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July 27, 2024
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みなさんこんばんは。パリオリンピックの開会式を間近に控えたフランスで、高速鉄道TGVが複数の路線で設備が放火される被害を受け、この影響で運行が大幅に乱れています。フランス国鉄は鉄道網を狙った大規模な攻撃だとし、検察当局は組織犯罪の疑いで捜査を始めました。
今日もゾラ作品を紹介します。

制作 (下)​
L'Œuvre
岩波文庫
エミール・ゾラ

 クリスティーヌと結ばれ、4年間の田園生活のあとパリに戻ったクロードは、以前にも増して絵画制作に没頭する。制作意欲も旺盛だ。
「創造への欲求が指先よりもつねに先行するという彼の習性から、一つの作品を手がけているとき、はやくも次の作品に思いが移行するのだった。つまり、焦燥のみがたえずあり、いま描いている作品がすぐにだめと思い、一刻もはやく厄介払いしてしまいたくなるのである。もちろん、焦ったところで何も生まれない。そこで、やむを得ず妥協しては、少しごまかしをするなど、芸術家としての良心を傷つけることをすることもあったが心の中ではいつも、次に描くものこそ、ああ!次に描くものこそ、すばらしい、雄大な、非の打ちどころのない、不滅の傑作になるのだと、夢想しつづけるのであった。それは、永遠に到達することのない蜃気楼だろう。だが、これこそ、芸術に呪縛された者の勇気をふるい立たせるものなのだ。」
 クリエイターなら、クロードと同じことを常に心掛けているはずだ。しかし満足な絵が描けず苦闘するうちに、自らの描く絵の中の女に魂を奪われてしまう。こうなると不幸なのは家族である。まだ幼い息子ジャックはろくに面倒を見てもらえず、クリスティーヌは

に苦しんでいた。ライバルは絵の中の女で、先述したように、女といっても想像上で
「彼はパリを裸の女のように美しく輝く都と見立て、その情熱の都を表現したかったのである。そういうわけで、彼は自らの情熱である女性の美しい肢体、豊かな胸への憧憬を、その大作に全力を注いで投入したのだった。」
クロードの中で常にバージョンアップされているのだから、生身の女性の敵ではない。

「彼の肉体への情熱は、自らの描く作品の中の愛人たちに移ってしまっていた。腕一本、脚一本、すべて彼の努力から生まれる女たちだけが彼の血を沸き立たせていた。あの田舎で、熱烈に愛し合っていたとき、彼は生きた一人の女性を胸に抱きしめることによって幸福を手にしたと信じたのではあったが、それもいまにして思えば、永遠の幻影にすぎず、二人はたがいに他人のままにとどまったというわけだ。」
「彼は、自らの絵筆によって絵の女が生きたり、しおれたりするのに応じて一喜一憂しているのだった。これが恋でなくて何であろうか?他の女を生み出すため、彼女がその肉体を貸しているとは、なんという苦しみか!」

 あれほど夢と希望に燃えていた若者たちも、仕事についたり結婚したりと、少しずつ現実の生活に戻っていく。しかしクロードだけは相変わらず芸術にしがみつく。だがそれは家族にとって、とてつもない不幸だった。

 クリスティーヌの懸命の説得もむなしく理想の女を描こうと苦闘するが、やがて敗れて精神を病む。クリスティーヌは思い余って、クロードの前で裸身になって「絵の女なんかより私を抱いて!」と迫る。ゾラの作品でこんなホラー&幻想めいた場面が出てくるのは珍しい。全然色っぽくないのはなぜか。本書を一読したセザンヌが、感想を書いた後でゾラと絶縁したのは有名な話。


【中古】制作 下 /岩波書店/エミ-ル・ゾラ(文庫) ​​ VALUE BOOKS






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最終更新日  July 27, 2024 01:55:34 AM
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