金剛石のレンズ The Diamond Lens and Other Stories フィッツ=ジェイムズオブライエン 創元推理文庫
『From Hand to Hand手から口へ』 作家ウルマン氏はオペラの帰りに鍵を開けようとするが、なぜか開かない。外は雪で寒い。ぼろを着た少年達の所にでもしけこもうか、と考えていた時に「私のホテルでただで一晩過ごさない?」と、めっちゃいい話を持ち掛けられる。はい、いい話には裏がある。そのホテルの壁には目、口、鼻、手がついていた(キモすぎる!)。そしてウルマンに課されたのは、毎日コラムを書く事だった。作家とはいえ気難しいウルマンは、原稿なんてまっぴら御免だったが、何とそこで金髪の美女(そうなんだよ美女は金髪なんだよアメリカの場合)ロザモンドと出会い、彼女と一緒にホテルを出るために奮闘し始める。しかし彼女「足がない」とヘンな事を言い始めて。いや、いや、このオチは反則だと思うぞ。
『The Worndersmithワンダースミス』
『A Dead Secret絶対の秘密』 医師を訪ねてきた青年は「自分は絞首刑になるはずなのに、こうして生きている。そもそも私は絞首刑になるはずじゃなかった!」と言いながら延々自分のこれまでを話し出して、最後は隙を突いて姿を消してしまう。ホントか嘘か煙に巻いた話。
『The Dragon -Fang Posessed by the Conjuror Piou-Lu手妻使いパイオウ・ルウの所有する龍の牙』 皆が集まる広場で、手妻使いパイオウ・ルウが手品を披露する。その夜官人ウェイ・チャン・ツェの家を訪ねたパイオウ・ルウは自分の正体を明かすのだった。当時中国は漢民族の明が亡び、清だったという点がミソ。
『Seeing the World世界を見る』 優れた詩人になることを夢見る男性が「すべてを見ることができる力」を与えられる。しかしこれ、透視力を手に入れたもので、所謂見たくないものまで見てしまう。さて、詩人は幸せだったのか。
『Jubal,The Ringer鐘つきジューバル』
『The Pot of Tulipsチューリップの鉢』 資産家が妻の不貞を疑い続けて亡くなった。孫娘と婚約中の男性は「貧しくても彼女と結婚する」と誠実な態度を見せるが、そんな彼の前に資産家の幻が現れて。珍しいハッピーエンド。
他 『The Diamond Lens金剛石のレンズ』『What Was It?A Mysteryあれは何だったのか』『The Lost Room失われた部屋』『The Child That Loved a Grave墓を愛した少年』『Mother of Pearlパールの母』『How I Overcame My Gravityいかにして重力を克服したか』 本邦初訳作を含む14篇を収録。