吟遊映人 【創作室 Y】
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~なばなの里~この春フレッシュマンとしてデビューを果たした息子は苦悩する毎日。言うまでもなく仕事のことで行き詰まりを感じているのだ。詳細は明かせないが、職種は福祉関係とだけ言っておこう。大学は社会福祉学部を卒業していて、それなりの目的意識を持ち、世のため人のために尽力したいと言って今に至る。大学時代には実習を何週間にも渡って頑張って来た。独居世帯のお年寄りや、母子家庭に育つ子どもたちの役に立ちたいなどと抱負も語っていた。だがしかし、現実はそれほど甘くはなかったのである。福祉の世界ほど理想と現実が解離している現場は他にないのではなかろうか。大学で教わったこと全てを否定するわけではない、が、概ねキレイゴトであった。机上の空論ほど喪失感を伴うものはない。純粋さ、生真面目さは結局あだとなるのだ。ある意味、福祉をビジネスと捉えどこかで割り切らないと、そこに携わる者は皆潰されてしまう。今、息子は出口の見えないトンネル、下りのない上り坂を登っている途上にある。親の私はもはやどうしてやることもできない。とは言え、何かアドバイスできないものかとあれこれ考えた末、占いの本を手に取ってみた。(あまりにも浅知恵ではある。)わらにもすがるほどの思いと言ってしまうとウソになるので、そこまでは言わない。しかし、何かの気晴らし、癒しになればいいなぁと思ったわけだ。占いの種類は四柱推命という占術。どれどれと息子の生年月日を表に照らし合わせて確認すると、「メンタルの疲弊には花の名所を訪ねてみるのが良い」とあった。私はすぐさま息子に提案した。「そうだ。なばなの里、行こう」と。10月26日(土)、私と息子の2人は三重県桑名市にあるなばなの里に出向いた。パンフレットによれば、江戸時代、この辺りでは食用油の原料となる「なたね」を広く栽培していたとのこと。この「なたね」を品種改良し商品化したものを「なばな」と呼ぶそうな。なるほどと納得しながらその「なばな」にあやかったなばなの里に入園してみたのである。どうやらこの施設、今年で55周年を迎えたようで、ゲートをくぐると「55」と表示されたオブジェが。私たち親子もお約束の記念撮影をしてみた。恥ずかしがる23歳の息子を「55」の側に立たせてパチリ。私一人、満足感に浸っているのだった。なばなの里はテレビCMでもお馴染みイルミネーションのクオリティの高さで有名である。本来なら夜景鑑賞を楽しむ方が大道だったかもしれない。それはそうとして、私個人的には昼間のベコニアガーデンにえらく感動した。この時期ユリが見事に咲き誇っているのだが、特に心を奪われたのは「カサブランカ」である。純白で高貴なユリなのだが、それはもう息を飲むような美しさである。映画「カサブランカ」は、フランス領モロッコの都市名であるが、カサブランカと言うユリの名前はこの地名から名付けられたらしい。もう私の頭の中はハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンの名シーンがくるくるとよみがえるばかり。ひと時の幸せを感じるのだった。息子のためと思って出かけた花の名所だったが、実は自分が行きたいだけだったのかも、、、息子には申し訳ないと思いつつも、ひょいと息子の横顔を覗いたら、まんざらでもなさそうな表情をしていたので少しだけホッとした。「あ、うまそうなものが売ってるゾ」急に歩く速度を上げた息子が向かった先は売店。オリジナルグッズや地元の特産品が所狭しと並べられていた。カゴにあれもこれもと欲張って入れても大丈夫。金券¥1000×2人分がある!いろんなお土産がある中で私のイチオシはこれ。「なばな安永餅」だ。お餅の中に「なばな」が練り込まれているのでうっすらと緑色なのだ。お店のベンチで煎茶とともに¥300で食べられるのだが、今回は遅い昼食後で満腹状態のため、8本入¥1150を購入。帰宅後のおやつにすることにした。なばなの里でしか売られていない限定商品である。(職場へのバラマキお菓子としても喜ばれそうだ!)さて、今回の外出が息子にとって幸福と安らぎの手段になったかどうかは甚だ疑わしいものではあるが、母の私はほんとうに楽しかった!また来てみたいと思わずにはいられないほど充実したひと時であった。なばなの里は日ごろ運動不足の方には特にお勧めしたい。約20万m2の敷地を、花を見たり樹木を見たりあるいは池を見たり写真を撮ったりなど、てくてく歩いて楽しむのは最高のウォーキングにもなり得るからだ。とにかく素晴らしいレジャースポットであった。
2019.11.09
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