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『週刊新潮』に2022年5月~23年6月に連載された 「この連載はミスリードです」や 23年5月に配信されたデイリー新潮に、加筆・修正して発行された一冊。 著者は、『謝罪大国ニッポン』の中川淳一郎さん。 *** 私も長年ネット編集者をやっているため、 「勝ち馬に乗れ」の法則はよーく分かっています。 つまり、今現在、世間の「風」として流行っているものの続報を 出せば出すほどアクセス数を稼げ、儲かる、という理論です。 雑誌・新聞の部数、テレビの視聴率も同じで、 メディアは、「本当に報道する価値があるもの」よりも 「とりあえず数字が取れて会社が儲かるもの」を重視する傾向があります。(p.73)まぁ、今更感もありますが、そういうことなのでしょう。メディア各社は、利益を上げないことには、存在し続けることが出来ないわけですから。ただ、真偽不明のいい加減な情報が飛び交い、あっという間にデマが拡散していく現状には、営利追及を目的とするプロだけではなく、純情無垢な(?)素人も大いに加担しています。 ***全編を通じて、コロナに対する中川さんの立ち位置が鮮明に伝わって来る一冊でした。その他の話題については、バラエティに富んでおり、興味深いものが多かったです。また、述べておられる内容についても、大いに頷けるところがありました。ところで、中川さん、どういうきっかけで阪神タイガースのファンになられたのですか?
2024.11.30
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『太秦荘ダイアリー』シリーズの第2弾。 下宿業を再開し、その住人第一号である藤沢翔真を迎えたばかりの太秦荘。 太秦萌、松賀咲、小野ミサの3人は、その2階の空部屋を事務所として、 依頼人を身内と知人・友人に限定する『太秦探偵ミモザ』を始める。 最初の依頼者は、京都先端科学大学の学生で、萌の従姉・太秦そので、 亀岡キャンパス内で蚊帳を張って飼育していた100頭の蝶が、突如いなくなってしまっていた。 3人はそのと共に、演劇同好会、テニス部、写真部、美術部で聞き込みをした後、 図書室に寄ってから、演劇同好会の舞台劇『平将門の悲哀』を観に行き……。次の依頼者は藤沢翔真で、自身の新作ヒーロー像にピッタリと考えているミサの兄・陵の高校の同級生でパン屋に勤める十条タケルについて調べてほしいと言う。3人はタケルの実家である剣道道場を訪ね、彼が父親に勘当された本当の理由や、彼がパン職人を目指した背景について、母親から聞き出すことに成功する。3人目の依頼者は語学が堪能な丸太真智で、陵の高校の同級生で神社の娘・烏丸ミユが発した「梅を詣り、結びの社へ」という神託の意味を一緒に考えてほしいと言う。3人は真智、ミユと共に梅宮大社に詣で、小説家・荒神口渡と真智の妹・美智について知ると、磐長姫命を御祭神とする結社へと向かい、傷心の真智を新たな一歩へと導く。 ***「掌編・大人三人娘の宴」では、太秦麗、伊勢京香、四条みやびの3人が、伏見のBAR『こんた』へと繰り出しますが、そこで、助っ人としてカウンターで働いていたのが、家頭清貴というサプライズ。望月さんも、「あとがき」で、しっかりとそのことに触れています。
2024.11.30
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「悪口とは一体何か?」について考えていく一冊。 著者は、南山大学人文学部人類文化学科の和泉悠准教授。 まず、パートⅠの「悪口はどうして悪いのか」という問いに対しては、 「自分が上、標的が下、というメッセージが悪口の基本になる」としたうえで、 次のように答えています。 悪口には必ず比較がともない、誰かが誰かより劣っていると言うことだ、 そして、悪口が悪いのは、人を同じランクの人間として扱わないことが悪いからだ(中略) 人を傷つけるかどうかや、悪意があるかどうかは、あくまで悪口の中心ではなく、 オプションのようなものになります。 そういうときもあれば、そうでないときもあるのです。(p.47)次に、パートⅡの「どこからどこまでが悪口なのか」という問いに対しては、 軽口や自虐、あだ名や批判、言語学的ことばの分類などについて考えました。 たくさんの観点があるので、たったひとつの定義で何も考えずにすべて線引きができる、 といった単純なものではないですが、(中略) 結局、誰かをランクが下の存在として扱うかどうかが基準になり、 乱暴なことばだからダメとか、丁寧だからアリではないのです。(p.102)そして、パートⅢの「悪口はどうして面白いのか」という問いに対しては、 悪口が楽しいのは、人をダシにして笑いを取るという 人間のダークな本性とも関わっていましたが、 それと同時に、悪口は権力者に立ち向かうひとつの武器だということも分かりました。 また最後には、悪口はヴァーチャルな性質を持つからこそ、笑いに変えることも、 人の尊厳を損なうこともできるということを確認しました。(p.138)そして、おわりにの「悪口とのつき合い方」では、悪口を言う側、悪口を言われる側、悪口を耳にする(目にする)第三者のそれぞれの観点から、どのようにすればよいかを考え、締めくくっています。 悪口を言ってしまう人の心理は複雑でしょうが、本書の提案を踏まえると、 むしろ同情を誘う、かわいそうな状況にある人だとも言えます。 悪口を言う人は、優劣のランキングや存在のランキングにとらわれています。 誰かを下げずにはいられないから悪口を言うわけです。 はっきりと言語化できなくても、自分が下位にいるという意識を持ち、 それに耐えられなくなっているのかもしれません。 誰かのランキングを下げることにより、何とか自尊心を保ちたいのでしょうか。 痛々しいものがあります。(p.143)「誰かを下げずにはいられないから悪口を言うわけです」その「下げずにはいられない」人が、何と多いことか……
2024.11.24
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『月曜日の抹茶カフェ』以来、久しぶりに青山さんの作品を手にしました。 カバーには「2022年本屋大賞2位作品、待望の文庫化」の文字が。 ちなみに、2023年は『月の立つ林で』が5位、 2024年は『リカバリー・カバヒコ』が7位となっています。 ***「一章 金魚とカワセミ」交換留学生としてメルボルンにやって来たレイは、1か月経っても一人の友達も出来なかったが、アルバイト先の免税店の先輩・ユリに誘われて公園のバーベキューに出かけ、ブーと知り合う。二人はビクトリア国立美術館での再会以降頻繁に会い、留学終了までの期間限定交際を開始。そして、1年の留学期間終了直前、ブーの友人ジャック・ジャクソンがレイの絵を描くことに。「二章 東京タワーとアーツ・センター」額縁製造販売「アルプル工房」に、円城寺画廊の経営者男性・円城寺と同行女性・立花が現れ、展示イベント用の額装を依頼、その中にはジャック・ジャクソンの『エスキース』があった。空知は大学3年生時のメルボルンでのジャックと出会いから額縁に興味を持ち、額職人になった。そして今回、師匠である村崎にその絵の額装をさせてくれと願い出て、木材から作り始める。「三章 トマトジュースとバタフライピー」漫画家・タカシマ剣のアシスタントをしていた砂川凌が、ウルトラ・マンガ大賞を受賞。二人の出会いや作品について語り合う対談を、ビジネス誌『DAP』が取材することに。対談先の喫茶店「カドル」には顎髭店主とウエイトレス、そして『エスキース』が飾ってあった。取材が終わった後、タカシマは砂川から本当の思いを聞かされることになる。「四章 赤鬼と青鬼」輸入雑貨店「リリアル」に勤務する茜は、オーナーからイギリスでの買い付けを打診される。そして、忘れてきたパスポートを取りに行くため、離婚した夫・蒼が住む家を訪れることに。しかし、茜は心療内科でパニック障害と診断され休職、元夫の留守中に猫の世話をすることに。そこで、タカシマ剣のマンガ本の中に、『DAP』の対談記事が挟まれていることに気付く。そして、戻ってきた元夫と『泣いた赤鬼』について語り、節分の豆まきをし、互いの思いを…… 「俺は君の気高い生命力を知ってるよ。レイ」(p.225)まさに、衝撃の一言!「やられた……」という思いと共に、「何故、気付けなかったかな……」という悔しい気持ち。そして、何よりも「流石は青山さん!!」という感嘆。続く「エピローグ」では、様々な事柄が、ジャックによって次々に明らかにされていきます。「赤」と「青」による、あまりにも見事な立体的に形作られたお話に大興奮。「これが、何故2位?」と信じられない気持ちでいっぱいになると共に、1位の未読作品『同志少女よ、敵を撃て』が、気になってしようがないです。こちらの作品は、なかなか文庫化されませんが、もうそろそろかな?
2024.11.17
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茅ヶ崎サザンビーチで若い女性が撲殺され、額には『M』の傷痕が残されていた。 その後、”波夜人”と名乗る者が、県警相談フォームにメッセージを投稿。 それは、被害者を口汚く罵ったうえで、自らが罰を与えたというものだった。 捜査会議に参加した夏希は、波夜人との対話を進めるよう指示を受ける。 夏希の呼びかけに応え、波夜人は被害者・森かずみの「罪状」公表を求めてくる。 その「罪状」とは、彼女が勤務するキャバクラの顧客・桑原成一に対する結婚詐欺行為で、 これが公表されない場合、新たにクソ女の死体が見つかることになると恫喝する。 そして、捜査が進む中、かずみの得意客・山川信彦が容疑者として浮かび上がる。山川を監視することで『罪状』公表は無視することになるが、翌朝新たな女性遺体が発見される。波夜人から犯行声明が届き、額に『A』の傷痕が残るその遺体は、女優・能勢ゆかりのもので、本名は阿曽沼莉子、結婚を餌に津田秀夫から多額の金品を贈与させ、彼を自死に追い込んでいた。波夜人は、「罪状」を公表しないと新たな遺体が城ケ島付近の海に浮かぶことになると脅す。容疑者として浮かんだ、阿曽沼莉子に執着していた俳優・山村良(本名・兼松正秀)も無関係。そして、額に『Y』の傷痕が残る3人目の遺体が発見されると、波夜人からメッセージが届く。遺体は家電大手企業秘書課の石川琴音で、専門商社営業・徳永昌義を横領逮捕に追い込んでいた。夏希は、性別、年齢共に不詳の波夜人について突如何かが閃く、そしてそこに上杉が現れた。3つの事件を担当した捜査員に見当をつけ捜索を進めると、大須賀政司警部補が容疑者に浮上。彼の息子・康司はストーカー規制法違反容疑で取り調べを受け、逗子の海に身投げしていた。そして、彼をストーカーとして訴えたのは、ファッションモデル・赤井マヤだった。夏希は上杉らと共に、警察用船艇で逗子海岸へと向かう。 ***今回は、アリシアではなく、タイハクオウムのピリナが優れた視力を活かして大活躍。お話が、加藤の臨場シーンから始まったのも初めてでしょう。新たに登場した小峰江の島署長と芳賀管理官の対比も面白かった。そんな中、私が今巻で最も印象に残ったのが次の箇所。 第二項は「死者の名誉を棄損した者は、 虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない」と規定するので、 死者である森かずみの場合には 事実でないことを発表しなければ名誉棄損には該当しない。(p.58)死者については、それが事実なら、何を言っても名誉棄損にはならない。死者を貶めても、事実なんだからかまわないということですね。でも、何か引っかかる……それって、どうなの?
2024.11.16
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角田光代さんによる『源氏物語』の現代語訳。 この作品は、2021年に読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞しており、 第1巻には、「桐壼」から「末摘花」までが収録されています。 評判通り、とても読みやすいものでした。 ***一帖 桐壺(きりつぼ)桐壺更衣は、後宮の女たちから嫉妬されながらも皇子を出産。帝は益々更衣を愛したが、更衣は女たちからの度重なる嫌がらせで病に倒れ、亡くなってしまう。 帝が若宮を臣籍に降し、源氏の姓を与えた頃、桐壺更衣に生き写しの藤壺の宮が入内。源氏は12歳で元服し、左大臣の娘である葵の上と結婚するが、4歳年上の妻になじめず、亡き母の面影を求めて、藤壺への思慕を強めていく。二帖 帚木(ははきぎ)長雨が降り続く夏の夜、17歳の源氏の宿直所に葵の上の兄・頭中将が訪れ、さらに左馬頭と藤式部丞も加わって女性について議論を戦わせる。頭中将は後見のない女性と通じ子まで成したが、正妻の嫌がらせもあって姿を消してしまった。源氏は、三人の経験譚から中流の女性の魅力を知る。そして翌日、源氏は方違えのため訪れた紀伊守の別宅で、紀伊守の父の後妻・空蝉が居合わせていることを知ると、その夜半ば強引に寝所に忍び込む。しかし、自身の身の程を知る空蝉はそれを許さず、その後も源氏の誘いをかたくなに拒み続ける。三帖 空蝉(うつせみ)源氏は、空蝉の弟・小君の手引きで紀伊守の邸宅に三度訪れる。空蝉は開放的な様子の若い女・軒端萩と碁を打っていた。その夜、源氏は寝所に忍び込むが、空蝉は小袿を脱ぎ捨て寝所を抜け出していたため、空蝉と同室で眠っていた軒端萩と情を交わすことに。翌朝、源氏は空蝉が脱ぎ捨てた小袿を持ち帰り、小君に歌を託したのだった。四帖 夕顔(ゆうがお)空蝉に執着していた頃、源氏は六条に住む高貴な女の所にも忍んで通っていたが、その途上、夕顔の咲く家に住んでいる女と知り合う。源氏は夕顔と逢瀬を重ね、廃院へと連れ出すが、夜、物の怪に襲われるような夢を見る。目を覚ますと、正気を失った夕顔が、そのまま息を引き取ってしまう。後日、源氏は夕顔の侍女・右近から、夕顔が頭中将との間に子まで成した女だったと知らされる。五帖 若紫(わかむらさき)18歳の春、瘧病に苦しむ源氏は、加持を受けるため北山の聖のもとを訪ねる。そして、某僧都の家で、母を失い祖母の尼君に育てられている可憐な少女・紫の上を垣間見る。兵部卿宮の姫君で藤壺の宮の姪でもあるこの少女は、藤壺の宮に生き写しだった。源氏はこの少女を自らの手で育てたいと僧都や尼君に願い出るが、全く相手にされない。その頃、源氏は藤壺の宮に仕える王命婦を頼りに藤壺と逢瀬を持つと、藤壺は懐妊してしまう。紫の上の祖母である尼君が亡くなった後、源氏は紫の上を二条院へと連れ去る。紫の上は二条院の暮らしに馴染み、源氏になついていった。六帖 末摘花(すえつむはな)源氏は、乳母子の大輔命婦から、故常陸宮の姫君・末摘花のことを聞き興味を持つ。早速常陸宮邸を訪れ、後をつけてきた頭の中将と恋の鞘当てを繰り広げた後に、命婦に手引きさせて、一向になびいてこない姫と強引に契りを結ぶ。しばらくの後、姫のもとに訪れた源氏は、その翌朝見た姫の醜い姿、特にだらりと伸びた先が赤い鼻に驚愕。落ちぶれた宮家の境遇の哀れさから、姫の面倒は見続けたものの、二条院では、紫の上と赤鼻の女の絵を描いたり、自分の鼻に紅を塗ったりして戯れていた。 ***男女共に、現代とは道徳や倫理観が想像を絶するほどに異なっており、唖然。その土台となっているのは、当時の厳然たる身分制度と婚姻制度。血筋による圧倒的権威だけでなく、美貌まで兼ね備えた光源氏は、もうやりたい放題。現代ならば、どれもSNSで大炎上する事案ばかりで、いじり倒される末摘花には涙を禁じ得ない。しかし、光源氏の人格が疑われるような言動も、彼が生きた時代や社会が創り出したもの。逆に、空蝉などは、現代に近い感覚の振る舞いを貫き通すので、ひょっとすると、当時でもこちらの方がスタンダードだったのでは、とも思わされます。あの時代においても、やっぱり光源氏は類まれなる存在だったということなのでしょうね。
2024.11.09
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境界知能の子どもたちの実態と、その可能性を伸ばすための方法を提案する一冊。 著者は、児童精神科医で立命館大学教授の宮口幸治さん。 第1章 気づかれない「境界知能」と「軽度発達障害」 第2章 知能検査について知る 第3章 教科学習の前になぜ認知機能が大事なのか? 第4章 子どもの可能性はどのように伸ばすのか? という構成で、「発達障害」と「知的障害」の違いや、知能検査の概要と結果の活かし方、 「学習の土台」となる5つの認知機能と「コグトレ」等について記されています。 第1章の概要は、次のような感じです。IQの平均値は100で、「IQ85以上115未満」が「平均域」となる。そして、「知的障害」は次の4段階に分けられる。・IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度・IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度・IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度・IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度 ※( )の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢一方、境界知能は「IQ 70以上85未満」で、「知的障害」と「平均域」のボーダーに当たる。成人でおよそ中学3年生程度の知的能力であり、「知的障害グレーゾーン」とも呼ばれ、人口の約14%が該当するものの、行政支援の対象外で、療育手帳は取得できない。(ただし、発達障害で手帳を取得できる可能性はある)境界知能や軽度発達障害は、教師や親でも気づかないケースが多々ある。それは、見た目や普段の生活の様子が、健常児とほとんど変わらない子もいるから。それを見過ごさないためには、次のようなサインを観察し、状況を正しく理解することが必要。・友達との会話についていけない・相手の気持ちが想像できずにトラブルになる・感情をコントロールするのが苦手。キレやすい・約束を忘れてしまう。忘れ物が多い・先生の話を聞けない・手先を上手に動かせない・体をうまく動かせない第1章の中では、私は次の部分が最も強く印象に残りました。 もうひとつ大事なのは、子どもの話をしっかり聞くことです。(中略) 特に子ども相手ですと、説明がつたなかったり要領を得なかったりして、 「それって、こういうこと?」などとつい口をはさんでしまいがちです。(中略) 子どもにしてみれば、親や先生からの意見が欲しいわけではなく、 ただ話を聞いて、自分のことを受け入れてもらいたい一心なのです。 ですから、子どもの目を見て、しっかりと相づちを打ちながら、 話に耳を傾けることが大切です。 その際に、子どもが「お母さん、どうしたらいい?」 「先生、どう思いますか?」などと意見を求めてきたら、 初めて助言を与えてあげればいいと思います。(p.51)子どもだけでなく、大人でもそうかも知れませんね。
2024.11.09
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特装版の64頁にも及ぶ付録小冊子には、『幸か不幸か』が掲載されています。 これは、著者の中村さん自身が書き下ろした、 10年前の慧月、9年前の玲琳、2年前の慧月、そして現在の慧月を描いたお話で、 付録小冊子の紙幅の大部分を費やした、とても気合の入った作品です。 今後のお話についても、このエピソードを前提に描かれていくと思われるので、 これからも、このシリーズを読み進めていく予定の方は、 通常版と比べ、価格はやや高くなってしますが、ぜひとも読んでおくべきものでしょう。 と言うか、このエピソードを読めば、今巻のお話の感動レベルがさらに上がること間違いなし! ***30年前、護明が19歳、弦耀が14歳の時、二人は第9皇子の刺客に襲われ、護明は弦耀を庇って失明、以後政務に携われなくなり、廃嫡の話が持ち上がった。そして25年前、皇子たちに唆された前帝の差し向けた術師が、護明と身と魂を入れ替えて逃亡、その際、術師と入れ替わった護明を、弦耀はそうとは気付かぬまま殺してしまったのだった。以後、弦耀は、復讐のため、目の見えぬ、足に傷を負っているであろう術師をずっと探し続けた。そして、25年ぶりの極陰日、術師は入れ替わりの術を使って、他者の体を奪おうとするはず。玲琳は、弦耀に命を賭して協力を申し出た後、慧月の発言から董が術師ではないかと気付く。慧月は景彰に、玲琳は尭明に宥められた後、二人は本音をぶつけ合って心のすれ違いを修復、玲琳は、術師を捕らえるための策を弦耀に伝えると、極陰日に向けて備えるのだった。洞穴の中で安基に声をかけられた董は、共に凍った湖上を歩き対岸にいる住人たちの方へ。しかし、途中、氷の表面には皇帝の象徴である五本爪の龍を刺した巨大な旗が敷かれていた。董がそれを踏んでしまった直後、爆音が響いて足元の氷が割れ、湖の中に投げ出されてしまう。そして、日食が始まると、住人たちが五家の雛女たちに指導された鎮魂歌を歌い始めた。董は入れ替わりの贄の印である赤い腕紐を見つけるが、気付くと痰壺の中に閉じ込められていた。その後、護明の遺体は陽楽丘の中でもとびきり明るい場所に埋葬された。そして、弦耀とアキムは新たな関係をスタートさせる。しかし、玲琳には異常事態が発生。そして、皇后・黄絹秀は怪しげな動きを見せ始める…… ***特典SS『歌唱指導』は、五家の雛女たちによる住民への鎮魂歌指導時の超短編裏話。そして、『幸か不幸か』は、慧月と玲琳の幼少時の胸を締め付けられるような苦しさや、慧月が他の四家の雛女たちとの初めて対面、「雛宮のどぶネズミ」と呼ばれるに至った経緯、さらには、波瀾万丈の鎮魂祭を終えた後の、慧月と玲琳のより強まった絆等を描いたお話です。次巻は新章に突入、シリーズを通じての謎にも、徐々に迫っていく予定とのこと。やはり鍵を握っているのは、絹秀でしょうか?
2024.11.03
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冒頭「第1章 はじめましてアリシア」は、 港南警察署刑事課鑑識係から本部鑑識課に異動した小川祐介巡査部長が、 警察犬係に配属され、民間警察犬訓練施設でアリシアと出会った頃のお話。 最後は、みなとみらいで起きた爆破事件現場での夏希との遭遇シーンで終了。 第2章「横須賀中央署」からは、秋谷で起こった児童誘拐事件のお話。 横浜科学技術大・依田信康教授の一人息子・信悠(5)が通園バスに乗る直前に誘拐され、 《キメラ》と名乗る者から、県警相談フォームに誘拐した旨のメッセージが届く。 夏希は依田邸の前線本部で、特殊犯捜査係第4班・島津冴美らと共に犯人との接触を試みる。小川やアリシア、江の島署の加藤清文巡査部長、サイバー特捜隊IT担当・五島らの活躍で、依田夫妻と関りがあった神奈川工業大大学院生・本城常雄の居所が判明し、信悠の救出に成功。本城が潜んでいた倉庫が突然爆発するも、アリシアが事前に異常に気付き夏希たちは難を逃れる。そんなアリシアが、信悠を迎えに来た依田夫妻を前にすると、激しく吠え始めた…… ***黒幕については、比較的絞りやすいお話で、多くの読者が、最後の結末も予測できたのではないかと思います。それよりも、第1章のアリシアと小川が出会った頃のお話が、とても良かったです。警察犬について、興味がわきました。
2024.11.03
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