貴方の仮面を身に着けて

貴方の仮面を身に着けて

2010/09/22
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三峰は愕然とした。
「そんな苦労を、お前達に」

風の家の嫡子と認められ、”盾”の宿舎に入れられてからは、飢える事は無くなったが、母の元から着物や宝石を奪った”ゆりかご”の女達の世話を受ける事は、鵲には屈辱以外の何物でもなかった。それでも母の厳命を守り、鵲は何もかも心に仕舞い込み、強くなる事だけを考えていた。強い盾になる事だけが、今の境遇から抜け出す道であると、鵲は信じていた。佐原の村に風の力が復活した時、鵲は村のどの盾よりも強い力を発揮した。人々は「さすが三峰様の御子」と、今度は鵲を褒めそやした。だが鵲は、人の心の表裏を、嫌という程知っていた。常に謙虚で控え目な態度を心がけていた。保名の実家も保名を軽んじなくなった。成長した鵲が、三峰に自分達の仕打ちを告げる事を恐れたのだ。

「辛い日々、私を慰めてくれたのは、風の声でした。山に入れば、風が木の実の在り処を教えてくれました。どんな時も風の力は私の支えでした。でも今の私には、風の声を聞く事は出来ません。私は何もかも失った。強さも心の拠り所も何もかも。なのに生きろという。生きる力を奪っておいて生きろという」
「お前にしか、あの術は施せなかった」
「解っております。すべては当主様の為、お役目の為」
「もし今聞いた事を、あの時に知っていれば・・」
三峰の言葉を鵲は遮った。

「何を言うのだ、私はお前を・・いや、お前の辛さに気づかずにいた私だ、恨まれても仕方あるまい」
鵲は叫んだ。
「勘違いなさらないで下さい。私の個人的な恨みなど、どうでも良いのです」

鵲はその場に平伏した。
「私が明かしてしまった事を、どうか母には言わずにいて下さい。そして母を、母をよろしくお願い致します。どうか母が不自由なく暮せるように、母をお守り下さい」
「解った、出来る限りの事はする」
「父上、いえ・・三峰様。私は甘えを捨てます。貴方の子である甘えを。これからは貴方の手駒のひとつとしてお仕え致します」
「お前は私の子だ」
「いえ、貴方には今から息子はいなくなります。ここにいるのは一人の”盾”」

三峰は立ち上がった。
「お前は、私を父と思わぬというのか」

「私にはその資格はありません。貴方の息子は、こんな弱き者であるはずはない」
重い心を抱いて、三峰は扉の方へ歩き出した。
「少しでもお役に立てるように、風の力なくとも強くなります。竹生様が手解きを約束して下さいました。この命ある限り、敵を倒し、お役目を全うする事だけが道と生きていきます」
何も言わずに、三峰は出て行った。

鵲はしばらく顔を上げなかった。紅い目から涙があふれていた。あふれた涙が、ぽたりぽたりと床を濡らした。


(つづく)





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Last updated  2010/10/05 04:05:47 PM


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龍5777 @ Re:白衣の盾・叫ぶ瞳(3)(03/24) おはようございます。 「この歳で 色香に…
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