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November 17, 2018
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みなさん、こんばんは。
横綱稀勢の里がいけませんね。負け続きです。休場してしまいました。


BBCが制作したドラマ「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」を見ています。
オリンピックイヤーにカルチュラル・オリンピックという企画が起こり、それにBBCが応えた形で作られたシリーズです。

日本でも蜷川さんが上演し
フォルスタッフ…吉田鋼太郎さん
ハル王子…松坂桃李さん
のキャスティングでした。


ホロウ・クラウン

ヘンリー4世 PartII
Henry IV - Part II

Executive Producer 
サム・メンデスほか

出演
サイモン・ラッセル・ビール 英国アカデミー賞テレビ部門最優秀助演男優賞
ジェレミー・アイアンズ  トム・ヒドルストン ミシェル・ドッカリー 
ジュリー・ウォルターズ イアン・グレン

監督
リチャード・エア

父ヘンリー四世の軍に参加しホットスパーを倒したハル王子だったが、ロンドンに戻るとフォルスタッフら悪友との関係は昔のまま。そんな折にヘンリー四世が病気で倒れる。ヘンリー四世が死ぬ直前に和解したハル王子は、ヘンリー五世として父の後を継ぐ。ヘンリー五世誕生を知ったフォルスタッフは昔の馴染みとして恩恵を受けようとお祝いに駆けつけるが。


「殿下は異文化の中で他の言語を学んでいるだけ 時が来たら殿下は戻ってきます 人を見極める際の物差しとなる過去の悪さは強みに変わります
My gracious lord, you look beyond him quite. The Prince but studies his companions Like a strange tongue, wherein, to gain the language, 'Tis needful that the most immodest word Be look'd upon and learnt; which once attain'd, Your Highness knows, comes to no further use But to be known and hated. So, like gross terms, The Prince will, in the perfectness of time, Cast off his followers; and their memoryShall as a pattern or a measure live By which his Grace must mete the lives of other, Turning past evils to advantages.」
しかし王の気は晴れない。
「巣をつくった蜂はめったに離れない 腐肉の味を忘れんのだ 'Tis seldom when the bee doth leave her comb In the dead carrion. 」


TLで流れて来た時「単なるサービスショット」 と思ったが実はこの頃ハル王子は友人が「自分の前で自分の事をどう言うか」より「自分がいない時自分の事をどう言うか」を気にしている。この時も「妹と結婚するって言ってるのか?」とポインズに聞いた後長い間を取る。


屋根裏でフォルスタッフがハル王子の事を
「中身はうすっぺら 料理番くらいしかできんA good shallow young fellow: a' would have made a good pantler, a' would ha' chipp'd bread well.」
「王子が奴とつるむのは王子も同類だからさ」
と散々こき下ろしているのを聞いて、いざ、フォルスタッフの前に現れた時。

「お前俺のこと散々言ってくれたよなNot to dispraise me, and call me pantier and
bread-chipper and I know not what?」
と言うと、当然フォルスタッフは弁明する。本気ではないと。好きな女が王子に惚れるのを止めようとしただけで本心は違うんだと。
「ハル 本当に違うんだ 信じてくれ」
そう言ったフォルスタッフを、ハル王子がじーっと見つめる。で、何も言わずに去っていく。
後々の事を考えると、ハル王子がフォルスタッフを見切ろうと決めたのは、この時だったのかも。


マクベスなどシェークスピアにつきものの王と眠りの台詞をヘンリー4世はたったひとり、回廊を彷徨いながら口にする。ここはジェレミー・アイアンズの独壇場です。音楽も聞こえません。
「もっとも貧しい臣民さえ寝静まる時間だ 安らかな眠りよ 大自然の優しい乳母よ 私が怖いのか 瞼の幕を下ろしてくれず五感を忘却に渡してもくれないO sleep! O gentle sleep! Nature's soft nurse, how have I frighted thee, That thou no more wilt weigh my eyelids down, And steep my senses in forgetfulness? 眠りよ なぜあばら屋に眠りは訪れる?居心地の悪い寝どこだろうと 飛び回る蚊の群れも気にしないくせに 香をたいた王の寝室の天蓋付きの寝台に眠りは来ない たとえ優しい調べに包まれていても 愚鈍な眠りの神よ 下品で汚れた寝床には寝る癖に なぜ王の寝台は夜警のように不眠にする?マストで居眠りをする少年水夫でさえ荒波をゆりかごにして眠りで目を閉じる その国は海を揺さぶり大波を立てその大波は怪物のようにうねり使者すら目覚めそうな轟音を立てるというのに 不公平な眠りよ 嵐の中ですら少年水夫に眠りを与えるではないか なのにこの静かなこの飢えなく静かな夜にお前を誘うためにあらゆる手を尽くす王は拒むのか?幸せな平民たちよ ぐっすり眠れ 王冠の頭に安眠は訪れないCan'st thou, O partial sleep! give thy reposeTo the wet sea-boy in an hour so rude; And, in the calmest and most stillest night, With all appliances and means to boot,
Deny it to a king? Then, happy low, lie down!」
王位簒奪の誹りを受け自らも責めずっと眠れなかった王がやっと眠れる時が来たと思ったらそれは永遠の眠り=死だったという。 王冠の重みがわかりますね。

 王が死んだと思って王冠を持って行ってしまうハル王子。
「私が王冠を受け継ぐMy due from thee is this imperial crown, Which, as immediate as thy place and blood, Derives itself to me.」
とっても感動的な場面なのにこの後一波乱が。

「眩暈がする…」とくらくら倒れ息も絶え絶えだったヘンリー4世が王冠がないのに気づくとすたすたやってきて、王座に座るハル王子を引きずり下ろす。理屈で考えたらあり得ない病人なのにジェレミー・アイアンズが長台詞で圧倒する。

マクベスなどシェークスピアにつきものの王と眠りの台詞をヘンリー4世は回廊を彷徨い「王冠の頭に安眠は訪れない」と結ぶ。王位簒奪の誹りを受け自らも責めずっと眠れなかった王がやっと眠れる時が来たと思ったらそれは永遠の眠り=死だった。

父から子への遺言「覚えておけ 反抗的な連中は海外遠征に送れ 国外に注意を逸らせば過去の恨みは忘れる」国内の不満を解消する策として外に眼を向けさせる外交政策は現代にも通じる。「ヘンリアド」の中で唯一平和裏に王権が譲られるペア。

まだヘンリー4世の死を知らないフォルスタッフが「友達の事ネタに王子に話したら王子顔をくしゃくしゃにして笑うぞ」と言うシーンの後に感情を消したハル王子が着々とヘンリー5世の顔になっていくカットを続ける。ああこれはすっごい意地悪だなぁ。

PartIに比べてドラマが少ないと言われるPartIIですが、どうしてどうして、一番濃かったフォルスタッフとハル王子の仲が少しずつ来るべき別れに向かってゆく、かなりドラマティックな回。
PartIはいぎたなく寝ているフォルスタッフに「お前が時間なんか気にするのか?」と笑うハル王子から始まった。戴冠式にあの時の面影はない。ラストカットはヘンリー5世でなく茫然としたフォルスタッフの顔。二人で始まり二人で終わる二人のドラマ。


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最終更新日  January 6, 2020 09:42:06 PM
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