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週末の朝から都心に出かけた。地下鉄の日本橋駅を降りると,タカシマヤの地下入り口前では多くの人が開店待ちをしていた。10時半になり入店すると,百貨店名物の「いらっしゃいませ」とお辞儀での歓迎が待っている。何度経験しても気恥ずかしいものだ。8階の催会場では〈池田学 展〉の他に〈美食の京都展〉が開催されていた。ほとんどの人が8階へ向かうようなので,てっきり〈京都展〉を目指しているのだと思っていたが,人気があったのは〈池田学 展〉の方で入場待ちの行列が階段沿いに下の階まで届くほどだった。-----------〈Chapter 1:エピソードの始まり〉1990年代のモノクロのペン画が並ぶ。『巌ノ王』『ブッダ』など緻密で近寄りがたい作品がある一方で,『けもの隠れ』という可愛らしいコミカルな作品もある。・・・ペン画でモノクロということで,かなりハードルが高い。作品世界に入っていくきっかけがつかみにくいのだ。そんな中で動物が隠れている『けもの隠れ』は救いだった。〈Chapter 2:想像の旅人〉カラーが加わり,余白を活かし,ファンタジックな題材も用いて一気に華やかな作品群が展開されている。『はなかまきり』『くさかまきり』も良いが,やはり圧巻は大作の『興亡史』だ。・・・『興亡史』がすべてを持って行ってしまうコーナーだ。安野光正の絵本のように,いろいろな部分にそれぞれの物語が隠れていて,どれだけ見ていても飽きることがない。個人的には『領域』の世界観が好みだった。〈Chapter 4:ミクロコスモス〉科学誌や新聞向けに描いた動物の細密画が大量に並ぶ。・・・我々も知っている動物が描かれていると,改めて池田学の技巧の高さが浮き彫りになる。作品の品質も高いのだが,それが大量にあるということに圧倒される。どれだけ技術が高く,どれだけ仕事が早いんだろう?〈Chapter 3:自然と文明の相克〉Chapter 2の流れがさらに広がり,さらにダイナミックな作品が展示されている。・・・SF的なテーマの作品も多いが,氷だけの絵,波だけの絵にも魅力があり感心する。〈Chapter 5:様々な断片〉幼少期から法廷画家の時代までの作品を展示・・・とにかく幼い頃から圧倒的な画力があったことが分かる。旅先から絵手紙送ってくれたらうれしいのになあ。〈Chapter 6:誕生〉3年間かけて描かれた再生を祈願した大作だ。・・・1本の樹を描いた作品なのだが,東日本大震災への祈りが込められているのと,『興亡史』以上に物語が散りばめられている。素晴らしい。-----------池田学の恐ろしさは,池田学というジャンルとして成立していることだろう。アーティストは画風がオリジナルなのは当たり前だが,ジャンルとしても独特ということが驚異的だ。池田学の作品がほぼ網羅されているということもあり,また最後に大作『誕生』が展示されていて,ひじょうに満足感を味わえる企画展だった。-----------最近は百貨店の美術展はすっかりと減ってしまったが,これくらいのレベルの企画展を開催してくれると,もっと人が足を運ぶと思う。正直,人のさばき方,展示方法などは,今の公共美術館が学習を重ねているので,2段階くらい見劣りがする。作品名や解説のパネルの文字は小さくて,低い位置に1個だけ掲示されているし,壁の入隅コーナーに作品が90度の位置で展示されている。とは言え,やはり一番大事なのは展示されている作品の魅力で,それが強ければ細かいことは気にならないのだと,今回は改めて感じた。-----------どこかで大々的に紹介されたのだろうか?〈美食の京都展〉に行くと思われた人たちのほとんどが〈池田学 展〉に向かっていた。帰りがけに〈京都展〉ものぞいて,八つ橋と漬物を買ったけれど。
2017.09.30
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森博嗣の未来叙事詩〈Wシリーズ〉の第6巻を読んだ。〇ストーリー研究者のハギリと護衛のウグイは,人工知能・オーロラと交渉するために北極へと飛ぶ。オーロラは北極の基地の海底に眠る原子力潜水艦に宿っていたが,うつ病のような症状を見せており,人類に対して敵対的な行動を取る可能性も示唆されていた。ハギリは〈あの人物〉にも指示をされ,彼だけが出来る方法でオーロラにメッセージを送る。オーロラから返信があったと思った直後,潜水艦は姿を消してしまった。人工知能が選択した未来とは?-------------この作品の舞台は北極圏の基地だ。前回も書いたが,未来を舞台にしているということもあり,このシリーズの主人公・ハギリの行動範囲はかつてない広さだ。このシリーズは,観念的な問題解決という難解なテーマを中心に,遠方への旅行,テロ攻撃,ハギリと仲間たちの交流という要素を加えることで,なかなか上手くバランスをとって作品を重ねていると思う。-------------この作品のテーマは,人工知能がどこまで進化をするかということ,またこれまでのシリーズで語られたように,人間らしさということはどういうことか,ということだ。森博嗣の考察については,作品を読んでもらいたい。シリーズを通じて,人間と人造人間,人間と人工知能の微妙な関係が描かれていてひじょうに興味深い。-------------作品の中で,タイトルの「青白く輝く月を見たか?」が問われるシーンがあるのだが,それは驚くほどぎゅっと心に迫るシーンとなっている。森博嗣作品は淡々としているように見せておいて,ごくまれにこうした魂を揺さぶられる場面がある。突然,それが湧いて降ってくるから,本当にあなどれない。-------------ハギリ先生が大人数の女性に好かれる〈ハーレム〉状態の物語になっているような気がして心配だ。護衛でクールなウグイも女性,これまで各地で出会ったリーダーもほとんどが女性,ネット上の知性体のデボラも女性,そしてオーロラを始め人工知能も女性だ。ライトノベルだけでなく,古今東西で主人公の男性が女性にもてまくるという物語は語られてきた。魅力的な主人公を描く作品は決して否定されるものではないと思うが,昨今のライトノベルやアニメでは〈ハーレム〉作品があまりにも多いようだ。このシリーズがそうした軸の中で語られてしまうのに危機感を感じている。-------------とは言え,少し馴れ合い気味だったけれど,登場人物の安定したバランスもこの巻で終わってしまうようだ。〈森博嗣作品の全ての解答〉ではないかと言われているシリーズであり,今後も目が離せない。
2017.09.29
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東野圭吾の学園ミステリーを読んだ。〇ストーリー修文館高校の同級生・宮前由希子がトラックの前に飛び出して死亡する。彼女は妊娠しており,その相手は野球部主将の〈俺〉・西原だった。〈俺〉は皆の前で,由希子との関係を告白し,彼女を待ち伏せし事故を誘引した生徒指導部の女性教師・御崎を責める。だがその教師が死体で発見されたことで,〈俺〉は怨恨による殺人の容疑者とされてしまう。そして学園ではさらなる事件が発生し・・・?-----------日本のミステリーの主人公は,屈折したいじめられっ子タイプのキャラクターが多い。東野圭吾の作品では,そうしたステロタイプは避けられているものの,どこか影があるキャラクターが用いられている,ということでは,日本ミステリーの文脈の中に留まっているのかも知れない。この作品の主人公は,名門高校の3年生で,弱いとはいえ野球部主将で,人望があり,マネージャーと付き合っていて,中小企業の社長の長男だ。上に述べた文脈からは大きく外れた主人公だし,彼が隠していた行動を含め,多くの感想で,彼の評判はひどく悪い。-----------個人的には,主人公・西原には欠点もあるとは思うが,そこまでダメな人物ではないと思っている。いろいろな思惑があったとは言え,事件の真相を隠蔽しようとしている教師たちに立ち向かっているし,一方で野球部の友人たちにも気を使っている。エースの川合とマネージャーの楢崎薫と3人で,稚拙ながら幸運に恵まれて進める捜査も真剣味が感じられる。読者に批判されるのは,彼が由希子に隠していた本心と,ラストで描かれる彼の行動だろう。その批判はある程度,認めるが,僕の年令になると男女の関係って純愛だけじゃないから,そうしたこともあると思ってしまう。作者の代弁者として,教師への批判と反感をたぎらせていた正義漢ヅラの一方で,隠れていた部分があるので,どうしても批判されてしまうだと思う。-----------主人公の造形はやや粗削りだが,作品そのものは良く出来ていた。文章は東野圭吾らしく抑制されているし,情報は必要なタイミングできちんと主人公たちの前に提示され,スムーズに物語は進む。もっとドロドロするかと思っていたら,キレイに終わるのも拍子抜けをしたくらいだ。キレイ過ぎる終わり方,というのも東野圭吾の特徴なのかも知れない。ただし今回に限っては,直前に読んだ作品の影響もあり,その優等生っぽさが清涼剤としてありがたかった。東野圭吾がコンスタントに人気があるのも,こうした作風だからだろう。
2017.09.28
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お台場に,1979年のSFアニメ作品の『機動戦士ガンダム』の実物大立像が2009年に建ったが,それは紆余曲折を経て今年撤去された。今回その場所に新たに2010年から製作された『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の立像が建った。公開は24日の日曜日の夜からだったが,さすがにそれは避けて,会社の帰りに寄ってきた。------------仕事上がりなので,〈ダイバーシティ〉には18時30分くらいに着いた。とにかく立像の所に行ってみると,ガンダムユニコーンがバーンと建っているので驚いた。てっきりいつもは1本角の〈ユニコーンモード〉で,イベントの時間だけ2本角の〈デストロイモード〉になるのだと思っていたら,ずっと2本角なんだ。------------しばらく屋内でビールを飲んで時間をつぶした。〈ダイバーシティ〉は大きなフードコートがあって,お手軽なので,団体の観光客が多い気がした。19時頃に外に戻り,19時30分のイベント開始を待つ。------------時間が近づくに連れ,どんどんと人が増える。けれどもそこで話されていたことを聞くと,24日は身動きも出来ないほどだったというので,それに比べれば人の間隔は左右はともかく前後には空いているので,だいぶ楽になったのだろう。時間となると,建物の壁に『機動戦士ガンダムUC』の名シーンダイジェストが音声付きで流れ,それに合わせて立像はピカピカと光る。これは照明もあるけれど,内部からの間接フレーム部分のLED照明はひじょうに明るく,派手な演出となっていた。圧巻は,〈ユニコーン〉の顔が,〈ガンダム〉の顔に変形し,1本角が2本角に開くシーンだろう。それは20分ほどの映像投影の中でも数回行われ,毎回観客のどよめきを呼んでいた。投影が終わった時は拍手が起きていて,ちょっと一体感も味わえた。------------一般の人には「ユニコーンガンダムってなに?」,ファンの人からは「あんながっしりと”太ましい”のはユニコーンじゃない!」と言われてしまいそうだが,行った印象では,盛り上がっていたから今後も話題性はあるのじゃないかと思う。なにしろ「”そこにあるのだ”!」------------天気も気温も穏やかな中で,新しいガンダムを見ることが出来て,さらに一体感を味わえ自分としては満足だった。
2017.09.27
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打海文三の最高傑作と呼ばれる作品を読んだ。〇ストーリー新宿である男が撃たれて死んだ。だがその射殺犯が福井県の海市の巡査部長であったことから,警察庁と警視庁合同の特別捜査班が海市に乗り込む事態となる。難民にあふれ,中・韓・露のマフィアが覇権争いをしていた海市では,現場の下級警官の殉職が相次ぎ,多くの下級警官と遺族による報復組織〈P〉が生まれ,一度は公安に壊滅されたかに見えたが,県警の公安部長を暗殺して見せた。だがそれから8年が経過し,〈P〉の活動は聞かれなくなり,マフィアたちも勢力図を確立し,一定の安定を見せていた。寄せ集めの特捜チームは,それぞれの思惑を抱きつつ,誰も信用が出来ない海市へと乗り込む。そこでは・・・------------なるほど,これが「ハルビン・カフェ」だ。ハードボイルドの傑作として噂の作品で,「機龍警察 暗黒市場」の一部のシーンが似ているとも言われてる。「機龍警察」がシリーズものとして,作品世界の厚みを作り上げているのに比べ,「ハルビン・カフェ」はたった1冊で,海市を舞台にした作品を,そこの架空の歴史,複数の人々の人生を構築してしまった。ハードボイルドが,1人称で描かれる暴力的,あるいは自己破滅な傾向のあるミステリーだとすると,この作品はその枠組みをはるかに超えていて,群像劇であり,歴史物語風でもあり,そしてシェイクスピアの悲劇のようでもある。「機龍警察」で,日本のエンターテインメント作品のスケールの大きさに喜んだが,それ以前にこうした作品があったということに驚いた。------------「一九七二年のレイニー・ラウ」と「ハルビン・カフェ」を同時に借りていたのだが,「ハルビン・カフェ」のページを開いた瞬間に,その作品の重さが伝わってきて,ついつい後回しにして読むのが遅れてしまった。先週末からきちんとこの作品に取り掛かっていたが,とにかく物語が前に進まない。何しろ反乱派警察官〈P〉の残党,警察,マフィア,と登場人物が多く,それぞれに過去があり,同じ事件でもそれぞれの視点で,多角的に何度も語り直される。さらに物語世界から10年近く前,〈P〉がまだ勢力を持っていた頃も語られ,何度も前のページを読み返して確認をしないと理解が進まない。この重層的な世界観は,欠点というよりは,作品の特色なのだろう。実際に,前に進むのはゆっくりであっても,作品世界の〈今〉である7日間の描写は,きちんと描かれ,大きなロマンが最期に集束するポイントとして成立している。この構成をきちんと緻密に制御している打海文三の手腕こそが,ここで称賛されるべきものだろう。最初は分かりにくくても,何度も語られる中で,きちんと人々の行動や心情が浮かび上がってくる。------------この作品で驚いたのが,打海文三作品の多くに流れていた「どこかで他人が自分のことを赦してくれるだろう」という甘えがすっぱりと消えていたことだ。打海文三の多くの作品で,はみ出し者の探偵は,探偵事務所〈アーバン・リサーチ社〉の外部調査員となることで,必要な資格や支援を得て事件に向かう。はみ出し者が大手組織にぶら下がることで,自分が追いたい事件に取り組める,という理想的でありながら,どう考えても都合が良すぎる甘ったれた世界だ。シリーズを離れ,福井県を舞台にしたこの作品は,中・韓・露のマフィアが路上では争い,キャリアとノンキャリア,警察庁系と公安系が県警の中では争うという,”どちらを向いても敵”という状況で,さすがに世界観が違う。構成や文章を含めて,打海文三も並々ならぬ気概でこの作品に取り組んだ形跡がうかがえる。------------作品の読みにくさ,これまでの作風との違い,以外に問題となっているのが,真犯人の動機だ。自分自身と同僚・親族の命に対する報復を行う〈P〉,そこから情報を聞き出し自分が先に〈P〉をつぶそうと画策する,公安と警察庁。そこまではロジックで理解が出来るのだが,真犯人の動機はどちらの派閥にも属さない。複数の肩書と名前を用い,常に先を読んでいる天才的な男が,どうしてこの行動を取ったのかは読んでみてのお楽しみだ。きちんと説明はあるのだけれど,それに納得するかどうかは,また別の問題だし。ここまで複雑に世界を構築した作品なので,当たり前だがスッキリした分かりやすい筋道などは付かない。それは仕方がないと思う。------------個人的に気になったのが,知力・行動力も備えているとして登場した女性3名が,その後,見下していた男性と激しく関係を持つことだ。強い女性に対して汚すような関係の成立を複数回描いているのは,気になってしまった。真犯人も,彼を追う人々も同じような倒錯的な感情を秘めているということを描きたいのだろうか?そうだとしても犠牲になるのが女性ばかりといういのは,ちょっと偏りを感じてしまう。------------予想以上に濃厚だった「ハルビン・カフェ」,個人的にはオススメだ。ぜひ,この世界観に酔ってもらいたい。
2017.09.26
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アニメ,ゲーム,ラノベの登場人物たちが現実世界に現れる,という作品を観た。〇ストーリー高校生・颯太の前に,アニメ『フォーゲルシュバリエ』のヒロインで女騎士のセレジアが現れる。さらにラノベ,ゲームから現実世界へとキャラクターが現れ,彼らは2つの派閥に分かれ争い始める。それは現実世界を滅ぼすかどうかの大きな争いへと拡大し,颯太たちはそれを阻止するために,日本中のクリエイターを集め,架空の大イベントを開催する。構築された仮想空間に,キャラクターたちは集まり,そして・・・-----------普通のドラマは50分x11回くらいだが,アニメーションだと1回が25分なので11回を経過してもあまり物語が進まないことがある。この作品は,半年をかけて22回の話数を重ねたので,多い登場人物たちをきちんと描き,群像劇としても成立をしている。結論としては,現在多くのドラマやアニメがあるが,時間と話数をかけてきちんと語ることが,視聴者の共感や満足感につながると思うということだ。-----------とは言え,正直,この作品に対しては好き嫌いが分かれると思う。まずは複数の作品のキャラクターが一堂に会している,という設定でありながら,結局ある程度似通ったキャラが集まっている状況が一番説明に窮するところだ。解釈としては,本来もっとバラエティに富んでいた世界観が,放送されるメディアに合わせて再調整された,というところか?そうでも解釈しないと,2次創作の軍服の姫君に,厳然たる主人公たちが敗北を重ねる理由が成り立たない。次に気になるのが,現実世界に登場したキャラクターたちを製作した作家や脚本家が,”クリエイター”として神様扱いされていることだ。ある程度は否定しないのだけれど,あまりヒーロー扱いが続くので,結局自画自賛なのかと思い,引いてしまう。-----------あまり細かいことに目くじらを立てなければ,いろいろな表現を目指していて,必ずしも現実世界では認められていない人々にエールを送る,というテーマの作品なのだと思う。僕の姪も1人は美大に行っているし,高校生はイラストを描いているので,そうしたもどかしさや不安感は分からないでもない。けれども,大手を振った自分たちの肯定番組って,まあ,ホントによく製作したもんだと思う。-----------いろいろあるけれど,半年間ひじょうに楽しんだ作品であることは間違いない。
2017.09.25
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高松明日香の企画展に行った。-----------僕自身もこのアーティストを知らなかったのだけれど,〈日曜美術館〉でこの企画展が紹介されていて,”行かなきゃ”という気分になった。今の時代でも,マスメディアは自分の知らない情報を教えてくれるのであなどれない。新宿に出てから,JRの中央線特別快速で三鷹まで行った。中野の次は,もう三鷹だ。地図を見ながら商店街を南に歩き,行き過ぎかけてから三鷹市美術ギャラリーに入った。-----------この企画展の面白さは,高松明日香が描き溜めていた複数の作品を,今回のためにテーマ別に再構成して1つの作品群として展示していることだ。正直,1つ1つの作品は,油絵かポスターペイントでささっと描いたというレベルだ。だが,複数の作品を集めて掲示し,新しいタイトルを与えられると,そこには映画のような,小説のような物語世界が生まれる。企画展では,どの作品群が気に入ったか,という人気投票が行われているので,いきおいいつもの美術展とは異なり,自分の好みを探るために展示会場の中を行ったり来たりすることになる。個人的にベストとして投票したのは〈川を渡る〉という作品群だった。好みは分かれると思うけれど,溜めがあって,最後に動きがある,というのが決め手だった。-----------独特の淡い色の作品が並び,それがグループ化されることで,別の意味が生まれる。ちょっとしたインスタレーションのようで,ひじょうに面白かった。大掛かりな仕掛けがなくても,新しい体験は実現可能だ。-----------三鷹駅からデッキで直結した三鷹市美術ギャラリーで10月まで開催中だ。大手の美術展とは少し雰囲気が違うけれど,ぜひ足を運んでみてもらいたい。
2017.09.24
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僕は会社員としてはかなり自由にやらせてもらっている。ネクタイは締めない,スーツは着ない,スニーカーを履いている。朝はひじょうに早く出勤しているが,夕方は定時で上がる。まあ,今の会社は皆,そんな感じなので,目立っているワケではない。今年は7月の終わりに夏休みを取り,8月はプロジェクトの管理もあり,ほとんど休みを取らなかった。9月も休日出勤の振替えは取ったものの,実質は新規の休みは取らなかった。それで10月の第2週にまとめて休みを取り,毎年恒例の東北旅行を計画していた。だが今週の打合せの中で,10月中盤は休みを取れないようなプロジェクトが組まれることになってしまった。自由人の僕も,今回は外堀を埋められた感触だ。まあ,他で休みを取るか。
2017.09.23
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福士蒼汰と川口春奈主演のドラマを観終えた。〇ストーリー奥森黎には婚約者・立花爽に打ち明けられない秘密があった。5年前に失踪したことになっている黎の父親は,母親を守るために彼が殴って殺してしまったのだ。それは母親と黎だけの秘密だったはずなのだが,彼らを脅迫してくる謎の人物が現れた。一方,婚約者・爽の前には,ある過去の悲劇に関わる人物が現れる。果たして,黎と爽の運命は?-----------主演が福士蒼汰と川口春奈ということと,最近は減ってしまったスリラー系のドラマなので,そこそこ話題になっていたと思う。我が家でも,「いい加減,セコム入れろよ!」とか,いろいろ批判をしながらも毎週楽しんでいた。-----------だが,最終回で犯人が明らかになり,さらに「本当の最終回はHuluで」というCMが流れたことで,我が家でもネットでも大ブーイングとなってしまった。まずは,一切伏線がなく最終回に唐突に真犯人が現れるのが,ミステリーファンとしては「アンフェア」と言いたくなる。また,その真犯人が〇〇〇〇ということで,ミステリーファンは再度「ルール違反だよ」と言ってしまう。こうしたミステリーのセオリーからのダメ出しは,視聴者の一部からの声かも知れないが,テレビでは語られなかった真相がHuluだけで明かされる,という展開には批判が殺到した。まあ以前から「最終回は映画館で」という商法もあって,それもさんざん批判されたものだけれど,今度はネット動画配信か・・・映画館はチケットを一度買えばいいけれど,動画配信は契約して毎月会費を払うのでさらにハードルが高い。ミステリーなら視聴者に謎解きをするチャンスを与えてもらいたいし,テレビドラマなのだからテレビ放送の中で完結してもらいたいものだ。-----------ツッコミをしつつも楽しんでいたドラマなのに,最終回で置いてけぼり状態になってしまった。大人はズルい・・・と50代のオッサンがつぶやいてみる。
2017.09.22
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映像化されたものの,微妙な感じになってしまった〈ビブリア古書堂〉の最終7巻目を読んだ。○ストーリー〈ビブリア古書堂〉に,〈久我山書房〉の主が20年前に仕掛けた罠が迫る。公開の競り市の中で,3冊の複製本から,ウィリアム・シェイクスピアの古書〈ファースト・フォリオ〉の真作を見抜く。店を抵当に入れてまで競りに挑む店主・篠川栞子の前に立ちはだかるのは,母親・篠川智恵子だった。多くの人々が注目する中,競りに,真贋の鑑定に,勝負に勝ったのは?------------長かった〈ビブリオ古書堂シリーズ〉も,本編はこれで最終巻となった。古書を題材にしたミステリーという変わったシリーズなので,確かに苦労するのは分かる。7巻だが7年かかっている。本そのものは大人気で,実写映画化されたのにファンには不評だったこともあり,クロスメディアのムーブメントになり損なっている印象が強い。まだ外伝の短編集や映像化の企画があるらしい。本編の雰囲気を壊さないようにしながら,世界を広げてくれるといい。------------最終第7巻は長編で,扱う古書はなんとシェイクスピアの作品となかなかスケールが大きい。下世話な話となるが取引金額も過去最大で,主人公たちは人生を賭けて競りに挑む。〈久我山書房〉の亡き店主の執念が多くの人を巻き込む事件となり,その中心にシェイクスピアの古書がある。それを中心に篠川母娘が対峙する,というひじょうに劇的な状況が生まれている。様々な因縁だけでなく,古書の判定方法も変わっている。最終巻にふさわしい舞台が用意されていて,これまで読んできた読者としては大満足だ。------------長編とは言え,〈久我山書房〉時代からの因縁が語られ,主人公・五浦とヒロイン・栞子の家の物語にも決着が付くので,なかなかページが足りない。これまでのシリーズキャラクターについて語る外伝が別途用意されることになった経緯もこの辺りにあるのかも知れない。主人公たちの恋愛模様は,相変わらず素人のウェブ小説レベルだが,本編の充実感でそんなものは気にならなくなる。〈ビブリオ古書堂〉見事なエンディングだ。
2017.09.21
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道尾秀介の半年ぶりの長編を読んだ。〇ストーリー姪と2人で暮らしている二美男は,近所の公園の池に沈む死体を探してほしいと頼まれる。地元の祭りを利用し,同じアパートの住人と計画を立てた彼だったが,池からは意外なものが出てくる。それは1年前の殺人に関わった人々も巻き込む。だが一方で彼らの願いとは?-----------ハードカバーで400ページ超えの大長編だ。道尾秀介の作品なので,事前に用意された小さな謎はきちんと回収され,ラストでは心を動かす展開が提示される。さすがは若手とは言え,直木賞を受賞し人気が持続している作家だ。単純に言うと,ツボを押さえている。手に取った時は分厚いと思ったし,主人公・二美男に多少の距離感を感じて困ったが,最初の数章の違和感を乗り越えて読み始めると,あとは一気に読めてしまった。相変わらずの,手馴れた道尾秀介作品だと思った。-----------ひじょうに有りがちな,”昔からのファンの愚痴”っぽくて,自分でも困るのだが,道尾秀介って〈ゼロ年代〉はともかく,〈2010年代〉は手抜きが目立つ気がする。もちろん文章も,人物造形もしっかりした作家であることは間違いないのだけれど,〈ゼロ年代〉以降は同じモチーフの使い回しのような印象は否めないと思う。テレビタレント,ミュージシャンとしても扱われているので,忙しい毎日だとは思うが,もう少しキッチリとこちらを向いて作品を書いてくれてもいいと感じる。まず戸惑うのが,学は無いけれど,勘は鋭いという主人公・二美男の造形だ。小学生の娘を亡くし,それが理由で自暴自棄となり,失職,離婚,夜逃げをしている。その彼の所に急死した兄の娘である姪が転がり込み,2人で貧乏生活をしている。そして二美男と一緒にある事件に巻き込まれて行くのは,同じアパートの貧乏だけれど,ある欠点があり,それでも善人の人々だ。まるで,フランス喜劇の人生模様なのか?と思うほど,登場人物が等しく欠点を抱え,それを今回の事件を通じて乗り越えていく。確かに物語としては美しいけれど,出来過ぎ過ぎて,そのわざとらしさに醒めてしまうのはこちらがひねくれているからだろうか?-----------若手世代を代表する作家という肩書のワリには,どうも物語の内容が昭和のドラマっぽくて,現実感が薄い。伏線の張り方も大声で宣言していて,読者の9割以上が「で,それで?」って訊きそうなぐらい露骨だ。どうしてミステリー畑の作家が,最初から最後までベタベタの長編を書いてしまったのだろうか?巻末のメモで,これが新聞での連載作品であったことを知り,少しだけ納得は出来た。物語の構成がきちんと制御できておらず,突然あるシークエンスで盛り上がるというのも,連載という形で作品を発表すればあるのだろう。ただそれを再構成しないで,そのまま単行本で作品として発表してしまうのは,プロ意識の薄さだろう。-----------主人公の仲間には突然超自然的に近い身体能力を発揮する人物が複数出てくる。そんなマンガ的な展開を読まされると,その後にリアルな展開を延々と描かれても,「なんとかなるでしょ」と思ってしまう。昭和のテレビドラマ的なのに,味方には戦闘能力Maxの仲間が隠れている・・・これでは緊張感を持続させることは無理だと思う。-----------貧乏とか,親族が死んだとか,小学生とか,”読者にアピールするキーワード”の全部を使用禁止にして,物語の面白さでもう一度勝負してもらいたい。道尾秀介作品プロダクションの一冊を読んでいるのかと思ってしまった。次,頑張りましょう。
2017.09.20
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練馬区立美術館で開催されていた藤島武二の企画展に行った。○開催内容〈I-1.修行〉:藤島武二の師匠となる日本画の川端玉章,そして洋画の山本芳翠,黒田清輝などの作品が並ぶ。・・・洋画の黎明期という時代感が分かる静かな導入部だし,藤島武二の『湖畔納涼』の斬新さが分かる。〈I-2.飛躍〉:『婦人と朝顔』『夢想』に始まり,与謝野晶子作品の想定などで活躍している様子がうかがえる。・・・ここに来て戸惑った。すぐに活躍しているようだし,しかもその作風がアール・ヌーヴォー風なのだ。順風満帆なのか?〈II-1.留学〉:パリ留学時代の作品が並ぶ。・・・藤島武二は29才で東京美術学校の助教授になり,37才でパリへ官費留学をしている。割と中心を歩いた人なのだ。20世紀初頭のパリで,画風を多才に変えていくのも利発さを感じる。明るい色合い,豪快な風景画など実に幅広い。『黒扇』が展示されていなかったのは実に残念。〈II-2.模索〉:イタリア,韓国,中国での作品が並ぶ。・・・『カンピドリオのあたり』は見事だと思うが,急にアジアに目覚めるのは,留学によるアイデンティティの模索なのだろうか?〈II-3.転換〉:”東洋振り”と美人画が並ぶ。・・・相変わらず模索中。〈III-1.追及〉:風景画と美人画が並ぶ。・・・パリ時代の習作に風景画があったが,それをそのまま大作に引き伸ばしたような豪快な筆遣いの作品が多い。あの水彩画のような美人画とはまるで別人だ。〈III-2.到達〉:究極の日の出を求めた作品がならぶ。・・・中国や蒙古で風景画を描くって,まるで平山郁夫だ。色合いもそんな風だ。至高の傑作とされる『耕到天』は,セザンヌみたいだけど,そこまでの傑作かなあ?----------評判の良い練馬区立美術館を初めて訪ねた。前庭は現代アートなのだが,建物も企画展も落ち着いた雰囲気だった。売店などはないが,その分展示室は広くとっていた。コーナーの入隅に説明パネルを展示するのって,多くの美術館であるけれどやめてくれないかなあ。でもそれ以外はしっかりとした,堂々たる展示だった。----------台風一過の中,東武線沿いから西武線沿いまで歩いてみたら,熱中症になるかと思った。
2017.09.19
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昨年末に映画館で頻繁に予告編がかかっていたアニメ映画を観た。○ストーリー中学の卒業式を控え,部活の陸上で友人に記録を抜かれたまま親の転勤で東京へ引っ越すことが決まっているイスミは,毎日くすぶっていた。海辺で光る不思議なカケラを拾った彼女は,〈時の谷〉という不思議な世界に行ってしまう。同じようにこの世界に迷い込んだ4人の少女とともに,イスミは〈時の谷〉と世界を救うために,ダンスで悪の呪いを解こうとする。だが?-----------予告編は見かけたのに,本編は公開と同時に消えてしまったという伝説の映画だ。東映アニメーションという最大手の60周年記念作品だったというから,期待と結果の差の大きさにひとごとながら恐ろしくなってしまう。そんなこともあり,契約している動画配信サービスにこの作品が含まれているのに気付き,観ることにした。予告ではちょっと期待をさせる部分も(ダメそうな部分も)あり,公開後の”爆死”も含めて,やはりどんなものだったのか気になってしまうからだ。-----------映画の映像クオリティは高かった。自然描写は美しいし,主人公たちやマスコット的な〈ポッピン族〉も可愛らしい。そしてダンスシーンも,どうやっているのかは分からないが,振付がきちんとリアルで迫真の出来だ。一番の欠点は,”ダンスで世界を救う”という唐突さで,ダンスシーンを出すために無理やり設定を作っているのが見え見えで,観客を納得させることができないまま物語が進むことだろう。例えばあの〈マクロスシリーズ〉でも,”歌で世界を救う”というトンデモ設定があったのだが,それを補強する様々な要素がきちんと説明されており,戦闘と歌が並行して描かれていた。この作品では,ダンスをすることで戦闘力が高まり,全部解決してしまう。うーん,なぜ?-----------次に思ったのが,これなら〈プリキュア〉をテレビで観ていればいいじゃん,ということだ。Wikipediaを調べてみたら,この映画のスタッフの多くは〈プリキュア〉の製作と重なっているらしい。なるほど,と納得するけれど,だったら全く別の作品を製作しないとダメだろう。テレビで流しているのと同じような内容のオリジナル作品を劇場で観てくれ,というのは,よほど魅力がないと無理だ。-----------5人の主人公は,1人だけが高知で,残りの4人は東京だったのか?これもラストシーンを観るまで分からなかった。続編・・・無理だろうなあ。
2017.09.18
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クリストファー・ノーラン監督の戦争映画を観た。〇ストーリー第二次世界大戦の初期,ヨーロッパ本土からイギリスに向けて撤退するために40万人の兵士がダンケルクに逃げ込んでいた。二等兵の青年・トミーは自分の分隊でただ1人生き残り,砂浜でギブソンという同じような生き残りと出会い,2人で引揚船に乗ろうとする。だが傷病兵でない限り長い行列を待たならないのだった。一方で,ダンケルクに取り残された兵士を救うために,多くの民間船がドーバー海峡を渡る。〈ムーンストーン号〉のドーソンも息子ピーター,その友人ジョージと共に,ダンケルクを目指す。さらに空軍パイロットのファリアとコリンズは,引揚船を守るためにダンケルクへと向かう。彼らの運命は?-----------予告編からもそれは提示してあったが,この映画の緊張感はかつて体験したことがない。とにかく最初から最後まで,気が抜けない。これがまた息が詰まる緊張感で,作品世界に一気に放り込まれて,二等兵・トミーと同じように何も分からずにダンケルクにいる気持ちになる。そこから先も,自分が生き残れるのか,自分が選択した方向は正しいのか,常に不安でドキドキしながら作品を体験することになる。2時間の映画は複数の視点で描かれ,また時間のコラージュはしてあるのだが,最後はある瞬間に向けて結実していく。トミーという二等兵の”何も分からない視点”から,ゆっくりと”兵士たちを助ける/助かる”という一点にまとまっていく。これまで幾多の映画を観たが,ここまで愚直に1つのテーマだけで物語を進めた作品は初めてだ。この強引な作家性がノーラン監督作品の魅力だろう。-----------この作品で特徴的なのは,敵兵が1人も登場しないということだ。ダンケルクはドイツ軍に包囲され,主人公たちもドイツ軍の砲撃,航空攻撃,船舶攻撃にさらされる。通常の戦争映画だったら,敵も味方も人間ということを表現するために,双方に観客が感情移入キャラクターを配置するところだ。そこを1960年代以前の映画のように,ドイツ軍は機械の様に残酷に攻め続ける,という設定にしてある。平和な今の時代の我々は,戦線の両側に普通の人々がいることを知っている。けれども戦争の真っただ中にいる若者たちにとっては,敵はただ冷酷に自分を追い詰める存在でしかなかっただろう。決してドイツを悪く描いているわけではないのだが,この作品ではそういった理由で,ロボットの様に攻めて来るドイツ軍しか描かれていない。けれどもそれによって,トミー達の気持ちの臨場感が鮮明になっている。-----------そうした一方で,主人公たちイギリス兵の矛盾もきちんと描かれている。ダンケルクから英国に引揚が出来るのは,イギリス兵が優先で,フランス兵は置いて行かれたことを始め,いくつもの悲劇的なエピソードが語られる。果たして誰が生き延びて,誰がヒーローとなったのか?ラストの直前まで気が抜けない作品だが,それを通じて描かれるのは,人間の弱さと強さだ。-----------あまり有名な俳優は起用しないで作品を撮ったのも功を奏している。嘘のような不思議な逸話を題材にした『ダンケルク』は,ノーラン監督によってとことん乾いているのに,人間賛歌の物語に結実している。協力にオススメだ。
2017.09.17
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9月末から11月の頭にかけては学校の文化祭シーズンだ。今週末は台風が日本列島を縦断するという中,姪の高校の文化祭だった。-----------人気のバザーに行きたいという姉に付き合って,朝一番から文化祭に行った。入館手続きをして,そのまま小講堂で開催しているバザー会場に向かうとなんと行列が出来ている。開催側も慣れたもので,一定間隔で人を会場に入れているらしい。10分も待たずに案内されると,すでに会場は人がいっぱいだ。姉が狙っていたグッズは残念ながらすでに売り切れ(!)それでもオリジナルの手作り製品があったので,思わず僕も買ってしまった。-----------その後は校内を一周して,姪が行った海外留学のブース,姪のサークルの展示,姪のクラスの食品販売店をめぐった。こういう回り方なので,1時間もかからなかったけれどね。-----------去年は仕事先の知り合いに会ったけれど,今回はそういうこともなく平穏に終わった。けれども若い人々に熱気は伝わってきた。姉と本屋に寄ってから帰った。雨はギリギリ平気だったけれど,明日は直撃だと思う。
2017.09.16
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〈ジョジョの奇妙な冒険シリーズ〉の岸辺露伴が主人公の文庫の第2巻を読んだ。〇ストーリー岸辺露伴は次回作の調査のために大学図書館で調べ物をしていた。それを手伝ってくれていた助手の青年・近森と〈ドレイクの方程式〉と論じた露伴は,近森がある方程式を解こうとしていることに気付く。その方程式は長い時間をかけて人々が挑戦をしてきたが,近森の恋人がその解に近付いたらしい。だが彼女は昏睡状態になり入院をしている。彼女を救うために,方程式に挑む近森を露伴は助けようとするのだが,逆に・・・----------〈ジョジョ〉が連載されている〈ウルトラジャンプ〉の2017年9月号の付録として刊行された文庫本だ。先月号に第1巻が付いていたので話題となったが,2ヶ月連続での企画らしい。次月の予告を見てももう付録は無いようだ。せめて3ヶ月は続くと思っていたのだが,100ページクラスの文庫本が2巻とは,だいぶ中途半端だが,どうなるのだろう?文庫本としてひじょうに良く出来た装幀なので,続くならば買ってしまいそうなのだが???----------小説としては,第1巻で見られたコミック版〈ジョジョ〉の呪縛から逃れ,自由度が増していたように思う。小手先の真似よりも,物語のコアのの部分で〈ジョジョ〉らしさが出ていて,個人的にはこちらの巻も十分楽しめた。----------各編について簡単に感想を述べる。「検閲方程式」:知人のツテで大学図書館で調べ物をしていた岸辺露伴は,助手の青年・近森が落としたノートにびっしりと方程式が書き込まれていることに気付く。訊くとそれは〈別次元に干渉するための方程式〉だと言う。だがその解に近付いた近森の恋人は昏睡状態で入院していた。いつの間にか,露伴もその方程式の魔力に囚われ,意識を失いかけるが・・・事件の中心部分だけを見ると〈ジョジョ〉らしい切迫したアクションなのだが,その前後にしっとりした描写があり,小説としての完成度が高まっている。この短編だけを読むと,露伴は正義のヒーローのようだ。「夕柳台」:公園で子供たちをスケッチしていた岸辺露伴は,口がきけなくなった少年と出会う。少年がこのようになったのは,夕柳台に住んでいた時,〈猿〉に出会ったからだった。露伴は〈猿〉の謎を解くために,夕柳台へと足を伸ばす。そこで彼が出会ったのは?・・・完全にホラー小説の構成で,〈夕柳台〉に行ったからも,ハラハラが続く。結末はいつもの〈ジョジョ〉以上にスッキリ系だ。
2017.09.15
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北森鴻の歴史長編を読んだ。〇ストーリー明治12年,長州出身の大商社・藤田組に大スキャンダルが降りかかる。歴史的に有名な〈藤田組贋札事件〉は,藤田組の経営者・藤田傳三郎を始め,上層部のことごとくを獄中につなぎ,厳しい取り調べを加え,そして3ヶ月後に無罪放免となった。市中に出回り,藤田組が製作したとされた精巧な贋札の事件の謎は,そのまま闇に葬られた。だが藤田傳三郎だけには,あることからこの事件を仕掛けた人物が分かった。それは幕末の動乱期にさかのぼる物語となるのだった。-----------山口県出身の北森鴻の手による,長州の人々の幕末から明治にかけての物語だ。もちろん主人公は,藤田傳三郎と〈とんぼ〉宇三郎の2人だが,吉田松陰,高杉晋作,久坂玄瑞,井上馨,伊藤博文と,多くの長州もんの生き様が語られる。ミステリー作家としては多才で技巧派な北森鴻なので,この作品も予想に反してひじょうに読みやすいのだが,全体はミステリーではなく幕末から明治にかけて消えていった人々の歴史物語となっている。長州も内紛があり,幕府そして英国とも戦争をした波乱万丈の藩なので,語るべき内容はいくらでもあるが,それにしても北森鴻の情念が作品に投影されているように感じた。長州もんから見た幕末と明治という意味でもひじょうに面白い作品だ。-----------藤田傳三郎の名前は,美術ファンとしては〈曜変天目茶碗〉を所蔵する藤田美術館の創始者として認識しているが,もちろん本来は藤田観光,同和鉱業などの藤田財閥の創始者というのが正しい。そこまで成功した人が,明治の初期に巻き込まれたのが,いまだに謎に包まれた〈藤田組贋札事件〉だ。今でも語り継がれる事件でありながら,その後,藤田組は財閥へと成長を遂げ,企業としては悪い影響を払拭している。ただ逆に言えば,ミステリアスで魅力的な事件だ。この作品は,藤田傳三郎に〈とんぼ〉宇三郎という弟分がいたという設定で,この事件を膨らましている。-----------実在の人物を主人公にした歴史小説とは言え,相方の〈とんぼ〉は作者が創作した人物なので,正に虚実入り混じった物語となる。だが,実在の人々だけでなく,〈とんぼ〉に対しても,北森鴻は見事な人物造形を与えている。幕末,倒幕,明治,そして西南戦争,と時代が変わる中,人々の立場,敵味方,しがらみも変わっていく。それによりロジカルでは説明できない心の動き,消し切れない情念などが残るのは仕方がないことだろう。北森鴻は,それを実に丁寧に拾い上げ,年表だけを見ると矛盾がある史実を見事に肉付けして説明している。全体として描かれるのは,裏切り,変節,逃げで評判の悪い長州もんたちの不器用な生き様と,明治になってからの薩摩閥と長州閥の暗闘だ。それをここまで分かりやすく描くのは稀な才能だと思うが,たぶん北森鴻はこの1作だけに限って苦労しながら歴史小説を仕上げたのだと思う。それでも確かに読み応えと読みやすさが両立していて,しかも情念が伝わる作品だった。-----------北森鴻が故郷のために書いた歴史小説だ。主人公たちは弱い,けれどもいとおしい。オススメだ。
2017.09.14
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高校生の姪が風邪で体調がすぐれず,この前の週末は小児科に行っていた。そんなものかなあ,と思っていたら火曜日の昨日,出社してからクラクラする。どうやら風邪がうつりかけているらしい。いつもの風邪薬を飲んで,暖かくしてそれ以上の被害を防止した。昼休みには設備機械のトラブルがあって,現場で汗をかくことになった。一方で,それ以外ではここ最近では珍しくデスクワークに専念できた。そうしたおかげもあり,昨日を乗り切った。夜も当然暖かくして,早めに寝た。------------今日は,ジャケットを着て,最初から体温調整に努めた。・・・会社に着くころには,暑いと思っていたのは秘密だ。それでも1日,可能ならば上着を着て,身体を暖かくしておいた。その結果,どうやら風邪の前兆だけで,ひくことは避けられたようだ。------------昨日も,今日も,帰りがけは美しい夕焼けだった。天候が変わりやすい毎日なので,きちんと体調管理をしないと。
2017.09.13
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僕は週末に家で映画を2本ほど観るのが通常だった。映画マニアではないけれど,映画ファン,というところだろうか?では家にAVシアターとか作っているかというと,ついこの間までブラウン管のテレビで映画も観ていたという無頓着っぷりだ。美しい映像は一つの要素だとは思うけれど,映画は全体として観客を惹きつけることが出来るかどうかだと思っているし,しょせんは家という環境なので,家族が話しかけてきたり,宅配便が来たり,消防車が前を通ったりと,ピュアな状況にはなれない。画像の美しさや広がりを感じたければ映画館に足を運び,家での視聴環境にはあまりこだわりをもたない,というのがこれまでだった。-----------だいぶ前に書いた,僕個人の部屋のAV環境の改善が1年前にあり,ブラウン管テレビのメイン機の故障があり,さすがにウチの家族からも文句が出るようになってきた。いろいろ比較をして,一般的にはサブ機とされる大きさの液晶テレビが来てから1ヶ月になる。世間ではサブ機の大きさでも,我が家では以前から2回りも大きいし,ブラウン管から液晶への変化なので,いまだに「おーっ!」と思うことがある。・・・キャプションの文字が読めるとか。-----------今日,家に帰ったら玄関ホールが広い。ご臨終だったブラウン管メイン機と,最近まで頑張ってくれていたサブ機が産廃として旅立ったのだ。これにより我が家からブラウン管(CRT)はなくなり・・・・名実ともに21世紀になった気がする。(笑)
2017.09.12
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初恋をテーマにした打海文三の短編集を読んだ。〇ストーリー41才の小川康子は,高校生の娘・満月と暮らしていた。2人の微妙なバランスの毎日は,康子が新聞記事でかつて満月が好きだった少年らしき人物の死亡記事を発見したことでゆらぎ始める。康子はその人物について調べながら,カルチャースクールで出会った美人とも会う。やがて彼女の調査は悲しい過去を暴いてしまい,それでも?-----------ハードボイルドなのにしっとりした奥行きがあるという独特の世界観を持つ打海文三の短編集を読んだ。驚くほどてらいがなく,様々な人々の恋が語られる。どの気持ちも真面目で真剣で,出会いから気持ちが高まるまでが長い場合も短い場合も,きっちりと逡巡が描写されていることから常識的な人間の物語であることが分かって安心する。勢いに呑まれたり任せたりする恋,その場限りの行きずりの恋,外堀を埋められた後に徐々に情愛が湧く関係もあるだろう。打海文三が描いてきたのは,ずっとそのままでいた人々が,ある瞬間にそこから逸脱して,自分を解放するという輝きだ。この短編集でも,そうした瞬間がいくつか語られる。-----------この作品には素晴らしいシーンがいくつも描かれているが,一方で欠点も目立つ。1つはアジアでの旅先での恋,というベタ過ぎる状況の短編が半分を占めていることだ。非日常での出会いというのは,間違いなく心が動きやすいものだが,それにしても似たような傾向が続くと,さすがに醒めやすくなってしまう。もう1つは,小説だと思っていたのに,いくつかの短編で打海文三の分身である作家が登場し,恋に落ちたり,過去の友情を語ったりすることだ。作者や俳優のプライベートに興味が薄い僕としては,短編なのかエッセイなのか分からないというだけで困ってしまう。またその短編を通じて,自分の作品の解説をするという,破廉恥な行為をしているのもマイナスだ。ただしどんなに欠点があっても,この作家の文章は洗練されていて,すっと心に染み入ってくる。見事だ。いろいろあっても,これもまたハードボイルドの一作品なんだろうな。-----------各編について簡単に感想を述べる。「初恋について」:1970年に自殺した同級生を探しに上京した母親である女性に〈わたし〉は恋をする。・・・背徳の香りがして,一方でそこから学ぶものもあり,という,この作品のテーマを凝縮した短編だ。「一九七二年のレイニー・ラウ」:佐伯は娘の慶子と共に香港へと向かう。目的は25年前に短い間に会った女性・レイニー・ラウと再会するためだ。果たして2人の旅は?・・・出来過ぎ,という感想が強いが,娘・慶子の存在のおかげでこの短編は救われている。またベタな話とは言え,ディテールを積み上げている強みで読み飛ばせない奥行きがある。「路環島にて(コロアネ島にて)」:マカオを旅している男は,同じように1人旅行をしている女性と数日を共に過ごす。・・・うーん。汗「満月の惨めで、かわいそうな」:高校生の娘・満月と暮らしている康子は,新聞記事でかつて娘が好きだった少年らしき人物がバイク事故で死んだことを知る。康子の調査を通じて,娘・満月の少年への切ない気持ちが浮かび上がり・・・途中の流れもミステリーっぽくて良かったし,オープンエンドかと思わせてすっと別の着地をさせるというところも見事で,個人的にはこの作品で一番の出来だ。「花におう日曜日」:男は借金を取り立てるために,ある会社の課長補佐の家の前に張り込んでいた。だが相手は行方不明で,その妻は男の恫喝を意に介さない。やがて状況は悪化し・・・シリアスで恋の空気に満ちているんだけれど,個人的にはイタイギャグなのかと思った。酷い。 「胸が痛い」:隆一は友人の母が聞いていた韓国人歌手の歌を聞き,その2年後には韓国を旅行する。・・・え?ないない。「ここから遠く離れて」:作家の古田ヒロムは,北関東の田舎町に引っ越し規則正しい1人暮らしを続けている。そこのジムで泳ぐ背中の美しい女性に惹かれ,別の場所で再会し,2人で食事に行くこととなる。・・・東京が舞台だったら読むに耐えないのだろうけれど,茨城県と思われる田舎を設定したことで,違う魅力が生まれている。けれども自分の作品の解題と擁護はダメだろう。「バラの記憶」:〈わたし〉には大学時代,2人の友人がいた。1人は大学院の哲学科に進む優秀な男で,もう1人は次々と女性を食い物にして破滅させ,早死にしたダメな男だった。・・・ふーん。ネタ切れ?
2017.09.11
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東京で一番雰囲気が良い空間の1つ,三菱一号館に姉と行った。そのまま一号館が含まれている一角〈ブリックスクエア〉で食事をすることにした。-----------前回7月に行った時は,1階の〈ロビュション〉で食事をして,その前は3階の〈ミュージック〉だった。今回は,2階の〈アンティーブ〉に行った。メニューには載っていなかったけれど,店先に掲示されていた2人用のランチセットをお願いした。サラダ,ステーキ,デザートのシンプルなコースで,品数は少なかったけれど,満足。ギャルソンの人は,なんだか不器用なんだけれど,慣れてくると味があった。-----------〈エシレ〉が空いていたので,無塩バターを買った。ついでにフィナンシェとマドレーヌを1つずつ買って帰った。東京はそこにいても,パリやニューヨークの気分が味わえるのが驚きだと思う。もちろん東京だけの場所がほとんどだけれど。
2017.09.10
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予約をしてきちんと入手した『ドラクエXI』を進めている。〇ストーリー勇者あるいは〈悪魔の子〉と呼ばれる主人公は,1人1人と仲間を増やしつつ,自分の運命と向かい合う。冒険の末,巨悪を討つための手段を手に入れたはずだったが,物語は大きく変遷する。そして・・・・----------発売から1ヶ月,クリアした人も多いのだろうけれど,僕はゆっくりと『ドラクエXI』を進めている。当たり前だけれど仕事もあるし,LINEの他のゲームも進めなければいけないし,さすがにこの年令で出先でプレイは出来ないし,ということで,どうしてもプレイ時間は限られてしまう。例によって,あまり外部情報が入らないようにしながら進めているので,自分が今3合目なのか,7合目なのか,なかなか分からない。----------このゲームでは主人公を自分が操作するのだが,それ以外に6人の仲間が登場する。7人でパーティーを組んで,冒険を進めることになり,そこまで揃ってからはそこそこ安心出来る状態となった。その後,このメンバーで世界をめぐり,ある財宝を一式集め,ひょっとして物語も8合目かな?と思っていたら,ある展開が起きて,その気持ちはバラバラに砕かれた。集めた仲間は離散し,プレイヤーが操作できるのは,勇者キャラだけという初期の状況に戻ってしまって,ぽかーんである。----------わかりました。また一から頑張る!!
2017.09.09
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マンガ家・太田垣康男が書いた絵本を読んだ。〇ストーリーテッドは息子のウィリー,犬のアーノルドと暮らしている。テッドには1年前に分かれた妻・キャサリンがおり,どうやら近々ウィリーが彼女の所に行くようだ。テッドは大学の研究職を辞め,港で貨物ローダーを運転し,貨物を船に積み込む仕事をしている。テッドは職場の女性ナンシーに食事に誘われるが,ウィリーと過ごす時間を優先して断る。なぜならば・・・------------アメリカの新聞日曜版に掲載されてそうな画風だ。デフォルメされ,線が少なくて,ポップで優しい印象を受ける。淡々と語られるのは,2人と1匹の静かな生活だ。妻に去られ,職場も変わり,と主人公・テッドは我々と同じような苦労をしていることが伝わる。このままアメリカかどこかの家族生活が描かれるのかと思っていたところ,テッドが運ぶ貨物はザクで,積み込む船はジオン軍の軍艦というシーンがあり,この作品が「機動戦士ガンダム」の世界であることが分かる。そして最後には涙が止まらない展開となり終わる。------------この作品はもともと「ガンダム サンダーボルト」の外伝コミックとして発表されたのだが,大評判となりコミック付録の絵本として出版された。僕自身は,今回のバージョンで初めて読んで,鳥肌が立つほどの感動を覚えた。「機動戦士ガンダム」は,主人公が乗っているのがスーパーロボットではないこと,弾切れをすること,そして敵も同じ人間であること,という驚きのリアリティで歴史的なアニメとなった。その後,続編や外伝が製作され,さらに別世界のガンダム作品も次々と生まれ,1つのジャンルとして成立している。アニメだけでなく,マンガ,小説など様々なメディアでも作品は発表され続け,この作品もその一環だと言える。けれども,パロディを除けば,ほとんどの作品がSFロボットアニメの枠組みに留まっていたのに対し,この作品のアプローチは全く異なる。------------テッドは研究者としては時代に取り残され,妻には去られ,さらに〇〇しなければならない。作品は彼の数日の生活を淡々と語っており,最初は「ガンダム世界」である必要性も感じられない。この作品が心に響くのは,1つには日常系のドラマという表現方法があると思う。だがもう1つは,35年前の「機動戦士ガンダム」でもこっそりと描かれていた,「兵士は普通の人間だ」というテーマが前面に出ているからだと思う。この作品の見事なストーリーテリングで,35年ぶりに「敵も人間だ」という驚きを思い出した。本編の様々な派手なシーンの裏に,いくつもの個人的な物語があったと考えると,どうしようもなく切ない気分になる。------------もちろん,この素晴らしい物語1つを取って,戦争反対とかそういう政治的なことを言うつもりはない。ファンの間では「機動戦士ガンダム」の宇宙世紀は正史となり,年表まで製作されているが,そうした大局の裏に,いつもの小さなエピソードがあるということだ。さりげない語り口で,戦争に巻き込まれた人の悲劇を描くのは,間違いなく「ガンダム」の伝統だ。35年経って,また感動の逸品を届けてくれるのは,この作品世界に深い奥行きがあるからだろう。手に入れることは困難だと思うが,ぜひ読んでもらいたい。オススメだ。
2017.09.08
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博多を舞台にしたハードボイルド作品「親不孝ディテクティブ」の前日譚を読んだ。〇ストーリー鴨志田テッキと根岸キュータは,博多でも有名な高校生コンビだ。美人局に嵌められ,多額の金を要求されてたキュータは,テッキの協力を得らなかったため,ヤクザの組長のベンツを間違って沈めてしまった〈狂犬〉キョウジと共に信用金庫の金を強奪する。だがその金が建設業界から政治家への裏金献金で,また捜査を惑わすために用いた証拠が,他の事件の犯人のものだったおかげで,事件の影響はどんどんと大きくなっていく。高校生たちのいたずらは,いつしかヤクザ,警察,外国人亡命者をも巻き込んだ大事件へと発展する。その先に待っていたのは?----------博多の町で屋台のオヤジと臨時調査員を兼ねているテッキ,なぜか調査会社できちんと働いているキュータ,そして彼らは30代というのが,前作でのコンビの状態だった。続編でありながら前日譚となっているこの作品では,彼の高校生活・・・ではなくて高校時代に遭遇した大事件が語られる。だがこの事件,スケール大き過ぎる。----------舞台にしている博多が持っている,猥雑で乱暴,けれども自分や他人の甘えを許す,という空気を小説にしたのが,このシリーズだと思っている。無計画で,自己中心的なキュータの生きざまはまさにそれだ。そしてクールな雰囲気をたたえたテッキも,どこかでこの博多の空気ゆえに自分の性格を成立させていると思う。今回は作品の魅力であるあちこちのゆるさが,全て飛んでしまうような勢いだった。地元のヤクザや警察と対立するとか,ローカル小説でそこまでやったらもうダメでしょ,ということをいくつも行うので,本当にハラハラしてしまった。前作では30代だったコンビが,高校生の頃の物語なので,大きなトラブルにならないとは分かりつつも,なかなかハードに攻める物語だった。作品の前半は,テッキの章,キュータの章と別れていて,交互に語られる。分かりやすいが,ちょっと悠長だ。それが中盤以降はシステムも変わり,常に変わりつつある侮れない状況でどう生き延びるか,というシャープな展開となる。そんな状況でも,のほほんとしているキュータは,バカなのか天才なのか?たぶん,バカだけど。----------この作品には複数の魅力があるが,騙し合いのコンゲームとしての面白さは紹介すべきだろう。元々のコンビはテッキとキュータなのだが,キュータの美人局に関して無関係を主張していたテッキの代わりに,キュータは数人の仲間を成立させる。メインの2人のほかに,キュータと銀行強盗をした〈狂犬〉キョージ,元警察官の麻生,テッキが世話をしている女性。キュータを幼い頃から面倒を観てきた仙ジイなど,多くのキャラクターが登場する。現実ではこれだけ多くの人々の要望をまとめられないと思うのだが,それに試みるのも若さなのかも知れない。ただし登場人物が,みんなキチンと頭が良い,というのはなかなか読ませてくれた。誰が誰を騙すのか?それが語られる後半は盛り上がる。----------もう続編は無いと言われていた「親不孝通りディテクティブ」だったが,プロローグとエピソードでは作品の中での現在を語り,それ以外では10年以上前で,主人公たちが高校生だった頃が語られる。ひょっとしたら第3作もありか?と一瞬期待しても,作者が亡くなっていることから,それはほぼ不可能だと分る。歴史ミステリー作家でもあるいつもの北森鴻とは少し異なる若々しさにあふれた作品となっている。ちょっと複雑だが,トラブルのオンパレードにわくわくする。第3作,読みたかったなあ。
2017.09.07
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アメコミ映画は沢山製作されているが,主人公がヒロインという初めての映画を観た。〇ストーリーアマゾン族の王女・ダイアナは,戦士として育てられる。だがある日,外の世界から空を飛ぶ乗り物が訪れ,さらにそれを追った軍艦が侵略をする。ダイアナとアマゾン族は,パイロットのトレバー大尉を救い,彼を追ってきたドイツ軍と戦い,それを通じて外の世界では銃と爆薬の技術が進んでいること,そして世界を二分する大戦が起きていることを知る。ダイアナは,世界大戦は宿敵・戦神アレスが画策していると信じ,アレスを倒すためにトレバー大尉と外の世界へ旅立つ。そこで彼女が目にしたものとは?!-----------アベンジャーズを中心としたマーベル社の〈マーベル・シネマティック・ユニバース〉に対抗して,DC社が展開を始めたのが〈DC・エクステンド・ユニバース〉だ。もちろんDC社と言えば,スーパーマンとバットマンが二大ヒーローだ。その二大巨頭が対決をする,という作品がシリーズ第2作として公開された。その意表を突いた流れは大きな話題となったので大成功だったと思うが,そこに第3のシリーズキャラとして参戦したのが,ワンダーウーマンだ。『バットマンvsスーパーマン』では,敵対してしまった二大ヒーローとは異なる立場の存在として,二人に匹敵するキャラクターとして描かれた。-----------この作品では,ワンダーウーマンがまだ子供の頃からの物語が語られ,アマゾン族の王女として強く成長したものの,まだまだ外の世界の常識を知らないウブな彼女が描かれる。外の世界では20世紀初頭の第1次世界大戦の真っ最中で,階級社会,人種差別,男女差別が当たり前だ。脚本では,そうした状況への小さな批判を述べつつ,天然だったダイアナが徐々に世の中について学ぶ姿が描かれる。とは言え,彼女の目的は人間世界の不公平を正すことではなく,大戦を画策している軍神アレスを倒すことだ。映画では,外の世界は様々な価値観があり,素晴らしいが複雑で,ダイアナが想像していたものとは異なるということが語られる。その流れで物語はまとまるのかと思っていたら,ダイアナがずっと語っていた状況が生まれ,僕個人としては混乱してしまった。この作品世界の人間って,結局は神様の手駒なのか?-----------主演は,『バットマンvsスーパーマン』から登場したガル・ガドットだ。アマゾン族時代の変な髪型はいただけないが,美しく強いという設定どおりのヒロインを見事に演じている。だいぶマイルドになっているとは言え,肌の露出の多いコスチュームなのに,この人が着ると,まずはカッコイイとなるので,配役は成功しているのだと思う。アメリカ人なのに,なぜか第1次大戦の決着を左右する独立舞台を指揮するのがトレバー大尉だ。リブート版『スタートレック』のカーク船長でトップスターの仲間入りをしたが,この作品でもアメリカ人の理想を体現したような男を演じている。スーパーパワーを持つヒロインと比較して,優秀とは言えただの軍人のトレバーでは,どうしてもバランスが取れていない気がした。もう1つ2つ,彼を魅力的に見せるエピソードが欲しかったところだ。-----------この映画はアメリカでは大ヒットをしているらしいが,残念だ日本ではそれほどでもなく終わる気がする。僕から見ても欠点がいくつかある。まずはマーベルの『キャプテン・アメリカ』の第1作と似ていることだ。しかもあちらでは軍人になり切れていなかったキャップが,徐々に認められる展開があったが,こちらでは最後まで正規軍から離れたゲリラのままだ。次に,すでに述べたように,いろいろな社会の不公平に対して,すっと身を引いて我慢してしまうことだ。そうした消極的な態度を示すぐらいだったら,あえて語らなくても良かったと思う。いろいろモヤモヤが残る。また,ラストのバトルを観ると,「また,ザック・スナイダー節かよ」と思ってしまうことだ。対決の流れだったり,廃墟と燃え盛る平野で戦う映像など,これまでのシリーズで似たような映像が目立つ。そろそろ工夫をしないといけない。最後に,主人公の能力がよく分からないということがある。人間を超えた筋力とスピードは分かる。けれども〈銀の腕輪〉と〈真実の投げ縄〉の能力はなんなんだろう?どちらもあまり攻撃には向いていない気がする。この2つだけで戦い続ける主人公を観ていると,ちょっと痛々しい。-----------と,批判を述べても十分単体映画としては楽しめた。日本ではヒットしないと思うので,ぜひ劇場へ足を運んでもらいたいと思う。
2017.09.06
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学生ではないので長い夏休みは無いのだが,不思議とこの年になっても8月の終わりはどこかわびしい気持ちになる。今年も海に行かなかったとか,もう1ヶ所でいいからお出かけしたかったとか,あの映画を観逃したとか,いろいろな気持ちになる。たぶん,同じイベントでも8月中に体験する場合,少しだけ印象が良いのだと思う。今調べてみたら,8月はシアターで映画を3本観ているし,美術展には3回足を運んでいるので,十分充実しているような気がしてきた。ただしどれも都内で,遠出は一度もしていない。そこは残念かも知れない。まだ年内に友人たちと計画している小旅行がいくつかあるし,自分でも何ヶ所か行くだろうから,8月が終わっても大丈夫!!
2017.09.05
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東野圭吾のメタ・ミステリー連作短編集を読んだ。○ストーリー離島・凸凹島では,長いこと対立していた旧家が結ばれるための祝言が予定され,親族や島民たちが帰り,お祭り状態になっていた。そんな中,口に饅頭を詰められた死体が発見される。これは島の童謡になぞらえた〈見立て殺人〉だった。〈名探偵〉天下一と〈警部〉大河原の捜査をあざ笑うように,連続殺人が始まる。------------〈名探偵〉の天下一と〈警部〉の大河原のコンビが繰り広げる連作ミステリーだ。通常のミステリーと異なるのは,彼らが自分たちがミステリー作品の登場人物であることを自覚しており,時々〈作者〉のことを心配しながら,ミステリー作品のお約束事を守りつつストーリーを進めるというところだ。「また密室殺人かよ」といったセリフを,ミステリーの登場人物が語ってしまうのだからかなり画期的だ。学生の同人作品ではなくプロの作家がこれを雑誌に発表し,好評だったのでシリーズ化がされ,そして単行本まで刊行されてしまったから驚きだ。------------語り手の大河原〈警部〉は,さまざまな事件に次々と遭遇するが,なぜかその都度天下一〈名探偵〉もそれに首を突っ込んでくる。〈警部〉は的外れな捜査と推理を続け,事件は進み,そして〈名探偵〉が真相を暴く。大河原たち警察の者はある程度真相には気付いているものの,おとぼけ〈警部〉の役柄を守るために,ひたすら間違った捜査を続けなければならない。さらに天下一〈名探偵〉も,時々やる気をなくすので,大河原は彼にカツを入れるのも仕事だ。勘違い〈名探偵〉に周りの人が振り回される,という作品は読んだことがあったが,〈名探偵〉も〈警部〉も〈作者〉の与えられた役回りを〈読者〉のために演じ続ける,というパターンは初めてだった。まさにメタフィクションだ。------------密室モノ,ダイイングメッセージ,時刻表トリック,見立て殺人,と次々とミステリーのお約束事の必然性に容赦なく斬り込んでいくので,ハラハラした。連作短編集1冊であれば楽しめたのだけれど,続編もあるという。そちらはよほど工夫がないとキビシイのではないかな?------------各編について簡単に感想を述べる。「プロローグ」・・・〈警部〉大河原のつらい役回りが語られる。「密室宣言-トリックの王様」:雪深い奈落村の閉ざされた家で死体は見つかった。さらに家の周りの雪には足跡が無かったという。不可能殺人に挑むのは〈名探偵〉天下一だ。・・・最初から飛ばしてくれる。ミステリーと言えば密室モノという認識もあるくらいだけれど,それを痛烈に批判。森博嗣も似たようなこと書いていたなあ。「意外な犯人-フーダニット」:資産家の画家・牛神貞治が殺害された。5人の容疑者の中から〈名探偵〉が真犯人としたのは?・・・〈名探偵〉がわざわざ意外な犯人を捜す,というのには笑ってしまった。「屋敷を孤立させる理由-閉ざされた空間」:資産家・矢加田の屋敷でパーティーが開催された。彼に親しいものは屋敷に残り,さらに飲み続ける。手洗いのために中座したものが戻らず,彼は屋敷の裏の山頂で死体となって発見された。この不可能殺人の真相は?・・・孤立した山荘モノで,例によってそれへの批判も語られるのだが,短編が違う方向に行っている?「最後の一言-ダイイングメッセージ」:王沢物産の社長は殺されており,死体の近くには謎のダイイングメッセージが残されていた。これが指し示す犯人とは?・・・日本語の場合,アルファベットと数字以外にも,漢字・ひらがな・カタカナがあるので,ダイイングメッセージの幅が広がってミステリー作家にとってはラッキーだろう。この短編でも語られているが,ほとんどの場合,納得できないことが多い。「アリバイ宣言-時刻表トリック」:容疑者・蟻場には完璧なアリバイがあった。天下一は鉄壁の守りを強力なロジックで打ち砕く。・・・ロジックじゃないか。時刻表ミステリーが人気なのは,ミステリー読者と鉄道ファンの層が重なるからだと思うけどなあ。「『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論-二時間ドラマ」:〈女子大生探偵〉天下一と〈警部〉大河原のコンビは,旅行先の旅館で殺人事件に遭遇する。・・・いきなり女子大生になってしまった天下一が,2時間サスペンスドラマのお約束事に苦労しながら短編を進める。今ではほとんどの作品が映像化されている人気作家も,この頃は〈2サス〉にアンビバレントな気持ちを抱いていたとは。「切断の理由-バラバラ殺人」:登山者が山中で女性の死体を発見した。容疑者は絞り込めたのだが,彼が死体をバラバラに切断した理由は?・・・バラバラ殺人の理由がきちんと語られて感心したら,やはりあの伏線が襲ってきた。上手い!「トリックの正体-???」:資産家の遺産相続を議論するために別荘に集められた一族と新たに現れた隠し子。その最中に隠し子が銃殺されるのだが,逃げた犯人は別荘の中で消えてしまう。・・・パロディにもなっていない脱力系だ。「殺すなら今-童謡殺人」:離れ小島で起きた連続殺人事件は,島の童謡に沿って起きていた。〈名探偵〉天下一は最後に真犯人を止めたのだが?・・・僕も大好きな〈見立て殺人〉系作品のパロディだ。最後まで犯人を捕まえない〈名探偵〉など突っ込みもエグいが,ラストが良い。「アンフェアの見本-ミステリのルール」:社長・大黒が毒殺され,状況から一緒に食事をしていた身内が疑われる。・・・アンフェアと大きく書かれると感想も書きづらい。このシリーズも手馴れてきて,二重の終わり方が増えてきた。「禁句-首なし死体」:タワーの展望台で首なし死体が発見される。だがタワーに上ったのは彼だけだった。・・・一見パロディのようだが,この手の謎解きって,メフィスト賞の作家には多い気がする。「凶器の話-殺人手段」:資産家・町田の死体が建物の中庭で発見される。死体には3つの刺し傷があったが,凶器は発見されなかった。〈名探偵〉天下一が見抜いた真相とは?・・・謎解きの後の真相の方が気になる。そんなのあるんだろうか?「エピローグ」:真犯人は?・・・これは以外だった。「最後の選択-名探偵のその後」:別荘に集められたのは10人の〈名探偵〉だった。だが彼らは1人,また1人と命を落とす。最後に残ったのは?・・・〈名探偵〉の設定も面白かったが,短編も徐々に緊張感を見せてくれた。とは言え,なんだか疲れた。
2017.09.04
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LINEを始めてまだ半年だが,〈ラインポップ2〉を遊んでいる。-----------基本は落ちモノ系パズルだ。上から落ちて来るボールを3つ以上揃えると消すことが出来て,それを通じてステージごとの条件を満たしてクリアしていく。最近のゲームらしく,お助けアイテムやキャラがあり,派手な画面効果もあり飽きさせない。正直,運の要素が強くて,ずっと歯が立たなかったステージも,たまたま初期配置が良ければすすっとクリア出来てしまうことがある。もちろん多少は頭を使うけれど,基本は何度もチャレンジをしていれば,クリア出来ると思う。-----------始めたきっかけはLINE友だちの女性から誘われて,というひじょうにありがちなパターンなのだが,かなりやり込んでいて,誘った人から呆れられる始末だ。ステージはクリアをしても,その際の得点によって金銀銅の評価が付くのだが,これまでクリアしたステージで,金以外のものは再チャレンジをして,金が達成できるまで続けた。それを伝えたら,普通そんなことしないらしい。えー。-----------まあ,マイペースで頑張れるのもこのゲームの良さかも知れない。
2017.09.03
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東野圭吾のSFラブロマンスを読んだ。〇ストーリー崇史が親友の智彦に紹介された女性・麻由子は,崇史が憧れていた女性だった。彼女は崇史と智彦の研究所入所し,智彦の研究室に配属される。崇史は仕事で成果を上げ,麻由子と付き合っている智彦への嫉妬に身を焦がす。一方,目覚めると崇史は麻由子と恋人同士で同棲しており,行方不明となった智彦を探していた。2つの世界の間を行き来する崇史は,真実へとたどり着けるのか?-----------優秀でスポーツマンの崇史は,頭脳は切れるものの身体が弱い智彦と中学からずっと親友だった。だが智彦が紹介した麻由子が,崇史がかつて憧れていた人だったことから,2人の友情はギクシャクし始める。それと並行して,崇史が麻由子と同棲している世界が描かれる。その世界での崇史は,少しずつ違和感を感じ始め,これが偽りではないかと調べ始める。崇史と智彦は,ある企業で仮想現実の研究を進めていた。崇史は視覚と脳波を一致させることを研究していたが,智彦は記憶を改ざんして仮想現実を体験させる研究をしていた。智彦の研究が自分の体験している違和感と関係があると思う崇史だが,謎の勢力に調査を阻まれ,仕事も閑職に回されてしまう。そしてついに麻由子までもいなくなる。-----------「願望を元に記憶を改ざん」という言葉が出てくるので,麻由子が智彦の恋人の世界Aが現実で,彼女が崇史の恋人なの世界Bが仮想現実だろうと想像して読み進んでいた。世界Aでの崇史は,麻由子に焦がれ,積極的に彼女に迫って行く存在だ。世界Bでの崇史は,自分の記憶の確かさに疑問を持ち,行方不明となっている智彦のことを様々な手段で探す行動派だ。最初はSFサスペンス風な展開かとも思ったが,東野圭吾の作品だし,主人公たちが研究しているのが仮想現実ということもあり,もっと現実的な味わいとなる。あまり語るとネタバレなのでやめておくけれど。とは言え,サスペンス風の展開にはなかなか緊張感があって最後まで楽しめる。-----------崇史は,親友・智彦の恋人に横恋慕をしてしまう。もともと憧れていた女性ということもあるし,こうした気持ちが現実にはあることは分かる。けれども仕事もスポーツも出来て,積極的な性格でもあるらしい崇史が,ここまで1人の女性にこだわる気持ちはきちんと説明されないのが不満だ。まあ,そうでないと物語が成立しないけれど。また麻由子という女性も謎だ。崇史のアプローチに対して,毎回断りつつも,どこか可能性を残すようなことをしている。崇史のことも好ましいと思っているのならば,徐々に智彦から距離を置くなり方法があったはずだ。「2人の友情を壊したくない」ということを述べるが,結局一番悪い状況を作り出してしまったのは,この女性の言動が理由になっている。-----------結末は,東野圭吾だとやはりここまでか,とちょっとエラそうなことを考えさせられてしまった。だいぶご都合主義が目立つので,東野圭吾ミステリーとしてはB級だけれど,小説としてはじゅうぶん楽しめた。
2017.09.02
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ようやく赤く実ったトマトを夕食に食べた。姉が食卓に出してくれたのは,熟して赤くなったミニトマト5つほどだ。6月に入ってすぐに種を蒔いたので,まるまる3ヶ月かかって,ようやくの収穫ということになる。トマトはもっとお手軽に栽培できると聞いていた。途中で何か失敗したのだろうか?市販のトマトは熟す前に収穫され,出荷され店頭に並ぶ間に色が赤くなると聞いていたので,熟すまで待ったものはブヨブヨになるのかと心配していた。食べてみると,逆に皮が分厚くて,市販品の口当たりの良さとは別物だった。でも味はしっかりとトマトだったので良しとする。まだ他に実っているのも良し。
2017.09.01
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