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部室に顔をだして三日目朝方バイトから帰って眠たい目をこすりながら机に向かい昼過ぎまで掛かりようやく最後まで台本を書き上げた。達成感はない。何とか約束の日までに書き上げた安堵感と眠気が頭の中を占めているだけだ。とりあえず布団に潜り込み夕方まで寝ようと思ったらノックがあり大家さんから呼ばれた「坂口くん、電話よ」彼女からだ。昨日の夜も電話があったらしいが俺はバイトに出かけていた。俺は階段を駆け下り受話器を取る「もしもし、ちょうど良かった。俺も電話しようと思ってたんだ。台本書けたよ」「・・・そうですか」???当然喜んでくれるものだと思っていたら、思いの外彼女の反応が薄い。いや、それどころか彼女の声が硬く低い・・・怒ってる?「もしもし?」確かめるように言うと「お話があります。どこかで会えませんか」「今日は出来た台本もってそっちに行くつもりだったけど・・・」「それなら三時に部室にきていただけませんか」「あ、ああ。いいよ」「じゃあ待ってます」そして電話が切れた。怒ってる・・・確実に怒っている。原因は分からないが、それだけは分かる。いったい何に?この前の由美ちゃんの件はあの後部室の外に連れて行かれてこっぴどく怒られ話が済んでいる。いったい何だろう?すっかり眠気が失せた俺は、とにかく風呂に入り約束の時間が来るのをジリジリと待ちバイクに乗った。三時ちょっと前に大学に到着して部室に行くと彼女が待っていた。俺は彼女の座っているテーブルに近寄り、俯いたままの彼女に台本を差し出した。彼女は差し出された台本を辛い表情で眺めた後「ご苦労様でした」と頭を下げた。「ねえ、どうしたの?なんかおかしいよ」あまりにおかしな彼女の態度に俺は率直に聞くと「おととい木下さんからオキデンに電話がありました」木下から?「クラブを通さずに直接客演の以来はルール違反じゃないかとクレームの電話です」あの野郎・・・「それも、台本の書き直しまでさせるなんてと怒っていたそうです・・・だからこの話は無かった事にして欲しいと・・・」「ちょっと待て。木下には俺から話を通している筈だ。それに俺はそんな話着てないぞ」それで彼女の態度がおかしかったのか。せっかくここまで話が進んでいるのに、これでは彼女らも困るだろう。「嫌な思いさせて悪かったな。木下には俺からもう一度話をしとく。だから気にしないでくれ」そう言って彼女をなだめようとすると「いいえ、それはいいんです・・・それはわたしが無理にあなたに頼んだ事だから・・・でも、みんなに迷惑かけちゃって・・・」消え入りそうな声でつぶやく彼女が痛々しかった。「ちょっと木下に会って来る」怒りで震える声を抑えながら席を立とうとすると「やめてください!」急に彼女が叫んだ「・・・もういいんです・・・もう無理はしないでください」もういいって・・・何が無理だんだ?俺を見据える彼女の表情に辛さが増した。「この一週間・・・ほどんど寝てないんでしょ」何が言いたいんだ?「木下さんが言ってました」あの野郎そんな事まで・・・「そんな事ないって。ちゃんと寝てるよ」「ウソです!・・・顔を見ればわかります」「・・・大丈夫だって。ちょっとは寝不足かも知れないけど大した事ないよ」平気を装おうと思ったが、彼女の厳しい顔に押された俺はつい目を逸らしてしまった。「・・・坂口さん言ったじゃないですか。嫌な事があったら必ず言うって言ったじゃないですか!」「待てよ、別に嫌でやってる訳じゃない」「そんな事して、もし身体壊したらどうするんですか!」「だから話を聞けって!」彼女の怒気に触れ、俺も声が大きくなる。「・・・仕方ないだろ。書くのが遅くなればそれだけ練習が遅くなるんだ。約束をした限りは俺に責任がある。少々の無理はしょうがないさ」「わたしがお願いしたからですか?」彼女の声が震えている。「そうじゃないって」「わたしがお願いしたからって、あなたに無理させてわたしが喜ぶと思っているんですか!]「だから、違うって言ってるだろ!」「そんな事をしてわたしが恩に着るとでも思ってるんですか!」その言葉に何かが切れた「・・・誰が恩にきさせてるんだ?」彼女の顔付が変わった。苛立つ心を抑えようとしていた冷静さが吹き飛び、逆に言葉が氷の様に冷たくなる。怒りと言うより悲しみを凝縮させた物に近かった。「そうか・・・俺はそんな奴だと思われていたのか・・・」ちがう!言葉の綾だ!彼女は俺の事を心配してくれているから怒ってるんだ。心のそこで鉄格子に入った俺が叫んでいるがどうしようも無かった。「・・・俺はお人よしなんだよ。自分でも嫌になるぐらいにな。だから人から頼まれるとなるべくの事をしてやろうと思う。 断ってもどうせ後で、してやれば良かったのにってウジウジ考えるのが嫌だからな。 だから全部自分の為なんだと思うようにしている。誰かに恩を着せようなんて考えた事なんかねえ!」そんな事で言い争っているわけではない。でも言わずにいられなかった。そういう自分を彼女にわかって欲しかった・・・そう言う自分?・・・どんな自分なんだ?「でも・・・初めにお願いしたのはわたしです・・・その為にあなたが無茶をするのを見るのは辛いです・・・」震える唇でようやく紡いだ彼女の言葉に「じゃあ君の喜ぶ顔も見るなってのか?人の楽しみを奪うようなマネすんな!」・・・ほら化けの皮が剥がれた・・・つまるところ、俺はただのエゴイストなんだ。俺は居た堪れなくなり席をたった。茫然とする彼女に「木下の所にいってくる」と言って逃げるように部室を出ると外にオキデンがいた。「おはようございます」いつもの通りの顔で挨拶するが、さっきからここにいた事はわかる。気まずさが先立ったが、その前に謝らないといけない事がある。「オキデン悪かったな。嫌な思いさせちゃって」「え?ああ、気にしてないですよ。わたしノンキだから」そうは言うが迷惑かけた事には変わらない。「木下にはちゃんと話をつけてくる。俺公演に出るから、いや、今度は俺からお願いするよ。いいよな?」オキデンはもったいぶった顔で「ん~ 仕方ありませんね。出演を許可します」「助かるよ」これで全部俺の責任だ。「それじゃあ練習に遅れますから早く行って来てください。・・・紀美も待ってますよ」心にズンと重石がのしかかる。「わかった、行って来る」俺は走り出し、古巣である部室に急いだ。
May 31, 2010
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バイトが終わり、始発の電車に乗る。今繁華街にある喫茶店でバイトをしていて、今日は夜10時から朝の五時までのシフトだった。俺は崩れるようにあいた席に座り、まばたきをした瞬間、今まで地下にいたはずの電車の窓から朝日が差し込んでいた。しかも窓の外は見知らぬ風景。テレポート?と疑ったが、どうやら俺は一瞬の間に寝ていて乗り越したらしい。何やってんだ?俺慌てて向かいのホームに行き登りの電車に乗り、ふとまばたきをした瞬間に地下にいた。普通なら何かの病気を疑う所だが、そうでは無い。それもその筈。俺はここ4日間ろくに寝ていないのだ。4日前、彼女に呼び出され、まさかのドリフト体験させられた時にオキデンに一週間で台本を完成させる事を約束してしまった。オキデンは言った。「無理は言えませんから、一週間ぐらいかかってもいいですよ」いや、十分無理言ってるって。どこぞのブログのなんちゃってエッセイでは無い。わざわざその場まで来て時間を拘束される客に見せる為の一時間程の芝居の台本である。あらすじと登場人物は決まっているとは言え、いままで家族劇など書いた事のない俺にとって、それは足枷でしかない。・・・それを一週間で・・・あの時は一週間なんて遠い未来の様に思えたし、それどころじゃ無かったのでOKしたが、さすがにキツイ。でも約束は約束だ・・・そして、それが原因で擬似テレポート体験をしている。しかし、さすがに限界だ。今日はバイトも休みなので三時ごろまで寝て、起きてからからクラブに顔を出した。「木下はいるか?」「あ、おはようございます。木下さんならまだ来てないっすね」木下は俺の一年下の後輩で現部長だ。「そうか、じゃあ待っとくか」部室に置かれたベンチに座り木下が来るのを待つ「あれ、坂口さん。何しにきはったんですか?」ドアを開けた瞬間に俺の顔を見てそう言うのは後輩のボギャンだ。「おまえな、久しぶりに顔見たんだから、邪魔者を見るように言うな」「えーそんな事ないですよ。坂口さんの顔が見れへんからもう毎日寂しゅうて寂しゅうて」口先だけで言うボギャンに「じゃあ毎日きてやろうか?」「あ、嘘つきました。邪魔ですから来んでください」とシレっと言いやがる「で、今日は何で?」他の同期の奴はたまに部室に来るが、俺は用が無ければ来ない。もうここは俺が必要とされる空間ではないのだ。「T学院の客演で出る事になったんで、一応木下に話通しておこうと思ってな」「え?何でまた坂口さんが」話せば長いと言うか、それを説明するには彼女の事まで出てくる。「この四日ほとんど寝てないの俺に長くなる話をさせるな」「四日って・・・」「台本の書き直ししててな、今週中に書かなきゃならない」そう言った所で部室のドアが開き「あー坂口さんだー」と二回下のサキエちゃんが嬉しそうに入ってきた。「おー サッキエちゃん。お前だけだ俺を歓迎してくれるのは。こっちゃ来い」俺はニコニコしながら近寄って来たサキエちゃんの頭をナデナデする。「エヘヘ お久しぶりです」「ん?ノド乾いてないか?ジュースでも飲むか?」まるで孫に飴玉をやる好々爺の様に財布を出そうとすると「「「エヘヘ お久しぶりです」」」とボギャンら全員が貼り付けたような笑顔で俺に迫ってきた。「お前ら・・・」しかも俺が頭をナデナデしやすいように腰を落としている「よくもジュース一杯の為にそこまで卑屈になれるな」「先輩から受け継がれた我がクラブの伝統ですから」そうイケシャアシャアと言い放つボギャンの口に俺は千円札をねじ込んでやった。その後、部室に来た木下に客演の話をして帰ろうとするとサキエちゃんが「もう帰るんですか?」と聞聞いてくる。すこし後ろ髪を引かれたが「小姑にはなりたくないからな」とニヤリと笑ってやる。引退した身で意見やダメ出しする気もないが、俺の目があるだけで緊張させてしまう。俺は分をわきまえた人のいい隠居ジジイを目指す「また来てくださいね」「ああ、またな」そう言って部室を後にした。
May 29, 2010
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仕事中、時間が空いたので、この前車を止めた土手沿いの道でまたもタバコを吸ってると帰宅途中の小学生がすれ違っていく。しかし、何で子供ってのは、あんなに落ち着きがないのだろう。真っ直ぐ歩けば五分も掛からない道をその三倍の時間をかけて歩いていく。坂道が高確率で必ず走り出し、溝を見ようものなら確実に覗き込む。あっちをふらふら、コッチをふらふら、何もない所でしゃがみこんで何かを見ている。好奇心と言う人類の英知の象徴を無駄に使うなんて、所詮は小学生である。と思ったが、小学生の行動パターンを発見した俺の方が無駄な好奇心を使ってる事に気付き黙ってタバコを吸う事にした。坂道に新一年生と思しき女の子二人組みが現れた。やはり坂道を走っている。一人の子は坂道を下りた所で走るのを止めたが、もう一人は後ろを見ながら走っている。そして俺の車の横を通り過ぎるところで転んだ。お?大丈夫か?と思って見ていると、ゆっくり立ち上がり、俺と目が合った瞬間泣き始めた。子供は人がいると確認した段階で泣き始めるフフフフ、久しぶりに女の子を泣かせちゃったぜ。と懐かしがっている場合では無い。見ると鼻をぶつけたようで血が出ている。俺は車に積んであったウエットティッシュをもって車を降り「大丈夫?」と近寄ると、その姿を確認した女の子が「バンショーコーはってー」と泣きながらすがるような目で言った。「絆創膏ッスか?」何ぶん、怪我したからと言って絆創膏を貼る習慣が無いので持っていない。ウエットティッシュ片手にオロオロする俺。とにかく鼻の頭についている血をウエットティッシュで拭いてやると、かすり傷程度でたいした事はない。「大丈夫。こうやって押さえてたら止まるよ」と押さえてやっていたら、もう一人の女の子が転んだ方のこの膝を指差し「あー ここも血が出ている」と言った。それを見て更に泣く女の子。いや、今まで気付いてなかったんでしょ?とツッコむのも大人気ないので、膝の血を拭いてやり車に戻り何か張る物を探した。あったのは荷物に貼るシール状の荷札・・・まあいいか。ウエットティッシュを荷札で傷を押さえようとして、ああハサミがあったっけ・・・「ちょっと持ってて」持っていた荷札を女の子のおでこにペタンと貼ると「キャハハハハ」と笑い、また泣き出す。うちの娘が小さい頃も泣いてる時にちょっと面白い事をしてやったら同じ様に笑ってたっけ。ハサミを持ってきて荷札を切り、傷を押さえたウエットティッシュを押さえる。だまって見ている女の子にもう一人の子が「大丈夫?」と聞くと、今度は聞かれた方の子が俺に「大丈夫?」と聞いてくる「大丈夫。すぐ直るよ。ほらこれ見てごらん」俺はこの前釘で引っ掛けてた長さ三センチ深さ一mm程の手の平の傷を見せてやる。嫁は縫ってもらえと言うが、面倒くさくて大き目の絆創膏を貼っただけだったがもう直りかけてる。その傷をまじまじと見た後「泣かなかった?」と女の子そう言えば、痛くて泣くと言う感覚はもう忘れてしまったな。痛いから泣くんじゃなくて、どうしていいか分からない自分に泣くんだよな。何か懐かしさをおぼえながら「泣かなかったよ」女の子はそれが不思議らしい。「大人は泣かないの?」「泣くよ」俺はあっさり答える。「でもその傷は心の中にあるから見せられないんだよ」せっかくカッコいい事言っても、しょせん相手は小学生。キョトンがで俺を見ている。「帰ったらお母さんいる?」コクンとうなずく小学生「じゃあ帰ったらすぐにこれ剥がして消毒してもらえよ」と言って俺が立ち上がると「ありがとごじゃいました」とペコリとお辞儀すると、その動きで大きなランドセルがずれて女の子の後頭部に直撃した「あうっ」うめき声を出すが何も無かったかのように歩き出した。そうすると、もう一人の女の子も俺の前にきて「ありがとごじゃいました」と言って同じ様にお辞儀をして、これまたランドセルの直撃を食らう。やはり最近の小学校では、いかにしておじさんから笑いを取るか教えるグループレッスンがあるに違いない。少し足を引きずりながら土手沿いの道をとぼとぼと歩いていく小学生の後姿を見ながら、俺は確信した。
May 25, 2010
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想像してほしい。潮風が香る夕暮れの浜辺「フフフ、捕まえてごらん」と水平線の向こうに沈む夕陽に向かって君が走り出した途端、俺が君の足を蹴手繰りうつ伏せに倒した上、関節取って「捕まえたぞ」ってゴルゴ13並の非常な声で宣言したらどう思う?今の俺の様に世の中の全て信じられなくなったとしても仕方ないだろ?彼女の車から崩れるように下りた俺は彼女に崩壊しそうな心情をぶちまけたが、彼女は知らん顔で「その例えとわたしに何の関係があるんです?わたしはただ怖い車に追いかけられてついスピードを出しすぎた、言うなれば被害者ですよ?」ついスピードを出しただけの被害者があんなサイドブレーキも使わない芸術的なドリフトが出来るか!だいたい君一回抜かされてるでしょ。「主観の相違ですね」ドライブ中の怪しげな微笑が幻だったかと疑りたくなるような顔でトボケる彼女。「坂口さん」そこにオキデンが口を挟んで来た。「そんな事で興奮するより先に興奮する事があるでしょ?」そう言って俺の後ろを指差し「ほら女・子・大」フオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!振り向いたその先にある女子大のあまりの神々しさに、両手の甲で目を遮りながら感嘆する。女子大・・・その中の存在する学生は漏れなく女の子・・・なんかこちら側でさえいい香りがしている気がする。「なにクンクンしてるんですか、やらしい」せっかくの興奮に水を差す彼女「クンクンなんてしてないぞ、変な言いがかりつけるのはヤメテほしいなあ」ヤニ下げた顔を見られないように、校舎にスタスタ歩きながら誤魔化すが「してました。それもやらしい顔で」彼女もスタスタ俺の後ろを付いてきながら追い討ちをかける。「主観の相違って奴だな」とぼけたまま駐車場を横切りキャンパス内に足を踏み入れた。T学院大学 屈指のお嬢様大学だ。そう言えば、見かける学生達の服装がうちのクラブの女子部員と違って華やかな気がする。かくゆう彼女の服も確か何がしかというブランドらしい。何度か彼女に付いて服を見に行ったが、その店の名前を何と読むのかと言う段階で努力を放棄したのでブランドの名前なんか覚えてもいない。だいたい「これ似合います?」なんて聞かれても、可愛けりゃ何でも似合うんだから、どうせならと俺の願望を言うと「あなたの選択肢は丈が短いと胸元が開いているしかないんですか?」と怒られる。じゃあ聞かなきゃいいだろと思うが、それが女心と言う物らしい。そんな女心を刺激しないように、俺は眼球だけ忙しく動かしながらキャンパスの中央にある芝生を横切り部室の前に来た。オキデンがドアの開け俺を招き入れる。建物の端の非常階段の下にあるコンクリート打ちっぱなしの小部屋。その中テーブルに座り、レポート用紙にペンを走らせているとりちゃんがいた。本来長いであろう髪を後ろで結い上げ、エキゾチックな顔立ちをより気高く感じさせている。「おはよう。あら、他の人は?」オキデンが聞くと「あ、おはようございます。まだわたしだけですね」そこまで答えてとりちゃんが俺の存在に気付いた。「今回手伝っていただく事になった坂口さん。とりちゃん知ってるよね」オキデンの紹介に俺も「どうも」と形だけの挨拶をすると、律儀にもとりちゃんは立ち上がり礼をするが、決して友好的な目はしていない。さて、どうしたもんか・・・話したいと言って見たものの、少なくても楽しく歓談できる雰囲気では無い。ふと横を向くと彼女が俺を見ていた。もしかして取り入ってくれるのか?と思ったら「何か飲み物買ってきます。オキデン一緒に行こ」そう言う彼女にとりちゃんが「あ、わたし買ってきます」と席を立とうとするが「いいよ。レポートかいてるんでしょ。それより坂口さんが変な所を嗅ぎまわらない様に見張ってて」ずいぶんな言われようだが、俺はあえて反応を示さない「じゃあこれで買ってきて。俺コーヒーね」財布さからお金を取り出し彼女に渡そうとすると、俺の顔を見ずに小さな声で呟いた。「がんばって」・・・まったく、弱気な顔も見せられない。彼女とオキデンが出て行った後に残されたのは俺ととりちゃんと静寂のみ。「何書いてるの?」別に興味があった訳じゃない。とにかく何か言わなくちゃと思っただけだ。「社会心理学の江藤先生から出された明後日までに提出の課題です」そんなに詳しく言わなくても「課題のレポート」ですむ話だ。律儀というか真面目な性格なんだなとフっと笑い「へー 真面目なんだね」と言うと、走らせていたペンがピタリと止まった。「・・・そうですね。いい加減な事は嫌いです」あちゃー 喧嘩うっちゃたかな。しかし、これで二つの事が分かる。一つは真面目と言われる事にどこか嫌悪感がある事と、もう一つはおれ自身認めてはいないが、人から見ていい加減そうに見える俺にどこか嫌悪感がある事。後者の方については慣れてるし、開き直れるってもんだ。俺はつまらない言葉の駆け引きを放棄して本題に入る「あの台本さ、とりちゃん書いたんだよね」「そうです」「いいの?俺が書き直しても」「構いません」「でも、かなり苦労してかいたんでしょ?」ここでようやく俺を見て言った。「坂口さんが書いた方が面白いですから仕方ありません」「うんうん、真面目ってのも辛いねえ」腕組みして大げさに同意してやるととりちゃんの顔つきが変わった。「うん、俺も真面目だからその辛さ良く分かるよ。面白いから仕方が無い。でもさ、感情は付いてこないよね」人間、怒りを通り越すと、心が冷たく沈み表情がなくなる。そんな顔で俺を見るとりちゃん。「とりちゃん、俺の事嫌い?」「・・・いけませんか?」低く冷たい声だ。「いいよー 俺別にお友達作りに来たわけじゃないから」あくびが出る程のノンキさで答えると「じゃあ、何しにきたんですか」「いい物を作りに来た・・・かな?だから悪いけど書き直させてもらうよ。約束しよう、君がグウの音も出ないぐらい面白い奴を書く」わざわざこれを言う為に何やってんだろ?俺は「・・・わかりました。よろしくお願いします」そう言ってとりちゃんは深く頭を下げた。まったくこの娘はどこまで真面目なんだろ。そう言われると俺の中のハードルが跳ね上がってしまうじゃないか。ノンキそうな顔をしてるが、内心冷や汗かいていると、俺の後ろでドアの開く音がした。彼女達が帰ってきたのかと振り返ると「ヒィーーー!」いきなり悲鳴が聞こえてきて、見た事の無い小さな女の娘が俺を見て「なんで男の人が・・・」と怯えている。その姿が俺のスイッチを入れる「失礼ね、あなた一年生?」「は、はい」俺のカマ姿には定評がある、まあ自慢できる事ではないが「まあ、よく間違えられるんだけどね」「え?・・・女の人?」うむ、素直を少女だ。お兄さん好感持っちゃうぞ「あなた女子大の定義ってしってる?」「え?・・・女子は入る大学?」「そう、女子大にいる学生はすべからく女性なの」「す、すみません。わたし目が悪くって・・・」いや、君の視力に問題は無い「いいのよ、慣れてるから。あなたお名前は?」「あ、三方由美です」「そう、由美ちゃんって言うの・・・じゃあ着替えよっか」「はい?」「練習するなら、まず着替えなくっちゃ、更衣室は・・・」刺すような視線を感じた。とりちゃんを見ると怒りに肩が震えている。ククク・・・笑いがこみ上げてくる。俺ってもしかしてSなのか?しかし、早く止めてくれないと本当に更衣室まで行っちゃうぞ、と思っていたら背後から殺気を感じた。とりちゃんと違い全身を焼き尽くす視線だ。振り返ると彼女が怖い顔で睨んでいた。「ナ・ニ・ヤ・ッ・テ・ル・ン・デ・ス・カ!」「・・・いや、これから一緒に過ごす仲間とコミュニケーションを・・・」「人がせっかく・・・」彼女が絶句した、これは相当ヤバイのでは・・・「ちょっと来てください!」そう言われ部室の外に拉致されそうな俺にオキデンが呟いた「こうなると分かってって・・・坂口さんもしかして・・・M?」いや俺は・・・否定しきれない自分が悲しかった。
May 22, 2010
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俺の握力は50kgぐらいだいや、最近計った事はないが、高校の体力測定の時に60kgはあったので今でもそのぐらいはあるだろうと推測する。だが、今この瞬間だけを言えば確実にリンゴを握りつぶす自信がある。その握力で助手席の窓際についているバーを手形が付くほど握りしめ、両足を床が抜けんばかりに踏みしめる。そしてフロントグラスを貫くほどの視線で前方を見据え、早鐘の様に鳴り響く心臓を鎮める為に大きく深呼吸した。「よし、来い!」「・・・あのー すごく失礼な事されてる気がするんですけど?」運転席で車を出発させようとしている彼女が不満をもらす。「そうか?気のせいだろ」俺はけして失礼な事をしているつもりはない。本気だ。「そんなに構えなくても、わたし事故した事ありません」それはそうかも知れないが、その事故を回避するために死ぬような目に遭って、トラウマを抱える奴がいる事は事実だ。それでも非情にも車は発進する。俺は身を固く身構えたが・・・お?「どうです?わたしの何を見て誤解されたか知れませんけど、安全運転でしょ?」お?お?・・・確かに安全運転だ。周りの車と上手く同調して彼女の運転する車は駅前を抜け、郊外の広い道を進む。まあ、あの時は状況が状況だったし、考えて見れば彼女がいつもあんな運転をするとは思えない。俺は踏ん張っていた足を緩めシートに座り直す。俺だって好き好んで何も無い前方の景色を注視したい訳じゃない。ミニのタイトスカートをはいた彼女が数十センチ横にいるのだ。それならばおのずと見るべき物が決まってくるだろう。俺は身体の緊張を解くと共に鼻の下の緊張も解き彼女の方を見ると、彼女はチラチラとバックミラーを見ている。何だ?後ろを振り返ると、一目で族車と分かる頭の悪そうな車が煽って来ていた。こんな事されたら女の子なら怖くて仕方ないだろう。いったん脇によって先に行かせるべきかと考えていたら、急に反対車線に入り、こちらの車を追い抜いて行った。「バカはいるものだな」と彼女を慰めてやろうと思ったら「チッ」と舌打ちする音が聞こえた・・・?・・・まさか彼女が・・・と彼女を見ようとしたら「コクン」シフトダウンする音。それと共に高級セダンにあるまじき高回転のエンジン音が響き、シートに背中が張り付いた。見る見るさっきの車に追いついていく。前の車もその事に気付き、スピードを上げるが、その差はじりじりと狭まり、ピタリと後ろの付けたかと思うと、今度は彼女が反対車線に出て相手の車と平行させた。俺の中で悪夢がフラッシュバックする。「あぶない!何して・・・」彼女を見て息を呑んだ。後に同期の矢野が「病み上がりの如き白き肌」と評する事になる彼女の白い肌に映えるローズ色で彩られた唇の端が微かにつり上がっている。・・・笑ってる?「・・・紀、紀美さん?」前を見ると川沿いの広い道は数百メーター先でカーブになっていて、このままのスピードでは曲がりきれない。「何やってる!チキン・ランでもするつもりか」「坂口さん」「・・・ブレーキ」「坂口さん」「スピードを落とせ!」「坂口さん」え?誰か俺を呼んでる?チラリと後ろを見るとオキデンが何食わぬ顔で俺を呼んでいた。「あの忘れてたんですけど、台本何時までに書けます?」オキデン状況を考えろ!今そんな事言ってる場合じゃないだろ「でもわたしノンキだから思い出した時に言っとかないと」自分でノンキと言わなくても、この状況を見れば誰でもわかる。「あまり無理は言えませんから、一週間ぐらいでどうですか?」・・・一週間・・・果てしなく遠い未来に思える。「わ、分かった。分かったから黙っててくれ!」「じゃあお願いしますね」と言って後部座席でゆっくりと窓の外の景色を眺めている。まったく、こっちは一週間どころか10分後の未来すら不確定なのにそんな事を言ってるうちにカーブはもうすぐそこまで来ている急に相手の車が後方に下がっていった。ブレーキを踏んだのだ。ダメだ。こんなスピードで曲がりっこない。「ヤバイ!オキデン!何かに掴まれ!」と叫んだ途端彼女が思いっきりブレーキを踏みシフトダウンした。ガクン!フロンに加重が移り、加重の抜けたリアタイヤが滑り出すが、それでもエンジンの回転数は落ちない。ゲッ!ヒールでヒール&トゥしてやがる。車はリアタイヤを滑らしながらカーブに進入し、横を向いたままきれいにクリッピングポイントを通過する・・・ドラフト?・・・俺の動揺と反比例して、車は姿勢を元にもどし何事もなかったかのように走り出した。口をあんぐりと開けたまま彼女を見ると、そこにはいつもの穏やかな彼女がいて「本当に暴走族って迷惑ですね」とさも怖そうに言っている。ツッコむべきか・・・いや、やめておこう。そして少し遅い夏の夜の夢として忘れてしまおう。じゃあなきゃあ、とりちゃんと会って話をする間、帰りに彼女に送ってもらう事を断る理由を考え続けなければならなくなる。
May 19, 2010
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オキデンの容貌を一言で例えると観音様だ。ツルンとした楕円の顔に切れ長の目を半眼にしていつもニコニコしている。その笑顔はどこか中性的で、見ている者を安心させる。それをオキデンに言うと「えー わたしってそんなに色気ないですか?ガンバってフェロモン出してるんですけどねー」と不満なのかどうか分からないニコニコ顔で答えていた。3分ほど前、俺の預かり知らぬ所で俺のスケジュールが決定されていた事を彼女から通告された後に喫茶店に戻ると、そのオキデンがレモンティを両手で飲みながら「なんかお疲れのようですけど、遠くのタバコ屋さんまで行ったんですか」と声を掛けてきた。「ま、まあ、ちょっと遠くまで・・・」遠くなったのは気の方だが、今更それをオキデンに言っても仕方ないし、まず台本と言う目先の問題の方が先だ。俺はオキデンに気になっている事をたずねた。「これ書いたの2回生って聞いたけど、誰なの?」「とりちゃんです」話をした事はないが、去年照明をした時に顔だけは知っている。すごく真面目そうな子だ。「彼女はなんて言っているの?台本を書き直す事」と俺が聞いた時、またたく程の合間オキデンの顔が曇り、またもとのオキデン特有のニコニコ顔で「面白いって言ってました。だから書き直してくださいって」本当にそうなのか?たぶん彼女がこれを書くのに夏休みの多くの時間を費やしたのだろう。本当に自分に書けるのかと言う不安や、話が進まない苛立ちや、そんな色々な思いの上に出来た台本だ。それを「おもしろくない」の一言で他人に書き直されるなんて俺なら嫌だ。オキデンにそう言うと「それは、坂口さんが自信があるからですよ」「俺が鼻持ちなら無い自信家に見えるのは、そうでもしなきゃ不安に押しつぶされそうになるからだ」俺は自信を持って言ってやると「じゃあ実績にします」とニコニコしながら返してくる。「えーと、もしわたしの誕生パーティに坂口さんが呼ばれて、坂口さんがわたしの為に初めてながら頑張ってバースデイケーキを作ってきてくれたとしましょう」「いや、俺ならケーキなんかより甘い二人きりの時間を作る・・・痛てっ!」「はい?」テーブルの下で彼女が俺の脚を小刻みに蹴ってくるとは言えない。「何でもない、それで?」「でも、会場に着くとケーキを作るのが趣味な友達がおいしそうなケーキを持ってきてローソク並べてました。坂口さんなら自分が持ってきたキーキをどうします?」その場で握りつぶす。「そうですよね。どんなに頑張ったかは、そこにあっていい理由にはなりませんからね」それが彼女のプライドか・・・「でも、たった2、3ページしか書いてないんだぞ」と言うとケラケラ笑いながら「猫のシッポと間違えてトラのシッポを踏む人はいませんよ」とともすれば昨日食べた夕食の内容でも話しているようなオキデン俺は少し考えオキデンに「とりちゃんと話出来ないかな?」と切り出すと「いいですよ、もう部室にいる頃ですから、今から行きます?・・・あ、でも・・・」めずらしくオキデンが困ってる「何?何か問題でもある?」「うち女子大ですから・・・」まあ、男が入るのは大いに問題があるか・・・「みんな妬むから、あまり紀美とイチャイチャしないでくださね」ブフォー!!!オキデンの横で彼女が飲んでいたミックスジュースを噴出した。「もう、子供じゃないんだから、慌てて飲むからそうなるのよ」「オキデンが変な事言うからじゃない!」慌てもせずにお絞りでテーブルを拭くオキデンに抗議するが、オキデンはそれを聞かずに「紀美ってしっかりしてそうで結構子供っぽい所あるでしょう?そんな所がいいんですか?」と聞いてくるので「いやー俺は怒られてばっかりだから、ミックスジュースの泡を鼻の頭につけた彼女を見るのは初めてなんスよ」と答えたら、彼女が顔を真っ赤にしてあわてて鼻の頭をハンカチで拭いた。フフ、今日もいい物を見させてもらった。オキデンに感謝しなくてはならない・・・ちょっと待て「オキデンは俺たちの事を知ってて当然だろうけど、他の娘は知ってるの」「もちろん知りません」まあ、そうだろうな。と言う事は・・・とりちゃん達にしてみれば、何の関係も無い奴がしゃしゃり出て来て勝手に台本まで書き直されるって訳か・・・溜息が出てくるが、言い訳も出来ない。考えても仕方ない、とりあえずとりちゃんに会って話をしよう。早速喫茶店を出て、とめてあるバイクの方に行こうとすると「コッチですよ」と彼女が手招きするん?「わたし達車で来てますから一緒に行きましょ、帰りはまた送ってきますから」いつもなら子犬の様にかけて行きたくなるような彼女の笑顔を見て、俺は一歩後退する「・・・車って・・・誰の車で誰が運転するのかな?」「オキデン免許持ってないんだから、わたしの車でわたしが運転するにきまってます。何か問題あります?」いや、問題は無い・・・「問題は無いけど、・・・ちょっとトラウマが・・・」
May 17, 2010
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仕事中、少し時間が空いたので土手沿いの道に車を止めてタバコを吸っていた。午前中の雨も上がり、二日ぶりの日差しがうれしい午後。数十メートル先には土手の上の歩道に続く坂道があり、その向こうの山の上を大きな雲がゆっくりと流れている。あ~仕事したくね~なんて社会人失格な独り言を呟いていると、土手から新一年生と分かる女の子が三人で坂道を降りてきた。断っておくが、俺はロリコンでは無い。確かに、先日息子と一緒にヲタ系のアイテムが置いてあるゲーセンのUFOキャッチャーをした時に、八九寺 真宵の目覚まし時計を執拗に狙ってはいたが、それはキャラ的に興味があるだけでロリ的な意味で興味があるわけでは無い。俺の子供に対する基本姿勢は「こっちから媚を売る気は毛頭ない。どうしても相手してほしいならそっちから擦り寄って来い」だ。しかし、今時分の新一年生は一目で分かる。どうせ大きくなるんだからと、大き目の服を買うもんだからブカブカでスカートなんが昔のヤンキー並みに長い。それでトコトコ歩いてるんだから「君らあれか?動力はゼンマイだろ?その大太鼓のようなランドセルの中にはゼンマイがはいってるんだろ?」と独り言を言いながらニヤニヤ子供を見ていたら、先頭の子が俺と目が合い立ち止まった。ほう、まだ年端も行かないのに不審人物に注意が行くとはなかなかやる。ちなみに不審人物とは俺の事だ。そしてその子は大きく息を吸い込んだと思うと大きな声で「こんにちは!」と俺を恫喝した。おっ!やる気か?言っとくが、俺は立ちはだかる者には、たとえ子供であろうと容赦はしない。俺はやおら車の窓を開けて、土手の向こう岸にまで届くような大きな声で「こんにちは!」と叫び返してやると、ククク、鳩が豆鉄砲を食らった顔してやがる。ザマーミロ、大人を舐めてたら痛い目に会うと言う事を今から教えねばならない。だが、このままでは終わらなかった。俺が勝ち誇った顔で車の窓を閉めようとしたら、後ろにいた小学生2号が同じ様に「こんにちは」と言い、それに続いて小学生三号がトドメとばかりに後に続く。さすがの俺も、何回も大きな声で「こんにちは」はさすがに恥ずかしい・・・そうか・・・これが噂のジェットストリームアタック・・・こいつらがジオン軍の黒い三蓮星だったのか!俺は何とかハッキリとした大きな声で小学生2号3号の攻撃をかわしたが油断は出来ない。黒い三連星がジワジワと俺との距離をつめてくる。さあどう攻めてくると警戒していると俺の車の横に来たときに先頭の小学生1号が急にこちらを向き「ブイッ!」と顔の横でVサインを作った。それに続く2号と3号あれか?最近の小学生はこんな事までグループレッスンをしてるのか?しかし俺も負けてはいられないので、その度に「ブイッ」を返してやったら「なかなか言い勝負だった」とばかりに笑みを返してくるが、こらこら、一応レディなんだから歯茎が出るまで笑うのはどうかと思うぞ。かくして死闘を尽くした戦いは終わり、緊張が解けた午後の土手沿いの道に小鳥達の鳴き声がよみがえる。あ~仕事さぼりて~何も無かったかのように呟いた後、俺は車を走らせ仕事に向かった。
May 12, 2010
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「坂口くーん 電話よー」下宿の大家のおばさんが階段の下から俺を呼ぶ。携帯電話どころかテレフォンカードすら存在しなかった当時、貧乏な俺の部屋には固定電話なんて物はなかったから、用がある時は大家さん宅にかけて取り次いでもらうしかなかった。俺は大家のおばさんからj受話器を受け取る「もしもし?」「よかった。いたんですね」彼女だった。「あれ?どうしたの?」彼女が彼氏に電話をかけて来て「あれ?どうしたの?」もおかしなはなしだが話だが、前記の通り大家さんに取り次いで貰わなければならないので彼女から電話がかかって来る事はめったに無い。もっとも、かかって来てもクラブやらバイトでほとんど下宿にいないののだが。「ええっとですね・・・この場合何て言ったらいいんですかね?」どの場合なのか分からないが、「愛してる」なら人気の少ない暗がりで言ってくれた方が、その後の対処に都合がいいんだが。「い え、真面目な話なんです」俺はいつだって真面目だと何度言えばいいんだ?俺の憤慨を無視して「ええっと・・・」彼女は少し考えて言った「やっぱり この場合・・・おめでとうございます・・・ですかね?」おめでとう・・・?・・・まさか!君のお腹に新しい生命の息吹が!「違います!あなた身に覚えがあるんですか?」クッ!そう言われると、男としてのプライドがひどく傷つく気がする。「それは君がスキを見せないのが悪いんだろ」「何の話ですか!」じゃあ、何なんだ?「坂口さん、今日時間空いてます?」クラブは引退したし、バイトも今日はオフだから開いてるけど「学校は?」「高校なら三年前に卒業したぞ」「・・・まあ、いいです。電話じゃ何なんで、これから会えませんか?」「会う!いや、是非とも会ってください!」コンマ一秒の間断なく、了承のみならず懇願までこなした俺は、バイクに飛び乗り彼女の大学の近くの駅まで向かう。駅の駐輪場にバイクを止め、待ち合わせした喫茶店のドアを開け店内を見渡すと彼女と一緒にオキデンがいた。オキデンはT学院大演劇部の三回生で部長だ。向かい合って座っていた彼女がオキデンの横に座りあいた席を俺に進める。俺は椅子に座りながら「久しぶりだな、オキデン・・・という事はオキデンのお腹・・・」「違います!」怖い顔で俺の挨拶代わりの軽いジョークを最後まで言わさない彼女「お久しぶりです坂口さん。この度はお世話になります」お世話?まあ少しアドバイスはしたが、わざわざお礼を言われるほどではない。「いや、別に気にたいした事してないよ。で、おめでとうって何なの?」「おめでとう?」オキデンが聞き返すと、俺とオキデンの会話を横で聞いてた彼女が急に前に乗り出してきて「あのですね、この前書いていただいた台本・・・あれ採用になりました」・・・・はい?「ですから、書いていただいた台本をそのまま使う事になりました」「ちょっと待て。あれをそのまま使うって言っても初めの方しか書いてないだろ」慌てる俺にオキデンが「はい。それでわたし達が気に入れば続きを書いて貰えるって聞いたもんで」聞いたって誰に?・・・誰にって一人しかいない彼女を見るとあちらの方を向いてとぼけている。さあ、どうしたものか。まさかこの場で彼女を問い詰める訳にも行かない。「あ、ごめんタバコ切らせてたんだ。ちょっと買ってきていい?」「構わないですよ」と言うオキデンの横でそ知らぬ顔をしている彼女に「ねえ、場所が良く分からないから付いて来てくれない?」「わ、分かるんじゃないですか?」目を合わせようともせずに俺の頼みを断る彼女「いやー・・・・分からない事はちゃんと聞いておかなくちゃね!」諦めた彼女は渋々俺の後について店の外に出た「で、どう言う事なのかな?」と聞くと彼女はしかられた子供のように俯き「・・・みんな面白いって言ってくれるから・・・」それでは答えになってない。「だって・・・あなたが書いた物を目の前で褒められるんですよ。もう嬉しくて嬉しくて・・・つい舞い上がっちゃって・・・」・・・・黙っていると、妙に神妙な顔で俺を上目遣いで見ながら「・・・ダメですか?」そんな顔で言われたら、俺の方が意地悪してるような気になってくる。俺は一つ溜息をつき「ダメって言ってるんじゃないよ。ただ、まだ書いても無い物を人に進められるほど俺は自信家じゃないだけだ。もし全部書いて面白くなかったらどうするんだ?」「大丈夫です!わたし自信があります!」「・・・・いや、君に自信があって俺に自信が無かったらしかたないだろ」「じゃあ信じてます」何のてらいも無く俺を見上げる彼女。・・・なんでこの人は、何のためらいも無く俺を信じる事ができるんだろう?でも、そう言われるとその気になっちゃうんだから不思議だ。「・・・分かったよ」彼女は俺の返事に目を輝かせ「ホントですか!」「ああ、女の子の期待には悪魔に魂を売ってでも答えなくちゃね・・・オキデンの為に頑張るよ」「ええ!そっちですか?・・・まあ、それでもいいです」不満を残しつつも納得しようとする彼女の肩を笑いながら叩き「とりあえずオキデンの所にもどろうか?」といい喫茶店に向かおうとすると彼女が「あの、もう一つ言っておく事があるんですけど・・・」今更驚く事なんて無いどろうと喫茶店のドアを開きながら「何?」と軽い気持ちで聞くと「長女の旦那さんって出てきますよね、あれ坂口さんがやってくれるって・・・言っ・ち・ゃっ・た」ガコン! カランカラン俺は自分が開けたドアに頭をぶつけると言う、人生初の快挙を成し遂げた。「・・・あのね」頭に走る激痛を無視して振り返り彼女を見ると、彼女は悪びれたふうも無く。「オキデンとっても期待してましたよ。頑張ってください。オキデンの為に!」と、どちらかと言うと、してやった顔をしている。一体どこでそんな報復を覚えるんだ?きっと付き合ってる奴がロクデモ無い奴に決まっている。いくら俺が彼女の交友関係を嘆こうとも、ベクトルが決まってしまった未来は変わらない。こうして、俺の三ヶ月に及ぶ女の園での激闘が幕を開けた。
May 9, 2010
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え~ 嫁いだ長女が帰ってくるまで読んだか。原因は旦那の浮気。長女の離婚の危機を家族の協力で解決していき、再び旦那の元に帰って行く・・・か・・・「お嬢さん・・・」台本を読み終えた俺は、彼女に声をかけるが彼女はまだソッポを向いたままだ「横顔がステキなお嬢さん」「お尻がステキじゃなくてすみませんね」「いや、君のお尻だってなかなかどうして」なんて言ったら話がややこしくなるので「これ、本気でするつもり?」と、真面目な顔で聞いた「え、ええ。みんなやりたいって」「君は面白いと思う?」「正直、あまり面白くないかな」演じる側と観る側の視点の違いで、演じて面白いのと観て面白いのは別問題だこれが演じる方と観客との大きな溝であり、この溝の存在すら気付かない演じ手が以外に多い「これ書いた娘、初めて書いたんだろ?話を進めていく為だけのセリフの羅列であって、面白みどろこかキャラ設定すら出来ていない」これでは5分もしないうちに客が飽きてしまう。「大体、浮気された娘の家族がワザワザ協力して寄りを戻させるなんてするかな?世の中には尻見ていただけで蹴られちゃう可哀相な奴だっているんだぞ?」「そうですね、いないですよね。彼女の前でよそのお尻真剣に見る人なんてねー」微妙に話が食い違ってるがスルーする。「あらすじなら10秒ですむ話を1時間かけて客に何を見せたいんだ?」「・・・厳しいですね」台本の中身についてと俺の態度、たぶん両方だろう。「じゃあどうすればいいと思います?あ、これを止めると言う選択肢は外してですけど」うむ。俺には、ラーメンしか置いてないラーメン店に入って「麺がなくなっちゃったんですが何にします?あ、帰るって言う選択肢はなしで」に聞こえる。「う~ん」俺は少し考え「俺なら?って事で答えていいのかな」「どうぞ」「まず長女が戻ってきた原因が旦那が浮気したからじゃ無くて、旦那が浮気したと勘違いした事にする」「それでどう変わるんですか?」ゴモットモな質問だ「長女は早とちりでおまけに意地っ張りってキャラにでもすれば、これを中心にコメディーに持っていける。それと旦那は頼りなくてちょっとズレてるけど憎めない奴にした方が客も感情移入しやすいだろ」「フムフム」彼女は俺の言う事にいちいちうなずいている「後は場面場面の会話をどれだけ面白く書くかだろうな。長女の性格がきまってるんだから、それにあわせて次女は真面目で融通が利かない。三女は素直な性格。母親はおっとりとしたタイプがパターンかな」つまり・・・書き直しって事になる。「まあ、俺ならって前提だから参考にはならないだろうけど」そう言う彼女はニコッと笑って「じゃあ参考になるように、ちょっと坂口さんが書いてもらえませんか?」「・・・は?」「参考程度でいいですから」「そんな、すぐに書けったって」「大丈夫です。ノートとシャーペン持ってますから」とバッグを開けて筆記用具を取り出して俺に差し出すが、そんな問題じゃない。俺はホームドラマなんて書いた事がない。しかし、ノートを両手で差し出して「お願いします!」なんて熱心に言われたら、人がいい上に彼女に弱い俺としては、つい受け取ってしまう。「参考程度だからね。期待するなよ」と予防線を張り書き出す。さっき言った登場人物の設定を少しデフォルメして会話に面白みを持たす・・・・・「あのー」「はい?」「言いたい事があるなら言っていいんだぜ」彼女は俺が書いているノートをジーと覗き込んでいるが、経験上けして俺の書く文章を読んでいる訳ではない事が分かる。彼女はちょっと困った顔で「いやーずいぶん個性的な字だなと・・・」「いっそ、ハッキリ言ってくれた方が気が楽なんだけど」「坂口さん・・・字を書くの下手なんですね」中学三年生の高校受験の願書を書かされた時、担任から「長年教師やってるが、こんなに汚い字の願書は初めてだ」と言われた。人生はじめての岐路でさえそう言われるのだから、参考程度の台本を書いてる時なら説明するまでもない。「いいんだよ。神が与えてくださった数々の長所の代償として字が汚いんだから」と言わなければ精神の均衡が取れないぐらいコンプレックスだ。「で、君はそんなに俺が字が下手なのが嬉しいの?」彼女は俺の顔を見ながらニコニコ嬉しそうに笑っている。「そんな訳じゃあないですけど・・・なんだか坂口さんの秘密を知ったようで・・・うれしい・・かな?」俺はちっともうれしくない「嫌ですか?」「別にィ」俺はノートから目も離さず返事をする「俺は謎の多い男だからな、一つぐらい秘密を知られたからと言って何て事ない」「えー 何ですか秘密って?」「俺の秘密の得意技・・・知りたい?」彼女は目をキラキラさせて音が出るほど首を縦に振る。俺はノートから目を離し辺りをうかがうとテーブルに身を乗り出し彼女を手招きする。すると彼女も辺りを見渡し興味津々にゆっくりと顔を近づけてきた。スキあり!俺は顔を近づけてきたテーブル越しの彼女にキスした。目を見開いたまま固まる彼女3秒ほどして唇を離し、再びノ何も無かったかのようにノートに視線を落としながら「上手いもんだろ?」と聞くと「・・・え?・・・は?・・・まあ・・・そうですね・・・」未だに固まったまま虚ろに答える彼女に「だろ?みんなに褒められる」とシレっと言った途端、彼女の眉が釣り上がるフフフ、同じ手は食らわない。俺はさっき蹴られた足を後ろに引き、彼女のキックをスルーす・・・ガッ!「痛てっ!」ご丁寧に、今度は片方の向こう脛を蹴られた。「知りません!」またもソッポを向く彼女ま、まあ。趣旨は変わってしまったが、これで集中して台本が書けるってもんだ。30分ほどかけて初めの10分程度の物を書き上げる。「お嬢さん・・・」ちょっと頬を赤らめコッチを意識しながらも、未だソッポを向いている彼女に離しかける「・・・バラの蕾のような唇のお嬢さん」「トゲばっかりですみませんね」「そこが刺・激・的」なんて言ったら話が進まないのでスルーする。「とりあえず書けたよ。ただし雰囲気が分かる程度だからね」そう言ってノートを手渡すと、彼女は食い入る様に目を通しはじめた。別れ際。「今日はどうもありがとうございます」彼女は深々と頭を下げる。「いいよ。怒られてばっかりだから、たまには役に立たないとね」と答えると彼女は拗ねたように「わたし、いっつも怒ってるみたいじゃないですか。だいたいあなたが悪いんですよ」そりゃあまあそうだ。きっと、いろんな君の顔が見たいんだろう。「じゃあね」真夏よりは少しだけ日が短くなったとはいえ、まだ空に青さが残る夕暮れ時の歩道。俺はポケットに突っ込んでいた手を小さく上げ「俺に出来るのはこれぐらいだけど、頑張って」そう言うと、「ありがとうございます。またアドバイスしてくださいね」彼女は微笑みながら胸元で小さく手を振る。駅に向かいかけた俺は、ふと思い出しもう一度一度彼女を振り返り「一つアドバイス」「何ですか?」不思議そうにたずねる彼女に「キスする時は目を閉じるもんだぞ」サッきっと靴でも飛んで来るものだと思った俺は身をすくめ顔をガードしたが、何も飛んでこないいや、そんな事なら言わなきゃいいんだが、生きるって事はいつも何かに挑戦し続ける事だ。恐る恐る彼女を見ると、困ったような顔で視線だけ横に向け「あれは・・・ノーカウントにします・・・」はい?オフサイドでもしてたか?そして俺に視線を移し「・・・だから・・・もう一度チャレンジしてみてくださいね」照れたような顔でそう言って去って言った。そりゃあチャレンジしろと言うなら何度でもチャレンジしてもいいが・・・そう何度も俺の脛が彼女のキックに耐えられるかどうかが心配だった。
May 6, 2010
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改札口を出て空を見上げると大きな入道雲が横たわっていた。サングラス越しに見る入道雲は細部の陰影がハッキリとして、直視するよりその雄大さが増し、もう9月とは言え、未だ衰えぬ夏の空と相まって何か起こりそうな予感さえする。1980年代後半、四角いサングラス、いわゆる黒メガネが流行り、当時大学4回生の俺もご他聞に漏れずにかけていた。流行りもあるが、俺の目はハッキリ二重で、小さくも無いのに黒目の割合が異常に高く、言ってみれば犬やロバの目に近い。それをたかだか千円程度の小道具で隠せる上にオサレさんになれるなんて貧乏な俺には有難い事この上ない。夏休みが終わり、実家から帰って彼女と会う約束をしたのだが、早速サングラスをかけて出かけた。いつも通り、約束の時間より遅れて彼女が姿を現し、ニコニコしながら俺の方に近づいてきたが、俺の顔を見た途端、彼女が眉をしかめた。?・・・おかしいと思い、彼女を良く見ようとサングラスを取った瞬間彼女の顔がいつもの顔に戻った・・・「あの~紀美さん・・・そんなに似合わないっスか?・・・サングラス」「え?そんな事いってませんよ」いや、顔に出てるって「そうですか?・・・まあ似合いませんね」・・・ああ、貧乏なのがいけないんだ・・・先天的な己の顔の造作の事は棚に上げて、後天的な物につい責任転嫁したがる俺まあ、どっちにしてもヘコんでいると「せっかく優しい目をしているのに、隠したりしたらモッタイないですよ」と言って微笑む彼女が俺のハートをワシ掴みするクッ!またしてやられた。この体勢を崩してからの出足払いが得意な彼女はT学院大の三回生の林紀美さんで・・・まあ、あれだ・・・その・・・なんて言ったらったらいいか・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の「彼女」?・・・・・・クククク・・・・・・・がっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!!と、この前、同期の矢野の前で肺活量の限りを尽くして笑ってやったら、絞め殺されそうになってチアノーゼが出た。いくら「好きな娘の為には命も賭けるぜ!」がモットーの俺でも、こんな事で本当に命が尽きたんじゃやってられない。「で、何?見てもらいたい物って?」昨日電話した時に彼女が、明日会った時に見てもらいたい物があると言っていた。「すみません。時間とらせちゃって」何を言うんだい!君が見てほしいと言うなら俺はロトの妻のように塩の柱になろうが、メドゥーサを見た者のように石になろうが断じて見る。しかし、出きるなら君の白いブラウスの内側とかミニスカートの中を見るぐらいハードルを下げてくれた方がうれしいかな。「え?そっちの方がハードル高くないですか?」なぜだ! 彼女の言葉に俺は激高する「なぜ彼氏が彼女のスカートの中を覗く事がそんなにハードルが高い事なんだ!」街中に響き渡る俺の魂の叫びに通り過ぎる人々が振り返る。「変な事大声で叫ばないでください!」彼女は真っ赤な顔で俺の手を引き近くの喫茶店に俺を引きずり込んだ。店内の少し奥まった場所に連行され、「もう!恥ずかしくて死ぬかと思いました」と不平を言う彼女に「だって急に重大問題を定義するんだもん。それで、見せたい物って?」と悪びれた風もなく聞くと、彼女は思い出したようにバッグからA4サイズの封筒を取り出して俺に渡した。中にはノートが入っていて、開いてみると・・・・自筆で書かれた台本「次の学園祭でうちのクラブでしようかと思ってるお芝居です」去年まで彼女は手伝いをしていただけだが、今の三回生は部長のオキデンだけなのでスタッフとして正式に演劇部に入った。「二年生が書いたんですけど、坂口さんに感想を聞きたいんです」「それはいいけど・・・俺って以外にキツイよ」「厳しくていいです。思った事を言ってください」まあ彼女がそう言うのなら見てもいいが「ここで読んだ方がいい?時間かかるけど」「お願いします」俺は台本を広げ読み出した。どうやら家族劇のようだ。母と次女三女が住む家に、嫁いだ長女が戻ってくる・・・「あのー」俺は文字から目を離し彼女に声を掛けた「はい?」「あんまり見つめないでもらえる?集中出来ないじゃないの」俺が読んでいる間、彼女は両手で頬杖ついて俺を見ている。「いやー 坂口さんの真面目で真剣な顔も新鮮でなかなかいいかなーと」「あのね、俺はいつだって真面目で真剣なの」俺は読んでいた台本を閉じて抗議する「はいはい、分かってますって」全然分かってない。「言っときますけどね、台本なんか読まなくてもね、俺はいつでも真剣な眼差しなんか出きるんです」そう言って、眉間にシワをよせ厳しい表情で一点を見つめて見せる俺の視線の先を目で追う為に振り返った彼女の眼に入ったのは、テーブルを片付けるために前かがみになっているウエイトレスのお姉さんのお尻ガッ!「痛てっ!」ヒールのつま先で俺の向こう脛を蹴る彼女「な・に・を・見・て・る・ん・で・す・か?」・・・だから、下から覗き込むようにニラまれると怖いから止めて「い、いや、俺が見てる物が問題なんじゃなくて、俺が君に見せたい物が問題・・・」「知りません!」そう言って彼女はソッポを向く。ま、まあ趣旨は変わってしまったが、これで台本に集中できるってもんだ。え~ 嫁いだ長女が帰ってくるまで読んだか。 つづく
May 5, 2010
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