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2014.02.27
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
【スペース・カウボーイ】
20130303

「泣き言はよせ」
「おれの身にもなれ」
「40年間、お前はおれのせいにしてきた。だが今宇宙へ行くのをやめたら、それはお前のせいだ。すべてな」
「お前ならどうする?」
「お前を残していく」
「だろうな」
「夢にまでみた宇宙なんだぞ!」


2,3年前だったか、“老人力”という言葉が流行した。今を生きる若者たちには足りない、しぶとさとか粘り強さみたいなものを持ち合わせた世代を賛辞したものだと思う。
貧しかった戦後の日本を生き抜いて来られた強靭な精神力は、ちょっと想像の付かない、底知れぬパワーを感じる。
『スペース・カウボーイ』においても、すでにリタイアして久しいアメリカ空軍の技術者たちが、NASAから招聘されるところからストーリーは展開していく。
お国は違っても、やはり“老人力”が見直されているのは間違いない。いくら優秀な若手エンジニアでも、経験が浅く、コンピュータに依存しすぎる余り、ハード面が疎かになってしまい、実用的でないのだ。対して老人チームは、場数を踏んで来たことからの自信と、融通の利く状況判断能力に優れている。
もちろん、体力の衰えは致し方ない。年を取るということは、そういうことなのだから。

大切なのは自分を信じるということ。アナログ世代は、コンピュータに依存しずぎる若手エンジニアを危惧するのだった。

1958年に宇宙飛行士としての夢が頓挫した、元アメリカ空軍のフランクは、定年後、NASAから招聘される。
それは、旧ソ連時代に製造されたロシアの通信衛星アイコンが故障したため、その修理を依頼するものだった。
アイコンは旧式のシステムが使用されているため、いくらソフトに強い優秀な若手でも、手も足も出ない有り様。

ところが事前の健康診断で、相棒のホークにすい臓癌が見つかるのだった。

クリント・イーストウッド作品の優れているのは、CGを駆使した迫力重視型のスタイルに陥らないところだと思う。
もちろんイーストウッドも多少はCGを導入しているだろう。だがそれだけに依存せず、役者の演技力とかストーリー展開の優れた脚本に専ら力を注いでいる。
こういうアナログ的な香りが漂う映画は、ハリウッドでは少なくなったのではなかろうか?
涙腺を刺激するのは、何と言ってもホークが決断するシーンだ。
それは、通信衛星と言われていたものが、実は核ミサイル6発を搭載したミサイル衛星で、それがアメリカ本土を直撃する軌道にあることが分かり、ホークがその身を犠牲にして月に向かって突っ込んでいく場面だ。
内容的には斬新でも何でもないのだが、自らの命を賭して任務を全うするという生き様に、人は皆、感動せずにはいられない。

老人たちにも若い時はあった。逆を言えば、今若くても必ず皆が年を取る。老人になるのだ。
老いて社会的弱者の立場になった時、老人力を発揮できる余生を全うできたら、素晴らしいだろう。
『スペース・カウボーイ』は、クリント・イーストウッドが自らと同世代に送る応援歌かもしれない。

2000年公開 【監督】クリント・イーストウッド


20130124aisatsu





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最終更新日  2014.02.27 06:14:45
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