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とはいっても、柚木崎のではない。(いや、多分いてもおかしくないのだが……)柚木崎の母の、話である。母の母、柚木崎にとっての祖母だが、女手一つで3人の娘を育てた人である。母がいつまでも親離れできなかった相手でもあるが、それも仕方がない、と柚木崎も思う。柚木崎自身も、実兄も、おばあちゃんッ子だったからだ。母の気持ちも痛いほど分かる。それはよしとして。祖母は、母たち3姉妹の父に当たる人と、別れた。それ以降、全く連絡を取っていなかったという。母たちにしてみれば育ての父もいたことだし、実の親父がいなくても、という気持ちはあったようだ。ただ、長女だった母にしてみれば一番長く一緒にいたからだろう。似た男性は嫌い、という認識が強かったようである。俳優や道ですれ違う男性でも、少しでも似ているところがあるとその話をし、「だからお母さん、嫌い」と言っていたのを覚えている。その親父さんが(柚木崎にとっては祖父か?)亡くなったそうなのだ。いきなりの話で吃驚したのだが、その話自体、どこからきいたのかというと、義弟からというのだからさらに驚きである。連絡を取っていなかったと言いながら、義弟がいるのを??詳しく聞いて、少し背筋が冷たくなった。どこでどう調べたのか知らないが、いきなり電話がかかってきたのだという。3姉妹それぞれの家へ、義弟を名乗るものから。話をきちんときいて、3姉妹でそれぞれの話に矛盾がないか確かめて。知らない間に会いに行ったようである。亡くなるまで住んでいた祖父(と呼ぶのも抵抗あるが)の家。その権利を放棄して欲しい、と義弟は言ったそうだ。それに加えて、自分にはあなたたちに対する気持ちなど、どこを探しても見つからないから以降一切頼ってくれるな、と言われたそうだ。柚木崎の母はかなり激しい人である。頼るもなにも、赤の他人、と断言してきたそうだ。あんたなんかしらない。親父? 誰それ?そっちこそ泣きついてくんなよ。そういう状態で必要書類を叩きつけて帰ってきたそうだ。この母にしてこの子あり、となっていそうな気が……それはさておき。そんな母に、手切れ金とのことであとで口座に少しの現金が振り込まれたそうである。母のところだけではなく、あとの2人の妹のところにも。口座番号なんて教えてないのにね、と気味悪そうな口調で言った母はお父さんの顔は見てきた? と聞いた柚木崎を笑い飛ばした。「私の父は、育ての父のあの人しかいない。 だから、あの人の顔なんて、見てこなかった。 そりゃ仏壇にはお線香の一つも上げてきたけどね」見るのも厭だし。そう断言されて、少し心のどこかが傷んだ。もう会うことはないだろう、この異母兄弟。会ったとしても、赤の他人だ。なんだかそういうのも、淋しいような辛いような、である。
2004.04.30
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昨日から片割れの実家に来ている。3月末に行った旅行の写真を持って行くというので帰りに持って行き忘れたぬいぐるみを持って1本置き忘れていった一升瓶(中身は……)も持って行った。ケーキも途中で買っていったのだがさすがに到着したのが深夜だったので食べると言うほど食べられなかったようだ。目的はただ、写真を持って行くだけ。プリントアウトしたものも持って行ったのだが、義母の評判はすこぶる悪い。顔色がどうやらあまりよく写っていない模様。プリンターの問題、と行ってもなんだか納得してくれなかったので近くの店でプリントアウトをお願いしてくることになった。その間、義父は庭いじり。これは趣味なので、どこまでも好きなだけやらせておくのがよい。義母は家の中で掃除をしたり、洗濯をしたり。新聞にクロスワードパズルがあるのを見つけて目が輝いた。こういうのが好きだ、という話は前から聞いている。帰ってきたら一緒にやろう、と言われ、まずは写真のプリントアウトに出かけた。店に到着すると、たかだか3枚ほどの印刷なのだが40分かかると言われる。結構かかる、と思いながら、店の中を探索したり、写真を批評したり。そうやって時間をつぶしてようやくできあがった。やっぱりプロの使っている機械は違う。思わず片割れと頭を寄せて呻ってしまった。持ち帰ると義母にも評判がいい。今度から、こうすることにしよう。義母と頭を寄せ合ってクロスワードパズルを解いていると義父が「疲れた」と戻ってきた。日差しも強いので、水分を補給しないといられないのだろう。義母に我が儘を言って、飲みたいものを持ってこさせる当たりがおもしろい。この夫婦は本当に仲がいいのだな、と実感する。昼食を食べに行ってもそうだ。美味しい、となると、お互いに交換している。こっちがおいしい、いや、こっちの方が美味しいと妙な形で喧嘩になることもあるが、基本的にお互いを思いやってのことだから観ていてもほほえましかったりするのだ。つらつらと義母と話をしながらクロスワードパズルを埋め片割れと義父が昼寝している間にこっそりと二人でぽんかんを食べ、内緒の話をこそこそこそ。最近、だいぶ慣れてきてくれたな、と思う。中には義姉のことなども含めた話があったりするので危険な地雷を踏みそうになることもあるのだが基本的にはなんとか買わせる程度の話が多い。時々「それは違う」と思いながらも表面には出さないで話をする。こういう時間も必要なのだと思っているからだ。そんなこんなをしていたら、なぜか義兄と義姉が来た。柚木崎達が帰る前に来ようと思った、というが、なにを話すわけでもなし。手みやげもなにもなく、自分たちの食べるおやつと自分たちの趣味のものだけを持っている。さっさと座り込まれて「コーヒー」と言われるとなんだかムッとしてしまうが、表面に出さずに珈琲を淹れる。義姉が何気なく寄ってきて、嫌みの棘を投げつけていく。早く帰ろう。そう思ってしまった。夕飯をごちそうになって帰宅することに。義母がずっと食べさせたい、と話していてくれた鰻の店へ。払うと言ったのだが、義母に却下されてしまった。その時に出した義兄の金額にあごが落ちる。あとで片割れと少し話し合おう。うん。義母や義父とは随分仲良くなったのだが、相変わらず義兄・義姉とはうまくやれない。話すのも難しいから何とも言えない、といえるがそんなことでめげていてはいけないのだろうな、とどこか強迫観念に駆られている柚木崎である。
2004.04.29
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この間から片割れが実家に持って行かねばならない物があるから近いうちにいかなければ、という話をしていた。この間の旅行の写真である。デジカメで撮ったので、プリントアウトはプリンターさえあればできるのである。忘れないうちに印刷し、データをCD-Rに焼いておいた先日の旅行の写真。早く見せてあげたかったのかもしれない。仕事に行った直後、メールが入った。「今夜から行くから」そんなことだろうと思っていたのでなにを持って行くか(さすがに手ぶらではいけない)考える。義妹も家を出たので、ケーキを4つ買っていけばいいか。行く時間は遅いが、遅くまで飲食をする家なのでそれでもいいかもしれない。そんなことを考えながら仕事を終え、片割れを会社まで迎えに行ってから帰宅。途中でケーキを購入し宅配便が来るのを待ってから家を出た。到着は夜中になる。明日はGWの初日。きっと道は混雑しているに違いない、と思ったが向かう方面が違ったからか、意外に空いている。夕飯を適当なところで食べてから高速に乗り見える景色の綺麗なところなどをメールで兄嫁に送ったりしながら気持ち的にのんびりと向かった。到着したのは夜中の11時半。最近宵っ張りな義父・義母は待っていてくれた。ケーキをおみやげ、と渡したら、「これから食べられるかしら? 食べようかしら?」と嬉しそうな声を上げる義母。食べる気らしい。写真も手渡すと、コメントが面白いとけらけら笑う。義父は義父で、この間首相から桜を見る会に呼ばれたことを話てくれ、その時の写真も見せてくれる。お互いに写真の見せ合いのような状態だった。片割れは片割れでPCをいじり、CD-ROMのデータを見せるための準備をしている。みんながみんな、てんでばらばらの行動。こういうのが出来るようになったというのも面白い。片割れがPCを居間のテーブルに持ってきたのがきっかけでやっと全員の行動が一緒になった。それぞれ珈琲を片手に、前回の旅行を思い出す。片割れの寝顔まで撮っていたことや置いて行かれたぬいぐるみを最後に入れておいたのが笑われたがおおむね好評の写真だった。ただ、プリントアウトした物に関しては義母が頬をふくらませる。「私の顔、こんな変な顔じゃないわ~」……全体的に色が濃く出るウチのプリンター。コントラストがはっきりくっきり、と言うべきか。だから、少し写真が白みを帯びたりするとその部分が強調されてしまったり、する。それを指さして言われてしまった。仕方がない、明日きちんと写真屋さんでプリントしてもらおう。片割れと密かにそう決めた。そんな話を約2時間。途中で義父が完全に眠りの神様に降臨されてしまい、退出。義母も寝る直前に、ふと思い出したように振り返った。「明日、おにいちゃんたちくるから」唐突すぎである。あまり義兄たち夫婦、話をするのがうまくない。というか、思ったことをなんでも口にする義姉とマイペースが過ぎる義兄のコンビ。片割れは我感せず、と放っているのだが柚木崎はそうはいかない。なんだか分からないのだが、義姉が話しかけてくる率が高いのだ。しかも、後で考えるとむかむかするような言い方で。そうならそうと、言っておいてくれれば。と、訳の分からないところで思った。明日の午後、だそうである。どうなることやら。
2004.04.28
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昨日休んだ分、今日の仕事が多い。いきなり飛ばすのは辛いな、と思いながら仕事をしていたら昨日も出勤してきていた筈のイギリスを母国とするネイティブの方が珍しく(と言うか、初めて)話しかけてきてくれた。「元気ぃ?」一瞬、目が丸くなってしまった。いつも驚くほどの早さで英語を話す方である。日本語で話しかけても、首をかしげるばかり。理解されていないのかもしれない、と思いながらも出来る限りの英語で話しかけるようにしていた。その方から話しかけてくれることはなく、こちらから話しかけるばかりだったが英語力を高めるため、と思いながら頑張って話しかけていた。それなのに、これ。どこから覚えてきたのだろう?柚木崎が今の言葉を聞き取れなかった、とそのかたはどうやら理解されたようでどこか心配そうな表情を浮かべながらもう一度顔を覗き込んで聞いてきてくれた。「元気ぃ?」なんだか暖かな気持ちが流れ込んできた気がした。嬉しくなって、笑顔になってしまう。「はい」と答えるとその方も嬉しそうな顔になった。大きな手でぐりぐりと頭を撫でられ、なんだか小さな猫になった気分になった。普段、あまり話しかけてくれない方でも、さすがに長くいると、気持ちは近づくようだ。話をしなくても、考えていることが伝わる。そんな関係になりつつあるようなところがある。仕事上の関係で、そういうのは良くないと思っているので、なるべく言葉に出して話をするようにしているのだが、こういうのはなんだか嬉しい。「元気ぃ?」軽い言葉のようだが、気持ちがこもっていた言葉。今日はこの言葉を大事にしておこう。
2004.04.27
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昨日に引き続き、体がだるい。天気の変わり目などはこういう状態になりやすいのだが二日続けて同じような、というのは初めてである。寒い、だるい、痛い。三拍子揃っているのに、熱はそれほど高くない。しかし、起きているのは相変わらず辛い。さんざん悩んだのだが、こんな調子でだるだるしていても仕事に行ったらそんなことは言っていられないのもあるし上司たちの要求にこれではついていけない、と諦めがついたのもあり、今日はやすみをもらうことにした。残業分の時間調整などをしたらちょうど1日分くらいの休みになる、というのもある。あとで気がついたことなのだが今日は柚木崎の先輩に当たる人もシフトに入っておらず実質的に後輩たちだけの職場になってしまった。きっと慌ただしかったに違いない。しかし、そんなことには気づいていない状態でとにかくだるい。とにかく寒い。ベッドの中で毛布2枚に羽毛布団1枚を掛けてがたがたと震えて転がっていた。うつらうつらと眠っては目が覚め、またうつらうつらしては目が覚め、を繰り返して何度目のことか。朝計って以来の熱を計ってみた。……38度に近い。このあたりで「あまり高くないな」と思う柚木崎がおかしいのかそのあたりはよくわからないのだが、余り高くない、と思った。でも、痛い。寒い。寝てれば治る。そう思いながらまた眠った。片割れが帰ってくるまでに、何度目が醒めたか分からないのだがその間に何度か熱を測った。急激にあがったり、さがったり。これは体力消耗している、と思うのだが食欲は全くなく、とにかく喉が渇くばかり。とにかく、明日までには体力を戻さねば。
2004.04.26
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先週、今週と少し頑張りすぎたのだろうか。体がだるい。起きあがってしまうとなんとかなるのだが、暫くすると、節々が痛くてだるくなってきてしまう。昨日片割れが模様替えしてくれたリビングで新しいラグの上でごろごろしていると片割れに叱られてしまった。眠いなら寝室できちんと布団をかぶって寝てなさい、と。実際問題、眠いわけではない。首をあげているのが辛い。腕を上げ下げするのが辛い。座っていると腰が痛い。立っていると、足がだるい。こういう状態なので、寝ているのが楽なのだ。単なるぐうたら、とも言える症状。仕事に行くと、ここのところ定時で帰れる日がない。予定外の仕事もばしばし頼まれてしまうのでもしかしたら精神的にも肉体的にも疲れているのかも。などと甘えたことを考えていたら紙を丸めた物でパシリと叩かれてしまった。理由なんて考えてないでとっとと寝てろ! というところだ。柚木崎は寝ておけば体力回復するという特技(?)を持っている。睡眠時間さえなんとかなれば、どうにかなるのである。……多分、なのだが。今までの経験上、そういう体質らしいので、とにかく眠れる時には眠るに限る。そう思って今まできた。今回もその通りにしたほうが良さそうだ。柚木崎が布団に潜り込んでいる間に、片割れは買い物に出かけていった。申し訳ないが、任せてしまおう。だるだるな一日。怠惰に過ごしているような気がしてならないが、とにかく眠れるだけ眠ろう。
2004.04.25
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久しぶりに土曜日出勤である。ここ数日、暖かな日が続いていたが、今日は日差しは暖かく、風が冷たい。気温もどうやら少し低めのようだ。片割れに送ってもらって職場に来て、ふと窓の外を眺めて思った。窓から見る限りでは、とても良い天気である。日差しも暖かく、気持ちがいいほど空が明るい。新緑に日差しが柔らかく跳ねて、仄かに光っているのもいい。花水木も満開。躑躅もかなり咲きそろっている。ちょうど小高い丘の上にある柚木崎の職場から下に向かって眺めると、花の絨毯が広がっているようだ。気持ちがいいなぁ、と思いながら外を眺めていると結構木々が揺れていることに気がついた。気持ちがいいのは窓際だけの話らしい。外は、かなり風が強そうだ。枝のしなり具合、飛んでいる花びらの速度。そういうものを見ている限り、寒いかも、しれない。時々、仕事の手をほんの少し休めて外を眺める。こういう日がたまにはあってもいい。ここのところずっと、何かに追われているようで苛々するというか、精神的にも肉体的にも疲れていたように思う。他に人が来ない曜日。来ていても、仕事に支障が出るほどではない状態。そういう日は、気持ちもとても穏やかだ。慌ただしく仕事を頼まれ、〆切に追われてどたばたと走り回るのはやはり気持ち的に疲れてしまうのだろう。のんびりのんびり仕事をして時々思い出したように外を眺める。緑が目に気持ちいい。下を見やると、人影があった。階段のところに、帽子を押さえた人影が、二つ。そう、お花見の人である。躑躅が咲きそろう頃になると、ご近所さんがお散歩がてら、お花見に来る。躑躅の絨毯がやはり見事だからだろう。しかし、帽子を押さえなければならないほどの風。きっと、目にゴミも入るに違いない。お花見日和というか、ちょっと辛いだろう。そんなことを思いながらまた仕事に戻る。こういう状態がいつもならいいのだが。
2004.04.24
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職場で、「つむじ」の話になった。どういう理由でだったかは分からないのだが、話の流れがどういう方向に流れていったか、気づいたらつむじの話になっていた。片割れには3つ、つむじがある。頭頂近くに並んで2つ、うなじあたりの生え際に一つ。並んだ2つのつむじのおかげで、頭の上の方、後ろがわがぺったりと髪が寝てしまう。妹がいつも苦労しながらこのあたりをセットしている。生え際のつむじも、理容師・美容師の人には不評だ。短くして欲しい、と言われるとはねてしまったり上向いてしまったりするのに気をつけなければならないからだ。代わりに、といってはなんだが、柚木崎の頭頂近くにはつむじがない。よく、「あれ?」と言われるのだが、普通につむじがあるだろうあたりには、ない。だから髪の毛はどのようにも分けることが出来る。全然ない、ということはないらしい。頭頂近くにないかわりに、額側の生え際にあるようだ。そのおかげで髪を流すのが楽になっているところは、ある。多分、スキンヘッドの上司が数人いるからかもしれない。見事にそり上げてあるので、確か一人の上司が聞いたのだ。髪の毛って生え方がまちまちなのに、よく綺麗に剃れるね、と。そうだ、それが話のはじまりだ。そういわれて、スキンヘッドの上司は答えた。(この上司は英語しか話せない上司である)僕の髪は、毎日、理容師の妻に剃ってもらってる、と。どうりで綺麗なわけだ、とみんなで納得した。しかし、この上司、ひげは見事に生えている。ひげは? と聞くと、にやりと笑った。全部剃ってしまうと風邪を引くんだ。この言葉にはみんなで爆笑してしまった。ホントだよ、と笑う上司に、別の上司が言い出した。あごにもつむじがあるの知ってる? と。笑いの形のままで、こんどは全員固まってしまった。知らない。聞いたことがない。すると、その話をし始めた上司は指でさし示しながら教えてくれた。僕のひげ、剃るの大変なんだ。なぜならつむじがココにあるから。ほら、みてみて。ここから生え方が四方八方になってるでしょ?剃刀使うと大変なんだ、これが。みんなで頭を寄せ合うようにしてみてみると、本当につむじらしきものがひげのそり跡にみえる。へぇ、と感心していると、自慢げにその上司は続けた。だからね、床屋さんが悩むの。肌も弱いから、何度も剃刀宛てられないし。凄いでしょ? ひげにもつむじがある男!みんなでまた、ゲラゲラ笑い出してしまった。そんなことを自慢されても……というところである。なにげなく存在するつむじ。このことでこんなに笑ったのは初めてかもしれない。あることを忘れている存在の、存在主張をされた日であった。
2004.04.23
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毎年、「今年が最後だから」と言い続けている上司がいる。毎年毎年、辞めるといいながら辞めない、本人曰く『狼少年(おこがましいが)』の上司である。辞められてしまうととても淋しいので、毎年また会えることを喜んでいるのだが、「今年はホントにホントに最後!」と宣言されてしまっている。本当かどうかは眉唾もの、と言うと失礼だが来年もまた来てくれるといいな、と鬼が笑いそうなことを考えている柚木崎である。今年もこの上司に会えるのだ、と片割れに話したら片割れに凄く羨ましがられてしまった。片割れは過去に一度だけ、一緒に飲みに行ったことがある。とにかく面白いのだ。話術はともかく、身振り手振りもまた楽しい。知識は驚くほど豊かで、深い。自分が知っていることは他人も知っている、と思ってしまうところが玉に瑕だがこの人と話していると知識が増えるし、なによりも『考える』ことをしなければならない楽しさを知る。だからかもしれない。この人の隠れファンは意外と多い。この上司に先立って、別の上司が3月末で辞めてしまった。まだまだ続けてくれるだろう、と思っていた人である。だから誰もが驚いた。なぜ、どうして? と聞くと、上司は恥ずかしそうに頬を赤らめながら理由を教えてくれた。「おばあちゃん業に専念しようと思うの。 初孫が生まれたし、やっぱり可愛いし」そういわれてしまっては引き留めたくても引き留められない。泣く泣くお見送りさせて頂いた。その人がいないことを、この『自称 狼少年』の上司は嘆く。「あの人、ホントに辞めちゃったの? 僕、きちんとお別れの言葉を言ってないよ! またお会いしましょうって別れたじゃないか。 なんという悲しみ! なんという寂しさ!! 僕の心にはぽっかりと穴が開いてしまった!!」ちなみにこの上司、日本人である。しかも団塊の世代、と呼ばれる年代の男性である。ここまで情熱的に嘆かれると、淋しいと思っている柚木崎も苦笑してしまう。柚木崎も彼が本当に辞めてしまったら、このくらいの勢いで嘆かないといけないだろうか。本当に今年を最後にするつもりらしいこの上司。毎年、「お別れ会」と称する納涼会を開く。(この上司は毎年、半年だけの仕事を依頼しているのだ)そのたびに柚木崎の本家本元上司に説得され宥め賺され丸め込まれて今まで勤めてきてくれた。今年もそうなってほしいな、と密かに願っている。いまから「今年こそ本当に最後!」と叫んでいるこの上司。さて、来年のことはどうなるだろう。期待半分、覚悟半分でその時期を待とう。
2004.04.22
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昨日、休みが取れなかった片割れは、一日ずらして今日休みである。無理しなくていい、といったのだが、柚木崎は送迎付きの出勤になってしまった。柚木崎が仕事をしている間に、片割れはなにをしていたか。想像するのは少し楽しい。天気がいいので、車を洗っているかもしれない。そういえば、食器を洗っておいてくれるといっていた。洗濯も……なんていったら我が儘だろうか。昼ご飯を忘れる癖があるから、一日一食はいけない、とメールを送らねば。こればっかりは確実と言っていいほど確信を持っているのだが、P屋にはいっているだろうな、と思っていた。そんなこんなを頭の片隅で考えながら一日を終え呼び止められたり仕事を頼まれたりする前に逃げるように職場を出た。階下では片割れが待っている。階段を降りていく途中の窓から覗いてみるとなにかを読んでいる感じがする。それを、覗き込むように守衛さんが通り過ぎる。片割れの顔もある程度見慣れてしまっている守衛さん。かるく帽子に手を当てて挨拶をして通り過ぎる。社員でも職員でもなんでもないのに、と少し笑う。家に戻る前に少しだけ買い物をして、帰宅。自宅についてすぐ、注文しておいた鰻が届いた。片割れのリクエストで今日は鰻のひつまぶしである。とはいえ、完全に自己流のひつまぶし。しかし、これを片割れは気に入ってくれているのでウチの定番料理の一つになっている。これだけでご飯2合をぺろりと平らげてしまうのだから相当気に入って貰えていると言っていいのかもしれない。それだけではかなり淋しい食事なので、若竹煮とお吸い物、漬け物などを次々と出してみる。が、半分以上を片割れは「食べきれないから」と片づける。ウチの実家はテーブルに載りきれないほどのおかずを出す家。反して片割れの実家は、ワンディッシュが多い。和食の場合でも、2~3種のおかずだけである。そういう環境の違いもあるからか、片割れは「全部を食べられないのが悔しい」と言う。別に一気に全部食べてもらわなくてもいいのだが、と思う。面白い環境の違いである。そんなことを考えながら、今日の出来事をつらつら話しているとやっぱり片割れはP屋にいっていたことが判明。先日、義母に言われた、全自動掃除機が欲しいという言葉を片割れはしっかりと覚えていて取ってあげなければ、と思っていたようだ。しかし、そのたびに玉砕している。これをとる、と決めていったら負けるんだよ、と笑うと、この間は取れたんだ、と胸を張る。どうやら柚木崎に内緒でいったこともあるようだ。置いてけぼりを喰らったらしい。一生懸命言い訳じみたことをいっていたが今度はその「おいてけぼり」に対するリベンジをしてみよう、と密かに思った柚木崎である。……いついけるかは疑問であるが(^^;
2004.04.21
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2004.04.20
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帰れない~、という状態になっている。人に頼みにくいことや、聞きにくいこと、少し調べて欲しいことなど細々したことが全部、なぜか柚木崎の元に運ばれてくる。昼食の時間も然り、休んでいる余裕がない状態である。人がとぎれない状況というのはこれほどまできつい物だったか、と久々に実感した。この4月は今までの中で一番キツい。殆ど勤務時間中、人の出入りがずっとあり自分自身は座っている時間がとても短いという状態。飛び回っているか、頼まれて調べ物をしているか。珈琲を飲もう、と口を付けた途端に話しかけられたり、ちょっとトイレ……と思って腰を浮かすと電話に呼び止められたり。大幅に勤務時間を超えての仕事。終わらない、というか、終えられない。とぎれることなく続く仕事というのはなんだか耐久レースにでも出ている気分である。結局、昼休みも取れず、トイレ休憩も取れず、もちろん気持ち的な余裕も全くなく。少し人がとぎれた瞬間を見計らって帰宅した。精神的にも肉体的にもヘトヘトである。こんなのが毎日続いたら体が持たないなぁ、とちょっと泣き言を言いたくなった一日である。
2004.04.19
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昨晩、帰宅したのは夜中の2時頃のことだった。親父さまを怒ろうと思っていたのだが全く起きる気配がなく仕方がないので3人でご飯を食べて3人で食後の珈琲を飲んでみんなで疲れをねぎらいあってから妹のところへ。山梨土産があったのと片割れと柚木崎の髪を切ってもらうためだ。遅くに行ったにもかかわらず、妹は全然気にも留めずに髪を切ってくれた。その間にいろいろと話をする。全然連絡をしてこなくなったTさんのこと、縁を切ったもう一人の妹の近況、そして、妹自身の近況。いろいろ話ながら、うちらは変わったようで変わってないのかもしれないと二人して辿り着いた。根本的なところは変われない。変わっていない。それがいいのか悪いのかは別としてだから安心していられるのかもしれない、と。自宅にたどり着くと、二人してヘロヘロだった。さすがに風呂に入る気力もない。片割れは運転に、柚木崎は片割れを眠らせないために精神力と体力を使い切ってしまったのだ。こういうのも珍しいことである。やっぱりここでも珈琲を淹れて、飲んで。ぐずぐずと崩れるように眠りに落ちたのが午前3時半のこと。さすがに、昨日の今日で疲れ切っている。それでもあまりにいいお天気なので昼少し前くらいに起き出して、まずは洗濯。干し終わるのと同時くらいに片割れが起き出してくる。それを見計らって、今度は布団を干す。ついでに枕元でずっと見張りをしていてくれた熊のぬいぐるみ(自宅にある一番古い子で、こぴちと名前が付いている)がずいぶんと汚れていたのに気づいた。……洗濯機でぐるんぐるん?同時に片割れと柚木崎の頭によぎった不吉な言葉。言葉が分かったとしたら、きっとこぴちは冷や汗を垂らしたに違いない。何度か手洗いしているもののさすがにその体力がまだ回復していない。……洗う、か?同時に片割れと柚木崎の視線が交わり、あっという間にこぴちは洗濯機の中に座り込まされた。「こぴち、がんばれ~♪」無責任な応援をして、洗剤と柔軟剤をいれ、洗濯。形が崩れたら直してあげればいい。そう二人して納得して洗濯機へいれたのだが、いざ終わって出してみたら、綺麗になってる上に型も崩れてない。嬉しいことである。しかし、せっかく綺麗になったのに、干すところが見あたらない。悩んで悩んで、片割れがポン、と手を一つ叩いた。「こぴちくん、ここで少しお空を眺めてなさいね」そういってちょこんと座らせたのは、タオルなどを干す円形に広がる物干しの上。ちょうど座らせると、ぽや~ん、と綺麗な青空を見上げるような姿勢になった。このぬいぐるみ、実はとても愛嬌のある顔をしている。表情があると言うべきか。手を離して部屋の中に戻ろうとしながら振り返るとどこかしら不安げな表情に見えた。……こけなければいいのだが。こぴちも綺麗に乾いて(案の定、少しこけていた)洗濯物も気持ちよく乾いて。それまでの間寝ていた柚木崎もだいぶ体力が回復した。ただし、柚木崎が寝ている間に遊びに出かけていた片割れに関しては、定かではない。疲れ切った先週。今週は少し穏やかであるといいのだが。
2004.04.18
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久しぶりに、雛鳥の声で目を覚ました。どうやら柚木崎のベッドの近くに、雀が巣をかけているらしい。窓を開けて見るのもなんだか可哀想な気がして可愛らしい「ぴよぴよぴよぴよ」という鳴き声を半分眠りながら聞いていた午前5時半。やっぱり眠っていたらしい。次に目を開けた時も、「ぴよぴよぴよぴよ」と鳴いている。これはしかし、家の中から聞こえている。暫くすると母が起き出す気配。どうやら午前6時半ごろのことのようだ。次に目を開けたのは午前8時半ごろのこと。選挙カーの攻撃(笑)と「ぴよぴよぴよぴよ」に起こされた。どうやら明日が選挙の日らしい。大音量で朝っぱらからがなり立てているので、辟易しながら起きあがった。もう少し寝ていたいが、これでは眠れないことが分かっている。片割れを見ると、まだ眠っていたので起こさないように着替えてから階下に降りていった。少しお腹も空いていたので、ご飯を食べようと思っていたのに母に持って行く料理の手伝いをさせられてしまった。春巻きをリクエストされてしまったので、9時半くらいまでには作り終えておかねばならないのだと手当たり次第に野菜を手渡される。言われるままに刻んで炒めて味付けなどは母にやってもらい、少し冷ましてから皮に包む。母の作る中華料理は、昔から評判がいい。本人は「料理嫌い」を自負しているし、宣言もしているのだが誰もそれを信じていないところが笑えてしまう。今回の春巻きは、皮が少し柔らかかったようだ。できあがった直後はパリパリしているのだが、少し油切りをしていたら、破ける皮が出てくる始末。破けていないものだけをより分けて、破けたものは証拠隠滅、とばかりに片割れと親父さまを含めてみんなで食べてしまうことにした。これで共犯である。慌ただしく料理を作って準備をしてそろそろ時間、と家を出た。面白いことに、片割れは当然の如く運転席に座る。目的地を知らないのに、と笑うと、親父さまは知らぬフリで助手席に。いつものことながら、自分で飲むための焼酎だけを抱えている。知らないから、といくら言っても動く気配がないので、仕方なく親父さまにナビをしてもらうことになった。最初の目的地へは問題なく着いたのだが、肝心の従姉の家には迷う。大体の道を叔父に教えてもらっていたのだが似たような小道をぐるぐると回ってしまう。そんなこんなをしていたら、叔母から電話が入った。目的地近くのわかりやすいところで待ち合わせである。ちょっとしたハプニングはあったものの無事に従姉宅へ到着。広いマンションである。子どもが二人いるから、と4LDKの間取り。リビングが縦に長く、20畳あるという。母がウチと比べて大きくため息。愚痴り始めたら、別の従姉が苦笑気味に言う。「うちのママもしょっちゅうこう。 あんまり気にしない方がいいよ~」その通りかもね、といとこ同士で笑いあった。人も全員揃って、お祝いの席が開かれる。親父さまは持参の焼酎を烏龍茶で割って飲んでいるが、母方の親戚は実はあまり飲める人がいない。少しセーブさせておこうと思っていたのだが、親父さまはあっという間に持って行っていた焼酎をあけてしまった。やばすぎる。酒の効果ばかりではなく、初孫に会ってきたばかりだからだろう。従姉の子どもたちにも笑顔を向ける。滅多にないことなのだが、酒が入っていると、親父さまはしつこくなる。ここ最近の傾向だ。かなりしつこい行動を取り始めたのでなるべく親父さまを視界の端にいれていとこ達と話す。実は、親父さまの牽制は好きではない。今まで酒に飲まれる親父さまを見たことがなかったから、ここ数年でめっきり弱くなってしまった様を見るのが厭なのだ。行動が、かなり人格を疑われるものになってしまう。そんな親父さまの姿を見るのも、そういう姿を他の人に見られるのも、厭なのだが、いくら言っても親父さまは聞いてくれない。「うるせぇ!」で終わってしまうのだ。そんなことを悲しく思いながら見ていると案の定、親父さまの行動が怪しくなってきた。まず、ろれつが回らない。しつこく飲めない酒を勧める。足下もおぼつかなくなっているのに、やっと座るようになった従姉の子どもに近づいていった。余りにも危険なのでそれは引きはがしたが親父さまは今度は寝ている従姉の子どもに近づく。ちょうどお昼寝の時間帯だったのだ。無理矢理起こされた従姉の子どもは人見知りが激しい子どもだったので、大騒ぎになってしまった。必死に謝るのは柚木崎である。従姉の子どもをあやしながら、従姉に謝っていたら親父さまの姿が見えなくなった。どこに行った? と探しに行こうとしたら従姉の家の犬(クリスという名前)を抱いてふらふらと戻ってきた。クリスは迷惑そうな顔をしている。少し離れた柚木崎にも、酒の匂いが届いている。クリスにしてみたら迷惑以外のなにものでもないだろう可哀想に、と思って受け取ろうとしたらなにかをぶつぶつと言っていた親父さま、いきなり抱えていたクリスを放り出したのである。見ていた柚木崎と母は、悲鳴を上げてしまった。結構な高さから放り出されたクリスは痛そうな鳴き声を上げて親父さまから逃げていった。思わず柚木崎、なんてことをするんだと親父さまを怒鳴りつけてしまった。しかし、親父さまはけろりとしてこう言った。「たかが犬ころくらいで、そんなに騒ぐな」情けなくなってしまった。母も平謝りに謝っている。片割れにまで頭を下げさせる事態になってしまった。こうなったら、強制的に連れて帰るしかない。まだまだ名残惜しかったけれど親父さまを無理矢理押しだし引きずり、帰ることにした。帰りの車の中で、親父さまは鼾を掻いて寝ている。母が悔し涙で呟いた。「人間性を疑っちゃうよ こんな人じゃなかったのに、全く情けないったら…… もう二度と、お父さんを連れて行きたくない」母の気持ちがよく分かるので、柚木崎は黙っていた。片割れも黙ったままである。せっかくのお祝いの席だったのになんだか気分が悪いままで帰ってきてしまった。酒が好きなのはいいとしても、飲まれるまで飲むのはやめて欲しいと思うのは柚木崎や母の我が儘なのだろうか。もしかしたら、もうクリスには会えないかもしれない。目を覚ましたらもう一度しかりとばしてやろう。
2004.04.17
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仕事を終えてから、柚木崎の実家に向かう予定になっている今日。いったん自宅に戻って着替えなどを詰め込み持って行かねばならぬものを大慌てで揃えて袋へ。ナビを忘れてはいかんとこちらも手にとって同じところへ置く。その間に珈琲を淹れている。少しお腹が空いていたこともあったので何かを多少なりとも胃にいれておこうと思ったのだ。珈琲を飲みながら思いついて近所のケーキ屋へ。持って行くケーキと、今食べるケーキを購入して自宅へ戻る。「こんなのを買ってきた」と片割れに見せると今にも涎を垂らさんばかりの様子。よほどお腹が空いてしまっていたらしい。しっかり食べて、片づけて、なんてやっていたら何時にあちらに着くか分からないので、立ち食いのように二人で食べて、自宅を出た。そのおかげか、お腹がなかなか今度は空かない。途中どこかで食べていこう、と話していたので夕飯は用意していなくていい、と柚木崎の実家には話していた。どこかで食べていかねばならない。実家周辺に辿り着いて、どこか食べるところ、と探して回る。時間も時間なので、開いている店は少ない。ラストオーダーを過ぎてしまっている店も却下だ。このまま実家に向かってしまったら絶対夜中にお腹が空いて目が覚める、という片割れがいるのでやぱりどこかで食べていくしかない。やっと見つけた店で夕飯を食べ、実家に着いた時間は11時を回っていた。両親とも起きている。ついでに、うららも起きている。ゴローのあとに来た、新しい実家のインコである。綺麗な若葉色をしている、と聞いていたのだが実際はこの文字のような色合い。緑に黄色と水色を混ぜたような色。頭は黄色い。ちょっと羽根の色がぽけぽけなので、女の子かと思ったのだが蝋膜のあたりは既に青くなってきている。男の子である。うららちゃん、初めましてと声を掛けて手を差し出すとなんの疑いもなくよっこいせ、と乗ってくる。顔を近づけようが指を近づけようが全く気にしない。撫でてやると嬉しそうに羽根をふくらませる。こっちも撫でて、そっちもお願い、とあちらこちらに頭を動かしては嬉しげに目を細めている。初対面の人間にこれ、ということはかなり人なつっこいのかと思いきや、そうでもないらしい。試しに片割れが撫でようとすると、今度は遊んでくれるの? とばかりに指を甘噛み。甘ったれの模様である。相変わらず巾着袋に入れて持ち歩き、家の中では放し飼い、外では巾着の中で、という生活を送らせているようだ。いつからこんな育て方をしてるんだか、もう覚えていないが今度のうららもこれですっかり慣れてしまっているようだ。母が「うらら」と呼んでも、知らんぷりして毛繕いをしている。警戒されることもなく、すっかり懐かれてしまった。「夜も遅いんだから、あんた鳥なんだから、寝なさい」と強制的に捕まえられて巾着袋の中へ。暫くもぞもぞ動いていたが、やがて大人しくなった。母が苦笑する。「面白いの、この子。 朝起きると……6時半くらいかな? まず、外の鳥にご挨拶するのよ。 それからまた少し寝るの。 今までにない夜更かし鳥だしね」うららにつられて夜更かしをしているという母。親父さまは既に布団に転がって、その様子を笑ってみている。実際に見てもこれだけ明るく笑えるようになったのだからと少しどころかかなり安心した。明日は従姉の新築祝いである。いつもよりやっぱり早起きだが、行かなければ。
2004.04.16
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土曜日に、従姉の新築祝いに顔を出す予定である。昼頃までに行くのだろう、と考えると、こちらから当日、現地集合現地解散は厳しいものがある。なので、実家に連絡を入れておいた。明日の夜からそっちに行くよ、と。もちろん、柚木崎も片割れも仕事を終えてからなので実家に着く時間は夜の10時を過ぎる。夕飯は勿論食べていてくれていいことと、親父さまさえ起きていてくれていれば母は眠ってしまっていてもいいことを伝えた。すると、母は明るく笑うと「最近お母さん、夜更かししても大丈夫なのよ」と言い出した。珍しい。ウチの母は、ずっと早寝早起きの人だったのだ。それから暫く話をして電話を切った。うららが来てから、やっぱり母は明るくなったように思う。少し元気が出てきたのだろう。ゴローがいなくなって一月半ほど。うららが来て、一月ほど。これからどんどん、うららには明るい話題を提供して欲しいと思うこのごろである。
2004.04.15
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今年は職場に顔を出してくれる顔ぶれがずいぶんと違う。前もって「もう来られないよ」といってくれた人も多いのだがいきなり来られなくなった人も結構いる。10人近くが入れ替わったのではないだろうか。そんな中で、常勤が1年間研修に出てしまうので代わりに来てくれる人が来る日になった。実はこの日を、柚木崎は戦々恐々と待ち受けていた。来る人は、柚木崎の先輩に当たる人である。以前の職場で、同じ立場にいたこともある人。柚木崎が就職する前に辞めてしまった人なのだが、その後も何度かお目にかかる機会があり、顔見知り程度には知っている人である。昨年、めでたく結婚されたのでお祝いにイヤープレートを贈った人でも、ある。なぜ「戦々恐々」なのかというと以前同じ仕事をしていた人に、仕事ぶりを見られるというのは結構キツいものがある。しかもこの先輩、どこまでもどこまでも仕事の範囲を広げた人でプライベートと仕事の区別を一切しなかった人でもある。あとを引き継いだ先輩が範囲を狭めるのにとても苦労していたのを覚えている。だから、柚木崎の現在の仕事を直接目にして口を出してくる可能性もあるのである。それに加えて。お祝いを贈ったことに対することを何一つ言ってこないところも引っかかっている点だったりする。別にお礼を言って欲しいとかいうことではない。「○○日に到着するようにお祝いを送りました。 喜んで頂けると嬉しいのですが……」とメッセージを添えて、宅急便で送った品物。同時に送った人からは、無事に届いた旨の電話があり、さらに丁寧なお礼状まで頂いた。しかし、この人からは一切なにもなかったのである。無事に着いたのか心配していたのだが、まさか本人にそう聞くわけにもいかないので黙っていた。柚木崎に対して、人に対する礼儀云々とかなり長々と話をしたことのある先輩である。だが、そのことも、蒸し返すのも大人げない。今日来た時に、その話が出れば、この件はわだかまりも消えるだろう。何事もなかったように過ごされたら……。やっぱり、蟠ったままになるのだろうか。そのあたりは見当がつかなかった。ドキドキしながら時間が過ぎるのを受け流す。久しぶりにあった他の方と、長くいらしていた方が来られなくなったことを嘆く。お顔が拝見できなくなったこと、声が聞けなくなったこと、それら全てが淋しいという感情をかきたてる、と。そんな話をしているところへ、当の先輩がやってきた。丁寧に挨拶を交わす。先輩は、「1年間お世話になるので」と、菓子折を持参してきていた。柚木崎の上司に当たる人たちへのおみやげである。その後、仕事をしながら幾度となく話す。とりとめのない話、質問を受けて答えることも。しかし、やはり一言も結婚祝いの話は出なかった。上司たちに対する感謝の気持ちは延々と話されるのだがそれ以外は全くない、と言っていい。そうか、そういう人だったのか。すこんと答えを渡されたように思った。この人は、そういう人だったということだ。そういう一面を持っているということだ。今まで見ることのなかった一面を見ることが出来て、この人をまた少し理解できたのだろう。そう思うことにした。目上にはめいっぱい腰を低く。同僚にはそれなりに。そこまでは分かっていたのだが、さらに一言加わることになった。『部下には自分が上司にした以上を求める』そういう、人だった、らしい。来週来た時に少しだめ出しさせてもらうから。そういって帰っていった先輩。なんだか水曜日はやりにくい曜日になりそうだ。
2004.04.14
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今朝起きると、片割れの調子がおかしい。頭が痛い、気持ちが悪い、という。なんだか先日の柚木崎のような感じである。目が回っている感じでもなく、純粋に気持ちが悪いようだ。熱を計ると、微熱がある。ここのところの疲れが、きっと溜まったのだろう。寒い、とも言っているので、今日は仕事を休ませることにした。職場に電話をした方がいいか、と聞くと自分で掛けるから大丈夫、という。後ろ髪を引かれる思いで仕事に出かけたが職場に着いたらとんでもなく慌ただしい一日となった。なにせ、昼ご飯が食べられないのである。朝淹れたカップ一杯の珈琲が仕事している間に摂った水分の全てである。一口がぶりと飲んでは飛び回る。そんな感じ。本来なら守備範囲外の仕事まできているし、最初だから仕方がない、と思っている部分もあるがさすがに昨日の今日である。疲れは週の頭だというのに、すでに溜まってしまった。へろへろしながら帰宅すると、朝よりは元気な片割れの姿があった。ベッドに転がって電気をつけて、本を読んでいる。頭を上げていて大丈夫なのか聞くと気持ち悪いのも頭が痛いのも収まった、という。なんだか出かけた気配もある。煙草がなくなったから買いに行った、と言っていたが出かけられるくらい復活したのなら問題ないだろう。念のため、夕食を作る間は寝ているようにと布団をかぶせた。夕飯を作り終えて声を掛けると片割れは熟睡している。やっぱりまだ調子がイマイチなのだろう。寝かせておいた方がいいか悩んだのだが、体力をつけさせるためにはきちんと食べさせた方がいい。昼食だってろくに摂っていないはずなのだ。そう思って、無理矢理に起こした。夕食摂って、風呂に入って。明日に疲れを持ち越さないように早々に寝ることに。あんまり慌ただしいのは歓迎したくない。忘れていることがないか、少し不安な一日であった。
2004.04.13
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今日から本格的に仕事が始まる。本格的な仕事の初日、というと慌ただしいのが当たり前だというのが柚木崎の認識。まさにその通りの一日で、終わって自宅に帰った途端、一気に疲れてしまった。この状態で一週間が過ぎるとなると気が重たくなってきてしまう。本格的に仕事が始まるのと同時に今日は会議がひとつ入った。前もって「出てください」と言われていたのでそのつもりではいたのだが、他の仕事がこんなにも慌ただしくなるとは思っても見なかった。例年と比べて1.5倍ほどの慌ただしさである。人が増えたのもあるのだが、その人たちの要望に、一人で当たらねばならないというのがやはり間違えているのかもしれない。一つの仕事をしている最中に、二つも三つも仕事を頼まれてしまう。電話を受けている間でも、メモで仕事が来たりする。話しかけられることだってあるのだ。もともと、2~3人分くらいの話は同時に聞いても要点は覚えることは出来る。さすがにそれを一日に何回もやると頭の中が飽和状態になってしまうのは否めない。データの消去がうまくされていないのかもしれない。混乱し掛けてくると、自分でもメモを取るようになる。電話で受け答えをし、目の前で話す上司の依頼をメモし、同時にPCでメールに対しての返事を打っている。そんな感じである。それが朝9時から会議が始まるまで続いた。会議が始まったら始まったで今度は大変。いつまでも終わらないのである。一つの議題をあっちに飛ばし、こっちに投げして気がつくと違う話をしていたりする。今年度から会議の内容を録音して欲しいと言われ、カセットテープに録音をしたのだが、実に3時間以上の会議となった。議題は1つしかなかったのだが……。なにを議事録に残しておくべきか悩みながら会議室を片づけていて、呆れてしまった。一緒に会議に出ていた後輩は、どうやら涎を垂らして寝ていたらしい。後輩の座っていた席の机の上には透明な水たまりができていた。……飲んでいたのは紅茶だったからなあ。あの会議では仕方がないかも、と思いながら苦笑である。へとへとに疲れて帰ってみると片割れが既に帰宅していた。吃驚して聞いてみると、気持ちが悪くて帰ってきたという。先ほどまでどうやら眠っていた模様だ。夕飯、どうしたものか。そんなこんなであわあわと過ごした一日。明日もこんな様子なら、猫の手も借りたいと切実に思う柚木崎である。
2004.04.12
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先月、母に使っていたデジカメをあげてしまった。この話をすると、「そんな、もったいない!」と思われる方も多いのだが、実はこのデジカメ、200円である。おもちゃのデジカメではない。富○フイルム製の、購入すれば1万少しするものである。画素数もそんなに高くなく、デジタル2倍のズームしか持っていない、基本的には単焦点のデジカメである。充電式の電池ではなく、乾電池であることととても軽い代物だったという利点から普段の持ち歩きデジカメとして活躍していた。それを、カメラが壊れたという母にあげたのである。母にあげてしまってから、柚木崎の持ち歩き用デジカメは携帯のデジカメだけになってしまった。使っている携帯のものは、本当におもちゃのようでなんだか面白味に欠ける上、保存しようにも画素数が余りにも小さすぎてこれまた面白くないという状態だった。今年の桜はまた綺麗だったので、是非写真として残しておきたかったのだが、携帯のデジカメではなんだか納得いかなくてうだうだしていたところである。そんな柚木崎を見かねたのかなんなのか。片割れは3月末くらいからずっと「デジカメを買う!」と暇さえあれば電化製品を見て回っていた。しかし、どれをみてもピンと来ない。いくら小さくて持ち運びに便利とはいえ、4~5万もするデジカメを、普段持ち歩き用にするのはなんだかとっても気が引けてしまった。そんなことを考えていたからだろうか。全く購入する気がないまま4月に入ったのである。さすがに桜も散り始めたこのごろ。片割れは一大決心をしたようである。「絶対に、今日こそデジカメを買う!!」そういって起き出したのは昼過ぎごろ。軽くブランチをすませて速攻出かける。近くの電器屋巡りである。さく○や、YAM○DA、KOJ○MA、NOJ○MA……手当たり次第、と言っていいほどあちらこちらを見て回った。さすがに疲れた、と思った頃にふと目にとまったデジカメがある。それが、以前使っていたものの上位機種である。さすがに電池は充電しなければならない電池だがメモリー媒体が以前のものと同じ。これなら母にあげる際、用済みになった媒体も使える。重さも結構軽い。画素数もハニカム構造なので、とても高い。(実質的な画素数はその半分なのだが)それなのに、値段はとてもリーズナブルだったのである。片割れの袖を引いて注意を促し、近場にいる店員を捕まえた。どんな感じのものか、使い勝手はどうか。いろいろ試していたら、店員が値引き交渉に応じた。プラス、ケースもつけるとのこと。ポイントも溜まる店だったので、片割れが了承。これで新しいデジカメが決まった。持ち歩き用のケースもつけてくれたのでわざわざまた探す必要がないのが嬉しい。さっそく帰宅してから充電し、充電が終了したところで片割れを撮影。いきなり撮影したからか、なかなかに面白い表情である。さて、次はなにを撮ろうか。
2004.04.11
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片割れと話していたのだが、本当は今週末、柚木崎の実家に行く予定だった。山梨の土産もあるし、新しく来たちびすけを母も見せたがっている様子。実兄たちのところへ行ってきたおみやげもあると言っていた。そのあたりを含めて、早めに行った方がいいね、と言っていたのだが昨晩、やっぱり今週はゆっくり休もうということになった。二人ともなんだか疲れ切っていたのである。柚木崎は言わずもがなだが、片割れもずっと残業続きで帰りが遅かった。寝不足もかなりあると思われる。二人とも、下手をすると足下がふらついてしまうのだ。そんな状態で出かけてもろくなことがない。ということで、今週末は怠惰に過ごす。手始めに今日はどこまでも寝たおすことにした。買い物やら必要なことは明日に回す。さて、ねるぞー!!
2004.04.10
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なんだか朝から慌ただしい。もともと、予定で忙しいことが分かっている一日。分刻み、下手をすると秒刻みで予定が詰まっている。昨日休みをもらってしまったので、打ち合わせを一切していない柚木崎。聞いてみると、打ち合わせらしいものはしていないとのことで一安心した。いざ仕事が始まってみると、目が回るほどに忙しい。慌ただしいなんてものでは済まない。落ち着いて椅子に座ることはできない。あっという間に先日のように足が痛くなってきてしまった。気がつくと走り回らなければならないほどの状態。例年より忙しい気がする、と思って周りを見回して気がついた。他の同僚は、それほど慌ただしくしていない。どうしたことだろう、と聞いてみると、仕事を持ってくる上司や、飛んでくる仕事の多くは先輩が割り当てているとのこと。柚木崎が全く飲み物も飲めない状態を見た上司の一人が先輩に聞いてくれたらしい。帰りがけに聞いて、呆れてしまった。先輩は、こう言ったそうなのだ。「昨日休んで一日暇したぶん、今日働いてもらうんです」柚木崎、先輩から給料をもらっているわけではない。ずる休みをしたわけでもなく、もちろんさぼったとかそういうわけでもない。体調を崩すことは誰にでもある。しかし、休んだ柚木崎には、それは言えない。そうですか、とため息をついて、やるだけである。朝8時半から夜7時半まで。昼休み20分。それ以外、全部立ち仕事及び走り回り。それが昨日休んだことの代償である。なんだかなぁ……。
2004.04.09
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朝、目が覚めると、とても寒かった。外はとても良い天気。ほどほどに暖かいのだろうことが見るだけで分かる。が、寒い。頭も芯のあたりがずきずきしている。やばい。風邪を引いたかもしれない。熱を計ってみるとそれほど高くはないのだが、とにかく寒気が酷い。起きあがると寒さの余り、がたがたと震える始末。これでは仕事に行けない、と片割れに諭され今日は頼まれごとをされていたのだけれど仕事を休ませてもらうことにした。職場には片割れが連絡を入れてくれ、それを申し訳なく思いながら寒くて丸まっていた。しかし、それでも気づいたら眠っていたらしく、片割れが仕事に出かけていったのにも気づかなかった。出がけに布団を山積みしていってくれたのにも気づかなかった。気がついたら家の中に人気はなく、山ほどの布団に埋もれて窒息し掛けている自分がいたのである。それほどたくさん布団を積んでくれたおかげで目が覚めた時には非常に喉が渇いていた。布団からのそのそと起きてキッチンへ。何か飲み物……と思いながら探す。そういえば昨晩、珈琲を淹れておいたはず。そう思ったが、片割れが飲んでしまっていたらしい。新しく淹れなおすか、と思い直して上着を着込んで珈琲メーカーをセット。朝ほどの寒さはなくなっている。念のため、熱を計ると今度は37度を超えている。しかし、寒くない。適当にあるものを食べて、暖かいを通り越して熱い珈琲を飲んでまた布団に戻ることにした。次に目が覚めたのは夕方である。また寒くて目が覚めた。布団は片割れが掛けてくれた時と同じように大量に体の上に乗っかっている。重たいのに、寒い。毛布3枚に羽毛布団1枚も掛けているのに寒い。熱を計ると今度は36度後半。おかしい。何かが間違っている。そう思いながら起きあがる。まるで朝の再現である。頭も痛い。寒い。とにかく寒い。仕方がないので、また大量の布団に埋もれて丸くなった。気づいたら、片割れが帰ってきていた。「一応、頼み事してきてた人にも直接謝っておいたよ」と、嬉しい一言。申し訳ないと思いながら頭を下げた。熱を計ると、体温は平熱に戻っていた。頭の痛いのも収まっている。明日は仕事に行けそうだ。
2004.04.08
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今年度からいきなり、職場のノートパソコンの管理を任されることになった。管理と言っても、メンテナンスなどはできないのでそのあたりは断ったのだが、誰がなにをいつ使っていて、誰がどれを持っているというのを把握しておいて欲しい、と言われたのだ。この話が来た時、柚木崎は困ってしまった。ノートパソコンがおいてある場所に、柚木崎が常時いるわけではない。だから、勝手に持って行かれたとしたら柚木崎が把握することが出来ないのである。そのため、最初は断った。すると、その話を持ってきた先輩は片方の眉をぐいっとあげた。厭な表情である。小馬鹿にしたような言い方であんたしか暇な人間はいないんだから的なことを言われ腹を立てて一番上の上司に直訴した。しかし、上司は「やってくれると助かるなぁ」である。仕方がないので、出来ることを並べ立ててこれ以上のことは出来ないと突っぱねることにした。それが良かったのか悪かったのか。上司から「それでいい」とのお墨付きを頂いて管理と言いながら把握していることが少ない管理が始まった。常勤には使いたい日時を申告してもらい、そうでない人にはあいているものを使ってもらう。いきなり使う人のためには使用台帳を用意した。それが一番手っ取り早かったのである。だが、実際そのシステムを運用しても、最初だからだろうか。全然困ったことに、分からないのである。気づくと一番新しいPCが消えている。誰が持って行ったか、常にいる人に聞いても首をかしげる。台帳を見てもなにも書いていない。一つ、また一つとなくなっていき、とうとうMACのPowerBookしかなくなってしまった。これは使える人が殆どいないのである。その話を上司にすると、最初に柚木崎に管理の話を持ってきた先輩に話が行った。すると、先輩は上司にこう言ったのである。「あの人が管理した方がいいって言ったから やってもらうことにしたんです」はぁ? と言う感じである。誰がそんなこと言ったよ!! と怒りたくなってしまった。そんな話は一言もしたことがない。それどころか、今回の仕事は勝手に割り振られてしまった。柚木崎の希望なんて、一つも聞かれていないのだ。それなのに勝手にそんなことを言われるとは、腹が立つを通り越して呆れてしまった。もちろん上司に確認をされたが、一言もそんなことは言っていないと断言した。責任をなすりつけられても困るからだ。結局、PCの管理に関して、厳密には出来ないこと、柚木崎に責任を問わないことをきちんと理解してもらうことにした。その話をきちんと通して、それが出来ないのであれば管理は無理、ということも伝えた。これでは管理とは言わない。普通は、言わない。が、出来ないことをやれと言われたら、出来ることをやるしかないのである。まだまだ揉めそうなこの問題。こんなのを抱えてるから疲れが溜まるのかもしれない。
2004.04.07
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ここのところ、ずっと左手が痺れている。しびれというか、痛みというか。少し表現が難しいのだが、肘のぶつけるとびりびり痺れる場所を勢いよくぶつけてしまって暫くした感じがずっと続いているのである。最初は左肩の肩胛骨のすぐ真下が痛かった。片割れに頼んでマッサージをしてもらったのだがいくらやってもらっても治る気配がない。仕方がないので、痛くてだるい状態をずっと続けていた。この左手が痺れている間もやっぱり肩胛骨の下は痛いままである。日常生活に特に支障はないのだが、痺れた感じがずっと続いているのはやっぱり気持ちが悪い。血行が悪いのかと思いきや左手は右手よりも熱いのである。血行不良なら冷たくなるはずなのに。原因は不明のまま、今日もまだしびれが残る。いつになったら治るのやら。
2004.04.06
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ぽっかりと予定表があいている。4月の忙しい時期なのだが、今日は予定表の中では特に仕事らしい仕事がない日である。この1週間は予定が詰まっているのだが今日だけは珍しいという感じの日だ。それでも、仕事はもちろんある。ちまちまと仕事をしていると、今年から週2の出勤から常勤になった上司が来た。「今年度もよろしくお願いします」「いろいろお世話になると思うけど……」常套句というか、年度初めの当たり前のご挨拶である。常勤になると、基本的に柚木崎の管轄からはずれる。仕事面では殆ど顔を合わせなくなるのだ。それでも挨拶に来てくれた、というのはやっぱり慣れ親しんだ顔だからかもしれない、と嬉しく思った。ところがである。そんなに忙しくない本日。顔を出してくれたので、常勤になったとはいえサービスでお茶を淹れた。うちの職場では、お茶は基本的にセルフサービスなのだ。珈琲然り、紅茶然り。自分で飲むものは自分で淹れる。これ常識。そう一番最初に決められたことである。しかし、面白いことに、というか。柚木崎のいるところには、常勤が時々顔を出す。週1、週2で来る上司達と話をするためもあるが、分け隔てなくお茶を淹れて出してもらえるから、という話を一度耳にしたことがある。基本的には「茶は淹れない」。しかし、好意で淹れる分には問題がない。柚木崎のいるところはどうやら『特別区』らしい。柚木崎は「好意」で上司達に茶を淹れている。それはさておき、久しぶりに顔を合わせた上司なので、少し奮発して、美味しいと評判の紅茶を淹れた。空いている席にすとんと腰を下ろしたので多分話したいことがあるのだろうと推測したからである。うちの職場で、変わり種の紅茶は柚木崎のところでしか飲めない。時々、それを狙って来る上司もいるがそれはそれでご愛敬なので笑って淹れることが多い。今回顔を出した上司はそういう人ではないので素直に喜んで「いい香り~」と満面の笑みを浮かべてくれた。香りは人をリラックスさせる効果がある。紅茶にしても、珈琲にしても、緑茶にしても。香りをどれだけよくするか、結構苦心しているのだ。喜んだ顔を見られたのはかなり嬉しい。にこにこしながら柚木崎も座ると、上司はどう切り出したものか、という表情になった。どうやら他の部署では言えない話らしい。なにか、とにこやかな表情で聞くと、ようやく口を開く決心がついたようである。「あのね、5月半ばの土曜日なんだけど」この日は常勤全員出席が義務づけられている日である。日本にいない、とか、主張中とかであれば免除だがそうでない限りは全員出勤して欲しい、という要請が毎年出る。その日のことを聞かれたので、少々戸惑った。来月の定例会議で、必ずこの話題が出るはずなのだ。それを前にして? と思って気づいた。そういえば出欠確認が既に来ている。少しだけ首をかしげて言葉の続きを促すと上司は困ったような笑顔で続けた。「どうしても出なきゃダメ、かな?」基本的には全員でなきゃですね、と答えると明らかに落胆した表情になった。面倒くさい、他の人が出ればいいじゃないか、というのは毎年出る苦情である。自分が厭なことを人にさせるのか? と聞きたくなるが柚木崎が口を挟むことではないので黙っている。上目遣いに見上げられたが、にこやかな表情は崩さないでいた。しばらくそのまま膠着状態が続いたが、やがて諦めのため息が上司の口から漏れた。「そうかぁ……。 あなたに言えば、 出なくていいって言ってもらえると思ったんだけど、 とんだ見込み違いだったんだぁ」そうため息と共に言われて愕然とした。見込み違いってなんだ? と。顔は笑顔を保ったままで聞いてみると、上司は拗ねたような表情のままで答えた。「だって、あなたこの職場長いじゃない? 出なくていいって言ってもらって、 大手を振って出ないようにしようと思ったのに。 なんで私の都合のいいようにしてくれないのかしら? 私が常勤になったから?」責められてしまった。元々、柚木崎は上司達の仕事を円滑に進めるためにいる。便宜を図ったり、イエスマンをするためにいるわけではない。そんなことをしていたら身が持たないことを知っているしそもそも躰が幾つあっても足りない。そういったことを、もっと柔らかな言葉で話した。しかし、上司は拗ねた表情を変えない。どうしても「出なくていいですよ」と言って欲しいのだ。柚木崎にはその権限がないというのに。やがて、音を立ててティーカップをおいて上司は立ち上がった。あなたには失望した、と言って、そのまま出て行ってしまった。残されたティーカップを見ながら今度は柚木崎がため息をついてしまった。過剰な期待、というか、なんというか。こういうのは嬉しくないな、と茶器を片づけながら思った。誤解されないようにこれからはしなければなのか……。
2004.04.05
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いい具合に桜が咲いている。目の前の川には、驚くほどの桜の花びら。こういうのも綺麗でいいな、と思いつつ、自宅前の一列だけ、どうしてまだ咲かないのかなとも思う。種類が違うのか、ウチの前の通りだけ、まだ一輪も咲く気配がない。ここだけ木が若いのだろうか。そんなことも思いながら、今日は外出した。出かけた先は、Yさんのところである。「是非遊びに来てくださいね」と言ってもらえたのでこれからお世話になるディーラーさんを見に行ってみようということになったのである。片割れの話を総合してみるとYさんに着いていった常連が、かなりの数いるらしい。人徳である。そのなかの一組だね、と笑いながら店に向かった。着いてみると、なんだか薄暗い感じのする店内である。広さは以前お世話になっていたところよりも広い。が、代わりに天井が低いのだ。その分狭く感じてしまう。なんだかもったいない。見ているとYさんが飛んできた。「まだ慣れてないんですけど。 ここ、パーツがいろいろ置いてあって面白いんです。 コスモも数台お客さんでいるみたいなので、 なんかあった時便利ですよ」それじゃまたあとで、と慌ただしく席に案内してくれてまた慌ただしく仕事に戻っていく。飲み物を持ってきてくれた女性がくすくす笑っている。「なんだかYさん、嬉しそうです」ここに来て初めての表情をしている、とその女性は呟いた。Yさん、きっとこの職場でも大事にされる。女性の言葉を聞いてそう思った。暫くして戻ってきたYさんは、ウチの担当だったMさんの話や、ここのディーラーにおいてある車の種類や数、その他諸々を楽しそうに話してくれた。ウチで使っている某社のパーツも相当数おいてある。片割れと一緒にそれらを見ていると「そういえば、先日20Bのコスモを廃車にしたんですよ」と、Yさんが少し痛ましげな顔で言ってきた。ウチの子は13B。今度の車検で板金もしてもらう、という話をしている。片割れだけでなく、柚木崎も大事にしたいと思っている子だ。その子の兄弟分が、廃車処分。Yさん、きっと辛かったろうな、と思う。このYさん、人一倍というか、柚木崎が知るディーラーの人の中で、一番車を愛している人だと思う。大事にされてない車を見ると涙をこぼさんばかりに悔しがり大事にされている車を見ると、嬉しくて目が潤んでしまう。柚木崎も車が好きなのでYさんの気持ちがやっぱり分かる。辛かったのかな、と思っていたのだが、Yさんは淋しそうな表情を見せた。「オーナーさん、凄く悩んでたんです。 車検一度切ったんですよね。 でも、決心つかなくて、ずっと持ってた。 乗ってあげなかったからでしょう、だいぶ傷んできたんです。 それを見て、泣く泣くという感じでした」そこまでしんみりと言って、頑張って笑顔作りました、というのが分かる笑顔で片割れに向く。「パーツ取れるかな、って思ったんですけど、 やっぱり傷んじゃっててダメでした」大事に乗ってくれている人のために取りたかったんですけど、とYさんが笑うので、柚木崎も片割れも笑う。それは残念。でも、仕方がない、と。しばらくウチの子のメンテの話や店の話やらを聞いて、今日はこの辺で、と帰ることに。Yさんが直々に車を持ってきてくれて前の道路に出してくれ、バックミラーで見える限り、見送ってくれていた。きっと嬉しかったんだろうね、と片割れが呟く。Yさんの人徳だよ、と柚木崎が笑う。今まであまり流行っていなかった、ある意味穴場の店である。この先、Yさんのおかげで人が増えそうだ。そういうのも見るのは楽しそうである。桜が、Yさんの門出を見ていた。
2004.04.04
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4月頭は週休2日が守られない時が多い。元々、きっちりと週休二日制とは言い難い柚木崎の職場。できれば休みなど取って欲しくない、などとという意向の上司がいたりして休みに関しては結構難しい職場でもある。曖昧な、というか、いい加減な、と言うか。そんな感じも見受けられる職場でもあるが。今日は朝っぱらから夕方までの出勤。しかし、この間からそうなのだが、朝9時までに出勤、午後5時に終業のはず。柚木崎は8時半から9時までの間に着くように行っているのだが9時を過ぎても誰も来ないというのはどういうコトだろう。同僚達の時間に対する甘さを再認識させられる。時間が守れない、というか、誰かがやってくれるから(いてくれるから)いいや、という甘えというか。その誰かに当てはまってしまうことが多いので自然ため息が漏れてしまう。今日も来ない。書類を受け取りに行って、どうしたものかと悩んでいたら10時近くになってやっと一人が出勤。後は任せて自分の席へ移動。きのうに引き続き、書類の片づけとともに調べものやら捜し物やら。お昼の時間を忘れそうになるが、お腹に訴えられてなんとか思い出す。気づくと全員揃っていたようである。まぁいいか。これで5時までは辛いなぁ、と思っていたらひょっこり後輩が一人顔を出した。「別に5時までいる必要ないと思いますよ。 お先に失礼します」……おいおい、って状態である。そんなこと誰にも聞いていない。それならそうと早く言ってくれ、と思ってしまった。時間を見ると、既に午後3時半を回っている。今日は片割れが送り迎えをしてくれているので片割れに「帰っていいんだって」とメールをした。さて、帰りながらどっかに寄ることになるんだろうな。どこに寄るのかは分からないが、片割れが迎えに来てくれるのを待とう。
2004.04.03
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4月の頭というと、やはり異動の季節である。柚木崎の本日の仕事も、身分異動に関する仕事である。自宅から少し遠い場所まで行かなければならないので家を出る時間は結構早い。面倒だな、と思いながら電車に乗る。久しぶりの電車である。ここのところ車でしか出かけていなかった証拠だ。窓から見える景色が懐かしく、また、満員電車の感覚を久しぶりに味わった。朝はあまりいい天気とは言い難かったが、昼過ぎくらいからいい天気になった今日。風が強く、外で仕事をするとなると飛ばされそうな勢いである。せっかくの満開の桜が、強い風に吹かれて本当に吹雪のように散っている姿が見事である。それにしても人出が凄い。意外な場所で意外な人たちに見つかってしまったが仕事だから仕方がない。ただ、プライベートで知っている人たちに仕事の顔を見られるのは少し気恥ずかしい思いがした。結構長い立ち仕事のおかげで、足がかなり痛くなってしまった。まだ長い時間電車に揺られなければならないのかと思うと少しどころではない憂鬱な気分になる。しかも、ちょうど帰宅ラッシュ直前の時間帯。この時間帯から、混み始めるのは目に見えている。参った、と思いながら片割れにメールをすると途中まで迎えに行くからここまでおいで、と返事が来た。とても助かることだが、片割れ、仕事を早上がりしてきたようだ。なんだか申し訳ないような気分になってしまった。混む方向とは逆の方角の電車に乗る。本来なら向かうはずとは逆の方面である。それでも既に電車は混み始めていた。座れない。それどころか、ドア近くで寄りかかって立つことも出来ない。仕方がないので、上機嫌で仲間と話しているサラリーマンの隣に立った。つり革にぶら下がるようにして立つ。かなり痛む足で立っていたが、運良く2~3駅目で目の前の席が空いた。座りたいな、座ろう。そう思いながら体を動かしたところ、隣のサラリーマンは柚木崎を押しのけて座ってしまった。仕方がない、まだ立ち続けなければ。また暫くしたら、そのサラリーマンの隣があいた。仲間側ではなく、柚木崎側である。しかし、その席に座っていた人が立ちそうになるのと同時にそのサラリーマンは席を移動し、自分が今まで座っていた席を仲間に座らせる。ちょっとどころかかなりマナーが悪い。厭な思いをしながら、結局座れたのは降りる駅のすぐ近くに来てからのことだった。それでも、少しでも座れたのは助かった……。駅の改札を出てから片割れに電話をしてみる。着いたけど、どのあたり? と聞くと、近くまで来ている様子。どの道を走っているか聞いて、迎えに行くようにこちらからも歩き始めることを伝えた。その駅の周辺は、歩道橋で覆われている。駅構内から出て通りそうな道を覗き込んだら、ちょうどウチの子(車)が信号待ちしているのが見えた。間に合わないかもしれないと思いながら、その方向に歩き始める。案の定、あと少し、というところで片割れは柚木崎に気づかず、交差点を曲がっていってしまった。慌てて電話を掛けると、「え? 後ろ??」と驚かれる。追いかけたんだけどね、と苦笑しながら同じ方向に歩いていると聞き慣れた音が背後からした。振り返ると、今度は反対方面へと曲がっていく片割れ。その辺で停まれるところがあったら停まってくれ、とお願いして柚木崎が追いかけることにした。ごめんね、ごめんねと頻りに恐縮する片割れに迎えに来てくれたことのお礼を言う。おみやげを手渡すと、嬉しそうに後部座席においた。帰り道、片割れが話してくれる。「Yさん(ウチの子の専属メンテナンス)、異動だって。 担当のMさんも別部署だけど異動になるんだって」担当のMさんからの連絡ではなく、Yさんからの連絡だったことが笑えてしまう。以前、片割れと話していたことがあるのだが、Yさんが異動になったら、うちらは追いかけることに決めている。その話をすると、片割れは楽しそうに笑ってこういった。「うん。既にYさんには話し済み。 そしたらカルテとか、全部持って行ってくれるって」さすがはYさんである。結構Yさんを追いかける人、多いだろうね、と言うとそうだろうね、と返事が返ってきた。これはYさんの人徳である。いいことだ、と二人で笑いながら帰ってきた。春は別れの季節であると同時に、出会いの季節でもある。異動の季節。さて、新しい場所でいいことはあるだろうか。たくさんの『いいこと』が待っていることを祈りたい。
2004.04.02
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約2週間の自宅待機期間が終わり、今日から新年度の仕事が始まった。とはいえ、まだなにもやることはない。休みの間に溜まっていた書類を片づけて明日行かねばならない場所での仕事を徹底的に頭に叩き込む。それが今日の仕事である。久しぶりに職場に来てみると、驚くほど見事な桜が出迎えてくれた。車で入っていく道路には豪華としか言いようのない桜が豪奢に咲いていた。ここでいつか全職員で花見をしよう。そう話していたのがかなり昔に思える。それほど柚木崎も、いろいろな人と仲が良かった時期がある。でも、みんな離れてしまった。体の距離が、ではない。心の距離が、である。淋しい話だ。そんなことを思いながら舞い散る桜を一瞥して職場へ向かった。職場に行くと、まだ誰も到着していない。時間より早く来たのは確かなので暫く来ていなかった分溜まっている書類に軽く目を通す。多い。今日一日、という時間があるのでまずは今日の分の書類を受け取って来ねば、と受け取りに行くことにした。久しぶりなだけあって、きっとたくさん溜まってる。他の人たちは交代できていたのだがこの書類を受け取りに来る人はごく限られているため溜まっていることを予測していた。案の定、山積みどころでは済まない数の書類や郵便物。挙げ句の果てには本まで。25型TVがすっぽり収まるほどの段ボールにめいっぱいと結婚式の引き出物を入れるような紙袋にぱんぱんに詰まっている。さすがに台車がないときつかったか、と少し後悔。その部署の人に台車を借りていっても言い、との許可を頂いたので余り使われていなさそうな台車を選んで持ってきてまず段ボールを、と持ち上げようとして固まってしまった。持ち上がらないのである。少しだけ端を持ち上げて右手をつっこみ、反対側も……と思ったのだが、持ち上がらず。さらに、右手が抜けなくなってしまった。情けない。結局、その部署の人3人に手伝ってもらってようやく台車に一つ乗せ紙袋をその上に乗せて自分の部署へ戻った。まだ誰も来ていない。書類や郵便物、配送されてきた本を仕分けしながら珈琲を淹れるために珈琲メーカーに水を入れる。いい香りが漂ってきた頃に、ようやくエレベーターが上がってきた音がした。仕分けを終えて、メールボックスにつっこみ始めたが音がしたのに人が来ない。時間を見ると、出勤時間と聞いていた時間をとおに過ぎているのにまだ柚木崎以外誰も来ていない。時間を間違えたかもしれない。そう思いながら仕分けを続ける。残るは同僚分。これは、机の上に置けばいい。ひとつひとつを同僚達の机の上に置いて、仕分け終了。まだ誰も来ない。仕方がないので、長く座っていなかった自席で自分宛の書類やらに目を通し始めた。相当時間が経って、一人後輩がやっと来た。受けた電話の話や、その他を話してようやく自分の本来の席に戻ってくる。PCを立ち上げたら、メールはとんでもない量になっていた。今日はこれも片づけなければ……。久々の仕事は大変である。
2004.04.01
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