところ。つまり不法滞在の外国人なんかを逮捕して審査する課らしい。硬く閉ざされた4階のドアの前に立ち、私は一瞬、いっそこのまま会社に帰ろうか、とも思った。しかし上司にあわせる顔がない。1つ 深呼吸をし、 勇気を出してドアを開けた。 (つづく)
2006.01.17
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2005年1月17日やっぱりこなかった。もう3ヶ月も経つというのに入国管理事務所から面接の案内はまだ来ていない。いったい何をしてるんだ!あそこの公務員たちは!この場を借りて私は、自分が経験した(そして目下進行中の)水原出入国管理事務所を中心として繰り広げられた、血と汗と涙のノンフィクションドラマを紹介しようと決心した!!今日はその第1話(実際は2回目なので第2回としておく)である。これから始まる血まみれの激闘!2005年11月25日今日、F-5(永住権)の申請にいって来た。会社の昼休みを利用して申請にきたので服装は工場の作業服のまま。今から思えばそれがいけなかった。やはりここはベストドレッサー顔負けに着こなさないと、どうも軽軽しく思われるらしい。露骨に対応する態度が変わる。そしてさらに悪条件が続いた。今まで来るたびに愛想笑いとバッカス(韓国の飲料水)の贈り物と、褒め言葉で仲良しになったあの女性の姿が見えない。あとで聞いたんだが、別の事務所に配置転換されたという。私の番号札は218番、20人以上待ったあげくやっと私の番になった。以下、そのとき審査官との間で交わされた対話を再現したものである。審査官は私にとって初対面の中年女性だった。ちょっと太りぎみの、きっとオールドミスだろうと思われる、いかにも悪役といった女性だった。私「あのぅ」審査官「なにしにきたの?」私「ビザの資格変更です。」審「まずパスポートを出しなさい!」私「はい、これです。」「それからレジストレーションカードも!」「あっすみません、どうぞ」「で、何しに来たって?」「資格変更です。永住権を申請に来たんですが」「永住権?書類持ってきたの?」「はい。ここに」と言いながら私は以前ここにアップした書類を1枚1枚ゆっくりとめくっていった。「え~とまず申請書です。それからこれが妻が保証人の身元保証書。そして妻の戸籍謄本と、同じく妻の住民登録謄本。そしてこっちが私の在職証明書。最後に妻の名義のアパート登記謄本です。すべて見せ終わって恐る恐る女性審査官を見上げると...審査官はただ黙したまま 何も言おうとしない。 そしてしばらくして後、「ふぅ~ん 完璧にそろってますね!」と急に態度が変わりだした。「えぇそりゃぁもうKJMLの山口さんから教えてもらいましたから」「えっ誰?」「あっいや なんでもないんです。」「じゃぁこの用紙のこことここに記入して」と言って別の申請書を私の前につきだしてきた。そこには、(韓国語は堪能か?) (不動産、動産はあるか?) (子供は何人か?) (その子たちの外国人登録番号は?)...などの質問事項が書かれていた。私は すぐさま子供たち全員(娘4人です。(^ ^;))のパスポートを取り出すと1人1人間違いないように書き込んでいった。すべて書き終わって差し出すと、「じゃぁそうね2ヶ月くらいしたら連絡するから、そのとき来てください。」と、最初とは別人のような笑顔で説明した。最後に私が質問をした。「あのぅ 12月に会社の用事で海外出張しなくちゃいけないんです。それでできましたらパスポートは持っていたいんですが、だめですか?」しかし審査官は「ははは。だ~め!」と軽くあしらわれてしまった。「でも...」と、私はほかの管理事務所ではそうしてくれたと友人が言っていた、と切り出そうかと思ったが、寸前のところでやめた。そう、なんかあぶない。ちょうど1、4ソウでリーチしている相手に、5、8ソウのどちらを捨てようか悩んでいるようなもの。ひとつ間違ったらいままでの儲けがすべてぱぁになりそうな、そんな気がしたからだ。で、「で、でも1月末の旧正月までには大丈夫ですよね。」「まぁそのときまでならなんとか出るかもね。」「ひとつよろしくお願いします。」と、このようにとりあえず無事に永住権の登録は終了したのであった。このときはまだ、この後、血みどろの戦いが待ち受けていようとは想像もつかなかったのである。 (つづく)
2006.01.17
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このところずぅっと堅い話ばかりだったので、ここらへんでちょっと一休み...いつか下のような写真を新聞記事で見つけたことがある。これも近代文明の悲劇というものか。私はこのアヒルを見ながらふと昔読んだ、ある本のくだりが思い出された。それは吉田兼好の「徒然草」の功名の木登りというくだりだ。記憶が定かではないが思い出す範囲でちょっと紹介しよう。--功名の木登り「徒然草」(漢字が正しいかちょっと不安) --昔、あるところに木登りの名人と言われた男がいた。ある日、この名人が弟子を指導している場面に作者が出くわす。「きっと危険な場所をいかに乗り切るか、教授するにちがいない。ちょっと見物していこう。」と、しばし様子をみることにした。しかしこの先生、弟子が危なっかしく上っていく時は一言も助言らしいことはしなかった。ただ腕組みをしながら、じぃっと見上げているだけなのだ。ところが!降りる段階になって、しかももうすぐ地面というところに来て、急にがみがみ言い出した。”しっかり見ろ!”とか”違うじゃないか!”とかいった具合だったろう。これを見て作者、はっと思いついたことがある。「う~む。さすが功名の木登りと言われるだけのことはある。確かにあやまちとは安心したところで起こるものだ。公家たちが好む鞠という遊びでもそうだ。難しいところにきた鞠を巧みに蹴り上げた後、安心してしまうと今度は簡単な鞠を失敗してしまうものだ。」まりもかたきところをけいだしてのち、やすくおもえばかならずおつとはべるやらん。。。。アーメンカット1アヒルの親子が仲良く散歩に出かけました。「ぼうや(?)たち、車に気をつけるのよ。さぁ早く渡りましょうね。」カット2やっとアヒルの親子が道路を渡りきり、一安心したところ。「ぼうやたち、そうそう、うまく渡れましたね。よかった。これで一安心」カット3ところが、びっくり大変!!振り向くとさっきまでしっかりついてきていた子供たちが...「ぼうやたち!どこにいるの?ねぇはやくでておいで!」
2006.01.13
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COPQ(2):COPQを見つける「視点」 前回、COPQには大きく分けて2種類があることをご紹介しました。「経営品質が良くない=プロセスにバラツキがある」ことから発生してしまうCOPQを今回はまた別の視点から考察してみたいと思います。 図は、COPQのもととなる要因、業務をイメージしたものです。海外のシックスシグマ・トレーニング機関や文献によっては、まったくこのような考え方を採用していないところもあったり、表記/表現が異なっていることがあります。しかし、実際にみなさんが「自分の事業や業務プロセスにあるCOPQには、どのようなものがあるのだろうか?」を検討するときには役に立つインデックスとなっていると思います。2つの視点ですが、1つめは「対応コスト」です。これは、何らかの欠陥(業務処理上のエラー、不良品、サービスミスなど)をプロセス中に発生させないために行っている業務や仕組みにかけているコストを意味しています。たとえば、各種伝票を処理する上で、最初に記入や作成した人がチェックする、それをその人の上司が承認する、その部門から伝票が担当部署へ回って担当者がチェックする、その上司が・・・と同様のステップが踏まれる・・・。こうしたことは、どこの企業でもよく見られることですね。このプロセスで行われるチェックが多ければ多いほど、一般的には時間がかかる、つまり「伝票のリードタイム」は長くなります。誤りを発見することは必要なことですが、こうしたプロセスには思いの外、過剰なチェックポイントが設定されていることが少なくありません。過剰であれば、それはCOPQを算出する対象となります。対応コストには「防止コスト」と「評価コスト」があります。製造のプロセスであれば、部品を購入して実際に使用する前に行われる検品や、製品出荷前に実施される検査などが相当してきます。金融機関であれば、ローンや口座開設のための与信管理などがこの対象です。与信管理に関しては、具体的な事業やサービス形態によって、「防止コスト」と「評価コスト」の両方に該当する場合があるでしょう。また、プロセス品質に影響を大きな影響を与える要因の1つである人材の教育やマニュアル作成のための費用も、「対応コスト」のいずれかにに含めて算出している企業もあります。2つめは「失敗コスト」です。これは何らかの欠陥を発生させてしまったために、それを修正、補償するためのコストです。これには「内部失敗コスト」と「外部失敗コスト」があります。基本的にはともに、"失敗そのもの"は内部で起きてしまっていることが多くなっています。「外部失敗コスト」にカウントされることが多い代表的なものはリコールにかかわる費用などですが、その欠陥自体は内部でいわば「作られて」しまったものです。つまり、欠陥が発生した時点で「内部/外部」を区分しています。一方、「内部失敗コスト」の代表は、製品製造に限らず、再計画なども含めたリワーク(やり直し)です。前回の「氷山の上/下」と今回の「対応/失敗」コストで、少しCOPQのイメージが具体的になってきたのではないかと思います。次回は「COPQの算出」についてご紹介する予定です。
2006.01.13
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COPQ(1):COPQの種類 COPQは、「経営品質(経営のやり方、経営プロセス)が悪いことで発生してしまうコスト」です。このことは以前もご紹介しました。今回は、このCOPQの種類について考えてみたいと思います。 COPQは「Cost of Poor Quality」(文献によっては、「Costs of Poor Quality」などと表記されている場合もあります)の略でしたね。つまり、大きな意味で「コスト(費用)」の1種類です。「コストを削減しよう!」というのは、景気の悪い時期には、多くの企業にとって重要な改革テーマとなります。また、そうした事業環境の良し悪しにかかわらず、競争力を増強させることを目的に、特に日本の製造業の製造現場などでは、継続的なコストダウンが「業務の1つ」といえるほどに定着しています。「少ない方がいい」コストであるわけですが、企業や事業を運営するためには、何らかのコストは必ずかかってきます。事業の継続や市場の激しい競合に勝つため、最終的に利益を獲得するためには、お金が必要なわけです。逆に言えば、必要なお金をかけなければ、利益を得ることはできません。これはCOPQに対して、COQ(Cost of Quality:経営品質維持に必要なコスト=経営/事業運営をするために必要<適切>なコスト)と呼ばれるのが一般的です。しかし、現状のコスト、お金の使われ方をみてみると、必要以上に使われていたり、ムダな使われ方をされていることが少なくありません。この「必要以上」や「ムダ」はCOPQに相当します。「必要以上」「ムダ」を判断する基準は、各企業や事業、業務の種類や考え方によって基本的に異なりますが、共通的には「大きく2つ」に分類されると考えてください。図をご覧ください。これは「氷山」をイメージしています。COPQの種類には、海面の上側にあるものと、下側にあるものに大別されます。上側は、ほとんどの企業でこれまでも「コスト」として認識され、それが増えてしまうと削減対象になっていたようなものです。経理や財務を担当する方やその知識のある方にも、比較的違和感なくCOPQとして認識してもらえることが多いようです。それに対して下側は、少々分かりにくいCOPQです。シックスシグマを導入している企業や個別企業の経営視点によっては、こうした項目のコストを「削減対象」としている場合もありますが、経理やその帳簿上には出てこないものが多く、事業実績に具体的に影響を与えているものであったとしても、他の費目に含まれてしまっていることが少なくないのです。これらは一般に「機会損失コスト」「失敗コスト」などとも呼ばれています。各社によって若干数値が異なりますが、氷山の上側にあるCOPQは「売上の5-8%」相当、下側は同「15-20%」相当、存在していると言われています。つまり、私たちが普段から気にしているコストの3倍にも相当するCOPQが、内在している可能性があるということです。長らくコストダウン努力をしてきた日本企業にとっては、既に上側のCOPQ削減はほぼ完了しており、これからターゲットとするのは「下側しかない」という大手製造業もあります。こうしたCOPQが発生してしまう原因はいろいろあるわけですが、シックスシグマでの基本的考え方は「バラツキがCOPQを生む」ということです。適切なプロセスがいつも安定して運営されていれば、最初に計画した以上のコスト(=COPQ)はかかりません。しかし、例えば、そのプロセスを担当する人のやり方やスキルレベルによって、計画よりも時間がかかってしまったり、欠陥(エラー、不良品)が発生すれば余計なコスト(=COPQ)が必要となってしまうのです。シックスシグマの目的は、「COPQを発生させているプロセスのバラツキを減らすこと」であると理解していただきたいと思います。「プロセスを変えずにコストを減らす」ことだけが目的であるとすれば、その手法としてシックスシグマを採用することは、COPQを発生させる可能性もあると、SSRIは考えています。※次回も「COPQ」を続けます。
2006.01.13
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テーマ・セレクション(2):そのテーマを評価することができるか? 改めて言及することではないかもしれませんが、企業ビジョンや経営方針、戦略などは、 それが本当に素晴らしく、限りなく完璧に正しいものであったとしても、実行なくしては実現や成果を得ることはできません。前回は、懸命な努力(≠正しい努力)であっても、その対象が間違っていては、当初目的としていたような結 果を手に入れることはできない、というお話をしました。このことは、シックスシグマ活動などに限らず、具体的な経営場面で議論されること 多くなってきているようです。バランス・スコアカード(今後、ご紹介予定)など、ここ数年、 「目標のブレークダウン」をする際に役に立つ考え方が注目を浴びているのも、その1つの現れであると言えるでしょう。改革活動のテーマを決めることは、全社で大々的に改革活動を実施するような場合で、 かつ、そこから個々のプロジェクトを展開していこうとする際には、特にテーマ設定に 配慮することが必要です。シックスシグマを導入した企業などで時折(頻繁に)聞かれるのは、「新しい活動を しようということになっているが、解決しようとする課題やテーマは、 これまでやってきたことと変わっていない」「それはプロジェクトでやることではなく、 ライン業務(通常の実務場面)でやる仕事ではないのか」などといったことです。こうした声は、「以前から認識していたが、なかなか手をつけることができずにいた」の 裏返しであることが少なくないため、新しい活動をその1つのトリガーとすることは、 決して悪いことではありません。しかし、シックスシグマに代表される「定量的/論理的思考」をベースにした アプローチを採用する場合には、もう一歩踏み込んで、テーマの選択を検討するべきです。 改革のテーマは当然のことながら、達成したい、解決したい内容であるはずです。それが「実現した」(=達成できた、解決した)というレベルを具体的に表現することが できるのかどうかは、テーマ設定の適切性を評価する視点の1つです。したがって、テーマを設定するミッションをもつ人は、テーマを決めると同時に、 その目標達成レベルを具体的に示すことが必要です。シックスシグマでは、「このプロジェクトの成果は●●である」ということを、 そこに関わるメンバーがしっかりと共有化できる状態であることが要求されます。そこで、その目標や達成状況を数値で示すことが「必須」となっているわけです。プロジェクト活動は進んでいるのに、それを評価する尺度(メトリック/メトリクス:次回ご紹介予定) や目標数値が決まっていないということが起こっているとしたら、 テーマ設定の時点に何らかの欠陥があったと考えるべきでしょう。テーマ・セレクションの重要性は、多くのシックスシグマ文献や トレーニング機関が触れている内容です。SSRIの独自評価でありますが、シックスシグマの「原著」に近い文献には、 その重要性に対する強い意志が、正しく示されていると考えています。しかし、その後に続く統計を主体とした内容、トレーニングのボリュームによって 圧倒されてか(?)、見過ごされてしまったり、活動がかなり進んでようやく 見直されるということが少なくありません。途中で気づくことができれば、既に発生させてしまったCOPQには目をつぶり、 修正することも可能です。しかし、気づくことができないままであったとしたら、莫大なCOPQとともに、 「この改革コンセプトは役に立たない」という結論に到達してしまうことになってしまいます。こうしたことが原因となって「過去のもの」とされてしまった本来は有効であったはずの 経営改革コンセプトが、世の中にたくさんあります。シックスシグマやその他の活動を導入/実施する場合にも、「何をテーマにするのか?」 (=テーマ・セレクション)のフェーズには、慎重に対応していくことが望まれます。
2006.01.13
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6 テーマ・セレクション(1):テーマ設定を誤ってはいないか? みなさんの会社では、これまでの何らかの「改革活動」や「改善活動」を実施したことがあるのではないかと思います。「参加したことがある」方や、社内でQCサークルなどが長期間にわたって定例的に展開されているという方も少なくないのではないでしょうか? 90年代を少し過ぎた頃から、右肩上がりの成長を期待しにくい事業環境が続くようになりました。その後に続くように、「今まで成果を挙げてきた社内の活動がうまくいかなくなってきた」「改革プロジェクトにはマンネリを感じている」という声が、あちらこちらの企業から聞こえ始めたのです。 全社をあげて展開するような改革・改善活動では、ほとんどの場合に「成果を発表する会議(大会)」などが設定されます。不思議なのは、先に触れて「最近どうも・・・」という声が現場からはあるにもかかわらず、そうした成果発表の場では、数々の成果が紹介されていることが多い、ということです。 「毎年、ウチの会社では大きな成果が発表されているのだが、業績は思わしくないどころか、かなりのペースで落ちている・・・」。これは数年前に、ある東証一部上場企業の専務から直接、聞いた言葉です。これと同様の悩みを抱えている企業は、思いのほか多いことを、これまでのコンサルティング活動から経験/実感しています。 実際に活動をしているメンバーが「形式対応に終始している」という悲劇もあるのは、残念ながら事実のようです。しかし一方で、これまでと変わらずに、日々改革・改善のための努力(検討や工数の提供)をしている企業もまだまだたくさんあります。その努力が、どうして業績に反映されていないのでしょうか? すべてにあてはまるわけではありませんが、この問いに対する解の1つとして、(少し乱暴な言い方をします)「無駄な努力」が挙げられます。 これは、プロジェクトにかかわるメンバーの努力の仕方が間違っているというわけではありません。 最大の問題は、改革活動のテーマとして、経営や事業実績にインパクトのあるものが設定されているとは限らない、ということです。活動の原点である課題やテーマが間違っている、つまり、経営上、重要な問題でなければ、いくらそこに注力して多少の成果を上げることができたとしても、全体(経営や事業)に対して良い意味での影響は「現れようがない」といえます。 「多少の成果であっても、それがたくさん集まれば、大きな成果になるのではないか?」という疑問もあることでしょう。集めた結果が、経営上の本当の問題を網羅していれば、そういうことになるかもしれません。しかし、現実はそうでない場合の方が多いようです。「重要な問題、大きなテーマは先送り」にしてしまったり、個別の問題に目を奪われることで、本質的な課題がいつまでたっても焙り出されてこないという弊害が、巷で散見されています。 「改革のテーマを設定する」。テーマ・セレクションは、シックスシグマに限らず、経営改革コンセプトを採用、展開する上で重要な意味をもっています。今回は「誤ったテーマ設定による無駄な努力」という視点でご紹介しましたが、次回も引き続き、テーマ設定の重要性について考察したいと思います。
2006.01.13
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:MAICとDMAIC 「ウチの会社、会議がやたらと多いよ・・・」。こんな思いを経験したことはないでしょうか? "ネット時代"到来ということで、コミュニケーションの在り方も、以前とはだいぶ異なってきましたが、関係するメンバーを一堂に会しての場をゼロにするということは難しいようです。「会議を何とかできないか?」を例に、今回のトピックを考えてみたいと思います。「会議が問題だ! 君、何とかしてくれ」と上司から指示があったとします。さて、みなさんはどうしますか? パターン1:「会議が問題」 ⇒ 「何とかしなきゃ」 一見、理に適っているような感じもしますが、果たしてそうでしょうか?パターン2: (0)上司の指示(「会議が問題」)を受ける (1)確認、内容および目標を明確にする ⇒ 「会議が問題」とは、どういうことか? (2)「(1)」で確認した内容の実態/現状を知る ⇒「会議が多い」「会議が長い」「会議の手順が悪い(何も決まらない、目的がはっきりしていない等)」…. (3)「(2)」の原因を検討する ⇒「なぜ会議が多いのか?」「なぜ会議は長くなってしまうのか?」「どうして"会議の手順が悪い"とみんなが感じてしまうのか」…. (4)「(3)」の原因を解決する案を考え、実施する (5)「(4)」で成果が上がったら、その成果を維持する 「そんな面倒なことしていないよ」と、パターン2を見て思う方もあるかもしれません。ですが、ちょっと冷静に考えてみましょう。この「会議」の問題に限らず、何らかの問題を解決しなければならないというような場合、このような思考/行動パターンをとっていることが思いの外、少なくないはずです。 ウォームアップが長くなりましたが、このような考え方のステップを「定式化」したものが、シックスシグマのMAICなのです。 「MAICなの、DMAICなの?」と思われる方があることでしょう。シックスシグマの初期の文献では、基本ステップはMAICとなっているものが多くなっていますが、最近、出版された文献やシックスシグマを導入している企業ではDMAICが圧倒的になっています。もともと、MAICの「M」の中では、「検討対象を定義する」という内容が含まれてはいたのですが、それをより前面に、明確にしたものがDMAICです。DMAICの手順をイメージすることは、みなさんにとって難しくないのではないかと思います。しかし、それをきちんと進めていくということになると、一緒に検討するメンバー間で微妙な考え方の違いやギャップが生じることもあるはずです。それらのガイドとなるのが、シックスシグマでは「数値」ということになります。数値の大小であれば、誰にでも理解しやすく、明瞭です。シックスシグマはプロセス改革コンセプトの1つですが、この基本ステップは、みなさんの日々の活動にも広く活用できるものです。例えば、あるシックスシグマ導入企業のエンジニアたちは、口を揃えて、「DMAICとしてプロジェクトを実施しているが、これは、今まで自分たちが設計や開発業務をする時には、必ず頭の中でやっていた手順と同じだ。それをシックスシグマ・プロジェクトではビジュアル化、目に見える形にすることで、能力やスキルレベルの違いにかかわらず、より分かりやすく共有化することができる」 と評価しています。また、冒頭で紹介した会議の例のように、私たちの身近なあらゆる問題にも、DMAICステップは有効です。GE(ゼネラル・エレクトリック)など、先進的なシックスシグマ導入企業の一部では、グリーンベルトの資格獲得が管理職になるための必須条件として設定しています。これは、単に改革活動を推し進めることだけを目的にしているのではなく、シックスシグマの中にあるいろいろな考え方が、マネジメント能力やその向上のために極めて効果があるものであると認識/評価している現れであるといえるでしょう。「シックスシグマは統計のトレーニングを受けることだ」との誤解がまだ一部ではありますが、特に私たち日本企業がシックスシグマから学ぶべき、復習すべき点は、個々の統計手法や形式ではなく、その中にあるコンセプト(考え方)であるということを再確認して欲しいと思います。そうしたコンセプトも、すべてに新奇性があるわけではありません。むしろ、シックスシグマ誕生の経緯もあり、「これは知っているよ」ということも含まれているはずです。そこで、「知っている」と「やっている/やっていた」は違うということに留意してください。「本当に"やっている"いえる状態なのか?」「なぜ、昔はやっていたのに、今はそうしていないのか?」など、活動が形式化や風化してしまっている理由や原因をぜひ、追究してみましょう。そこでシックスシグマは役に立ちますし、また、そこから、シックスシグマを超えた考え方、やり方というものを生み出すことにもつながっていくのです。 参考:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.10
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4:シックスシグマは「日本生まれ、米国育ち」 すでに広く知られていることですが、シックスシグマは米大手通信業モトローラ社によって考案されたものです(米国でモトローラは商標としても登録しています)。 79年に「製品品質に問題がある」と、営業担当役員が問題提起をしたのが始まりでした。 その後、80年代に入って、日本市場に参入したモトローラは、日本製品の品質の高さに危機感をさらに強めました。 なぜならば、当時のモトローラ製と日本製の品質レベルには、格段の開きがあったのです。 競合する市場の中で、他社製品が自社のものより優れていた時に、その製品よりも「良いモノを作ろう」と考えることは道理です。 そこでモトローラが実施したことには、経営姿勢として注目すべきポイントがあります。 つまり、単に「日本製よりも高い品質のものを作ろう」ということではなく、高品質製品を作り出す経営システム(ビジネスシステム)、経営のやり方を学ぶということに重点を置いたのです。 ポイント1:結果ではなく、プロセスに注目する 80年代の日本製品といえば、「世界ナンバーワン」の地位に名実ともにありました。 それ以前にあった「安かろう、悪かろう」という日本製品のイメージは、各社全社を挙げての品質改善活動によって払拭されたのです。 その結果、日本製品は高品質の代名詞となり、KAIZEN(改善)は英単語として認識されるほどにもなりました。 モトローラが自社の製品品質を良くするために、品質改善活動(QC活動)に代表されるような日本的経営の特徴を徹底的に追究しました。 品質改善活動を支えるQCサークル、ボトムアップ型の経営や「アウンの呼吸」なども、欧米型の経営にはあまり見ることができない日本のユニークさでした。 ここでもまた、モトローラが私たちに示唆を与えてくれる展開をしています。 日本的経営の特徴が、高品質製品を作り出すために有効であることは明らかでした。 しかし、「自分たちにもそれとまったく同じことができるのか?」を考え抜いた結果、米国型企業の強みや特徴を弱めることなく、日本のやり方を自分たちが活用できる形へと"進化"させた――これがシックスシグマなのです。 ポイント2:本当の成果を獲得するためには「自社化」が必要 シックスシグマは、「日本のTQM(Total Quality Management)とどこが違うの?」などの疑問にもつながることがあります。 これは、これまでにお話した誕生の経緯があるためです。 日本では、TQMという言葉が定着する以前には、TQC(Total Quality Control)がより一般的に使われていました。 これは今でも通用する言葉です。 そのTQCやQC活動のことをアメリカなどでは、「TQM」と呼び、活用してきた様子が、品質関連の団体やシックスシグマ・トレーナーの言動から伺われることがあります。 こうしたことも、日本企業の発展に貢献してきた品質活動に携わってきた方々には、困惑を生むタネとなっているようです。 シックスシグマ・トレーニングの分厚いマニュアルは、統計手法や日本企業にとっては当たり前のことに思える内容の説明に割かれて部分が非常に多くなっています。 これは、日本的経営や特徴に対して新奇性や有効性を感じた当然の結果といえるでしょう。 一方で、米国型経営にとって当たり前のこと、つまり、日本企業にとっては未知であったり、理解が不足しているような特徴についての記述は、日本人にとっては十分なものとはいえません。 このようなことも、シックスシグマが誤解される一因となっています。 ポイント3:統計的手法にとらわれないこと(ツールの目的化を避けること) 日本の品質改善活動が日本企業に貢献したのは、製品品質だけではありません。 忘れられてしまいがちなことのようですが、高品質の重要性や業務活動に対する取組み方なども、一連の活動によって、組織内に徹底され、ノウハウとして蓄積されてきたものなのです。 しかしながら残念なことに、いわゆる品質活動が「どうも機能していない」という、特に日本企業の経営幹部からの声が多くなっているのが昨今です。 ※ シックスシグマもまた、製品やサービス品質の向上に限らず、「マネジメント能力を向上、強化させる」コンセプトとして活用しているところも、先進企業の中にはたくさんあります。 ポイント4:日本企業が従来から進めている改善活動との両立を考えること シックスシグマの部分に捉われることなく、これまでの自社の活動の客観的レビューや強みの確認、これから目指したいことと、「そこで使えるシックスシグマの利点は何か?」を「考え抜くこと」が、シックスシグマが私たちに投げかけているもう1つのテーマであるのかも知れません。 ポイント5:シックスシグマは考える視点、フレームワークの宝庫である参考:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.10
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3:問題は「バラツキ」にある! 唐突ですが、質問です。 (1)みなさんの通勤時間はどれぐらいでしょうか? (2)その通勤時間は毎日、必ず一定でしょうか? (1)の答えは、「どこに住んでいるか」によるわけですが、ほぼ全員の方が即答できたのではないかと思います。さて、(2)の方はいかがでしょうか?「NO」という声を期待しているわけですが、家を出る時間、電車の混み方、 乗り継ぎのタイミングや天気などによって、通勤時間には毎日、微妙にプラスマイナスが発生している、 つまり「一定ではない」のではないでしょうか?それでもおそらくみなさんは、(1)の問いに対して、「40分」「だいたい1時間半」などの回答を されていたはずです。この「40分」や「だいたい1時間半」というのは、 みなさんのこれまでの経験に基づく平均(値)です。 しかし、実際には、上記のような要因(家を出る時間、電車の・・・)よって、 みなさんの通勤時間にはバラツキが生じているのです(図1)。ここで1つだけ、説明を加えます。統計学や既にシックスシグマの 知識をおもちの方は読み飛ばしてください。図1右側にある青い釣鐘状の破線を 「どこかで見たことがある」という方は少なくないはずです。 これは、同じ種類のデータをたくさん集め、それを図上に展開した時に、 そのデータの「散らばり具合」をイメージしているものです。 一般的にこれを「データの分布」「分布状態を示す」といった表現をします。 この分布は、シックスシグマの語源とも関係あります。シックスシグマのシグマは「σ」。この「σ」は、統計学において 「標準偏差」を示しています。「標準偏差」は、 先の分布の状態を表す尺度なのです。つまり今回、既に何度も登場している 「バラツキ」のレベルを示すことができる単位が「σ」ということになります。話を元に戻して、もう少しビジネスに近い場面で考えてみましょう。 2つの会社があります。両社は同じ事業を展開しているライバル企業同士です。 そしてこの2社共に、受注をしてからお客様へお届けする納期を「8日」 としています。ところが実際には、A社では何と「3日」で納品している場合も あれば「15日」もかっている状態でした。そしてB社でも同様に、 最短で「5日」、最長で「11日」というのが実態でした。 もうお気づきだと思いますが、「8日」はそれぞれの実績の平均です。 そして現実の納期には、バラツキが発生しています。 さて、みなさんが発注担当者であった場合、どちらの会社を評価するでしょうか? 納期の平均は同じです。しかし、バラツキ具合(分布の状態)が異なっています。 A社のバラツキの方が、B社よりも大きくなっています。 「バラツキが大きいほど悪い=経営にマイナスのインパクトを与えている)」と考えるのがシックスシグマです。 言い換えれば、シックスシグマでは「プロセスのバラツキを減らすこと」、 つまりプロセスのレベルを上げていくことを目標としているのです。 COPQの話を前回しましたが、 このバラツキこそがCOPQを生み出してしまう最大の要因なのです。 図2にその例を示していますが、従来、企業の多くでは一部を除き、 平均を管理してはいても、バラツキはそれほど重視されていませんでした。 バラツキを重視していた「一部」とは、主として製造業の生産ライン関連です。 特に日本の製造業では、この辺の考え方は非常に進んでいます。 先に通勤時間を例にとりました。首都圏に住むサラリーマンにとっては、 通勤時間の数分の誤差は諦めなければいけない問題かも知れませんが、 先端技術を要求される自動車や電機などの生産プロセスでは、 「秒単位」のバラツキを気にしている企業も多々あります。シックスシグマでは、COPQの削減を目的に改革を実施します。 つまり、経営に悪影響を与えているプロセスのバラツキを、 平均に加えた管理目標として取り扱っていくことになります。多くの方がご存知の通り、ビジネス活動の多くは「釣鐘状の分布(=正規分布)」を するとは限りません。シックスシグマのブラックベルトなどの教育では、 この辺の数値処理の方法を学ぶことになります。 今回ここでご紹介したのは、基本的考え方です。 この基本的な考え方は、トレーニング受講前に、シックスシグマの基本を理解する上では 極めて重要な考え方ですので、忘れないで下さい。 参考:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.10
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2:CTQとCOPQ~シックスシグマで最優先されるもの はじめに...「シックスシグマとは何か?」この質問に一言でお答えするのは、とても難しいことであるとSSRIは考えます。その理由は何も、シックスシグマがとても複雑、難易度が高いものであるから・・・ということではありません。シックスシグマは、導入する企業の目的や使い方によって、 いろいろな定義をすることができるからなのです。たとえば、経営改革アプローチ、品質管理手法/統計的品質管理手法、効率化手法、問題解決手法、 経営品質向上プログラム、マネジメント能力強化プログラム、人材教育メニュー・・・ このような様々な評価をシックスシグマは受けています。また、これ以外の使い方をしている企業もあることでしょう。一方で、「シックスシグマ=ブラックベルト・トレーニング=MAIC」という理解を されている方々にお目にかかることもありますが、残念ながらこの捉え方では、 シックスシグマの有効性、成果の獲得は難しいように思われます。※「ブラックベルト」「MAIC」はシックスシグマ用語です。今後、ご紹介してまいります。 SSRIでは、「シックスシグマ=経営コンセプト、プロセス改革のための有効なツール」 として位置づけています。SSRIがプロセス改革を「経営改革」と同じ意味のものとして捉えていることは、 「SSRIコンサルティングの基本スタンス」でご紹介した通りです。経営コンセプトとしての「本当のシックスシグマ」をここでは順次ご紹介していく予定です。今回は、シックスシグマの中でもその「コア」としてみなさんに考えていただきたい、 「CTQ」と「COPQ」をご説明したいと思います。(1)CTQ:Critical To Quality ~ 経営成果に影響を与える重要な要因 既にいろいろな翻訳がされているCTQですが、ここでは「経営成果に影響を与える重要な要因」として、 みなさんにご理解いただきたいと思います。そして、シックスシグマで対象にしていくものは 常にCTQであると考えてください。これは逆の言い方をすれば、「経営成果に影響を与えないものは、 シックスシグマでは対象としない」ということです。シックスシグマ・プロフェッショナルの中には「CTQが特定できれば、 問題は解決されたものと同じだ」と断言する方々もあるほどです。 さらに言い換えれば、CTQは、「経営上、重要な問題、要因に重点化して取り組んでいくこと」を 示すコンセプトであると表現することができます。 実はこのような趣旨を表す言葉は、CTQだけではありません。KFS(Key Factor for Success)/KSF(Key Success Factor)、 CSF(Critical Success Factor)や、「ザ・ゴール-企業の究極の目的とは何か」 (エリヤフ・ゴールドラット著、 三本木 亮訳)で有名なTOC(Theory of Constraint:制約理論)での ボトルネックなども、根本的な趣旨はCTQと同様のものです。 シックスシグマでは、今回消化しているCTQやCOPQ以外にも、シックスシグマの基本的 考え方を支えるたくさんのコンセプトが出てきますが、その中でも、 「CTQは最優先されるもの」(図1)です。これが時として、たとえばシックスシグマ導入後の企業のプロジェクトであっても、見落とされてしまうことがあります。この企業がシックスシグマ活用による経営改革を目指しているような場合、これは致命的なミスとなる、 つまり、成果を出せないことにつながりかねないので、CTQはシックスシグマの中でも最上位のコンセプトとして理解してください。(2)COPQ:Cost Of Poor Quality ~ 経営品質が悪いことで発生する余計なコストCOPQは、「経営品質(経営のやり方、経営プロセス)が悪いことで発生してしまうコスト」 を意味しています。 したがって、COPQは金額での表示をすることになります。「経営へのインパクト」の大小を、シックスシグマでは金額で捉えていきます。「これが重要に違いない」「大きい問題であるようにみんなが思っている」「たいしたことはない」 「大体●●ぐらいではないか」といった、知っていること、知っている同士であれば「何となく共有化できるもの」も、 金額、数値を使って具体的に共有していくわけです。「何でも金、金、金というのは・・・」と抵抗を感じられる方もあるかもしれません。しかし、経営活動の究極の目的は利益を獲得していくことであるはずです。その意味でも金額は重要な評価基準であり、それを基本に考えていこうとするのがシックスシグマなのです。※CTQ、COPQについては、今後も別の視点からのご紹介をしていく予定です。参考:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.10
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シックスシグマユーザーの広がり~The Power of Six Sigma 「いまさらシックスシグマ?」と思われる方も少なくないに違いありません。 一方で、書店のビジネス書コーナーで、 シックスシグマに関する新刊が再び並び始めていることにお気づきの方もあることでしょう。 実際、この傾向は、日本国内だけではなく、米国などでも見られる傾向です。"What is Six Sigma?"は、今後このサイトでご紹介していきたいと思います。 ちょっと待ちきれないという方は、書籍やインターネットへのアクセスをお薦めいたします。 4年程前には、海外のサーチエンジンで検索しても、数百件程度であったシックスシグマ情報は、 国内でもその数を軽く超え、海外に至っては数多くのサイト、何万件にも及ぶ情報にアクセス可能です。 そこで開示されている情報自体も以前とは比較にならぬほど様々で、詳細なものがあります。 「シックスシグマは(導入費用が)高い」ことでも有名ですが、実際に導入する/しないに関わらず、 そうした情報はみなさまの日々の業務や改革活動に示唆ある視点を提供してくれるに違いありません。シックスシグマは元々、モトローラによって開発されたものです。 当初は同社内で問題視されていた製品品質の改善を目的として確立されましたが、 現在では、ゼネラル・エレクトリック(以下、GE)のシックスシグマ導入/成功で知られるように、 経営活動中に存在するプロセス全般を対象に、 顧客視点をベースとした「経営改革」を実現するものとして知られています。シックスシグマがどの程度、認知・活用されているのかを厳密に知ることはできませんが、 それを垣間見る一助として、シックスシグマを導入している企業を挙げたものが図です。業種(製造/非製造)や製品・サービスの特性(量産/カスタム品等)を問わず 「活用されている=活用可能である」ことをご理解いただけるのではないかと思います。 ここに名前の挙がっている企業はほんの一例に過ぎません。 上図は公開資料を基に作成したものですが、導入を公開せずに着実に成果を上げている企業、 試行中の企業、また導入企業のサプライヤーやベンダーの一部では、 シックスシグマという名称を使う/使わないといった形式は別として、取り組んでいる企業も多数存在しています。参考:http://www.fc-tec.co.jp/SSRI/
2006.01.10
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最終回 モチベーションをアップさせる方法 細かいことを考える気分になれない…… この連載もいよいよ最終回。今回のテーマは「モチベーションをアップさせる方法」です。 正直いうと、編集局からこのテーマを提示されたものの、なかなか手を付けられずにいました。仕事が忙しかったからつい後回しにしていたというのもありますが、テーマにマッチするストーリーが作れなかったというのも大きな理由でした。 なぜなら、モチベーションが上がらないときにはそもそも「細かいことを突き詰めて考える気分になれない」ことが多いからです。そんな「気分が乗らない」状態を解決する方法としてクリティカル・シンキングの手法だけで押し通すのはイマイチだよなあ、と思っていました。 そんなわけで、いいアイデアが浮かばないまま、締め切り前日の日曜日を迎えてしまいました。何のことはない、私自身がモチベーションを上げられずにいたのです。そこから私がどのようにモチベーションをアップさせ、この原稿が出来上がったのか。今回はいつもと趣向を変えて、そのプロセスを紹介しながら、モチベーションを上げる方法を考えていきたいと思います。 モチベーションの定義とは そもそも「モチベーション」とは何でしょうか。 「大辞林第二版」(三省堂)によれば、心理学用語で「Motivation=動機付け=生活体を行動へ駆り立て、目標へ向かわせるような内的過程。行動の原因となる生活体内部の動因と、その目標となる外部の誘因がもととなる」とあります。 生活体内部の動因とは、ベースとなる気力・体力の充実度合いや、行動そのものが楽しいかどうか、その行動を起こすことによるメリットをどれほど強く感じているか、などが考えられます。 一方、外部の誘因とは、人事評価制度や社会通念、周囲からのプレッシャーなどに由来する、目標そのものの魅力や、逆に目標が達成できなかったときのデメリットなどが考えられるでしょう。 モチベーションにはさまざまな要素が絡んできますが、基本的には、心から楽しいと思える「やりたいこと」に関しては誰でも積極的に取り組めるものです。ゲームに熱中したり、面白い映画を見たり、好きな子とデートしたり、スポーツに興じたりといったときには、食事も忘れるほど没頭することもあるでしょう。 また、お金が儲かる、社会的にステータスが高い、周囲の期待が高いなど「望ましいこと」も、モチベーションアップにつながる重要な要素です。奥さんと子供が応援してくれるから頑張れる、周りの人がチヤホヤしてくれて気持ちが良い、といった類のものですね。 このように、「やりたいこと」や「望ましいこと」をやるときに発揮できる高い集中力と持続力、そしてそれを支える強いモチベーションを、仕事や勉強など「やるべきこと」に対して発揮できれば最高ですよね。であれば、「やるべきこと」「やりたいこと」「望ましいこと」が“重なるポイント”を見つけられれば、モチベーションも上がり、パフォーマンスも上がるはずです(図1)。 では、どうしたらその接点を見つけられるのでしょうか。●モチベーションをアップさせる! 図1 「やるべきこと」「望ましいこと」「やりたいこと」が“重なるポイント”を見つける。そうすればモチベーションのアップにつながることだろう 「やるべきこと」を分解して個別要素を見る 1つの方法は、「やるべきこと」をいろんな要素に分解して個別に見てみることです。これには「第6回 手順を踏んで考える」でも紹介したロジックツリーが応用できます。ここでは自分を俎上(そじょう)に載せて、「原稿を書く動機」をロジックツリーにしてみました (実際のロジックツリーは割愛させていただきます)。 原稿を書く動機はいろいろあります。人によって重みが違うでしょうが、私の場合は「多少なりとも読んでくださる方々のお役に立てること」が一番うれしいです。また、モノを作る人間としては、「自分で納得できる作品を作りたい」という欲求もあります。 従って私がモチベーションアップのためにやることは、「読者の方々を強くイメージすること」と「納得のいくストーリーを思いつくこと」です。前者は難しくありませんが、後者はなかなか難しい問題でした。 クリティカル・シンキング的に問題を要素分解して原因究明というアプローチは、問題を明らかにするにはとても有効です。ただ、「納得のいくストーリーを思いつく」ということは、それ自体が困難な課題でもあります。われわれは弱い人間ですから、そんなふうに根を詰めて考えるなんて「何となくそんな気分になれない」ときもあるでしょう。そんなときに有効なのが、人の「楽しみ方」をマネることです。 少し発散的に:「楽しみ方」をマネる 仕事でも勉強でも、皆さんの周りには多少なりとも「それらを楽しんでいる人たち」がいるでしょう。楽しんでいないまでも、うまく自分をコントロールしながらそれらをこなしている人がいると思います。そんな人たちは、彼らなりの「楽しめるポイント」や、経験から導き出した「うまくモチベーションを上げる方法」を持っている可能性が高いのでは……。というわけで、手っ取り早くその秘けつを聞いてみるのがお勧めです。 私の場合、締め切り前日の日曜日の夕方、友人2人と一緒に下北沢の居酒屋で飲みました。1人は某雑誌の編集長で、もう1人はフリーランスのクリエイティブディレクター。いずれも日々、原稿書きを含め、モノ作りの世界で活躍している人物です。 原稿書きとして大先輩の彼らが口をそろえていうのは、「ギリギリまで自分を追い込む」こと。いまの私と同じです。締め切りが迫っているにもかかわらず、「勝手に手が動き始めるくらい書きたいと思える原稿がイメージできるまで」あえて取り掛からない。気分が乗るまでほかの仕事をしたり遊びに行ったりするというのです。 それでも、締め切りのデッドラインには間に合うということでした(締め切りには必ず隠しスケジュールがあり、デッドラインとは「それ以上はどうやっても待てない期限」のこと)。 この手は確かに有効で、試験勉強の世界でも「一夜漬け」と呼ばれて多用されているポピュラーな手法(?)です。ただしこれをやると、編集者や制作チーム、紙媒体では印刷所などに大変ご迷惑をかけてしまいますので、できるだけマネをしないようにしてください。 自分を追い込む、という以外にも、彼らが感じている「クリエイターとしての喜び」には共感できるところが多く、大いにモチベーションアップにつながりました。例えば、追いつめられている状況でいいアイデアがひらめき、徹夜で一気に書き上げた時の充実感とか、われながらいいものを作れた!という満足感、作品を見てくれた人から嬉しい感想をいただいたときなどです。 余談ですが、うまい芋焼酎が飲めたことや、料理が安くてうまかったこともモチベーションアップにつながりました。 「楽しいこと」に取り組んでみる それでもまだモチベーションが上がらなければ、思い切ってまったく違うことをやってみましょう。やるべきことを気に掛けながらも、まったく別の刺激にさらされることで、いつもの発想から抜け出すことができます。この「別のこと」は、できるだけ自分が楽しいと思えることがいいでしょう。 クリティカル・シンキングはとても有益ですし、ロジックツリーのように発想を広げる方法も役に立つのですが、常にロジカルであることがベースにありますので、自分でも知らないうちに思考の枠にとらわれていることがあります。そして、発想を飛躍させることが難しくなってしまうのです。そんなときに役立つのがこの方法です。 具体的には、1つのテーマをずっと頭の片隅に置きながら、映画でもコンサートでもダンスでもスポーツでも、何でもいいから普段とちょっと違うこと、できれば自分の大好きなことにトライしてみるのです。そうすることで思考が解放され、新たなひらめきを得られることがあります。 私の場合、先ほどの2人と、居酒屋で飲んだ後、そのまま下北沢のライブハウスにいきました。その日はライブハウスの2周年記念イベントで、ヒップホップ、サンバ、フュージョンなどのバンドが出演していて大盛況。私はかれこれ10年以上もサンバをやっているので、サンババンド目当ての友人も多く来ており、大いに盛り上がりました。そして、(ウソみたいな話ですが)サンバを楽しく踊った後、ラムコークを飲みながらフュージョンを聴いているときに今回の記事のストーリーが一気に頭の中に出来上がったのです。 このイベントの出演バンドはそれぞれまったく違うものに見えるけれども、いい音楽をライブで演奏して客を楽しませるという一点において共通していました。一方、この日の自分の行動も、一見クリティカル・シンキングとは関係なさそうに見えて、モチベーションアップの方法であるという点で共通していました。ならば記事でそれを体系化してみよう。そう思ったのです。 十分に考えたら、意を決して行動しよう! 早いもので、この連載も10回目となりました。残念ながら今回でお別れとなります。クリティカル・シンキングの手法の紹介、あるいはその応用といった内容で記事を書いてきましたが、少しは皆さんのお役に立てたでしょうか。 グロービス・マネジメント・スクールの「クリティカル・シンキング」のクラスでは、思考のテクニックを机上でお伝えするのではなく、演習をたくさん使いながら「自分の頭で考えて出した答えに対して講師やクラスメイトからどんどん突っ込まれ、少しずつ修正しながら“コツ”を覚える」という方法を取っています。 なぜならば、思考力はスポーツや格闘技と同じく、良い「型」を学び、それを繰り返し訓練することで少しずつ鍛えられるものだという考え方に基づいています。ただテクニックを学んでも、実践の中で磨かなければ意味がないのです。 それと同じように、このサイトは「自分戦略」というコンセプトを軸にキャリアを考えるというのが大きなテーマになっていますが、結局は「実践に勝る思考なし」です。しっかり戦略を考えるのはもちろん大切ですが、まだ見ぬ未来のことなど不確定要因が多すぎて、完全に予見できるわけではありません。「十分に考えたら、意を決して行動する!」。その積み重ねこそがキャリアなのだと思います。 少しでもこの連載がお役に立てていれば幸いです。お付き合いいただき、本当にありがとうございました。筆者紹介 芳地 一也●(株)グロービス・マネジメント・バンク、コンサルタント。グロービス・マネジメント・スクールおよび企業内研修においてクリティカル・シンキングの講師も務める。東京大学文学部心理学科卒業後、(株)リクルートを経て現職。グロービスは経営(マネジメント)領域に特化し、ビジネススクール、人材紹介、企業研修、出版、ベンチャーキャピタルの5事業を展開。経営に 関するヒト・チエ・カネのビジネスインフラを提供することで、日本のビジネスの「創造と変革」を目指している会社。 http://www.atmarkit.co.jp/
2006.01.06
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9回 転職、人事異動時に注意すべきこと 新天地で働く際に心掛けておくこと 例年4月は就職や人事異動、組織変更が多い季節。新しい出会いの予感でワクワクする半面、「ホントに“新天地”でうまくやっていけるのか……」という不安もあり、複雑な心境でデビュー初日を迎えた方もいると思います。5月になり、新しい環境にも少しずつ慣れてきたころではないでしょうか。 4月に多いのは「新卒入社」「組織変更」「異動」ですが、「転職」のピークはもう少し後の7月ごろになるようです。企業側も3月は決算や新卒採用、組織変更などで忙しく、動きが鈍くなりますが、4月の半ばを過ぎると新人研修も一段落して人事部に余裕ができます。そして、中途採用が活発化してきます。そんな事情もあって、4月下旬~5月に転職先から内定を獲得し、6月のボーナスをもらって6月末で退職、7月1日から“新天地で働く”というパターンが多くなります。 転職志望者の事情としては、ボーナスをもらってから辞められるという分かりやすい理由がありますが、そもそも転職を考えるきっかけも増えるというのが大きな理由でしょう。「異動の希望が通らなかった」「実績が認められず昇進できなかった」「組織変更で自分のいる部署がなくなってしまった」……など、4月に多く発生する職場環境の変化(あるいは期待する変化がなかったこと)が転職のきっかけになっている場合が多く見られます。 というわけで今回は、クリティカル・シンキング講師の立場というよりは、マネジメント人材の転職市場を見ているコンサルタントの立場から、マネージャのポジションで転職や人事異動した方が、「効果的にデビューする」ために心掛けておくことを伝えたいと思います。 新参者に対する「周囲の目」 新しい職場での初日。あなたは新鮮な気持ちで、希望と期待、そして若干の不安を感じながら出社するでしょう。そんなとき、あなたを迎える人はどんな目で見ているのでしょうか。あなたがマネージャ以上のポジションで中途入社する場合、周囲の期待は想像以上に大きいものです。 まずは上司。中途入社で自分の部下となるマネージャを採用することは、現在のメンバーだけでは力不足で、かつ自分自身が指揮を執るには手が回りきらないという事情があります。そこへ即戦力として外部から人材を迎え入れるということは、自分の意図をよく理解し、できるだけ早い段階でチームメンバーをまとめあげ、求める実績をどんどん出してくれることを期待しています。 次に同じ階層の同僚。彼らはあなたより前に入社しており、それなりの実績を認められて現在のポジションを勝ち取っています。そこに外部から人が入ってくると、仲間として、あるいはライバルとして、複雑な気持ちで「自分よりデキる人かどうか」を見ます。 上司や部下が注視する点は異なる 最後に、あなたの部下たち。彼らは能力、価値観や問題意識などさまざまに異なります。前の上司やほかのマネージャと比較しながらあなたを見ます。彼らはあなたをいろいろな観点で評価しますが、最もシビアなのは「自分より仕事がデキる人なのか」というポイントです。ここを早期にクリアできなければ、彼らの心をつかむことはまず無理でしょう。 多くを学べる人か、尊敬できる人か、自分を引き上げてくれる人か、この人についていけるか……など。上司に期待する多くの要素が、「マネージャである前に、プレーヤとして、ビジネスマンとして自分たちより優秀かどうか」という一点にかかっています。それらを大前提に、マネージャとして自分たちの立場や仕事内容を理解してくれるか、公平な評価をしてくれるか、的確に導いてくれるかという視点であなたを“評価”しています。 上司、同じ階層の同僚、部下。これらのうち最も気を使うべきは、あなたを評価する立場である上司ではなく、部下です。上司については、目標や期待値さえしっかりとすり合わせておけば問題ありません。 マネージャであるあなたは、「チームを率いて期待される成果を出せたかどうか」で評価されますので、チームのパフォーマンスを最大化することに集中すれば良いのです。もちろん、実績よりも上司へのご機嫌取りが重視される風土の組織はいまだに多く見られますが、そんな会社は早晩傾きますし、長く在籍するほど自分自身の市場価値を下げてしまいます。間違って入社してしまったら早々に退散するか、自ら先陣を切って組織を変革しましょう。もし、つぶされることなく組織を変革できたら、あなたの市場価値は格段に跳ね上がるはずです。 部下との“知識ギャップ”を補う いずれにせよ、転職直後のあなたは期待を込めて注視されていますので、できるだけ早く周囲、特に部下に対して実力を示す必要があります。しかし、物事はそう簡単に進みません。なぜなら、あなたは「“汎用的な能力”については部下を上回る」と判断されて採用に至ったからです。しかし、その会社や業界固有のやり方や課題などについての知識レベルは部下よりもかなり劣っているはずです。従って、あなたは早急にこの知識を補う必要があります(図1)。●転職直後の「あなた」と「部下」とのスキル比較 図1 転職したら、まずはその業界や会社特有の知識を仕入れることを心掛けよう 転職を経験したことのない方が陥りがちなミスは、この“知識ギャップ”に気付かず、自分がこれまで確立してきたやり方を新しい会社にそのまま持ち込み、うまく実績が出ないというパターンです。業界、会社、組織、ミッション、構成員などが変われば、マネージャとしての最適な振る舞いは、当然変わってきます。このような状況を把握し、最適な仕事の進め方を考えながら部下を率いていってこそ、最大限の成果が発揮されるのです。 クリティカル・シンキングの基本は「自分の考えを常に疑ってみる」ことですが、この例のように、時には長い経験で築いてきたものまでも疑ってみることも大切なことです。 マネージャが効果的にデビューする方法 私がリクルートに在職して2年目になったばかりのころ、グループマネージャが替わったことがあります。転職ではありませんでしたが、彼は別の部署から異動してきて、わずか2週間で見事にグループをまとめあげ、新しい方向性を打ち出してグループを方向付けました。その尊敬すべき上司がそのとき何をしたのかという実際のケースを紹介します。 ☆ケーススタディ~優れた「新天地デビュー」 グループマネージャに着任した日の朝、彼はメンバーへのあいさつでこういった。 「まず、皆さんが普段どんな仕事をしているのか、何がうまくいっていて何が問題なのかを教えていただくことから始めたいと思います。来週、皆さんと1人1時間ずつミーティングの時間を設定しますので、それまでに各自レポート用紙1~2枚でまとめてきてください」 数日後、彼はメンバー全員と1時間ずつ、職務内容や仕事上の問題意識、さらに大事にしたい価値観や将来の夢などについても話し合った。これまでの仕事に多少の不満を抱いていた者は数名いたが、親身に聞いてくれる彼に対していろいろと相談した者も多かった。 全員と面談を済ませた後、彼はグループミーティングの場で新体制について説明し、各自に新しい役割を与えた。担当の入れ替えや役割の廃止など、大きな変更もあったが、メンバーは新しい方針を理解し、スムーズに新しい組織体制に移行した。 さて、いかがでしょうか。これは私がメンバーの1人として経験した実話です。これまで説明してきた「効果的にデビューする」ためのノウハウがぎっしり詰まっているのが理解していただけると思います。 彼はこの面談を通じて、各メンバーの職務内容、問題意識、能力、志向、適性、さらに組織が抱えている問題点などを把握しました。さらに、部下に対して「この人はきちんと話を聞いてくれるし、自分のことを理解してくれる良い上司だ」という認識を持たせることにも成功しています。 さらに、グループの現状や課題を短期間で把握したことを踏まえて、的を射た改革案を出して実行に移しました。面談の内容を踏まえて新しい方向性を打ち出したので、メンバー全員が「グループの新しい方針に自分の意見が反映された」という意識を持ち、各自の仕事に対してより強くコミットすることができたのです。 最初の「3カ月」が勝負! 新参者には期待の込もった視線が注がれています。最初に「こいつは仕事のできない奴だ」とみなされると、思うように協力が得られず実績も出せないという悪循環に陥ってしまいます。 紹介した事例のようなテクニックは非常に有効ですが、それと同時に、最初の3カ月は誰よりも働き、誰もが認める実績を1つでも出すといった心掛けも非常に重要です。 以上、皆さまの新天地でのご活躍を心よりお祈り申し上げます。
2006.01.06
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8回 効率的にコミュニケーションする 相手の行動を促す「コミュニケーション術」 コミュニケーションは、コンサルタントやそれを目指す方に限らず、多くのビジネスパーソンにとって最も重要な仕事であるといっても過言ではありません。これまでの連載では課題分析や問題解決に焦点を当ててきましたが、今回は少し角度を変えて、コミュニケーションの技法について解説します。 ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は、一言でいえば「相手にこちらがしてほしいと思う行動を起こさせる」ことです。具体的には、クライアントに自分の提案を受け入れてもらったり、部下の仕事に対する姿勢を変えさせたり、同僚に自分が期待するとおりの支援をしてもらうことなどです。 効果的なコミュニケーションは、以下に示すように4つのステップがあります(図1)。●「相手の行動」につながるコミュニケーションのステップ 図1 ビジネスにおけるコミュニケーションの目的は、「相手に自分が望む行動を起こさせる」こと。課題分析や問題解決と同じく、コミュニケーションにも効果的な手順がある どうすればこの条件がそろうのか。(1)(2)(3)と(4)の2つに分けて考えてみましょう。(1)(2)(3)はコミュニケーションをする前提として配慮すべき事柄、(4)はコミュニケーションの中身に関する問題です。 己を知り、相手を知り、効果的に攻める 最初にやるべきは、「自分の目的と立場を把握する」ことです。クリティカル・シンキングの基本でもありますが、最初に目的をしっかりと認識しておかなければ、何をやってもいい結果は生まれません。例えば、経営陣に対して提言したいことがあるときに、「自分が平社員なのか中堅なのか」、あるいは「経営の一角を占める立場にいるのか」によって、同じメッセージを伝えるにしても「伝え方」がまったく変わってきます。孫子の兵法にあるように、いざ事を起こす際には、「己を知る」ことがすべての出発点になります。 次に、「誰に対して話をするのか」が決定的に重要です。「相手が行動を起こす」ためには、その人が行動を起こせる力と権限を持っていなければ始まりません。組織には必ずといっていいほど、その組織内で影響力を持つ人とそうでない人がいるものです。前者のような「キーパーソン」をいかに見つけるかが勝負の分かれ目になります。 組織や職制上の立場を理解しておくのは当然ですが、役職が上だからといって必ずしもその人がキーパーソンだとは限りません。例えば、クライアントと初めて面談できる機会を得たら、まず相手の業務内容について質問しながら知識レベルや職務権限などをそれとなく探っていくといいでしょう。このときのコツは、「何をやったか、何をしているか」という「事実」を聞き、それに基づいて判断することです。 攻略すべき相手が決まったら、いつ、どのようにコミュニケーションするかを考えなければいけません。細かい話になりますが、どのような手段、時間、場でコミュニケーションを取るかは重要です。忙しい相手に「じっくりお話を聞いてください」といっても無理があります。せっかく面談の機会を設けても、途中で電話などで呼び出され、会話が中断されては効果が半減します。相手が話に集中できる環境をいかにつくるかに気を配ってください。 相手の思考とコミュニケーションの特徴をつかみ、それに合った方法を取りましょう。早く結論を知りたがりスピードを重視するタイプの人に、長い状況説明は不要です。 性格別にコミュニケーション手段を考える その一方で、理由やプロセスにこだわりを持ち、正確さを求めるタイプの人には、順序立てて情報を与え、相手の理解度を確認しながら1つずつ階段を上がるように話を進めていかなければなりません。 また、コミュニケーション手段の特性を考慮することも重要です。直接会って話をすれば、相手の心理状態などに気を配りながら最適なメッセージを投げることが(かなり高度ですが)可能です。相手のコミュニケーションスタイルを把握できるので、次回以降のコミュニケーションも、より効果的に行うことができます。 ただ、時間を取ってもらうのが難しかったり、自分のスキルレベルによっては、思わぬ失言で相手に悪印象を与えたりするリスクが高まりますが、電子メールを使えば相手の時間を拘束せずに済み、かつじっくりと考えて練り上げたメッセージを伝えることができます。 しかし、電子メールはメッセージをどう受け取られたのかが分かりにくく、そもそもまともに読んでもらえていないかもしれないというリスクもあります。そのほか、電話やFAX、スピーチ、プレゼンなど、多くのコミュニケーション手段をうまく使いこなすことで、目的を達成できる確率はかなり上がるはずです。もちろん、どんなコミュニケーション手段を好むかは、かなり個人差がありますので、それを把握するのも「相手を知る」重要なポイントです。 相手の心理状態に合わせる さて、ここからコミュニケーションの場面に入りますが、「何をいうか」という中身の説明をする前に考えねばならないことがあります。それは相手に「メッセージを受け止めてくれる心理状態」を持ってもらうことです。人間は感情を持った動物であり、それを無視したコミュニケーションは、内容がいかに正しく論理的であっても失敗してしまいます。相手が無意識に持つ心理的なバリアをいかに解除するかが課題となります。 まずやるべきことは、こちらに興味を向けさせることです。そもそも興味がなければコミュニケーションしようという動機が生まれません。そのためには、「相手にとって意味のある情報」をできるだけ提供することです。相手の関心と理解度に応じて、適切かつ具体的な(本を読めば分かるようなものではない)情報を選択します。 「あなたの存在を認めて受け入れる」という暗黙のメッセージを伝えることです。人間には誰しも、「自分の存在を認めてもらいたい、自分の感情や置かれている状況に配慮してもらいたい」という欲求があります。 これにはまず相手の話を熱心に聞くことが出発点です。それもただ黙って聞いているのではなく、「なるほど」といった同意のサインや、「それはどういうことですか」「それでどうなったのですか」といった質問を適宜交え、「こちらが積極的にあなたの話を聞こうとしている」というメッセージを伝えていきます。 また、質問をうまく使うのも効果的です。質問には「相手の考えを聞く」だけでなく「質問そのものが重要なメッセージを発信する」という側面があります。例えば、「ここまでで何かご質問はありますか」「これについてどう思われますか」といった質問を挟むことで、「一方的に話しているのではなく、同意のうえでコミュニケーションをしようとしている」ということを表現できるのです。 相手の「知りたい」ことに答える コンサルタントでも営業マンでもSEでも、クライアントと話をするときにはいいたいことや伝えたいことがたくさんあると思います。しかし、ストレートにそれを伝えることが「相手に行動を起こさせる」ことに直結するわけではありません。 「相手の聞きたいこと」に対してダイレクトに答えることを心掛けるべきです。なぜなら、相手は「何らかの行動が必要かもしれない」という問題意識と、(十分ではないとしても)いくらかの情報や知識をすでに持っています。そのうえで何らかの疑問を抱えており、それを明らかにするために豊富な専門知識を持つ皆さんの話を聞こうとしているからです。 こうした相手の状態を無視して「こちらがいいたいこと」を述べても、相手は「そんなことは分かっているから早く結論を聞きたい」「自分が知りたいのはそんなことではない」など、イライラしながら待たなければなりません。 では、どうしたら「相手の疑問」を知ることができるのでしょうか。まずこれまでの相手とのやりとりから、相手の理解度や関心を推定します。そのうえで相手が「当然抱くであろう疑問」を論理的に考えるのです。 相手が持っている情報が少なければ、まず、「それは何なのか?(What)」ということに答えなければなりません。コミュニケーションの最初の段階では特にそうです。話が進むに従って、聞き手の頭の中に「なぜそれが重要なのか、なぜそれがよいのか?(Why)」と、「具体的にはどうするのか?(How)」という2つの疑問がわいてきます。その疑問に対し、タイムリーかつダイレクトに答えることが、相手の行動につながるのです。 話の進め方としてよくあるのは、長々と状況説明があり、その後に1つ1つのポイントを細かく説明し最後に結論を述べるやり方です。この方法では、相手が話の途中で、そもそも何の話をしているのかが分からなくなってしまったり、細かいところに気を取られて、重要度の低いところで議論が紛糾してしまったりします。 これは相手の理解度が低いせいではなく、人間の頭の処理能力からいって当然のことなのです。この人間の能力の限界を前提とすると、次のような説明方法を取るのが望ましいやり方であることが分かります。☆コミュニケーションのポイント ●まず「何について話すのか」という主題を簡潔な状況説明とともに明確にする●相手が最も疑問に思っていることを「答え」として結論で提示●その結論に至る根拠、論理の流れを3点ほどに絞って最初に説明する ↓※以上を踏まえたうえで、「個別の部分」を詳しく説明する 「ピラミッド・ストラクチャー」で主張をまとめる こうした話し方は、先の(1)~(3)をしっかり押さえたうえで行えば、極めて相手の理解を助けることになります。権限が大きい(つまり忙しい)人間に対してはなおさら有効です。もし話が途中で終わっても要点は伝わります。たとえ、こちらの結論に相手が同意しなくても、「なぜその結論に至ったのか」というプロセスが明確になります。そのため、細かい部分に議論が集中することを避け、より重要なポイントについて本質的な議論が可能となります。 そうしたことを念頭に、相手に伝えるべき「考え・主張」を構造化してメッセージを作るといいでしょう。その効果的な手法には、「ピラミッド・ストラクチャー」というものがあります(図2)。●ピラミッド・ストラクチャーの手法(例) 図2 ピラミッド・ストラクチャーは、相手に伝えたい「考え・主張」を構造化して説明する際に効果的なツールだ これは、いくつかの情報・主張から演繹的・帰納的にいえることをその上位のメッセージとして抽出し、その集合体として主張全体をピラミッド型の構造になるよう構築する方法です。結論である1番上のメッセージから見ると、それぞれ1段下のメッセージがその理由や根拠(図2参照)や具体例を説明するものになります。これは元マッキンゼー社のコンサルタントのバーバラ・ミント氏が定式化したもので、高度な論理構築と明確なコミュニケーションが必須であるコンサルティングの世界で広く用いられている方法です。 以上、コミュニケーションにおいて重要なことを駆け足に解説しましたが、実際には相当高度なスキルと豊富な経験が必要とされます。完ペキなコミュニケーションというものはあり得ません。常に重要なポイントを意識しながらビジネスの場で実践を繰り返し、少しずつブラッシュアップしてみてください。
2006.01.05
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第7回 構造的に考える:フレームワークを活用する 「考える枠組み=フレームワーク」を活用する コンサルタントや営業マンであれば、新規クライアントを訪問するとき、まずその業界や企業に関する情報を入手し、「どういう特色があるのか」「その企業はどんな状況に置かれているのか」などを自分なりに分析することでしょう。特に最近はインターネットの普及に伴い、上場企業であればWebサイト上で投資家向けに財務状況や事業戦略などを公開するケースが増えてきました。新聞社などが提供している記事データベースなどを利用すれば、新聞やビジネス雑誌などでどのように報道されているのかも簡単に調べることができます。 この事実は、「できる人」と「できない人」の差がますます開いていくことを示しています。昔は情報を握っている人が優位に立てたのですが、誰でも簡単に情報が入手できるようになり、もはや知っていること自体では差はつけられません。むしろ、多くの情報の中から必要なものを選択・整理し、そこからどのような意味合いを抽出して効果的な提案が行えるかが勝負の分かれ目になります。 特にエンジニアが普段かかわっているような情報システムの提案などでは、クライアントの業務内容を正確に把握し、求められる要件を満たすだけでなく、専門家として、クライアント自身がまったく気付いていない本当のニーズや課題を探り出し、その解決に役立つ提案を行うことが求められます。このような対応ができれば、クライアントの大きな信頼を得ることにつながり、ひいては継続的な取引につながるのではないでしょうか。 事業環境を把握するフレームワーク「3C」 これまでの連載で説明してきたように、構造的に考えること(全体像を把握し、要素に分解してその関係性を、できれば定量感をもって明らかにすること)によって、正しいステップを踏んでシステマチックに話を進めれば、質の高い提案になる可能性が格段に高まります。そのためにぜひ利用したいのが、「枠組み=フレームワーク」です。 ビジネススクールでは、さまざまな課題を考えるのに役立つフレームワークとその使い方を学びます。これらを理解し、考えるツールとして利用することで、大きな視点を見失わず、見落としを防ぎながら、効率よく分析や解決策の立案をすることができます。これらのフレームワークは、経営学の本などから学ぶことができますが、今回は、その中から、特に汎用性の高い2つのフレームワークを紹介します。 コンサルタントや営業担当者にとって、ある企業や事業部などがどのような経営環境に置かれているのか、どのような事業戦略をとろうとしているのかを知ることは、常に重要なポイントです。その分析に役立つフレームワークに「3C」があります(図1)。●最も基本的な事業分析のフレームワーク「3C」 図1 事業戦略を分析する際などは、「3Cの視点」で情報収集し、考えることによって、大きなモレや見落としを避けることができる 3Cとは市場・顧客(Customer)、競争相手(Competitor)、自社(Company)を指し、この3つの視点から、まずは大まかに事業環境の全体像を見ようとするものです。この3つを押さえないとどうなるか、次のような例を考えてみましょう。☆「3C」の枠組みで考える (1) ある情報システム企業が、受注競争を繰り広げているライバル企業に勝つために、処理速度やデータ容量といった「スペック」と「価格」で激しい競争を繰り広げていた。しかし、多くのクライアントは、価格にはほぼ満足、さらに性能よりもトラブル対応や利用者への教育サービスなどを重視し始めていた。その結果、性能はありきたりだが、キメ細かな利用者サービスを武器に参入してきた外資系企業に次々と受注をさらわれてしまった。(2) 大手通信企業が豊富な資金力をバックに、市場性が高く、競合は小さな会社が多いという理由で、ソフト開発事業に進出した。しかし、変化の早さに自社の意思決定のスピードがついていかず、ネームバリューや資金や販売ルートがあったにもかかわらず失敗してしまった。(3) 地方のレストランチェーンが、成長性が高いと判断して老人への食事宅配ビジネスに参入したが、食事から介護までのトータルサービスを提供する大手企業が全国展開をしたため、あっという間にけ散らされてしまった。 もうお分かりだと思いますが、(1)は「自社と競合する会社に注意が向きすぎて、クライアントという一番大事なものの変化を見過ごした」、(2)は「自社の企業体質とその事業に求められる資質が合っていなかった」、(3)は「市場と自社のみに注意を払い、競合のことを考えていなかった」といった例です。3Cの視点で情報収集し、考えることによって、このような大きなモレや見落としを避けることができます。 業界の魅力度を考察するフレームワーク「5つの力」 アメリカの経済学者マイケル・ポーター氏の編み出した数多くのフレームワークの中に「5つの力」というものがあります。それは業界を取り巻く環境を分析し、業界そのものの収益性を考察するものです。それまでの戦略論が「業界内で競合にどう勝つか」をメインテーマとしていたのに対し、ポーター氏はこのフレームワークで「業界によって、すべての企業がもうかることがあれば、No.1企業でももうからないことがある」ことを明確に示しました。「5つの力」とは以下の5つです(図2)。●業界自体の収益性を考察するフレームワーク「5つの力」 図2 アメリカの経済学者マイケル・ポーター氏の編み出したフレームワーク「5つの力」。ITエキスパートのキャリアを考える際にも応用できる (A)業界内の競合企業 (B)新規参入の脅威 (C)代替品の脅威 (D)売り手の交渉力 (E)買い手の交渉力 ポーター氏は実際にいくつかの業界を調査し、(A)に示した業界内の競争だけでなく、業界を取り巻く(B)~(E)の力を含めた広義の競争環境こそが業界の収益性を決めることを証明したのです。 エンジニアの労働市場をフレームワークで予測する 「5つの力」も「3C」と同様に、キャリアを考える際にも応用できます。例えば、日本におけるITエキスパートの労働市場、ならびに将来起こりうる「リスク」を考えてみましょう。 「(A)業界内の競合企業」に当たるのは、ほかのITエキスパートです。プログラマであれば、より高度なプログラミングをできる人が、プロジェクトマネージャであれば大規模なプロジェクトを円滑に進められる人が高い報酬を獲得できます。ここでの競争についてはあまり多くを語る必要はないでしょう。 「(B)新規参入の脅威」には、新たにITエキスパートを目指す新社会人、あるいはインドや東南アジアのIT人材は、最近急激に存在感を増しており、無視できない存在になりつつあります。実際、アメリカではここ1~2年でシステム開発を国外に発注する流れが急速に進み、IT人材が次々と職を失っており、大きな社会問題にもなっています。日本でもいずれ同様の状況になると思われますが、アメリカと大きく違う点は「日本語の壁」が参入障壁になっていることです。 従って、高度な日本語能力が価値の源泉になる職種、つまり日本企業の顧客と直接やりとりするコンサルタントやプロジェクトマネージャについては、若干の猶予はあるでしょう。しかし、日本語が障害になりにくい職種、例えばプログラマの仕事などは、かなりのスピードで国外に流れていると思われます。これが意味するところはグローバルレベルでの賃金の平準化であり、もともと給与レベル(物価)の高い日本においては、どんなに努力しても給与は上がらず、しかも職を失う可能性すらあるということです。 「(C)代替品の脅威」。IT人材は常にこの脅威にさらされています。メインフレーム1つ取っても分かるように、技術そのものが廃れていけば、それにかかわる人材の仕事はなくなります。「この技術はいつまで安泰なのか」「次はどんな技術がくるのか……」。そういったことにも常にアンテナを張らないと、「ある日突然仕事がなくなった……」ということにもなりかねません。 「(D)売り手の交渉力」でいう「売り手」とは、原料や部品の仕入れ先のことを指します。IT人材でいえば、自らの商品(=技術力)を提供してくれる存在、例えばパッケージソフトのベンダなどに当たるでしょうか。ベンダにとって、自社の製品を売るためにはそれに精通したIT人材が必要ですから、書籍を発行したり、ベンダ資格を作ったりして、知識や技術を供給します。「この技術は誰にも教えません!」ということにはならないので、力関係でいえばIT人材の方が強いはずです。そういう意味では脅威は低いといえます。 「(E)買い手の交渉力」の「買い手」は、IT人材の場合は雇い主(SIerなど)やそのクライアントでしょう。最近ではシステム開発への“値下げ圧力”がどんどん強まっているようで、新聞などでも大手SIerの収益力の低下が取り上げられています。こういう状況を見ると、コスト削減や業務効率化へのニーズはまだまだ存在するものの、力関係でいえばクライアントの方が強いといえるでしょう。 以上、日本のIT人材を取り巻く環境を5つの視点から見てみましたが、残念ながら恵まれた環境とはいいにくい状況かもしれません。ただ、だからといってあきらめたりするのではなく、このような現実を踏まえたうえで自分戦略を立て、実行していくことこそが重要です。そのためにもぜひ、「考える力」を鍛えてください。 課題に適したフレームワークを選択する/つくる ここで解説したような既存のフレームワークは、長い歴史の中で作られてきた知の結晶です。それだけに、うまく使えば大きな威力を発揮します。特にそのビジネスや企業に関する知識・情報が足りず、いわば「土地勘が働かない」ような初期の検討段階では、既存のフレームワークを用いることで、全体像を把握し、最低限考えなければならないポイントをチェックできます。 ただし、それは使おうとしているフレームワークが、目前の課題を分析・検討するのに適したものであることが条件です。例えば、会社内部の組織のあり方を分析するのに「3C」では役に立ちません。さまざまなフレームワークを学ぶ際には、「何を見ようとしているのか、前提となっている考え方は何か」といった点に十分注意を払ってください。 さらに問題解決のステップが進み、分析すべき点が絞られていくに従い、既存のフレームワークだけで進めることは難しくなってきます。そのため、自分自身でその課題を分析・検討するのに適した独自の切り口を見つけることが必要になります(図3)。●問題解決のステップとフレームワーク 図3 既存のフレームワークを適用できないテーマの場合は、独自のフレームワークを見つけ、問題解決に役立てるといいだろう むしろ、そうした「独自の切り口をいかに見つけられるか/つくれるか」で、クライアントが「なるほど!」と感じる提案ができるかどうか、あるいは幸せな人生を勝ち取るための「自分戦略」を構築できるかどうかが決まってきます。そのようなときにこそ、これまで説明してきた論理的、構造的な思考とシステマチックなアプローチが生きてくるのです。
2006.01.05
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第6回 手順を踏んで考える すぐに解決案に飛びつかないように! 私たちは、いつもやっていることや簡単な課題については、あまり深く考えずにどうするかを決め、行動に移すことができます。しかし、初めて出合う状況や少し複雑な問題になると、とたんに判断が難しくなります。初めての転職などはその典型です。現状のままではいけないと思いつつ、何を根拠にどう判断するのか、そもそも何を考えればいいのかがよく分からず、具体的なアクションを取れないでいる人も多いようです。 また、少し考えて良さそうな案が見つかると、すぐ飛びついてしまうこともあります。運が良ければうまくいくかもしれませんが、いざ転職してみたら仕事の進め方が自分に合わなかったとか、将来やりたいことに対して遠回りな選択だったということもあるのではないでしょうか。 「やってみなければ分からない」というのはそのとおりですし、考えるだけで行動しないよりはマシですが、「やってみなくても考えれば分かること」をしっかり押さえたうえで行動するのがベストでしょう。 では、できるだけ効率的に、見落としなく考えるためにはどうすればよいのでしょうか。一言でいえば「手順を踏んで考える」。すぐに答えに飛びつくのではなく、正しいステップを踏んで、システマチックな方法で考えていきましょう。 課題解決のステップ 最初にすべきことは、「何が課題か」を正確に定義することです。例えば「いまの会社の給与に不満がある」とします。本当の課題は何か。「いまの会社の給与レベルが低い」ことでいいのでしょうか。だとすると、「給与レベルの高い会社に転職する」ことが解決策になるのでしょうか……。 もしかしたら、もっとやりがいのある仕事や、将来のキャリア形成に有効な経験が積めるような環境があるのならば、いまより安い給料でもそちらに転職する価値があるかもしれません。このように「本当の問題は何か、どのような状態になれば問題がなくなったといえるのかを考え、具体的に定義する」ことが必要です。 次に、明らかになった課題を要素に分解します。このとき注意すべきことは、「全体をモレなく把握する」ことと、「構造的に考える:全体像を見極め、構成要素を整理する(第4回にて詳述)」ことです。そして全体を眺めたうえで、本質的な課題であるものに絞って、さらに詳しく検討します。 問題の本質が明らかになったら、次はそれを解決する方法を考えます。解決策はできるだけ多くリストアップします。例えば、キャリア相談を受けていると、転職を考えている方の多くが「現勤務先でのキャリアチェンジ(異動申請など)」や「数年後の転職に備えた現業での実績づくり」などの代替案を検討していないことに驚きます。 人材紹介に携わる者がいうのも変な話ですが、キャリア上の課題を解決する方法は転職だけではありません。できるだけ広く解決策を考えたうえで結論を出すことが大切です。 さらに、「いくつかの解決オプションの中からどれを選べばいいのか」について説明します。なんとなく選んではいけません。時期やコスト、実現可能性など、いくつかの評価軸とそれぞれの重みづけを決めます。●課題解決のステップ 図1 やみくもに考えたり、目先の答えに飛びつくのではなく、手順を踏んで考える。 軸に沿って各案を評価し、最善の案が決まったら、最後に課題解決のための具体的な実行計画を作成します。「どういう行動をいつまでにするのか」を明確に定め、さらにチェックポイントをいくつか配置しておくのです。同時に、もしうまくいかなかったときにどうすればいいのかも考えておきます。 全体をとらえて要素に分解する 「課題を分析する」「解決策を立案する」ステップでは、「全体をモレなく、かつ構造的に把握する」ことが重要です。これをシステマチックに行う手法として「ロジックツリー」があります。これは、1つの主要概念(課題・解決策など)を、論理的にその構成要素に分解し、さらにそれを同じように分解していく手法で、結果的に次々と枝分かれして木のような形になっていきます。 ロジックツリーの詳細については『MBAクリティカル・シンキング』(グロービス・マネジメント・インスティテュート著、ダイヤモンド社刊)など多くで紹介されているのでここでは割愛します。一例として、ほとんどの方が強い関心を持つ「収入を増やすには……」という課題に対する解決策を考えてみましょう(図2)。 例を見て気付いた方もいるかもしれませんが、構成要素に分解する際にポイントとなるのは、「モレなくダブリなく分解する」(MECE=Mutually Exclusive、Collectively Exhaustive)ということです。このルールを守れば、いろいろな要素が一緒になって混乱してしまうことを避けられます。●「ロジックツリー」を使った解決策の立案(例)サラリーマンが収入を増やす方法とは…… 図2 絞り込まれた課題について、その解決策をシステマチックに広がりをもって出していく また、半ば“機械的”に、「ほかに見落としはないか」「ほかの解決策はないか」という問い掛けを自分自身に行うことで、全体が網羅され、漠然と考えていたときには気付かなかった課題の構造や解決策を考えることができます。 この分析をうまく行うには、いくつかコツがあります。1つは要素の分解をあまり細かくしないこと。例えば日本での営業戦略を立案する場合、すべての都道府県に分けて考えるのは、確かにモレもダブりもありませんが、実際には細かすぎて意味のある解釈や打ち手が引き出せなくなります。 人間が一度に認識できる概念は4つ程度といわれており、その程度の分類で意味を持つ枠組みを探すべきです。例えば、「昨年の販売実績を上回っている県/下回っている県」のように分解し、さらにそれぞれ、「シェア20%以上の県/未満の県」にブレークダウンする方が、打ち手を考えるうえでは意味があるでしょう。 また「モレなくダブリなく」という原則は重視すべきですが、あまり厳密に考えすぎると分けられなくなります。ビジネスの現場では、さまざまな要素が複雑に絡み合っており、完全に分けることが難しい場合が多いものです。むしろ、実際の解決策や行動に結び付きやすい、適度な枠組み(切り口)を見つけることの方が重要です。 さらに、まずは全体をとらえることに注意すべきですが、すべての部分を同じように細かく分析する必要はありません。全体を見渡したうえで、ある程度の情報が得られたら、仮説を立てて重要な部分を選択し、そこをさらに絞り込んで検討していきます。後々、その仮説が間違いであると分かるかもしれませんが、すでに全体のリストアップが済み、構造が分かっていますので、やり直すにしてもそれほどの時間はかかりません。 急がば回れ 「ずいぶん回りクドいやり方だ」と感じるかもしれませんが、それだけのメリットはあります。特に見落としやモレがなくなります。仕事でプレゼンテーションするとき、「この問題はどうなるのか?」と聞かれても「考えていませんでした」ということが格段に少なくなります。 また、分析が間違っていたり、実行案がうまくいかなかったとしても、考えた過程が明確になっていますので、「どの仮説が間違っていたのか」「何が足りなかったのか」といったことが容易に発見でき、新たな対応策を素早く取ることができます。 このようなアプローチは、キャリアなどを考えるときだけでなく、集団での意思決定や顧客との話し合いなどの際にも、特に威力を発揮します。会議などでは、内容に対する反対以上に、検討の進め方や、決議の採り方などに対する疑問、反対が多いともいわれています。検討のプロセスや全体像を明快に示すことで、内容に対する理解度が向上するのはもちろん、「先にこちらを検討すべきだ」「そもそも最初の目的がおかしい」など意思決定の手続き上の疑念がなくなり、納得度を高めることができます。 今回は課題をシステマチックに考えるための手順と手法を紹介しましたが、実際には自分で適切な「枠組み」を考えるのは困難です。そこで有効なのが、ゼロから「枠組み」を考えるのではなく、すでに広く知られている「枠組み=フレームワーク」を活用することです。次回はそれらのフレームワークについて解説したいと思います。
2006.01.05
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第5回 構造化:個別要素の重要度に着目する前回の記事は、「物事の全体像を見極めて構成要素を整理すること」(=構造化)について解説しました。構成要素の関係を整理したら、次はどの要素が重要なのか、どの要素なら無視しても大丈夫なのか、その「ボリューム」を素早く見分ける必要があります。それが加わることで、単に定性的に構造化した場合に比べ、問題解決の難易度や方向性が分かりやすくなります。開発現場のトラブル処理などに活用してください。 全体像を見極めてから細部に目を配る 極論すれば、あらゆる事象はすべて前回紹介したような構造図に整理できます。しかし、あまりに細かい情報を厳密に整理しようとすることは、本来の目的を考えるとむしろ逆効果になります。 なぜなら、それは複雑な事象を複雑なままとらえることになってしまい、問題解決のヒントを得にくくなったり、ささいなことに時間を費やす羽目に陥ってしまうからです。物事を構造的にとらえる意義は、本来、全体像の見通しをよくすることにありますから、その目的に立ち返り、「厳密性にこだわり過ぎることはむしろマイナス」と考えた方がいいでしょう。ある程度、ささいな部分は割り切り、全体の構造を大まかに把握することが肝要です。 さらに、全体の構造を大まかに把握した後は、どのあたりが重要なのかを見分ける必要があります。そのための最も基本的な思考スタンスが、「できる限り定量的に、ボリューム感をもって物事をとらえる」ということです。 「割り箸論争」が明らかにしたこと 定量的に状況を把握することができないと混乱を招くことがあります。例えば、かつて新聞紙上を賑わせた「割り箸論争」があります。これは、わが国独自の割り箸文化が南国の森林破壊を助長しているのではないか、というものでした。当時は常に自分の箸を持ち歩く「マイ箸」なる習慣がマスコミに多く取り上げられたりしたので、覚えている方も多いと思います。 割り箸反対派の主張は、日本で消費される割り箸は木材使用量でいえば住宅数万戸に相当する、というものでした。それだけを聞けば「大変な量だ!」と感じてしまいますが、「日本全体の木材消費量」に占める割合が小さな住宅を比較対象にしているので、相対的に大きく感じるにすぎません。 この論争は結局、「割り箸に使われている木材の量は輸入木材の全体量に比較するとコンマ数%と微々たるものである。加えて、ほかに用途のない廃材を使っているのだから、むしろ賞賛されるべきであり、森林破壊につなげるのは短絡的である」との意見が出されるに及び、議論は収束していきました。 もちろん、常に環境に配慮する姿勢は賞賛されるべきものですし、それ自体が悪いわけではありません。ただ、本来の目的に立ち返ったときに「どの部分に手を付けるのが最もインパクトが大きいか」を先に把握しておくことの重要性は分かっていただけたかと思います。 定量的に考えるメリット・デメリット もう1つ、今度はビジネスの例を考えてみましょう。 A社の主力商品が不調なことに対して、消費者の嗜好の変化と、流通チャネルの衰退の相乗効果によるものだという定性的な分析がなされたとします。しかしこのままでは、商品改良とチャネルへのテコ入れ、どちらから手を付ければよいか分かりません。 最悪の場合、流通部門は「商品企画部門が悪い(=消費者の嗜好をとらえきれていない)」と主張し、商品企画部門は「流通部門が悪い(=チャネルを維持できていない)」と反論する……といった責任のなすり合いが行われてしまいます。 このような場合、図1のように2つの要素をある程度定量的に把握できれば、どちらの問題がよりインパクトが大きいか、どちらから着手するのが効果的か、ということがかなり明確になります。●定量的な把握により本質が鮮明になる 図1 定量的な把握により本質が鮮明になる。このケースでは、製品支持率とチャネルシェアを比較すると、チャネルに問題があるのが一目瞭然 このように物事を定量的にとらえることのメリットは、特に組織として動く場合に大きくなります。なぜなら、組織で動く場合には、各人の“意識のベクトル”が合っていること、そして各人の“納得度の高さ”がモチベーションに結び付いていることが重要であるからです。定量的な状況把握がしっかりしていると、「共通の指標で物事を見ることによって情報判断・解釈の個人差が減る」、あるいは「情報が伝わっていく過程で誤解される可能性が減る」ことになります。 その一方で、「数字の独り歩き」など、なまじ定量的データがあるが故に、そこで思考が停止してしまい、「本当にその定量的情報が状況を“適切に”表しているのか」を考えずに行動してしまうという現象もしばしば観察されます。冒頭の割り箸論争がよい例ですね。定量的な把握は、状況の理解を大きく助けるものの、それが絶対的真理を表すものではありません。比較対象を間違えると意思決定に大きく影響するということを常に念頭に置く必要があります。 全体を部分に分け、ビジュアルで表現する 物事を構造化し、定量的に把握する方法はいろいろありますが、最も基本となる考え方は「全体を部分(パーツ)に分け、そのボリューム感を見る」というものです。ボリューム感を見る際には、単に数字で表すのではなく、チャート化して視覚に訴えると効果的です。●個別要素の重要度を見極める:ある家電製品のコスト構造推移 図2 構造を定量化するだけでなく、それをビジュアルで表現すると、重要度が一目瞭然となる 図2の例は、ある家電製品事業において、「製造」の重要度が相対的に減少し、「マーケティング」の重要度が相対的に向上した様子を、コスト構造を見ることによって示したものです。よく「製品ありきからマーケティング主導へ」といったことがいわれていますが、観念的に話をするだけでは、なんとなくしか理解できません。 それを、こんなふうに定量的に(そしてビジュアルに)表現できれば、さまざまな対策を立てたり相手を説得したりするうえで高い効果が得られるでしょう。 この「全体を部分(パーツ)に分け、そのボリューム感を見る」という作業をよりシステマチックに行うのが、コンサルティング会社でよく用いられる「モレ分析」と呼ばれる手法です。これは、全体をパーツにブレークダウンする際に、何らかの意味ある流れ・プロセスに沿って行うことで、それが「示唆するもの」や「意味合い」を引き出しやすくするものです(図3)。●モレ分析の考え方 図3 全体をパーツにブレークダウンする際に、何らかの意味ある流れ・プロセスに沿って行うことで、それが示唆するものや意味合いを引き出しやすくなる 「モレ分析」で問題解決の難易度や方向性が分かる 応用例として、「自社のシェアをどうすれば上げられるか」という問題を考えてみましょう。顧客が自社の商品を買わない理由はいくつか考えられます。図4は、それを「顧客が商品購買に至るプロセス」という流れで切り分け、どこに根本的な原因(モレ)があるかを図示したものです。●モレ分析の応用例(1):顧客の購買に至るプロセスを意識してモレ分析 図4 システマチックに「全体」を「部分」に切り分けることで、重要なポイントが明確になる ケースAでは、その商品を知らない顧客が多いことが問題ですから、広告投資を増加させるという手法が有効そうだと推定できます。一方、ケースBでは、知っていてそれなりに興味もあるけれど買いたいとまでは思わない顧客が多いことが問題ですから、製品仕様を改良する、あるいは顧客の認知が不十分な製品特性をもっと積極的にコミュニケーションすべく広告表現を変えたり、セールストークを変える、という手法が導き出されます。●モレ分析の応用例(2):市場のカバー率に着目してモレ分析 図5 モレ分析によって問題解決の難易度や方向性が見えてくる 図5は、同じ問題に関して、まったく視点を変えて、「市場をどれだけカバーしているか」「カバーしている範囲でどれだけの勝率を挙げているか」の流れでブレークダウンしたものです。ケースCであれば、もっと市場のカバー率を上げることが課題になるでしょうし、ケースDであれば、競合に勝つべく商品や広告やチャネル政策を変更する、あるいは値下げを行う、などの手法が必要になります。 このように、ボリューム感をもって構造的に物事を把握することで、単に定性的に見た場合に比べ、問題解決の難易度や、問題解決の方向性が分かりやすくなるのです。
2006.01.05
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第4回 構造化:全体像を見極め、構成要素を整理する 構造化とは何か ・CASE1……一生懸命仕事をしていたつもりだったが、一部の問題に時間を使いすぎてしまい、納期までに十分なアウトプットが出せなかった。・CASE2……発生したトラブルに適切に対処したつもりだったのに、真の原因を見落としており、すぐに同じ問題が再発してしまった。・CASE3……分からないことがあったので詳しい人に聞いてみたが、いくら説明を受けてもいまひとつピンとこない。 皆さんも、こんな経験が一度はありませんか。 原因はいくつか考えられると思いますが、少なくとも今回説明する「物事を構造化する」という考え方を押さえておけば、この手の失敗はかなり回避できるでしょう。なお、ここでいう「構造化された状態」とは、(1)全体を把握したうえで、その構成要素についても明らかになっている、(2)構成要素間の関係が分かりやすく整理されている、の2つの意味を含みます●構造化とは何か 図1 たまたま目についたことだけではなく、全体を見極め、要素間の関係を整理したうえで考える(出典:『MBAクリティカル・シンキング』 グロービス・マネジメント・インスティテュート著、ダイヤモンド社刊) この「物事を構造化する」という概念は、一般的にあまりなじみがないかもしれませんが、ITエキスパートの皆さんならイメージしやすいと思います。例えばデータベースなら、(1)データベースの要件がきちんと定義されていて、エンティティやその構成要素が明確になっている、(2)エンティティ間の関係がER図((Entity Relation Diagram))などによって明確になっているといったところかと思います。あるいは、プログラムにおけるフローチャートをイメージしてもいいですね。 いずれにせよ、構造化には下記のような3つのメリットがあります。ITエキスパートは普段から「構造化」を活用している方が多いので、実感していただけると思います。☆構造化「3つのメリット」 ・全体が把握できるため、漏れやダブりを回避しやすい・要素間の関係が明らかなので、修正や問題解決の際に的確な対処ができる・情報共有しやすい 構造化はビジネス面でも役立つ さて、ビジネスにおいて「構造化する」という思考技術は、2つの局面で役立ちます。1つは問題解決、もう1つはコミュニケーションの局面です。ここでいう問題解決とは、単に「トラブルを解消する」という意味ではなく、「課題を克服する」というものです。従って、「現状ではあまり問題はないが、もっと良くできるはずだ。どうしたらよいか」といった状況も問題解決に含めています。 問題解決の際は、最初に問題を取り巻く背景を構造的にとらえる必要があります。これができれば、そこから問題解決の大きなヒントが得られることになります。その構造を踏まえて文章の論理展開に落とし込むことによって、コミュニケーション、特に説得に効果を発揮します。状況を構造的に把握できないままの行動や主張は、効果や説得力がなくなり、誤解を生んで思いがけない“負の副産物”を生み出したりもします。容易に反論を招く結果にもなります。 特に、ITエキスパートのキャリアステップとして有力なコンサルタント職を目指すなら、ほかの人たちとは一味違う状況分析・提案・説得をできるかどうかが鍵になります。そこで次のセクションでは、コンサルタントの仕事を例に「事象の構造化」を解説します。 事象を構造化する ビジネスにおける問題やトラブルは突発的、個人的なものではなく、構造的なものによって起きることが多いといえます。従って、対象としている事象の本質的なメカニズム・構造を理解しておくことで、どこを改善すればより大きな効果が得られそうか、どこから手を付ければ「ドミノ倒し」的に効率良く問題を解消できるのかが見えてきます。 さらに、何らかのアクションをと取ったときに、どのような副作用が発生するのかなども推定できます。そのためには、ある特定の状況について、独立した事象、表層的な事象に目を奪われるのではなく、以下の3つのポイントを明らかにする必要があります。なお【3】は、【1】や【2】とは次元が違うテーマであることにご注意ください。 【1】 全体としての事象間の関係性(特定時点でとらえた関係性) 【2】 因果のメカニズム(時間軸でとらえた関係性) 【3】 個別要素の重要度(関係性の「定量感」)【1】 全体としての事象間の関係性 これは、ある事象や人物を取り巻く状況を特定の時点で過不足なくとらえ、互いの関係(力関係、影響力など)を分かりやすく示すことを指します。典型的な例は人物間の相関図です。 優秀な交渉家は、交渉に臨む際、争点の数や質に加え、「相手の組織内での位置、決定権、関係者間の力関係、そのほかの関心事」を一覧できるマップを作ってから仕事を始めるといわれています。特に、BtoB(企業間)ビジネスにおいては一顧客の意思決定が収益を大きく左右するため、このスキルは重要です。 例えば、クライアント側の担当者が変わった場合、仕事の進め方を変える必要があるかもしれないので、あらためて人間関係を整理して対策を考えてみるとよいでしょう。●人物相関図を例に事象を構造化する 図2 クライアントの担当窓口が変わった。今後、新担当A氏と仕事をする上で何に注意すべきか? 優秀なコンサルタントは、コンサルティング・ワークだけでなく、形が見えず結果も不明確なコンサルティング・サービスをいかに売るかにも長けているものです。事実、コンサルティングファームで昇進するにはこの力が不可欠です。また、コンサルティング・ワークにおいても、クライアントやチームメンバーをうまくマネージして結果を出すにはとても有益なアプローチといえるでしょう。【2】因果のメカニズム これは、因果が「Chicken-Egg」的で相互依存性が存在することの多いビジネス環境において、観察される事象の因果構造を明らかにするものです。これもコンサルティングファームの事例で考えます。例えば、あるクライアント企業の事業部で以下のような事象(問題点)が表層的に観察されたとしましょう。 (1)……地方の営業成績が良くない (2)……地方は顧客が分散しており販売効率が低い (3)……営業担当者が地方に行きたがらない (4)……地方の営業担当者はなかなか歩合給を稼ぎにくい●問題の因果関係を把握する 図3 表面的に見えている要素だけでなく、隠れた要素にも注意して因果関係を想定する ここで、物事を構造的にとらえることができないコンサルタントと、それができるコンサルタントの思考パターンを比較してみましょう。☆構造的に考えられないコンサルタント 「大きな問題はこの4つだな。さて、それぞれの問題に対して手を打つ必要がある。どこから手を付けようかな。最終的にものをいうのは営業成績だから、(1)の問題を中心に考えるべきだろう。(3)と絡めると、これは結局、優秀な営業マンを優先的に地方に配属すべきということだろう。さっそく、優秀な営業マンを何人かピックアップして地方に配属するように提言しよう。地方は嫌とか何とかいう奴もいるだろうが、そこは会社のためということで説得させるように仕向けてみるか」 ☆構造的に考えられるコンサルタント 「(1)から(4)のことはまったく独立して起きている問題ではなく、根本のところでつながりがある。おそらくこのような形に整理できるだろう(図3)。となると、まず営業マンの評価・インセンティブのスキームを見直すことから考えるべきだ。地方については都市よりも有利な歩合給制度を導入することを提案しようか。あるいは、いっそのこと、地方では代理店の活用をもっと積極的に図るべきだと提案する必要があるかもしれない」 【3】個別要素の重要度 世の中で発生している出来事は、極論すればすべて複雑な関係図・因果関係図に落とし込めるわけですが、複雑な関係を複雑なままとらえていては、何らかの対策が必要なときに、どこから手を付けていいのか分からなくなります。厳密性にこだわり過ぎることはむしろマイナスと考え、ある程度割り切って、複雑な構造の幹の部分を浮き彫りにすることが肝要です。 そのためには、どの要素が重要なのか、どの要素なら無視しても大丈夫なのか、その「量感」を素早く見分けるセンスが必要です。量感が加わることで、単に定性的に構造化した場合に比べ、問題解決の難易度や、問題解決の方向性が分かりやすくなります。これはとても重要な概念ですので、次回にもう少し詳しく取り上げたいと思います。
2006.01.05
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第3回 論理展開の基礎は「演繹法」と「帰納法」前回までは、ロジック以前の問題、つまり「目的や前提を明確にする」「何を考えるべきかをまず考える」ことなどを解説してきました。今回からは、いよいよロジックそのものの説明に入りたいと思います。 論理展開は説得力に大きな影響を与える 人の話を聞いていて、「何か納得がいかない」「理解しにくい」というときは、たいてい筋道が通っていない、すなわち論理展開がうまくいっていない場合です。論理展開とは、簡単にいえば、複数の事実やメッセージとそれらを結び付ける「理屈」のことです。これがうまく構成されていないと「話が腑(ふ)に落ちない」という現象を引き起こします。 優れた論理展開は、ビジネスにおけるあらゆるコミュニケーションで重要とされる要素です。特にIT人材のキャリアステップとして有効といわれるコンサルタントやプロジェクトマネージャにとっては、クライアントに自分の提案を納得してもらうためにも、プロジェクトメンバーに効率よく動いてもらうためにも必須の能力といえます。 もちろん、説得力のある論理展開とは、いいたいことをしっかり伝えるだけではなく、誠実なイメージや信頼感を増すことにもつながります。次の例を見てみましょう。 ある中堅企業から依頼された顧客管理システムのリニューアル。開始から1カ月半が経過し、プロジェクトはちょうど中間地点に入った。すでに要件定義と基本設計を終え、今週から開発フェイズに入ったところ。そんなとき、プロマネであるA氏は突然顧客に呼び出され、納期を半月早めるように依頼された。プロジェクトは残り1カ月半、ただでさえ厳しいスケジュールなのに……。【対応例~その1】 A氏 「申し訳ありませんが、半月も納期を早めるのは正直無理です」 顧客 「なぜですか」 A氏 「最初に決めたスケジュールで進めていますから」 顧客 「ですから、そこを何とか……」 A氏 「そういわれても、ただでさえ少ない人員でやっていますので」 顧客 「では人を増やしましょう。お金なら多少上乗せしてもいいです」 A氏 「とにかく、いまから変更するのは無理です。申し訳ありません」 【対応例~その2】 A氏 「申し訳ありませんが、半月も納期を早めるのは正直無理です」 顧客 「なぜですか」 A氏 「特にクリティカルな問題であるのは、社外パートナーとの調整が難しいことと、ハードウェアの調達が間に合わないことです。今回、開発フェイズのプログラミングは社外パートナーに委託しているのですが、ほかのプロジェクトも同時に抱えていますので、いまのスケジュールでもギリギリです。 一方、ハードウェアの納品時期を考えますと、半月も早めると実機テストがまったく行えないことになります。この顧客管理システムがダウンすると御社のコールセンター業務ができなくなってしまいインパクトが大きいので、十分なテストを行わずにカットオーバーするのはリスクが高すぎます」 対応例1を聞いた顧客は、「なぜ駄目なのか」、また「受け入れられる可能性があるのか否か」が分からないまま、このシステム会社に不満を抱くことになるでしょう。今後何らかのシステム開発案件があるとしても、受注の可能性は減るかもしれません。 反対に、対応例2を聞いた顧客は、その瞬間は「融通が利かないものだなあ」と思うかもしれませんが、決してこのシステム会社およびプロマネに対して悪いイメージは持たないでしょう。少なくとも対応例1の場合よりは、お互いに前向きな関係が築けるはずです。 企業は継続して事業を行い、ビジネス・パーソンも何十年もの間、継続的に仕事をします。十分な論理展開ができるか否かは、長い目で見れば大きな違いになってくるのです。 論理展開の基礎:演繹法と帰納法 ビジネスにおいて必要な論理展開の方法は、基本的には2つしかありません。1つは演繹(えんえき)的な論理展開、もう1つは帰納的な論理展開です。この2つの方法さえマスターし、それらを適切に組み合わせられれば、少なくとも「筋道の通った主張」になるはずです。 ただし、どんなに筋道が通っていても、枝葉末節に終始しすぎたり、より重要なポイントを見落としていては説得力に欠けてしまいます。この点については、別途「論理の構造化」の際に説明するとして、今回はまず、基本的な論理展開の方法を押さえましょう。 演繹的な論理展開とは、すでに得ている一般論(もしくは信ずる価値観)をある事象に当てはめて、その意味するところを「必然的に」引き出す、いわゆる三段論法的な論理展開のことです。すでに知っている知見と新しい情報を組み合わせて結論を出すプロセスは最も自然な思考方法なので、うまく相手の「つぼ」にはまれば非常に大きな説得力を持ちます。例としては、以下のようなものです。☆演繹的論理展開 ・一般論 「ソフトの原著作者の権利は保護されるべきである」・ 事象 「彼は違法コピーの常習者である」 ↓ 演繹的論理展開☆必然的に導き出される結論 「彼の行為は許せない」 一方、帰納的な論理展開とは、観察されるいくつかの事象の共通点に着目し、一般論(共通して見られる法則性)を導き出すという考え方です。相手が一般論に同意しない場合やそもそも一般論がないようなときには、この帰納的な論証による裏付けが重要になります。☆帰納的論理展開~その1 ・観察結果1 「A社は年功序列制を廃止して活気が戻った」・観察結果2 「B社は年功序列制を廃止して業績が上向いた」・観察結果3 「C社は年功序列制を廃止して学生の評価が上がった」 ↓ 帰納的論理展開☆結論⇒一般論 「年功序列の廃止がさまざまなところで成果を挙げつつある」 ☆帰納的論理展開~その2 ・観察結果1 「SEのX氏はコンサルタントに転職して年収が30%アップした」・観察結果2 「SEのY氏はプロマネを任されて年収が15%アップした」・観察結果3 「SEのZ氏はWebプロデューサーになって年収が20%アップした」 ↓ 帰納的論理展開☆結論⇒一般論 「SEの経験を生かしたキャリアチェンジで年収がアップする」 論理展開をチャート化してみる さて、演繹法と帰納法の違いがお分かりいただけたでしょうか。日ごろの会話でも、特に演繹的論法や帰納的論法だということを意識せずに、無意識に組み合わせて使っているはずです。以下の例を見てみましょう。先ほどの「SEのX・Y・Z氏」の同僚2人(N・M氏)が飲んでいる席での会話です。☆日常生活でよく見かける演繹法と帰納法 同僚N 「いつも遅くまで働いてるみたいで大変だね」 同僚M 「本当に大変みたい。無理のないスケジュールで順調に進むプロジェクトというのがあったら見てみたいよ。しかも給料はここ2年間ぜんぜん上がらないし、俺もそろそろ転職しようかと思ってるんだよね」同僚N 「そうなんだ。でも転職したって給料が上がるとは限らないよ」 同僚M 「でもな、こないだXさんがコンサルタントに転職して3割くらい給料がアップしたと話してましたよ。Yさんはプロマネとなり15%も年収がアップしたし、ZさんもWebプロデューサーになって20%も年収がアップしたらしい」同僚N 「彼ら3人の話はいいとして、君にコンサルタントの仕事が務まるの?」同僚M 「それがよく考えてみると、あの3人はみんなSEの経験と自分の強みをうまく組み合わせて年収をアップさせているんだよ。Xさんの課題分析と要件定義には定評があったし、Yさんは計画立ててきっちり物事を進めるのが得意だ。Zさんはもともとマーケティングに興味があってビジネススクールとかで勉強してたから、マーケティング戦略も踏まえたWebプロデュースということで評価されているらしい」同僚N 「なるほどね。じゃあ、君の強みを転職に生かせればいいわけだな。何かあるの?」同僚M 「実はあるんだよね(笑)。営業マンは技術のことがよく分かっていないから、僕が客先に同行していろいろ説明することがあるんだよ。そんなとき、顧客は営業マンでなく僕に相談してくることが多いんだよね。最近は商談もやっているし、これが結構、性に合っているんだよ」同僚N 「なるほどね。技術も分かるし営業もできるという話か」同僚M 「そうなんだよ。だったら、斬新な技術で勝負しているソフトウェア系のベンチャーにでも転職すれば、技術営業として重宝されるんじゃないかと思うんだ。顧客の要望を開発にフィードバックすることもできるから、商品開発にも貢献できるし」同僚N 「へー、いいじゃない! 応援するよ、頑張れ!」 上記の会話を論理の構造で表すと、図表1のようになります。説得力の高い論理展開は、このような構造が過不足なく出来上がっているものです。 ●論理展開をブレークダウンする 図表1 日常会話の中でも、演繹的論法や帰納的論法を意識せずに、無意識に組み合わせて使っていることが多い 論理展開における6つの“落とし穴” 演繹的論理展開、帰納的論理展開とも、原理的には特に難しいものではありません。しかしこれらの論法を使いこなすには、間違いやすい点を知り、それに気を付けなければなりません。ここでは論理展開の場面でよく陥りやすい“落とし穴”を6つご紹介します。 1つ目は「間違った情報」です。どれだけ論理展開が的確でも、その論理展開に組み込まれた情報が間違っていると、導かれる結論も当然間違ったもの、あるいは説得力のないものになります。 2つ目は、論理の飛躍です。例えば「日本の官僚は頭が固い。だから日本に未来はない」などの主張は、レトリックとしては説得力がありますが、「仮に官僚の頭が固いことは同意するにせよ、だからといって『未来はない』はいい過ぎではないか」と問われた場合、答えに窮します。「ある情報を組み合わせたとき、どこまでならいい切って大丈夫か」を見極めるセンスが必要です。 3つ目は、論理展開の省略に伴うミスコミュニケーションです。たとえば、人事部長が「A君は英語が堪能らしいから、ぜひ採用しよう」といったとします。このとき、人事部長の頭の中にある「省略された」前提は何でしょうか。「わが社は海外展開を加速するから英語を話せる人材が必要」かもしれませんし、「英語ができる学生には優秀なのが多い」かもしれません。自分では当たり前のことと思っていても、他人を納得させるときには、細かな説明が必要となる場面は少なくありません。 4つ目は、演繹的論法における、一般論と事象のミスマッチです。これは、本来結び付かない一般論と事象を強引に結び付け、間違った結論を誘導してしまうという落とし穴です。ある状況にしか当てはまらない論理を別の状況に安易に適用したり、途中で言葉の定義を変えた場合などに発生します。 5つ目は、帰納的論法における「不適切なサンプリング」です。これは、不十分な数のサンプル、あるいは母集団を反映しないサンプルから、不用意に一般論を導いてしまうというものです。 最後は、マクロ的視野の欠如です。例えば、リサイクル活動の是非について議論するときに、そのコストやリサイクル活動に伴う環境汚染を見落としてしまうというものです。このようなポイントに注意しておかないと、いくら演繹的・帰納的に成立した論理でも説得力のないものになってしまいますので、注意してください。
2006.01.04
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第2回 自分戦略を考えるためにまずやるべきこと 「目的や前提を明確にする」 前回は「目的や前提を明確にする」ことの大切さについてお伝えしました。 記事の中で紹介した若手プログラマの例では、単純に「この資格を取るべきか?」を考えるのではなく、あらためて目的を問い直したうえで、「この資格を取ることが、考え得る多くの手段の中で最も目的に合致しており、かつ取得が可能で、コストに見合うと判断できるのなら取るべき」という思考プロセスが必要でした。 ここで、彼は新たな問題に直面することになります。・自分の「目的」とは何なのか?・目的を達成するためにどんな手段が考え得るのか?・何が有効な手段かを決める際の判断基準は何なのか?・どういう指針に従って今後のキャリアを考えればいいのか? これらの問いに答えるための指針、すなわち「自分戦略」を明確にしておけば、より目的に合致した判断を行うことができます。 従ってここからは、「自分戦略を作る」という目的を掲げ、それについて考えていきたいと思います。 「目的を定義し具体化する」 これは「目的や前提を明確にする」の一部ともいえるのですが、漠然と「分かったつもり」になっていることを、あらためて「定義して具体化する」ことは意外と難しく、つい怠ってしまいますので、あえて入れました。 「自分戦略を作る」という目的を掲げたら、次は「自分戦略」という言葉を定義して具体化しなければなりません。では、このつかみどころのない言葉をどのように具体化すればよいのでしょうか。 そもそも「戦略とは何か?」――この問いに明確に答えられる人は少ないと思います。戦略という言葉は、「普段よく使っているけど、それが何かと聞かれるとうまく説明できない言葉」の代表格です。みんなが当然のように戦略、戦略と唱えるので、その意味や定義を改あらためて問わずに、使用してしまいがちです。 ここで自分戦略という言葉を考えるに当たり、まずは経営戦略の定義を流用するところから始めたいと思います。『新版MBAマネジメント・ブック』(ダイヤモンド社)によると、戦略とは「企業または事業の目的を達成するために、持続的な競争優位を確立すべく構造化されたアクション・プラン」と定義されています。これに従えば、自分戦略とは「自分自身の目的を達成するために、持続的な競争優位を確立すべく構造化されたアクション・プラン」といえるでしょう。 「自分戦略」とは? 自分戦略とは「自分自身の目的を達成するために、持続的な競争優位を確立すべく構造化されたアクション・プラン」と定義しました。ただこれではまだ抽象的なので、さらに具体的に見ていきましょう。 【自分自身の目的】 これは「ビジョン」といい換えてもいいでしょう。ビジョンというと、夢や目標、成し遂げたいこと、などの意味があると思いますが、では、どこまで考えればビジョンと呼べるものになるのでしょうか? 理想的なのは「その状態を映像ではっきりと思い浮かべることができる」レベルです。「vision」とはもともと映像を意味する言葉。そこまでイメージできて初めて、ビジョンに向かって努力するパワーもわいてきます。いろいろな場面を想像してみて、心からそうなりたいと思えるかどうかを日々考えることで、最初はおぼろげだったビジョンがだんだんはっきりしてくると思います。 【持続的な競争優位】 競争優位とは、要するに「競争に勝てる理由」のこと。デルコンピュータのサプライチェーン・マネジメントやシャープの液晶技術、トヨタ自動車のカイゼンなど、それによって他社に差をつけられる要素のことです。IT人材でいえば、「JavaやLinuxなど特定の技術に秀でている」「見事にプロジェクトをマネジメントできる」「技術と経営の両方を理解している」などが挙げられます。 ただし、「持続的な」とあるように、すぐに通用しなくなるような優位性では意味がありません。例えば、エンジニアにとっての「Javaを使ったWebページが作れる」というウリを考えてみましょう。1990年代後半にはこれでも十分優位性がありました。企業からも重宝され、苦労せずに仕事がある状態でした。 しかし、状況はすぐに変化しました。Javaは将来性の高いインターネットビジネスの分野で中核技術になるという認識が広まり、Java関連の講座が次々と開催され、気が付くと「Javaを使ってWebページを作れる人」が数多く生まれました。 これを経営戦略用語で表現すれば、「有望市場への新規参入が相次いだ結果、競争が激化した」状態です。その結果、簡単に習得できるプログラミングの基礎技術は持続的な競争優位になり得ないことが分かったので、より高度な応用技術や、プロジェクト・マネジメント力など新たな競争優位の源泉が模索されているというのがいまの状況でしょう。【構造化されたアクション・プラン】 アクション・プランとは、取るべき行動を具体的に記述した計画のこと。方針でもスローガンでもなく、あくまで具体的な行動に落とし込むことが重要です。せっかく貴重な時間を使っていろいろ考えても、それによって現実を変えられなければまったく意味がありません。現実を変えられるのは、ただアクションによってのみなのです。 では「構造化された」とはどういう意味でしょうか。一言でいえば「全体像を見極めたうえで、要素間の関係が分かりやすく整理された状態」のことです。 例えば、IT人材がキャリアアップのためにできることはたくさんあります。IT技術の講習会、ビジネススクール、英会話、あるいは異動、転職、プロジェクトアサイン、専門書、技術雑誌……など挙げればキリがありません。実際に、読者の中にはこれらの手段を検討・実行されている方は多いでしょう。 しかし、これらの手段が相互にどういう位置付けにあり、長期的な視点でキャリアアップ(最終的にはビジョンの達成)にどう効いてくるのか、どういう組み合わせが最適なのかを考えている方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか。 構造化されたアクション・プランでは、数ある選択肢を漏れなく洗い出して最適な方法の組み合わせを検討しているので、無駄打ちが少なくなり、個別のアクションの相乗効果によって、より良い結果が生み出せます。また、そこまで考えておけば実行段階での迷いもなくなるでしょう。 「下手な鉄砲も数打てば当たる」といいますが、キャリアの選択肢にはいや応なく年齢的な要素が絡んできますし、講習会なども多くは有料です。「下手な鉄砲」で貴重な時間とお金を無駄にしては取り返しがつかなくなってしまいます。 構造化はクリティカル・シンキングにおいても非常に重要な概念ですので、ここで挙げたようなIT人材のキャリアアップを例に使いながら、今後の連載の中で詳しく説明していきたいと思います。 「枠組みで考える」 さて、いかがでしょうか。漠然とした言葉を具体的に定義することで「自分戦略を作る」ことについてのイメージがわいてきましたか? このように、目的が明確になれば考えるための方向性がある程度見えてきます。しかし、具体的に何について考えればいいのか、まだ分かりにくいですよね。 そこでお勧めしたいのが、考えるポイントを絞り込むために「どんな項目について考えるか」、つまり「考える枠組み」を先に明確にするということです。例えば、やるべきことを考えるときに「誰が」「いつ」「何を」「どこで」「なぜ」「どのように」やるのかという項目を先に明確にしておくことで、必要なことを漏れなく具体的に考えることができます。 これは皆さんご存じの「5W1H」ですが、ビジネスの世界ではほかにも有用な枠組みがたくさんあります。経営戦略を考えるための枠組みとして有名なものには、事業環境を分析するための「3C」(自社・競合・市場)や、マーケティング戦略を考えるための「4P」(製品・価格・宣伝・販売チャネル)などがあります。 これら経営戦略の枠組み(フレームワーク)はキャリアを考えるうえでも有効です。キャリアを考えようとすると、自分は何をやりたいのか、何ができるのか……など、往々にして自分のことしか考えず、競合や市場の観点を忘れがちです。しかし、働いてお金を稼ぐということは、「自分(自社)の提供する価値に対して雇い主(市場)がお金を払う」ということです。さらに、求人倍率や給料は、自分と同じような労働力を持つ人たち(競合)とのバランスで決まります。 例えば、前回事例として挙げた若いプログラマが、A社製ERPパッケージのベンダ資格を取って「ERPを導入するSE」になった場合、将来にわたってERPを導入するSEとして収入を確保するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。・[自社]ERP導入SEとして有能である・[競合]自分と同等以上の能力を持つERP導入SEが需要を超えて増えない・[市場]A社製ERPパッケージが売れ続ける。(=需要がなくならない) いかがでしょうか。いざ自分のこととなると競合や市場の観点を忘れがちですので、「枠組みで考える」を強く意識するようにしてください。 このように、経営戦略を考える枠組み(フレームワーク)や手順はキャリアを考えるうえでも有効ですが、この連載の目的はあくまでクリティカル・シンキングのエッセンスをお伝えすることですので、あえて経営戦略の手法については詳しく説明しません。興味のある方は、書籍やビジネススクールなどで勉強してみてください。
2006.01.04
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第1回 目的や前提を明確にする クリティカル・シンキングとは、「論理的かつ構造的に考えること」。これを身に付ければ、自分戦略の立案だけでなく、キャリアを切り開くための強力な武器にもなる。そして、開発現場で直面する「問題解決」にも役立つスキルだ。 最初は戸惑うかもしれないが、日々実践することで思考力は格段に向上する。 【思考停止】に陥っていないか? 「自らのキャリアをこれからどうつくっていけばいいのか」という問題意識に対するヒントだと思います。従ってまずは、この連載がどういうポイントでそれにお応えできるのかを明らかにしておきたいと思います。 世の中には、さまざまなキャリア理論や方法論、あるいは職業に関する情報があふれています。しかし、それらは常に「多くの人に共通していえること」を述べているため、ヒントにはなっても答えにはなり得ません。すべての人にまったく違った事情や環境、能力があるので、最後は自分で考え、何らかの答えを出す必要があります。 よくありがちなのは、新しい情報を仕入れては「自分には当てはまらない」という理由で【思考停止】に陥り、また新たな情報を探したり、やみくもに行動したりというループにハマってしまうケースです。その結果、残念ながらいつまでも状況が変わらなかったり、同じ失敗を繰り返したりすることになります。 このループから抜け出すためには、【仮説立案】→【行動/情報収集】→【検証】→【進化した仮説】というサイクル、つまりPDCA(Plan-Do-Check-Action)をちゃんと積み重ねることが必要です。そして、このサイクルをきちんと回すために有効なのが「クリティカル・シンキング」なのです。●クリティカル・シンキングをキャリア構築に応用する 図1 考える人、考えない人のキャリア 従ってこの連載では、自分戦略の考え方について理解を深めながら、クリティカル・シンキングのエッセンスを解説していきたいと思います。 クリティカル・シンキングとは? クリティカル・シンキングとは、簡単にいえば「論理的かつ構造的に考えること」です。直訳すれば「批判的に考える」ですが、ここで批判の対象になっているのは自分自身の考え。つまり、自分がきちんと論理的・構造的に考えているかをチェック(批判)しながら思考を進めていくことがクリティカル・シンキングの本質です。 筆者は本業のかたわら、グロービス・マネジメント・スクールで社会人向けに「クリティカル・シンキング」の講師を担当しています。このクラスで実際にやっていることの大部分は、受講生の方々に「自分の思考がいかに表面的なレベルでとど止まっているか、ロジックが通っていないか」に気付き、自分自身の「思考のクセ」を矯正していただくことです。 これは、ゴルフやテニスなどのスポーツを想像してみると分かりやすいでしょう。スポーツというものは、素人が自己流でやっても時間をかければそこそこうまくなることはできます。しかし、科学的裏付けのあるトレーニングメニューに従い、良いコーチについてしっかりと訓練を受けた人にはほぼ間違いなく勝てません。その間には、簡単には超えられない断層があるのです。 これは思考力についても同じこと。クリティカル・シンキングを学び、日々実践することで、思考力は格段に向上します。これは「自分戦略」をつくることに役立つだけでなく、キャリアを切り開くための強力な武器にもなります。この強力な武器を皆さんに少しでも身に付けていただくのが本連載の目標ということになります。 クラスでも書籍でもない、文字数の限られた連載記事でどこまでできるか分かりませんが、できるだけ皆さんにとって価値のあるものにしていきたいと思いますので、しばしお付き合いください。――「われわれが人生の意味を問うのではなく、われわれ自身が人生の意味を問われているのであり、答える責任があるのだ」(ヴィクトール・フランクル『夜と霧』より)―― キャリア、つまり「人生をどう築いていけばいいのか」という問いに答えを出せるのは、自分自身でしかあり得ません。ならば、「問いに答える力」(=考える力)を磨くことで、より良い人生(=キャリア)への糸口をつかもうではありませんか! 「目的や前提を明確にする」 クリティカル・シンキングを実践するうえで欠かせない、一番最初に行うべきプロセス、それが「目的や前提を明確にする」ということです。 われわれはよく、何かを考えるときに「取りあえず目に付いたテーマ」にとらわれ、本質を見逃してしまうことがあります。例えばこんなケースはどうでしょう。先に読み進む前に、まずは少し考えてみてください。☆ベンダ資格を取るべきか、取らざるべきか? あなたは28歳のプログラマ。新卒で入社して5年目、コーディングやデバッグに追われて残業ばかりの毎日だ。プログラマとしての仕事の進め方や基本的な技術は一通り覚えたと思うが、毎日の仕事をただこなしているような状況で、ちょっと伸び悩んでいる感じを持っている。将来のためにも何か新しいことをしたいと思っているが、何をしたらいいのかよく分からない。そんな中、先輩にこんな助言をもらった。 「うちの会社は、いま実験的に始めているA社製のERPパッケージ導入が好調だから、これからも積極的に受注していく方針らしいぞ。一時のブームは終わったみたいだけど、大企業のリストラや合併・買収の影響で、しばらくは需要もありそうだし。何かやりたいのなら、A社のベンダ資格を取ってみたらどうだ?」 あなたはこのベンダ資格を取るべきだろうか? さて、どうでしょうか? 出てくる答えは大きく3つに分類できると思います。 一番多い答えは、おそらく「情報が少なくて判断できない」というもの。これは【思考停止】といい、クリティカル・シンカーが最もやってはいけないことの1つです。情報が少ないなら、「ほかにどんな情報があれば判断できるのか」、いくつか前提をおいて「こういう場合にはYESだが、こういう条件ならNOだ」という具合に、判断の枠組みと基準を考えることが大切です。 残りの大部分は「取るべきだ。なぜなら……」、あるいは「取るべきではない。なぜなら……」の2種類でしょう。 ほかに何があるんだ? と不思議に思われた方、ちょっと考えてみてください。このケースでは「このベンダ資格を取るべきだろうか?」という問題提起がされていますが、このケースで「そもそも」考えるべきことは、A社のベンダ資格を取るべきか否かなのでしょうか。ここで疑問を持つべきポイントは、「ベンダ資格を取る」というのは真の目的ではなく、あくまで考えられる手段の1つにすぎないということです。 まずは自分が直面する「問題」を疑ってみる 従って、この問題に丁寧に答えるならば、「この資格を取ることが、考え得る多くの手段の中で最も目的に合致しており、かつ取得が可能で、コストに見合うと判断できるのなら取るべき。そうでないならほかの手段を採用した方がいい」となります。 このように、自分が直面している問題そのものをまず疑い、何のためにこの問題を考えているのかを明らかにすることが、クリティカル・シンキング第1のポイントである「目的や前提を明確にする」ということです。目的を見失ってしまうと、問題の一部だけに注目してしまったり、さまつな問題を意味もなく検討したりして、なかなか本質的な解決に至らなくなってしまいます。エンジニアなら開発現場の課題解決やプロジェクト管理などにも、もちろん応用できるのです。 いくら論理的に考えた答えであっても、そもそも目的に合っていない答えだったら意味がありません。まずは「目的や前提を明確にする」。これを常に意識するようにしてください。 次回は自分自身の目的を達成するために、具体的なアクション・プランなどについて解説していきたいと思います。
2006.01.04
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【信憑性】では姓名判断とはあたるのか?名前如何で早く逝ってしまったり、病気になったり、易者達の言うように事故にあったりするものなのだろうか?こういう疑問は皆持っているはずである。しかし日ごろ「そんなもの信じない」と豪語している人たちでさえ、いざ自分の子供のため易者を訪ねる人も出てくる。もちろん信じる程度の違いはある。つまり、信じてはいないが、でも悪いよりはいいほうがいいといった程度の人もいる。ではその信憑性はどうやって検証できるのだろうか?姓名判断の検証は私は演繹法よりも帰納法をもって検証できると思っている。そして結果として私は姓名判断は当たる、絶対に蔑(ないがし)ろにできないもの、そして少なからず名前の良し悪しにより、人の人生は変わってくるものと信じている。そしてこれが一番大切なことだが、その、名前の良し悪しを決定するファクターとして【画数】【陰陽】【漢字の意味】【格】【音型】があると思っている。以下、それらのファクターについて説明していこうと思う。
2006.01.04
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【序】日本,韓国(そしてよく知らないが多分中国も)では子供が生まれると名前をつけるのに一苦労する。まず100%と言っていいほどの父親が命名の本を買い、夜も寝ないで考える。しかし結論は「どれにしたらいいか さっぱりわからん!」といって投げ出す。この現象はどうして起こるのか?それはもちろん【親の欲】からくるのである。出世運もよくて、家庭運もよくて、あっ もちろん頭のいい子でなくちゃならないし、それから友人関係も、タレント性も、顔も、性格も、みぃんなよくなくちゃ...といいながら究極の名前を選ぼうとするからである。また本によって姓名判断の方法、つまりは画数の解釈もまちまちであり、しろうとにはどれが正しいのかわからない。これもまた父親を悩ませる理由の1つである。しかしそのように悩みこむ父親をあざ笑うかのように日にちだけは過ぎていく。まだ生まれた赤ちゃんに呼びかける名前は決まらない。こんなわけで結局、高いお金を払って易者に頼むのが一般のお決まりコースとなっているのである。だったら最初から苦労しないでそうしたらいいのに、なぜかそうしない。自分でつけようとするのである。いや正確にいうと最初は自分でつけられると思い込んでいるからこういうことになるのである。これはしかし考えてみれば理解できる話である。なざなら他人の名前はよくつけられる立派な命名家でさえ、ときには自分の子の名前を他の人に頼むという珍現象さえ起こるのであるから、一般人が自分でつけようと思うのも至極当然と言わざるを得ない。
2006.01.04
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新年を迎えるため、家族全員を車に乗せて今年も祈願成就の願掛けに出かけた。ところが出発の段階でまず問題が発生した。 去年までは娘達4人を後ろ座席に乗せても何とか乗れたのに、今年はそうはいかなくなっていたのだ。「お姉ちゃん、お尻もう少し引っ込めてよ。乗れないじゃない」「なによ。あんたこそ大きなお尻してるからじゃない」と言う言葉がひっきりなしに飛び交った。妻の車と2台で行こうかとも思ったが、とにかく何とか乗せて出発したのだった。無事目的地に着き、元旦の0時を待った。そして2006年1月1日午前0時、恩師と共に私たちは無事に祈願を済ませた。きれいな雪に見守られ新年を迎えた私たちは、今年こそなんでも叶いそうな気分になった。そこで 我が家も今年の祈願を考えようと言うことになった。各自 自分の願いを考え、言い合ったのだ。でも結局内容は今年もやはり去年とあまり変わり栄えのない祈願となった。例えば私1.会社を首になりませんように。2.論文通過3.F5取得など。また妻は4.昇進5.健康維持6.碧山解決など。子供たちは7.成績上昇8.日本語上達9.真直ぐに成長。家庭全体としては10.事故,災害,病気,けんか,その他の大きな災難がありませんように。などだった。よく「幸せだから笑う」という言葉を耳にするが,私は「笑うから幸せになる」という言葉のほうを信じたい。というわけで,まず笑うことから今年は始めようと思う。せぇの~「ハハハハハハハハハハハハ~」
2006.01.02
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