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ミステリーといって良いか。帯にはサスペンスとのコメントがあるが、人間ドラマと言ってよいかもしれなません。通り魔や強盗傷害を繰り返す伊豆見翔人は、宮崎県の山奥の村に逃げ込む。そこでたまたまであった老女に孫と間違われ、何日かそこで過ごすことになります。山村の人々に祭りの手伝いをさせられたり、山仕事をさせられたりするうちに、優しさに接して少しずつ洗われていきます。というとあまりにも陳腐なストーリーになってしまいますが、そこは乃南アサ。ちょっとした事件や人を登場させて少しひねってストーリー展開させていきます。結末は、自分の予想した展開とはやや違っていましたが、感動の終わり方でした。特に終わりの18ページは、何回も繰り返して読みました。お薦めの一冊。発行:新潮社(新潮文庫)価格:514円+税初版:平成20年2月1日評価:A
2008年04月27日
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今野敏、樋口顕シリーズの第一弾。最近の警察小説というと、今野敏と佐々木譲が上げられる。本書は1996年の作品であるが、今野敏が本格的に評価されるようになったのは、2006年の「隠蔽捜査」からだろう。10年以上の前の作品とはいえ十分楽しめ、何故その時に評価されなかったのかと思うできだ。佐々木譲の警察小説は、警察官の性格はそれほど際だたせてはいないが、今野敏の場合は、はっきりと性格付けをしている。どちらが面白いかといわれても困るが。もちろんどちらも面白い。今回はそれほど複雑なストーリーではないが、樋口顕の性格がはっきり描かれていて面白い。近刊では、シリーズ第三弾「ビート」が出た。発行:新潮社(新潮文庫)価格:590円+税初版:2008/07/01評価:Bリオ
2008年04月23日
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笑う警官単行本時のタイトルは「うたう警官」。「うたう」とは、内部告発することをさす業界用語。このあとの「制服捜査」「警察庁から来た男」の一連の北海道警察シリーズの第一弾。佐々木譲の淡々として、冷静な目で見たような文体が、なおさら引きつけられる結果となっています。舞台は北海道警察大通り署。婦人警官がアパートの一室で殺されました。そして容疑者として浮かんだのが、主人公佐伯警部補と以前ある事件で組んだことのある、津久井巡査部長。しかし、佐伯は津久井が犯人であるということにに疑問を抱き、仲間を募り独自に捜査を始めます・・・。このあたりからは一気に引き込まれてしまいます。終わり方がやや不満が残るところではありますが、さすがに佐々木譲氏、つかんだ心は話しません。発 行:角川春樹事務所(ハルキ文庫)価 格:686円+税初 版:2007/05/18評 価:B
2008年04月19日
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裁かれた罪裁けなかった「こころ」 「自閉症裁判」で話題になった著者の第二弾。前作では、「浅草レッサーパンダ帽男」の裁判を通して、日本の福祉、裁判の在り方に一石を投じました。本書の舞台は、2005年に起きた「寝屋川教師刺殺事件」。今回の犯人も鑑定では、自閉症のアスペルガー症候群と認定されました。この障害の特徴は、人の気持ちが読み取れないこと、正に文字通りに意味を取ってしまうことです。それが自閉症、アスペルガー症候群なのです。もちろん人を殺傷した以上、その責任は取らなくてはいけません。しかし、彼の場合は単に刑務所に入れたからといって、更正、贖罪することはありません。その障害に応じた保護処分されなければ、将来刑務所を出たときに、再犯の可能性があります。裁判ではそこまで障害を理解して、判決したとは思えません。著者も「問われなくてはならないのは、再犯を防ぐための処遇内容のはずである」これが現在の日本の司法制度の欠点だと思うのですが。改めて、福祉と司法の貧困さを感じました。弱者が住みやすい世の中は、一般の人にとっても住みやすいはず。発行:岩波書店初版:2007/7/21価格:2400円+税評価:C
2008年04月14日
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著者の山本譲司氏は、元衆議院議員。2001年、秘書給与搾取にて逮捕、刑務所に収監。前作、「獄窓記」では、新潮ノンフィクション大賞を受賞し、さらに柳葉敏郎主演でドラマ化もされました。本作はその続編で、出獄してからの元囚人としての苦しみ、そしてライフワークとしての障害者福祉、刑務所改革への取り組みを記しています。やはり、現場を体験してきただけに説得力があります。それにその行動力。本人も述べていますが、「演技」していた議員時代とは違い、本心から取り組んでいるだけに、真剣さも伝わってきます。元代議士が元囚人になり、そして刑務官の前での講演、国会での参考人としての意見陳述。有為転変とはこのことでしょう。今まで注目されることのなかった刑務所内での障害者への処遇、出獄後のケア、そして一般刑務所の改革と山本譲司氏の前作「獄窓記」はとても反響を呼びました。皮肉にも、議員時代よりも注目され、活躍しています。真摯な気持ちで書いている筆致が伝わってくる、ノンフィクションです。発行:ポプラ社価格:1600円+税初版:2008/2/17評価:B
2008年04月10日
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