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May 30, 2020
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みなさん、こんばんは。昨日昼頃ブルーインパルスが都内を飛びました。御覧になった方はいらっしゃいますか?私は在宅勤務だったのでばっちり見えましたよ。

ドラマ パトリック・メルローズ を見ました。

パトリック・メルローズ
Patrick Melrose

英作家エドワード・セント・オービンの半自叙伝。のほか、英エンパイア誌「2018年上半期ドラマランキング」でベストドラマに選出。


第76回ゴールデン・グローブ賞 主演男優賞ノミネート
リミテッドシリーズ/テレビムービー部門

BAFTA主演男優賞:ベネディクト・カンバーバッチ


他の出演者
ヒューゴ・ウィービング ジェニファー・ジェーソン・リー ホリデイ・グレインジャー
ブライス・ダナー

第一話"Bad News"
1982年7月。ロンドンで暮らすパトリックの元に父の訃報が届く。突然の報せに動揺しながらも、父の遺体が安置されるニューヨークへと急行した彼は、道中で酒とドラッグを過剰に摂取する。意識が朦朧としながら父の火葬に立ち会い、ニューヨークで更なる酒とドラッグを求め街をさまよったパトリックは、“目当ての品”を携え高級ホテルの一室に籠る。彼の心は幼少期のトラウマに支配されていた。

真っ暗な中で電話の音が響く。そしてゆっくり男性の上半身が映る。まだ顔は映らない。
「残念だが悪い知らせがあるんだ。 聞こえるか?今NYにいる 遅れて聞こえるのか 聞こえるのか?お父さんのことだ」
パトリック「ちゃんと聞こえてるよ」
「一昨日の夜ホテルの部屋で亡くなった ショックだよな」
「まあ そんな感じかな」
「私も同じ気持ちだ 彼が大好きだったからね そりゃ扱いづらいところもあったが」

「お父さんか?マディソン街で人気の葬儀社だ」
ここでパトリックの正面が映る。
「“一級品以外は必要ない”という男だったからな 対面して遺灰を持ち帰りたければ 忙しいのか?」
「大丈夫」
「じゃキー倶楽部で落ち合ってジョージと一緒にお父さんの人生に乾杯しよう じゃあな こんな連絡で私も辛い」

ゆっくりと笑みが浮かぶパトリック。
うすぼんやりとした少年と父親の足。

パトリック「老いぼれが死んだ」抱きしめる女性。
タイトル。London1982JULY

デビー「最後の様子は?」
パトリック「嬉しすぎて聞くの忘れた いや 悲しすぎて 髪いじるのやめてくれる?酒がほしい しこたま飲むぞ 祝い酒だ」
「外で少し飲むか予定通りグレゴリーの家のディナーに行く?」
「のんきに食事できるかな ごめん腹が立って」
「お父様とは複雑だったものね」
「ヘロイン打ったのに」
「それって賢明?」
「そんなわけない」
「私ね 思ったの 生き方を変えるいい機会じゃない?」
「“今を生きろ”とか聞きたくない」
「父親と同じ生き方やめたら?」
「いや 死人の分まで頑張る デビー 当たってごめん」
「いいから行かないで ベッドに来てよ どこかで聞いたことがあるの 不幸があると性欲が湧くって 本当だと思う?」

ジュリア「冗談でしょ お母さまの様子は?」
「チャドで慈善活動中 連絡がつかない」
「思いやりの人ね」
「ほんと それは?」
「精神安定剤」
「ありがたい 薬を断とうと思う 無理?」
「前も試した そうね 今度は失敗しない?施設に入る人じゃないし薬が大好きでしょ 本気で断つのはどん底に落ちた時 そうはならない」
「いや 今回はやめる」
「じゃ頑張って」
「まずはコカインとヘロインから 乳離れのためにもう一錠」
「あれが最後 誤解して欲しくないけど遺産が入った?」
「いや 金持ちは健康な母のほうでね」

「そして今日も太陽は昇る “今を生きるぞ!”」
薬を棄てまくるパトリック。
「とはいえ空の旅はすごくストレスなんだよな」

空港
ジョニー「通りで薬を買うなよ」
「通り以外でも買わないよ ジョニー 君は好きにしろ 僕は今こそしゃきっとする 人生最大の事件をちゃんと見届けるんだ」
「その決断力が羨ましい」
「君には世話になりっぱなしだ」
「二日後の君は別人?」
「生まれ変わるよ」

パトリック一人語り「元気だそうぜ 旅の目的は?父親の遺体とご対面だ 薬が切れてきた 少々いらついてきた 耐えろ とにかく耐えろ」
渋滞でイライラしてきたパトリック。
「いつものスイート それとご伝言」
「母より メッセージなし」
くしゃっと握りつぶして「実に雄弁」
「誘惑に駆られるよ」

「異国の宿での禁断症状は体験済み 妄想 痙攣 自殺の衝動 でもこれが最後だ 断言できる?今回ばかりは違う ここで一気にやり遂げる 新たな始まり 考えなきゃいいんだ だがそれは無理だ 欲しがる衝動は抑えられない」

街で薬を買いに行くパトリック。
「ヘロイン買う?コカインも」
「邪魔すんなって」
「水で流し込まないと明日も来なよ」

葬儀会社に来たパトリック
「遺体に会いに来たんだが 水もらえます?大きな錠剤を呑んで 唾液が デヴィッド・メルローズの遺体は?」

ところがドアを開けるとパーティのようだ。
「ハーマンのお友達?」
「一体どうなってんだよ!」
別人の葬儀だった。

パトリック 「他人の死体だっったぞWrong fucking corpse!」
葬儀会社の女性「確かです?やり直しだOh are you sure?」
「変わり果てた姿とはいえユダヤ人はないDeath transforms us all, but it's not so powerful as to turn my father into a small jew. Try again!」
「ですがパーティは一件だけで」
「パーティじゃなくてメルローズと対面に来た」

「どうも 悪いことしたね」
「今は取り乱して当然」
「後で遺灰を取りに来る もっと急げない?」
「私は席を外しますので」

「どうした どうした ちゃんとやれ」
ドアを開ける。

今度は本物だ。
「棺に入ってなにやってる」
こわごわ顔を触るパトリック。
「これは何だ?You didn't want to go, did you? You knew you were going to die and you were right. What did that feel like? Pain or rage? Were you scared? Christ, I hope so!逝きたくなかったろ?自分が死ぬとわかってた 何を感じた?苦痛?怒り?い恐ろしかった?そうならいい気味だ」
「だめだ だめだ」
棺を何度も殴るパトリック。
「父さんは悲しい男だったよな 僕まで悲しませる気だな そうはいくかYou were so fucking sad, Dad, man. And now you're trying to make me sad too. Boo hoo!Well bad luck.」
部屋を出るパトリック。

過去が戻る
「あら パトリック どうした?震えてる 何かあったの?お母さんに言おうか?待ってて すぐ戻る」
現実のアンが現れる。
「楽しそう」
「抗生物質だよ」
「朝から晩酌でしょ 私も マティーニ」
「安置所は父にぴったり」
「窯で他人のが混じるのよ」
「小さい頃父と外食に出ると必ず3回は店をかえた 一度なんかクラレットの瓶を逆さにして中身を床に出し“よくも私にこんなごみを出したな”」
「もう文句は言えない」
「棺の中で起き上がってるのを期待してた”これが棺だと?ここのサービスはなっとらん”実際なってなくて遺体を間違えた 僕の中に父の残骸はあるが遺体に辿りつけないとはね 良かったよ アン 親しい人に敢えて」
「彼は複雑な人だったからあなたに会って」
眠気が出て来るパトリック。
「鎮痛剤がきた 時差ボケがきちゃって」
「横になる?」
「大したことない 抗生物質だよ」
立ち上がるがふらふらしているパトリック。
「まいったな これでよし」
「一体何してたの?座って 落ち着かないわ」
「よく言われる」
「謝りたかったの あなたを階段で見た時」
「これはまずいぞ すぐさま脱出しろ
「もういいんだ ウェイターは?」
「あなたは苦しんでた お母さんもね 嫌な空気が流れてた 私が何かすればI Should Done More」
「ごめん もう行かないと」
「会ったばかりよ」
「17時に弁護士の所で書類にサインを 手続き関係は面倒だけど仕方ないよね 昔から優しくしてくれたね 本当に感謝してる でもほんともう行かないと」
慌ただしくアンから去るパトリック。

レストランで飲みまくるパトリック。
「アカバを攻略した お変わりとサーモンタルタル タルタルステーキ タルタルは辛目で ワインリストも」
レストランのウェイター「後からお連れ様が?Will anyone be joining you? 」
パトリック「Fucking hell, I hope not!いや 勘弁だね 一級品以外は必要ない よし覚せい剤が聞いて全て順調 ヘロインが恋しい ヘロインを断ち 時差ボケで鎮静剤と覚せい剤をやると食欲を失う だが私は職への情熱から食べるのだ 黙れよ 君じゃない」
レストランのウェイター「デザートはいかが? Would sir care for a dessert?」
パトリック「“いかが”?休日に訪ねて機嫌を伺えと? Care for it? How do you care for a dessert? Feed it? Visit it on Sundays?クレームブリュレとマールを でもヘロインなしじゃ愛を失ったも同然 電話一本でオーケー 黙れっての!」
レストランのウェイタ「問題でも?Is everything alright?」
パトリック「そう聞くがこの世の中に問題のない奴がHow can everything be alright? It's simply too much to hope for.」
「苦情が出ておりますIt's just that there've been some complaints.」
「頭の中の声が漏れて?You mean the voices aren't just in my head?じゃあそろそろ 電話代の小銭をくれる?よし 決めた 彼が電話に出たら眠れる分だけ買おう 賢明だ555の1726」
留守電になる。
「運なんかくそくらえ」電話器をぶつけるパトリック。車の中で苦しそうな表情を浮かべる。

「着いたよ ここは危ない所だ」 
「ここで待ってて」
「冗談だろ」
タクシーは行ってしまう。

パトリック「ただのイギリス人」
マーク「連れてってやる」
「やめろ そいつを刺すな 頼むから刺すな」
「俺はマーク」
「ではマーク 刺さないでくれてありがとう」 
「ウィリー夫人は元気?」
ウィリー「ベイビー帰ったよ お土産だ」
「自転車の空気入れ?トイレを借りるよ」
「仕切り直しだ 頼む ピエール ピエール 君なのか ロンドンのパトリックだ 眠れなくて」
「20分後に」

ピエール「調子は?」
パトリック「最悪だよ」 
「それで彼はどんな人だった?」
「人から愛される素晴らしい男でね 芸術の才能があり首相にもなれた」
「政治家か?」
「いや そうじゃない 父の基準では首相になるより“首相の器”が上 実際なろうと努力するのは下品な野心家 存在が残念」
「彼がいなきゃ君もいない」
「それでもかまわない 断とうとしてたのに」
「次はヘロインを打つんだ」

「私は各地を巡った ハルツームでは若い母親に勧められた 私は決して上品ぶったりなどせず 三皿目を頼んだ 人肉ですか?昔から変な子でしたからね 特別コースには天然コカインにヘロインをのせた それを考えるな 乳母は口が堅いけど裏話に事欠かないものよ “頼むからやめてくれ” さあ 静寂に身を任すんだ 仏塔を思い浮かべて 見えた?美しいだろ 先生美しいです その中に入るんだ 何がある?お父さんとお母さんがいるよ 母さんと父さんがいる お母さんの所へ行って”愛してる”と言うんだ 抱きしめて お父さんの所へ行って”あんたは許せない”と 銃で彼の頭を撃て 今日のことを母親か誰かに一言でも話せば真っ二つに切り裂いてやる」

井戸の上に立つ少年時代のパトリック。電話が鳴る。
母「パトリック 報せを受けた 言葉がない」 
母かと思ったらデビーからの電話だった。
デビー「暇そうな声ね もしかして起こした?やだ ごめん ごめん 時差ボケで起きてるかと 今ホテル?私ね 心配で眠れなかったの」
「薬の心配?You mean have I taken any drugs?」
「何よ やったの?No. Not just that. Why? Have you?」
「“コカインとヘロインを一晩中”は数に入る?Well, I've been shooting cocaine and heroin all night. Does that count?」
「それって賢明? Was that a good idea?」
「 またそれを聞く?賢明なわけないだろIn the future, can we agree that, no, it is not a good idea?」
「今度こそ変われると思ったのに」
「僕もね でも違うらしい」
「一人はだめ ディナーをセッティングした」
「今は誰かとディナーって状況じゃないよ 気分的に無理」
「あなたを気遣ってくれる人 マリアンヌよ」 
「マリアンヌ?」
「あなた 彼女の家で失神した 忘れた?19時以降よ 住所は送る」
「ディナーは考えとく」
「忘れないで あなたを愛してるわ」

「あなたに会えて嬉しいわ」
「理解ある人に会えて嬉しいわ」
「氷がない なってないな 何もかもだめ めちゃくちゃだEverything's wrong! Everything's hopelessly FUCKED UP!」 
怒り出すパトリック。
廊下に出てメイドに頼む。
「おいしい氷を頂けますかね?」
風呂の水が出しっぱなしだった。熱湯で火傷をするパトリック。
「僕の腕じゃない」
酒を飲みながらバスタブに沈むパトリック。

眼帯をして薬を持つパトリック。
「備えあれば憂いなし」

「父親に似て時間に正確 自慢の息子だ」
ニコラス「残念だ さぞつらかろう 目をどうした 女か?今後は私が説教を」
「君 ブルショットを3つ バランタインも呼んだ 退屈な男だがな」
「おそろいですね」
「バランタインだ」
バランタイン「ジョージの話では偉大な英国紳士だったようだ」
「何を吹き込んだ?」
「非凡な人だったと」
「妥協はしない “努力は下品だ” ”女性を蔑めお前の母親は特に”」
「無礼な口調を嫌がる人もいる 喧嘩腰で話すなと注意したよ」
「皆忠実な猟犬」
「パトリックやめなさい」
「野生の猪は危険でしょ 狩りの最中一人が犬にかまれて狂犬病に 病院が遠いんで仲間の判事はのたうち回る彼を吊るしておいた ランタンの灯り しつけのいい使用人 だが叫び声で楽しめやしない そこで私は立ち上がり銃を手に狂犬病の男の所へ行き銃を撃った 慈悲深い行為だ 皆納得した それが私と医学とのなれそめだ」
父親の映像とカットバック。
トイレで盛大に吐くパトリック。
「個室を使いたまえ」
「しまった 遺灰を忘れてた くそっ」

「父を置いて帰れない デヴィッド・メルローズの遺灰だ」
「さて マリアンヌだ 手元にはヘロイン 鎮静剤はムード作りで彼女に さすが そして帰国 ジョニーが出迎えて さてどうなるかな」
「マリアンヌの友人のパトリックです」 
「ナンシーよ 以前お会いした お待ちかねよ」
「パトリックよ マリアンヌのボーイフレンド」
「立派な方だったと聞いた」
「違う意見もあります」
「愛情表現がへただったのよ」
「無情は愛情の逆」

マリアンヌが来る。「お父様のこと残念ね」
「僕の救世主 君がいれば薬はやらない」
思わずパトリックはマリアンヌに抱き着く。
「あら」
「一緒にやるのもいい」
「食事に行こう いい?」

「もちろんさ アルメニア料理は大好き」
マリアンヌ「コートで熱くない?」
「暑苦しいと言うなら」
「少しね」
「脱ごうかな ついでに眼帯も やめとこう」
「飲まない」
「すごく嫌な予感」
「お酒で感覚が鈍るでしょ」
「だから何?僕も普段は飲まないけど悲しくて ふざけてないで気の利いたこと言えよ デビーがよろしくと 違うよ バカ」
「優しい子よね 彼女元気?」
「すごくいい子だよ 支えになってくれて 話題を変えろ 法律を学んでる?」
「そう コロンビア大でね 大変だけど楽しいわ」
「理路整然と語り間違いを正す姿は僕も憧れた」
「弁護士に向いてる 目指せばいいのに」
「努力は下品だから」
「本気で言ってる?」
「いや 父の言葉なんだ」
「あなたはいい教育を受けてる」
「ありがとう その」
「それにお父さんとは違う」
「君の言う通りだ やる気がわいてきたぞ 帰国したら僕は変わる 弁護士になるぞ!」
「それ大丈夫?」
「手荷物で」
「違うの 下に置いて」
「そうだね 蹴飛ばしてもらおう 恨みを晴らそうぞ 死んでも罪は償わせないと」
「何の罪?」
「ちょっと失礼」

戻って来た時は明らかにとろんとした目つきのパトリック。
「何で食べないの?」
「マティーニは最高だよ 」
「“親は意図せずとも子をだめにする”They fuck you up, your mom and your dad. They don't mean to but they do.」
「“意図せず“だって?Who says they don't mean to?」
「気持ちを伝えたことある?Tell me, did you ever tell your dad what you felt about him?」
「生前はない それでよかったNot while he was alive. Probably for the best.」
「 でもなんて言いたかった?What would you have said to him?」
「こう言ったかな 人にそんなことをするべきじゃ I would have said... I would have told him... "Nobody should do that to anyone else."」
ウェイターが飲み物を持ってくる。
「どうも」
「真面目に答えてごめん」
「いいのよ 聴くわ」
「その いいんだ」諦めた表情のパトリック。
「私もう帰らなきゃ」
「だめだよ マリアンヌ 僕らは気が合うよね」
「そうねあなたを好きだし デビーも」
「鎮静剤欲しくない?」

店を出るマリアンヌ
「ごめん 酔っちゃって」
マリアンヌ「仕方ないわ タクシー!おやすみ」
「そうだね おやすみ 時々思うんだよね 僕に意見できる賢い女性と出会えたら軌道修正できるかも」
「やめて みっともないわよ」
「頼むよ 行かないで 誰かといないと」
「離して 自堕落なクズ どうかしてる」
「バカだよね 待って 一人になりたくない 一緒にいるだけでいい 一人にしないで」
「一人じゃない 出して」
車が出ていく。
「彼女の言う通りお前は一人じゃない 決して一人にはならない 死と破壊 恥辱と暴力 どうにもならない恥辱と暴力 あっち行けよ!」
遺灰の入った箱を壊そうとするが頑丈で壊れない。
「便所に流してワニのいる下水に送ってやる なんでだよ!I'm going to flush you down the loo! Send you to sewers with the alligators and the shit!HOW?」
窓を叩くパトリック。だが防音で声は聞こえない。
「飛び降りられないならなぜ窓がある?What's the point of a fucking window if you can't throw yourself out of it?」
少年のパトリックと大人のパトリックのクロスカット。
「死にたい 死にたいI want to die... I want to die..」
「飛ぶ以外に方法はあるだろ 違う パトリック ここなら安全 見つからない 誰も探せなかったら?」

父デヴィッド「まったくひどいごみ溜めだ 私も落ちぶれたもんだ お前の母さんは喜ぶ 報告を受けた時の顔が目に浮かぶよ 母さんに報告するか?父さんは疲れてるんだ ここへきて話してくれ パトリック 大好きな父さんの所へ来い」
ベッドの下で震えている大人のパトリック。
そしてまた薬へ。
「いいから さっさとやって 終わらせろ 母さん?」

少年時代の思い出
「パトリック 起こしてごめんね」
「僕たちもう行くの?」
母親の返事は聞こえない。
今のパトリックの独白。「僕は本当に行きたかった」

浴槽で爆睡するパトリック。ゆっくりと持ち上がる手。部屋はめちゃめちゃだ。
「“そして今日も変わらず太陽は昇る”」

クスリをすりつぶすパトリック。「人生はクソの詰まった鞄 しかも穴が開いてるLife's not just a bag of shit, but a leaky one. You can't help but be touched by it.どう思う?」
ボーイ「誰もがそう感じております」
「“血の川が流れると悪人どもは溺れ高き所も飲み込まれ橋は押し流される そして人々は言う「世界の終わりが来た」と“」「それは間違いない まさにその通りだ」

ホテルマンに「おいたが過ぎたみたいだね エンジョイどころか大満足だよ」
遺灰を忘れていたと告げられるパトリック。
「ジョニー 聞こえる?昨夜自殺しかけたけど」
「何?今どこだ」
「どん底 くすりを断つよ まともに生きる」
「ああ いいことだができるのか?」
「もちろん 世間でいうより簡単だよ」
「ヤクを断ち何をする?聞いてるのか?」
泣き出すパトリック。

「親は意図せずとも子をだめにする」というマリアンヌの言葉に触発されて抱えてきた秘密の一端を打ち明けそうになるパトリックだがウェイターが飲み物を持ってきたことで勢いが削がれ寂しそうに笑う。パトリックがいつ誰に秘密を打ち明けるかも物語のポイント。

起きている時はクスリをやってるか飲んでるかのベネディクト・カンバーバッチ。懐には札束ごっそりで見るからにいいカモ。回想に登場する父との間に漂うただならぬ緊張感と旧友たちが誉めそやす“個性的だけどいい人”評とのギャップ。信長の上を行く遺灰プレイ披露。

第二話"Never Mind"
1967年9月、フランス ラコスト南仏。9歳のパトリックは、夫婦関係の冷め切った冷酷でサディスティックな父デヴィッドとアルコール依存症の母エレノアと共に、気まずい空気が張りつめた別荘で夏の終わりを過ごしていた。そんなある日、デヴィッドの親しい友人を招いての夕食会が開かれることになる。その夜はパトリックにとって生涯忘れることのないショッキングな出来事が起きる日でもあった…。

OPはピアノの音。弾いているのはデヴィッド。食器のような音がする。
「パトリック」
「イヴェット 精が出るな 秋の気配がする」

イヴェットの持っている盆がデヴィッドが話しかけている間ずっとがちゃがちゃいっている。

デヴィッド「愛しい妻はどこかな?もう目覚めて太陽の如く輝いているか?」
「まだ寝室に」
「では息子は?」
「どこかで遊んでます」
「二人とも私を避けているようだな」
にやりと笑うデヴィッド。
しばらく間をおいて
「わかった 妻の食器を割らんでくれよ かなりの値打ち物だ」
走ってゆくパトリック。やがて井戸の蓋を開ける。

現代のパトリック。
「痛いよ」

少年のパトリック。井戸の蓋を閉めてその上に足を載せる。

「パトリック どこだ」
化粧をするエレノア。
しばらく井戸の上で足踏みをするパトリック。
歩いてくるパトリックを見ているアン。

ヴィクター「誰の章?」
アン「助言に従ってカリギュラよ」
「さあ朝食だ」
「しなくてよかったのに 料理よ」
「いや 僕は作ってない そろそろ食べたくて」

ブリジットとニコラスはセックスの真っ最中。
ニコラス「時計を見られると萎える」
ブリジット「タクシーは?」
「もう少し体の位置を」
「飛行機の時間が」
「全く だから何だ かなり老けた じきにこういわれる 昔は色男だったのに」
「今でもそうよ」
「気休めはやめろ」
「卑屈にならないで」
「もうタクシーが来た」
「行先は?」
「言っただろ 南仏だ」

ヴィクター「それだとちょっと失礼だよ」
アン「まるで試験でも受けるみたいだわ」
「ああ デヴィッドに試される だから気の利いたことを言えるようにしておかないと」
「カリギュラは妻を愛しすぎて虐待したそうよ デヴィッドはどうして?ヴィクター 彼が怖いならなぜここへ来たの?」
「怖くはない 緊張するだけだよ イートン校で彼は一目置かれていたからね」
「大学だと人気者は女と寝まくるけどイートン校では殴るわけ?」
「僕は殴られなかったし今ではこうして友達だ」
「昔彼がどれほどすごい存在だったとしても結局それって過去の栄光でしょ」
「やめてくれ」
「彼の息子だけが救いね あの子には希望がある」

足音を立てないように出ていこうとするエレノアだが床が鳴りデヴィッドのピアノが止む。
デヴィッド「どこへ行く」
エレノア「空港へ ニコラスを迎えに」
「まだ早いだろ」
「ドライブがてら行くってアンと約束したの」
「なるほど あの子は置いてけ 飛行機が着くのは2時だな 早く行け」
「どこに行くの?お父様が探してたわ 今から空港へ ニコラスを迎えに行くの」
「約束したのに」
「またね」
「一緒に行く」
「だめ お父様が呼んでる」
「おとなしくしてるから」
「あなたがママといつも一緒にいたがるとお父様がやきもちをやいてしまうの だからお父様のもとに」
「ママがいい」
「我慢しなくちゃ お父様と仲良くしてね 夕食までに戻るからどんな一日だったか教えっこしましょう 帰ったら一日中あなたのそばにいるわ」
アンとヴィクターを見て「来たわね 時間通りよ 離れの居心地はどう?母屋に他人がいるとデヴィッドが嫌がるから 空気さえ共有したくないのよ でも夕食はみんなで」
ヴィクターに「執筆の方は?」
ヴィクター「自我は大きなテーマだから」
「フロイトとか?」
アン「私が運転する」
「私だけのものだから誰にも運転させない」

デヴィッドの所に行くパトリック。
「やっと来たな みんな行ったか?特別な一日にしよう この曲覚えてるか?」
「僕への贈り物」
「イートンを卒業する時父に将来の希望を聞かれた 作曲家になりたいとは言えず”わかりません”と すると父は?」
「“軍に入れ”」
「お前の将来の希望は?」
「わかりません」
「耳を掴んで持ち上げてやる」
「やだ」
「ほら 来い いくぞ」
笑っているパトリック
「ちゃんと下ろす 父さんを信じろ 3で離せ」
デヴィッドは耳を掴んだままなのでパトリックは叫び出す。
「今日の教訓だ 自分で考えろ 重要な決断を人任せにするな いいか」
「わかったよ 父さんの嘘つきYou lied to me! You hurt me!」
「泣き言は見苦しいぞ Don't whimper. It's very unnatractive.」

木に向ってうさばらしをするパトリック。
弾き終えたデヴィッドが叫ぶ。
「パトリック!」
ここで大人のパトリックに。

ブリジット「どんな人たち?」
ニコラス「デヴィッドは無一文だ 酷い親父に勘当されてね」
「なぜ?」
「医者を目指したからさ その前の夢は作曲家で才能もあった エレノアはアメリカの富豪の娘だ ドライクリーニングの特許で財を築いた成金だがとにかく金はある 南仏の家はデヴィッドが彼女に買わせた 初めて夏を過ごした時熟れたイチジクが落ちていてエレノアがぼやいた “飢えてる人も多いのに”と するとデヴィッドは彼女を這いつくばらせ地面のイチジクを食わせたThe house was the first thing he persuaded her to buy. First summer there, we were all sitting on the terrace, and she complained about the dreadful waste of figs that fell from the tree onto the ground and rotted, while there were other people starving in the world. And David did this amazing thing. He told Eleanor to get down on all fours and eat every fig off the ground.」
ブリジット「人前で?In front of you?」
「彼女は抵抗もせず全部食ったよYes. She didn't protest though. She ate every single one.」
「いかれてるKinky.」

エレノア「あれこそ意義のある人生よ 自然の中で生きる 作物を育てて糧を得る 鳥を食べたい時は自分で締めるの イライラする ランチに行きたいのに」
アン「パトリックは新学年ね」
「息子の話をすれば私が喜ぶと皆が思ってる だけど私は本人じゃないわ 今夜あの子に会えるわよ 今夜か 飲まなきゃ」
「やっと着いた 素敵な店でしょ マルセル マルセル 村人はナチスに皆殺しにされ彼だけが生き延びたの おかげで彼の絶品料理が食べられる 面白いわよね アメリカ人の女が二人」
「ちょっと 起きてよ」
「起きてる コニャックを飲まなきゃ こってりした料理の後はコニャックでしょ 頭痛薬よ」
「率直に言っていい?」
「嫌な前置きね」
「ちょっと飲みすぎてる」
「何か問題?」
「あなたにとってよくない パトリックにも 家族の事は私にはわからないけど」
「その通り あなたは独身だし子供だっていないもの メルシー 鋭い指摘ね 私の事がかなり心配みたいだから運転して」

エレノア「私寝てた?シチューでもたれたけど 見て OK牧場だって 寄っていこう アメリカが懐かしい」
アン「時間は?」
「お願い ねえねえ 本格的ね 見て 観覧車がある」
観覧車に乗る二人。
「見て あなたのキャデラック こういうのって楽しい 女だけで息抜き」
「あのね あなたに分かって欲しい 彼 昔はあんなじゃなかった 出会った時彼の演奏は素晴らしかった すごく知的だし素敵な人だったわ 他の気取った英国人とは大違い 二人で何か有意義なことをするつもりだったのの 当時から気難しかったけど彼がそばにいると心強かった だけど今はあの人が側にいると 部屋で二人きりになったりすると 止まったわ 迎えに遅れる ニコラスが話す」
「デヴィッドだって」
「この事はデヴィッドに言わないで」
「彼が怖いの?」

飛行機の中でタバコを吸うブリジット。飛行機で知りあいに出会う。
バリー「ブリジット やっぱり君だ 今朝君のことを考えてたんだよ」
ブリジット「私ラリってる メルローズって人の家に行かなきゃ 番号を渡すね」

エレノア「観覧車に乗ったら下りられなくなっちゃって」
ニコラス「君らしいな」ブリジットに「荷物全部俺に運ばせて!」
バリー「カートを使えよ 俺バリー」
「彼女はブリジット=ワトソン・スコット」

食卓にいる蟻をタバコでつぶすデヴィッド。
パトリック「父さんの側は嫌だ ママがいい ママといたい」
「かわいそうに それは無理なんです」
イヴェットが抱きしめる。上から見ているデヴィッド。

落ちているいちじくを踏んでまわるパトリック。いちじくを持って投げようとした時
デヴィッド「許さんぞ!二度とやるな」
パトリック「何のこと?」
「父さんの部屋へ来い」

「何がいけなかった?」
「来なさい」
「僕が何を」
「わかっているはずだ こっちへ」
「シャカ王を知っているか?兵士たちに茨の茂みを歩かせた 足の裏は裂けて焼けただれ だがやがて皮膚が厚くなり痛みを感じなくなった 残酷に思えても実は兵士のためでありそれこそが愛だ 今は感謝できなくても大人になった時に父さんがお前に教えたことを有難く思うだろう 父さんに閉めさせるのか?わかった ズボンを下ろせ」
ドアが閉まる。

一切の音が消える。

走っていくパトリック。整えられるベッド。髪型を整えるデヴィッド。

「坊ちゃんの分は」
デヴィッド「あの子は食べない」

庭で泣いている少年パトリック。
苦しんでいる大人のパトリック。

エレノア「夕食は6時からよ 今日話したことはわすれてね」
アン「もちろん」
ニコラス「美しい景観を忘れかけてた」
エレノア「私は忘れてしまったわ」
ニコラス「悲しいことを言うね 冗談だよな?」
ブリジット「素敵な所ね 欲しいわ」
エレノア「デヴィッドもそう言ったからこの家を買った 私たちはここをアルコール依存症の人達の家にしたかったの ある意味なったわ 荷物はイヴェットが運ぶ イヴェットを探すわ」
ブリジット「彼女ハイね」
ニコラス「もっと軽い会話になるよう協力してくれ だが色の話はするな」
「これね イチジクの話よ」
「ブリジットやめろ デヴィッドに見られるだろ 早く立て ブリジット」
「なぜそんなに彼を怖がるのよ」
デヴィッド「誰かと思えば」
「デヴィッド久しぶり 彼女はブリジットだ」
「ようこそ」
「素敵な所だわ」
「ああここから機関銃を乱射すればこの谷を支配できる 今そっちへ行く 木の下でお茶にしよう」

ニコラス「結婚式と葬式君はどっちが多い?」
デヴィッド「どちらも行くが葬式の方がいいね」
「贈り物なしだから?」
「敵の葬式だけに行けばいい 相手より長生きなのを悦び休戦するんだ 許しは大切だろ?ブリジット」
「ええ 特に許してもらう立場ならね」
「なぜ私に許しが必要なんだ」
エレノア「そこじゃまぶしくない?」
ブリジット「いちじくに注意を 紫と白なんて妙な取り合わせよね これは完璧な美だわ 見て 男の子がいる」
エレノア「パトリック 一緒にお茶を飲みましょう」
「聞こえないのね」
デヴィッド「来る気がないんだ」
ニコラス「一級品以外は興味がない とはいえ時には妥協もするけどな」
「彼女は快活だな」
「ブリジットか?それだけさ」
「悪くない 魅力的だよ」
「時々思うんだ もっと育ちがよく教養のある女と付き合うべきだとね だがそういう女とは二度離婚している」
「パトリック どこへ行く」
「ママの所へ」
「ママは疲れてる ニコラスに挨拶しなさい」
「こっちへ 問題はないか?」
「はい」
「昼食を抜いたな お茶は飲んだか?だから顔色が悪い ママを休ませてやるんだ わかったな?」

ブリジット「何が?」
ニコラス「イチジクの件さ」
「あなたが興奮するからやってあげたの」
「デヴィッドには媚びを売りやがって」
「バリーの所に行くわ」
「電話番号教えたな」
「だから?」

熱いお湯に手を浸すデヴィッド。

「パトリック 何してるの そんな所でこそこそと ごめんね すごく驚いたからつい」
抱き着くパトリック。
「I have to get back to my writing.さあ 用事を終えないと」
「What are you writing?用事って?」
「 A cheque for charity. For Save The Children. Because it's important when one has so much, to give something back.子供たちを助けるため寄付をするの 大切なことよ たくさん持っている人は何かを返さないとね ママたちがいなくなった後もそれを忘れないで あなたにも贈り物を OK牧場で買ったの そんな目で見ないで 似合うわよ 素敵な子 お父様とはどうだった?遊んだりお散歩に行ったりした?パトリック どうしたの?答えて」
「グラスを変えようか?新しいのと」

「夕食の時彼と話そう」
コップを割ってしまったパトリックは階段で立ち止まる。

エレノア「イヴェット あとは私が」
「パトリック大丈夫?破片の上に座っちゃった」
パトリック「事故だよ 父さんに言わないで」
「明日になったらOK牧場に連れてってあげる 何があってもね 二人だけで行く どう?」
「どこかへ行きたい」
「どういう意味?」
「ここを出たい」
「あなたをベッドへ」

ニコラス「市場の露店で買ったような服だ」
ブリジット「市場の露店で買ったの」
パトリックを見つけて「こんばんは 不思議な坊や」
「魔女に見えるYou look like a medieval witch.」
「あなたはどう?退屈な老いぼれって感じAnd you look like an old fart. A stuffy conventional old fart!」
エレノア「あなたにお電話よ」
ブリジット「バリー助かった 誰かと話したかったの」

ヴィクター「職業を聞くのもだめ 使用人と話すのもデヴィッドを怒らせるのもだ」
アン「私も一つお願いがWill you do one thing for me?」
「何だい?」
「機嫌を取り侮辱を許し迎合するのはやめて Don't suck up to them. Don't let them bully you. Don't try to fit in.」
「3つあるWell isn't that three things?」
「関連してるのよThey're all connected.あなたは彼等より立派だわ 情があるもの」

ニコラス「素晴らしい椅子だ」
エレノア「博物館に置くような年代物よ もちろんデヴィッドのお気に入りよ 葉巻をひじ掛けに置くの 座ってる人をどかしたりしないわ」
ニコラス「それはどうかな」
「ヴィクター スーツがよれよれじゃないか」
アン「部屋に入ったとたんこれ?」
エレノア「楽しい夜にしましょうよ ではグラスを持って飲みましょ」

「大学教授は他人の理念にけちをつけたがる でも役に立つ」
「治療になるかもな」
「やあ こんばんは エレノア君はピンクがよく似合う 瞳の色とも合うしなEleanor, I do like you in pink. It matches your eyes.」
アン「あなたが医師だったなんて想像できないわ」
「私自身もだよ 医師という柄ではなかった 幸い妻の財力のおかげで医師をやめることができた 素晴らしい恩恵だ 空港への迎えありがとう」
「楽しかったわ 心が満たされる」
「私の一日も特別なものだったよ」
ブリジット「デイヴ 派手な黄色の室内履きが素敵」
「褒められて嬉しいよ ウォッカは?」
「コーラある?酔っ払うのは下品だわ」
「食事にしよう」
「ヴィクター あの席に」
「席が決まるまで話をしよう アン 皇帝ガルバをどう思う?」
「素晴らしい すごい人よ」
ヴィクター「アンはカリギュラに夢中でね」
アン「ヴィクターは彼の擁護を」
デヴィッド「ブリジット 私の隣へ カリギュラは家族を殺された 虐げられた者が虐げる者になるのは当然だ」
アン「イートン校も?」
ヴィクター「アンはパブリックスクールに否定的でね」
ニコラス「そのようだ」
アン「As for his obsession with screwing his sister...カリギュラは妹たちと寝た」
ニコラス「Ah, well you know what they say: "Vice is nice, but incest is best." Now I'm sure I would have liked the chap. He did exactly what he wanted to do, with no nonsense about ethics.”背徳は快楽”っていうしな 倫理に囚われずやりたいことをやっただけさ」
アン「不道徳な方がいいの?Why do you think it's superior to be amoral?」
ニコラス「そうじゃなくて"退屈は嫌だ"ってこと It's not a question of being superior; it's a question of not being a bore or a prig.」
デヴィッド「"アンニュイ"を目指すとしようWhat one aims for is ennui.」

天井を眺めているパトリック。

デヴィッド「前回の献立を再現するとはすごい記憶力だ 亡くなったお母さんのことを考えている顔だな そうだろ?」
エレノア「そうよ」
デヴィッド「エレノアの父親が酒の飲みすぎて死んだ時母親は人間の骨とう品を買うことにした 生身の貴族様 没落貴族となった公爵を夫として買ったんだ ドルの札束で見事に帰り咲かせた だが人間を物扱いしてはいけない」
ブリジット「その通り」
アン「本人も望んだのでは?」
デヴィッド「もちろん熱望しただろうな しかも夫はやがて妻に命令するようになった」
ブリジット「他の人を物扱いする人達がいる」
デヴィッド「全く同感だな それに物は大切に扱わなければならない」
席を立つアン。
アン「"アンニュイを目指すとしよう"」階段にいるパトリックに気づく。
「グラスを割ったこと父さんに黙ってて」
アン「眠れないの?痛い?大丈夫?話して パトリック お母さんに言おうか?じゃ待ってて すぐ戻る」
パトリック「そういってもきっと戻ってこない」
アン「必ず戻るわよ」

アンがエレノアに「パトリックが話したがってるわ」
デヴィッド「あの子を甘やかさないと話し合ったはずだ」
立とうとしたエレノアだが座る。
デヴィッド「私は子供が成長した時にこう言って欲しい “あれを乗り越えたならどんな事も乗り越えられる”」
アン「どうかしてる」
ヴィクター「心の鍛錬は大事だよ」
「やめて」
「いたぶるのが目的じゃない」
「なぜ皆彼の言いなりなの?」
ニコラス「私見を言わせてもらえば子供の頃の辛さなどどうってことない」
アン「どうってことないのはあなたよ 馬鹿げたことを もっともらしく話してこっけいだわ」
ブリジット「あなた子供の頃の辛い記憶はないの?」
ニコラス 「僕の子供時代が平穏だからって悪いとは思わないね 大きな芝の庭やリッツに行ったのは覚えてる」
デヴィッド「イチジクを食べるか?今が熟れごろだ 好きなんだろ?」
ブリジット「ナイフが要る」
アン「これ以上やってられない あなたは尊大で愚かなご機嫌取りよ あなたは子供を怖がらせたいだけ パトリックが可哀想 ヴィクター あなたは残ればいい エレノア パトリックが外にいるのよ 悲し気で怯えてる そばへ行って何があったか聞いてあげて エレノア お願い」
「エレノア」
エレノアは動けない。
ニコラス「保守的なヴィクターが真逆の女とつきあってる」
デヴィッド「ユダヤの有権者気取りがなかなか楽しませてくれた」
ニコラス「家に招くとは君も心が広い」
ブリジットも席を立つ。「二人とも最低」
嗤うニコラスとデヴィッド。

アン「ありがとう」
ヴィクター「君が正しいよ 子供への仕打ちには反対すべきだ」
「なぜひそひそ声?」
「なぜかな」
笑い出す二人。

アン「待ってて パトリック 私だけよ」
階段にはパトリックはいなかった。

「もう寝たのね」

ブリジット「バリー 恩に着る」
鞄に衣類をつめ家を出るブリジット。

ニコラス「ブリジットの両親は娘を上流階級の男と結婚させたがってるんだ コヴェントガーデンでオペラを見せてやったよ」
外の車にエレノアがいた。
バリーは迎えに来ない。結局戻ってきたブリジットにエレノアが
「わかった?簡単には出ていけない」

パトリックの部屋に入って来るデヴィッド。
「 Can't sleep? No, me neither. Must be all the excitement. Al these people.Here, that better? I'll leave you now. But know one thing. If you ever tell your mother or anyone else about today, I will snap you in two.眠れないか?私もだ 人が大勢いたから気持ちが高ぶってる さあ よくなったか?父さんは行くが 一つ言っておく 今日のことを母親や誰かに一言でも話せばお前を真っ二つに切り裂いてやる」

遺灰の入った箱が映る。現代。眠っている大人のパトリック。
ジュリー「ジョニー 後は任せて」

第1話は真っ暗な中電話の音で始まり主役のパトリックの後ろ姿が映る。第2話は陽光の中ピアノの音が聞こえパトリックの父デヴィッドの後ろ姿が映る。次にピアノの静寂を破った音源=食器を持つ召使が始終盆を揺らしてがちゃがちゃと耳障りな音がする。音の持つ存在感。

ベネディクト・カンバーバッチ が薬の後遺症で苦しむ現代と爆弾のような父の元で身を潜めて生きる少年パトリックの過去が交錯して描かれ後者描写が多め。息子だけでなく妻もまた夫デヴィッドに大小のプレッシャーを受けていたことがわかる。妻は酒に逃げられたが息子は?

第三話"Some Hope"
1990年11月、ロンドン。ドラッグとアルコール依存症を克服したパトリックは、友人ジョニーと共にマーガレット王女が招かれるパーティーに出席することに。パーティーを主催するのはヒッピーだった過去を持ち、結婚後に社交界入りを果たしたブリジット。豪華絢爛なパーティーでパトリックはかつての恋人や父デヴィッドの古い友人との再会を果たす内に、過去の自分を思い返して心が乱れ始め…。

コーヒーの砂糖を入れて零れた分を麻薬みたいに刻んでいるパトリック。
テレビを漫然と見ているパトリック。

パーティ会場に立つブリジット。

サニー「ブリジット 今日の記事は何だ? 記者に話すなと言ったろ」
ブリジット「話してないわ」
「“夫人いわく「夫の誕生日を少人数で祝う」マーガレット王女も出席”」
「正直この企画は失敗 曇ってる 5月ならいいけど11月じゃね」
「誕生月に文句か」
「変えられないのがしゃくにさわる トニーに来てもらう」
「成り上がりの装飾家なんて呼ぶなよ ハイカラ男を王女に近づけるな」
「ハイカラって何?」
「何か忘れてないか」
「おめでとうHappy Birthday」

ニコラスが訪ねて来る。
「ブリジットに返事をしてないな 開けなさい 苦労して招待者名簿にねじこんだのに」
「有難いがまだ社交は無理」
「カーテンを開けろ とりあえず精神科病棟よりはいい 酒が欲しい あるかな?Better than a psychiatric ward, I suppose. Theoretically. I need a drink. Do you have drink, a proper drink?」
「悪習は入院して断ち切ったよ ハーブティは?No, that's one of the reasons I was on the psychiatric ward. I can offer you herbal teas.」
「冗談はよせDon't be absurd..せめて窓を開けるか表へ出てみたらどうだ お母さんも姿を見せない」
「母にはパーティ以外の生きがいがある」
「確かに変わり者だ 今どこに?」
「一万本の注射器をポーランドに運んでる その慈愛と注射器を世界の人でなく僕に届けて惜しい」
「そういうのとは決別したんだろ」
「決別か 惜別か」
「やけに感傷的だ」
「再スタートのめどが立たない」
「法律で生計を立ててるんだろ?」
「それは治療費を払うためで人生そのものは」
「もういい 座れ」
「はい?」
「すわりなさい 私は励ますという行為が嫌いだがやるしかない このままじゃいかん 父上のために君を社交界で再び泳がせる」
「でも溺れる心配があるよ」
「ばかな しゃんとして身なりを整えろ 人生の話ならパーティでしろ 誰かが聞くさ とはいえパーティだ 楽しむためのものではない And, remember. it's a party; you're not meant to enjoy it.」
「まいったな」

「彩りが欲しいかと思って持ってきた ご主人のネクタイの色」
「2万と恐怖」

「始まったわ ばあやが厳しすぎるのよ」
無線機を手にばあやがブリジットの娘を叱っている。
「どこだか言いなさい 盗んだの?」
「ママ 遊んで」
「お母さまは忙しいんです」
誰のかわからず話しかけるブリジット。
「聴こえる?無線機を拾ったの」
サニー「彼女に悪いから」
シンディ「こそこそするのは嫌 パーティでもそうよ」
夫と女性の会話が聞こえて来る。
サニー「わかってるよ でも今大事なのは君に会えることだ 一目だけでもいい」
庭から部屋を見上げる。

ジュリア「誰かしら 出ないの?」
ジョニー「今は嫌だ」
ジュリア「パトリックだわ 出なさいよ」
パトリック「デビーに謝るのに薬をやったら本末店頭だしジュリアと馬鹿亭主も 何だ いたのか?」
ジョニー「行きたいのか?」
パトリック「ニコラスが社交界でぶいぶい言わせろと」
ジュリア「来いと言って」
パトリック「お客さんか?」
ジョニー「彼は嫌いだが一理ある」
パトリック「一緒に行こう 車に乗せて」
ジョニー「わかった 会の後でな」
パトリック「ぞっとする奴が沢山いるだろ」
ジョニー「どこもそうさ」
パトリック「だからパーティは嫌なんだ」
ジョニー「3時に来いよ 参加してもいいんだぞ」
ジュリア「パトリックが来れば楽しい 私とのこと話した?」
「君が口止めしたろ 君は?」
「彼とはずっと会ってない 彼は私の話を?」
「会うのが楽しみだとさ 君の御亭主にね」
「パーティは大嫌い」

クスリを呑むブリジット。
「娘から聞いてたのは」
「すみません 何の御用?調理場の人?」
「ワトソン=スコットです レディ・ブリジットの母」

サニー「かわいい娘は?」
「この忙しい日に」
「今すぐ警備に注意して 王女が来るのにこれでは困る」
「聞いてなかった?ブリジット 準備は順調?」

「ジョニー 依存症だ それが大きなパーティで不安なんだ 危険にさらされるのがね その夕人にも負けて欲しくない」

「チートリー邸のパーティよね パトリック」
「アマンダ」
「もう出歩いてるのね」
「パーティで助けてね」
「こっちも心強い」

「ただのコカイン好きの素人だ 妙な決まり事だらけ 偽善が我慢ならないだけ」
「フリも大事だ」
「予想以上に悪い」
「告白の場だ 聴くに堪えない話ばかり 話したって無駄だろ」
「どうして?君はツラくないのか」
「つらいさ 正気でいるのは悪夢だ 首を落とされ犬が僕の肝臓を奪い合ってる気分だ おかげさまでね 忘れる恐怖がなければ呆けていたいよ」
「何を忘れる?」
「打ち明けたりしないし引っかからないぞ こんなカルト教団 人には言えないことがある」
「じゃあ聞かない」

「アールグレイを頂くわ」
ブリジット「甘い物は虫歯の元よ ばあやに叱られるわ」
「夕食の後のおやつに」
「その夕食なんだけどご近所の方と外で食事してくれる?今夜は王女が来て堅苦しいしその方がリラックスできるでしょ 後のパーティに参加して楽しんで」
「それで構わない ちょっと失礼するわね」
「アカデミー賞ものだ」
「母のためよ」
「もちろん」
「おばあちゃまに何が?悲しそうで」
「リラックスするとそういう顔になるの さて やることが山積み」

天井のとかげを見て過去が蘇るパトリック。
「まったくひどいごみためだ 落ちぶれたもんだ 父さんは疲れてるんだ ここへきて話してくれ パトリック 大好きな父さんの所へ来い 頼むよ パトリック そこにいるのか?パトリック」

「殿下が来た」
母親を車で送り返すブリジット。
パトリック「えらく張り込んだな 旦那のためか そばを離れないでくれ」
「わかってる でんと構えてろ」

「ブリジットは元恋人なのね 良家の子女?」
ニコラス「とんでもない 父親の仕事は中古車販売 母親は郊外育ち」
「上流ではないんですな」
パトリック「お馴染みの顔ぶれ 父が柱の陰から出てきそうだ “ばあ”素面で交わるのは久々だ」
「以前はトイレにこもってた」
「今はトイレに入ってから薬でなく小便しに来たと思い出す 若者ならエクスタシーをきめる」
「“依存性のないハイ“か」
「時代遅れの僕はそんな薬嫌だね ぶっ壊れてなんぼだろ たまらなく酒が欲しい」
「言っても無駄だろうが」
「勧誘はやめろってば」
「友情からだよ」
「ごめん」
ブリジット「パトリック 死んだかと」
「1~2度ね すごくきれいだ」
「本当に」
「お目付け役を隣に座らせる 親戚のメアリー 王女より先に座らないでね 殿下 そうなんですの」

「田園風景は静止していればなお美しい 牛を接着剤で固定したいですな」
「あなたってほんと高慢ちき」
「何よ 私の席はどこ?」
「フランス大使の隣です」
「この会は別格ですな」
女王より先に座ってしまうパトリック。
メアリー「あなたを見た 同じホテルに泊まってる」
「肉料理がお勧めのホテルだよね」
「“ご予約で落胆を回避” そこの方が良かった?」
「でも行きたい所もない」
「あなたはどう避けてるの?落胆のことよ」
「それは無理 救済は手が届いた時に崩れ去る 連中を見てみろ 俗物に上昇志向の野心家」「ブリジットが私を呼んだのは彼女の到達点を見せるための」
「だろうね でもどこに着いたの?」
「これは鹿肉?ドロドロのソースでわからない」
「鹿肉です ソースがひどくて申し訳ない」
「イギリスでこの味を出せるとは」
ジャック「殿下 申し訳ございません」
ソースが服に飛び散ってしまう。
マーガレット王女「拭いて 拭けと言ったの」
大使ジャック「ソースの件は申し訳ございません」
大使夫人「私が拭きますわ」
マーガレット王女「こぼした本人がやるべき 大使なんかよりクリーニング業者が似合ってる まずいソースをこぼす方こそひどい」
「静かね 沈黙は許しませんよ あなたもリッチモンド公園から鹿を強いれなさい 私も女王に勧められたの」
「殿下は周囲を和ませる そこが好きでね」

たまらず部屋を出た大使夫人「あらおじょうさん」
「王女がいるの?」

ニコラス「私はいろいろと責任を感じてるんだよ 君の父上の家で庶民のブリジットを私が社交界に送り出した 彼女が上流階級を牛耳ることになろうとは 君のような堕落者は招かれて幸運だと思え」
「感謝しますよ」
「大丈夫か?」
「酒が欲しい」

覗いている女の子を見かけたパトリックが立ち上がって話しかける。
「誰かに用?」
「王女様に会いたいの」
「そっか でも会わない方がいいと思うよ ママを呼ぼう」
サニー「すみません 娘です」
「大人の席だから駄目よ」
「ママが会わせてくれるわ」
「会わせて お願い」
「政治活動は?」
「やめて 興奮して眠れなくなるわよ」
サニー「そうだよ なぜ起きてきた 下がれ」
「外のパーティに加わりましょうか」
「大げさなパーティは嫌い」
「妻のアイデアでして」

シンディ「助かったわ」
「サニーのためだ」
「そうね」
「警備には私の妻だと言え」
「いつまで続けるの?」

外でタバコを吸っていたパトリックは中へ。
「やだ パトリックがいる」
「まいったな」

ジャック「パトリック こいつは嬉しいな 人ごみの中だと何も聞こえんのだよ」
パトリック「皆静かなる絶望を抱えてるものかと」
「そう静かでもない 何か楽しめるものを見つけたか?」
「ああ でも哀しいかな やめた」
「時間の無駄だ 何かに貢献せねば 人は孤島ではない この連中は島を持ってるだろうがな」「父が言ってた“才能があるならそれを生かせ さもないと惨めな人生を送る”珍しく敵意のない言葉だ」
「父上は才気に溢れてたが幸せではなかった」
「最近は父のことをあまり考えない」
「息子に同じ過ちを犯してほしくないはずだ 時間を無駄にするな」
「もう行くよ 友人が」
「そうかそうか 行きなさい」

「デビー パーティでは常に美しいね」
「覚えてるの?他の女と寝るか失神してたのに」
「その事で話したい 僕はひどいことを」
「これって依存症克服のステップでしょ 私は謝るべき“重荷”」
「いや」
「失礼するわ」

「シンディ よく来たね」
「大丈夫なのか?奥さんに睨まれたぞ」
「筋書きを守れ “妻が来れず偶然会ったシンディと来た”」

ニコラス「美女というものは散々またして一人来るとどっと押し寄せる バスみたいなものだ バスを待ったことはないがね 殿下だ けつまづくと酷い目にあう」
パトリック「あれにはびっくりした」
「だから殿下が好きだ 父上とならいいコンビだ 想像してみろ」
「ぞっとする」
「小さなアクシデントで人に大恥をかかせる手口が似てるよ 大使の妻はなかなかいい女だ 上品ぶってるが性根の悪さが」
パトリック「ブリジットと話してくる」
「彼を追い払ったかも」
ニコラス「ジャック あの厄介な女にうまく対処したね」
「王族はいだけで疲れる」
「パーティの目玉を探そうか」
「君が一番の目玉だよ」

マーガレット王女「敵と交流?」
ニコラス「同情を求められお門違いだと言いました おっちょこちょいの夫にふざけた妻」
「どうも 素敵なパーティですね 殿下」
「後で行くから」
「誰なの?」
「娘です どこまで話したかな 腰を折られた」

ブリジット「覚えてるのはおたくの不快な父上と美しい邸宅よ」
「ここには負ける」
「そうね 人生って不思議 くそどもがいなきゃ最高なのに あなたと母は別よ」
「両親の友人には珍しくあなたはかっこよくて優しかった」
「優しかった?人違いだと思う 母と話してくれない? 古い友人のパトリック」
「盛大なパーティですね」

「ブリジット 盛況だね 妻が来れず偶然会ったシンディと」
サニー「目立ってきたね 触ってもいい?」
「サニーったらまだ触ってもわからないわよ」
二人をじっと見つめるブリジット。

「招いてないはずのシンディが夫と話してる 考えすぎね」
「ああ 多分ね」
「多分なの?」
「どこかで話そう」

「パトリック 飲まないのか なぜ演奏者の名前を言う?知りたかないよ 妻と話してたろ」
ジョニー「サニー 彼を借りるよ」
「サニーから救った」
「奴はサウナの湯気なみに馬鹿さ加減を発してる」

シンディ「どうして?」
サニー「今夜は彼女に言えないよ」

パトリック「こいつらを見ろ 救いようのない鈍い奴らだ」
ジョニー「最後のマルクス主義者 階級で全て解決すると思ってる」
「もう出るか 行こう」

ジュリア「何ぶつぶつ言ってたの?久しぶり この人が主人のアンガスよ」
「盛大だね 高くついたろうな」
「主人は何かにつけ費用を気にするの 経歴は申し分ない でも割引乗車券の払い戻し規定にまでこだわる 探検しない?会えて嬉しい 私は害悪だから避けてた?」
「君ではなく世間がね」
「せっかく会えたんだし 退屈なパーティを活気づけなきゃ」
「だが周りは死体の山だ」
「トニーからコカインをもらうのは反則ね でしょ?」
「まあね」
「これだもの 男は退屈になった 昔はバターと言えばセックス 今じゃ肥満防止の話になる デビーだわ 彼女きれい」
「すごくね ジョニーを探す」
「上の階に行かない?」
「何しに?」
「感情抜きのセックス」
「暇つぶしにはいい 超乗り気だよ」

階段を上ろうとして止められる二人。
「こちらは…」
ジュリア「泊まってるの」
パトリック「まずい気がするな」
ブリジットの声が聞こえる。
「聞いて」
ブリジット「明日の朝話し合おう 客なんかどうでもいい!」
ジュリア「知ってるでしょ」
パトリック「浮気?」
「それ以上よ シンディが男の子を妊娠した 待望の跡継ぎだからブリジットはお払い箱」
「気の毒に」
「まるでヘンリー8世 笑える」
「笑えはしないよ」
「偽善者ね 彼女も自業自得」
「なんで?」
「成り上がろうとするからよ やつれた顔してた」
「 You know, I have my reservations about your character.君って性格悪いね」
「Me too.知ってる 行こう」
サニー「寝室には入れてない」

一部屋でセックスするパトリックとジュリア。
「誰と浮気してると思う?」
「今話す事?」
「お友達のジョニー」
「完全に萎えた」
「取り返したくないの?彼って優しいのが問題よ あなたが来ると聞いてすごく嬉しかった パトリック・メルローズが現れるなんて 会いたかった」
「僕も会いたかった だけど彼との友情を壊したくない」
「あらそう」
「皮肉や対立はもう嫌だ」
「それが好きなくせに」
「皆が君と同じだとでも?」
「ふざけないで」
「わかったよ 喧嘩になる前に降りた方がよさそうだ」
「不愉快な男」
先にジュリアが出ていく。

割れたグラスを見つけて拾い上げるパトリック。目をつぶると少年時代のパトリックに。
「お母さんに言おうか?」
「何て言いたかった?」
グラスをゴミ箱に入れるパトリック。

パトリックはジョニーを見つける「うろついてた 他の場所で話せる?人には言えないことがあると話したろ?I've told you that there's something that I've never said out loud and now I'm going to.それは恥ずかしいからでなく君の重荷になると」
「話せよ」
「よし 両親の飲酒や暴力は話したが実は他に」
ジョニー「外してくれ」
パトリック「酒は結構だ」
ボーイ「花火が始まりますので」
「僕は8歳の時から数年にわたって父から“虐待”を受けた 最近はそう言うんだよな」
「どんな虐待?」
「それは つまり…ダメだ そんなことするべきじゃ…」
ボーイ「花火がもう」
「話してるんだからほっといてくれ 僕達が子供に見えるか?花火なんか興味ないよ どんな虐待だったか?性的虐待だ」
「つらかったな だから嫌ってたのか」
「わかったろ 何の罪かもわからず罰を受けていた まるでカフカの世界だよ」
「何て父親だ 心が二つに裂けたろ」
「その通りだ なぜわかった?」
「当然そうなる」
「それが起こってる時妙な話だが 壁にやもりがいた 緑のやもりだ そいつの中に入れば耐え抜けると思った お粗末な逃避法だろ?とにかく父親を憎むことで僕は疲れ果てた 今後はこんな所じゃなく世間に出て社会に貢献し普通の生活を送りたい それには打ち明けるしかなかったIn that moment, when it was happening, and this will sound strange, but, there was a lizard on the wall - gecko, bright green. I thought if I could somehow put myself inside... that I might be able to get through this. Not much of an escape plan I know. The point is, now I'm exhausted hating him, and it's not enough. And if I'm going to break out into the world, not just this one but the real world, and make a contribution, live rather than just survive then I am going to have to say these things out loud.」
花火があがる。
「花火を見逃したね 見たければ」
「いいよ」

「実家に戻ってくる?」
「それは着いてから話し合いましょ」
「わかったわ」
「ママに辛く当たった 高慢ちきで」
「そんな 時々はね お父さんは“ニコラスが悪い”と いい子だったのに 彼と付き合いだしてケチをつけ始めた 家のことやそれまで世話になった人まで お父さんはお前を愛してたけど傷ついてたわ 言い過ぎた?」
「そんな事ない」
「明日また話しましょ 長旅だからもう出ないと」
「そうね」

ジョニー「勧誘じゃないけど前進するための唯一の手段は自分にばかり執着しないことだ 拠り所を探せ」
「趣味に走れって?」
「人だよSomeone Else」
「恋をして子供を持つ」
「悪かない」
「恋には何度も挑戦してきたぞ」
「恋だったか?」
「僕は傷ついた人を癒す人を求めていたが落胆の連続だったIn my experience of love, you get excited when someone tries to mend your broken heart and disappointed when you realise they can't.」
「次はどうかな」
「それに僕は悪意 皮肉 高慢 自己嫌悪を除いたら空っぽだ」
「Perhapsかもね あるいはそこに何か入れてみたら?」
マーガレット王女「やっと女主人が来た サニーはどこ?」
出ていくブリジット「存じませんわ 殿下」

サニー「私がばかだった」
ニコラス「否定はできんな」
「息子を生んでくれなきゃ私もつらい でも妻を失うのは五あyだ それにシンディはちょっと変だよ もう家の改修を考えてるし 家具を見る目は家具職人だ」
「あれはブリジットか?」
「ブリジット ブリジット どこ行くんだ ブリジット 車を止めなさい」
かまわず車を走らせるブリジット。

パトリック「父は不幸せだったが改心の痕跡がなければ許せない」
ジョニー「改心しないから罪を犯す」
「ちょっと君 さっきは怒鳴って悪かった デリケートな話をしてたんだ」
「仕事なので」
「そうだな 申し訳ない」
「幸せそうか?」
「ウェイターが許せるなら先に行け 眠れそうにないし宿の部屋が」
「聞けてよかったThanks for telling me.」
「 カリフォルニア的だなNo need to get Californian about it.」
「君がイギリス的すぎる 宴の終わりかNo need to be so English! It's the end of the party.」
「それ以上さ 一つの時代の終わりだ It's more than that. It's the end of an era.」
「そう願おうWell let's hope so.」

かつて麻薬を売ったチリ―・ウィリーを見かけて声をかけるパトリック。パーティで演奏していたのだ。
「NYのチリ―を知ってるがまさか」
「10番街だ 彼は通りで商売をしてた ありえないよな」
「コートか コートを脱がないイギリス人」
「パトリックだ」
「驚いたな 見違えたよ しらなかったな」
「俺は音楽の道一筋できた ただちょっと…分かるだろ?」
「奥さんが売ってくれたでかい注射器」
「過剰摂取で死んだ」
「それは気の毒に 君が生きてるのは奇跡だIt's a miracle you're alive.」
「おたくもね 俺たちの日常全てが奇跡だ 風呂で石鹸みたいに溶けないのもYou too. But then, everything's a miracle, man. It's a miracle we don't melt in the bath like a piece of soap.」
去っていくチリー。

メアリー「今日はどうも」
パトリック「こちらこそ 朝食の時に会えるよね」
「いいわね 名物の肉料理でも」
「9時頃に?」
「落胆を回避しましょ」

早朝外でタバコを吸うパトリック。

第四話"Mother's Milk"
2003年8月南フランス。弁護士となって結婚したパトリックは2児の父となり、夏の休暇を家族で過ごすため母のいる別荘を訪れる。幼少期に受けた傷から、病床の母エレノアに複雑な感情を抱くパトリックだが、息子たちのため母の看病に励んでいた。そんな中、財産目当てでエレノアに取り入る活動家シェイマスが居座るようになり、家の中の空気が乱れ始める。そして遂にパトリックは酒に手を出してしまい…。

朝母親のベッドにもぐりこむ少年パトリック。

息子のロバートがエレノアの介護をこっそり見ている。
メアリー「ケトルおばあ様を迎えに空港へ行くわよ」

「パトリック」
「お馬さんやって」
「ごめんよ トーマス昨日よく眠れなくてね」
メアリー「でももう起きて」
「休暇中だぞ」
「そうよ でもママたちは朝の5時から起きてるわよね?空港へ母を迎えに行ってくるわ 家中の窓を開けて風を通しておいてね 荷ほどきをしておいてくれると助かるわ」
外の音で眠れないパトリック。

「シェイマス」
「パトリック 昨夜着いたのか おかえり エレノアが待ちわびてたよ 
エレノアがこの家を協会の活動に使わせてくれてほんとに感謝してるんだ」
「それで『魂の道』という本が押し入れの“靴の道”をふさいだのか」
「うまいこと言うね 血に足が着いてる響きがいい」
「僕の家族が母屋を使う」
「すまなかった」
「零気療法やヒーリングのパンフレットにこの板は君らの物だろ」
「僕の離れに」
「母の離れだ」
「今は住んでる」
「アイルランドに帰るんだろ?」
「この夏ずっといるよ 迷惑はかけない」
去っていくパトリック。

エレノア「分かってね 私つらいのよ 意思の疎通がうまくできなくて」
「ああ 辛いよね」
「そうよ 大変なの とっても でも頑張るわ」
「メアリーたちは外出してる 後であいさつに来るよ 母さんがよければね トーマスも母さんの思った通りに」
「成長した?」
「これは?」
「私に似てる」
「待ってよ これって…」

パトリック「いい旅を?」
ケトル「いいえ 最悪だった 隣の女性が自慢の宗を子供の顔に押し付けてたの」
メアリー「授乳でしょ」
「今どきの流行なのは知ってるわ でも私の時代には賢い女というのは子供の存在を感じさせなかった 授乳なんて論外」

荷ほどきは済んでいなかった。
「パトリック」
「応急処置だ」
「やめてたのに」
「母さんが乱心した 母の弁護士からだ 僕は相続人から外されたよ 馬鹿げた慈善活動にこの家を寄付する その上手続きに不備がないか確認しろと こんな仕打ちってあるか」
「理由は?」
「“いいこと”をしたいからだろう 身内には無関心なくせに他人を助けたい人だ」
「抑えて」
「“しめくくり“を認めて欲しいのさ シェイマスがそそのかした」
「どならないで」
「仕方ないだろ 酷い母親だが晩年を迎え変わってくれるのを願ってた 子供はほったらかしだが孫と遊べば変わるかと…僕が怖いのは母さんを大嫌いなことだ その手紙を読んだ時息ができなくなった ”嫌悪の縄”で首を絞められたからだよ」
ロバートがずっと話を聞いている。
「いまさらお義母さんは変わらない」
「それは分かってるIknow Iknow僕は心底憎いんだ うちの家系に脈々と続いている害毒がね 僕は子供達を苦しめたくないのに」
「そうはならない 2人で努力すればね だからお酒はやめて」
メアリーはパトリックを抱きしめる。
ロバートは廊下を出ていく。

ケトル「この家を寄付?」
メアリー「ええ 慈善活動にね」
「とんだ慈善だこと」
車が到着する。
「ロバート 出迎えを パトリックが少しおかしくなってる」
「当然よ ここは素敵だもの あの人は?」
「パトリックの友人ジュリアと娘のルーシー」
「彼嬉しそう」
「ただの気遣いよ 彼女も何かと大変なの」

「打つ手なし?あなた弁護士でしょ」
「母親失格の愚か者だが自分の財産をどうしようと僕に文句は言えない」
「霊能者のふりをして居座ったら?」
「僕はヒーリングとかをまるで信じてない」
ジュリアが子供たちに「二人で一緒に遊びなさいよ ほら」
「それに家族で手一杯だ 世界は救えない」
「子供を育てるってある意味自分を諦めることよ 子供はいい人間になり深酒はせず離婚もしない 心だって病まない だけど子供を守るのに必死になりすぎて自分は衰え滅入ってしまうYou spend so much time guarding your children against decay and depression that you become decayed and depressed. ごめん 落ち込んでるの 離婚して以来時々思ってしまう “自分はいない”って」
ロバート「僕分かる」
ジュリア「子供のくせによく言うわ」
「ほんとだもん」
パトリック「でも哀しくならないだろ?」
「時々は悲しくなる」
歩いて行ってしまうロバート。

ジュリア「あなたは頑張ってるわ」
シェイマス「やあ どうも」
パトリック「家主さんだ」

ロバート「あの人嫌いでしょ」
メアリー「ジュリアの事なら好きよ 自分を賢く見せようと計算しながら話す人だけどね 今のはまずい 誰にも言わないでよ」

ジュリア「あなたはヒーラー?」
パトリック「今までに誰を癒した?」
シェイマス「高齢者用の施設で何年も働いたよ くそまみれの体を洗ったり食事を食べさせたりしたんだ おかげで自分が堅実になった」
「じゃその仕事を続ければ良かった」
「一理あるね でもここでの活動も意義がある 貧困家庭の子供を呼んで瞑想などをやらせてる 好評なんだ ”ヤクなしのトリップだ“と言ってね」
「トリップするための慈善なのか?トリップしたい奴にはヤクを渡せ」
「さすが弁護士」
「好きな事は自分の家でやればいい」
「いたくない家もある」
「それはよく分かる」
「それじゃ」
「楽しかった」
「シェイマス 家を寄付する件だが今確認中だ 先走って模様替えするな」

パトリック「言いにくいが」
メアリー「じゃ やめて」
「この家を協会に寄付する件だけど…経済的に厳しいことがわかったんだ 現状の医療ケアを受け続けたら母さんの資産は底をつく つまり僕らは破産だ」
「彼はお義母さんを助けたいんです」
「当面この家を貸して…」
「絶対に厭よ!」
メアリー「落ち着いて」
「ここまでにしよう 疲れただろ 嫌な話でごめん」
「お願いだから…」

幼い頃を思い出すエレノア。
パトリック「どこかへ行きたい」
エレノア「どういう意味?」
「ここを出たい」
「そうね」

パトリック「人というのは相反する感情を同時に抱くとおかしくなる 僕は母に腹を立てつつ哀れにも思ってる それでいてやっぱり怒りが消えない!」
メアリー「ロバート みんなの所へ あの子が祖母嫌いになる」
「一人息子よりも赤の他人を選ぶような母親だ」
「傷ついたのは分かるけど」
「過去に何があろうとここは家族の場所だと思ってた そんな気持ちは追いやられこの家は今や悪意と恨みの象徴だ」
「違うわ」
「そうか?」
「そうよ お願い 子供たちと過ごして そのために来たの」

「プールで遊ぼう ロバート つれないな 遊ぶために来たんだぞ ジュリア ルーシーは?」
「やめてよ」
「いいだろ」
「やだよ」
二人でプールに飛び込む。

ケトル「やれやれね」
「怪我なんかしない ふざけただけだ」
プールの中に沈み込んで叫ぶパトリック。

「お楽しみ?」
「違う 処方薬だよ 君もどう?」
「持ってる」
「だよな」
「でも頂く 何年飲んでる?」
「4年」
「服用するのは30日間だったはず」
「全然効かないんだよ 副作用は出てる 健忘 脱水 激しい離脱症状 だけど眠れない 昔は遊びでやってたのに ギリシャでも」
「あなた隠してた」
「ああ済まない」
「別にいいわよ 昔話はよそう」
「楽しいのに」
「昔を懐かしむと若かった頃を思い出しちゃう」
「乱れてた 覚えてるのはセックスばかり セックスと可能性の日々だった 今あるのは“衰え”だけ 今夜は40ミリグラム飲まないと」
「多分Perhapsこういう会話はよくない」
「多分ね Perphaps Not」

眠れないパトリック。
「明け方よ」
「僕たちもう行くの?荷物をまとめないと」
「パトリック あなたは行かない 分かって」
「嫌だ」
「もう少しだけお父様のそばに パトリック 聴きなさい 大切なことなの この件はね ちゃんとやらなきゃダメなのよ 迎えに来るわ そしたら一緒に暮らしましょ 分かってくれるわね?」
出ていく母を見送る少年のパトリック。

ジュリアの部屋の周りをうろうろするパトリック。だがロバートに見つかる。
「お前か 何してる?」
「パパは?」
「トーマスにベッドを取られたから別の部屋に」
「ジュリアの部屋だ」
「ちょっと確認に トーマスだ」

走ってゆく少年パトリック。

パトリック「二人が同席するなんて夢みたいな機会だな」
エレノア「まるで…ゆ…夢…」
ケトル「会えて嬉しいわ お加減はどう?」
「とても…」
メアリー「ワインはだめよ 大人が飲むの」
ケトル「トーマスの誕生日に迷子ひもを買ってあげるわ」
「我が子には使わない」
「乳母は重宝してた」
「私は毒づいてた」
「嘘よ そんな事許さなかったもの」
パトリック「ダメ親なのは息子を相続から外す母か娘に高圧的な母かWhich of our mothers is the worst do you think? I realize the disinheritance thing gives Eleanor the edge, but yours is really putting in the work.」
メアリー「少しは何か食べて」
パトリック「ケトルが一週間いたら永遠に感じられるな」
ケトル「乳母なしじゃ大変でしょ」
メアリー「いる方が大変よ 子供は自分で育てたいの」
ジュリア「私は若くして母親になったから乳母が必要だった メアリーは子供に甘すぎる 子供を弁護士や企業の重役にしたいなら信頼とか誠実なんて教えちゃだめよ 実社会で生き抜けない」
ケトル「正論ね」
シェイマス「エレノアに会いに来たがここにいるね」
ケトル「座ってちょうだい 昼食を一緒に」
シェイマス「家族水入らずでしょ 邪魔はしたくない じゃ 少しだけ」
ケトル「作家ですって?私も何度か執筆を考えたわ アイデアはあるんだけど」
シェイマス「僕はいくつか冒頭部分を書きましたよ だがどれも冒頭だけだ」
パトリック「イラつく義母だ」
メアリー「無視して」
ケトル「私セミナーに参加するわ」
パトリック「参加者ならチェリーの季節にも泊まれる」
「実はチェリーにまつわる話がありましてね “人生の果実”だ」
「奥深いな それは普通のチェリーよりうまいのか?」
エレノア「チェリー」
「ここの家賃がボウル一杯のチェリーとは」
エレノア「だめよ 貸さない」
ロバートが席を立ってしまう。
パトリック「いいよ 僕が行く 僕が悪い」

「あまり楽しい休暇じゃないよな 頑張るよ」
「このうちをあげちゃうの?」
「おばあ様のものだ 昔から病的に気前がいい ただ恵まれない人や医療の研究にあげるならうれしくなくても理解はできるんだが」
「シェイマスにあげるんでしょ?」
「“協会“だよ 確かに…シェイマスだな」
「おばあ様を嫌い?」
「まさか お前も嫌うな」
ジュリア「感動的なシーンね シェイマスがケトルに取り入ってるわよ」
「メアリーの遺産まで狙ってる 奴を焼き殺そう」
ロバート「家を守れる?」
「いや」
「遺言書を変える前にケトルを殺せばいい」
「名案だ 怒りで気づかなかった」
ロバート「読書するよ」

パトリック「 I suppose I should be more careful.うかつだった」
ジュリア「About what?何が?」
「息子たちには悪意のない子供時代を過ごさせてやりたかった でもしくじったよ I've tried so hard not to pass on the malice and resentment, giving them a different sort of childhood. But they're just fresh mistakes.ロバートは気づいてる 昨夜君の部屋へ行った」
「なぜ私の部屋へ?」
「会いたかったから 入ったら喜んだ?」
キスするジュリア。
「次は入って」
「次があるの?」
「あなたも私も退屈だし孤独でしょ」
「同じ部屋にいたら“退屈“と“孤独“が渦巻く」
「“電荷“みたいに打ち消しあうかもよ」
「それじゃ実験してみるか」
「状況管理の下でね」
「退屈が消えるか 孤独がオーバーロードするか」
再びキスする二人。
「戻らなきゃ 情事を疑われる」

「聞くのが怖いけど何事?」
「自分を元気づけてる このブーダンの絵を売ればクインズパークにまともな子供部屋が二つある家を持てる」
「母親から盗む気?」
「シェイマスからだ 奴に家を取られるなら僕はこの絵を盗む ドライバーを」
「だめよ どこかで心の整理をしなきゃ 家のことじゃない 一緒にベッドへ」
「刺激的な言葉だが君も僕もトーマスが来ると分かってるじゃないか ドライバーだよ」
もうメアリーはいなかった。

夜酒を飲むパトリック。ジュリアの部屋の灯りが消える。またもやジュリアの部屋へ。
ジュリアは起きて待っていた。
パトリック「入っていい?」

パトリック「飛行機の時間は?」
ジュリア「9時までにはここを出る」
「僕らは…」
「いつも間が悪い」
「トーマスが起きる前に戻る」
「パトリック 夏の戯れよ」
「夏の戯れだ」

ジュリア「楽しかったわ」
パトリック「電話するよ」
「どうだか」
「前とは違う」
「そうね さよなら」
「シェイマスに挨拶したかった よろしく伝えて 来年はあなたはいないのね これあなたの車?小さいわ」
「ルーシー シートベルトを」

メアリーと見送るパトリック。「やっと帰った 家族水入らずだ」

壁から剥がした絵を元に戻すパトリック。
「こうするのが正しい」
「ええ そう思う」
「どうせ贋作だ サザビーズに確認したよ シェイマスよりも40年前に パリの画商が母さんをいいカモにしたんだ」
「黙ってましょ 知った時の彼を想像するの」
「“瞑想カプセルを買えない”」

「いろいろ心の整理をしないと」
「前にここでの出来事を話してくれた 話せば楽にならない?」
「そうかもなPerhaps 母さんは僕を守ってくれなかった この場所が守ってくれた それが奪われることになり逆上したんだ でも同時にここと縁が切れるのは嬉しいIf I didn't have my mother's protection, at least I had the protection of this place. Now that's being taken away too, I fear I might go mad. At the same time, part of me can't wait to get rid of the fucking place.」
「ロンドンへ戻ろう」
「それか別の場所へ 休暇をやり直さなきゃ」
「どこへ行くの?」

エレノアが書類にサインするのを眺めているパトリック。
「シェイマスはどこ?」と書いた紙を渡されるエレノア。
パトリック「事情があるんだよ」

笑い声が聞こえる。
「パトリックだろ?ケヴィンとアネットだ」
「なぜ家の中へ?」
「シェイマスが空き部屋があるからって…」
「シェイマス 邪魔して悪いが」
「とんでもない どうぞ」
「僕らがここにいる間は君の方が客だ 取り巻きを勝手に母屋に入れるな」
「僕はただ沢山空き部屋があるから…それなら協会には休暇として君らにこの家を使わせてやる義務などない」
メアリー「家にいて!」
「君も問題を抱えて…」
「僕が抱えるんじゃなく君らが起こすんだ」
「同じだろ」
「バカには区別できない 妻は君の擁護派だ 君が間抜けを装った悪党だと分かってないからな」
メアリー「この話は…」
「じゃコミュニティで集会を開こう」
「僕らは一員じゃない!」
「だったら出ていくことだ」
ロバート「お前が出ていけ!僕のおばあ様の家だぞ!」
「わかった 僕は失礼してこの負の感情を処理するよ」
パトリック「それがいい 儀式とかな もう一つあった 母のメモだ 文字が乱れてるがこう書いてある “シェイマスはどこ?”母はもう用なしか」
「君にどうこう言われる筋合いはない」
「母に会いに行ってくれ 楽しい話し相手じゃないが人として大切なことだろ」

父の事を思い出すパトリック。

メアリー「お義母さんの妹のナンシーさんの所へ行ってきます 私達がアメリカにいる間クロディーヌがお母さんの面倒を 帰ったらロンドンでお義母さんの落ち着き先を探します」
パトリック「いくぞ」
メアリー「おばあさまに挨拶を」
ロバートにキスをするエレノア「素晴らしい子」

パトリックを呼ぶエレノア「お願いがある 殺して」
「叶えてやりたいが犯罪だ」

パトリック「行くぞ」
メアリー「行きましょう」

思い出すのはクスリで苦しかった頃。

NYに着く一家。
「パパの隣に座って一緒にテレビでも見たら?明朝叔母様の所へ」
酒を飲むパトリックを見ているロバート。それに気づいたパトリック。
「量を減らしてる おやすみを」
手を広げるがドアを閉めてしまうロバート。

パトリック「何だよ ヘンリーもいる ナンシーの親戚で莫大な遺産を相続 政治の話をするな 彼は超タカ派だ」
メアリー「そう」
「富豪は嫌いだChrist I hate the rich!」
「やっかみねEspecially now that you're not going to become one.」
「特に今は Especially now.」

ナンシー「ゲーム室にシアター プールもあるわ」
「ご親切に」
「姉さんがした仕打ちの埋め合わせよ あなた働き始めたそうね」
「前から出版の仕事を」
「あの子たち家の中を走り回る?」
「いいえ まさか」
「叫ぶとかは?」
ヘンリー「自由奔放なのが子供だ」
「だけど森には入らないでね ライム病に感染するしうるしも生えてる 見た目はよくても沼地みたいな所だから危険に囲まれてると思ってBest to assume you're always in danger.」
パトリック「人生哲学だなA rule to live by.」
メアリー「二人とも!泳がない?」
「水着を出すよ」

ナンシー「パトリック!来て 素晴らしい品々が全て盗まれた 莫大な財産が消えたわ これはうちの物だった だけど義理の弟が150万ドルで売ってしまった」
パトリック「あなたは今でも十分に裕福でしょ」
「この家?本来はこんなもんじゃない」
「母さんのことだけど 回復が望めないのを悟って“殺して”と言ったんだ」
「パトリック そんな事聞いちゃだめよ」
「でも死なせてやるのが親孝行じゃないかな」
「じゃ救急車を手配して姉さんをオランダへ」
「行くだけでは安楽死できない」
「こんな不愉快な話はやめましょうよ」
「メアリーには話してない」
「どうして?」
「その方がいいかと」
メアリー「水着は?皆喜んでるわ」
「良かった でも絨毯をぬらさないで」
「夕食前に飲む? I don't suppose you'd like a drink before dinner?」
「父がお酒で人生を潰したから私は飲まないけどOh I don't drink, didn't you know? I watched it destroy Daddy's life. But you help yourself.あなたはお好きに」
「また後で」

「狭いな あったぞ」
酒を見つけて飲むパトリック。
「生き返った 磁気の像か」
飲んでるのに車を運転するパトリック。ご機嫌だ。

ガソリンスタンドで見かけた電話でジュリアに電話するパトリック。
「ジュリア パトリックだ 居留守使ってる?何だか…落ちてく感じなんだ 声が聴きたくて あの…愛してる」

ナンシー「警察に通報しようかと思ってたのよ」
パトリック「考え事だよ 思う所あってね」
「子供たちも外遊びで疲れたみたい」
「私のおじい様の代にはロングアイランドに150エーカーの庭があった もちろんその他に」
パトリック「ねえ 別の話にしない?」
メアリー「ヘンリーの“中東”に戻る?」
「やっぱ”庭”で」
トーマス「ママ 壊れた」
「”大人といる時子供は黙らせる”よHave you ever heard the phrase children should be seen not heard?」
「有名なしつけだけど馬鹿げてるYes. I think it's nonsense.」
「私はむしろ寛大すぎると思うわWell for my part, I've always found it to be entirely too liberal.」
「同席も許さない?So you'd rather not see Thomas?」
パトリック「叔母さん 僕の父親みたいだJesus Christ, Nancy you sound like my father.」
ナンシー「あなた方をもてなそうとしてるのよPatrick, we're trying to extend some hospitality.」
パトリック「アメリカの親類が僕らに施しをしてくれるのかAnd we're just poor white trash throwin' ourselves on the American kin.」
ヘンリー「受けなくても結構だよYou don't have to be accepted if you don't want to.」
パトリック「願い下げだYou're right. We don't.」
メアリー「ありがたいわBut we'd like to.」
「黙ってろSpeak for yourself.」
「子供のためにも言ってるのI do. I'm also trying to speak for our children.」
「誰のためにもならない どいつもこいつも引っ込んでろYou're not even speaking for yourself! Entirely too liberal? Come on! Fuck off!」

メアリー「24時間すら我慢できない 荷ほどきが無駄に」
「恋人がお休みだ」
「端に寄せるわ」
「子供に向ける愛を少しでいいから僕にも…」
「声を落として そうね 今のあなたに愛は感じない」
「しらふの時は?」
「しらふの時?正直言うとあなたなしの人生を考え始めてる あなたへの思いやりや忍耐はもう枯れ果てたの 飲酒の問題だけじゃなくジュリアとのことがあるでしょ 私も自分も貶めてる あなたの自滅に子供たちが巻き込まれてるわ ナンシーの父親のようにお酒で人生を潰すあなたをロバートは見てしまった でもお酒をやめない 変われないなら別れて欲しい」
部屋を出るパトリック。

来た時とは一変、冷たい視線で送られる一家。誰も何も言わない。

介護人に出されたコーヒーを飲むエレノア「素敵な…眺め」

母は(恐らく)忌まわしい思い出の場所だから売ってしまいたい。「ここと縁が切れるのは嬉しい」が母の代わりに守ってくれた場所だから売りたくない矛盾を持つパトリック。満足に言葉が出ず意思の疎通ができない母親と息子のディスコミニュケーションが生む家庭内不和。

かつての父が辺りを睥睨していた別荘の窓から外を見るパトリック。「息子たちには悪意のない子供時代を過ごさせてやりたかった」と思いながらも怒りや苛立ちや母への敵意を皆息子ロバートが見てしまう。気が弱くなると女性に頼ってしまう悪癖も。

第五話"At Last"
2005年4月、ロンドン。尊厳死を望んでいたエレノアが亡くなり、彼女の葬儀が営まれる。アルコール依存症の治療に専念するため、最愛の妻や子どもたちと別れて暮らしていたパトリックは、その葬儀で家族や知人と再会を果たす。葬儀の中、自らの過去と改めて向き合った彼は、最期まで理解し合えなかった母との関係や幼少期、そして現在の自分を見つめ直す。最後にパトリックが見つけた希望とは…。

髭剃りの音から入る。やがて手が映り上半身が映る。黒いネクタイをつけるパトリック。エレノアの葬儀だ。溜息をつくパトリック。タイトル。

「参列者がいらしてます」
「そうか 始めよう」

回想シーン。「お願いがある 殺して」

団体を探して電話をかけるパトリック。
「自発的安楽死協会だ 電話番号を教えて欲しい “自発的”って言葉が明るいから頼れるかと」

医師「自殺に走らせるうつという病気を治療すればいい」
「母は話すこともままならない うつには理由がある 病気じゃない 陽気さの方が理解できないよ」
「抗うつ薬を処方しようか」
「母はその薬のせいで生きるのが嫌になり僕に殺せと頼んだ」
「瀕死の人を救うのは栄誉だ」
「今の母が瀕死の人を救えるか?君の栄誉という意味なら母は委ねられん」

エレノア「スイスがいい」
パトリック「今調べてるよ 我が家のかかりつけ医だ」
「これから診察と少し質問をさせて下さい」
エレノア「お願いだから言わないで 私の母が…公爵夫人だと」
「絶対に言わないよ」
「“己の無力さに苦しんでいます 死を恐れるより望んでいます この生き地獄からどうか救ってください”」
パトリック「この文章で問題ない?署名する?」
「する」

メアリーに「義理もないのに葬儀の手配までありがとう 孤児になれたぞ!僕の夢だったんだ 満たされた気分だよ」
「挨拶で言わないでね 式次第にあった 代行はできない」
「大丈夫だよ」
「原稿は用意したの?」
「即興で話すよ 心の声ってやつ」
「それって賢明?」
「皆聞いたら逃げ出すかもね」
ニコラス「この年になるとあちこちの葬儀に出没する 家で死亡記事の誤りを笑ってても仕方ない “学校一のあばずれだった””戦争の英雄など大ウソ” 心を動かされることもあるがな 参列者が少ないな あれは信心家の友人たちかな」
「ニコラス 失礼して」
「金とは仲良くしろ 金で失敗して国営病院で最期を迎えた友人がいる “手厚い看護“を外国人の職員が行う場所だ 金でできることは二つ あれば使いなければ憎む それなら今は金を憎めと言うべきかな 君の一族は6代続けて遊び暮らしてきた さぞやスリル満点だろ 楽してきた父親たちの後で必死に働くのは 今回の事は喜んだっていいんだぞ 母上は苦しみから解放されたと言える」
思わず振り返るパトリック。

「エレノア 時間だよ」
「何もしないで 行かない」
「気が変わったの?」
「スイスはなし」

「意味不明と言ってもいいよね 母が頼むから医師や同意書を用意した 人を巻き込んどいて気が変わった?」
メアリー「怖いから自分でできず人に頼んだのよ」
「喜んでやってやるさ なぜバーがない?作ればもうかる」
「本人と話を」
「そんなの無駄だ 大事な話をしてくれたことがない」
パトリックを抱きしめるメアリー。

一人で家のみするパトリック。
「お母さまを想ってる?アネットよ フランスで会った」
「そうだね 僕の家の居心地は?」
「快適だわ 今シェイマスがあなたの部屋に 執筆中で参列できなかったの おつらいでしょ?」
「人生を物語るのは当人が目を向けたことだけだI was thinking how life is just the history of things we pay attention to. The rest is just packaging.」
「マヤ・アンジェルーいわく他者に影響を与えてこそ人生に意義がある他者の気分を害したとしてもね Maya Angelou says the meaning of life is the impact we have on other people, whether we make them feel good or not.エレノアは周囲を明るくした」
「挨拶に使っても?」
「どうぞ 私からあなたへの贈り物」
「アンジェルーのファンがいる あそこの老紳士 名前はニックだ」
「話すわ こんにちは ニック」
ナンシー「皇太子の結婚式の日に葬式なんて」
「そっちが楽しそうなら潜望鏡と国旗を持って行けば?」

ジョニー「大丈夫か?いい所だLovely venue.」
パトリック「僕も火葬して欲しいYes, I'm thinking of getting cremated here myself.」
「Well, no need to rush.そう急ぐなよ」
「 I was going to wait until I die.死んでからの話さ」
「How are you bearing up?辛いだろ」
「Weirdly elated. I think my mother's death is the best thing to have happened to me since,well, my father's death.妙に高揚してる 母の死は父の死以来最高の出来事だ」
「I'm sure it's a little more complicated than that.もう少し複雑だろ?」
「You're the psychiatrist. 精神科医だな」
「 Psychotherapist.心理療法士」
「Oh, whatever.どっちでも」
ニコラス「バカなことを言うんじゃない」
ジョニー「勘弁しろ ニコラスか」
「“いずれ逝く定めなら君が先で喜ばしい” それが私の精神だ “心の道具箱“にでも入れとけ」
アネット「面白い方だわ 宇宙が我々を愛してると知らない 愛されてるのよ ニック」
「君の方がましだな」
ナンシー「あのへんな人達は誰?なぜいるのよ」
「過激派か呪術医か」
「誰でもない うちの娘の精神分析医だ つまり悪魔だよ」
「いつでも開始できます」
「10分くれ まだ参列者が来る」
ジュリアがやって来る。
「キックオフの時間だよ この言葉であってるの?久しぶり」
「一年ぶりかしら また断酒してるの?」
「そう きっぱり」
「大変な時なのに偉いわね」
「むしろ幸いだ 順調な時ほど足をすくわれる」
「皮肉は健在Still not given up irony, then?」
「断つのが一番難しい 皮肉は二つの意味を同時に言えるHardest addiction of all. Forget heroine, that need to mean two things at once...」
「 私はニコチンパッチつけて喫煙中よ 辛辣さがやめられないI'm having enough trouble wearing nicotine patches and smoking at the same time. Don't take my irony, leave me with a little sarcasm!」
「辛辣さには一つしか意味がないSarcasm doesn't count. That only means one thing.」
「 こだわり派ねQuality freak.」
「入ろう 死体が列をなしてる」
「楽しみ 出席者は?」
「さあね メアリーが仕切った」
「かいがいしいわね 母親みたい」
「そうさ 子供ができて僕を夫だと気付いた とにかく母の残骸を焼却しないと」
「会えて嬉しい もう会わないかと」

「ずっとここに住む気?」
「男の隠れ家だと思えばいい」
「これって自殺部屋よ 冗談言ってないで わびしいったらないわね 悪いけど こんな部屋じゃムードがでない 来たくないわ」
「来なくていい」

メアリー「ロバート そこで何してるの?」
パトリック「いたのか おいで」
「何なの?」
「荷物を取りに」
「弟と上に」
「久しぶりだな 元気か?学校はどうだ?トーマスは?」
「行きなさい」
「後で上に行く」
ドアを閉めるメアリー。
「こまごました物を取りに来ただけ」
「持っていって向こうで酔いつぶれてよ 子供にその姿は見せないで」
「ランプぐらい買ってやるよ」
「いいから帰って」
「帰れ?あれが僕の家だと言うのか 僕には家なんか」
「やめて こんなの地獄だわ 自分を見てみなさい これこそ“なってないIntorelable”ことよ “接客がなってない”とか言うけど自分こそ人としてなってないわ!お義母さんと違い傍観はしない 自滅する男の哀れなショーを見る気はないわ 子供にだって見せない あんまりだもの いつまで続くのよ 本気で死ぬまで飲む覚悟なら自分の家でやってよね」
部屋を出ていくメアリー。

ロバート「パパ?」
去っていく息子の後ろ姿を見ながら苦しそうなパトリック。

ニコラス「たまらんな 心の道具箱のお出ましだ」
アネット「エレノアにぴったりの曲 そして思い出されるのはアフリカ系アメリカ人との強い絆です 皆さんは今日エレノアを知る 私の知るエレノアがあなたの知るエレノアでなければ私はこういう “受け入れ”て 彼女との出会いは癒しのドラム会でのこと プロヴァンスの家に招かれました 皆さんもよく知るあの家です 家に着くと彼女がいた 手をももの下に入れていた その姿は世界に思いを馳せる孤独な子供 未来を夢見ているようでした すぐに彼女は両腕を広げ我々を迎えました あの無垢で子供のような姿が忘れられません」

手をさわろうとして引っ込めるパトリック。

生前のエレノアとメアリー
「あの子はデヴィッドの子なのよ」
「彼を思い出させる?」
「ほんの一瞬 怒った時や辛らつな時にね 結婚して丸くなった あの子から父親の話は?」
「昔ほど取りつかれていない」
「取りつく?見せたいものがあるの たくさん手紙をもらうの 大抵は助けを求めるものよ でも彼女は子供の頃ここに泊まった女性 心に深い疵を負ってるみたい」
「そう 明らかにね 不幸せでお酒やうつに苦しんでる それを私のせいだと」
「彼女を?」
「覚えてる 素敵な家族で彼女は明るい子だった デヴィッドは子供には厳しくなかった むしろ扱いがうまくおどけて見せることもあった あの家族はここで楽しそうにしてたし実際感謝してたわ」
「“悪戯をされた”と」
「夫に限ってありえないわ 絶対在り得ない」
「怪しいとは?」
「いいえ」
「何の気配も?」
「ないわよ だから腹が立つの “あなたを許す“と 彼女を守らなかったのを許すと 守るって何から?そんな事知らなかったもの 息子には黙ってて心を乱すだけだわ こんなグダグダと 人を悪いだの許すだの 夫は暴君になることもあったでも私は頑張った 息子を守るために必死に頑張ったの」

パトリック「起きてる?」
メアリー「出会った頃話してくれたでしょお義父さんのこと また話し合わないと」
「もう言うことはない」
「あなたからお義母さんに話すべきよ つらいだろうし嫌だろうけど」
「じゃなぜ」
「だってお義母さんは逃げてる」

ニコラス「聖書など聞き飽きた 次は誰だ?」

パトリック「素敵な眺めだ 僕もいい?うまい言葉が見つからないから単刀直入に言うよ 子供の頃家族でここに来てた頃そしてその後も 僕は父さんに…レイプされてた」
「私もよMe Too.私も同じMeToo.」
驚くパトリック。

目の前にあるのはクエスチョンマーク。
「実は挨拶を用意してません 御覧の通りです 今日のお話にあったのは母が子供のように無垢だったこと 私が言えるのは子供の頃 父がまだ…なぜ母は…なぜできなかったんだ すみません 申し訳ない 無理だ」
出ていってしまうパトリック。

外でタバコを吸うパトリック。
「母が無垢だっただと?」
「違ったとしても今は死を悼む時で」
「やめてくれ この感情は悲しみじゃない 怒りだよThis isn't grief or mourning. This is rage and my heart is racing with it!母は知ってたんだ 父が何をしてたか知ってたはずだ 親として失格だ 子供を守らなかったんだから 僕はだめな父親で夫だ 悪いと思ってる でも僕の子供を傷つけるのは許さない 愛する者は守らなきゃ 母はどうだ?だから父は母といたんだ 大勢の子供や息子がおまけでついてくる 幸運だと思ったろうな 父は何年も僕のことを想うがままにいたぶった あんなことをするべきじゃ…やめてくれ メアリー よくなったと思ったがこのざまだI thought I was getting better but I'm such a fucking mess.」

「自殺を考える頻度は?」
「若い頃は変にも思わず常に考えてた 静かな海沿いの道や薬局にいる時 車を走らせてる時に」
「現在は?」
「窓の外を見ると高さを考える」

メアリー「頑張れそう?」
パトリック「やってみる」

「トーマス ケトルおばあ様は?」
「いつも通り」
ケトル「相続排除の件があって葬儀は遠慮したの でも会食は別 応援に来た どうせうちの近所だしね」
ニコラス「この年で新しいクラブに入るのは胸が躍る オンスロー・クラブか 初めて聞く それは長男坊か?デヴィッドがいないのが残念だよ “テレビにかじりつくな”と孫に諭したろうな 思い出すよ ブラウン管を作る児童労働者を彼と見た時だ 彼は”放射線の影響があの子らの性器に及ぶ”と」
「ロバート ママの所へ行け 娘さんはどうしてる?」
「元気だと思うがな 何年もあってない」
「父上がこの場にいたら楽しんでいたろう 欠陥のある親だがユーモアがあった」
「ユーモアはない」
「笑いの要素を見出した」
「笑えない事柄にね」
「残酷と笑いは近く紙一重だ」
「近いClose?近親相かんは笑えないね」
「父上は世間の考えを見事なまでに軽蔑してた」
「僕の素敵な父が恋しかろうね でも母の弔問客の相手で忙しいんで失礼するよ」
アネット「大丈夫?ニック 戸惑うわよね」
「ニックと呼ぶな!」

「息ができない 喉が詰まって 父の代理人のニコラスが息子に触った アミトリプチン女だ ここで何してる」
「誰?」
「何でもない 外を一回りしてくる」

外を走るパトリック。

セラピーを受けるパトリック。
「無理でしょ ケーキからブランデーは抜けない」

ベッキー「パトリック 探してたの 追い出されちゃった うつなのに貢献は無理 これは妹の住所」

エレノアの写真を見るパトリック。
ジョニー「よく戻った」

パトリック「結論はつけられないよ」
ジュリア「疲れない?ただ憎めばいいじゃない」
「父を憎もうとしたが失敗した いろんな思いがある 軽蔑 憐れみ 怒り 怖れ 情も感じる」
「情?Tenderness」
「父も母も不幸せだったからね でも子を持つ親の身としてはやはり憎い」
「死を悼むのは嫌 アイラインが崩れる」
「母を好きだったのか?」
「そうじゃなくて お葬式とかくさい映画とかで泣けるでしょ 具体的な理由はないの 漠とした哀しさってとこね」
「理由と哀しさが同じって場合もある 時々だけどね 何も考えずに反応してみたいよ 火に来るとか距離を置くとかしなくてさ」
「私に言わないで」
「そうだね」
ウェイターの女性「すみません こちらは禁煙です ここも倶楽部の一部でして全館禁煙ですので」
パトリック「いいよ 僕がやる 悪いね」
「慣れてますので」

「君 いいかな お願いがあるんだけど 別のこと 聴いてもいいかな 君の電話番号」

くしゃくしゃにした紙を広げるパトリック「“いかれたことがしたいなら”」

メアリー「息子にも要求を伝えられず辛かったと思います 元気なうちに気持ちは伝えるべきですね こんな時イギリス人は“明るい話題が出たぞ”と」
ケトル「まだ乳離れしないの?」
「母さんと違い無視はしない」
「メアリー」
「お兄ちゃんの所へ」
「意思の疎通は図ってた」
「父さんが死んだ時私に何て言った?」
「悲しいって」
「“元気出して“って “元気出してCheer Up“ 母親という自覚がないのよ」

「ご気分は?」
ケトル「自分の娘に頭をかみちぎられた気分」
「娘さんは心の病?」
「何ですって?」

「心の病を抱えてます?」
「私と面識が?」
「そのての人には感じるんです 抱えてません?」
「いいや 心の病など抱えておらん 今は人が退化しつまらん会話でフロイトの戯言を垂れ流す “子供は皆天才“と言っといてからに今度は“皆病気“という 何たら障害だのが遊び場に蔓延中だ いたずらされたと言えなきゃ自分のいたずらを懺悔する 私は心の病など抱えたことがない 手がつけられんほど心身ともに健康だからな 失せろ!」
「とうとう現れおったな まるで法廷劇の証拠物件だ 呪術を使う開業医 娘を私に背かせおって 下劣な妄想をでっちあげ人の心に植え付ける 凶暴な赤ん坊だの近親相かんだの…」
倒れるニコラス。
「自分で仕掛けた爆弾でドカンね」
「あの人祈ってる?いい人ね」

救急車で運ばれるニコラス。
アネット「こんな日に辛いわね 安心してニック 私がついてる」「心理学では現状打破という カリフォルニア的じゃなく感謝してる」
ロバート「一緒に帰ろうよ」
メアリー「歓迎するわ」
パトリック「いや 週末に会おう 帰ったらバタンキューだ」
「じゃ気が変わったら来て」
ロバート「気は変えるためにある そうでしょ?」

運転手「お子さんだ 幸運を祈るよ」
「いかれてるだろうと思うけど戻ってくれる?まだ帰れない」
「全く あんたらは」

パトリックが来ると皆拍手。

「パトリック あなたなの?アネットよ ニックは搬送中に亡くなった 残念だわ」
「いや 息切れ もちろんすごく悲しい」
「得難い人だったわAmazing man, completely unique.」
「そう願う ニコラスだらけの村は怖そうだLet's hope so. The idea of a whole village full of Nicolas Pratts is rather terrifying.」
「パトリック?」
「今日は君の話を聞けて良かった」
「彼女は母親として欠点もあった でも責めを負うべき人ほど憐れみが必要な時もあるShe might not have been the perfect mother. That must anger you. But sometimes those who deserve the most blame also deserve the most compassion.さよなら パトリック」

「パトリック そこにいるのか?」どこからか父の声が聞こえる。
パトリック「もしもし パトリックだ 亡霊の相手はやめて人間に会おうと思ってI've decided I'm bored of ghosts. I want to see people instead.」
メアリー「あらOh, I see. OK.」
「気を変えるには早すぎた?Or is it too late to change my mind?」
「いいえ 気は変えるためにあるものだから 子供達が喜ぶわNot at all. After all, that's what it's for. The boys will be delighted to see you.」
電話を切るパトリック。

父の過去。
「トイレに行く」
「すぐ戻れ」
「パトリック そこにいるのか?パトリック!ここに座れ」
「嫌だ 言うことは聴かない」
「大好きな父さんにそんな口のききかたはよせ」
「あんな事すべきじゃないNobody should do that to anyone else」
口を開けるデヴィッド。そして泣き出す。
「そうだな」
黙って父を見つめる少年パトリック。

上着を着て部屋を出るパトリック。

生前の父に言えなかった言葉「Nobody should do that to anyone else」を幻とはいえやっとぶつけることができたパトリック。よしながふみ漫画「西洋骨董洋菓子店」 で誘拐された過去を持つ橘の独白「せめて教えてくれ何も俺に返してはくれないなら」とどことなく響き合う。

3話以降友人や妻に忌まわしい過去を話せるようになったパトリックの最後の障壁だった母エレノア。やっと話したというのに「Me,Too.」の二言で片づけられてしまっては二重にやりきれない。父とは異なり息子を守ろうとする良き親になることができたのがせめてもだ。


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最終更新日  May 30, 2020 12:00:12 AM
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