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2010年03月17日
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カテゴリ: 加藤周一
「加藤周一自選集3」

「親鸞」

ずっと前にこの文章を読んだときには、ただただ感心した。日本において初めて「神がいる」つまり彼岸思想を打ち立てたという意味で、法然、親鸞は決定的だったということを述べた。文章なのである。

(法然と親鸞において)日本の精神は、はじめて、決定的に、超越的な彼岸思想に徹底した。思想的にその道を開いたのは、法然である。その意味で、1500年以上の日本仏教思想史の中から、もしただ一人を挙げろとすれば、まず法然を挙げる必要があろう。しかしその思想的革命から引き出すことの出来るすべての人間的結論を引き出したのは、主として13世紀前半に活動した親鸞であった。

ともすれば、彼岸ではなく、「此岸」に陥る日本人の思想において、この思想家は特別であり、またその限界を知ることで、日本の思想の限界も知ることになるのである。ということを私に教えてくれた非常に刺激的な文章だった。

そこまでは今までの理解だった。

今回は、まったく違う見方でこの文章を読むことになってしまった。

加藤周一がなくなってしばらくたったころ、私はMLで加藤周一が亡くなる直前(08年7月ごろ)上野毛のカソリック協会で洗礼を受けたのだということを聞いた。(洗礼名はルカ)びっくりした。加藤さんはずっと無神論者なのだとばかり思っていた。この論文の直前に加藤さんは 「余は如何にして基督信者とならざりしか」 という短文を書いているが、これは加藤さんの心情吐露というよりか、日本人一般論を書いたものだから、後で考えれば、加藤さんの真情はついに分かってなかったのではあるが、なんとなく「理性の人」加藤さんは「宗教には走らない」と思っていたのである。そういう考え方は「理性ある人は宗教に走らない」と考えることと同じことで、もちろん間違った考え方であると「理性」では知っていてもである。

ところが今回、この論文でこのような文章を見つけた

別の言葉で言えば、それでも人を信じるのは、だまされる覚悟をするのと同じである。だまされぬためには、信じないほかは無い。信じなければ、人格と人格の接触はおこらないだろう。つまるところ人間関係も二者撰一の形で現れる。二者撰一の根拠は、理性的にはありえないから(理性的にありえるのは確率の計算だけだ)、一種の賭けである。
(略)
念仏して、浄土に行くか、地獄に行くか、知れたものではない、といった後で、たとえ地獄に行くとしても、「いずれの行もおよびがたき身なれば」、後悔することはないという。


これはもちろん親鸞の「歎異抄」の「たとひ法然聖人にすかされまひらせて、念仏して地獄に落ちたりとも、さらに後悔すべからずさふらふ。」ということの解説ではある。ここで「賭け」という言葉を使っているのに注目したい。


パスカルは言う。神があるのか、ないのか。どちらが本当らしいか。「理性はこれを決定することが出来ない」。神とわれわれを隔てる無限のかなたで、「賭けが行われる」。表が出るか、裏が出るか。「神がいるという表を取って損得を考えよう。二つの場合がある、もし勝てばすべてを得、負けても失うものは無い。それならば躊躇わずに、神がいるという方へ賭けるのがよいだろう」
たとえばこの論法のおおいに親鸞に似ているのを見るべきである。(略)宗教の宗教性は超越者に集中する。超越者と人間の関係は、信仰という行為に集約される。その信仰という行為の根拠は、一種の「賭け」である。たとえ法然上人が間違っていて地獄に落ちても後悔することはないと親鸞は言い、たとえ神がいると賭けて間違っていたとしても失うところは何も無いはずであるとパスカルは言う。信仰の本質を突き詰めると、親鸞たらずとも、また仏教徒たらずとも、Gredo quia absurdumへいくようである。


Gredo quia absurdumてなんだろう。(たぶんフランス語だと思う)誰か教えてくれませんか。

要は、加藤周一の理性は、パスカルに同調しているとも読める。あるいは、まだ迷っているようにも見える。

加藤さんが死んだとき、棺には「論語」とカントの「実践理性批判」そして「聖書」が入れられたという。

結局私はまだ加藤の振興の意味に付いてまだ語るべきものを持ち合わせていない。これからも、加藤さんの最後の選択である、「洗礼」の意味について考えていかなければならないのははっきりしている。





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最終更新日  2010年03月17日 23時45分32秒
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