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2021年06月17日
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「自閉症の僕が跳びはねる理由」東田直樹 角川文庫

「自閉症」という言葉をそのまま捉えると、「自ら心を閉ざす病気」というように聞こえる。私も大まかはそんな理解だった。しかし、一つの映画をキッカケに本書を読んで認識は大きく変わった。

いまイギリス発のドキュメンタリー映画が、全国で順次公開されている。「僕が跳びはねる理由」(ジェリー・ロスウェル監督作品)。世界5人の「自閉症者」を取材して、東田直樹原作の内容を映像で「証明」した作品である。

ずいぶん前から東田直樹さんのエッセイはビッグイシューで読んでいた。それなのに、それは普通の若者の文章で、彼はどれだけ重度の「自閉症者」なのかを私は認識していなかった。
「大きな声はなぜ出るのですか」
「いつも同じことを尋ねるのはなぜですか」
「どうして目を見て話さないのですか」
「声をかけられても無視するのはなぜですか」
「跳びはねるのはなぜですか」
「どうして耳をふさぐのですか」


映画は、先ずは自閉症者が見る世界を映像として見せる。79pで東田さんは言っている。
「みんなは物を見るとき、まず全体を見て、部分を見ているように思います。しかし僕たちは、最初に部分が目にとびこんできます。その後、徐々に全体がわかるのです」
だとしたら、私たちの認識とは全然別のものになるだろう。そして世界は、なんと美しく見えるのだろう。部分が美しすぎて、それが気になって、隣の人の言葉なんか聞こえなくなるのも当然だ。

「(僕が同じことを尋ねるのは)みんなの記憶は、たぶん線のように続いています。けれども、僕の記憶は点の集まりで、僕はいつもその点を拾い集めながら、記憶をたどっているのです」
これは衝撃的だ。映画では、随分前のことがほんの一瞬前のように感じることを映像として見せていた。ベッドで飛び跳ねている場面に、海で嬉しくて全く同じように飛び跳ねているフラッシュバックがつくのです。脳がそうなっているとはいえ、私たちの見る世界とはやはり違う。

じゃあ知的思考はできないのか?できるということは、この本が明確に証明している。文字盤、やがてはPCのキーボードで、彼は思考も会話もできるようになったのである。東田さんだけが特別なのではない。映画では、アメリカの男女の幼友達が、かなり高度な会話をしていた。

自閉症についてどう思いますか?
この質問に対して東田さんは以下のように答えている。少し長いが書き写す。教えなければ、誰がこの文章を13歳の男の子が書いたと思うだろうか?いや、そんなことが凄いのではない。私は、もしかしたら世界的に重要な哲学的発見を読んだのかもしれない。自閉症説明を超えて人類の本質を示唆しているのではいか。
「僕は、自閉症とはきっと、文明の支配を受けずに、自然のままに生まれてきた人たちなのだと思うのです。
これは僕の勝手な作り話ですが、人類は多くの命を殺し、地球を自分勝手に破壊してきました。人類自身がそのことに危機を感じ、自閉症の人たちを作りだしたのではないでしょうか。
僕たちは、人が持っている外見上のものは全て持っているのにもかかわらず、みんなとは何もかも違います。まるで、太古の昔からタイムスリップしてきたような人間なのです。
僕たちが存在するおかげで、世の中の人たちが、この地球にとっての大切な何かを思い出してくれたら、僕たちは何となく嬉しいのです。」









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最終更新日  2021年06月17日 14時25分12秒
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