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風上 遥

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□ちびタイ□


蒼


Feb 26, 2008
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風呂上りの脱衣所で
妹からそうはっきりと告げられた。

「…あたしがいつ逃げたの?」

逃げ、だといわれた自分の行為が思い浮かばず
少し声のトーンが落ちた。

「だって姉ちゃん、いつもお父さんの話、聞かんじゃん」

あぁ、それか。
思い当たり目を細める。
逃げ、だといわれることが自分でも心外だったようだ。

「だって親父の言っていることが正しいとは思わんから。
 聞く必要なんてないだろう?」

「聞いてやればいいじゃん」

「時間の無駄だよ」

それでも妹はあたしを見つめる。
いつもなら食い下がるはずの妹にしては珍しいことだった。


「正しい、とは思わないけど。
 聞いて、それから正しいとは思わないって言えばいいじゃん。
 言わずに部屋に戻る姉ちゃんは
 私からみたら逃げているようにしか見えないよ」


あたしが妹から言われて
言葉に詰まったことなど今まで皆無に等しい。

口げんかではたいていあたしが勝っていた。

なのに、今夜は違うようだ。


「…だってさ…」

おずおずと口を開くと
何さ?と妹が首をかしげる。

「だってあの人
 自分の子どもを道具としか思ってないんじゃないかって思うんだよ。
 いい進学校にはいったって入学のときも自慢げだったし。
 けど、今度はいい大学に入れとかそれしか言わないジャン?
 あたしが何になりたいのとか聞いてくれないし。
 いい大学にいれて自慢したいとしか思えないんだよ」

「あ~、それは思ってた」

あたしはてっきり妹に叱咤されるのかと少し構えていただけに
拍子抜けした。

「それは結構思ってたよ。
 けどそれがいやだったらやっぱり言うべきだよ」

言って聞くような親父じゃない。
そんなことを思ったが口に出すことは無かった。

妹はまっすぐだ。
まっすぐさがあたしにはまぶしかった。















脱衣所を後にして3時間後くらい。
あたしは部屋でテレビに見入っていた。
CMに入り、テレビへの集中力が欠けたあたしの耳に妹と親父の声が入ってきた。

「あんね、少しは応援してやろうとか思わんわけ?
 それが親ってもんじゃないの?」

「俺が言う仕事につけば応援してやるぞ?
 俺が言うことは何一つ間違ってはないんだからな」

「意味がわかんない。
 お父さんの言うことが世界の全てじゃないし」

「いや、世界じゃなくこの家族では俺が絶対だ」

「ますます意味わかんない。
 私ら子どもはお父さんの道具でもおもちゃでも人形でもないんだよ。
 わかってるの?」


ふ、と口元が緩んだ。
妹はすごいな、と思った。
まっすぐに生きている。

あたしにはいえなかったことを
堂々と胸をはり、いえている。


家族の中で唯一
あたしが専門学校に合格して
「おめでとう」と口にしてくれたのは妹だった。

「大丈夫?」
とか
「頑張らにゃんね!!」
とか
前向きなことを言ってくれたのも
喜んでくれたのも
全部妹だった。


いつから?
ねえ、いつからあたし妹に守られてたの?


しっかりしなくちゃね。
あんたが人に自慢できるようなおねえちゃんになれるように。

大丈夫だよ。
あたし頑張るよ。

あたしは親父の道具でもおもちゃでも人形でもないからね。
あたしが決めた道、進むからね。




あ、あんたさ。
「ずばずば言っちゃうからキツイって思われてるんだ」
って愚痴ってたけど

素敵だと思うよ、あたし。
あんたのこと。





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Last updated  Feb 27, 2008 12:54:41 AM
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