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日本の古代文書をテーマにした伝奇ホラーを読んだ。〇ストーリー視力を失い,近代治療に絶望し,伝承を信じてある島へ渡った婚約者を取り戻すため,可奈子はその島へと渡る。だがその島での生活は予想以上に過酷なものだった。必要以上にひどい食材を食べさせようと島の人々の意図は?そしてそこにいるはずの婚約者は?-----------〈禍記〉(マガツフミ)という名の,古事記,日本書紀以前に存在した古文書を目にした人々は,呪われた存在に出会ってしまう。そうした設定で繋がっている連作短編集だ。短編としては5つの作品が収められているが,それを補完する形で〈禍記〉関連の短編が挿入されている。構成も含めて,ホラーとして仕上げられている作品だ。-----------ミステリーや児童文学などを読んでいると,その作品世界の生温さにイライラしてしまうことがある。現実から読者を守るためなのか,読者の共感を得るためなのか,かも知れないが,現実社会や周辺の人間関係と上手くいっていない人物を主人公に据えて,それを肯定的に扱っていることが多いからだ。そうしたイライラが理由なのかも知れないが,一定周期でホラーや〈嫌ミス〉など,毒を持った作品を読みたくなる。読者を甘やかすことなく,現実あるいは現実以上のひどい状況が描写されると,あの生温い世界に対しての批判を感じて,どこかスッキリする。世の中の人がこうした読み方をしているかどうかは知らないが,読書というものの体験の両側を理解することは重要だと思う。-----------この作品は〈禍記〉(マガツフミ)の存在をめぐって,それに翻弄される人々を描いている。確かに単純なホラー小説として提供されるよりも,一定の裏設定のようなものがあって,それが連作として展開されることで,作品としての奥行きや深みのようなものが生まれている。残念なのは,作者自身がその設定を捨てて,SF仕立ての短編を混ぜるなどをしていることだろう。設定としては良いのに,わずか短編5編でそれから外れてしまったのは残念だ。伝奇小説を目指すなら,最初から最後まで,その空気で作品を支配してもらいたかった。-----------各編について簡単に感想を述べる。「取りかえっ子」:理想の相手と結婚し,さらに出産を迎えた静香は,故郷の記憶に残る〈取り換え子〉がトラウマとなり,自分の子供を可愛がることが出来ない。果たして彼女の子供は,本当に彼女の産んだ子なのか?・・・最初から不自然な設定なのだが,周り中がそれを不自然と思わず,その不自然さを解消するかのように不幸な事件が起きる。主人公・静香はそうした状況に巻き込まれる形で,どんどんと不幸になっていく。なかなか多重構造に逃げられない状況だ。「天使蝶」:妻の故郷にいる蝶が,学会に対する画期的な発表となると判断した男は,娘と息子を連れてそこに移住する。だがその閉鎖的な村で体験したのは,村の独特の儀式めいた子供たちの扱いだった。それによって息子は?・・・やや足りない部分はあるものの,この作品の中ではなかなかの出来の短編だと思う。どうしようもなく流される状況も,その後のカタストロフィーや,それとの戦いもよく描かれていると思う。「怖い目」:視力を失い,伝承を信じてある島へ渡った婚約者を取り戻すため,可奈子はその島へと渡る。だが盲目の人々と彼らが恐れる〈百目さま〉との暮らしの末に,可奈子が得たものとは?・・・予定調和的な部分は強いが,佳作だ。だが前作に続き,変にリアルとの整合性が意識されており,その小さな部分とそれまでの流れの歪んだ部分との摺り合わせに疑問を感じる。「妄執の獣」:ある街で,大人ばかりが死亡する事件が起きていた。主人公の昭吾は,息子の聡と上手くいっておらず,その生意気な言動に思わず手を挙げてしまう。だが聡はモムという友人に,その一部始終を相談しているらしいのだが?・・・現実世界の中で展開しているということを含め,この作品の中でぴか一の短編だ。自分と息子が上手く行かないという,誰にでもありそうな悩みを中心に,主人公の罪を含めて,拡大していくホラーが素晴らしいと思う。「黄泉津鳥船」:恒星間の旅行を実現するワープは,搭乗者の一時的な死を要求するものだった。だが,それを利用して?・・・いきなりのSFは,さすがに違和感がある。あと一編の短編を書くことは出来なかったのだろうか?
2017.01.31
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姉や姪たちが読んでいた高楼方子(たかどのほうこ)の長編を読んだ。〇ストーリー小学6年生の夏休み,フー子はいとこのマリカから誘われ,母の実家がある北の港町〈汀舘〉を訪れる。その家は祖父と家政婦のリサさんが住む静かな家だったが,2階への階段の踊り場の先に封鎖された扉があった。フー子はそこから不思議な花園へと入り込む。フー子とマリカ,マリカのいとこの映介は,〈汀舘〉の過去に潜む,〈時計坂の家〉の秘密へと迫る。だがそれは危険な探求でもあった。そして・・・?-----------高楼方子の作品は,前から読まなければと思っていたが,図書館で予約本が膠着状態にあるので,いよいよ手にすることにした。絵本,低学年向け,高学年向け,と色んな対象の作品があるので,どれから手を付けるか悩む。で,結局,有名な作品を選んだ。-----------物語は,小学生の少女・フー子が,函館だと思われる町〈汀舘〉にある,母親の実家に向かうところから始まる。小6の女の子の1人旅,祖父の家での生活,美しいいとこ・マリカとの関係,謎の花園・・・フー子の気持ちは不安と期待で揺れ動く。主人公の不安,疎外感,期待,落胆というのは,読書好きの人が感じる感情と思え,ジュブナイル小説,ミステリー小説の主人公などでよく体感されている。この作品でもそうした感情が表現されていたので,正直またか,と思ってしまった。だが,その後の展開は違っていた。子供が苦手と思われた祖父とリサさんは,独特の距離感でフー子を1人の人間として扱ってくれた。同い年のいとこ・マリカは,フー子を振り回すが,それでも大きな喜びを与える。そして,はとこの映介は,フー子が見ているものを信じて,現実的な手法で謎解きをしてくれる。つまらない現実,ワクワクするファンタジーという二元論ではなく,フー子を中心として彼女の現実とファンタジーにそれぞれの人が別々の接し方をする,徐々にそうした状況に合わせられるようになるフー子に安心する。ゆっくりとした主人公の成長を見守っている気持ちになれる作品だ。-----------この作品は伝統的なファンタジーの伝統を守りつつ,さらに新しいレベルへ挑戦している。この作品では,現実とは異なる世界に憧れ,そこへ身を任せる人々を描く。それを全く認識出来ない現実だけで生きる人がいる。これまでの作品は,そうした二元論だった。この作品で描かれるのは,異世界の存在を認識しつつも,その危険性を感じて,そこから距離を置こうとする人々だ。フー子の祖父,そしておそらく母もそうした人々だ。世界の向こう側へ行ってしまったらしい祖母,彼女に憧れるフー子。フー子,マリカ,映介の3人は,かつて起きた事件にシンクロするような関係となる。フー子は祖母と同じ道をたどるのか?-----------最初の高楼方子から,これまでとは異なる,2つも3つも先を考えたファンタジーを読ませてもらった。姉たちが褒めるのも納得だ。子供にも,かつて子供だった人にもオススメだ。
2017.01.30
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「東京藝大:天才たちのカオスな日常」で一気にベストセラー作家となっている二宮敦人のホラー小説の下巻を読んだ。〇ストーリー校舎に閉じ込められたユウタたち10人は,迫りくる浸水と,互いを疑う気持ちとのバランスの間で,協力関係を築いていた。だが,意外な人物からの告発で,彼らの生活の均衡は崩れる。隠棲していた人物が,校舎に戻った時,目にした驚きの状況とは?------------現代版「漂流教室」の下巻を読んだ。現代版では,更なる相互の不信が大きなテーマとなる。様々なトラブルを超えて落ち着きを見せたと思えた主人公たちの関係だが,新たなる疑心の投入により再び攻撃的な対立関係が生まれてしまう。ただし,それには複雑な同意の状況を生み,これまでとは異なるチカラ関係を生む。数日この小さな社会から逃避をしていた人物が,戻ってきた時に目にしたものとは?------------物語は破滅的な方向へと進む。ロジカルな理由は無くとも,他人を信じる人々がいる一方で,ロジカルと思っている理由で他人を追求する人がいて,せっかくの小さな社会は崩壊していく。ある人物が,ある対象を告発する方法が恐ろしいと思ってしまった。疑惑はどんなセリフでさえ拡大解釈して怪しいと解釈してしまう。とは言え,石持浅海の作品世界ではないので,「そんなセリフを理由に断定するのはおかしい」というセリフがあったのは良かった。------------上巻で行われた王政から,民主制への革命,そしてさらに産業革命的な主導権の移行が語られ,大きなトラブルが起きる。ここから強引な展開となってしまうのだが,平成版「漂流教室」は一気に終焉へと向かう。これを早急ととらえるか,作者の手腕ととらえるかは判断が分かれるところだろう。------------最後まで気になったのは,やる気の無い主人公・ユウタの,不思議な評価の高さだ。ラノベの読者を想定した優遇措置だろうけれど,本当のトラブルの状況を考えたら,これは無いと思う。傍観者が幸せになるよりも,行動を起こした人がそうなるべきなんじゃないだろうか?よく分からない世界観だった。
2017.01.29
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マーベル社のアメコミ映画の新作を観た。〇ストーリー世界一の脳外科医として富と名声を得ていたスティーヴン・ストレンジは,不注意で自動車事故を起こしてしまい,両手にマヒが残ってしまう。治療のため何回も手術を受け,資産も減ってしまったが治らなかった。そんな中,脊髄を2つ粉砕されていた男が奇跡的に治ったという噂を聞き,その彼が治療を受けたカトマンズの〈カマー・タージ〉の扉を叩く。そこは西洋医学とは異なり,修行を通じて身体の自然治癒力を伸ばす東洋の秘術を学ぶ場所だった。ストレンジは,エンシェント・ワンと呼ばれる不老の導師に師事し,ゆっくりと秘術を学ぶ。だが〈カマー・タージ〉を,かつてのエンシェント・ワンの弟子・カエシリウスが襲う。世界の均衡を守るため,ストレンジたちとカエシリウスは,ロンドン,ニューヨーク,そして香港で激突する。果たして世界の命運は?------------これまでのアベンジャーズのヒーローたちとは雰囲気が異なる。なにしろ能力の源泉が,東洋の秘術や魔法だ。主人公が導師・エンシェント・ワンに,異世界を案内される映像は,まるでLSDでトリップした人が見る幻覚のようだ(たぶん)。西洋社会に限界を感じて,東洋神秘思想に憧れてネパールやカトマンズに行き,怪しげな修行を積むって,完全に1960年代,70年代の若者の行動だな。おまけにトリップもしているし。------------予告編などでは,”上から目線”のドクター・ストレンジがケガをしてどん底に落ちる,ということが強調されていた。確かに登場した主人公は自信たっぷりだが,確かに外科医としての技術もセンスも抜群なので,この言動も仕方がないと思う。すごく嫌なヤツとして描かれるかと思ったら,手術を選り好みしているだけで,それほど人格的には悪い人ではなかった。運転中にスマホをいじるのはいけないと思うけど。------------物語はアベンジャーズの世界を忘れて,ただのSFアクションだと思えば楽しめる。シリーズ第1作ということで,主人公のバックグラウンド,新しい能力の説明,正義と悪の組織と,説明することが多いのに,テンポよく物語をつないでいるのには感心した。何よりもロンドンとニューヨークでの,歪んだ空間での追跡劇の映像が衝撃的で良かった。『インセプション』でも似たような都市が歪んでいく映像があったが,この作品ではその中で主人公たちが走り回る。これだけでも観る価値があると思った。新宿で朝一番の回で観たけれど,空席が目立っていて心配になった。いつものおまけ映像で,ようやくアベンジャーズとのつながりが出てきた。この主人公で続編を作るのだろうか?それいともあちらの続編にゲスト出演するのだろうか?------------主演はベネディクト・カンバーバッチだ。少し前に『スタートレック:イントゥー・ザ・ダークネス』を観たが,その時と比べるとひじょうに老けているけど,渋い。導師エンシェント・ワンを演じるのは,ティルダ・スウィントンだ。『ナルニア』の白の魔女など,人間じゃない役が多い。今回は禿頭で頑張っている。悪役カエシリウスを演じるのは,マッツ・ミケルセンだ。『ローグ・ワン』で主人公の父親を演じたばかり。当たり年かも。ヒロインを演じるのは,レイチェル・マクアダムスだ。『アバウト・タイム』と同様にとにかく可愛らしい。日本人好みだと思うけれど,それほど人気出ないね。------------で,ドクター・ストレンジの手は治ったの?何年も修行しているのに???
2017.01.28
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学園ホラーということで選んだ作品の上巻を読んだ。〇ストーリー土曜日に学校に集まり,来月に迫った学園祭の準備をしていた3組のメンバーが,地震の後に気付くと,学校の外は岩盤に覆われていた。電気と水道が止まり孤立した彼らは,地下に沈下としたと思われる校舎の中で,生き延びるために行動を始める。だがそれはたやすく不信と対立へと繋がってしまうのだった。果たして彼らの運命は?------------学校がまるごと異世界へと移動してしまい,孤立した人々が,生存のために様々な行動を取る,というのは楳図かずおの「漂流教室」,望月峯太郎の「ドラゴンヘッド」など,多くの作品で描かれている。若い読者の世界である学校が,突然別の空間に投げ込まれ,クラスメートたちが徐々にこれまでと異なる存在になる。実に魅力的な物語だ。世界が変わるとき,人々がどのように変わるか?それが問われる物語となっている。------------登場人物たちは高校の3組のメンバーばかりだ。どうやら校舎がまるごと地下に沈下したらしく,窓の外,階段の外は謎の岩盤で覆われていて,どこに行くことも出来ず,外部に連絡を取ることも出来ない。通常はまずは集まって,安否を確かめ合うと思うのだが,この物語の登場人物たちは,最初から反目を始める。まずはクラスメートの1人を,この状況を生み出した犯人として非難する。その次に,食料の配分について闘争が起きる。攻撃的な設定は,アメリカのテレビドラマのような展開だ。物語を先へと進めることには役立っているが,あまり現実的とは思えない。------------登場人物たちには,不思議な肩書が付けられており,それに沿ったような行動を取る。メインのグループはクラス委員長に従い,民主的な集団を作るが,暴力を通じて食料を支配しようとする人物も現れる。面白いのは,わずか10数人しかいないのに,その2つのグループから距離を置く派閥が2つも生まれることだ。1つは誰とも均等に距離を置いている主人公・ユウタ,そしてもう1つは新しい世界の神話を紡ぐと主張するサクだ。そしてさらに転校生のしをりは,この2人の間で揺れ動く。人々の反目は,混沌から暴力,そして民主的な世界へと移行し,それをサクは冷めた目で記録する。------------パニック物語を人文社会学のように解説しつつ進行する物語,確かに新しい。いろいろと物語の展開のためにぎこちない部分もあるし,何もしないユウタが周りから好意的に思われているのも不自然だ。だが,この急展開の先に「漂流教室」とは異なる何が待ち構えているのか,ひじょうに興味深い。
2017.01.27
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「脳男」の首藤瓜於の長編ミステリーを読んだ。〇ストーリー日本随一の精神病医師・養父秀三は理想とする精神病院・葦沢病院を設立した。新米医師の〈おれ〉・使降(しぶり)と相棒の面鏡(いじか)は,ここに赴任することになる。〈おれ〉が担当している西棟には多くの患者がいたが,〈黙狂〉と呼ばれるカルテに記載のない謎の人物もいた。だが〈おれ〉は患者たち,看護師たちとの話から,前身の船走病院の焼失事故に不審な点があることに気付く。だが,その捜査は葦沢病院の運命,そして〈おれ〉の過去ともつながっていた。そして・・・-----------平成の「ドグラ・マグラ」へようこそ。2012年に刊行された600ページ近くになるハードカバーだが,物語の舞台が昭和の初期の精神病院ということで,ぽーんと江戸川乱歩,久生十蘭の世界に投げ込まれたような気分になる。この作品の一番の魅力は,この濃密な世界観の醸成にあると思う。100年近く前の大型精神病院,その驚くべき患者たち,どこを取っても現代の作品とは思えない重い世界観だ。-----------読書体験のどこに重点を置くかは,作品と読者のその都度のバランスで変わる,ということで良いと思っている。僕自身も,ロジカルな物語を求めるか,世界観主導の酩酊感を求めるか,は状況次第で変わっている。この作品は,後者の物語の流れが予想できなくて,作者に振り回される無力感を存分に味合わされる。舞台となる葦沢病院は,精神病院としては近代的で当時としては理想的な環境なのだが,いくつかの謎があり,それは前身となり,焼失事故で失われた船走病院に真相があるらしい。主人公の使降は,患者や看護師たちへのヒアリングを通じて,なんとかその真相に迫ろうとする。-----------そうしたメインのストーリーに,他のエピソードが重ねられているのも,昭和ミステリーらしい。〈おれ〉が担当している患者のエピソードが多く,なんと作品タイトルとなっている「幽霊」も「イカ」も,その一人の体験した長い物語に由来している。こうしたエピソードを重ね合わせた状況が,この作品が目指したことなのだろうと思う。1つ1つのエピソードは,「幽霊烏賊」のものを除けば,正直インパクトに欠ける。けれども「烏賊」を含めて,いくつも重ねることで,独特の世界観が生まれている。結果的には,終盤の5つほどの章で語られる事件,さらに過去の事象,そして大きな真相のすべてが,この世界観の中で,きっちりした説明がないままだが可とする,という空気に覆われて終わることになる。ロジカル,あるいはパズラーとしてはまったく容認出来ない結末だろうが,作品全体を通じて明らかに別の方向を示しているのだから,これは認めざるを得ないだろう。-----------「大幽霊烏賊」は,21世紀の今に,昭和ホラーミステリーの空気とロジックを展開して見せ,そのままその空気感で収束させてしまった読者置いてけぼりの怪作だ。まあ,あまりにも平気でヘンなコースに投げ込んで来る剛速球なので,読んでしまうんだけどね。
2017.01.26
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社会人になった時から,現場の生産管理だった。もちろん本来は社員は機械を扱ったりしていはいけないのだが,いろんな理由で,ラインを手伝ったり,自分のミスをカバーするためだったりで,機械や工具を扱って,で,ケガをすると。機械に指を挟まれかけたり,切り傷を負ったり,溶接で目を火傷したり,と,この手のケガは,技術系の人なら一通り経験があると思う。昨日も久しぶりにケガをして,とりあえず職場で症状を見て,あ,これなら1週間あれば治るだろうという判断。ただ右手の人差し指で,挟まれて両側に傷があるので,絆創膏を買って帰った。家に帰ってから,姉にお願いして,消毒してからきちんと貼り直した。昨日は久々に現場に出る理由があったけれど,当分は内勤仕事だけで,データ抽出をしていればいいので大丈夫だと思う。姉が心配してくれるのが,ちょっとうれしい。
2017.01.25
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〈ビバリーヒルズ高校〉のブライアン・グリーン主演のファンタジーアクション映画を観た。〇ストーリーロサンゼルスで若い女性を狙う連続襲撃事件が起きる。それを起こしているのはアーリックという男のギャングだった。一方で,ギャングに対抗する自警団〈クロス〉は,ケルト十字架の守護のチカラを持つ男・キャランに率いられ,それを阻止しようとするのだが?----------アメコミのスーパーヒーロー映画は,マーベル社,DCコミック社,ダークホース社など,多くの出版社のものが映像化されており,まだまだその勢いは衰えていない。この映画も,アメコミが原作風で始まるのだが,実際に原作が存在するのかどうかはよく分からない。主人公・ギャランは,謎の緑のチカラを持ち,銃撃を受けても平気,そして相手を触れずして吹き飛ばすパワーを持つ。ギャランが属する〈クロス〉は,人知れず悪を叩く自警団だ。アーリックが超自然的な儀式を始めたことで,〈クロス〉は世界を守るためにそれを阻止しようとする。----------この作品の欠点はいっぱいあるけれど,スーパーヒーロー・ギャランと,彼の仲間〈クロス〉の位置付けに失敗していることが大きい。ギャランがケルト十字架のチカラを持つのは認めるとして,じゃあ〈クロス〉って何?観ている限りでは,ギャランの友人たちが,コイツは悪者,と規定した相手を火器で攻撃している団体だ。人間が人間を銃や爆薬で攻撃する。しかもその相手が一方的に選ばれた”悪者”。たまたま正しければいいけれど,そうでなければ,ただのギャング同士の抗争だ。〈クロス〉の一般メンバーは通常の火器と爆薬を使用しており,その相手はふつーの人間なので・・・これはほぼただの私的な殺し合いだよね。この〈クロス〉が微妙にファッショナブルで,男女含めたメンバーで構成されている。悲しいながら,ふつーの技術とと身体能力の人々なので,強いという理由がまったくない。てっきりギャランと同じケルト十字架の能力を少しずつ持っていると思っていたのだけれど,ただの思い込みの強い暴力マニア集団だった。ギャングと少しも差が見えない。----------主人公たち〈クロス〉のアイデンティティが不明ならば,悪の親玉アーリックの行動原理も不明だ。エジプト王朝の秘宝を蘇らせるために,一定の家系の生贄が必要というのは分かるけれど,ポセイドンの家系,とか言われると,それってエジプトじゃなくてギリシア神話だし・・・で,結局,目指しているのがまたよく分からないし。悪者も,善玉も,明確な目的を持って行動してもらいたい。----------せっかくブライアン・グリーンは渋くてカッコいいのだから,それだけでアメコミ映画の猿真似でOKとせずに,もう少し設定を練るべきだったと思う。現代の観客は目が肥えているのだから,こんなモノではダメだろう。ガッカリだ。
2017.01.24
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加納朋子の人気作品「七人の敵がいる」の続編を読んだ。○ストーリーやり手の編集者,山田陽子の息子・陽介もいよいよ中学生だ。知人の少年がトランペットを吹く姿に憧れて,吹奏楽部に入部したものの,陽介にあてがわれたのはファゴットという楽器だった。演奏するパートの割り当て,市民ホール予約のための徹夜の待機,楽器の運搬,生徒の引率,衣装の製作,驚くほど親の手がかかる中学校の部活動に,陽子たちは翻弄される。やがて陽子は合理主義とバイタリティで,活動を改善しようとして・・・?------------前作「七人の敵がいる」は,めでたく真琴つばさ主演でテレビドラマ化された。前作は小学校,この作品は中学校の吹奏楽部が舞台だが,基本的には前作の雰囲気を強く引き継いでいる。また,この作品を通じて知ったが,吹奏楽部は中学生の部活動とは言え,まだまだ親への負担が大きくて,前作のPTAとひじょうに似通った空気が漂っていた。他の部活動であれば,文化部系も運動部系ももっと子供が自立している気がするが,よりによってここを選んでしまうとはね。------------山田家は息子・陽介は,大人しくて優しい子。父親・信介は,人が良いし仕事も出来るが,家庭では天然の役立たず。そして母・陽子は,バリバリのキャリアウーマン。息子の事となると周りが見えなくなり,猪突猛進してしまうのが欠点だ。構成的には,陽子が既存体制に戸惑い,それを改善するために正面突破でぶち破る,という姿をコミカルに描いている。残念ながらかつての加納朋子のようなミステリー要素は皆無だ。その分,ユーモア小説としては十二分の魅力を持っている。今回も,主人公の〈ミセス・ブルドーザー〉が既成概念にぶつかり,それを粉々にすりつぶす様子が描かれている。主人公にも欠点があるが,それ以上に既存体制を跳ねのける姿がスカッとして楽しめる。------------息子・陽介は地元の公立中学校に進学したので,当たり前だが小学校時代の同窓生たちの姿がある。だからかつては孤軍奮闘だった陽子にも,最初からママ仲間も存在する。この辺りはやはり前作を読んでいた方が楽しめる。「月曜日の水玉模様」「レインレイン・ボウ」「七人の敵がいる」が,一部の登場人物が重なる同じ世界の物語で,それぞれ7つの短編で構成されているという共通事項がある。これまでは,曜日,虹の七色,小学校の学年と,一定の意味があったが,今回の7つの短編にはあまり意味が見られない。作品で進む時間は,小学校6年生から中学3年生までで,短編ごとに何か節目があるワケではない。たまたま最後は木管七重奏が演じられるが,それだけだ。なので作品も,連作短編集というより長編の7つの章を読んでいる印象だ。とくにそれぞれの編について語る必要もないだろう。十分に面白いし。------------見事なストーリーテリングのチカラを発揮してみせた加納朋子だが,かつてのミステリーファンにもそろそろ新作を届けてもらいたいと思う。
2017.01.23
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正月休みも利用しながら,深夜に放映していたテレビドラマ『時効警察』の第1,第2シーズンを観た。〇ストーリー総武署には時効を迎えかけた事件を管理する時効管理課という部署がある。そこに所属する霧山修一朗と,交通課の三日月しずかのコンビは,時効を迎えた事件の証拠資料をかつての関係者に返して回る。そのうちに彼らは,休みや空き時間を利用し,事件を再捜査し,真相を目指すようになる。そして・・・------------時効を迎えた事件に隠れていた真相を捜査するというミステリードラマがベースなのだが,味付けはひじょうにコミカルでテンションが高い。総武署の署員はほぼ全員がコメディリリーフだ。最初は時効管理課だけがバカかと思っていたが,刑事課も,交通課も揃ってバカだ。たいがい数人は常識人がいたりするものだが,見事に全員がおちゃらけていて,脱線し始めた展開を誰も戻そうとしない。------------ではこのドラマが破たんしているかというと,決してそんなことはない。コメディの部分は暴走気味だが,きちんと最後には時効となった事件を紹介するという使命を果たして終了する。霧山は純粋に謎を解きたくて捜査をする。ぼうっとしているようだが,ある程度の常識はあるようで,事件捜査と野次馬調査との線引きはして進めているようだ。むしろ問題があるのは相棒の三日月の方だ。時効事件の捜査をしたいというより,霧山と一緒にいたいという理由で行動を共にしていて,総武署署員らしくおバカな言動を取る。だが,それが多くのエピソードで,霧山が真相に気付くきっかけとなっている。コメディで事件を紹介し,またコメディで真相のヒントを明かす。ちょっとアンフェアな印象も受けるが,迷走しているようで,きちんと本筋に戻って来れるように構成されている。なかなか良く出来ている。------------このバランスが微妙な作品を成立させているのは,俳優たちのキャラクターだ。霧山修一朗を演じるのは,オダギリジョーだ。もしゃもしゃの長髪がうっというしいが,それ以外は素直で真面目な警察官を演じている。オダジョーっぽく気取ったところがないのが良い。三日月しずかを演じているのは,麻生久美子だ。演技は驚きのテンションの高さで,この作品のカラーを決めていると言っていいと思う。たまたま『新撰組!』(を姉が),『泣くな,はらちゃん』『弱くても勝てます』『ナポレオンの村』を観ていたので,テレビドラマ俳優かと思っていたが,本来は映画女優でドラマ出演は少ないらしい。でも,この作品の麻生久美子はとにかくコケティッシュで,可愛くてバカで,それでいて物語を引っ張るチカラがある。とにかく見事な主演女優だと思った。キャストについて語り始めると切りが無さそうなので割愛する。時効管理課のメンバーを演じる,岩松了も,ふせえりも,江口のりこも,素晴らしかった。忘れてはいけないのは,ナレーションの由紀さおりだろうけれど。------------記憶の片隅に残っていたから観てみたら,やはり良い出来のドラマだった。独自のカラーがある作品は,やはり残るよね。オススメだ。
2017.01.22
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恩田陸がとうとう直木賞を受賞した。何回も候補に挙がり,後輩作家に抜かれ,もう本人も諦めかけていただろうけれど,そんな中の受賞は本当に良かった。----------恩田陸は,1990年頃から,ミステリー,ホラー,SF,ファンタジー,と様々な,とは言え,共通してサブカルチャー系のジャンルの作品を発表してきた。1992年の「六番目の小夜子」,2004年の「夜のピクニック」,2011年「夢違」と,定期的に映像化されているが,「夢違」を除いては,リアルな世界の物語というのが残念だ。個人的には,「夜のピクニック」「木曜組曲」「Q&A」「ユージニア」は,素晴らしいと思っている。最近は終盤が発散してしまう作品ばかりだが,物語の勢いを殺さず,一方で見事に御した作品に期待したい。----------受賞作品となった「蜜蜂と遠雷」は,区立図書館で調べたら1,200人待ちだ。僕は早めに予約を入れておいたので,あと40人くらいで読むことが出来るはず。早く手に取って読む幸せを味わいたい。
2017.01.21
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なんとか一週間の仕事を終えた。月曜日から金曜日までフルで5日間というだけでなく,先週末にひいた風邪をそのまま引き摺っていた,という体調だったので,ひじょうに長く感じた。途中で気持ちが途切れそうになったけれど,毎日何かしらの打合せがあったので,結局ずっと出勤になった。月曜日は半分意識を失いながらだった。歩いていても自分が姿勢悪くて,フラフラしているのが分かった。火曜日もまだまだ体調がしっかりしない。水曜日には治ると期待していたが,ダメだった。木曜日の飲み会は断念。木曜日はさすがに身体が軽くなったのを感じた。普通に歩ける。普通に食べることが出来る。金曜日は外部の人との打合わせでもガンガン行ける状態まで復活。1週間ぶりにビールを飲んだ。-----------日本中が寒い1週間にこの数年で最悪の体調だった。6枚くらいの重ね着をして,デスクに向かって大人しく仕事をしていたので,ゆっくりとだがなんとか体調は戻ったみたい。今度の週末はゆったりと過ごしたいものだ。
2017.01.20
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作・藤江じゅん,絵・ヨシタケシンスケという大型コンビで始まったシリーズ第1作を読んだ。〇ストーリー4年1組1班の坂上カケルは,塾帰りに子犬を見つけ,その飼い主・二ノ谷と知り合いになる。カケルと1班の仲間たちが,出席したチャリティパーティでダイヤの盗難事件が起きる。疑われてしまった女優・庭野モモを助けるため,カケルたちは,〈錯覚研究所〉の二ノ谷と一緒に犯人を追い詰める。そして・・・------------「タイムチケット」が面白かったので,図書館で藤江じゅんの棚を見ていたら,このミステリーシリーズを見つけた。手に取ってみれば,イラストは今をときめくヨシタケシンスケだ。これは読まないワケにはいかない。〈サッカク探偵団〉シリーズは,小学校4年のクラスメートたちが,〈錯覚研究所〉所長の二ノ谷のサポートを得ながら,事件の捜査をする,という物語だ。------------小学生を主人公にした〈探偵団〉ものはいくつもある。作家たちはそれにどんな特色を加えるかで知恵を絞っているに違いない。・・・今回はその”ちょい足し”が錯覚だった。これは良い着目点だ。錯覚とミステリーって愛称良さそうだし。作品でも,ポンゾ錯視,エピングハウス錯視,動く錯視など,錯覚にもいろいろな種類と歴史があることを教えてくれる。当然,それが事件のトリックと関わってくるのだ。------------〈サッカク探偵団〉のメンバーは以下だ。坂上タケル:主人公。活発な少年だが,父親は単身赴任,母親はインテリアコーディネータで,実はちょっと寂しい。山本ユズカ:空手少女。父親は刑事。佐々木文太:チーム一番ののんびり屋。七尾葉月:子役俳優もしている美少女。------------藤江じゅんらしいワクワクは少し足りなかったが,シリーズを通した謎も用意されているようだし,これからがとても楽しみだ。
2017.01.19
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森博嗣の描く家族の伝記を読んだ。〇ストーリー相田家で育った紀彦は,最初は当たり前だと思っていた自分の家の常識が,世間の常識とは大きくずれているということをある時から気付き始める。父・秋雄は工務店を経営していたが,無口で趣味が多く,飽きっぽい性格。母・紗江子は,専業主婦だが驚異的な整理収納の情念を持ち,燃えるごみ以外を捨てず,キレイに伸ばして畳み,サイズや材質ごとにしまい込むのだった。それぞれに変わっていて,それぞれに理屈っぽい両親に紀彦と妹・英美子は育てられた。やがて彼らも学校を卒業し,就職,家を離れた。そして・・・------------「すべてがFになる」で鮮烈にデビューをし,その後の膨大な作品で大ベストセラー作家となった森博嗣。この人の一番の特徴は,ブームとなった「理系的」な登場人物たちが語り合う,論理的思考で構築された世界観だ。常識からは外れているのに,論理的に説明されるとこちらの方が正しそうだ,真理に近そうだ,というものの見方が面白くて,世の中の平凡な小市民たちに熱狂的に愛された。ミステリー作家としてデビューした森博嗣だが,いつの間にかそこからは離れ,SF,ファンタジーへとジャンルを変遷している。この作品はある家族の伝記なので,森博嗣としても新しいジャンルだと思う。自伝かどうかは僕にはわからない。------------作品は相田紀彦という男性の視点で描かれる。時代は言及されていないが1960年頃,紀彦が物心がついた時から始まる。一家はその時点から核家族で,一戸建てに住んでいた。伝記小説風なのに,紀彦についてはあまり描写されない。あっという間に大学生になり,智紘という女性と結婚し,独立をする。紀彦の妹・英美子も5年後に結婚し家を出る。長々と描写されるのは両親2人の生活だ。やがて両親も病気がちとなり,ついに2人とも亡くなってしまう。そこで紀彦たちのとった決断がまたかなり現代的だ。ある場所に生まれた核家族「相田家」がやがて消えるまで,を描いた作品だ。------------森博嗣の作品としても,最近は老いが語られることがある。この作品はそれを中心に据えたものだ。たださすがは森博嗣,老いや死についても,まったく臆することなくドライに割り切っている。相田家の両親が森博嗣の両親なのかどうかは分からないが,彼らは自分が生きたいように生き,そして淡々と死んでいく。その割り切り具合には,ぞっとする孤独感もあるが,一方ですがすがしさも感じる。まあ聖書にもあったが,天国には現世の財を背負って持ち込むことは出来ないのだ。平凡なようで,禅の心理のような,フレーズが続く。------------面白かったり,知的好奇心が満たされたりするワケではないが,かつて〈理系世界のかっこいい主人公たち〉に憧れを抱いた人は,その頃と同じように〈禅僧のように枯れた夫婦〉とでも称したものに似た感想を抱くと思う。
2017.01.18
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金曜日に都庁の人ごみで時間を過ごした帰りから,少し頭痛がしていた。土曜日の午前中は,洗濯,アイロンがけ,買いもの,図書館といつもの用事をなんとか済ませたが,もうその後はダウン。そのまま日曜日までずっと臥せっていた。土曜日の晩は素うどんを食べただけだが,腹痛に襲われた。その際は頭痛,腹痛,ギックリ腰と,もう全身の痛みでうめいてばかりいた。打合せや業務があったので月曜日から出勤をしているが,会社の最寄り駅で降りた途端座りたくなったりと,通勤でさえギリギリだった。-----------ここまでひどい風邪は何年振りだろう。ほとんど一晩で治ったものしか思い出せない。受験生じゃなくて良かった,と考えることにしよう。
2017.01.17
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評価が真っ二つに分かれる問題作を観た。〇ストーリー錦重工業の格納庫から航空自衛隊へ納入予定だった巨大ヘリコプターが,何者かに制御を奪われ飛び立ってしまう。ヘリにはこの機体の開発責任者の湯原の息子が取り残され,さらに爆薬も積んでいた。だが操縦者はおらずテロリストにより遠隔地から操縦をされていたのだ。テロリストはヘリコプターを福井県の高速増殖炉の真上へと移動させ,そこでホバリングを続けさせ,日本政府へと脅迫を始めた。その内容とは日本中の原発の発電タービンを全て破壊せよ,というものだった。ヘリは8時間ほどしかホバリングをする能力がなく,何もしなければ増殖炉に爆薬が落下し,本州の半分が放射能汚染されてしまう。一方でヘリに攻撃を仕掛けても,やはりそのまま落下する可能性が高かった。日本政府はどうするのか?そして一方で,取り残された少年を救助するため,決死の作戦も進捗していた。だが?-----------うーん,難しい。褒めている人,けなしている人,両方とも正しいと思った。まず悪い点だが,脚本と演出がひどい。いつも通りの日本映画クオリティで,不自然な会話,唐突な感情表現,下手な状況説明のオンパレードだ。あれだけ酷評されていて,どうしてメジャー作品でこれが直らないんだろう?とくに湯原の妻・湯原篤子の言動は破壊力があり,テロリストよりこいつを撃て,と思ってしまった。-----------一方で,物語は単純なテロと思わせて,実は裏に深い怨念があることが分かる。このテーマは間違いなくタブーとされていて,福島原発事故が起き,あの無邪気な安全神話が崩壊するまでは決して疑義を呈してはいけない内容だった。それを高速増殖炉のどこが丈夫で,どこに逃げれば助かる,という図解入りの討議が映画の画面で行うことが出来る。これだけでも驚異的だ。さらに,そうした原発推進派を刺すだけでなく,それを傍観し,恩恵だけを受け,あまつさえ環境保護をうたう傍観者たちにも厳しい批判を述べている。とにかくあちらのタブー,こちらのタブーをズバズバとつついて見せるのには感心した。テーマは,さすが〈ポスト311〉の世の中だ。-----------こうしたアンビバレントな気持を抱かせつつ,作品は進む。数名の俳優の演技でなんとか最後まで観ることが出来た。主演級では,原子力技術者の三島幸一を演じた本木雅弘,サブでは関根刑事を演じた落合モトキがそれに当たる。いくらテーマの切り口が良く,数名の演技が良くても,脚本と演出と多くの俳優の演技がすべてを台無しにしてくれているので,映画作品として観れば,やはり駄作だろう。
2017.01.16
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2月の海外出張に備えてパスポートを申請に行った。前回は3年前の上海出張だったが,その後はプライベートで香港旅行を計画しただけで,ここ1年半ほど期限切れとなっていたのだ。実は本籍はかなり街中なので,そこの区役所に取りに行かなければならないと思っていた。ところが調べてみたら,山手線の駅ビルの中に区民サービスセンターがあり,平日でも夜8時までやっていることが分かった。これは会社帰りで片付いた。現在住んでいる区の出張所が最寄り駅にあるので,土曜日の朝にそこでパスポートの申請書をもらった。住基ネットの時代なので,もう住民票の写しは不要とのこと。-----------そこまで済ませて,申請書にも記入をして,午後半休をして申請窓口に行った。今回は,新宿都庁会議棟の地下を選んだ。そこのすぐ向かいにある写真店で写真を撮り,すべての必要資料はそろった。30分ほど並び,窓口で受け付けをする。これで終わりではなく,さらに40分ほど座って待ち,本申請となる。これから1週間で出来上がる。支払いはその際にするのがルールだというので驚いた。さすが日本,他人を信用している。-----------また出張以外も行きたいけれど,国内にまだまだ行きたいところあるしなあ。
2017.01.15
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近藤史恵の〈清掃人探偵キリコシリーズ〉の第1巻を読んだ。○ストーリー新入社員の梶本大介は,会社の清掃員・キリコの仕事を時々手伝っている。そんな中,2人の前にヒヨコが現れた。どうやらある女性社員がロッカーに隠していた卵から孵化したらしい。ヒヨコは間もなく衰弱して死亡してしまった。彼女を問い詰めると,それはある人物の家から持ち帰って来たという。その人物は,その女性社員にセクハラをしており,ヒヨコはペットの蛇の餌であることことが分かる。キリコと大介は,その人物の家まで乗り込む。そして?------------近藤史恵には「ねむりねずみ」に始まる歌舞伎ミステリーがあるので,読もうとはおもっているのだが,〈ビストロ・パ・マル・シリーズ〉が尻すぼみの印象であまり合わなかった。〈パ・マル〉の第3巻も出たところなので,前から気にはなっていたこのシリーズに手を出すことにした。------------まず驚いたのが,時代のギャップだ。主人公・梶本大介は新入社員でオペレータールームに配属される。これに対してまったく説明がないので,カスタマーコールセンターか,車両運行指示センターか,大型プラントの制御室かと迷ってしまったが,なんとただの電算入力室だった。まあ,間違いなく新人男性社員が配属される場所ではない。調べてみると,出版されたのは2003年なのだが,最初の短編は1997年に発表されている。これでは言葉が通じないのは仕方がないか?それだけの問題ではない気もするが・・・------------読んでいて,だんだん〈パ・マル・シリーズ〉に疲れてしまった理由を思い出した。いわゆる日常系から殺人まで,さまざまなミステリーが起きるのだが,犯人あるいは被害者の偏った思い込みにゲッソリしてしまうのだ。〈パ・マル〉の場合は,フレンチ・ビストロという舞台に合わせるための無理があったので,不自然な登場人物ばかりとなるのかと思っていたが,この作品のようにごく普通の会社が舞台でも,やはり頭がおかしい人ばかり出てくる。うーん,キリコのキャラクターは良いので読むことは可能だが,先行きに不安が漂う。------------「オペレータールームの怪」:新入社員・梶本大介は女性ばかりの部署・オペレータールームに配属となった。その女性たちも,総合職と一般職でお互いを避け合っているようだった。ある時,大介の作成した書類が無くなり,彼は総合職の富永に助けてもらい残業をして書類を再作成する。だがその事件は何回も続いた。この謎を解いたのは,なんと?・・・もう最初の短編から犯人のロジックについていけない。そんなことすることの方がずっと危険だろうに。「ピクルスが見ていた」:保険の女性営業員が会社の非常階段から転落死する。どうやらこの女性は,ある女性社員と取引をしていたらしいのだが,それは?・・・保険の営業,占い,ギャンブル,までで留めておけば良かったと思う。それに〇〇を信じた逆恨みが出た時点で,意味不明となった。「心のしまい場所」:同僚のこじんまりとした結婚式で,デパートから届くはずの引き出物が来ない。問い合わせをするとキャンセルされていると言う。だが参加者の一人が,たまたま人数分のギフトを持っていると言い出した。その人物は,以前からマルチ商法を社内で勧誘しており,そのギフトもそこの製品だった。証拠はないものの,全員がその人物を疑った。大介の同期の女性はとくにひどく憤っていたのだが,なんと同期の女性までもその説明会に参加しているようだった。・・・現世で財を成すという欲望がきっかけなので,これくらいする人がいてもおかしくないと思わせる。その後の捻りもさほど不自然ではなく,個人的には評価できる。「ダイエット狂想曲」:オフィスの近くに出来た洋菓子店が評判で,毎日のようにそこのお菓子でお茶をしているうちに,オペレータルームの全員が体重増加となった。そして全員がダイエットを決意した時期に合わせて,業務が増え,派遣スタッフを増員した。その1人がひじょうにほっそりとしていて・・・なんだかこの会社ホントに仕事しないなあ。今どきテレビドラマでさえ,こんなの通用しないよ。えーと,病気は大変だろうけれど,そのストレスを同僚にぶつけるのは犯罪だと思う。「ロッカールームのひよこ」:キリコの清掃を手伝っている大介,2人の前にヒヨコが現れた。どうやら大人しいと有名な女性社員がある人物の家から持ち帰ってしまったようだ。キリコと大介は,それが女性社員にセクハラをしている男性社員の家で,ヒヨコはペットの蛇の餌であることを知る。・・・いつも通りの終わり方と思わせて,ちょっとだけだが捻りがあった。「桃色のパンダ」:娘が書いたイラストを元にした桃色のパンダのぬいぐるみが,ある課長のデスクの上にあった。そろそろプレゼントとして家に持って帰ろうとした矢先,そのぬいぐるみはバラバラにされていた。犯人は?そしてその意図は?・・・前の短編に引き続き,こじんまりとはしているが,非現実的な部分がないので破たんは感じない。「シンデレラ」:営業部のイケメンがキリコに対して猛アタックをかけており,大介は気が気ではない。そうした折,会社のトイレがインクのようなもので執拗に汚される事件が続けて起きる。果たして,これはキリコに嫉妬した女性社員の仕業なのか?・・・この短編にしては珍しく,アリバイや犯行のテクニックが議論される。驚いた。結末はこれまで通りの不自然なキャラの暴走だった。そんなヤツばかりだな,この会社は。「史上最悪のヒーロー」:大介は営業部へと異動となり,しかも結婚した。仕事は充実し,妻は完璧に家事をこなしてくれるが,つい探してしまうのは,いなくなった清掃員・キリコの姿だった。ある日,大介は営業先の小さなビルで,キリコと再会するのだが,彼女は逃げてしまう。・・・突然の書き下ろし短編だ。シリーズ化は考えていなかったということだろうか?それにしても大介って気持ち悪いヤツだ。あ,でもこの会社の社員だからこれが普通か?
2017.01.14
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ロジカル風のミステリーが得意の石持浅海の〈座間味くんシリーズ〉の第4作目を読んだ。○ストーリー東京流通大学の文化祭で,コスプレパレードをすることが決定された。だがそれは大学のイベントにふさわしくないと反対する一派があった。パレードに対する妨害があるとの情報が入り,実行委員会のメンバーは目を光らせていた。するとパレードの先の街路樹の根元に怪しいレジ袋が複数あった。男性メンバーはそれにゴミ箱を被せて事なきを得たが,女性メンバーが次の袋を動かした時!!-----------石持浅海の作品はすべて読んでいる。ロジカルミステリーとして楽しめる一方で,共通した欠点があり,評価に困る。まずは登場人物のちょっとした言動に対して,○○○をしたから□□□に間違いない,という決め付けが多いことだ。多くの作品で犯人決定のきっかけとなったのが,こうした細かいことだ。現実の人間はワリと意味のない行動を何の気もなしにとったりする,という事実は無視され,とにかく理詰めだけが優先される。次に登場人物が作者の好みを反映していて類型的だということだ。ほとんどの場合,探偵役は男性,理系,大人,女性と子供に優しい,他人のことを慮れる。主人公あるいはサブの登場人物は,女性,可愛らしい,新人,そして探偵役に心酔している。例えば有栖川有栖が展開するような,エラリー・クイーン的なロジカルですっきりとした作品世界があり,西澤保彦が展開する,パズラーとしては素晴らしいのに狂気に満ちた世界がある,そして新人の青崎雄吾が展開する鉄壁のロジックとアニメ的なキャラで構成される世界がある。石持浅海はロジカルミステリーを書きつつも,そこから一所懸命外れて見せようとして,逆にどんどん間違った方向へ進んでいるような印象を受ける。それこそ,理系の真面目なおじさんが,職場で受けようと思って変なギャグを連発している,それに近い印象だ。-----------この連作短編集は,ほぼ前作を踏襲し,パターン化された展開をたどる。ア)ある事件の導入部が現在進行形で語られるイ)主人公たちが新宿の大型書店で待ち合わせをし,食事する場所へと移動するウ)日常会話の後に,アの事件の決着が語られるエ)〈座間味氏〉が異なる結論を語るオ)全員でそれに賛同し,〈座間味氏〉を絶賛するこの作品には7つの短編が収録されているが,見事に上記通りの流れだ。もちろん安心感は感じるものの,3つ目の短編あたりから,またかよ,という気持ちが強くなる。またオの部分で, -〈座間味氏〉洞察力がある,優しい,大人だ -事件に関わった女性たちは機転が利く,自己犠牲的だ -その女性の優秀さを見抜く〈座間味氏〉は女性の味方だという表現が繰り返し述べられるのも,辟易する。過剰な女性礼賛って,裏を返せば「女性が評価されていない」「女性は弱者だ」という信念の現れなんだけれど,石持浅海って昭和的な感覚なのかな?-----------石持浅海は「人柱はミイラと出会う」と「Rのつく月には気をつけよう」という連作短編集だ。これくらい頃の作品が好みだった。-----------各編について簡単に感想を述べる。「女性警察官の嗅覚」:元女性警察官はスーパーへ買い物に行き,棚の列の間を歩いている時に不審なことに気付く。彼女は店の人々を助けるために勇敢な行動を取った。称賛される彼女に対して〈座間味氏〉は・・・スーパーの各所に○○を置き,○○と○○を混ぜることは不可能だと思う。また元女性警察官が自分の子供を店員に預けたことが理解できない。「少女のために」:男女で構成された警官たちは,ある女性のアパートを訪問した。娘への虐待で同行される女性が突然暴れだした理由とは?・・・出た!○○と言えば,他人は○○という行動を取るに違いないから,それを発言した人は○○だ,というロジック。蓋然性が低すぎないか?「パレードの明暗」:東京流通大学の文化祭でのコスプレパレードに妨害をする予告が入った。そして当日,パレードの先に複数のトラップらしきものが見えた。実行委員会の男性はゴミ箱を被せたが,女性はそれを車道に向けた。結果的にトラップは発動し・・・一般的な視点と異なるものの見方,が〈座間味氏〉の魅力なので,わざわざ変な状況を作り出している印象だ。実行委員会の男性も女性も,トラップがどういうものか知らないのだから,その場で出来ることをしただけだと思うんだけど。「アトリエのある家」:日曜画家がアトリエで刺された。刺したのは誰なのか?そしてその理由は?・・・ある女性への過剰な礼賛は何?結局,誰も幸せになっていない。「お見合い大作戦」:27才の男性警察官・野尻は,碩徳中学校の女性教師とお見合いをする。まだ結婚をしたくなかった野尻は,懸命に警察官という職業の危険さ,見合わない給料など悪い点を述べ続けるが,女性はそれをことごとくさらりとかわしてしまい,やがて2人は・・・なんでもNoという女,好きになる?よほど性格が悪いか,それとも天然かなんだけれど,野尻は好きになった。そうしたヘンな状況から,さらに〈座間味氏〉が重箱の隅をつついて取り出しのは?って,もうアイディアが無いならやめればいいと思う。「キルト地のバッグ」:外国人労働者が多い地方の公民館を,その国の閣僚が訪問する。これに対して爆破テロが計画されているという情報が入り,機動隊は警戒をしていたが,そこに外国人の女性が現れる。緊張は一気に高まった,そして爆発物が?・・・わりと評価できる短編だ。この組織は外国の地方地方にスパイを忍ばせておくというCIAやKGBもびっくりの組織力がある,ということだし,ものの分からない幼稚園児に爆発物を持たせておくという危険なことをする母親がいるし,というところは気にしてはいけない。「F1に乗ったレミング」:ゲリラ豪雨の中,アンダーパスに向かっていた幼稚園の通園バスは女性警官に止められ,Uターンを指示された。バスが切り返しをしようとしている時,別のパトカーに追われた乗用車がアンダーパスに突っ込んだ。犯罪者を乗せていると思われる車は,そこに溜まった水で立ち往生となった。女性警官がとった行動とは?・・・これも○○という行動は,○○をするために違いない,という決め付けに満ちている。全く別の解釈もあり得る,ということは完全に無視される。こうした考えに洗脳された人が日本代表になるのか・・・
2017.01.13
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インドを舞台にした”現代の千夜一夜物語”と呼ばれる小説の上巻を読んだ。○ストーリーインドに来たオーストラリアの男性・リンジーは,ムンバイ市のガイドのプラバカルと親友になる。そこに逗留してヒンディー語やマラーティー語を学んだ彼は,プラバカルの故郷の村に招待され,3ヶ月ほどを過ごし,シャンタラムという新しい名前をもらう。だがムンバイに戻る途中,全財産を失った彼はスラム街で暮らさざるを得なくなる。偶然からスラムの救急医として生きることになった彼は,ムンバイの底辺で暮らしつつ,徐々に暗黒社会の顔役と知り合いになる。そうした日々は過ぎ行き・・・-----------友人に薦められて,この作品を読み始めた。通常では考えられないレベルでの暴力が描かれている,ということだったが,この上巻を読んでいる限りでは,そんなことはなかった。むしろスラムのモグリの医者になったとことで物語を閉じてしまえば,きれいに終わる感動物語になりそうだった。少しずつ物語の中に,不穏な空気が漂っていることからして,どうやらこの後の中巻以降に,暗黒社会との関りが増えすぎた主人公は,投獄され暴力にさらされるらしい。汚辱に満ちたムンバイのスラムよりも,さらにひどい環境が世の中にあるということが単純に驚きではある。-----------それほど思い入れもなく読み始めたのだが,上巻だけで文庫版で700ページというボリュームには驚いた。語られているのは,ひじょうに物語として豊饒な世界で,どこまでがリアルでどこからがファンタジーなのか分からない。そして驚異的な記憶力が発揮され,主人公が体験した光,色,音,匂い,そのすべてが克明に再現されている。ただでさえインパクトの強いインドの世界が,迫真の筆力でこちらに迫ってくる。上巻は友人が言っていたような暴力の嵐は存在しなかったが,それが無くとも十分に筆の圧力は感じられた。-----------もちろんこれは反面,思わせぶりなばかりで,主人公のどうということのない旅行記を読まされる,ということでもある。出会いはすべて運命に導かれた親友,恋人,師匠というのも大げさだし,基本は主人公が体験した世界だけのことだ。それでもその体験を貴重に思い,そこから学ぼうとしている主人公の姿には,やはり心を打たれる部分はある。上巻では十分に幸せな状況にいた彼なので,このままの生活を続けさせてやってもらいたいと思いつつ,ここまでこの豊饒で冗漫な物語に付き合ったのだから,劇的な事件に巻き込まれてもらいたい,というアンビバレントな気持なってしまう。たぶん皆,こうした気持ちになったと思う。まあこのまま読み進むしかないよね。
2017.01.12
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日本児童文学のキング・岡田淳の作品を読んだ。○ストーリー桜若葉小学校の夜警が病気療養することになり,その代役として〈ぼく〉が夜警員になることになった。桜若葉小は平凡な小学校だったが,校舎に囲まれた中庭には大きなクスノキがあり,夜には森のような独特の雰囲気になるのだった。そして春から秋まで,〈ぼく〉はここで不思議な経験をいくつもして,忘れていた大事なことを思い出すのだった。------------「カメレオンのレオン」「小学校の秘密の通路」と同じ舞台の桜若葉小学校で,また別のファンタジー連作短編集が展開される。カメレオンの探偵・レオンという狂言回しが主人公だったこれまでの2作と異なり,大人しい〈ぼく〉の作品はぐっと静かな空気に満ちている。18個という驚きの数の短編で構成されていて,中には4ページほどの短いものもある。けれども全体に穏やかなトーンで統一されている。------------桜若葉小学校に属さないレオンは,実際の小学生の依頼者を必要としていたが,学校で働く〈ぼく〉は,自分で夜警員として調査をすることが出来る。コミカルなキャラクターを登場させる必要なく,小学校という場から微妙にずれた存在の〈ぼく〉が,ゆっくりと桜若葉小の不思議を解き明かす空気を味わうことが出来る。主人公が何を発見し,どこに行き着いたかは読んで体験してもらいたい。「レオン」とは別の,静かな闇に満ちた桜若葉小を発見できると思う。------------岡田淳の作品が孤独に満ちていて,またひじょうに絵画的なのはいつものことだが,この作品の一部には夭逝した画家・石田徹也の画風を感じた。世間の片隅の素人読者の感想だけれど,どこか通じる世界があると思った。------------誰もが記憶をしている小学生の思い出をベースに,静かに輝く場面をいくつも見せてくれて,再生の物語を語って見せる。さすがは今の日本児童文学の切り札・岡田淳の作品だと思う。諸手を挙げてオススメだ。
2017.01.11
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12月の天皇誕生日と1月第2月曜日に指定となった成人の日は,祭日としてはひじょうに有益だと思っている。僕は今回は大晦日と元旦当日が出勤となった。同じように世間の人が休みの時は仕事だという人もいれば,年末年始は実家に里帰りをしたり,海外旅行をしたり,と忙しく過ごしていた人もいると思う。そうした中に,正月を挟む形で,祭日があるのは本当に助かる。毎年天皇誕生日を年賀状作成の期日にしているし,成人の日は年明けでまだフルで働く気分にならない際のガス抜きに使っている。-----------というワケで,今年の成人の日は,姉と出かける予定が,高校生の姪の冬休みの宿題が終わっていないことが発覚したことにより,ごく近所のランチに留まった。数日前に七草粥は出してもらったし,ちょうど二十歳となる親戚の写真は見せてもらったし,ようやく新品の歯ブラシとタオルを出したし,きちんと正月にするべきことをする時間が取れたという連休だった。ありがとう。
2017.01.10
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ちょっと緩いテレビドラマ〈猫侍シリーズ〉の映画版を観た。○ストーリー『猫侍』:加賀藩の剣術指南役だった班目久太郎は,浪人となり江戸で傘張りをして暮らしていた。その頃,犬派の米沢一家と猫派の相川一家が勢力争いをしており,班目の腕を知った米沢一家の若頭は,彼に相川一家の白猫・玉之丞を斬るように依頼をする。屋敷に忍び込んだ班目だが,猫を斬ることが出来ずに自分の長屋に連れ帰ってしまう。剣豪と猫の不思議な暮らしが始まる。『猫侍 南の島へ行く』:江戸で浪人をしている班目久太郎は,仕官を目指し白猫の玉之丞と土佐藩へ向かう。だが嵐に巻き込まれ,南の島に流れ着く。そこでは宝を守る原住民と,それを狙う日本の海賊が対立をしており,班目もそれに巻き込まれる。一方,玉之丞は黒猫のヤムヤムと仲良くなる。果たして南の島の冒険は?------------同じ系統のドラマ『猫忍』が始まっているが,やはり〈猫侍〉は面白い。北村一輝演じる班目久太郎が,ずっと怖い顔をしていて,それでも猫を可愛がってしまう,というギャップがとにかく楽しい。またとぼけた味わいの独白も笑いを誘う。とにかくこの緩さが魅力だ。------------映画第1作は,テレビドラマのリメイク版といった内容だ。浪人の班目,白猫・玉之丞との出会い,そしてぎこちない猫との共同生活が描かれる。寺脇康文が演じる用心棒との対決もあり,コメディ時代劇としてまとまりがある。それに対して第2作は,どうしちゃったの?というくらいトンデモ映画になっている。江戸から小舟で漕ぎ出して,言葉の通じない南の島まで流れ着いて,という展開。どう考えてもふざけ過ぎなのだけれど,それが赦されるのも〈猫侍シリーズ〉の度量なのだろう。------------このとぼけた味は,なかなか狙って出せるものではないだろう。『猫忍』がこれに迫るには,だいぶ頑張らないとなるまい。
2017.01.09
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ロジカルなホラー作品で有名な貴志祐介の中編サスペンスを読んだ。○ストーリー作家・安斎が目を覚ますと,彼は吹雪の別荘に取り残されていた。来た時に利用した車は,一緒にいた妻とともに姿がなく,電話も部分的に壊されていたため外部に発信は出来ない状態だった。困惑する安斎は別荘の中にスズメバチがいることに気付き驚愕する。彼は一度ハチに刺されていて,もう一度刺されるとショック死をする可能性があるのだった。果たして安斎は,この罠から逃れることは出来るのか?---------作品タイトルと裏表紙の紹介で,主人公がスズメバチと戦うサスペンスであることは分かる。これはじわじわと敵が迫ってくるのかと思っていたら,冒頭数ページでもうハチが登場する。そこからはスズメバチ来る,主人公倒す,主人公油断する,スズメバチ来る・・・の繰り返しが続く。いつもの貴志祐介作品だと,”主人公油断する”のシークエンスが無いのだが,これがあるので読んでいて呆れてしまう。もちろん自分がこの立場に陥ったら,ここまで精力的に動けるとは思えないけれど。細切れで挿入される回想シーンでも安斎はあまり良い性格だとは思えないし,”油断をする”ことでピンチになるので,もう1つ主人公に共感出来ないまま,物語は進む。---------子供のいない夫婦とは思えないほど大量に小物があり,それを利用してスズメバチに反撃を試みるのはひじょうにワクワクする展開だった。不自然に捨てていないものがあり,それらを組み合わせて主人公は戦うのだ。ただし,ほとんどが空振りに終わるのと,スズメバチの総数が分からないので,珍しく効果があっても勝敗のバランスが最後まで見えてこないので,どうも盛り上がりに欠ける気がした。---------そして一番の欠点は,唐突などんでん返しだろう。えっ?これまでの緊張感は何?と混乱をしたまま,ずるずると物語は終わってしまう。物語の設定は面白いのだが,それを上手く活かし切れないまま進み,その焦りからか結末をヘンにひねってしまった,とそんな気がする作品だった。---------貴志祐介の作品はすべて読んでいるが,これままで間違いなくワーストな作品だ。次回作に期待だ。
2017.01.08
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小学校4年生の女の子を主人公にした児童書を読んだ。○ストーリーお使いに行ったルウ子は,雨宿りで入った図書館の奥で,不思議な〈雨ふる本屋〉へと迷い込む。そこはドードー鳥の店主・フルホン,助手の舞々子,妖精たち,そして青い鳥・ホシ丸がいた。だが最近物語が育たず,本がきちんと育たないという状況が起きていた。ルウ子はその謎を解くために,物語が生まれる森へと向かう。----------初めて日向理恵子の本を読んだ。図書館の楽しさの1つは,こうして表紙の印象だけで本を選ぶことが出来るということだと思う。濃厚な物語を期待して,この本を借り出した。導入部はいかにも児童書らしく,ひじょうにワクワクした。不満を抱えている少女が,お使い帰りに迷い込む異世界。その先は不思議だが魅力的な場所で,さらに主人公は世界を救うために冒険へと乗り出す。日常から異世界へといかに自然に移行できるかがファンタジー小説の見せ場だが,この作品ではそれは見事に成功している。----------本屋なのに雨が降っている店。個人的にはイヤだが,作品の中では魅力的に描かれている。残念なのは,そこから先の展開だ。主人公のルウ子は,物語が生まれてくる森へ出かけ,そこで起きている問題を解決しなければならない。けれども,この問題で被害をこうむっている店主も助手も,理由をつけて出かけず,来たばかりの少女をそこに赴かせて平然としている。”予期しない冒険”はファンタジーの常だけれど,この作品の無茶ぶり加減はちょっとひどいと思った。----------さらにそこからの展開が次々と違う方向へ流れるので,読んでいて落ち着かない。『もののけ姫』のような森,夢を食べてしまうバク,作家の幽霊,と次々に問題の所在が移り変わり,主人公が何をすべきか,というのが分からなくなってくるからだ。この目まぐるしい展開が,児童文学らしいナイーブな流れなのか,感性に任せて書きなぐっただけなのかが,判別しづらい。結局,最初の主人公が心に抱いていた悩みが,どのように解消されるのか説得力が無かった気がする。----------この作者が今後,子供が読んだら面白くて,大人が読んでもなるほど,と思わせる作品を書いてくれたらよいと思う。
2017.01.07
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『戦場のピアニスト』に続いて戦争をテーマにした映画を観た。○ストーリー第2次世界大戦のヨーロッパ,アメリカ軍を主体に編成された連合軍は,フランスのノルマンディに上陸し,大反攻作戦を開始した。その激戦地,オマハ・ビーチの地獄のような場を生き延びたレンジャー部隊のミラー大尉は,部下7名と通訳代わりの新人・アバムを連れて,先行することになる。彼らに与えられた任務は,ライアン一等兵というたった1人の若者を探し,連れ帰ることだった。だがフランスはまだドイツ軍の支配下にあり,空挺部隊のライアンが降下した地点も不明だった。ミラーたちを待ち受けていたのは?------------映画冒頭からノルマンディ上陸作戦の激しい戦闘が始まる。海岸線に配置されたドイツ軍の機関銃や砲撃に向かって,真正面から向かう連合軍の兵士たちは,当たり前だが被弾しバタバタと倒れる。この長いシークエンスは,そこいらのホラー映画以上に残酷なシーンに満ちている。事前に知っていたし,ホラー映画がキライではないけれど,それでも結構うっと来た。これがどれくらい誇張されているのか,ひどくリアルなのかは判断できないが,戦場に行きたくなくなることは確実だ。ノルマンディ上陸作戦を描いた名作映画『史上最大の作戦』は何回も観たが,こちらではドイツ軍はノルマンディは防衛していなくて連合軍は労なく上陸したように描かれていた。史実ではノルマンディーで2ヶ月ほど攻防が繰り広げられたようなので,『プライベート・ライアン』の方がより現実に近そうだ。恐ろしい。------------映画の原題は『Saving Private Ryan』,つまり”新兵ライアン救出作戦”というもので,『プライベート・ライアン』よりはるかに分かりやすい。だいたい”プライベート”が”新兵,一等兵”を意味する階級の名称って,普通は通じないし。冒頭の衝撃的なノルマンディの戦闘の後は,”ライアンを探して”とでも呼ぶべき物語となる。ミラー大尉の部隊が命じられたのは,前線を離れてライアン一等兵を探すことなのだが,ライアンが空挺部隊に所属していて前線の裏に降下したことで,部隊は何回も戦闘に巻き込まれることになる。ミラー大尉たちは,機関銃で武装されたレーダー基地への襲撃で,そしてライアンを発見したのちのラメール市の防衛戦で,次々に人数を減らしていく。ライアンの救出のために,ここまで犠牲を払う意味は何なのか?と呆然としてしまう。この部隊は正しい行いのために犠牲者を重ねるのだが,これを回避する方法があったのではないかと少しだけ思う。ただでさえ組織だった作戦となっておらず,機械化部隊や航空戦力の支援の無いままの戦闘だ。当然大量の犠牲が出るのだが,ベトナム以前の戦争とはここまで原始的だったのかと恐ろしくなってしまう。レーダー基地では機関銃の脅威,そしてラメール市では戦車を擁した機械化部隊の圧倒的な制圧力は恐ろしいばかりだ。レンジャーとは言え結局は歩兵だ。計算上上はまさっている対象と戦闘行為を開始するのは,セオリーから考えれば間違いだ。戦争の悲惨さを強調するために,主人公たちが不必要な戦いに取り組んだと言われると,否定が難しい。------------この作品が興味深いのは,文官系のアバムという青年を通じて,現代の人間のヤワな視点を投入していることだ。これは『フューリー』でも行われていたが,アバムの行動はより卑怯で,リアルで,やるせない。なにしろ仲間がドイツ兵に殺されるのを怖さから見過ごしたのに,その後投降したドイツ兵を撃ち殺す,というメチャクさだ。正義や,道義より前に,自分たちのロジックが前面に出てしまう恐ろしさがあり,その一方で安全な場所からそれを批判することの卑怯さも痛感してしまう。アバムこそが,映画を観ている僕らに一番近い人物だ。------------戦争に対して批判的な視点で製作された作品であるのは間違いないだろうが,その過程でリアリティを追求するゆえに,複合的な視点を有している。安っぽい感情的な作品の視点を,やすやすと圧倒する作品であるのは間違いない。------------救出されたライアン一等兵が,あの年令になるまで自覚が出来なかったとしたら,ひじょうに悲しいことだ。
2017.01.06
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1月1日に出勤をしたが,会社規定通り4日からまた出社している。今週は3日出勤すれば成人の日がからんだ3連休になる,ということから,このシフトにした。3日は休み明けの早めの時間に出勤したが,現場の子たちがいなかったので驚いた。まだ取引先が業務を開始していないので,こちらが仕事を始めるのもぼちぼちらしい。------------デスクについても昨年のように明確な業務はない。そんな気持でも波の大きさはあれ,1日,2日と探せば仕事はあるものだ。平凡な連絡メール,いつもは読むこともない広報資料などを,全部チェックしつつ,今年の仕事は始まった。クビにされない程度に頑張らないと,ね。
2017.01.05
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江戸を舞台にしたほのぼのファンタジー〈しゃばけシリーズ〉の第12巻を読んだ。○ストーリー長崎屋の若だんな・一太郎の幼馴染・栄吉が修行をしている菓子屋・安野屋ではトラブルが起きていた。主人と手代たちは病気で臥せっていて,小僧たちは傍若無人にふるまっていた。そこを解決するために,一太郎は安野屋に乗り込む。そして?・・・----------江戸の廻船問屋・長崎屋の若だんな・一太郎は,大店の商人たちに跡取りとして紹介される,というのがこの作品の冒頭の出来事だ。頭も回り,心根もしっかりしている一太郎だけれど,とにかく病弱という欠点があり,ずっと”箱入り息子”という印象を周辺に与えているようだが,このお披露目で以前とは異なる立場になるのか?それは読んでみてのお楽しみ。最初に書かれている〈序〉で,若だんなとサポート役の手代との約束が語られるので,これは短編をまたいだ作品としての仕掛けがあるだろうとワクワクして読み始めた。結果は・・・頑張れ・・・もっと頑張れ〈しゃばけシリーズ〉!----------作品としては,若だんなが1人で働きに出たり,仲人の手伝いをしたり,幽霊の手助けをしたり,と内容はバラエティに富んでいる。適度にシリーズの準レギュラーも登場するし,仲人の流れはいつも以上のドタバタでなかなか楽しませてくれたとは思う。けれども,結局ミニシリーズとして何も生まれない。せっかく付けられた〈序〉と〈終〉がまったく機能をしていなくて,失望の理由になってしまっている。単行本単位でテーマを持ってもらうことは嬉しいが,それを無理やり後付けでやられて,結局取りとめがないのならば,そんな付け焼刃は不要だ。別に単行本ごとのテーマは義務ではない。シリーズとして十分な魅力を持っているので,豊富なキャラクターを利用して作品を展開するだけで読者はそこそこの満足を得られると思う。怪しい変化球で足踏みをしていないで,そろそろこのシリーズが永遠に年を取らない〈サザエさん系〉なのか,少しずつ年令を重ねる系統なのかを決めるべきだと思う。たぶんそこが問題なんだと思う。----------各編について簡単に感想を述べる。「跡取り三人」:長崎屋もある江戸通町で,周辺の大店の会合がある。跡取りとして若だんな・一太郎だけでなく,他に2名も紹介される。ひょんなことから,彼ら3人は両国で泊まり込みで商売の売り上げを競うことになる。だが,それに不思議な邪魔が入るようになり・・・本来は年令を考えれば当たり前なのだが,長崎屋の一太郎も他の跡取りと比較されることになる。圧倒的に珍しい設定で,長崎屋を出て泊まり込みで他の若者と商いの売り上げを競う,という流れだ。それをどうして途中で止めてしまうのか,それが本当に残念で仕方がない。主人公に最後までやるべきことをさせるべきだと思う。「こいさがし」:一太郎が世話になった両国の親分が仲人業に手を出し,一太郎たちはそれを手伝う羽目になる。だが母・おたえの知り合いの娘・於こんがそこに首を突っ込み,お見合いは大混乱となる。・・・評価が分かれる短編だと思うけれど,個人的にはゲッソリ。とにかく於こんのワガママがダメで,それを放置している若だんなたちにもイライラするだけだった。正体は最初から名前で分っていたけどね。「くたびれ砂糖」:菓子屋・安野屋で働いている若だんなの幼馴染・栄吉が小僧を連れてきた。だがこの小僧は取引先の長崎屋で問題を起こしても,少しも悪びれない。一太郎が安野屋を訪ねると,主人たちは臥せっている一方で,同じように言うことを聞かない小僧が3人のいるのだった。・・・前の短編に続いて,言うことを聞かない使用人の物語だ。ミステリーのロジックに従って一太郎が真犯人をあぶりだすが,それ以前に人間としてダメという印象だ。これはさすがの江戸ファンタジーでも許してはいけないレベルだろう?「みどりのたま」:頭に怪我をし,記憶を無くした男は,言動の怪しい老人から〈白沢(はくたく)〉と呼ばれる。男は老人の望みを叶えるために,河童が残したとされる〈みどりの玉〉を探し求めるのだが?・・・仁吉が記憶喪失になる,という変わった設定の短編だ。設定は面白いのに,途中から失速する,というこの作品の短編の典型だ。河童の丸薬が無かったらどうしたんだろう?「たぶんねこ」:幽霊の月丸が長崎屋に連れてこられた。長崎屋の面々は,彼が自分の無念を晴らせるように協力を惜しまないのだが・・・そもそもなんで連れてこられたし,来る必要あった?かなり微妙だ。ミニシリーズの最後の短編としては手応えが希薄でダメな印象だ。----------次巻に期待だ。
2017.01.04
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第2次世界大戦中のポーランドという悲惨な場所を舞台にした映画を観た。○ストーリーポーランドの首都・ワルシャワで豊かな生活を送っていたシュピルマン家の人々は,ユダヤ人ということだけでゲットーへの移住を,そして収容所への移動を強いられる。なんとかそれを逃れた長男のピアニスト・ウワディスワフは,強制労働をし,知人に匿ってもらい,さらに廃屋に隠れ住むことで4年間を生き延びる。最後に彼を救ってくれたのは,ドイツ軍将校ヴィルム・ホーゼンフェルトだった。ようやく終戦が訪れ,ウワディスワフはピアニストに戻る。だがその代償はあまりにも大きかった。----------実在の世界的ピアニストによる自伝の映画化ということだが,その内容の恐ろしさに改めてぞっとした。戦前の日本人が一部の国で悪者扱いされているが,戦前のドイツ人が行ったことに比べれば本当に初歩的なものだと思う。なにしろ人種隔離,人種絶滅,強制労働,気分による殺害ということを行っているのだ。どれを取っても言い逃れができない人道に対する犯罪だ。それを伝えてくれるのは,やはりハリウッド映画ではなく,ヨーロッパ映画というのが考えさせてくれる。世界の体制は,戦勝国と敗戦国,戦後70年来いまだに少しも変わっておらず,都合の悪いことはなるべく伝えないようにしている。----------主人公のピアニスト,ウワディスワフ・シュピルマンを演じるのは,エイドリアン・ブロディ,監督はロマン・ポランスキーだ。プロディの父親もポランスキー監督も,ポーランド系ユダヤ人ということで,この作品は,彼らの出自を賭けたものとなっていることが分かる。作品はユダヤ人が善,ドイツ人が悪,という単純なものではなく,ユダヤ人の中でもゲットー警察として体制に協力するもの,ポーランド人でもユダヤ人を匿ってくれる人々,そしてドイツ人でもウワディスワフを救ってくれるほーぜんフェルト大尉など,複雑な人間模様が描かれる。それらを怒りではなく悲しみで描いていることで,この作品は風格を増している。----------エイドリアン・ブロディは『プレデターズ』では筋骨隆々の肉体を見せていたが,この映画は背が高く痩せているピアニストを演じている。眉毛が垂れていて,気が弱そうな顔立ちなので,良い人そうな風貌で得をしている。ウェス・アンダーソン好みの風貌なので,彼の映画の常連でもある。少しブンガク系の映画にぴったりの俳優だと思う。----------主人公は動乱のワルシャワを生き延びるが,少しも雄々しい人ではない。他人に助けられ,匿われ,状況に合わせて目立たないようにこそこそと生きているだけだ。アメリカ映画だったら,彼がワルシャワ蜂起に協力をしたりするのだろうけれど,見事に傍観者で,自分が生き残ることだけを考えて,隠れ潜んでいる。こんな主人公も珍しい。『海の上のピアニスト』との類似が指摘されているが,あちらは少しファンタジー要素の入った物語で時代を語ろうとしていたように思える。こちらは厳然たる事実を描写しているので,物語としてはまとまりは薄いが,代わりに重みはある。新年早々ヘビーではあったけれど,良い作品を観た。
2017.01.03
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「脳男」で有名な首藤瓜生の警察小説を読んだ。○ストーリー刑事だった父が自殺をしたことがきっかけで,大学を出たのち,八神は故郷へ戻り警官となる。10年後,警部に昇任した彼は,所轄の刑事課から県警本部の鑑識課へと転属になり,ベテランの部下たちを率いるのに苦労する。そんな中,港で引き揚げられた元窃盗犯の死体がきっかけで,八神は未解決の金塊盗難事件の謎に気付く。それが指し示してこととは?---------首藤瓜生は寡作なので,全部読んでいるつもりだった。新作「大幽霊烏賊」を借りる前に著作を検索したら「刑事のはらわた」と「刑事の墓場」という作品があったので,まずはこの作品から読むことにした。この作者は登場した時からなぜは文章力はしっかりとしていたので,この作品も情景はすっきりと目の前に浮かんでくる。主人公が鑑識課という珍しい作品だが,最近の刑事ドラマで鑑識が描かれていることが多いのと,作者の文章力のおかげで戸惑いはない。---------だが,物語は前半から不思議な流れになる。主人公・八神は,やたらと緊張をしていて,十二指腸潰瘍で入院してしまう。いくら鑑識課に異動になったとは言え,10年間刑事課にいた経験があるのだから,そこまで精神的に追い込まれなくても良さそうなものだ。その後,病み上がりなのに,主人公は元窃盗犯の死体発見で,過去の事件の捜査を始めてしまう。鑑識課の仕事は普通にあるので,時間外や夜中に何時間も捜査を行うのだ。読んでいて,どうしてここまでこの捜査にのめり込むのかが分からなかった。まだ父親の自殺と関連がある,とかならともかく,突然寝る間も惜しむという行動原理は伝わってこなかった。---------最後はぐっと盛り上がるのだが,父親の自殺も,最初の死体の謎も解けず仕舞いで終わってしまう。冒頭の流れと,後半が噛み合っていない印象が強い。途中で方針変更をして,そのまま元に戻せずに終わってしまったのだと思う。いろいろと残念な作品だった。
2017.01.02
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あけましておめでとうございます。---------元旦は5時過ぎに起きて職場向かった。途中の電車はすいていると思ったが,初もうでに向かうと思われる家族連れと,年越しカウントダウン帰りと思われる若者がいた。職場は東京の東の外れなのだが,そこを狙った大型ライブハウスがある。昨日の大晦日の晩にはその前に長蛇の列が出来ていたが,その翌朝はいつも通り夜明かしをして,そのテンションが残ったままだったり,疲れ果ててよろよろになった馬鹿どもがいる。こちらの気持ち的に不快だけでなく,たやすく絡んできたりするので危険なので困る。こうしたハードルを越えてほぼ無人の職場に出社。思っていた以上にストレスを感じた。---------職場に着けば気持ちはリセットされるので,合流した同僚と仕事を淡々とこなした。ほぼすべて予定通りだったので,自分のパートを終え同僚に引き継いで職場を後にした。まっすぐ帰っても味気ないので,中間地点で途中下車をして,公園を散歩した。その前後に,友人に”おめでとうメール”を1通送信し,しばらくしてからそれへの返信があった。世の中では”あけおめメール”がネットワークを圧迫するようだが,僕はそれに加担していないようだ。
2017.01.01
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