PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

サイド自由欄

今日、もらった感動へのお礼を綴りたい。
そう思って書いていると嬉しさがよみがえって
笑っているうちに楽しくなる。
読み返した時、また嬉しくなる。
だから、明日が楽しみ!
October 8, 2009
XML
カテゴリ: 舞台【音楽あり】


関東に上陸、

でもお昼にはそれるでしょう、

の予報を信じ、
天王洲アイルにある「銀河劇場」へ。

JR、地下鉄、軒並み運転がストップされている中
「平常通り、運転しております」のモノレールに乗って。

窓から見るやけにクッキリした青空と
田んぼのように水を湛えた草原。

モノレールの車窓から

「蟹工船、小林多喜二」 

現代国語のテストのために覚えた名前。
いままで、とくに興味を持ったこともなく。

ところが作者小林多喜二、
29歳で亡くなった彼のドラマを観ることに。

紀伊國屋サザンシアターで
「兄おとうと」を一緒に観たときにもらった
次回公演のチラシ。

「組曲虐殺」

白の背景に和田誠さんの描く、
ほのぼのとした出演者たちの似顔絵。
似つかわしくない「虐殺」の文字。

そして、チラシの裏面に書かれた
「拷問死、その損傷の詳細な記述」

こまつ座だし、
「ロマンス」ですっかり見直した井上芳雄の主演。

だけど、題材が重すぎるから、やめておこうかな、

といったんは思ったのだけど、友人が行きたいというので
それならばとチケットを取って…

警察を批判する本を書けないように
指を折られ、体にいくつもキリで穴をあけられ、
殴られすぎてはれ上がった体。

そんなかわいそうで、怖いのは観たくないのが本音。

けれど、井上ひさしさんは

どうしてこの作品を書こうと思ったんだろう。

どうして井上君は出演しようと思ったんだろう。

のびやかな歌声、軽やかなダンス。
プリンス井上芳雄と真逆ともいえる作品なのに。

「モーツァルト!」や
「ミーマイ」のように楽しい作品が好きな
井上君の若いファンの女の子はびっくりしちゃうだろうな。

伝えなくてはならない何か! を伝えるために書いて
そして、演じているのなら、心して観るぞと覚悟して行った。

「台風で交通がストップして行かれなくなっても
立て替えてもらったチケット代は払うから安心してね」

と言ってた友人の心配は無用になったけど、
ダイヤが乱れた交通機関のため、15分遅れの開演。


組曲虐殺

さて観た感想は。

拷問のシーンはないのよ。
すくなくとも舞台上では。
そして、傷だらけの井上君の死体姿も。

姉(高畑淳子)、婚約者(石原さとみ)、
同士でやがて妻(神野三鈴)、
多喜二を愛する女たちの愛しい物語だった。

国家権力側の警官たち(山崎一、山本龍二)も好演で、
誰も悪い人はいない。
その時代を精一杯生きていただけ。

プロローグ。

舞台奥、黒のセットの上に
音楽を担当する小曽根真さんが
ピアノに向かっている。

やがて下ろされたスクリーンには海。
多喜二の故郷、小樽の海かな。

そして6人の出演者が舞台上に揃い、井上パン店の歌を歌う。

評判のパン屋、と明るく歌いながら、

実は貧しい人からパンを買うお金を
搾取しているのは誰?という、

ゴングが鳴って早々、パンチが打ち込まれる。

多喜二を引き取り学資を援助しつつも、
可能な限りこき使った伯父へのあてこすりのような歌。

その伯父さんの遺族が聞いたらちょっとツライかもね、
と余計な心配をしてしまった。

姉たちが多喜二の現状を把握するまでが1幕。

書くことで官憲からにらまれて
隠れ住む多喜二を
姉と婚約者が苦心惨澹しつつ、
支える様子が2幕。

多喜二を捕まえようとした警官に向かって
思わず護身用のピストルを向ける婚約者を
多喜二が諭すシーンがある。

「ピストルはいけないよ」  

ほんとはそんな落ち着いてる場合じゃないけど。

「言葉で訴えなくてはならない」

と多喜二が婚約者に説明する場面は

井上ひさしが
多喜二に代わって
私達へ伝えたいメッセージだ。

「チャップリンの真似をして、よく笑わせたてくれた弟」

姉役の高畑淳子さんがホントに素晴らしい!

テレビのバラエティなどで天然、
お茶目なキャラでおなじみ。

舞台では、初めてだったけど、
思った以上に魅力的な女優さん。
テレビの時の100倍良かった!

胸がふさがれそうな苦しいテーマを
あったかさを感じる方言と
人懐っこい笑顔で救ってくれました。

(かつ、安っぽくしなかった、絶妙なさじ加減!)


なんで、こまつ座に石原さとみ?

とアイドルの出演には疑問の私でしたが、
可憐で一途な女の子の役を好演していて、
すっかり石原さとみが好きになりましたわ。

拷問のシーンを書かなくても、
ちゃんと
小林多喜二を伝えることができるんだ!と
今更ながら感心。

アッパレ!井上ひさし。


最後に
何枚も映し出される井上君のモノクロの写真。

その表情がなにより雄弁に物語っていました。

最初のかわいい高校生(中学生)の時と
後のほうでは全く
顔つきが違うもんね。

「大人になったねぇ!」



「エリザベート」のルドルフを演じ、
瞬く間にミュージカル好きの女性の
アイドルとなった頃の
そよ風のように爽やかだけど
頼りなげな男の子だった井上君。

その頃は、全く眼中になかったけれど


ロマンス→いいかも、と
だんだん好きになって来た私には
納得の変遷。


男らしい、凛とした井上君に拍手!

そうそう。
ピアノ演奏(これが作品とマッチしていてよかった!)
小曽根真さんは妻役の神野三鈴さんのご主人。

出演者や会場が、
演奏者に対して拍手を贈るときも

思い込みのせいか、
お二人がひときわ、
優しい熱いまなざしを
交わしていたように感じた手書きハート

そういう愛も支えてくれたので

恨んだり、責めたりではなく
もっと大きなドラマになり得た気がするのは
深読みしすぎ?

銀河劇場

(2009/10/8 銀河劇場 こまつ座 「組曲虐殺」)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  October 12, 2019 10:18:56 AM
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: