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2014.06.08
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カテゴリ: 映画/ヒューマン
【ヒッチコック】
20140608a

「規定違反だよ。女性の体にナイフが刺さるなんて、、、」
「ご心配なく。私の映画に出る殺人鬼は、思慮分別があるので」


私の最も尊敬する、サスペンスの巨匠ヒッチコック監督の自伝的な作品という予告を見て、少なからず期待に胸を膨らませていた。
ヒッチコック作品は、ずいぶん初期の頃のものも見ているし、自叙伝や作品解説などをせっせと買い集めては読んでいた。
とにかく大好きなのだ。

今回の映画『ヒッチコック』は、あの名作 『サイコ』 の製作における舞台裏を描いたものだというので、それこそドキドキワクワクと、TSUTAYAの店頭に並ぶのを待っていたしだいである。(封切られた時、近所のシネコンでは上映されなかったので、あきらめた。)
そういう並々ならぬ思い入れを持ってこの作品を見たことが、果たして良かったのか悪かったのか、、、
結論から言ってしまうと、見終わった後、がく然としたのは事実である。
しかし、私自身も重要なポイントを忘れていたので、今はもう、一つの作品として受け入れることができる。
なので、これからこの『ヒッチコック』を視聴される多くのヒッチファンのために、いらぬお節介だがご忠告申し上げたい。


さらには、『ヒッチコック』の原作となった同名著書の翻訳を読んでおられる方は、この映画を別モノと見なした方が良いのでは?ということだ。

とりあえず、あらすじを紹介しておこう。
1959年、ヒッチコックは 『サイコ』 のモデルとなった、大量殺人者エド・ゲインの事件を描いた本を、夢中で読んでいた。
次回作はこれで行こうと決意したヒッチコックだったが、資金繰りに難航。
配給会社であるパラマウント社が、猟奇的で奇抜な 『サイコ』 には出資できないとのこと。
だがヒッチコックはどうしても 『サイコ』 を撮りたいと思い、自宅を手放すことで資金を調達し、撮影に挑む。
そんな中、妻・アルマは、ずっとヒッチコックを支え続けて来たのだが、ヒッチコックの独断と異常なまでの嫉妬深さに辟易し、魔が差してしまう。
ヒッチコックは、自分の最大の理解者であると信じていた妻の心変わりにショックを受け、体調を崩してしまうのだった。

20140608b


この人の演技に申し分はない。
一方、妻・アルマに扮したヘレン・ミレン、こちらはどうだろう?
オスカー女優のヘレン・ミレンの演技には何の問題もないが、イメージがちょっと、、、いや、かなり違う。
私がヒッチの自叙伝に登場するアルマをイメージするに、例えばキャシー・ベイツなどが頭に浮かぶのだ。
代表作に『ミザリー』などがある女優さんなのだが、ものすごく庶民的な外見とは対照的に、個性的で圧倒的な存在感を誇る人物だ。(つまり、ヘレン・ミレンは上品すぎるというわけだ。)


作品のピーク、つまり盛り上がりであるはずの、映倫の検閲と闘う場面が、あまりにもあっさり過ぎるではないか!
『サイコ』 の影には、この映倫の問題を解決することで成立したという経緯があり、その部分こそが山場でなければならないのに、あまりにも稀薄すぎる。
まったく悔しくて仕方がない。

さらには、演出上のこととはいえ、ヒッチコックが妄想の中で大量殺人犯であるエド・ゲインと会話する意味がよく理解できなかった。
このストーリー展開に、なぜエド・ゲインの幻が登場するのだろうか?

私は、天国の淀川長治に、この作品のご意見・ご感想を伺いたい。
かつてヒッチコックと親交のあった淀川長治ならば、どのような論評を下したことだろう?
私は、ヒッチコックがなぜ「サスペンスの巨匠」と言われるかを、この作品にもっともっと盛り込むべきだったと思う。
映画に対する情熱と先駆的な挑戦。
これにしぼったテーマなら、熟年夫婦の危機的な三流メロドラマに陥ることは、なかったと思われるからだ。
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2012年(米)、2013年(日)公開
【監督】サーシャ・ガヴァシ
【出演】アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン


~吟遊映人『映画/ヒッチコック作品』~


ヒッチコックの『サイコ』
20130407
コチラ


ヒッチコックの『白い恐怖』
20130421
コチラ


ヒッチコックの『レベッカ』
20130505
コチラ


ヒッチコックの『裏窓』
20130519
コチラ


ヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ』
20130602
コチラ


ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』
20130609
コチラ


ヒッチコックの『バルカン超特急』
20130623
コチラ


ヒッチコックの『汚名』
20130630
コチラ


20130124aisatsu





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最終更新日  2014.06.08 06:04:23
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