inti-solのブログ

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2024.11.22
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テーマ: ニュース(100302)
カテゴリ: 戦争と平和
【解説】 国際刑事裁判所の逮捕状、イスラエルの地位に大打撃

イスラエルでは、政治的立場を問わず、主立った立場の人が一様に激怒している。
対照的に、ハマス、パレスチナ聖戦機構、そしてガザの一般市民は、ICCの決定を歓迎している。
ICCは、ガザ地区で続く戦争において戦争犯罪や人道に対する罪が行われたとされており、ネタニヤフ首相とガラント前国防相とデイフ司令官の3人がそれについて「刑事責任」を負うものと考える「合理的根拠」があると説明した。
ICCの決定を受けて、イスラエルのヘルツォグ大統領は、「正義と人類にとって暗い日」だとして、ICCは「民主主義と自由ではなく、テロと悪の側に立つことを選んだ」のだと非難した。~
対するハマスは、デイフ司令官への逮捕状が出されたことにはコメントせず、ICCの決定を歓迎している。~
理屈上は、ネタニヤフ氏やガラント氏がいずれかのICC加盟国の領内に入った時点で、その加盟国は首相らを逮捕し、ICCに身柄を引き渡されなくてはならない。~ネタニヤフ氏が最も最近国外に出たのは7月のアメリカ訪問だ。同氏は理論上、ICC非加盟国のアメリカには今もリスクを負うことなく入国できる。
昨年にはイギリスなど複数の国を訪問しているが、その多くはICCに加盟している。
ネタニヤフ氏が逮捕されるリスクを冒してでも、これらの国を再訪問するとは考えにくい。それに加盟国側も、自分たちが首相を拘束しなくてはならない立ち場に置かれるのを望まないだろう。~

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私から見れば、逮捕状発行は当然だとしか思えません。ICCは2023年3月にロシアのプーチン大統領に逮捕状を出しています。もちろん、それも逮捕状が出て当然の所業をプーチンはウクライナに対してやったわけです。そして、プーチンが戦争犯罪で逮捕に値して、ネタニヤフがそうではない、などということは、いかに考えてもあり得ません。
イスラエルは反発しているようですが、そりゃもちろんイスラエルの立場ではそうでしょうけど、その反発にも正当性はまったく感じません。
ちょっと意外だったのは、喧嘩両成敗式に、ハマスのデイブ司令官にも逮捕状が出ているにもかかわらず、ハマスはこの決定を歓迎している、ということです。ハマスの側はハマスの側で、「俺たちを犯罪国家イスラエルと同列に扱うな」と怒るのかと思いましたが、そうではないようです。ハマスは公式には認めていないようですが、実際にはデイブ司令官が死んでいるのは確実という事情もあるのでしょう。

ICCがこれまで逮捕状を発行し、あるいは実際に逮捕したのはほぼすべてアフリカでの人道犯罪でした。ICC設立以前の人道犯罪を裁いた国際法廷としては、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の例もありますが、それでも全般的にアフリカの人道犯罪が主に裁かれているのは確かです。
もちろんアフリカ諸国に民主政治が定着しておらず、独裁者や武装勢力による力と力のぶつかり合いで少数派に対する弾圧などが数多く起こっていることがその背景にはあります。
とはいえ、その種の人道犯罪がアフリカだけで起きているのかというとそうではないわけで、それなのにアフリカの人道犯罪だけが裁かれることについては、欧米にアフリカを遅れた地域と見做す差別意識があるからではないか、というアフリカ諸国の反発があります。
そのことも背景にあって、南アフリカはイスラエルのガザ侵攻を国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことがあります。アフリカの中のリーダー格の国として、「国際社会よ、たまにはアフリカ以外の人道犯罪も裁け」という意思を示したものともいわれます。
そういったことも、今回の逮捕状交付の背景にはあるのかもしれません。



しかし、それではICCの逮捕状なんて無意味か、というとそうでもありません。
ロシアのプーチンは、ICCの逮捕状が出て以来、ICC加盟国への渡航をほとんどしていません。今年9月にモンゴルを訪問したのが加盟国に渡航した唯一の例です。ただし、モンゴルは旧ソ連・ロシアに従属する国なので、プーチンを逮捕するという選択肢は元々なかったはずです。
一方でプーチンは昨年南アフリカで開催されたBRICS首脳会議を欠席しています。南アフリカはロシアよりの立場を取っており、政権の意向としてはプーチン来訪時に逮捕するつもりはなかったのですが(そもそも、ウクライナ侵攻以前ですが、南アルプスがプーチンを招待していた、という事情もあります)、国内での反対派の存在もあり、条約上の義務を破ってプーチン訪問受入れを強行できなかったわけです。
親ロシアの南アフリカの訪問さえ断念せざるを得なかったくらいですから、それ以外のICC加盟国を訪問することは不可能です。国家元首であるプーチンを逮捕することも、また条約を破って容疑者を放免することも、どちらも問題とリスクが多すぎるため、そんな究極の判断を強いられないようにする、つまり訪問は謝絶、ということになるわけです。 ICC加盟国 はヨーロッパ諸国、日本、アフリカ中南部の大半の国、米国以外の南北アメリカ大陸のほとんどの国、オーストラリア、ニュージーランド・・・・・多くの国があります。これらの国々を事実上訪問できないことは、外交上は大きな影響があるでしょう。
イスラエルの首相も同じことで、渡航できる国の選択肢が大幅に減る(非加盟国でも、イスラエル首相がイランやシリアを訪問などできるわけがありません)ことのマイナスは、BBCの記事が言うまでもなく、かなり大きいでしょう。





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最終更新日  2024.11.22 23:10:02
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