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「これが俺が選ばれた理由さ。ずっとお前たちを観察してた。(そして)信用させた。(そして)誰も見抜けなかった。地球では俺は殺人鬼・・・異常者だ。でもモンスターたちと一緒だと、普通なんだよ。居心地がいい・・・ここにいたい」“プレデター”というエイリアンは、これまでの単なる気味の悪いグロテスクな地球外生物というハードルを飛び越え、人間を狩猟する種族で、しかも知的生命体であると定義付けられた。そのせいでプレデターを相手に戦う主人公にも、アーノルド・シュワルツェネッガーのように、筋骨隆々として屈強なアクション・スターが抜擢された。つまり、そんな力強い主役でも、なかなかどうして倒すのに難儀するプレデターという、言わばプレミアみたいなものを付加させたわけだ。その後、「プレデター」はシリーズを重ね、本作「プレデターズ」が公開された。驚いたのは、主人公ロイス役に扮したエイドリアン・ブロディである。この役者さんは、今でこそ37歳という中堅どころにありながら、代表作である「戦場のピアニスト」において、すでにその風格を備えていた。どういう風格かと問われれば、とにかく“知的”で“頭脳明晰”なムードをかもし出している、と答えておこう。そのエイドリアン・ブロディが、削ぎ落とされた肉体美と、類稀なるインテリジェンスでプレデターに立ち向かっていく姿は、実に小気味良かった。なにしろやみくもに戦うのと訳が違う。頭脳戦なのだから。ジャングルの密林地帯のようなところに落下して来た8名は、自分の置かれている立場などが全く分からないまま、とにかくそこから脱出しようと行動に出る。リーダー格のロイス以下、ほとんどが軍人であったり用心棒であったり囚人であったりするが、エドウィンだけは医師だった。皆は脱出するためにジャングルをさまようが、分かったのは、そこが地球ではないことと、自分たちが何者かの狩猟の対象にされているということだった。そんな中、プレデターらの野営地らしき場所で、小型のプレデターが生きたままくくり付けられているのを発見する。本作でチョイ役として登場しているに過ぎないが、ローレンス・フィッシュバーンが出演している。彼は、その風貌からしてベテラン俳優の域に達していると思いきや、まだやっと40代後半にさしかかろうとしている、脂ののり始めた役者さんなのだ。代表作に「マトリックス」シリーズがあり、モーフィアス役として有名である。今回、紅一点のアリシー・ブラガは、イスラエル諜報特務局の女性スナイパーという役柄だが、女性らしい思いやりを忘れない正義感の強いキャラクターとして登場している。物々しい現場にあって、花を添えてくれた存在と言えよう。本作「プレデターズ」は、これまでのグロテスクさ気味悪さから一転、頭脳戦SF・アクションと言ったカラーを強めた作品だった。2010年公開【監督】ニムロッド・アーントル【出演】エイドリアン・ブロディ、アリシー・ブラガ、ローレンス・フィッシュバーンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.28
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「こいつを俺から奪う気でいるなら・・・死ぬ覚悟をしろ」「俺の故郷では・・・“死”の定義は“虚”だ。そうなると・・・俺はずっと前から死んでる」「つまり、ここに死体は3つになるのか」映画とはビジネスである以上、視聴者が期待し、満足するものを作り上げなければならない。無論、それは映画だけではない。例えば伝統的歌舞伎の世界で言うなら、毎回飽きもせず涙を誘うシーンがあったり、観客のお目当ての役者さんが花道から登場しようものなら、「よっ、待ってました!」とか「よっ、成田屋!」などと掛け声が飛び交うのだ。これを世間では“お約束”と呼んでいるが、本作「沈黙の鉄拳」もその伝統的(?)お約束の延長線上にあるのだ。沈黙シリーズは、言わばスティーヴン・セガール独壇場の“お約束”映画と言っても過言ではない。この役者さんが登場して「よっ、セガール待ってました!」という掛け声とともに、バッサバッサと悪役を倒して行く格闘シーンで「よっ、大統領!」みたいな合いの手を入れたくなってしまうから、いよいよ“お約束”であることに間違いはないだろう。さらに、このセガールという役者さんのかもし出す庶民的なムードもあるのだろうが、何やら近所の知ってるオジさんみたいに親しみを感じてしまうのはなぜだろう?妻に絡んで来た二人組のギャングを殺害したという無実の罪で、シェーン・ダニエルズは6年間も刑務所に服役する。その後、冤罪が認められたものの、シェーンは愛する妻から別れの手紙を受け取り、一人身となってしまう。そんな折、パーキングエリアで一服していると、二人の中国人が警官から職務質問をされているところを目撃する。警官が中国人の乗っている車のトランクを開けて見ると、なんとそこには大金の入ったバッグと若い女性が縛られていた。中国人は警官にバレたと知ると発砲し、逃走を試みる。その一部始終を目撃していたシェーンは、元陸軍特殊部隊のメンバーであった腕力を活かし、捕らわれの身の女性ティアを救出するのだった。スティーヴン・セガールという役者さんは、最初の奥さんが日本人であったこともあり、大の親日家で知られている。あのゆったりとしたアクションは、実は本物で、彼は合気道7段の有段者なのだ。その影響で、古神道として名高い大本教の信者であったが、現在はどうやら仏教徒のようだ。【ウィキペディア参照】いずれにしても、セガールのイメージ戦略は大当たりなわけで、いつだって観客の期待を裏切ることなく、アクション・スターとして堂々たる地位に君臨している役者さんなのだ。世間がセガールをどう評価しようと、あのインパクト、存在感は、スターがスターである証拠に間違いはない。2010年公開【監督】キオニ・ワックスマン【出演】スティーヴン・セガールまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.24
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「神様について聞かれたわ」「どう答えたの?」「(神様を)“信じてない”って答えた」「なぜ、そう答えたの?」「神様がいるなら、パパを死なせないもの」この止まらない恐怖感と言ったらない。これは真夏の暑い盛りに観るのがちょうどいい。晩秋の夕暮れ時なんて、間違っても見るものじゃない。観終わった後のどうしようもない恐怖感と、大切なものを全て失ってしまったような喪失感は、なかなか消えるものではなかった。そして、ある一つの命題に行き着く。それは、神の存在理由は悪魔の手から人間を守るためである。つまり、神が存在すれば必ず悪魔もセットで存在するということなのだ。もっと噛み砕いて言えば、神とは人間の科学や、事実としてこの世に明らかにされた光の世界であり、悪魔とは人間の業というものか、憎悪であったり復讐であったりアンダーグラウンドな闇の世界なのだ。それはいつも背中合わせで、お互いが忠実にバランスを保って存在している、摩訶不思議なものなのだ。どうしてそんなことを突然思ったのかと問われれば、本作「シェルター」を観てそう思ったとしか答えようがない。超常現象なんて全く信じていなかった吟遊映人も、なにやらにわかクリスチャンに改宗したくなってしまった。精神分析医のカーラは、同業の父親からデヴィッドと名乗る男の患者を任される。デヴィッドは、電話のコール音に反応し、別人格が現れるという多重人格障害の傾向があった。ところがカーラは、解離性同一性障害を認めていないため、度々父親と意見が衝突する。 そんなある日、デヴィッドのカルテを元に身辺を調査するうち、デヴィッドはすでに25年も前に亡くなっていたことが判明するのだった。主人公のカーラ役に扮するのは、ジュリアン・ムーアであるが、この女優さんは今年50歳とは信じられない美貌だ!代表作の「ハンニバル」では、ジョディ・フォースターに代わりクラリス役を見事に演じ、各界から好評を博した。ボストン大学卒の才女であることがうかがえるインテリなムードは、本作における精神分析医というキャラクターでも、ムリなくマッチしていた。さらに、デヴィッド役のジョナサン・リース=マイヤーズの狂気の沙汰は、とても演技とは思えない鬼気迫るものを感じた。首が直角に折れ曲がってしまうところなんか、「エクソシスト」を彷彿とさせるが、決して過度な演出にならず、作品のおどろおどろしさを際立たせることに成功していた。これから年末に向けて、この作品のレンタルを考えている方にはぜひともご忠告申し上げたい。あったかい部屋で、なるべくご家族と一緒に鑑賞することを。戦慄の恐怖が、あなたを襲うことだろう。2010年公開【監督】モンス・モーリンド【出演】ジュリアン・ムーア、ジョナサン・リース=マイヤーズまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.20
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「コンサートの最後に両親が見つかっても(それでも出演していただけませんか)?」 「何ですって?」「つまり・・・音楽は人を成長させる。答えをくれる。音楽をプレイする前は怖がる。真実を怖がる」「よく分からないわ」ロシア政府のユダヤ人排斥政策による凄惨な事件も、フランス映画にかかれば適度な笑いと皮肉混じりのジョークで、これほどまでにハッピーな作品となるのだ。冒頭の部分からしてうならされた。主人公がいきなり作業着姿の清掃員として登場するのだから。だがその人物の背景と言ったら、ボリショイ交響楽団の元指揮者でマエストロであったとは!映画をおもしろくする掴みの場面は、のっけからこの激しいギャップにより、視聴者の興味をグッと惹き付ける。何でそんな偉大な巨匠が、掃除のオジさんなんてやっているのか?一体、彼(主人公)に何があったのか?この物語は、もしかして陰惨で不幸な歴史を語り出そうとしているのだろうか?様々な思惑が、視聴者の内面を揺るがすに違いない。フランス人というのは、何かしら物事をおもしろがる国民性を持っているようだ。それはもしかしたら、半分は相手を小バカにしているような感も拭えないが、四六時中、深刻面をしていたくはないのだろう。相手の身振り手振り、言葉使いなどを自国のそれと比較し、素直におもしろがるのだ。屈託なく。お腹を抱えて笑ってしまったのは、ボリショイの元楽団員らがパリのホテルに着いた時、列を作ることなく一斉に受付で部屋のキーを奪い合うシーン。あるいは、ギャランティーの前金をよこせと主催者側に詰め寄る、それはまるで赤の広場における労働党大会さながらのシュプレヒコール。そして、空港で闇のビザを次々と発行する手際の良さ。一見、コメディタッチに描かれたこのユニークなシーンの集大成が、明るく陽気な結末へと盛り上げることに成功しているのだ。ロシア・ボリショイにある劇場の清掃員として働くアンドレイは、楽団の元指揮者でありマエストロであった。今やアル中で右手の震えすらある落ちぶれた身となっていた。そんなある日、アンドレイが清掃中に、1枚のファックスが届く。それはなんと、パリのシャトレ劇場からの出演依頼であった。アンドレイは、30年前の中断された公演を復活させるべく、昔の仲間に呼びかけ、ボリショイ交響楽団に成り済まし、パリ公演をもくろむのだった。主人公が30年ぶりにタクトを振ったのは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲であった。魂が天高く舞い上がるがごとく、ソリストのアンヌ=マリーがヴァイオリンを奏でた時、楽団は見事に融合する。この崇高にして華麗なる旋律がシャトレ劇場を包み込む時、映画は核心に迫っていく。 この、定石ながら見事な構成、そして脚本は、フランス映画ならではの上質なものを感じさせる。我々が映画に求めて止まない何かが、この作品には凝縮されている。素晴らしい、とにかくその一言。“ブラボー!”と、映像に熱く声援をおくってしまうのは、吟遊映人だけではないだろう。今年一番のおすすめ映画なのだ。ご参考 作中で使用されている名曲の数々2009年(仏)、2010年(日)公開【監督】ラデュ・ミヘイレアニュ【出演】アレクセイ・グシュコブ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.16
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「(あんたの)ツアー契約はキャンセルよ。あんたの名は忘れられて、ホットな売れっ子はロキシーだもの」「(じゃあ)あたしはどうすればいいの? 彼女にゴマをするの?」「そうよ」「死んでもお断りよ!」本作は言わずと知れたミュージカル映画である。舞台上のミュージカルを、そっくりそのまま(無論、カットされている場面もあるが)映画化したものだ。本作「シカゴ」については、どのような感想を述べたら良いものか、非常に悩むところである。と言うのも、日本においては正にリアルタイムで、死刑か無期懲役刑かという問題で、裁判員裁判のあり方がクローズアップされているからだ。誤解されるといけないのでお断りしておくが、「シカゴ」は死刑裁判の扱いについて問うてる作品ではない。アメリカらしく、陽気で賑やかなものである。だが、そこが盲点となっている。人一人殺しておきながら、敏腕弁護士のプレゼンテーションによって、ものの見事に無罪を勝ち取り、成功していく人物を描いているのだ。殺された男は、確かに不貞を働いた罰を受けねばならない立場であろう。だが、彼には妻がいて五人の子どももいることも事実なのだ!そういう一人の人間を殺しておきながら、加害者が無罪だなんて!そしてそんな加害者が堂々とシカゴを舞台に成功するだなんて、アメリカという国は一体・・・???これでは殺され損という感は否めない。また、そんなストーリーが映画化され、万人に影響を及ぼすかもしれないことを想像すると、実にコワい。バックダンサーのチョイ役でしか出番のなかったロキシー・ハートは、人がいいだけの夫に愛想を尽かし、「シカゴのナイト・クラブのマネージャーとコネがある」という家具屋のセールスマンと肉体関係を持つ。ところが情事の後、「実はマネージャーにコネがあると言ったのは、ロキシーと関係を持つための真っ赤なウソだ」と白状する。激怒したロキシーは、銃で男を射殺してしまうのだった。内容はともかく、出演者らは実に芸達者な役者陣で固められた。とりわけ吟遊映人は、レニー・ゼルウィガーが大好きで、この女優さんが登場してくれただけで、その映画に8割型満足してしまうから不思議だ。この女優さんの代表作に「ブリジット・ジョーンズの日記」があるが、等身大のヒロイン役は実に素晴らしかった。あの泣いているような笑顔が印象的だ。レニーの、ゆるくて力の入らない素朴な演技に満点をあげたいと思う。2002年(米)、2003年(日)公開【監督】ロブ・マーシャル【出演】レニー・ゼルウィガー、リチャード・ギア、キャサリン・ゼタ=ジョーンズまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.08
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「ミス・オルソン、いつからその教団に(所属されているのですか)?」「5年になります。昔は夏には病気がちでした。庭の芝生に座っていると、空にイエス様のお姿が見え、まわりには大勢の子供たち。・・・みんな黒い肌の子です。“お告げ”でした。それで肌の黒い子の世話をシガモで(していました)」これほどまでに有名な作品であるにもかかわらず、吟遊映人は未見であった。わざと見なかったわけではなく、なんとなく機会を逃していたに過ぎないのだが。(一つには、サスペンスものでありながらヒッチコック作品ではなかったこともあるかもしれない)本作は、アガサ・クリスティ原作の「オリエント急行の殺人」を映画化したものであるが、何がスゴイかって、それはもう豪華キャストの顔ぶれだ。アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマン、どの役者さんも主役クラスの達人である。本作において、イングリッド・バーグマンがアカデミー賞助演女優賞を受賞しているが、なるほど、主役を食ってしまう勢いのある演技力であった。そもそも吟遊映人は、ヒッチコック作品の大ファンで、映画に興味を持ち始めたきっかけはそこに始まる。ヒッチコックという人は、とにかく好き嫌いのハッキリした英国人であるから、自分のお眼がねに叶った女優さんは繰り返し起用することで有名だ。その女優さんの一人が、本作にも登場しているイングリッド・バーグマンである。このイングリッド・バーグマンの代表作には、「カサブランカ」や「ガス燈」などがあるが、どれも素晴らしく、演技を超えた演技に魅了尽くされ、吟遊映人などはいまだ「好きな女優さんは?」と訊かれると迷うことなく「イングリッド・バーグマン」と答えている。ハリウッド界において美容整形はごく日常茶飯事的な行為であるにもかかわらず、このイングリッド・バーグマンに限っては、死ぬまで顔をいじらせなかったことで有名なのだ。さらに、被害者の秘書役として登場するアンソニー・パーキンス。この人もヒッチコック作品である「サイコ」において、見事な犯人役を演じ、一躍脚光を浴びた人物である。この役者さんはとにかく異常なまでの異常者役(?)がハマっていて、外見からかもし出される好青年ぶりのせいか、まさかの犯人役と分かった時、余りにもかけ離れたギャップが視聴者の度肝を抜かせるのだ。そんなアンソニー・パーキンスだが、コロンビア大学卒のインテリ俳優であることをお断りしておこう。オリエント急行で旅をしている探偵のエルキュール・ポアロは、鉄道会社の重役をしている友人の好意で、一等寝台車に乗り込むことが出来た。イスタンブールを出発して数日後、バルカン半島は雪に覆われ、列車はやむなく停車する。そんな時、ポアロと同じ一等車に乗るアメリカ人、ラチェント・ロバーツが死体となって発見される。ポアロは、私立探偵としての腕を見込まれて、事件の真相を解明するように依頼されるのだった。列車内における密室殺人トリックみたいなものは、その後どんどん小説やドラマ化され、今では決して珍しいものではなくなった。そのため本作を観た後、若干の時代性を感じないでもないが、それよりもむしろ華やかな役者陣の顔ぶれを楽しんでいただきたい。すでにこの世の人ではない往年のハリウッド・スターが、スクリーンの中ではさり気なく一堂に会しているわけだが、こういう夢の共演は本作に限って実現されたようなものなのだから。奇抜なアクションや、目にも鮮やかなCGに慣らされてしまっている現代人に必要なのは、やはり銀幕のスターが織り成す演技合戦、作品の広がりや幅を楽しむスローなゆとりかもしれない。1974年(英)、1975年(日)公開【監督】シドニー・ルメット【出演】アルバート・フィニー、アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマンまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.04
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「悪い予感がする。どうやら終わりらしい」「(いや)助かるよ」「やっぱり神なんていない。神はいないよ・・・おい、どこへ行く?」「神がいることを証明するのさ」どういうわけか、ニコラス・ケイジという役者さんは、ちょっと一般的ではないセリフを臆面もなく言い、それがちゃんとサマになっているから不思議なのだ。ドラマチックを超えた劇場型の表現を、素晴らしく巧みに言い回す人物である。本作は、凶悪な囚人たちの中に唯一、仮釈放の身となる元軍人のポーがいて、その正義感の強さをこれでもかと言うほどに発揮し、披露してくれるアクション映画なのだ。見どころとしてはやはり、凶悪な囚人たちの個性強すぎるキャラクターぶりであろうか。 例えばそんな彼らのリーダー格とも言えるサイラスは、人生のほとんどを服役しているが、天才的頭脳の持ち主で、博士号を取得している。また、ガーランド・グリーンなる人物は、30人もの連続殺人を犯し、殺害した少女を助手席に乗せドライブしたというのは、もはや伝説となっていた。リーダー格のサイラスでさえグリーンには一目置き、「あんたのファンだ」と言わしめた、ほとんどVIP待遇(?)扱いであった。そんな狂人たちの中、ポーは一体どうやって脱出し、愛する家族のもとへと帰るのか、というストーリーなのだ。元軍人のキャメロン・ポーは、ショット・バーで妻と久しぶりに再会を果たしていた。 ところがチンピラ3人組にからまれ、取っ組み合いの喧嘩になる。そのうちの一人を過って殺害してしまい、このことが原因で過失致死罪で服役することになってしまう。その後、仮釈放が決まったのだが、アラバマ空港までコン・エアーで搬送される途中、サイラスという凶悪囚人たちの脱獄計画に巻き込まれてしまった。サイラス役に扮したのはやっぱりこの人、ジョン・マルコヴィッチである。この役者さんは政治的思想において強烈な鷹派として有名で、そのせいかどうかは分からないが、妙に悪役が多いし、似合っている。一方、グリーン役のスティーヴ・ブシュミ。この人は本作において、30人もの連続殺人犯の役で、厳重な拘束具で固定されてコン・エアーに乗り込んで来たスーパー凶悪囚人であるが、実際には敬虔なクリスチャンで、下積み生活が長く、元々消防士として働く労働者であった。9.11テロの際は、素性を隠し、瓦礫の山の中、黙々と作業をして救出活動を行なった。【ウィキペディア参照】そんな背景を知った上で本作「コン・エアー」を観ると、ラストで凶悪犯のグリーンがカジノで朗らかに笑っている姿に胸を打たれるのである。1997年公開【監督】サイモン・ウェスト【出演】ニコラス・ケイジ、ジョン・マルコヴィッチ、ジョン・キューザックまた見つかった、何が、映画が、誰かと分かち合う感動が。See you next time !(^^)
2010.11.01
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