映画は王妃の処刑に始まり、王妃の処刑に終わる。最初の処刑は、不貞を働いたと指弾されるアン・ブーリン。しかしこれは濡れ衣で、男子を生めなかったアンに愛想を尽かしたヘンリーが、次なる結婚相手を見つけたから離婚に踏み切ったというのが通説だ。処刑前に彼女は「すぐ仇名がつけられるでしょう ‘首なしアン’ってIsn't it a pity to lose a head like this? Still, they will easily find a nickname for me: among the Queens of England, I shall be "Anne sans tête."」と、まるで先を見越したような事を言う。最後に処刑される王妃は、この時「陛下でなかったら、一言言いたいわ」とヘンリー八世の仕打ちに憤っていた女官キャサリン・ハワード。正義感と倫理観の持ち主のような登場の仕方だが、彼女も権力のそば近くにいる間に変節する。トーマスという恋人がいながら「愛などいらない」とうそぶきヘンリーに近づくが、結局は愛ゆえに身を滅ぼす。