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2013年03月22日
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カテゴリ: 洋画(12~)


「愛、アムール」
老老介護の話である。話の内容とは全く無関係だが、私はずっと私の叔母夫婦の今までとこれからを考えていた。状態はこれとは違うが、深刻さは似通っている。

叔母の認知症が一挙に深まったのは五年前叔母の弟で私の父親の臨終の場だった。彼女はその時から「なーんも分からん様になった。頭がおかしゅうなったんかなあ」と、それ以降何千回も言うことになる口癖を言う様になった。

86歳の叔母と89歳の叔父には子供はいない。近所に住んでいるので、入退院の時やケアマネージャーとの相談は私が担当することになっていた。叔父は20年ほど前から肺気腫を患い、その世話は一手に叔母が引き受けていたのであるが、今は立場が逆転している。

四年前には、叔母が入院していた時に、家にいるはずの叔父の反応がないということで、警察を呼んで戸を破って安否を確かめたこともあった(耳が遠いので、物音に気がつかず、寝ていただけだった)。

叔母の血糖値が高くなり、叔父が血糖コントロールが出来なくて低血糖で意識がなくなり倒れたことがこの3年で4回、脱水症状で叔父叔母とも倒れて救急車を呼んだことが2回、叔母の判断能力は皆無に近く、叔父の認知症も進んできたが、お金がないと思いこんでいて、叔父は絶対施設に入ろうとはしない。

この映画を観た日から4日後に、私は叔母だけを施設に入れようとしている。叔父が家を離れたがらないから、命には変えられないと説得中だが、多分無理やり2人を別れさせることになるだろう。

叔父は叔母を毎日叱りながら、面倒を見てきた。しかし、それも限界だ。
「何か他に方法があるか?」
と夫のジョルジュは言った。


ジョルジュとアンヌの場合には、あれも仕方なかったのだろう。二人には娘が居た。娘が仕事を辞めて介護に徹していたならば、もちろん結末は違っていた。でも、それは普通に出来ないことである。


夫ジョルジュを演じるのは、1966年の世界的ヒット作『男と女』に主演したジャン=ルイ・トランティニャン。彼をイメージして執筆された脚本、その1シーン1シーンを、名優は、卓越した表現力でさらに印象づける。
妻アンヌには、戦後の広島を舞台にしたアラン・レネ監督の『二十四時間の情事』でヒロインを演じたエマニュエル・リヴァ。オーディションでアンヌ役を得た彼女は、往年の美貌に加え、年を重ねて磨かれた存在感で難役を見事に演じきった。ともにフランスを代表する名優、齢80を越えたふたりが見せるのは、熟成された男と女の人生そのものである。
さらに、彼らの娘エヴァ役にはハネケ作品『ピアニスト』でカンヌ映画祭女優賞を受賞したイザベル・ユペールが扮し、夫妻の愛弟子のピアニスト役には、ヨーロッパでその名を高める現代ピアニスト、アレクサンドル・タローが実名で登場。劇中音楽も担当している。
カンヌの栄冠に続き、ヨーロッパ映画賞では作品、監督、男優、女優、脚本、撮影の主要6部門にノミネート。そして米・アカデミー賞においても注目を集めること必至の、至高の愛の物語。
愛する者が死に臨む、その姿を見届けることは、はたして愛の終焉か。それとも幸福の完成なのか。名匠と最高のキャスト陣は、静かな熱を持って、究極の問いを投げかける。
結果、今年のアカデミー外国語映画賞を受賞した。

inシネマクレール
2013年3月17日
★★★★☆

(追伸)
昨日、叔母を施設にいれて来ました。自分がどういう状況にあるのか、分かっていない様子です。本来は社交的な人なので、集団生活で馴染むのではないかと期待しています。

心配は残された叔父です。
「今日来るとは思わんかった。急なんじゃな」と、2日前に伝えていたことも忘れている状況だし、味噌汁の火をかけて煮たっている状況だし。引き続きヘルパーは毎日来てくれることになってはいるし、暫くはしょっちゅう顔をのぞかせようとは思っていますが‥‥。昨日顔をのぞかせたときには、案外元気だったので、少し安心しました。

私自身、施設にいれて少しはホッとするかと思いきや、一日中心が重くなったままでした。夫婦を離れ離れにさせたことは許せるのか。「愛、アムール」のジョルジュは妻を中腰でベッドに移動させることも出来たし、まだまだ元気だった。しかし、妻との約束や将来のことに潰されたのか、あのような選択をした。最後の場面で罪悪感に苛まれてはいないとは、想像出来る。あれは2人だけの問題を2人で決着つけたからだろう。しかし、私の場合は息子でもない。第三者がこんな決定をして良かったのか。でも、叔父に「他に方法」を探す能力は多分無い。もやもやが堂々巡りです‥‥。





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最終更新日  2013年03月22日 10時14分19秒
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Re:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
suzu1318  さん
心中、お察しします。

痴呆や病気、介護など、高齢化が進むにつれ
親より先に逝かない限り、誰もが経験する問題ですよね。

KUMAちゃんが、四六時中見ているわけにもいかないし
そんなに自分を責めないで下さい。

なんとか説得に応じて、叔父さんが叔母さんの居る施設に入ってくれるのを願うばかりです。


(2013年03月22日 15時22分09秒)

幸いにして  
まろ0301  さん
 幸いにして父は痴呆になる前に脳梗塞になってしまい、寝たきりとなり、昨年96で旅立ちました。
 母は90ですが、まだしっかり生きていてくれます。姉夫婦が近くにいて、毎日のように訪ねてくれています。
 この映画、おそらく観ることができないと思います。母の事だけではなく、私たち夫婦の将来が重なってくると思います。
 切実すぎるというのか、目をそらしてはいけないのですが・・。 (2013年03月22日 21時12分27秒)

Re[1]:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
KUMA0504  さん
suzu1318さん
>心中、お察しします。<br /><br />痴呆や病気、介護など、高齢化が進むにつれ<br />親より先に逝かない限り、誰もが経験する問題ですよね。<br /><br />KUMAちゃんが、四六時中見ているわけにもいかないし<br />そんなに自分を責めないで下さい。<br /><br />なんとか説得に応じて、叔父さんが叔母さんの居る施設に入ってくれるのを願うばかりです。<br /><br /><br />
-----
ありがとうございます。
叔母さんは電話での施設の人の話では、落ち込むこともなく元気に過ごしているそうです(^_^;)。
今日夕方叔父さん処に行ったらもう戸を閉めていくら呼んでも反応無し。耳が遠いのである。

叔父さんが今度倒れた時に、コッソリ叔母さんと同じ施設の病院に入院させて、そのまま2人にさせることも考えています(^_^;)。それぐらいしか、とりあえず方法は無い。 (2013年03月22日 22時28分56秒)

Re[2]:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
KUMA0504  さん
まろ0301さん
> 幸いにして父は痴呆になる前に脳梗塞になってしまい、寝たきりとなり、昨年96で旅立ちました。<br /> 母は90ですが、まだしっかり生きていてくれます。姉夫婦が近くにいて、毎日のように訪ねてくれています。<br /> この映画、おそらく観ることができないと思います。母の事だけではなく、私たち夫婦の将来が重なってくると思います。<br /> 切実すぎるというのか、目をそらしてはいけないのですが・・。
-----
お母様が元気に歳をとられることを祈っています。
この映画、ネタバレをすると、と言っても冒頭で明らかにされているのでネタバレでもないのですが、最後、ジョルジュは奥さんを殺し自分も多分自殺します。夫婦には、他人にはわからない濃密な「長く美しい人生」があることがひしひしと伝わる作品でした。ハイネ監督は総てを描かない難解な作風で知られているのですが、今回に限れば少しも謎は残りませんでした。そんな映画を直前に偶然観てしまったので、一層叔母夫婦を離れ離れにしたことに葛藤を持ってしまいました。叔母夫婦も、最後は素っ気なく別れたのですが、濃密な歴史があるはずだし、あったのです。私に何が出来るのか模索して行くしか無いですね。

この映画、非常にたんたんと描いているので、観てショックを受ける様な作品では無いですよ。観て損は無いと思います。 (2013年03月22日 22時45分16秒)

Re:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
いもこ さん
なんだかしみじみ感謝の気持ちでいっぱいになりました。くまさんお世話をありがとう。おじさんおばさんに代わってお礼申し上げます^^
ときどき顔を覗かせてくれるだけでも十分だと思いますよ。なにかあったらその時対処すればいいんじゃないかな。
認知症のお年寄りを「叱る」のを見るのはすごく辛い。でも,一緒に暮らしていたらそういう感情になるのも責められない気がする。
おじさんは孤独じゃないと思いますよ。 (2013年03月23日 09時50分43秒)

Re[5]:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
KUMA0504  さん
いもこさん
>なんだかしみじみ感謝の気持ちでいっぱいになりました。くまさんお世話をありがとう。おじさんおばさんに代わってお礼申し上げます^^<br />ときどき顔を覗かせてくれるだけでも十分だと思いますよ。なにかあったらその時対処すればいいんじゃないかな。<br />認知症のお年寄りを「叱る」のを見るのはすごく辛い。でも,一緒に暮らしていたらそういう感情になるのも責められない気がする。<br />おじさんは孤独じゃないと思いますよ。
-----
ありがとうございます。
叔父さんが少し遠い病院に肺気腫で入院していた時、叔母さんは車の運転が出来ないので、毎日のようにバスで通っていたようです。叔母さんを施設に入れる相談をした時に叔父さんが何回も何回も言ったのは、「俺は今こんな身体だから、叔母さんの洗濯物は取りにいけないんだ」ということでした。叔父さんにとってはあれが生涯1番感謝することだったのかもしれません。果たして叔母さんに伝えたことがあるか、どうかは今やわかりません。もちろん、洗濯物はクリーニングに出すので必要ないのですが、何回言い聞かせてもそれを繰り返すのです。
めったに私ごとはブログに書かないのですが、これは書いても多分個人を特定出来ないだろうし、ここに書くことが出来て良かったです。 (2013年03月23日 11時40分40秒)

Re:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
ふらう さん
私の父に2年と少し前、脳に腫瘍が見つかりました。悪性で急を要する状態ではなかったのですが、勿論放置出来る物ではないので、2年前のちょうど今頃手術予定でした。しかし東日本大震災があり、手術予定だった病院ではそれどころではなくなったのですが、まぁ何とか今もやってます。
そんな時、介護や看病に正解も不正解も無い。何をするのも、或いは何をしないのも正解なのだ、とある方が仰ったのを思い出しました。乱暴な物言いのようですが、傍にいる者の気持ちを慮っての言葉だったのだと思っています。
このような言葉でくまさんのお心が晴れるとは思いませんが、あまりお気持ちを病まれませんよう願うばかりです。
(2013年03月23日 16時18分12秒)

Re[7]:「愛、アムール」あるいは叔母夫婦のこと(03/22)  
KUMA0504  さん
ふらうさん
>私の父に2年と少し前、脳に腫瘍が見つかりました。悪性で急を要する状態ではなかったのですが、勿論放置出来る物ではないので、2年前のちょうど今頃手術予定でした。しかし東日本大震災があり、手術予定だった病院ではそれどころではなくなったのですが、まぁ何とか今もやってます。<br />そんな時、介護や看病に正解すも不正解も無い。何をするのも、或いは何をしないのも正解なのだ、とある方が仰ったのを思い出しました。乱暴な物言いのようですが、傍にいる者の気持ちを慮っての言葉だったのだと思っています。<br />このような言葉でくまさんのお心が晴れるとは思いませんが、あまりお気持ちを病まれませんよう願うばかりです。<br />
-----
お父様ご心配ですね。
急ではないとはいえ、手術がそんなに延びるものなんですね。
私は少し落ち込んだけども、とりあえず叔母さん叔母さん共に環境の激変で状態が変わっている様子はなく、安心しています。周りに愚痴の言える人がいないので、ブログで愚痴を吐いたという感じです。 (2013年03月24日 04時24分10秒)

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