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May 28, 2015
カテゴリ： その他のジャンルの海外小説
みなさん、こんばんは。NHKで放送されている人気海外ドラマ『ダウントン・アビ―』第三シリーズが終わるのを待ちかねたように、スカパーでその次の第四シリーズが放送されるってこれって本当に偶然なのでしょうか？
続きでNHKが放送してくれればいいのに…。
さて、こちらもイギリスのお話です。ただ、昔の話ですのでとんでもない内容が出てきます。
トーイン
The Tain
キアラン・カーソン
赤い表紙にところどころ黒く滲んでいるのは、きっと物語の中で流される多くの血だ。そのような事態になったそもそもの始まりは、コナハト国の王と女王の他愛のない会話だった。「私の方が金持ちよ」「いや、俺の方が」そこでお互いの財産目録を並べると、王には惚れ惚れするような雄牛フィンヴェナハがいたが、女王にはいない。匹敵する雄牛をと意気込む女王は、アルスター国にドン・クアルンゲという褐色の雄牛がいると知り「50頭の雌牛をあげるから1年雄牛貸して」とリクエスト。しかし本当は女王に返すつもりがないとわかって、持ち主は態度を硬化。なら仕方ないと国を挙げて牛争奪に乗り出したのが今回の騒動の始まり。
ちょっと待て。財産持ちの女王が、なぜ他人の財産盗むような真似をする？そもそも他人の財産かっさらったら、フェアな財産比べにならない！だいたい平和的に交渉するという考えは頭っからないのか。だから狩猟民族は怖いのだ。
呪いをかけられてオール男子が戦えないアルスター国大ピンチ！そこで「まだ髭も生えていない」17歳のクー・フリンただ一人が大軍を相手に戦うことになる。うわ、可哀想！いえ、その台詞を言うのはまだ早い。戦う前に女王が「クー・フリンってどんな子？」と知り合いに聞くが、そこで語られる少年時代のエピソードが超人離れしている。なぜか3の倍数で飛んでくる投げ槍・ボール・スティックをのきなみ躱し、王が「豚のあぶり焼き食べたいな」と言えば、豚を調理している男の首と豚を分捕ってくる。交渉の余地なしで行動するパターンが女王とそっくり。いっそのこと、似た者同士で戦ってくれたら周りに迷惑かけずに済んだのに。いやいや、そんな簡単にクライマックスが訪れてたまるものですか。
れっきとした英雄譚なのに、途方もないほら話めいているのは、口承文学であったからだ。合いの手を入れ、音楽を奏でながら話すうちに、物語は読み手を楽しませるため、詩をはさみ、誇張を強めてより劇的になっていったようだ。なお、詩は原文で読んだ方が語呂も視覚もきっと良い。日本語で書き起こすと「首首首」「死体死体死体」とやたら連続して言葉が並び「デトロイト・メタル・シティのクラウザーさんに挑戦しているのか？」と思える文言になってしまうからだ。ただひたすらバトルシーンが続く展開や現代の格闘漫画に通じる表現もあり、並べる書棚のセレクト次第では、意外な読者が獲得できるだろう。
【楽天ブックスならいつでも送料無料】トーイン [ キアラン・カーソン ] 楽天ブックス
続きでNHKが放送してくれればいいのに…。
さて、こちらもイギリスのお話です。ただ、昔の話ですのでとんでもない内容が出てきます。
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The Tain
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赤い表紙にところどころ黒く滲んでいるのは、きっと物語の中で流される多くの血だ。そのような事態になったそもそもの始まりは、コナハト国の王と女王の他愛のない会話だった。「私の方が金持ちよ」「いや、俺の方が」そこでお互いの財産目録を並べると、王には惚れ惚れするような雄牛フィンヴェナハがいたが、女王にはいない。匹敵する雄牛をと意気込む女王は、アルスター国にドン・クアルンゲという褐色の雄牛がいると知り「50頭の雌牛をあげるから1年雄牛貸して」とリクエスト。しかし本当は女王に返すつもりがないとわかって、持ち主は態度を硬化。なら仕方ないと国を挙げて牛争奪に乗り出したのが今回の騒動の始まり。
ちょっと待て。財産持ちの女王が、なぜ他人の財産盗むような真似をする？そもそも他人の財産かっさらったら、フェアな財産比べにならない！だいたい平和的に交渉するという考えは頭っからないのか。だから狩猟民族は怖いのだ。
呪いをかけられてオール男子が戦えないアルスター国大ピンチ！そこで「まだ髭も生えていない」17歳のクー・フリンただ一人が大軍を相手に戦うことになる。うわ、可哀想！いえ、その台詞を言うのはまだ早い。戦う前に女王が「クー・フリンってどんな子？」と知り合いに聞くが、そこで語られる少年時代のエピソードが超人離れしている。なぜか3の倍数で飛んでくる投げ槍・ボール・スティックをのきなみ躱し、王が「豚のあぶり焼き食べたいな」と言えば、豚を調理している男の首と豚を分捕ってくる。交渉の余地なしで行動するパターンが女王とそっくり。いっそのこと、似た者同士で戦ってくれたら周りに迷惑かけずに済んだのに。いやいや、そんな簡単にクライマックスが訪れてたまるものですか。
れっきとした英雄譚なのに、途方もないほら話めいているのは、口承文学であったからだ。合いの手を入れ、音楽を奏でながら話すうちに、物語は読み手を楽しませるため、詩をはさみ、誇張を強めてより劇的になっていったようだ。なお、詩は原文で読んだ方が語呂も視覚もきっと良い。日本語で書き起こすと「首首首」「死体死体死体」とやたら連続して言葉が並び「デトロイト・メタル・シティのクラウザーさんに挑戦しているのか？」と思える文言になってしまうからだ。ただひたすらバトルシーンが続く展開や現代の格闘漫画に通じる表現もあり、並べる書棚のセレクト次第では、意外な読者が獲得できるだろう。
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