ジョン・オブ・ゴーントが病を押して忠告すべくリチャードを呼び出す。 彼の台詞がまんまイングランド賛歌。 「 This royal throne of kings, this sceptred isle,
This other Eden,- demi-paradise- This fortress built by nature for herself Against infection and the hand of war, This happy breed of men, this little world, This precious stone set in the silver sea, Which serves it in the office of a wall, Or as a moat defensive to a house Against the envy of less happier lands; This blessed plot, this earth, this realm, this England, 歴代の王が守る玉座、王笏が支配する島、そうだ この王国 この土地 ここは軍神マルスの座であり もうひとつのエデン 地上の楽園だ 大自然の女神が築いた島という 砦が疾病を防ぎ戦争の手を追い払う 民はこの幸せを享受する この幸せな世界は銀色の海にはめられた宝石だ 海が防壁の役目を果たし 城を取り囲む壁となり 周辺諸国の敵意から守っている この土地 この王国 このイングランド ここは多くの尊い魂が育んだ国」 そして 「このいとおしい祖国を借金のカタにするとは死ぬとも死にきれん 貸家や農地のように扱うなど許せん!」 とリチャードへの怒りをぶちまける。 リチャードは 「死にぞこないが何を言う」 と軽くあしらい、お付きの者も薄ら笑いを浮かべているが、ジョン・オブ・ゴーントが 「かわいそうに 病んでいるのはお前の方だ」 と言い放ち、皆剣を抜く一触即発の事態に。 ヨーク公デビッド・スーシェとジョン・オブ・ゴーントのパトリック・スチュアートの2ショットは眼福。
譲位のためにリチャードがやって来る。裸足で白い馬に乗り白い衣。キリストをイメージしている。 「まだかしづき方も お辞儀の方法も知らぬ 国王万歳!アーメンは?それも私が言うのか?それならばアーメン 国王万歳!私は王ではないが それでも祈ろう 天が私を王と思うかも なぜ私を呼び出した?」 このあたりから涙目になるリチャードは 新しい王を称える言葉はまるで歌うよう。なのに、決して心からの言葉ではないことがわかる。見えない恨み節がボリングブルックにぐさぐさと突き刺さるのが見えるようだ。 「Give me the cown. Here, cousin - seize the crown. Here, cousin - On this side, my hand; and on that side, thine. Now is this golden crown like a deep well That owes two buckets; filling one another, The emptier ever dancing in the air; The other down, unseen, and full of water. That bucket down and full of tears am I, Drinking my griefs whilst you mount up on high
王冠を巡る長いリチャードの台詞があるので、ボリングブルックとヨーク公はずっと長い間受けの芝居。何度も出てくる台詞 「国王万歳(God Save the King!)」が全然祝い文句に聞こえない。 王冠をもてあそび、最後にはごろごろごろっと床に投げ 「国王万歳!かつての王から送る 王が輝かしい日々を送れますように!」 祝福の言葉を述べる。床に這いつくばるという一番惨めな姿で、次代の王に最大限の敬意を払っているようにも見えるが、王冠の渡し方としては明らかに礼に叶っていない。「お前に渡すなら王冠もこの軽さよ」という生まれながらの王リチャードの矜持が見える。