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2008.05.17
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カテゴリ: 映画/ラブ

「私がプールでささやいた詩を覚えていたのね。あの日の出来事を・・・。」
「思い出した?」
「もちろんよ。」

今年度上半期にしてすでに最高の作品と出会ってしまったのかもしれない。
これまで数多の戦争モノ、アクション、サスペンスを鑑賞して来たが、こんなにドラマチックで優雅な気持ちにさせられたのは久方ぶりだ。
洗練された都会と、素朴で豊饒な田舎との対比が見事。
人間が刺激を受けるのは、決して都会だけではないことがわかる。
豊かに降り注ぐ陽射しと大地の匂い。

時間は煩雑な日常を溶かし、ゆっくりと流れてゆく。

ロンドンの証券会社でトレーダーとして多忙な日々を送るマックスのもとに、一通の手紙が届く。
それは、イギリス人でありながら南仏のプロヴァンスに居住し、ワイン造りを楽しんでいたヘンリーおじさんが亡くなったという報せだった。
マックスはヘンリーの相続人として遺産を受け取ることになり、相続手続を済ませたらすぐにロンドンに戻るつもりでプロヴァンスの地を訪れる。
少年のころ、毎年夏になるとヘンリーの所有するぶどう園を眺めながらヴァカンスを楽しんだことをあれこれと回想するマックス。
若くしてトップクラスの座に登りつめた彼の基礎を支えたのは、ヘンリーから様々な知識や教養を学んだおかげだった。
だが、そんな甘い記憶もすぐに消えた。
マックスは、たくさんの思い出の詰まったシャトーとぶどう園を売却するつもりでこの地へ赴いたのだ。
彼はすでにロンドンという洗練された都会でのビジネスがあった。
プロヴァンスの片田舎の不動産を維持していく暇などなかったのだ。

携帯電話を片時も離さない主人公を見て、我が身を振り返る視聴者の方もおられるに違いない。

もちろん、生活費を稼ぐことは生きていく上で必須だ。
だが、それに縛られて真実を見誤ってしまうことがあってはならない。
マックスが上司に呼ばれて、部屋の壁に飾られたゴッホの絵に目を留めるシーンに注目して欲しい。
(ちなみにその絵は「糸杉と星の見える道」というゴッホが晩年にプロヴァンスで制作した作品である。)
マックスはその絵が本物だと思ったのだが、上司に言わせると本物は高価なので厳重に金庫へ保管してあり、マックスが目にしているのはレプリカだと。

全ての答えは、この言葉の真意に凝縮されている。
まるで、芳醇なプロヴァンスのワインのように。

2006年(米)、2007年(日)公開
【監督】リドリー・スコット
【出演】ラッセル・クロウ

また見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。
See you next time !(^^)





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最終更新日  2008.05.17 13:32:24 コメントを書く
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