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2016.02.07
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カテゴリ: 映画/戦争・史実
【アメリカン・スナイパー】
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「人間には3種類ある。羊・狼・番犬だ。悪など存在しないと思う連中は、悪が訪れた時、己の身を守れない。奴らは羊だ。そして捕食者は弱者を暴力で餌食にする。それが狼だ。群れを守るため圧倒的な力を駆使する者、それが狼と戦う類まれな者である番犬だ」

戦場を舞台にした作品というのは、気が向かないとなかなか見る気になれない。
臨場感に溢れたものであればあるほど、アクションとして楽しめるわけでもなく、絶望的に打ちひしがれてしまう。
この『アメリカン・スナイパー』にしても、とても完成度が高く、興行的にも成績が良かったのは知っていたけれど、進んでDVDを手に取るまでには至らなかった。
それでも今回は思い切って見てみることにした。
2時間越えの大作だがしっかりと腰を据え、イーストウッドの最新作を堪能することにしたのだ。

まず驚いたのはイーストウッド映画が作品を重ねるごとに完成度が高くなっていくことだ。
今ふうに言うなら、「ヤバイ!」という感じ。
粗削りではない、とても丁寧で繊細な作品に仕上げられているではないか!
真夜中のサバナ インビクタス 』『 J.エドガー 』等々それぞれに素晴らしい映画ではあった。
だが『アメリカン・スナイパー』は徹底したテーマを感じるのだ。
そう、「反戦」である。
もちろん、あらゆる場面に星条旗が掲げられていて、イーストウッドの愛国精神も感じられるのだが、この作品のテーマはもっと深くてじわじわと視聴者に揺さぶりをかけてくる。
戦争への憎しみ、悲哀、そして絶望である。
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ストーリーはこうだ。
カウボーイにあこがれ、ロデオざんまいの日々を送っていたクリスは、恋人に浮気をされ、くさっていた。
そんなある日、テレビでアメリカ大使館爆破事件を見て、祖国のために戦いたいという気持ちがみなぎる。
そこで海兵隊に志願し、30歳という年齢ながら過酷な訓練をクリアし、狙撃兵となった。
プライベートでは美人のタヤと結婚し、順風満帆な生活を送っていた。

テキサス出身のクリスは、幼いころより父親に狩猟を教わり、銃の扱いには慣れていた。
それが功を奏してか、狙撃兵として見事な腕前を披露し、いつしか“伝説の狙撃手”とまで称賛されるようになった。
一方、アメリカでは妊婦となった妻のタヤが、クリスの帰りを不安と恐怖に震えながら待ち焦がれるのだった。
クリスは、想像を絶するような極限状況の戦地で、少しずつ精神の均衡を崩していくのだった。

監督であるクリント・イーストウッドでさえ予期していなかったに違いないのは、モデルとなった実在の人物クリス・カイルが、元海兵隊員によって射殺されてしまうという大事件が起きたことだ。(ウィキペディア参照)

もちろん、この男はメンタルを病んでいて、決して正常な判断を下せる精神状態にはなかったようだが、戦争という闇が人間のすべてを打ち砕いてしまうという現実を突き付けたのである。
この作品の製作時にはちゃんと生きていたクリスは、完成を見ることなく亡くなってしまったというわけだ。諸行無常というやつである。

私は、イーストウッドが年を重ね、世界情勢の留まることのない移り変わりから、戦争を憎む気持ちが倍増したのではないかと思う。
そうでなければこれほどまでに絶望的なラストは、描かなかったであろう。
「家族を守る」「国を守る」とはどういうことなのか?
相手を抹殺し、恨みを買うことなのか?
復讐の連鎖を繰り返すことなのか?
そもそも愛国心とは何なのか?
クリント・イーストウッドが投げかけた問いは、視聴者の魂を揺さぶらずにはいられない。
老若男女問わず、必見の逸作である。
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2014年(米)、2015年(日)公開 
【監督】クリント・イーストウッド
【出演】ブラッドリー・クーパー


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※ご参考
クリント・イーストウッド監督の
『真夜中のサバナ』は コチラ
『インビクタス』は コチラ
『J.エドガー』は コチラ





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最終更新日  2016.02.07 08:21:34
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