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February 21, 2017
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さて今日の作品では世界の5つ星ホテルに泊まり歩くという
私たちからすれば羨ましくてたまらない仕事をしている女性の物語です。


はじまりは5つ星ホテルから
VIAGGIO SOLA/A FIVE STAR LIFE

 ローマ在住の独身女性イレーネは、高級ホテルの覆面調査員。素性を隠して世界各国の5つ星ホテルに滞在しては、サービスの徹底度を事細かくチェックしていた。スイスのグシュタード・パレスホテル、ドイツのホテル・アドロン・ケンピンスキー、中国のザ・プリホテルなどに宿泊しながら、自由気ままな人生で誰もがうらやむ仕事をしていると固く信じていたイレーネ。しかし、ある出来事をきっかけに、仕事、家族、愛、友情といったさまざまなものを見つめ直すようになる。

 添乗員や旅行会社に勤めている友人がよく言われるそうだ。「仕事であちこち行けて、おいしいもの食べられていいわねぇ」「でも実情は違うのよ」と彼等は口を揃えて言う。クライアントの無理難題に答えるために夜ぐっすり眠れなかったり、休みが取れなかったり…。本篇のヒロイン、イレーネも他人が羨む高級ホテルに泊まる身だ。だが彼女が帰ってくる自宅には家具もろくになく、まるで生活臭がない。旅行先の写真でもペタペタ張っているかと思ったがそれもない。家は長く生活する場所、くつろぐ場所ではないのだろう。彼女自身も家庭を持って落ち着きたいタイプではなく、姪との接し方を見ていると「たまに可愛がってればいいけどずっとは無理」というスタンス。恋人アンドレアとの付き合いも「お互いが会いたくなった時に会えばいいじゃない」という放任主義。

 ところがこの関係が崩れる。まずアンドレアの恋人が妊娠して、にわかに父性愛に目覚めたアンドレアは新たな家族も含めたこれからの人生を考えて引っ越しを決意。妹シルビアも、偶に来ては娘達を甘やかし、自分の意見を押し付けがちな姉にチクチクと嫌味を言い出す。姪っ子をホテルに連れ出した時のイレーネの叱り方が、まさに子供のいない人の叱り方でイタかった。いつも叱っていないから加減がわからないし、一方姪も優しい叔母としか見ていないから、ぎくしゃくしてしまう。

 彼女は確かに自分一人で突っ走り気味の所があるが、謝る事を知っているし、決して思いやりのない人ではない。アンドレアと一夜を過ごした事を新恋人に知られてしまって、つい前まで「子供が出来たら自分を構ってくれなくなる…」と嘆いていた事を思えば、あれほど熱心に「貴方達は幸せになれる」と説得するなんて、お人よしもいいところだ。ホテルの良し悪しを決める時はあれほど迷わないイレーネが、自分の人生については「これでいいの?」とあれこれ悩みまくるのが面白さでもあり、完璧ではない彼女の愛すべき点でもある。これで生き方を変えるのか?と思わせてのフェイントエンディングは、うまく監督に転がされた感じ。

 パリのホテル・ドゥ・クリヨンやモロッコのパライス・ナマスカールなど、次々と登場する5つ星ホテルの絢爛ぶりにも目を奪われる。




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最終更新日  April 24, 2019 06:14:45 AM
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