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2024.02.11
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カテゴリ: 愛toちはやふる

どれだけ書いても次から次へと語りたいことが出てきます。
ちはやふる、怖い漫画です…。

※これまでの記事と同じ内容(恋愛面)を、別の言葉で延々と語っているだけの記事です。


ちはやふる 感想-その13
​「一緒に居るための手段」の整理と
サブキャラクターを用いた視点の投入について​



高校3年時、太一くんと千早ちゃんの関係が
あれほどごたついた(1年間冷戦を繰り広げた)のは
そもそも高校生の恋愛感情云々という次元ではなく
​思考のテーブルが「人生」レベル​ であり、
​極論 ​『結婚出来るか、出来ないか』​ の話をしていたためだと認識しています。
何故高校生の段階で、そんな切羽詰まった状況になったのか。

今まで書いてきた記事と内容かなり被りますが、
「選択肢」という観点での区分整理
どういった形でこれらの要素が作中に織り込まれていたのか
本作品の独特な描写方法について 語り尽したいと思います。



​■「一緒に居るための手段」の整理​

原作では偶然同じ高校に入学した千早ちゃんと太一くん。
そこで一緒にかるた部を立ち上げます。
基本この部は、太一くんが千早ちゃんの為に立ち上げ
組織した活動体だと思っています。

2巻以降を読んでいて、千早ちゃんと太一くんにとって
瑞沢かるた部は「エデン」であり、創設者の2人はアダムとイブのような存在であり
お互い 「なんでこんなに上手くいくんだろう」「無敵」「最高」 と感じているのだろうな、
と受け取っています。

千早ちゃんのかるたに向かうの力の源泉というか、モチベーションは
根本的に「みんなで楽しむ団体戦」であり、この瑞沢かるた部です。
瑞沢かるた部が高校2年生の段階で全国大会制覇まで登りつめた
その調子に乗った勢いのまま、クイーン位まで駆け上がってしまった… というのが
作中で描かれた千早ちゃんのかるた軸の説明としては妥当かな、と思っています。
(もちろん現クイーン・詩暢ちゃんを、千早ちゃん個人の目標として設定した上での話です)

でも、高校の部活動である瑞沢かるた部は有限です。

千早ちゃんは一生この瑞沢かるた部に居たい…ここで生きていきた過ぎて
「卒業しても教えに来る」 「教師になる(&かるた部の顧問やる)」
とまで言い出し、自身の進路を決めています。

でも当然、太一くんはずっと「瑞沢かるた部に居ること」は出来ません。

作品後半は、 「エデン」を永遠にするにはどうすればいいのか。
それはどういう状態なのかの整理と、そこに向かうため何が必要なのか、
人生を織り合わせていく覚悟が出来るかどうか…
が描かれていたと思っています。


まず ​千早ちゃん・太一くんの感じている「エデン」とは何なのか​ …の定義ですが、
​これはもう単純に 「お互いと一緒に居る世界」​ だと受け取っています。

太一くんは、千早ちゃんが自分を見て笑ってくれれば、なんでも出来ます。
千早ちゃんは、太一くんが居れば無敵です。
太一くんの居ない世界で生きていく気がありません。


自分の中で整理をしたかったので、高校時代・高校卒業後に分けた形で
太一くん&千早ちゃんにとっての
「一緒に居るための手段」を具体的に書き出してみました。


■一緒に居るための手段 1(高校時代)


■一緒に居るための手段 2(高校卒業後)


よく分からん一覧になりましたが…とにかく書き出して整理してみると、
本編中の太一くん・千早ちゃん双方の動きや、作中で描写される要素が
それぞれどこを意識したものなのか、理解しやすくなったかなと思います。


​「一緒に居るための手段」としては、高校時代は当然④瑞沢かるた部が最適解でした。​
ここで築いた2人の最高の関係性を
どうやってこの先・高校卒業後~人生レベルのものにしていくのか
というのが、作品後半の命題だったと思っています。

人生レベルで「一緒に居るための手段」の話を考えなきゃいけなくなった時に
結局、選択肢①の恋愛(結婚前提)しか未来に続く道はないこと
太一くんも千早ちゃんも最初から分かってたと思います。
でもやっぱり、高校生に①はあまりにハードルが高い。
そもそも一般サラリーマン家系ならまだしも、
この2人の場合は 「結婚=真島家(総合病院家系)」なんで。

ハードルの高さへの恐怖心や
「かるた」という土台への執着&トラウマが入り組みまくって、
選択肢④かるたでパートナー、
⑤かるたでずっ友&⑥千早ちゃんと新くんが結ばれる といった、
そもそも無理だったり、手段として根本的に破綻してる選択肢が登場する ため、
高校2~3年生はぐっちゃぐちゃで訳が分からんことになっていたのだと受け取っています。

​やっぱり、 ​かるたが絡むと
千早ちゃんも太一くんも思考回路が壮絶にバグる​
んですよ。

選択肢④ を生み出したのは千早ちゃんだと思ってますが、
一覧に書いた通り、これは「選択肢」というより、具体的に未来を想像するのが怖くて
「かるた」という非日常感を纏った、自分が一番得意な世界に閉じこもろうと
千早ちゃんが思考停止している状態なだけだと受け取っています。

真島家がどんな家で、太一くんがどれだけ重いものを背負って
小学生の頃から頑張って来てる子なのか
千早ちゃんは一番分かってるはずなんですよ。
だって読者にそれを説明してくれたのは、そもそも千早ちゃんでしたから。
だからこそ、①が怖くて考えたくない。


で、もう一方で厄介なのが、太一くんが内心推し進めていた ​選択肢⑤、⑥​ なんですが
こんなの ​そもそも「一緒に居るため」の選択肢じゃない​ んですよ。

太一くんは「①の結婚が無理なら、この先千早ちゃんと一緒に居るのは不可能だ」
と最初から思っている節があります。
でもそれだけだったら、まだ高校生の千早ちゃんに
①レベルの覚悟を求める事が難しいことは、冷静に捉えられる子だと思います。

ここに自身最大のトラウマである「かるた」が絡んでくるから、バグる。

根本的に、太一くんにとって「かるた」は嫌い嫌われた存在というか、とにかくツライ。
千早ちゃんが「かるた」を求める度に、
「千早ちゃんを幸せにできるのは自分ではない」という思いを上塗りしまくり
16巻で新くんが「大学になったら東京に来る」ことを認識した瞬間から、
「高校卒業まで」をタイムリミットに設定し
全力で選択肢⑤&⑥に向けて爆進し始めました。

​…高校2年生の夏の段階で、​ です。
団体戦で全国優勝をもぎ取り、かるた部創設時の目標に到達していたとはいえ
​見切りをつけるタイミングが、あまりに早い。​

太一くんは…あまりにも「仕事/タスク脳」過ぎて、判断がとにかく早い。
判断してからの行動力が、光の如しなんです。


太一くんがかるた部を退部した26巻の段階で、
千早ちゃんの中に「太一くんと、瑞沢かるた部を踏襲したような関係性を
まだ続けていたい」という強い想いがあるのは、当然なんですよ。
だってまだ瑞沢かるた部として、3年次・夏までの期間があるはずでしたから。

ひとたび目標を設定して動き出した太一くんの行動力に
千早ちゃん(や周囲の子たち)が追い付けるはずもなく…
太一くんが瑞沢かるた部を退部し、東西戦まで戦い抜いて気が済むまで
誰も口を出すことが出来ない状態でした(見守るしかなかった)。

まぁでも太一くんがここまで意地になって…
かるたをやり切る姿をちゃんと見せてくれたから、
千早ちゃんも 太一くんにこれ以上かるたを求める余地がないこと、
(=卒業後の選択肢に④かるたでパートナーがないこと)、
太一くんと一緒に居るための実現可能な選択肢は
結局①の恋愛(結婚前提)しかないこと
を、冷静に認識できたのだと思います。



■原作と映画の違いについて

実写映画では3作目の「結び」において、高校3年生で部を退部した太一くんが
夏の全国大会団体戦のラストで戻って来て、もう一度一緒に闘うという展開になります。
団体戦決勝の場に駆け付けるも、部に戻ることはなかった原作とは明確に異なります。

この違いは、 作品自体が何を描こうとしているのかの違いが見て取れて
すごく面白い部分だと思っています。

■​ 映画 は「『青春』の話」だから、
「瑞沢かるた部の物語」を完遂するために、戻って来た。


■​ ​原作は「『人生』の話」をしているから、戻って来なかった。​
瑞沢かるた部としての団体戦全国優勝は、2年生で既にやってましたし。
「この先は、千早ちゃんに合わせてかるたは出来ない」という意図で部を離れたのに
戻って来たら、辞めた意味がなくなっちゃいますので。



■サブキャラクターを使った「視点の投入」について

ちはやふるを読んでいて非常にオモシロい描写方法だな、と感じているのが
​​ サブキャラクターのエピソードを用いた、視点の投入 です。

特に作品後半が顕著ですが、突然よく分からないサブキャラクターが登場し
唐突に独特な自身の観点で話をし出すシーンが度々挿入されます。

様々な立場のかるた競技者・またそれに限らず
あらゆる立場の人たちの視点もどんどん投入されるようになり、
多角的な視点の大人な漫画作品だな…・という印象を読者に与えます。

これらの情報提示は、基本的には 主役主体たちの今の状況・行動を
「この視点」で観るんだぞ、という 「読み方のヒント」なんだろうな
と受け取っています。


例えば34巻から始まる東西戦。準決勝で田丸さんの対戦相手として、
あらゆる大会で2位を獲る銀メダルコレクター ​優木秀子さん​ が登場します。

この方が何のために投入されているのかと言ったら、
やはり読者への「視点の提示」だと思います。

「今日こそ2位じゃなくて優勝するわ」
「ここで負けたら 2位でもなかったら きっとズブズブ下がっていく」
↑優木さんのモノローグですが、これと同じことを
この会場内でもっと強烈に感じてるであろう人が居ます。

昨年、周防名人に敗れて準名人となった 原田先生です。

そして優木さんと同門の横浜嵐会の皆さんは、
彼女のこの気持ちを理解してるよ…というニュアンスの描写も出て来ます。

同じように、原田先生の気持ちを白波会の人たちは分かってます。
…当然、太一くんもです。

優木さんの投入は、 「『年季の入った2位プレイヤーにはこの感情がある、
それを同門の人は分かってる』という視点を持って読んでね」 という
読者に対して、作品の読解方法を提示するサービスだと受け取っています。


また視点の提示例として分かりやすいのは、
​39巻・東西戦第2戦目のクイーン戦で審判をしていた 今田裕子7段 。​

8割の試合で「最後まで読まれない札」がどれかピンとくる驚異の勘(今田伝説)の持ち主。
いきなりよく分からん特技の持ち主なのですが、彼女は作中でひたすら
​​ 「『せ』は最後まで読まれない札」という観点 をアピってくるキャラでした。
45~46巻のクイーン戦第3戦目も同様ですね。



ちはやふるの感想で、(特に千早ちゃんの)恋愛描写が足りない…的な感想を
​目にすることがあるのですが、そんなことは全くないと思ってます。

本作には、 上記のようなサブキャラクターの描写を用いての
人生レベルの恋愛観/結婚観、また千早ちゃんの恋心に関する
様々な視点の投入 がなれていると受け取っています。

花野菫ちゃん の存在は言わずもがな。

ライトなところの描写だと、例えば ​40巻の布団回​
図書館で本を読む太一くんに、 周囲の女の子たちが
「新ヘアやばい」「話しかけたい」とそわそわしていたり…
布団を持ち込んだかるた部の子たちと一緒に、太一くんの布団の中に隠れた際
菫ちゃんが「真島先輩のベットの中…!」とドキドキしていたり している描写。
あれ、周囲の子たちに言わせてますけど
​千早ちゃんも同じこと思ってますよ、​ という描写なんじゃないかな と。

「かるた」で繋がることを諦めて、太一くんとの距離感を見失って
太一くんに話かけたくても話かけられない!
周囲の娘たちと同じ立ち位置になってしまった!
という焦りと困惑、そして
クィーン戦&受験が終わるまでは太一くんに甘えてはいけない! という強烈な想いが、
あの挙動不審行動に表れてたんじゃないかな と受け取っています。


また、 先に語った①恋愛(結婚)感については
人生レベルで、長く晩年まで見据えた視点が複数投入されている と思っています。​
思いつくものを挙げていくと…

​・猪熊元クイーン​
以前の記事でも語りましたが、
猪熊さんは、一番直接的に「千早ちゃんの将来像」を意図して
投入されているキャラクターなんだろうな、と認識しています。
慌ただしい子育てをしながら、自身のかるたを諦めることなく磨き、
同時に後進育成にも力を注ぐ姿… ですね。

クイーン戦前には、わざわざ千早ちゃんを猪熊さん宅に行かせて
その生活感や価値観まで具体的に描写していました。


・41巻、千早ちゃんのインタビューをしに来た ​賀正寿子さん​
「親戚めちゃくちゃ多い家に嫁いでますが、
お正月に仕事取りました」というキャラクター。

嫁入り先の家において、自身の外仕事・用事があった際の立ち回り方の一例として
投入・提示されている視点だと思っています。


・45巻、10年ぶりに戻って来た読手の ​九頭竜葉子さん​
仕事・結婚・出産/育児と並行して40年間読手を続けていた方。
でも旦那さんが倒れた為、介護で10年間かるたから離れていました。
なにわずの歌と和泉式部の「あらざらむ」、印象的な2首を装飾として捧げている点からも
この九頭竜さんのエピソードは、
恋愛観・結婚観について 非常に重要な視点が織り込まれている
温め続けていた渾身のエピソードなのだろうな、 と受け取っています。

まず九頭竜さんのかるたについて、旦那さんは
一緒にやってくれたわけでも、積極的に応援してくれたわけでもありません。
でも、九頭竜さんのかるたをやりたいという気持ちを絶対に否定せず、
ずっと尊重してくれていました。
九頭竜さんはそれだけで、人生繰り返すならもう一度一緒に居たいと思うくらい
旦那さんに感謝してるし、大好きなんです。

そして、九頭竜さんの下記のモノローグ。
「40年もかるたやらせてもろうたんや 『そっち側』に行くのはうちのほうや」
私的にはすごく印象に残った台詞でした。
​​
​人生なんて「頑張って折り合わせないと、織り合わない」ですよ。​

高校では太一くんが千早ちゃんの望む形に合わせて、エデンを作ってくれました。​
千早ちゃんが「この先も太一くんと一緒に居たい」と思うのなら、
今度は千早ちゃんが「太一くんの世界に行く」
「かるた札を持って、真島家に乗り込んで行く」しかないですよ。
太一くんの立場を考えたら、当然です。


また、猪熊さんの出産・子育てにも通じる観点ですが、
長く続けていれば、家族都合でかるたが出来なくなる時期だって訪れます。

でも、少なくとも九頭竜さん自身は、
(終わったタイミングだからこそだと思いますが、)
そこで旦那さんを最優先出来たことを、幸せだったと思えています。
時期が過ぎたら、自身の時間は自然とまた増えますし、意欲があれば、
いくつになっても、何度でも、かるたにもう一度関わって生きていくことは出来ます。


相手を見て人生を織り合わせる観点については、
桜沢先生と鷲尾さんの結婚エピソード にも同様のメッセージを見て取れます。
(2019年発売のコミックガイド収録)


上記、九頭竜さんをはじめとした「かるたを折り込んだ人生観・結婚観」については、
本作が「青春の物語」で終わって良かったなら
投入されていなかった要素だろうな、と思っています。

言い換えると、 もし本作が連載企画時に据えた
「千早ちゃんと新くんのラブストーリー」に帰結する物語 だったら、​
人生レベルの結婚観の提示なんて必要なかった と思うんです。

各自かるたに邁進して、高校生で名人・クイーンにたどり着けたね!が最終回。
かるたを通じてまた会えたし、新くんがこれから東京の大学に来る…
ここからどうやって未来を描いて行こうか?恋愛になるのかな!? 
ーというふわっとした締めで良かったと思うので。

それがうっかり 千早ちゃんと太一くんのラブストーリーが始まってしまった…
太一くんの将来像がかなり特殊且つ具体的で、人生レベルで恋愛を捉えていた結果
千早ちゃんとの将来を端から諦め、高校生のうちに片をけようと
全力で暴走するような奴でしたので。

だからこの作品は、 高校生の主人公たちの恋愛を
人生レベルで具体的に考えていかなければならなくなった…
​大人たちの人生観・結婚観まで描く必要が出て来たんだな、​ と受け取っています。


他にも、様々なサブキャラクターたちが投入されています。
まだまだ全然噛み砕けてないですが、
本作を読み解くのに必要な「視点」の提示が行われているんだ、と思っています。



■42・44巻の内拝殿・外拝殿 時間を超えた邂逅シーンについて

42巻の名人・クイーン戦当日、朝の近江神宮での参拝のシーンで
千早ちゃんが内拝殿から居ないはずの太一くんの幻を見るシーンが描かれます。
太一くんは外拝殿から手を合わせ、千早ちゃんを笑顔で見送っていました。

また44巻のお昼頃、近江神宮にたどり着いた太一くんが外拝殿で参拝をする際、
内拝殿に居ないはずの千早ちゃん(&新くんらしき男性)の幻を見るシーンが描かれます。
千早ちゃんは太一くんに向かって「行ってくるね」という強い表情をしていました。


10月に京都旅行をした際、近江神宮を訪れ
この内拝殿・外拝殿を実際に拝見したのですが、非常に雰囲気のある場所でした。



神様の世界と一般人の世界…という「隔たり」が
真四角の空間になって存在している というか。



この幻想的で印象深い邂逅シーンは 千早ちゃんがクイーン戦に臨むにあたり、
千早ちゃん・太一くんが「お互いに求める姿」を観た・認識したシーン なのだろうな、
と受け取っています。

千早ちゃんは太一くんに「一緒に来て下さい、傍に居てください」ではなくて
「そこで微笑んで観ててください、遠くから応援しててください」 と望んだし、

太一くんは千早ちゃんが 「自分が居なくても大丈夫そうだな
強く前を向いて、神様の世界で闘かって来て欲しい」 と思えたんだろうな、と。


この2シーンが体現しているのは、
​​ ​​「かるたフィールドにおいて、千早ちゃんと太一くんが
お互いをちゃんと切り離すことができた」 ​​​​​
ということなんだろうな、と受け取っています。

かるたを媒介にして相手を求めなくても/手放しても、もう大丈夫!
という状態までようやく辿り着けた というか。

高校時代のように「かるたを媒介にして一緒に居る」という手段は
高校卒業後には、明確に「ありえない」ので。
「お互いのかるた」は、一人でも/手放しても大丈夫になるしかなかったんです。


面白いのが、実際のお互いの表情は 相手が観た表情と一致してないところ です。
千早ちゃんは、本当はすごくすごく太一くんに一緒に居て欲しくて、
半泣きになってました。
太一くんも、「自分が居なくても大丈夫」な千早ちゃんの姿を見て
めっちゃ寂しそうにしていました。

千早ちゃんと太一くんは、「一緒に居たい気持ち」を強く強く持っているからこそ
「かるた」に執着したし、だから一緒に居る未来が描けなかったんだろうな、と。

近江神宮が見かねて「かるたフィールドでお互いを手放す」ことを
手助けしてくれたのかな、 と受け取っています。​



■まとめ、記事を書いての雑感

今回の記事は、これまで書いてきた感想記事の恋愛部分の内容を
改めてくどくどとなぞるようなものだったのですが…
書いてみて、 作中の情報に対する私自身の捉え方が結構変わりました。


クイーン戦後、最終回。
千早ちゃんが「太一くんと一緒に居られる唯一の選択肢」である
①恋愛/結婚にいよいよ立ち向かおうとしていたのに対し、
太一くんはとっくに千早ちゃんと一緒に居る未来を諦め、選択肢⑥を勝手に推進し
完全に逃亡態勢に入っていた …という地獄の状況が発覚します。


私はもともと、太一くんに感情移入して本作を読み進めたこともあって
高校卒業後、選択肢④の「かるたを介して、濃密な関係性を続けたい」という
千早ちゃんの意識が一番わけが分からなかった というか。
​​ そんな土台無理なことを求めようとするから、こんなにこじれたんだ
と認識していました。


私のこの認識に対して、 妹はずっと否を唱えていました。

妹の主張↓
確かに千早ちゃんも千早ちゃんで、
(未知/責任だらけの真島家への恐怖心もあって)
太一くんの「かるた」しか見ないようにしてた。

真島母や周囲(特に女の子たち)の目線に対して、先手を打って
「私は!太一くんとの恋愛なんて 全く!微塵も!まんじりとも!
1mmたり
とも考えた事すらありませんが!!!」 ってアピールしまくってた。


結果、 太一くんに「皆で一緒に楽しいかるた」を求め過ぎて追い込んでしまったし、
太一くんがかるた部を辞めた瞬間
もう 「世界から居なくなってしまった」レベルで故人扱い してた。
あれはどうかと思うし、千早ちゃん自身も「これではダメだ」と思ったから
1年間かけて、超頑張って自分を作り変えて来た。

それにしたって
​太一くんが「千早ちゃんとの未来」を見限るのが、あんまりにも早い。​
だってまだ高校生だよ!?
高2の夏~秋で別々の未来に向かって舵切られて、高3の春で突き放されたんだよ!?

千早ちゃん的には、最終回で太一くんが手を握り返してくれるまで
「太一くんに求められた」「太一くんにとって自分が必要だと実感できた」
ことはおそらく 1回もない。

そんな自信の持てない状況でも、千早ちゃんは自分を奮い立たせて…
無我夢中でクイーン位と大学合格を自分の力で獲得して、
それを握りしめて「一緒に居たい」と言いに行こうとしてたのに
既に京都に高跳び(ほぼ絶縁)する算段をつけられてて…
一番自信のない大学受験の結果がはっきりしない段階で
観念して、告白せざるを得ないところまで追い詰められたんだよ?

最終回の告白は
「『かるたで繋がる』とか舐めたこと考えてて、ホントすみませんでした!
心を入れ替えて来たんで、離れる前提で話を進めるのだけはマジで勘弁してください」
っていう、千早ちゃん自身のスタンスもプライドもかなぐり捨てた 完全降伏 だと思ってる。

ーでも、本当によく1年弱で 奴を捕まえるところまで行ったよ。
千早ちゃん、超がんばったよ…!


今回、未来の選択肢を書き出してみて、妹の意見に納得しました。

うん。確かに、 ​高校生の段階で
選択肢⑥に突っ走っていた太一くんが…やっぱりおかしいな!​
トラウマ×常人の追いつけない脅威の判断力/行動力、恐ろし過ぎるな!
と思いました。

千早ちゃん的は、太一くんが内心抱いていた
選択肢⑥の「新君と結ばれる未来」なんて具体的に考えた事も無い、というか。
本当に「太一くんとの未来の話をしてるのに、なんでそこに新くんが絡んで来るんだ?
訳がわからない」って話だろうと思います。


まぁ、 「せ」札モチーフで体現される選択肢⑥こそ
本作品が作品立ち上げ段階で据えていた初期のストーリー筋だと思います。
そして太一くんというキャラクター自体が、一番最初は
その初期筋を回すために投入されたサブキャラクターだった と思います ので。

作中、自身の気持ちに反しているにも関わらず
「選択肢⑥の筋道を強力に推進しよう」とあまりにも能動的に話を回し過ぎて
結果、完全に主役に踊り出て作品を作り変えてしまった…
千早ちゃんにとっては、「せ」札推進過激派筆頭の真島太一こそが
真のラスボスになってしまった…

キャラクターの感情/生命力が強すぎて
あっちでこっちで話筋が完全にバグったという、 たいへん興味深い展開だったな、と。
だからこその作品の大ヒットだし、
この圧倒的なパワー!なんだろうな と思っています。



■最終回 その後&番外編について

​​​​​最終回では千早ちゃんが太一くんに「好き」と言う言葉を伝えることが出来ました。
​選択肢①恋愛(ヘビー/結婚前提)に向かう意志を持って
未来への扉をノックできた​
というか。

太一くんは選択肢⑥の遥か彼方まで自分の意識を飛ばしていた状態でしたが、
この千早ちゃんのノックに気づいた瞬間、 一気に選択肢①にすっ飛んで来ました。
私はこのシーンを 「北極から南極」 「瞬間移動」​ ​​ と呼んでいるんですが…
まぁもう流石太一くん、一番大事なチャンスを逃さない成功者の鏡ですよね!と。


​​ 太一くんは本当に極端… ​​ というか
思い立った瞬間に、行動が伴う んですよ。
気づいたらもう次の目標地点定めて、ストーリー組んで動いてるんですよ。

勝手な想像ですが…
太一くんはここで千早ちゃんが告白して来なかったら
(京大医学専攻内で)最初に告白して来た娘と
速攻で付き合い始めてたんじゃないかな、と。
もしそんなことになったら… 千早ちゃんは絶対萎縮するし、
更にこじれにこじれた地獄のおんどろ大学生活編がスタートしてたと思います。

ホント、卒業式で片を付ける所まで行けてよかった。
これ以上周囲に迷惑をかけずに済んで、本当に本当によかった!!


​​​​
​恋人になってからの描写​ は、最終回最後の数ページと番外編、
末次先生のSNS投稿イラスト等でわずかに匂わすのみとなってます。

ただ、これも全くの想像ですが… 太一くんは
「千早ちゃんが恋愛に向かう覚悟を決めてくれた」と分かったその日から
「千早ちゃんと結婚」を目標に定めて全力前進し始めるんだろうな…  と。
​千早ちゃんが『結婚してくれる』って言った! (※言ってない)位な勢いで、​​​​
真島家内部&周囲への根回しを始めるんじゃないかな、と思ってます。

そして千早ちゃんの方だって、 そもそも太一くんに求めてたのは
最初から「かるただけじゃなかった」 というか。
恋人になってからの方が「そう、コレ!私が求めてたものはまさしくコレ!!」
って実感していけるんじゃないかな… と思ってます。



花野さん目線で描かれた、最終50巻収録の番外編『はなのいろは』。
あれは「サブキャラクター視線の投入」と少し似た技法・構成で
描かれた作品だと思っています。

花野さんが「太一くん&千早ちゃんの交際状況」を気にしている描写から始まり、
久々に大学生になった千早ちゃんを観た瞬間に
​「私はこの人が嫌いだ」​ という強烈なモノローグを被せる…

=もともと周囲の恋愛感情へのアンテナが敏感な花野さんが
顔を上げた千早ちゃんの表情を見て、一瞬で
「あ、太一くん&千早ちゃんは 超☆順☆調 だな」 と強烈に感じた
​​
そのシーンを一番の魅せ場として持って来ています。

そんな千早ちゃんを、新くんもちゃんと見ています。

太一くん&千早ちゃんの具体的な描写を避けつつ
その後の恋愛面の進展だけを 憶測という形で、
しかし強烈な絵面&花野さんの感情的な強いモノローグで叩きつけて来る
という
恐ろしくエグイ構成の一作だと思っています。


最終回後に描かれた(おそらく)大学生になった千早ちゃんのカットイラストを見ると、
服装も仕草も表情も女の子っぽくなったというか、お姫様な雰囲気になったというか…
ようやく ​「これでええんや…!」​​ と安心した表情をしているように感じて​​​
​「千早ちゃん、良かったね…!」 と思いながら眺めてます。


大学生の太一くん&千早ちゃんは、
現在連載中の続編『ちはやふるplus きみがため』にもいつか登場するでしょうか…?
(もちろん、新くんや他の子たちも!)

どんな形で描写されるのか、楽しみにしています。


『ちはやふる』…本当に、どれだけでも語れますね!

by姉(+一部見解・妹)
​​ ​​ ​​





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最終更新日  2024.02.18 08:07:53
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