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2010年01月18日
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カテゴリ: 加藤周一

私にとっての加藤周一
かもがわ出版が加藤周一の一周忌に合わせて、追悼本を二冊出している。一冊は有名人の追悼集。「冥誕』。今はあまり読む気がしない(その多くはすでに読んでいるから)。もう一冊、加藤周一が晩年京都でいわゆる「サロン」として楽しんでいた白沙会の人々と、かもがわHPで募集した市民の追悼文の文集「私にとっての加藤周一」が出ている。一読、28人の文をよみながら、ここに「私」がいる、と思った。私の周りでは、もちろん私が一番加藤周一をよく読んでいる。けれども、日本中には本当に無数の加藤周一ファンがいるのだということがよくわかった。

できうる限り抜き書きしたい。

元教師の国方勲さんは「はだしのゲンはピカドンを忘れない」(岩波ブックレット)の生徒の読書感想文集を100人ほどに送る。思いもかけず、91年に面識は一切ない加藤周一から返事が届く。
「(略)なさっているお仕事の意味は決定的に大きいと私は考えます。もちろん限界はあります(生徒の人数)。しかし、私たちは、私たちにできることの限界まで、やるべきことをやるほかはないでしよう。私自身は大いに勇気づけられました。ここに確かな手ごたえがあると……それ以上何を望むのかと。御礼まで。―心からの御礼まで。加藤周一」

このあと、他の人の追悼文のいずこからも出てくるのですが、有名無名を問わずに、加藤周一は一人ひとり真剣に相対するのです。

ヴァイオリニストの松野迅さんは言う。
「加藤周一氏の講演に接するたび、その論理の明瞭さも相まって、私は非常に西洋的な話術だと感じてきた。私が西洋音楽を学習してきた故にそう捉えるのかもしれないが、テーマが分析的に「第一に……、第二に……」と提示され、語尾を濁さない日本語は、主題、展開、再現を形づくる西洋音楽の〈ソナタ形式〉を確認するようだった。展開部と再現部の表現が自由自在で、予想を超えた即興的魅力は『居酒屋の加藤周一』を彷彿とさせた」

加藤の文章は美しい、とだれもが言う。科学者の明瞭さと文学者の情熱や詩心を併せ持っているからだと私は思っていたが、なるほど、留学先で血となり肉となった西洋音楽だったのかもしれない。

会社員の瀬戸さんは言う。
「加藤さんの著作から学ぶことは多い。しかし、加藤さんの生きざまからも、おおいに学ぶことがあると思っています。ひとつは、「できるだけ自由に生きてみせる」ことを意識されていたと思います。集団主義の強い日本において「ここまで自由に生きることができる」という事例を身をもって示されたのです。」
また、ガラス作家の高澤そよかさんは言う。
「あるとき、晩年の氏に直接質問する機会を得て、自由を貫き通すことの秘訣をおたづねした。当時勤め人だった私にとっては、切実だったのだ。高い代価を支払い、社会への影響力を犠牲にして、自覚的に選択した自由人という生き方であることを、氏は教えてくださった。」
これに関して(というわけでもないのですが)、白沙会の中心的な発起人の井上吉郎氏がこの本でこのような証言をしていた。




「加藤先生は日本文化の構造的特徴を『今・ここ』主義だと鮮やかに浮き彫りにし、歴史への無関心・無反省と大勢順応主義に鋭く警鐘を鳴らしづけてきた。ひとつの与件としての『今・ここ』主義を無視するのでなく、事実として見据えて相対化し、そこに埋没しない個人の確立こそが〈未来の洞察と歴史への共鳴〉にとって決定的だと説いた。弁証法を借りれば、『今・ここ』主義即自を『今・ここ』主義対自ととらえ直すことである。「一般的に起こりにくい」としても、まさに加藤先生が生涯をかけた如くに『今・ここ』主義からの〈脱出〉をめざす知的・思想的営為を聊かも休まず、そしてまた先生が晩年最大の情熱を注いだように草の根の小さな実践的努力〈九条の会〉を積み重ねる―もし何かが起こりえるとすれば、その中にこそ現状追従と歴史無視を乗り越える本質的変革の可能性は芽吹くのであろう」

「自分は一つのことを一回しかしないことにしている。」晩年に始めた組織的政治的行動の意味ははかりなく大きい。

長くなったので二回に分けて紹介する。





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最終更新日  2010年01月18日 20時38分49秒
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