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2014.07.20
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テーマ: コラム紹介(119)
カテゴリ: コラム紹介
【北國新聞 時鐘】
20140720

先日亡(な)くなった富山出身の教育学者(きょういくがくしゃ)、森隆夫(もりたかお)さんが、7年前の本紙・北風抄(きたかぜしょう)に「未来日記(みらいにっき)」の話を書いている。

未来研究会(けんきゅうかい)に一人の老人(ろうじん)が入ってきた。「自分が死んだ後の社会がどうなるか知りたい。それが分からないと死にきれない」というのが入会(にゅうかい)の理由(りゆう)だった。未来は未知(みち)に満(み)ちている。受け身ではなく未来を創造(そうぞう)するため何かをしたい。それが「未来日記」の趣旨(しゅし)だった。

日本の未来はどうか。「死(し)に至(いた)る病(やまい)」との表現が飛び出した。人口減少(じんこうげんしょう)に危機感(ききかん)を持った全国知事会(ぜんこくちじかい)が非常事態宣言(ひじょうじたいせんげん)をまとめた際(さい)の会長の言葉である。もともとは聖書(せいしょ)にある言葉で「死に至る病とは、絶望(ぜつぼう)である」と続く。

人口が減って繁栄(はんえい)した社会はないといわれる。危機感を持つのは当然(とうぜん)であり、気持ちは分かるが「死に至る病」とは穏(おだ)やかではない。宣言は「国家(こっか)の基盤(きばん)を危(あや)うくする重大(じゅうだい)な岐路(きろ)」と言う。進む方向次第(ほうこうしだい)では救(すく)われるのである。

未来は希望(きぼう)に満ちていると無責任(むせきにん)なことは言わない。だが、絶望するほどの国ではない。各自(かくじ)が皆(みな)、未来のために何かできることをやっておこう。安心して次の世に行くためだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『各自が皆、未来のために何かできることをやっておこう。』

少し大げさかもしれないが感動で体が震えた。そして黙示的なものを感じた。
まずは映画である。近来稀に見る感銘を受けた『クラウドアトラス』で、そのセリフはいまだ生き生きとして我が凡脳を刺激している。

「命は自分のものではない 子宮から墓まで 人は他者とつながる 過去も現在も すべての罪があらゆる善意が 未来を作る」

徳薄の身なれど、歴史を貫く思考や思惟、そして縁やらの、何かしらの力を感じないではいられないのだ。

次に書物、養老先生の『自分の壁』である。

「自分の命は自分のもの、という常識ができてしまった。それがいけない。」

養老先生はそう語り

「自分以外の存在を認識せよ」

と諭している。それは形而下はもちろん、形而上の問題も含まれる。私はそれを「何かしらの力」であると思うのだ。時鐘氏のひとことは私には黙示であった。

おそらく全国知事会のお歴々は、人口問題にキルケゴールをかけ、哲学的なオチをつけるほどにシャレてはいないはずだ。いたって真面目な議論の末の、悲愴感にあふれた発表である。
だから、ペンは控え目だが、時鐘氏はほえたのだ。「未来は希望に満ちている!」と。時鐘氏は「何かしらの力」を感じているはずだ。

そしてまた養老先生の未来も希望に満ちている。養老先生は、

「日本人は状況依存なんです。」

そう断じ、そして続ける。

「それは西欧的な価値観でみると『いいかげん』とか『意見を持っていない』とかいわれるが、日本人って案外しっかりしているんですよ。」



幸いなことに、『一人の老人』と『全国知事会』に養老先生は警句を与える。

『自然をみるといい。』

このごろ巷で跋扈する輩を象徴し、時鐘氏は『一人の老人』と『全国知事会』とひいたはずだ。方々は時間をたっぷりとお持ちである。さすればゆっくり自然を観察し、

自然は自分の思うとおりにならない。 (養老先生)

と、この真理を学んでほしいと思うのだ。
(それにしても「一人の老人」とは、まさにK元首相のためにある言葉ではないか!)



「死は扉に過ぎません 閉じたとき 次の扉が開く 私にとって天国とは 新しい扉が開くこと」

「何かしらの力」を感じつつ、あくまでも謙虚に生きていきたい、そう思った次第である。
とりとめもないままに。

20130124aisatsu






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最終更新日  2014.07.20 14:12:46
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