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NHK「燕は戻ってこない」が終了。いろいろと予想を裏切られた。基の選択も、悠子の選択も、リキの選択も、リリコの反応も、すべてが予想とはちがってました。◇奇しくもリリコが、産後うつを「ホルモンの奴隷」と言いましたが、人間は、「遺伝子の奴隷」でもあるし、「生まれ育ちの奴隷」でもあるし、「名前の奴隷」でもあるし、「経済の奴隷」でもあるし、「法律や契約の奴隷」でもある。女は「結婚」と「出産」の奴隷でもある。リキの最後の選択は、そのすべての呪縛を振り切ったものだけど、それは自由である同時に不穏でもある。◇基と悠子は、あえてDNA鑑定をせず、リキの子の「里親」として手を取り合う、…という選択をしました。たんなる「里親」なのだから、リキが片方の子を連れ去ったとしても、おそらく彼女の選択を尊重するだろうし、草桶夫妻は文句を言わないはずです。実際、訴訟を起こしたところで、リキが戸籍上も母親なのは事実だし、事前の契約が双子の想定をしてたかは怪しいし、遺伝的な父親が誰なのかも不明だから、草桶夫妻が《愛磨》を取り戻せる保証はない。ただ、基の母の千味子は納得しないかもしれません。◇一方、リキが自力で子育てできるのかは不安だし、出生届が《愛磨》なのに、彼女のことを《ぐら》と呼び続ければ、出生名と通名とに齟齬が生じることになる。さらに、将来的にDNA鑑定をした場合、リキの連れ去った子と草桶家の育てた子が、あべこべの結果になってしまうかもしれない。子供たちが、自分たちの出自を知りたいと主張したときに、どんな結果が生じるのかも分からない。…帝王切開の傷が残っただけでなく、さまざまな禍根と不穏な要素を残す結末です。◇もとより、これは代理出産を奨励する作品じゃないので、ハッピーエンドにならないのは当たり前だし、想像しうるかぎり、もっとも不穏な結末を選んだってことでしょう。桐野夏生の原作があるとはいえ、長田育恵の脚本作としては、朝ドラ「らんまん」との作風の違いに驚かされる。わたしが思うに、「ぐりとぐら」という絵本も、卵を食べる物語であることが意識されている。「ぐりとぐら」が他者の卵を食べたように、彼らの生命も他者から食いものにされてるのでは?そういう怖い話ですよね。◇わたしは、「いとうせいこうの登場に意味があるに違いない!」…と予想したのだけど、それ自体がミスリードだったのかも (^^;結局、さほどの意味はなかったのですね。富田靖子が序盤で語っていた、「結婚すれば自由になれる」という遺言も、ある意味ではミスリードだったように思います。燕は戻ってこない (集英社文庫(日本)) [ 桐野 夏生 ]価格:1,100円(税込、送料無料) (2024/7/3時点) 楽天で購入
2024.07.03
第9話は全体的にゆるくて、ちょっと昼ドラっぽい雰囲気を感じました。◇絵本の「ぐりとぐら」って、双子の隠喩なのかもしれないけど…あれは卵を食い物にする話なので、このドラマの文脈的にちょっと怖い気もします。それから、オス犬が「去勢しても虚勢を張る」…って話も、いまひとつ脚本の意図するところが分からなかった。◇リキが基(稲垣吾郎)と結婚するという選択は、かつて佳子おばさん(富田靖子)が語った、「結婚すれば自由になれる」という示唆に従うことにもなるのだけど…ちょっとドラマの結末としては考えにくいのよねぇ。なので、リキが基と結婚することはないと思う。そして、その場合、むしろ問題になってくるのは、すんなり子供を引き渡せるのかどうか、でしょう。出産直後にしろ、子育てを1年間手伝ったあとにしろ、子供と離れるのが辛くなる可能性はあるよね。その場合、どちらに親権が認められるのか。かりにDNA鑑定の結果、基の遺伝子がぜんぜん入ってなければ、(契約との兼ね合いにもなるけど)リキが親権を得る可能性が高まると思う。逆に、基の遺伝子を受け継いでるなら、草桶家の子供になる可能性が高まるでしょう。二卵性の双子なら、片方がリキの子になって、片方が草桶家の子になることもありうる。◇もしも、リキが子供を引き取ることになれば、リリコの家に居候したまま、シングルマザーとして生きていく、…みたいな選択もありうるだろうし、実際、そういう展開にでもならなければ、いとうせいこうまで出演させた意味がないのよね(笑)。
2024.06.28
NHK「燕は戻ってこない」第8話。ようやく悪阻も治まってリリコの邸へお引っ越し。江戸時代の春画に描かれてたのは…若い間男を招き入れて、後先も考えずにセックスを楽しむお妾さん。お妾さんって、生活の不安もなくて自由だよね!◇平安大河「光る君へ」では、宣孝がまひろを妾にしようとするときに、まひろ:忘れ得ぬ人がいてもよろしいのですか?宣孝 :よい。それもおまえの一部だ。丸ごと引き受けるとはそういうことだ。…って会話があったけど、それはもしや、妾の生活を経済的に保障するだけじゃなく、自由恋愛まで容認してくれるってこと??と、わたしは勝手に考えました。そう思ったら、一夫多妻制のほうが妻の自由度は高いかも。◇でも、自由恋愛の果てに妊娠したら、夫はその子供まで引き受けてくれるだろうか?平安時代や江戸時代なら、まだDNA鑑定もなかったから、誰の子供でも引き受けてもらえた可能性はある。とはいえ、春画のファンタジーとはちがって、出産には身体的な負担も命の危険もともないます。平安時代であれ、江戸時代であれ、現代であれ、女のセックスは快楽だけじゃ終わらない。やっぱり妾なんて、つまらない?!らんまん:“まつ”牧瀬里穂、娘の玉のこしに否定的なワケ 自身は元芸者 「妾なんて、つまらないよ」 #牧瀬里穂 #朝ドラらんまん @asadora_nhk https://t.co/blMp1rJlZs— MANTANWEB (まんたんウェブ) (@mantanweb) May 15, 2023◇中絶するかどうかを迷ってたリキは、リリコとともに開き直り、「引き取るか引き取らないか決めろ」と草桶夫妻に謎の責任転嫁w基本的には中絶する覚悟だけど、もし夫妻が引き取るとすれば、誰の子が出てくるか分からないロシアンルーレット状態。ちなみに、北海道や沖縄の血を引く子供だった場合、北海道のポンコツ男は「妻が許せば認知する」と言い、沖縄のポンコツ男は「一緒に育てよう」と無責任にはしゃぐ。◇結局、DVDで胎児の動画を見た基(稲垣吾郎)が、その双子を引き取る決心をしましたね。これは意外な展開!ほんとに他人の子でも育てるの?もはや里親マインドの人類愛ってやつ?バレエの遺伝子とかどうでもよくなった??…まあ、子供はバレエのために生まれてくるわけじゃないしね。どんな子であっても引き受ける覚悟をするのが、親の姿勢としていちばん正しいだろうとは思う。次週予告によれば…基はこのまま悠子と離婚して、リキと一緒に双子を育てる構想を抱くっぽい。これまた意外すぎる展開です…。2000万円も払って、貧しい代理母と結婚して、赤の他人の子供を育てるって、ほとんど仏様みたいな慈善事業ですwドラマ10【#燕は戻ってこない】第8回のご視聴ありがとうございました命の重みを実感した基(#稲垣吾郎)。リキ(#石橋静河)はこのまま出産へ。しかし、悠子(#内田有紀)は基と別れることを決意。リキが草桶の妻となる!?次回もお見逃しなく👀‼️本編は見逃し配信中です⏰https://t.co/pRHjT3CYuE pic.twitter.com/vpnftgfC4V— NHKドラマ (@nhk_dramas) June 18, 2024それはそうと!リリコの邸では、元官僚の植物男子ベランダーが登場して、「訴訟ごとは俺に任せろ!」と言ってました。これは何かの伏線でしょうか?もしかして、出産後にDNA鑑定したら、泥沼の裁判沙汰へ発展していくのかしら?プランテの事業の合法性も問われることになる?いとうせいこうは長田作品の常連! 【特集】「夜能~語り部たちの夜~『葵上』」いとうせいこう×長田育恵 対談 | 分裂した世界で己と会う、能楽はアバンギャルドで超バーチャルhttps://t.co/8QmdsD2ouj#いとうせいこう #長田育恵 pic.twitter.com/HQXiwWJvPY— ステージナタリー (@stage_natalie) February 15, 2021
2024.06.19
NHK「燕は戻ってこない」第7話。格差社会のなかでは、人間への差別感情も増大する。千味子(黒木瞳)は、リキ(石橋静河)のことを「違う人種」と侮蔑します。実際、西側ヨーロッパの代理出産は、ウクライナなど「別人種」への搾取によってるしね。搾取する側の人間は、その内実を見ないように普段は蓋をしてます。不快な実態を目の当たりにする嫌悪感や罪悪感から、なるべく目をそらして生きるためですよね。もし搾取しながら、「才能のない人間は搾取されて当然!」「努力しない人間は搾取されて当然!」と、それを平然と正当化できるならサイコパス。しかし、千味子のなかには、自分の加害性を意識させられることの嫌悪感もある。だからこそ、「1000万円は産んだあとに消えてもらうためのお金」「産んだら速やかに目の前から消えてもらう」「こちらとは二度と交わらない」…と吐き捨てるように言います。◇千味子は、リキのことを「どうしようもない人間」だと侮蔑しながら、その人間に「私たちはすがってる」という事実を嫌悪してる。そして悠子(内田有紀)に対して、「この先、あなたと加害者の絆を背負っていく」と言います。それがまさに《搾取》の加害性ってことでしょう。◇一方、わたしが気になったのは、バレエ教室の「貴大くん」という生徒のことです。基(稲垣吾郎)は、毎年予選どまりの彼に、留学のためのスカラシップを取得させようとしてる。そして躊躇する母親に対しては、「親が普通だからといって、子供が努力を放棄する理由にはならない!」「子供は遺伝子の奴隷じゃない!」と叱咤激励します。◇たしかに言ってることは正しいけど…代理出産までさせて自分の遺伝子を残そうとする人間が、それを本心で言ってるかは疑わしい。ほんとうに貴大くんの才能を信じるがゆえなのか。それとも、ただ教室の実績や名声を挙げるためなのか。かりに貴大くんに将来の展望がないとすれば、スカラシップを取得して海外留学しても、お金と人生を無駄にするだけです。基には、生徒のその後の人生まで請け負う意思があるのかどうか。たんに教室経営のコマとして利用してるだけなのでは?ある意味では、それも《搾取》の一種かもしれません。ドラマ10【#燕は戻ってこない】第7回のご視聴ありがとうございました基(#稲垣吾郎)の元に帰ってきた悠子(#内田有紀)。リキ(#石橋静河)を裏切り秘密を暴露してしまう!?りりこ(#中村優子)の家での新生活はー?次回もお見逃しなく👀‼️本編は見逃し配信中です⏰https://t.co/Uv7kIzBlTW pic.twitter.com/qxwiFq9Q3X— NHKドラマ (@nhk_dramas) June 11, 2024
2024.06.12
ドラマ10「燕は戻ってこない」第6話。春画家りりこが最高だったww好きなだけエッチして堕胎するのも女の権利ってこと。どこかの政治家の言う「産む機械」じゃあるまいし、カテーテルで受精だけさせられるなんて人間じゃない。選民意識まるだしのバレリーナ母子は、気の済むまでバレエ馬の種付けでもやっとけ!と。◇まあ、父親不明とはいえ、かけがえのない命に変わりないから、産む、という選択も否定しません。どうせ滅多なことじゃDNA鑑定なんてしないんだし。もし一卵性じゃなくて二卵性だとしたら、北海道と沖縄のボンクラ双子の可能性もあるけれど、そんなこたあ知ったこっちゃない。このまましらばっくれて、1000万円もらってトンズラすればいいのよね。内田有紀もこのまま再婚するのはやめて、北海道と沖縄のボンクラ双子を、何も知らないバレリーナ母子に育てさせとけばいいのよ。むしろ「ざまあw」って感じ。◇そもそも「貸し腹」契約なんてのは、それ自体が非合法な奴隷契約も同然なのだから、およそ人間が守るべき正常な契約とは思えない。精子や卵子だけならともかく、お腹(=子宮)は臓器なのだから、あきらかな「人身売買」に該当するはずでしょ。法倫理的にいうならば、人身売買契約を守れ!と強制するほうが非道です。偽装結婚や偽装離婚の件もふくめて、契約そのものの正当性が問われるのだし、不当な条件下で人権が侵害されたならば、契約の履行や守秘義務なんぞよりも、人権保護と公益通報こそが優先されるはずです。たとえば「相手方に奴隷となることを約束させる」旨の契約は、強行規定である民法90条「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」に反するため無効となります。https://yell-lpi.co.jp/column/contract/art0059/人身売買は、歴史的に、女性に対する暴力や性的搾取について使われる傾向があります。人身取引は、国際組織犯罪防止条約人身取引議定書において国際組織犯罪として定義されている言葉で、日本政府やILOなどの専門機関により使用されています。また、同議定書において、性的搾取、強制労働、臓器売買などを幅広く含むと規定されています。https://www.worldvision.jp/children/trafficking.html人身取引とは、搾取の目的で、暴力その他の形態の強制力による脅迫若しくはその行使、誘拐、詐欺、欺もう、権力の濫用若しくはぜい弱な立場に乗ずること又は他の者を支配下に置く者の同意を得る目的で行われる金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を獲得し、輸送し、引き渡し、蔵匿し、又は収受することをいう。搾取には、少なくとも、他の者を売春させて搾取することその他の形態の性的搾取、強制的な労働若しくは役務の提供、奴隷化若しくはこれに類する行為、隷属又は臓器の摘出を含める。https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/2752/第三者から精子を提供してもらって子どもをもうけることは、日本でも長年行われてきています。しかし、負担や危険が大きい卵子の第三者からの提供は、国内ではほとんど行われてきませんでした。この間日本では、臓器売買事件が二件明るみに出て、移植法違反として起訴されています。ですが生殖補助医療に関する法律はなく、精子、卵子、受精卵の売買は、法的には禁止されていません。https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=1600【#燕は戻ってこない】作家・桐野夏生さん「自己責任という言葉ができてからは、本当に何でもかんでも自己責任になってしまいましたね」今夜は、第6話が放送されましたhttps://t.co/aBjYOpIWWZ🔼【読む】原作が出版された当時 #クロ現 は桐野さんにインタビューしました— NHKクローズアップ現代 公式 (@nhk_kurogen) June 4, 2024
2024.06.05
NHK「燕は戻ってこない」第5話。Xのツイートを見てると、視聴者のあいだでドラマへの反応が極端に割れてる。どのレベルで《倫理》をとらえるかが違うからです。◇社会良識や法規範のレベルで《倫理》をとらえる視聴者は、代理出産そのものの異常性に抵抗感を抱いてるので、「エージェントが偽装離婚や偽装結婚を勧めるのも異常!」「クライアントが主人公に行動制限を強制するのも異常!」…と考えるわけですが、当事者どうしの義理や契約のレベルから《倫理》を考える視聴者は、「大金を貰うんだから契約義務をちゃんと果たすべき!」「主人公の行動は身勝手すぎて共感できない!」…と思うわけですね。おそらくNHKの制作者側は、前者のような視聴者を想定してるでしょうけど、その意図とは裏腹に、後者のような視聴者も一定の割合で存在します。とくに、(これは吾郎ちゃんがクライアント役を演じてるせいですが)後者のような視聴者は旧ジャニヲタに多いようです。ジャニー喜多川問題における山下達郎の態度もそうだったけど…ジャニヲタの価値観ってのは、社会良識や法倫理よりも「恩義」のほうへ寄っていく傾向があり、それが一定の規模でジャニヲタ世論みたいなものを形成するのよね。もちろん、そういう発想は、なにもジャニヲタにかぎった話ではなく、たとえばヤクザ業や風俗業の場合も、あるいは悪徳業界のブラック企業の場合もそうだろうけど、そのなかで生きている人たちは、社会良識や法規範よりも、内部の「契約」「掟」「義理」のほうを重視します。その内部の人間関係においては、社会良識や法規範に反するかどうかが問題にされなくなる。契約違反のことする主人公にいらつくわ。#燕は戻ってこない— さとぴー (@satopy1971) May 28, 2024 主人公リキに1ミリも共感できないドラマ…#燕は戻ってこない— mika (@hugomika1) May 28, 2024 主人公浅はか過ぎるだろ…てか、避妊くらいしようぜ…大金貰うし依頼者は人生かけてるのに責任感なさすぎる…#燕は戻ってこない— 華凛 (@krn_pika_rp) May 28, 2024 #燕は戻ってこない主人公の女がちょっとやばない??代理出産なんやからそら母体は大事にせなあかんわけで飲酒しないとか勿論他人とセックスしないとかは守るの普通なんじゃ…?北海道いくな!はちょっと制限しすぎじゃない?てなるけど。。ビッチの代理母怖すぎるてか稲垣吾郎ちゃん演技いいな— 🍑🎀古美屋·kein·珠李(こみやケインしゅり)💜 (@sado_peachmoon) May 28, 2024 #燕は戻ってこないたとえ違法でも悪事でも、その世界の仁義ってもんがあんだろ。この後も、りきのクソっぷり見せられるの嫌な気分になるだろなぁ— lavender (@lavender1073472) May 28, 2024 守秘義務とはなんぞや。あっちこっちで喋りすぎだろ、リキ。てゆか、なぜ避妊をしないのだ。なんでいつも生なのだ。#燕は戻ってこない— 莉央 (@Rio_Grande_5656) May 28, 2024 つーか、避妊してないのかよ。ダメじゃん。リキはバカなの?この後不幸になったとしても、仮に殺されたりしても何も言えなくなっちゃうじゃない、今のリキの行動は。#燕は戻ってこない— みう (@Miu_t3) May 28, 2024 うーん今回のリキ見ていると、リキの今現在の立ち位置は、(運や世情もあるけど)今までのリキ自身の生き方によるように思えてきた。不安定になるのも憤るのもわからなくはないけど…契約したのに、避妊無しでするの無知で無責任すぎる。#燕は戻ってこない— りんごろ📎 (@wa_go_roku) May 28, 2024 ◇ちなみに、奇しくも朝ドラでは、社会的地位を得るための結婚をしたヒロインが描かれましたが、このドラマでも、偽装結婚をした主人公が期せずして「世間的な評価」を得ます。地元の友人が主人公に一目置くようになって、親族までもが主人公の手柄を褒め称える。一時的とはいえ、大金だけじゃないメリットがそこに生まれてる。意外に、離婚したあとになっても、そういう世間的な評価は、いわば武勇伝のように維持されるかもしれません。もしかしたら、代理出産を異常とは考えない人々にとって、セレブとの偽装結婚もひとつの誘惑になりえるのでは??
2024.05.29
夜ドラ「VRおじさんの初恋」全32話が終了。恋人を喪失したナオキの悲しみと同時に、新しいVR世界の未来も感じさせる結末でした。◇以下は第31話から、穂波の生前最後のモノローグ。私たちの心は体に決められる。望む望まないにかかわらず。性別・年齢・健康状態…そういうもので心の輪郭は作られていく。でも、VRの世界で現実とちがう体と出会って、その体でしか出来ない約束をした。体が変われば、心が触れ合う場所も変わる。あれは、たしかに同じ私たちだ。たとえば仏教では、身体に縛られる人生を「苦」ととらえて、そこからの解脱を目指すわけだけど、アバターの身体を得ることも一種の解脱かもしれません。しかし、原作者は、最終回の後に次のようなツイートをしてました。この話は、じつはアバター自由選択による魂の解放…的な話のまったく逆を言っていて。体を自由に変えても、それは魂のアウトプットが変わるだけ。結局はガワで恋愛しとるんか? でも、それだけじゃないだろう? という話を繰り返し繰り返し折りたたんでいる。結局はガワで恋愛しとるんか?でもそれだけじゃないだろう?という話を繰り返し繰り返し折りたたんでいる。どうか結論を急がずに、時間をかけて咀嚼してもらえたら…という暴力とも子からのお願い。— 暴力とも子 (@violencetomoko) May 22, 2024◇でも、わたし自身は、やっぱり恋愛は「ガワ」でするものだろうと思います。リアルにおいてであれ、VRにおいてであれ、しょせん恋愛なんて一瞬の気の迷いでしょwかりに、「ガワ」だけじゃない「魂の結びつき」があるなら、それは、きっと恋愛以上のものだと思うけど、恋愛以上の「愛」や「友情」でさえ、けっして普遍的ではありえないわけだし。環境によっても、年齢によっても、体調によっても、人間どうしの関係性は変わっていくはずです。実際のところ、「本当の恋」なんてものはありえないし、「本当の愛」とか「本当の友情」なんてのも、それ自体がメディア的な幻想じゃないかと感じる。◇ちなみに、ホナミの「中の人」は亡くなりましたが、AIでホナミのアバターを生かしつづけることも、きっと技術的には可能でしょう。ドラマでは、バックアップしたホナミの過去の映像を、VR内の画面で見るシーンがあったけど…VRのなかで画面を見るってのも変な話だよねwそもそも画面のなかへ没入するのがVRなのだから。もしも、AIによってホナミのアバターを生かしたら、VRのなかに徹頭徹尾「ガワ」だけのホナミが出現します。そしたら、ナオキは、中身のない「ガワ」だけのホナミと恋愛しつづけられる。◇そもそも、死者に恋しつづけるのは珍しいことじゃありません。たとえば、エルヴィス・プレスリーの歌や、マリリン・モンローの映像に、いまもなお恋しつづける人はたくさんいる。エルヴィスやマリリンの場合は、もともとがメディア的な「幻想」だから、生きていようが死んでいようが、たいして変わりがないともいえるけど。死者に恋することも、幻想に恋することも珍しいことではない。むしろ、ごく普通のことです。そう考えれば、ナオキが「ガワ」だけのホナミに恋しつづけるのは、とても孤独で、うすら寒いともいえるけど、けっして不自然な話ではないと思います。◇いずれはVR世界の中で、アイドルと恋愛することも可能になるでしょう。複製されたアイドルのアバターがたくさん存在して、不特定多数の人々がそれらと恋愛するような時代が来る。そこでは、もはや中身があるかどうかなど関係ない。たとえAIで生かされた複製のアバターであっても、恋愛対象としては十分に事足りるだろうし、それどころか、AIで複製されたアバターなら、ユーザー好みにカスタマイズすることも可能でしょう。つまり、自分好みの振舞いをしてくれるアイドルですね。それは想像しうるかぎり最高の恋愛対象になるはず。たとえ中身のない「ガワ」だけの存在だとしても。「無限の可能性」「AIに恋するかも」衝撃が走った最新技術は?https://t.co/yTI5v6FFcZ #nhk_news— NHKニュース (@nhk_news) May 25, 2024◇たとえば、中身のいるアバターどうしの交流においても、自分の姿を相手に合わせてカスタマイズしたり、相手の姿を自分好みにカスタマイズすることは可能だろうし、姿だけでなく言動も相手の好みに合わせることは可能だと思う。結果的に、双方がまったく違うものを見ていても構わない。そのほうが、お互いにストレスなく、快適なコミュニケーションができるわけだし。そもそもVRの参加者は、同じ世界を共有する必要はないのよね。それぞれがまったく違う世界を見ていても構わない。これは一種のフィルターバブルみたいなものです。自分に都合のよい幻想だけに囲まれた世界。100人のユーザーがいたら、100通りのパラレルなマルチバースが併存する。すでに現状のネット世界でも、多くの人はフィルターバブルの中に埋没してるし、都合の悪いものは見ないようにしています。そのほうが快適なのだから。VRでも、ほとんどの人はフィルターバブルを望むはず。◇フィルターバブルに包まれた無葛藤な世界は、快適である反面、とてつもなく孤独だとも言える。しかし、実際のところ、あえてフィルターバブルの外側に出て、本物のコミュニケーションを求める人は少ないだろうし、恋愛はいっそう「ガワ」だけになっていくと予想される。そして、良かれ悪しかれ、フィルターバブルに包まれた自分こそが、結局は「本当の自分」なのかもしれない…とも思う。ホナミ:ウサギの耳はやりすぎです!穂波 :私だって変えたかったんだけど、操作がよく分からなくてな。 ホナミ:でも、私は好きです。穂波 :私もだ!…当たり前か、同一人物だもんな。ホナミ:当たり前じゃありません。人生を通して自分に出会えない人はいっぱいいます。はたして、「本当の自分」というフィルターバブルに包まれた世界が、ユートピアなのか、はたまたディストピアなのか分かりませんが、それが実現する未来はさほど遠くないと思います。↓おばさんがVRのバトル空間で秘められた暴力性を開示するのかしら?「VRおばさんの暴力」新連載始まりました!vrおじさんとはあらゆる意味で対にになる終焉を見据えた漫画…その温度差でサウナのように神経を整わせながら楽しんでいただきたいです!#vrおじさんの初恋#vrおばさんの暴力https://t.co/ZqudscUOKy— 暴力とも子 (@violencetomoko) April 5, 2024#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】第31回のご視聴ありがとうございました✨特別列車の終着地点で永遠の愛を誓い合ったナオキとホナミ。有能なアオイが撮影📸幸せいっぱいの二人の写真をお届けします☺💕#VRおじさん#倉沢杏菜 #井桁弘恵 #井上音生本編は配信中📱https://t.co/IL8oLUldkS pic.twitter.com/zZp1I5EfJi— NHKドラマ (@nhk_dramas) May 22, 2024
2024.05.26
夜ドラ「VRおじさんの初恋」がいよいよ最終週です。◇当初は、VRのなかの2人だけの話だったのに、しだいに、穂波&飛鳥の父娘関係や、澤田&加藤&荒井の職場関係や、葵の中学生の友人関係など…いろんなリアル世界の人たちの問題を巻き込んでて、最終週では、穂波の死を前に、それらがすべて丸く収まりそうな感じ?いろいろ上手くいきすぎな気もするけど…(^^;◇ところで…今回のドラマでは、テーマ曲の「ハートビート」と「旅人」を、C&K(Clievy&Keen)というユニットが歌ってます。わたしは、近年のJ-POPに不案内なため、C&Kのことをまったく知らず、てっきり「旅人」を歌ってるのは女性だと!!…なんと男性デュオだったのですね。あらためてC&Kのことを調べてみたら、わりとソウル寄りの男性デュオのようです。一昔前ならCHEMISTRYみたいな感じ?もっと昔ならクリスタルキングとかの系統??男性デュオって頭文字「C」ではじまる決まりなの?(じつは狩人も「CARYUDO」だったりしてw)◇主題歌の「ハートビート」を歌ってるKEENも、けっこう高めの綺麗な声の人だと思うけど、とくに「旅人」を歌ってるCLIEVYのほうは、音域が完全に女声のように聞こえますよね。見た目も男女デュオ?? ところが!!写真や映像を見てみたら…わりと2人ともコワモテwwwそういえば、昔の黒人の甘茶ソウルなんかも、歌声は綺麗なのに見た目がコワモテだったりして、そのギャップが面白かったのを思い出します。たとえばホワットノウツとか。Whatnauts - Reaching for the Stars CD アルバム 【輸入盤】 楽天で購入 これって、NHKの確信犯かもしれないけど…ナオキとホナミの物語を、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に重ねたのも的確なら、それをC&Kの音楽に重ねたのも、じつに的確ですね。つまり、性の区別が幻惑される感じ。男か女か分からなくなって、性別そのものが無化していく…。◇だいぶ昔ですが、金子修介の「1999年の夏休み」という映画があって、あのときは、萩尾望都の「トーマの心臓」の少年愛の世界を、深津絵里をはじめとする少女たちが演じてた。今回のドラマでは、オジサンどうしの同性愛的な世界を、井桁弘恵と倉沢杏菜の女優が演じてて、なおかつ「銀河鉄道の夜」の少年愛に見立てながら、それを女声のような男性ボーカルの曲にのせて、二重にも三重にも性の区別を幻惑させてる。C&Kの「旅人」は、直樹のテーマとして作曲されたそうですが、ドラマを見てる印象では、どちらかというとホナミのテーマっぽく感じます。しかも、わたしのなかでは、ジョバンニとカムパネルラのイメージが、完全に倉沢杏菜と井桁弘恵になってしまったので、今回の「旅人」も、死に際にいるカムパネルラの曲に聞こえてしまいます。VRゴーグルって味まで分かるらしい。脳波的に味わうのかしら??!#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】\第27回は今夜10:45放送!/第26回をプレイバック🎥「全部ひっくるめてホナミだから。」懐の深いナオキ(#倉沢杏菜)にホナミ(#井桁弘恵)は…?久々の二人きりのあま~いひとときです…😘💓#VRおじさん#野間口徹続きは配信で📱https://t.co/TF6tFbs2d1 pic.twitter.com/Gi0zZ7AKCM— NHKドラマ (@nhk_dramas) May 15, 2024
2024.05.18
NHK「燕は戻ってこない」第3話。第1話にも、ゆで卵や、お弁当のたらこや、ペットショップの子犬が出てきたけど、今回も、卵の割れる音ではじまり、卵焼きを食べさせるシーンがあり、春画の話をしながら子羊を食べまくる。なぜ「蘇州夜曲」が演奏されたのかは、いまいち分かりませんでしたが…。◇5月12日の読売新聞に、「卵子凍結」についての記事が出てました。しかし、ネットでは一部しか読めません。その代わりに、去年のNHKの記事から抜粋しておきます。卵子凍結では一度の採卵でなるべく多くの卵子を回収することを目指すため、卵子の発育と排卵を促す排卵誘発剤(錠剤や自己注射)を使用して、両方の卵巣で複数の卵子を育てます。一般的にホルモン剤は頭痛や倦怠感やむくみなどの副作用がある場合があります。採卵の前に細菌感染を防ぐために膣の消毒や洗浄を行い、それから卵巣内に細い針を刺して育った卵胞を回収します。麻酔から採卵までの時間は15分ほど。“社会的適応による卵子凍結”は保険適用ではなく自由診療のため、費用は各クリニックによって異なります。エリさん(仮名)が行ったクリニックではおよそ40万円かかりました。採卵した全ての卵子が胚移植に使用出来るわけではありません。採卵しても卵子が凍結に適さず変性したり融解する際に破損したりしてしまう可能性があるからです。凍結未受精卵子を用いた胚移植で子宮内に着床する確率は17~41%。さらにそこから流産や死産などの原因によって、卵子1個あたりの出産に至る確率は4.5~12%です。卵子凍結には限界があり、必ず妊娠や出産できるわけではありません。卵子凍結をしたことで「かえって出産が先送りになるのではないか」という懸念も日本産科婦人科学会は示しています。https://www.nhk.or.jp/minplus/0029/topic127.html要するに、卵子凍結には多額のコストがかかるだけでなく、確実に子供が作れるわけではないし、高齢妊娠における合併症などのリスクもある、ということ。◇第3話には、ロシアとウクライナの話も出てきました。代理出産は世界各地で広がっているのですが、全世界の4分の1以上を占めるまでに伸びているのがウクライナなのです。ヨーロッパ、特にドイツやイギリスの富裕層からの注文を受け、ウクライナの女性たちが出産のための代理母を務めているといいます。その報酬は赤ん坊1人を産むことで2万2,000ドル(約300万円)とのこと。こうしたクリニックを経営している側は政府や議会に対して相当な賄賂を配っており、「こんな美味しいビジネスは止められない」とうそぶいています。さらに、ウクライナでは赤ん坊や小児売買の闇市場も隆盛を極めている模様。ゼレンスキー大統領もウクライナへの資金援助を拡大するバイデン大統領も、戦争の裏側で広がる、こうした闇ビジネスには目をつぶったままです。https://www.mag2.com/p/money/1344838なぜロシアやウクライナで代理出産がおこなわれるのか?第一の理由は、「白人の卵子にしか需要がない」からだと思います。黒人やアジア人の卵子には需要が少ないのでしょう。その結果、最貧の白人国であるロシアやウクライナが搾取の対象になる。そのような国だからこそ戦争してるのだ…ともいえます。国が代理出産を合法化するということは、外貨や賄賂のために自国の女性の身体を売る、…ということなのだと思う。第三者の女性に産んでもらう「代理出産」。倫理面での課題から禁止する国が多い中、合法化した数少ない国にウクライナがある。世界中のカップルから依頼があり、生まれる子どもは年間約2000人と言われる。日本にもあっせんするエージェントが複数存在し、その話を総合するとウクライナで生まれた日本人の子どもは60人以上いる。https://toyokeizai.net/articles/-/612506売春や代理出産にかぎらず、あらゆる労働について言えることですが、いくら合意に基づく契約とはいえ、その背景にあるのは、つねに「富める者が貧しい者を搾取する」という構造です。貧しい国の貧しい家に生まれ、教育も受けられなければ、身体を売る以外にない。代理出産王国のロシアとウクライナ「女性搾取ビジネス」~高柳聡子・早稲田大非常勤講師(ロシア文学・フェミニズム論)の話~旧ソ連圏での代理出産は、女性の搾取や自己決定権といった複雑な問題を抱える。背後には貧富の格差があり、欧州の人々は、自国では法的・金銭的に難しくても、ウクライナなどでは驚くほど安い。スラブ系のウクライナ人などは同じ白人との感覚もある。ソ連崩壊後の混乱の中、旧ソ連圏では一部の女性が外国人らを相手に売春せざるを得なくなった。代理出産は売春とは違うが、人権侵害につながることも少なくない。https://www.tokyo-np.co.jp/article/307703燕は戻ってこない/桐野夏生【1000円以上送料無料】 楽天で購入
2024.05.15
2007年に、厚労相の柳沢伯夫が、「女性は子供を産む機械」と発言して批判されましたが、サロゲートマザーやホストマザーの仕組みは、まさに女性の身体を「出産マシン」として利用します。代理出産という意味では同じだけれど、本人の卵子を使えばサロゲートマザー、依頼者の妻の卵子を使えばホストマザーです。◇サロゲートマザーは卵子も子宮も提供する。自分のお腹をいためて、自分の血を引いた子を産むわけだから、その意味ではお妾さんと同じですが、旧来のお妾さんと違うのは、直接の性交渉はしないし、生まれた子供の母にもなれないってこと。…本妻から見れば、お妾さんの産んだ子を引き取って育てるような感じで、養子を迎えるのに近いと思う。もしサロゲートマザーが、夫婦と顔合わせをするなら、出産後も「産みの母」として、子供からも認識されるのかもしれない。子供にとっては、「育ての母」と「産みの母」が違うってことですね。授乳まで「産みの母」が受けもつのかもしれないけど、プロラクチンの分泌を促せば「育ての母」も授乳はできるらしい。◇ホストマザーは子宮だけを貸し出します。他人の受精卵を自分の子宮に受け入れるので、いわゆる「貸し腹」になる。留学先のホストファミリーを「受け入れ家族」と訳すように、ホストマザーのことを「受け入れ母」とも訳せるでしょうが、もっと露骨にいったら「子宮母」ですね。まさに「産む機械」ってこと。…子供との血のつながりはないし、どんなにお腹を痛めて出産しても、その子の母になることはできません。夫婦と顔合わせをするかも分からないけど、子供から「産みの母」と認識されることはないのかも。出産前後の時間の提供だけでなく、自分を命の危険にさらして痛みに耐えるわけだから、娼婦より過酷な仕事といえるかもしれません。◇日本の天皇制をふくめて、男系継承を必要とする海外の王室などが、こうした医療技術を利用する可能性もあると思う。国や宮内庁が、「皇太子のサロゲートマザーやホストマザーを公募する」みたいな未来もありえなくはない。その一方で、代理母を依頼した夫婦や、代理母から産まれた子供や、代理母になった女性が差別の対象になる、…みたいな問題も生じかねません。◇先日の「せかくら」でやってましたが、フランスでは、女性どうしの同性結婚の場合、人工授精にも保険が適用されるそうです。おそらく、一方の女性の卵子を、第三者の男性の精子と体外受精させて、他方の女性が出産するのではないかしら?さすがに男性の同性結婚の場合は、子供をもつことは難しいでしょうけれど。このドラマは全10回シリーズだそうですが、今後もぐいぐい視聴者を追い込んでくるでしょうね。見れば見るほど倫理的な判断に迷わされるだろうと思う。◇第1話のときから感じてましたが、生殖医療エージェントの《プランテ》は、どことなくアビゲイル教団っぽいです。ピカピカの施設が真っ白な内装だったりして。米国企業の日本支社という設定なのですね。…余談ですが、そうめんって、いちばん北海道らしからぬ食べ物じゃないかと思えました。夏にも冷たいそうめんで涼をとるのかしら?それとも温かいにゅうめんをよく食べるの??送料無料 そうめん お徳用 乾麺 北海道産地粉を使用した そうめん/ソーメン/素麺 北海道(ほっかいどう)ソーメン 500 g(5束入)×2袋 楽天で購入
2024.05.09
ホナミがゲイだと確定したわけではありませんが…孫の男の子は、なんとなく祖父がゲイだと知ってる雰囲気。「恋愛は男女でするもの」という先入観がない。ゲイカルチャーが身近な現代の子供とはいえ、考え方がずいぶん柔軟だなあと思います。◇ところで、鉄人28号みたいなAIロボットくんは、ちゃんと相談に答えてくれるのに、どうしてそのあと攻撃してくるの??(笑)なお、NHKが、医者への「心付け」を肯定的に描くのは、コンプライアンス的に問題があるのでは…?VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.05.05
…昨日の記事の続きです!他人から卵子提供を受けて出産した場合、「その子に愛情を注げるのか」って疑問はある。でも、そこに確たる答えはないですよね。そもそも我が子に対してさえ、まともな愛情を注げない親はたくさんいるのだし。逆に、血縁のない養子を引き取って愛情を注ぐ人もいれば、配偶者の連れ子にちゃんと愛情を注げる人もいます。もちろん、子供との相性の問題もあると思う。だから、一概には言えない。◇たとえばレズビアンの女性が、男性の配偶者の精子と、女性の恋人の卵子を使って、自分のお腹を痛めて出産したならば、たとえ自分との血縁がなくても、我が子のように愛情をもてるかもしれない…なんてことを考えてみたりもします。たぶん臓器提供の場合もそうでしょうが、顔の見える知り合いからのものか、顔の見えない他人からのものかによって、感情のありかたは変わってくるかもしれません。どちらがいいのかは分かりませんが。◇もうひとつ考えるべきテーマとしては、卵子や精子の「ドナー選別」の問題があります。これは、ほかならぬ「遺伝子選別」ということ。たとえばドイツの優生保護政策では、民族浄化と称してユダヤ人が殺されたり、日本でも身障者への不妊治療が強制されたりして、あきらかな人権侵害があったのですが、卵子や精子のドナー選別と同様に、たとえば天皇のお妃選びにおいても、ペットや競馬馬の品種改良においても、実質的な遺伝子選別はおこなわれています。そして現代における遺伝子選別の多くは、企業や学校が優秀な人材を選別するのと同様に、市場原理にもとづく経済行為としておこなわれる。政策的におこなわれるにせよ、経済行為としておこなわれるにせよ、それらが差別的な人為であることに変わりはない。◇けれど、逆に、医療や福祉の充実した先進国では、自然界で生きるのが困難だった弱い遺伝子も、生き残る確率を高めてきた、という側面があります。昔なら若くして亡くなったであろう、病弱な子供や身障者であっても、先進国でなら成人して子供が産めるようになってる。それもまた、自然選択に逆らった人為であるのに違いはないし、技術的にはあらゆる遺伝子のバリエーションを残すのも、可能になっていくのだろうと思います。◇そう考えたときに、自然選択に逆らった人為はどこまで許容されて、遺伝子選別はどのようになされるのが正しいのか。進化論的な自然選択と同じように、自由経済の市場原理に任せるべきなのか。それとも国家的な政策介入によって、遺伝子選別のありかたに規制をかけるべきなのか。それとも近視眼的な人間の判断を排除して、いっそのことAIのマッチング技術を駆使し、未来社会に適した人材養成と、持続可能な人口調整をはかっていくべきなのか。社会的な議論においては、そこまでの判断が必要になってくると思います。燕は戻ってこない/桐野夏生【1000円以上送料無料】 楽天で購入
2024.05.03
NHK「燕は戻ってこない」を見ました。女性の卵子売買の話です。原作は桐野夏生。脚本は長田育恵。石橋静河をひさしぶりに見ました。NHKはわりと彼女を積極的に起用しますが、民放だと坂元裕二ぐらいしか使ってないよね。◇タイトルの意味は、卵を産みっぱなしで戻ってこない母鳥?あるいは自分の巣を知らずに育った雛鳥?中絶や流産の話に加えて、ゆで卵、たらこ、ペットショップの子犬など、さまざまな命の売買の話が出てきて、主人公の友人は性の売買もしてるらしい。なお、NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げてましたが、すでに女性の卵子売買は、国内にエージェントが存在して実際に行われてるそうです。https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4868/第一に考えねばならないのは、やっぱり安全上のリスクですよね。まるでニワトリみたいに、いちどに数十個の卵子を作ったりするらしいし、不自然なことを人為的にやるわけだから、女性や子供の身体に問題が生じないのか気になります。◇不妊治療のバリエーションとしては、夫婦の体外受精のほかにも、・女性の卵子の凍結保存・男性の精子の凍結保存・他人からの卵子の提供・他人からの精子の提供・自分の腹から他人の子を産んで育てる・他人の腹から自分の子を産ませて育てる・他人の腹から他人の子を産ませて育てる…などがあると思いますが、今回の物語では、「夫の精子」「他人の卵子」「他人のお腹」で産む、ということのようです。倫理面での考え方は人それぞれでしょうが、これって、結局のところ、男性中心主義か女性中心主義かの問題ですよね。要するに、妻の卵子を使うにせよ、他人の卵子を使うにせよ、妻の腹から産むにせよ、他人の腹から産むにせよ、あくまで「夫の精子を使う」という点では変わりないので、問題になるのは、他人の卵子やお腹やお乳を使った場合に、妻が「自分の子」として受け入れられるかってこと。そして卵子やお腹やお乳を提供した女性の身体が、ただの道具(もしくは商品)になってしまうってこと。夫にとっては自分の子でも、妻との血縁や身体的な結びつきが薄いとなれば、それは養子を引き取る感覚に近い気がする。あるいは夫の連れ子を引き受けるような感覚?◇かつての天皇家や将軍家と同じように、男系男子の後継を必要とする家であれば、女側の遺伝子が正妻のものである必要はなく、優れた遺伝子の女性なら誰の卵子でもいいのよね。あくまで重要なのは、夫にとって「自分の子」ということであり、妻にとって「自分の子」か「他人の子」かは問題じゃない。妻の卵子である必要もないし、妻のお腹から産まれる必要もないし、妻のお乳で育てる必要もないわけです。実際のところ、昔は「正妻」「妾」「乳母」の分担があって、それが男系男子を産むための合理的なシステムだった。それが少子化や貧困の問題も相まって、一夫一妻制の現代にも復活してるのだと思います。◇でも、そこまでして子供が欲しいというのは、やはり男系の後継を必要とするような家だと思うし、そういう家では、あくまで女性は道具でしかないのであって、とくに貧しい女性たちは、そういう家に卵子やお腹を提供するか、あるいは乳母になるといった立場に置かれる。たとえ正妻になれたとしても、自分の子をもてるとは限らないのよね。時代劇を見てても思うけれど、こういう家にとって正妻の存在意義って何なのかしら?どこぞの女性に卵子とお腹を提供してもらい、産まれた子は乳母に育てさせればいいのだから、はなから正妻なんて必要ないじゃん!と思ってしまう。ある意味、セフレと大差ないのでは?◇そんな男系嫡子製造システムとして、現代にも、「卵子の商品化」「お腹の商品化」「お乳の商品化」といった話が出てきてるわけだけど、たんに卵子を提供するだけなら、大奥に入ったり妾になったりするよりマシかな、…って気がしなくもありません。もちろん、実際は、けっこう身体的な負担があるようですが…。自分の知らないところに、自分の遺伝子を受け継いだ人間がいるってのは、女性の歴史のなかでは珍しいことだけど、男性の歴史のなかでは珍しいことじゃないよね。ただし、子供の側からすれば、「自分の出自」を知る権利は保障されるべきだし、そうした権利を無視して子供を製造してるとすれば、女性のみならず子供も道具(もしくは商品)にすぎないでしょう。◇ちなみに、もし「女系の子」を産むとなった場合には、精子は誰のものでも構わないけれど、卵子は絶対に妻のものでなければならない。もし夫が種なしだったら、別の優れた男性から精子の提供を受けて、さらには必要に応じて、他の女性のお腹やお乳も借りることになる。男子のいない場合に、娘に婿を取って家業を継がせることはあるし、そういう家でなら、「娘の卵子さえ使えばいい」という考え方も、ありえるのかもしれませんよね。燕は戻ってこない/桐野夏生【1000円以上送料無料】 楽天で購入
2024.05.02
もともとホナミはゲイだったのかな。坂東彌十郎が、長身(183cm!)でスタイルがいいのもあるけど、どことなく身だしなみにもゲイっぽさを感じます。◇あの大きな邸で、老いた病体なのに、家のことを全部一人でやってるのも不思議だけど、会社の経営者だっただけあって、几帳面かつ生活力がある人なのだなとは思う。一代で会社を築いたのか、先代から継いだ会社なのか分からないけど、女性と結婚して娘をもうけたわけよね。でも、もしかしたら、彼がゲイであることを妻や娘が知って、家族関係が崩壊してしまったのかも。ホナミにとっては、孫が女の子でなく男の子であることが、よけいに嬉しくて可愛いのかな?…って気もする。◇そもそも、ホナミが美少女アバターとして振る舞ったのは、男性との出会いを求める下心があったからでは??性同一性障害でもないかぎり、ゲイの人が女性の容姿になろうとはしない気もするし。ナオキの場合、女性への変身願望はあったでしょうが、自分が男性であることを隠していませんでした。しかし、ホナミのほうは、(名前が女性っぽいのもあるけど)自分が男性であることを隠してましたよね。ナオキは、ホナミに対して、あきらかに異性愛を感じてたけど、たぶんホナミのほうは、(いつナオキが男性だと気づいたか分からないけど)ナオキに同性愛的な感情で接してたと思う。だから、リアルで対面しても、ナオキが男性であることに狼狽えなかったし、それどころか、最初からウェルカムな感じでしたよね。でも、いまや、ナオキまで自分からキスしたいと言い出す始末(笑)。もちろん、アバターをとおしてではあるけれど…。ちょっとゲイのマインドが出てきたのかしら??それとも、リアルのホナミに対して、女性的なものを感じはじめてるとか?VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.05.01
夜どら「VRおじさんの初恋」では、アバターでのバーチャルな恋愛が描かれてますが、高齢の男性どうしが、おたがいに性別や年齢や容姿を変え、どちらも少女の姿をしてるので、当然ながらリアルとのギャップに直面する形になる。◇でも、将来的に、アバターでの生活のほうがリアルよりも長くなれば、リアルとのギャップは気にしなくなるだろうなと思う。現段階でのバーチャルリアリティは、おもに視覚や聴覚の体験しかできないのだろうけど、近い将来には、嗅覚や味覚や触覚での疑似体験も可能になるだろうし、五感での体験が可能になれば、アバターをとおしたバーチャルな生活は、リアルな生活を上回ってしまう可能性があります。◇以前も書いたように、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/202403130000/わたしは、人間が《身体に縛られた存在》であるのに対して、AIは身体をもたず《純粋に精神的な存在》でありうる、…と思ってるわけだけど、じつは、人間も、アバターでの生活ができるようになれば、かなり身体の呪縛から解放されるんじゃないかしら?実際、アバターをとおした人間関係なら、容姿や年齢や性別で差別されることなく、純粋に互いの人格や能力を尊重しあう形で、コミュニケーションがとれるようになるはず。◇とくに仕事上の人間関係については、なるべく早くアバターへ移行すべきですよね。そのほうが、声がデカいだけのパワハラおやじや、容姿だけが優れたイケメンや美女ばかり出世するような、おかしな状況を終わらせることができるし、出勤する際の身だしなみに、ムダな時間的・経済的コストを費やす必要もなくなる。そして、なにより、外見にとらわれることなく、本当の意味での能力主義で人材を評価できるようになる。そのほうが社会のポテンシャルを正当に引き出せるし、ひいては国力を高めることにもなります。国や企業は、このイノベーションにおいて後れを取るべきではなく、むしろ一刻を争う課題じゃないでしょうか。VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.04.28
NHK「VRおじさんの初恋」。全32話のうちの第15話まで来ました。ちょうど半分の折り返しですが…ホナミの中の人の死期が迫ってる感じ。◇今回のドラマには、設定の新しさとインパクトにおいて、5年前の「腐女ゲイ」に匹敵するものを感じます。実際、内容にも「腐女ゲイ」との共通点があって、《本当の自分とは誰で、本当の相手とは誰か》…についての混乱がテーマなのよね。◇よるドラ「腐女子うっかりゲイに告る」は、女子高生の告った男子がゲイだった…という話。そして、そのゲイの男子高生は、ネットで交流するゲイの先輩に相談に乗ってもらってて、その人はエイズで亡くなってしまうのだけど、死後に彼の家を訪ねてみたら、じつは自分より若いローティーンの少年だった…という話。いずれにしても、リアルな正体が見た目とは違ってて、どちらが真実の姿なのか驚き混乱してしまう設定です。◇今回の「VRおじさん」は、いちばん純真で美しく見えるヒロインが、じつは死期の迫ったお爺さんだった…という話。それ以外の登場人物は、みんな心がねじけて一癖あるキャラばかり。なお、死期の迫っているヴァーチャルな美少女は、銀河鉄道の夜のカンパネルラにも重ねられており、宮沢賢治の物語と同じように、タイタニックのモチーフも取り入れられてます。フィルハーモニック・オーケストリオン《タイタニックモデル》#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】第14回のご視聴ありがとうございました✨旅を再開したナオキ(#倉沢杏菜)とホナミ(#井桁弘恵)。新世界ホールでのオフショットをどうぞ📸自動演奏楽器の音色もステキでしたね…🎶#VRおじさん#野間口徹#坂東彌十郎本編は配信中📱https://t.co/NVfOJHwz3i pic.twitter.com/xvSQj0o4hG— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 23, 2024そして、ヴァーチャルな世界では、少女どうしがハグやキスをする場面もあって、見た目には女性の同性愛に見えるのだけど、じつは双方ともに異性愛を感じてるはず。そして、リアルな姿になったとき、それが男性の同性愛だったことに気づく!しかも、高齢男性どうしの同性愛なのですね。これは、考えうるもっとも極端な例ではあるし、えげつないけれど、ありうる話だろうと思う。かりに性別が違わなくても、アバターの姿とリアルな姿とで、年齢や容姿が違うなんてのは、いくらでも起こりうる。…もっとも、このドラマの場合、死期の迫った高齢男性にとっては、若い命に対する憧憬のほうが上回って、相手が男なのか女なのかは、どっちでもよくなってるのかも。◇これは、ある意味で《入れ替わり》の物語ともいえます。すなわち、心が別の身体に乗り移ってしまう話。ただし、大林宣彦の「転校生」や、新海誠の「君の名は」の場合は、本人の意思で別の身体になるわけじゃないけど、アバターの場合は、あくまで本人の意思で別の身体になるわけなので、むしろアバターでいるときのほうが、その人の本性が現れてるともいえる。したがって、アバターのほうこそが真実の自分で、むしろリアルのほうが偽りの姿というべきかもしれません。◇とはいえ、アバターでいるときの関係が、リアルな関係への橋渡しだとすれば、どうしてもリアルに戻ったときの姿を意識せざるをえない。どちらを真実の自分と考えるか。どちらを真実の相手と考えるか。そのことに混乱してしまいますよね。たとえば、俳優さんなどの場合も、「恋人役の相手に恋愛感情を抱いてしまう」…みたいな話をよく聞きます。演じてるときの関係と、演じてないときの関係の境界が曖昧になって、どちらが真実なのかが分からなくなる。リアルのほうを真実と考えてしまったら、アバターでいるときの関係は宙に浮いてしまう。でも、アバターでいるときの関係が、お互いにとってかけがえのないものなら、たとえリアルな姿とのギャップがあったとしても、その関係を捨てる必要はないんじゃないかな…。◇そう遠くない近未来に、人間がアバターでいる時間のほうが長くなれば、リアルな姿に戻ることを意識しなくなるのかも。たとえ性別や年齢や容姿が、リアルなときとは大きく違ってても、そこへ戻ることを意識する必要がないなら、おたがいにアバターの姿のまま、友情や恋愛を育むことも可能なのかなと思います。◇◇◇ちなみに昨夜の第15話は、なんてことのない内容だったけど、それぞれの登場人物のセリフに、ちょっとずつ毒があったりして、やりとりがとても面白かったので、その一部を以下にメモしておきます。佐々木:クッキーどうぞ加藤 :もらうと返さなきゃいけないので要らないです佐々木:お返しなんて気にしないで、どうぞ加藤 :佐々木さんが気にするかどうかは気にしてません。自分が気になるのが嫌なんです佐々木:そうですか*堀 :お見舞い行くならスケジュール調整しますから、何なりと 飛鳥:要らない。どうしても必要なら葵に行かせる堀 :社長、家族にだけは優しくないっすよね 飛鳥:遺伝じゃない? *佐々木:澤田さんが見て来いって。もしものことがあったら寝覚めが悪いって直樹 :ひどい言い方だな 佐々木:優しさを素直に言えない人、多いですよね直樹 :澤田さんは違うでしょ*直樹:アイスコーヒー「L」ください荒井:今日は寒いですけど直樹:寒い時ほど飲みたくなります荒井:風邪ひかないように*荒井:若いのに現金って珍しいよね加藤:払う実感ないと美味しくないからちょっとしたセリフのやりとりに脚本のセンスを感じる。それとも原作どおりなのかしら?VRおじさんの初恋 ー白色矮星ー【電子書籍】[ 暴力とも子 ] 楽天で購入
2024.04.25
夜ドラ「VRおじさんの初恋」。第9~10話を見ました。特別列車のチケットで隠しワールドへ。そして約束の場所での祈りと別れ。◇たしかに宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」って、現代のVRの世界みたいだなと思いました。この世ならぬ世界。性別のない世界。この世で生きることを諦めた人たちの世界。井桁弘恵が、本当にファンタジックな美少女に見えます。#夜ドラ【#VRおじさんの初恋】\第10回は今夜10:45放送!/第9回をプレイバック🎥「好きで好きで、どうしようもないんだ!」直樹=ナオキの熱い告白が胸を打つ名場面です😌#VRおじさん#野間口徹#倉沢杏菜 #井桁弘恵続きは NHKプラスで配信中📱https://t.co/xEKx9dxfnR pic.twitter.com/x8cctyzJGU— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 16, 2024 #夜ドラ【#VRおじさんの初恋】\第9回はあす夜10:45放送!/教えて!VRおじさん👀列車のシーンはどうやって撮影したの?Point💡➀巨大LEDモニターで動く風景を再生②列車の揺れは人力で!https://t.co/2I0dQC4RRe#VRおじさん #野間口徹 #倉沢杏菜 #井桁弘恵 pic.twitter.com/SvpRn7VAVG— NHKドラマ (@nhk_dramas) April 14, 2024 VRおじさんの初恋 (ZERO-SUMコミックス) [ 暴力 とも子 ] 楽天で購入
2024.04.17
NHK土ドラ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」。前半は、無駄のない脚本と重厚感のある演出に、かなりの手応えを感じたのだけど…後半の展開と結末にガッカリ。蓋を開ければ、社会派を装っただけの安直なサスペンスに過ぎなかった。◇結婚式の出席者を前にして殺人の過去を打ち明けたり、痴呆症の母親がとつぜん息子の名前を呼ぶエンディングは、なんのリアリティもない通俗ドラマのコケ脅しとしか思えず、NHKによる「社会派」の触れ込みがかえってアホらしい。これがテレ朝あたりのサスペンスドラマなら、べつに文句も言わないのだけど、公共放送たる天下のNHKが、あえて「社会派」を装って取り上げるべき物語じゃないでしょ。幼女に対する性的虐待というテーマも、「白夜行」や「三度目の殺人」などで変奏されてきたけど、もはや社会問題を告発してるというより、ただサスペンスのネタにしてるようにしか見えない。ろう者をネタにしただけの通俗ミステリー小説を、公共放送が「社会派」を装ってドラマ化するのはどうかと思う。◇脚本や、演出や、キャストの芝居そのものは、さすがはNHK!と思わせて上出来だったのだけどね…。手話通訳士にツヨポン。県警刑事にエンケン。いわくありげな元夫に和田正人。このあたりのキャスティングは、まあ誰でも思いつきそうな、よくもわるくも安定の配役でしたが、むしろ松本若菜と橋本愛のほうに新鮮味があって、あらたな一面を見れたかなという気はします。◇しかし、とにもかくにも、企画の意図それ自体に疑問を感じざるをえなかった。まだしも生方美久の「silent」のほうが誠実だと感じます。
2024.01.18
NHKの夜ドラ「おとなりに銀河」最終回を見ました。途中参戦で、しかも飛び飛びの視聴でしたが(笑)、NHKの公式サイトに各週のダイジェストがあったので、おおむね内容は把握できました。…前半は、可愛いムズキュンのラブストーリー。漫画家を目指す主人公のSFだったので、ちょっと桑原亮子の「カノブツ」っぽいなと思いました。あちらは浦島太郎的な話でしたが、こちらは竹取物語的な話。そして後半は、島の姫君という特権的な立場を捨てて、普通の女子として生きる道を選ぶという、いわば小室眞子さん的な物語でした。◇お姫さまの自立というのは、「子の親離れ・島離れ」という面もあるけれど、むしろ、それ以上に、「親の子離れ」「島民の姫離れ」という面のほうが強い。親の愛も、島民の愛も、じつはエゴであり、依存であり、呪縛なのですよね。子ども=姫は、その親や故郷の呪縛から逃れるために、傷つけたくもない人まで傷つけながら、膨大な時間とエネルギーを費やさなければならない。自立する以前に、それだけで疲弊しかねないくらい、背中を押してくれる親と、足を引っ張る親とでは、子供の人生にとって雲泥の差があるし、故郷のしがらみも、同じように自立の足枷になる。愛という名の依存。これは非常に厄介なのです。その正体は、エゴの押しつけ。本人にとっては不要なものをあてがわれ、背負わされる。◇今回のドラマを見て、親の依存と、島民の依存は、本質的に同じものだと分かりました。さらに、皇室に対する日本国民の依存も、これと同じものなのだと理解しました。◇主演の八木莉可子は、眉毛が濃くて個性的な顔立ちだけど、それがゆるキャラ的に可愛く見えてくるのが面白い。そこはかとない"平安っぽさ"も漂うので、朝ドラ「舞いあがれ」では短歌女子を演じてましたが、かぐや姫とか清少納言みたいな役が似合いますよね。滋賀県出身とのことだけど、もしかして古代近江宮の貴族の血筋なのでは?(笑)奈良時代の藤原氏の家伝には、「近江国は宇宙に名の有る地なり」とあるそうで、流れ星の落ちた「喚姫よび島」は琵琶湖にあるのかも。
2023.06.02
NHK「探偵ロマンス」最終話を見ました。…謎だらけの結末でした。◇第3話のラスト部分で、笠森刑事(浜田学)が後工田邸に招き入れたのは、郷田くんだったのですね。笠森は、狭間警部(大友康平)の部下を装っていたけれど、じつは住良木の手先だったわけです。彼は、無慈悲にも後工田寿太郎を射殺しましたが、たぶん廻戸を射殺したのも、ピスケンを射殺したのも、そしてオペラ館の2階席からお百を撃とうとしたのも、この笠森だったのではないかしら?そして、廻戸殺しをピスケンになすりつけ、後工田殺しはお百や郷田くんになすりつけようとした。おそらく笠森は、ほかの不良学生のように住良木に洗脳されたのではなく、はじめから住良木の側近として、日本の警察組織内部に潜り込んだのだと思う。◇さて、制作統括の櫻井賢によれば、脚本家の坪田文はすでに「セカンドシーズン」を構想していて、男装の麗人を演じた市川実日子にも、はなから "続編込み" でオファーしている、とのこと。なので、続編が制作されるのはほぼ確実です。https://news.yahoo.co.jp/articles/513a42d2a398621df792d0d5e5b4865aa8af1b4aさらに、住良木を演じた尾上菊之助によれば、白井三郎と住良木の過去を描いた「エピソード0」も存在するそうです。https://news.yahoo.co.jp/articles/6d217f07602e43179db21c7c521356cdd803cf24どちらかといえば、続編よりもエピソード0が見たいし、ロシア編や上海編が見たい!◇…てなわけで、まだ未完ではあるのだけど、これほどのスケールとクオリティの作品が、「震災100年」とか「乱歩100年」とかの特別枠ではなく、通常枠の「土曜ドラマ」だったというのがスゴイです(笑)。個人的には、2017年の「眩~北斎の娘~」とか、2021年の「忠臣蔵狂詩曲No.5~中村仲蔵出世階段」をも凌ぐ出来だったと思う。(↑どちらとも芸術祭大賞作品です)◇最終回に残された謎は、大きく8つほどあったと思います。Q1.なぜ相馬京子と村山隆子は瓜二つだったか?Q2.本物のお勢さんは生きているのか?Q3.お勢さんとロマノフ家の関係とは?Q4.踊り子のお百は、住良木が祖父の仇だと知っていたか?Q5.イルベガンの卵とは何か?Q6.なぜ相馬久代の背中にはイルベガンの入れ墨があるか?Q7.住良木の「物語」とは共産主義か、国粋主義か、新興仏教か?Q8.男装の麗人の正体は住良木平吉なのか?…だいたいこんな感じ。ほかにもあるかしら?◇で、わたしの考察によれば、以下のような答えが導き出されます!!1.お勢の夫はロマノフ家の財宝を手にした軍人。日本軍は、日露戦争の際に、シベリアでロマノフ家の財宝を奪ったとも言われていますし、あるいはロシア革命が勃発する前に、満州でロマノフ家の財宝を預けられたとも言われています。劇中の宝石「イルベガンの卵」は、おそらくファベルジェの卵から着想したのでしょうが、重要なのは、伝説のイルベガンが「七頭竜」であるということ。その"卵"の名を冠する宝石は、「七つの顔を操る能力」の源泉であると同時に、「イルベガンの巣へ侵入する鍵」なのだろうと思います。お勢さんの夫は、これを持っていた軍人であり、住良木と相馬姉妹は、これを奪還しようとしたのでしょう。ロシア革命とともに流出したロマノフ王朝の金塊500トン2.住良木はロマノフ王族の生き残り。わたしが思うに、住良木はロマノフ家の生き残りであり、ことによったら、皇帝ニコライ2世かもしれません。日本語の〈すめらぎ〉は「住良木」であると同時に「皇」だからです。その場合、革命軍に処刑されたのは替え玉だったってこと。史実によると、ニコライ2世の右腕には「竜の刺青」があったそうです。この刺青は日本の長崎で彫られたらしいのですが、さすがに七頭竜ではないものの、一説によれば、彼にとって「竜」は権力の象徴だったとのこと。住良木は、お勢さんの夫を殺害し、相馬京子との争いにも打ち勝って、イルベガン(=七頭竜)の卵たる宝石を奪還し、その「七つの顔を操る能力」を手に入れたのだと思います。踊り子のお百から見れば、住良木は「祖父の仇」だったはずだし、さらに「祖母の仇」だったかもしれないのですが、住良木は、お百を洗脳して手なずけてしまいました。そして、国際協調主義者だった外務次官の後工田寿太郎を暗殺し、日本軍のシベリア出兵によって干渉戦争をけしかけ、ロシアの革命政権を打倒しようとしているとも思えます。刑事の笠森も、もともとロマノフ朝の人間なのではないでしょうか。帝政ロシア最後の皇帝ニコライ二世。ロマノフ王朝はよみがえる?3.相馬姉妹はタタール人の女スパイ。わたしが思うに、相馬姉妹もロマノフ朝に関係しているのではないかしら?もしやテュルク系騎馬民族(タタール人)の立場で革命に加わり、スパイとして日本に渡って「相馬」姓を名乗ったとか?そうでもなければ、久代の背中にイルベガンの刺青がある理由が分からない。姉の京子は、白井三郎の助手になりすますことで、住良木を出し抜いて「イルベガンの卵」を横奪し、シベリア領内にタタール人国家を打ち立てようとしたのかも。じつは彼女はまだ死んでおらず、鳥羽に潜伏して「村山隆子」の名で10年間を過ごし、ふたたび東京に戻って妹の久代(=美摩子)と落ち合い、住良木との因縁の対決に挑んだとも考えられます。事実、村山隆子は、第3話で「美摩子にも住良木にも会った」と話しており、たんなる田舎の教師とは思えない動きを見せています。わたしの予想が正しければ、村山隆子の背中にもイルベガンの刺青が彫られているはずです。スルタンガリエフと1920年のタタール自治共和国設立◇◇住良木は、お勢さんに変装した姿で、白井三郎に「イルベガンの卵」を預けたり、おもむろに接吻したりもしていましたが、そこには、ある種の恋愛感情があるようです。そのことは、上述の尾上菊之助のインタビューからもうかがえる。そう考えると、白井三郎もまた、ロマノフ朝に関係する人物なのかもしれません。実際、草刈正雄も、尾上菊之助も、浜田学も、みんな日本人離れした目鼻立ちと体型に見えなくはないし、松本若菜も、石橋静河も、やはり色白で日本人離れした容姿に見えてしまいます。それとは対照的に濱田岳や泉澤祐希や大友康平や近藤芳正なんかは、小柄な日本人顔だし、本上まなみなども典型的な日本人女性に見えるのよね。◇※わたしの予想は9割ぐらいハズレます。悪しからず!もし住良木平吉が、のちの遠藤平吉、すなわち怪人二十面相の原点だとすれば、その変身能力は「七頭竜」の力による七変化では足りず、やっぱり二十変化ぐらいじゃなきゃいけませんよね。そこが難点です。落書きが「南無阿弥陀仏」だった理由もいまいち分かりません。◇◇ところで、ドラマを企画した演出家の大嶋慧介によれば、「海外の人も楽しめるエンタメを作ろうという方針」のなかで、大正という時代を物語の舞台に選んだのだそうです。日本の大正時代は、フランスのベルエポックや、アメリカのジャズエイジにも匹敵するような、モダニズム文化の爛熟と頽廃の時代であり、けっこう怖くてヤバイ時代でもある。鈴木清順の映画や、「鬼滅の刃」などの時代設定にも重なるし、「岸辺露伴」の世界観の原点でもあるし、物語の題材としては非常に面白く、海外からの関心も高まってる気はします。その際に、江戸川乱歩や泉鏡花は中心的なコンテンツになる。文豪怪奇コレクション猟奇と妖美の江戸川乱歩/恐怖と哀愁の内田百閒/耽美と憧憬の泉鏡花◇なお、ドラマには「下水道」らしき映像がたびたび出てきましたが、今回の物語には関係しませんでした。わたしは、てっきりCGの映像かと思いましたが、実際には、神戸の湊川隧道でロケをしたようです。湊川隧道は1900年に建設されていて、大正期に作られた東京の下水道よりも、さらに古いのですね。
2023.02.13
NHK「探偵ロマンス」第3話。このドラマ、ヤバすぎ!!ワケわからないけど!次回ですべての謎が解けるのかしら??◇落書きの犯人は踊り子のお百だった!そして、お百はお勢さんの孫の正一郎だった!だけど、お勢さんの正体は変装していた住良木だった!…どゆこと?◇美摩子と連れだって浅草を歩く住良木は、まるで鬼舞辻無惨(=月彦さん)ではないですか!美摩子「変な気分。あなたが太陽の下にいる…」住良木「昼間に見る夢も悪くないものですよ」美摩子「悪夢じゃないといいんだけど…」実際、無惨様は太陽の下を歩きませんからね…住良木は、落書きの不良学生たちに「先生」と呼ばれています。…何の先生??そもそも住良木が言う「昼間に見る夢」って何なのか。やっぱり共産主義の世界かしら?下宿人の郷田くんも、「あなたが悪いんじゃないです。世界が悪いんです」という住良木の教えに感化されてしまった。郷田くんが読む「一寸法師」の最後の頁にはイルベガンのマーク!美少年のお百も、「何を美しいと思うのか。そこにその人の生きる様が現れる」とは "尊敬する先生の言葉" なのだと語ります。廻戸殺しの翌日から不良たちに声を掛けていたのは、どうやらお百だったようです。もしや、住良木は、お百の悲しみや、郷田くんの苦しみや、不良学生たちの不満などを吸い上げながら、みんなで世界を染めようとしているのかしら?人を鬼へと染め変える無惨様みたいに。◇お百は、10年前の事件で背中に火傷を負ったお勢さんの孫…すなわち正一郎でした。しかし、白井三郎の前に現れたお勢さんは、じつは住良木が白粉で変装した偽物のお勢さんだった!なぜ住良木は、お勢に変装して探偵の白井三郎に近づき、彼に「イルベガンの卵」を預けたのでしょうか?それどころか、お勢さんの姿で白井三郎に接吻してましたよ!…どゆこと?本物のお勢さんは生きてるの?◇蓬蘭美摩子=相馬久代は、住良木=お勢の正体を見破りました。彼女の姉は、かつて白井三郎の助手だったのだけど、(なぜか村山隆子に瓜二つ!)妹の久代のほうは「女スリ」 だったらしい!スカートの下にはピストルも隠していました!しかし、住良木は久代を拉致してしまったようです。BAR《K》の入口には、あなたの大切なもの「相馬久代殿」戴きますとのメッセージ。◇…ところで、白井三郎と平井太郎は、後工田寿太郎の暗殺を未然に防ぎましたね。犯人は、舞台上の踊り子お百でしたが、そのお百を観客席から撃とうとした人物もいる。後工田は、殺された画商の廻戸から、「イルベガンの巣」の秘密を託されていたようです。白銀の地に眠る財宝がそこに?シベリアの貴重な鉱山、大鉱脈?それを手に入れた者が世界を手にする…。後工田は、こう言いました。≫ イルベガンの巣の存在を私は世界に公表するつもりです。≫ 協定を結び、各国共有の…終盤のシーンでは、R町の後工田邸に入る男を、刑事が迎え入れていました。◇後工田寿太郎の名は、日露戦争の頃に外務大臣だった小村寿太郎(1855-1911)と同じですが、ドラマの舞台である1919年に外務次官だったのは、むしろ幣原喜重郎です。幣原喜重郎は、当時の「シベリア出兵」に関係しています!以下はウィキペディアからの抜粋です。シベリア出兵とは、1918年から1922年までの間に、第一次世界大戦の連合国(イギリス・日本・フランス・イタリア・アメリカ・カナダ・中華民国)が「革命軍によって囚われたチェコ軍団を救出すること」を名目にシベリアに共同出兵した、ロシア革命に対する干渉戦争の一つ。共産主義の封じ込めという目的のほかに、帝政時代の外債と露亜銀行などのさまざまな外資を保全する狙いもあった。米国の歴史学者の分析によれば、当時の日本側の事情として、領土獲得への野心・日露戦争後に失った利権の奪還・地政学的な理由(日本はロシアと地理的に近く、さらに日本の利権が絡んだ満州、日本統治下の朝鮮半島は直接ロシアと国境を接していた)等のみならず、政治的・イデオロギー的な理由もあった。すなわち、日本の政体(国体)である天皇制と革命政権のイデオロギーは相容れない以上、共産主義が日本を含めた同地域に波及することをなんとしても阻止する必要があった。…とのこと。ロシア発の共産主義が世界を染めようとしている一方で、世界の資本主義が、シベリアの資源を争奪していたのです。NHK土曜ドラマ『探偵ロマンス』オリジナル・サウンドトラック
2023.02.05
NHK「探偵ロマンス」第2話を見ました!ピスケンはイルベガンに射殺されちゃった??蓬蘭美摩子(松本若菜)のほんとうの名は「相馬久代」でした。彼女の姉の京子は、かつて白井三郎(草刈正雄)の助手だったようです。お勢さん(宮田圭子)という老婦人も登場しました。◇第1話を見たときは、1909年のイルベガンの事件が、伊達順之助による不良学生射殺事件かと思いましたが…なんか違うっぽいw射殺事件というより、爆破事件(もしくは放火事件)のように見えるし、犠牲になったのは、不良学生じゃなくて、お勢さんの夫と、久代(=美摩子)の姉の京子でした。そして、その京子は、なぜか鳥羽の村山隆子(石橋静河)に瓜二つだった!白井三郎は、イルベガンを弁護したのではなく、たんに取り逃がした…ってことのようです。お勢さんの孫の正一郎も、いまは行方知れずになっている。なお、お勢さんは宝石「イルベガンの卵」の指輪をもっていて、美摩子の背中には「イルベガンの刺青」が彫られています。…どゆこと?◇お勢さんといえば、江戸川乱歩に「お勢登場」という作品があります。乱歩が生み出した稀代の悪女です。正一という息子もいる。NHKでは、満島ひかりもお勢を演じています。倉持裕も、このキャラを使って舞台作品を仕立てている。#上白石萌音 #上白石萌歌 #福本莉子 #倉科カナ #倉持裕 pic.twitter.com/RdivypxEBJ— まいか (@JQVVpD7nO55fWIT) April 23, 2022◇さて、第2話で、いちばん怪しかったのは、上海帰りの住良木平吉(尾上菊之助)でした。読みは「すめらぎ・へいきち」です。秘密倶楽部の噂話によれば、彼は、殺された画商の廻戸庄兵衛から、「人脈」「シベリアの事業」「美しい踊り子」を引き継いだらしい。もともと秘密倶楽部の会員は、みんなロマノフ家と関わりをもっているようです。なお、日本語の「すめらぎ」には"天皇/君主"の意味もありますね。住良木は、お勢さんと密会していたようにも見えます。「優しい人は悲しい人です…」などと、お勢さんと同じようなことを言ってました。さらに住良木は、踊り子の美少年お百に、「白粉の匂いがする…」と言われ、彼からの接吻の求めを"おあずけ"にしていた。美摩子と将棋を差していたときには、将棋よりも囲碁のほうが好きなのだと言い、その理由について、「みんなで手を取り合い世界を染めていくのが美しい」からだと語っています。…みんなで世界を染める?それって、スペイン風邪のこと?それとも、共産主義思想のこと?名前が「平吉」だけに平等主義者なの?秘密倶楽部「赤の部屋」って、コミュニストの赤かしら?◇あらためて当時の時代背景を確認してみます。1905年に日露戦争が終わると、日本とロシアは、米英に対抗すべく協約を結び、満州を南北に分け合っていました。1909年のイルベガンの事件は、そのような時期に起こっています。日本とロシアは、1914年にはじまった第一次世界大戦でも、事実上の同盟関係にありましたが、ロシア革命によってロマノフ王朝が倒れ、1918年にロマノフ家の人々が処刑されたので、反革命軍(白軍)は、ロマノフ家の財宝を、満州の日本軍に預けたといわれています。ロマノフ家の財宝の中でとくに有名なのが、皇室に奉納された58個のイースターエッグで、一般に「ファベルジェの卵」と呼ばれるものです。現在でも7個が行方不明だそうです。ドラマの舞台である1919年は、ちょうど第一次大戦が終わった年にあたり、前年からのスペイン風邪の大流行の真っ只中でもあり、まだロシア革命も進行中でした。ソビエト連邦が成立するのは、震災前年の1922年。すなわち、江戸川乱歩が作家デビューする前年です。…ドラマでは、東京の街に不良学生たちがあふれ、壁には「南無阿弥陀仏」などの落書きがされている。治安が悪化しているのですね。白井三郎は、そんな不良学生と廻戸殺しの関係をほのめかしました。◇初回から気になっていましたが、浅草のスラム街はアヘン窟のようにも見えます。ちょうど「鬼滅の刃」の舞台に重なりますが、大正時代の浅草は、吉原遊郭の全盛期ともいえる。踊り子のお百も、なにやら男娼のようです。実際、戦前の浅草は男娼の巣窟だったそうです。お百といえば、講談や歌舞伎に登場する「妲妃だっきのお百」がいます。毒婦として知られる悪女キャラです。江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」のなかでも、下宿人の郷田三郎が女装をしたときに、「自分が妲妃のお百にでもなった気持」と口にします。◇それから、これも初回からのことですが、平井太郎(濱田岳)と白井三郎が、巨大な下水道のなかを走る映像が何度か出てきますね。たとえば「レ・ミゼラブル」を見ると、すでに18世紀のフランスの地下には、巨大な下水道が張り巡らされていたのが分かります。パリの上下水道は1740年ごろに完成しています。かたや東京の下水道は、ようやく1914年に中島鋭治の計画による工事がはじまり、三河島の下水処理場が稼働するのは、やはり震災前年の1922年。なので、1919年の段階では、下水道はまだ稼働前で、絶賛工事中だったのでしょうね。◇◇◇話は変わりますが…近ごろ、松本若菜をドラマでよく見ますね~。「ファーストペンギン!」でも、「クロサギ」でも「夕暮れに手をつなぐ」でも。とくに今回の松本若菜は際立って美しい!お百を演じる世古口凌も美しかったです。…そして、大橋トリオがつくった萌音の歌も美しかった!こんな歌でしたね…生まれた時代、世界、私ではない私で出会えたらそんな夢見てたの…キーワードは「夢を見る」ということ。耽美と頽廃がもたらす幻想や、革命・災害・戦争の予感のなかで、時代そのものが不思議な夢を見ていたのでしょう。— NHK大阪放送局 (@nhk_osaka_JOBK) January 28, 2023 江戸川乱歩の「一寸法師」もあります!
2023.02.01
NHK「探偵ロマンス」第1話を見ました!◇舞台は、1919年(大正8年)の帝都=東京です。画商の廻戸庄兵衛(原田龍二)がピストルで殺害されます。当初は怪盗ピスケンの犯行と疑われました。ちなみに、現実の「ピス健」とは、1925年に連続ピストル強盗事件を起こした大西性次郎のこと。台湾、満州、上海、朝鮮などを渡り歩き、偽名と変装と軽業を使い、警察に挑戦状を送りつけながら逃げ続けた。ドラマでは「守神健次」の偽名を使っています。かたや、関西の興行ヤクザだった嘉納健治も、やはり「ピス健」と呼ばれていましたが、こちらは大河「いだてん」に登場した嘉納治五郎の甥にあたる人物です。しかし、どうやら真犯人はピスケンではなく、名探偵の白井三郎(草刈正雄)が10年前にかかわった事件の犯人、すなわち怪盗「イルベガン」のようなのです。1909年(明治42年)のイルベガン事件について知っているのは、会員制倶楽部《赤の部屋》を経営している蓬蘭美摩子(松本若菜)です…。彼女のほんとうの名は「久代」のようです。白井三郎は、このイルベガン事件をきっかけに探偵を辞めたらしい。おそらくBAR《K》のマスター(岸部一徳)も、そのあたりの事情を知ってる。◇実際の歴史に照らしてみると、1909年には、当時18才だった伊達順之助による学生射殺事件がありました。探偵の岩井三郎がその正当防衛を立証して、順之助は釈放されている。その後、伊達順之助は、大陸に渡って馬賊となり、1916年の張作霖爆殺事件や満蒙独立運動に関わっていきます。イルベガンの正体は、この伊達順之助なのでは?伊達家の人です!このへんの話は、安彦良和「乾と巽-ザバイカル戦記-」とか、ルパン三世 PART6「帝都は泥棒の夢を見る」とか、渡辺典子の「いつか誰かが殺される」とか、…そのあたりにも通じる内容。もともと「イルベガン」とは、シベリアのテュルク系神話に登場する竜のような怪物のことらしい。なお、蓬蘭美摩子の《赤の部屋》には、ロシア情勢に詳しい外務次官の後工田寿太郎(近藤芳正)や、上海帰りの貿易商である住良木平吉(尾上菊之助)も出入りしています。彼らも大陸の情勢について何か知っているのでしょう。◇これも現実の話ですが、ドラマの舞台である1919年には、当時25才だった平井太郎(のちの江戸川乱歩)が探偵を志し、岩井三郎の事務所の面接を受けて不合格になっています。どうやら平井太郎は、松崎天民の書いた「探偵ロマンス」(1915)という実録本を読んで、日本初の探偵である岩井三郎に興味をもったらしい。ドラマの白井三郎は、この岩井三郎をモデルにしているわけです。横溝正史が昭和7年に書いた「呪いの塔」には、江戸川乱歩をモデルにしたとされる探偵・白井三郎が登場します。さらに同じく1919年、平井太郎は、小学校教師の村山隆子と結婚しています。平井太郎は、その2年前に、三重県の鳥羽造船所に入って庶務課に勤めたのですが、このときに地元の村山隆子と知り合ったようです。≫ 江戸川乱歩とシンフォニアテクノロジードラマで彼女を演じているのは石橋静河です。◇平井太郎は、当時、東京市本郷区の団子坂で、2人の弟とともに「三人書房」なる古本屋を営んでいました。ドラマでは、時子(本上まなみ)の夫婦が、D坂にある古本屋《二人書房》を営んでいる設定です。平井太郎(濱田岳)は、郷田くん(泉澤祐希)とそこに下宿している。この郷田初之助が、鳥羽の造船所時代の友人という設定になっている。なお、江戸川乱歩は、「赤い部屋」「D坂の殺人事件」などの短編を書いており、「屋根裏の散歩者」には郷田三郎なる下宿人も登場します。◇1923年、すなわち大正12年には、関東大震災が起こって浅草のオペラ館が崩壊。その年に、江戸川乱歩が作家としてデビューします。今年は、乱歩の作家デビューから100周年になります。≫ 土曜ドラマ「探偵ロマンス」制作と出演者
2023.01.28
このドラマを見はじめた当初は、てっきり「恋愛を介在させない共生の可能性を探る物語」になると予測したのですが…実際は、もうすこし高い次元にまで行った感じですね。◇ふたりは「共生しない」という選択をします。けれど、それはけっして関係を解消するということではなく、むしろ共生せずとも繋がりあえるような「絆」をつくる、ということ。そこで重要な意味をもったのが、なんと高橋の「お祖母ちゃんの家」でした。これは、なかなか予想外の着地点◇たんに共生ということではなく、自分たちが帰属する「家」というものを共有する。それさえあれば、たとえ遠距離であっても繋がっていられる。そういう安心感、一体感。もちろん、これだけが唯一無二の結論ではないだろうし、多くの視聴者にとって意外な結末でもあったのだけど、かなり広い視野を与えてくれる結論ではあったと思います。◇これって、じつは、アロマアセクの人だけに特有の問題ではない。性愛欲求をもった人々でさえ、恋愛が思うように成就しないまま、家族もできないままに孤独に陥ることはあるのだし、あるいは、加齢によって性愛欲求を失ってしまって、家族をもたないまま孤独になる人だって沢山いる。そういう人々が、いかにして孤独から脱して、何がしかの「共生」の形をつくっていけばいいのか。何がしかの「絆」や「帰属」の形をつくっていけばいいのか。これって、とても普遍的な問題なのだと思います。▼NHK考証チームブログ 第1回NHK考証チームブログ 第2回NHK考証チームブログ 第3回NHK考証チームブログ 第4回NHK考証チームブログ 第5回NHK考証チームブログ 第6回NHK考証チームブログ 第7回NHK考証チームブログ 第8回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.03.28
NHK「恋せぬふたり」の第5話は、非常につらい内容。このドラマは、もともと「恋せぬ人間」の苦しみを描く内容なのだけど、第5話では、逆に「恋する人間」の苦しみが描かれました。◇たまたま、浜辺美波の「ドクターホワイト」に、「like」と「love」のちがいの話が出てきていたのだけど、そこでは漠然と「like<love」のように捉えられています。実際、世間では「like<love」という抽象的な認識のほうが一般的です。しかし、このドラマのなかでは、「like」と「love」が、とてもシビアに区別されている。「like<love」ではなく、「like≠love」なのですね。すなわち、「love」(性愛)は、「like」(親愛)とはまったく違う感情で、ときに支配欲や暴力性をもはらんでしまう欲求だし、あげく嫉妬や憎悪や呪いにさえ転じるものだから、like しあうことができても、love しあえない場合がある。love(性愛)においては、求める側も、求められる側も、たがいに傷つく惧れがある。だから、一方は、自分の欲求を抑えなければならない苦しみを背負い、もう一方は、相手の欲求に応えてあげられない苦しみを背負います。◇このように、たがいに love しあえない苦しみというのは、かならずしもアロマアセクにかぎった話ではなく、一般的な片思いにも通じる普遍的な苦しみですよね。つまり、自分は「恋人になりたい」と思ってるのに、相手は「友達のままでいたい」ってシチュエーション。そこでも、自分の欲求を抑えなければならない苦しみと、相手の欲求に応えてあげられない苦しみがあります。そういう構造が、非常にクリアに描かれたのが、今回の第5話でした。▷ NHK考証チームブログ 第1回▷ NHK考証チームブログ 第2回▷ NHK考証チームブログ 第3回▷ NHK考証チームブログ 第4回▷ NHK考証チームブログ 第5回▷ NHK考証チームブログ 第6回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.02.28
アロマ/アセクという新概念を提示してるNHKドラマ。異性愛もなければ同性愛もない、誰にも恋愛感情や性的欲求を抱かない人々を、アロマンティック/アセクシュアルというのだそうです。とりあえず、「女子スパ」に的確なレビューが載っていたので、↓こちらを紹介しておきます。https://joshi-spa.jp/1135886※いつもながらリアルサウンドの感傷過多気味なレビューは読む気にならない。要するに、恋愛を介在させない共生の可能性を探る物語のようです。第1話の終盤には、岸井ゆきのと高橋一生の、重要なやりとりがありました。岸井ゆきの「恋愛しないってことは多分、一人で生きてかなきゃいけないってことじゃないですか。親と一緒にいられればいいけど、期待に応えられないのも、理解されないのも辛くて…。自分の居場所、自分の城は自分で作るしかない。でも、私は一人は好きじゃなくて…。これから先ずっと一人で生きていくのかと思うと、たまらなく寂しいんですよね。…わがままですよね、仕方のないことなのに」高橋一生「そんなことはないと思います。どんなセクシャリティあれ、誰かと一緒にいたい、一人は寂しいっていう思いはわがままじゃないと思います。半年前、育ての親である祖母を亡くしました。その別れは覚悟してたことでしたが、今、寂しいです…すごく。まだ自分でもどうすればいいかわからない。でも、この気持ちをわがままだなんて思うつもりはないです」このドラマを見ていて、何より驚いたのは、高橋一生の異様なリアリティ。現実のアロマアセクというのが、どんな人たちなのかは知らないけど、もしや高橋一生こそが本物のアロマアセクじゃないかしら?と思わせる説得力がある。そのセリフにも、その声と表情にも、スリッパをひきずって歩く足音などの一挙手一投足にまで、何ともいえない"アロマアセクっぽさ"が漲ってる気がする。しかも、役名が「高橋」だし…。もしかしたら、このドラマの企画自体、高橋一生が持ち込んだんじゃないの?…とまで勘繰ってしまいました。とにかく、今シーズンの最注目の作品です。▼NHK考証チームブログ 第1回NHK考証チームブログ 第2回NHK考証チームブログ 第3回NHK考証チームブログ 第4回NHK考証チームブログ 第5回NHK考証チームブログ 第6回 ▽ノベライズの予約はこちら。
2022.01.18
NHK-Eテレのドラマ「ハルカの光」。脚本は矢島弘一。黒島結菜も好きだし、古舘寛治も好きだし、映像も綺麗なので、なんとなく見ていました。第4話では、古舘寛治の弾き語りも聴けてよかったです。◇ただ、このドラマでやや物足りないのは、肝心の名作照明についての紹介が、いかにも借りもの的な通りいっぺんの説明に終始して、物語のなかへ十分に消化しきれていないこと。そこだけは、妙に「Eテレ」的なのです。毎回、ひとつの名作照明を取り上げるのですが、その説明を聞いた後でも、その照明の個性や魅力は、いまひとつ伝わってこない。上っ面の知識を伝えるだけで終わっている。◇わたしが思うに、ほんとうに掘り下げるべきなのは、照明の「光」についての認識ではなく、むしろ「陰翳」についての認識なのだろうと思う。照明器具の個性や魅力は、その周囲に創り出される陰翳によるものだからです。そもそも、どんな照明器具であったとしても、光源そのものには、さほど大差はないのです。同じ発電所から引いた電気エネルギーを、ただ光エネルギーに変換してるだけであって、せいぜい、蛍光灯か白熱球かLEDかの違いでしかない。むしろ重要なのは、その照明器具が、いかに光源を覆い遮って、その周囲に独特の陰翳を作り出すか、ということなのです。陰翳についての認識を、物語のなかで深めていかなければ、その照明の個性や魅力も十分には伝わらない。ひとりの人生の陰翳に、その照明の陰翳がいかに寄り添っていくのか。そのことこそが、ほんとうは大事なのだと思います。このドラマのもうひとつのテーマは、東日本大震災からの復興なので、物語の焦点が最終的に「光」へ収斂するのは、あらかじめ必然なのでしょうが、かりにそうだとしても、まずは陰翳についての認識が深まってこそ、それぞれの光のもつ意味が見えてくるのだろうと思います。◇もし次回作があるのなら、そのことを考慮した物語を目指してもらいたい。そのためには、Eテレの教科書的な説明だけでは、おそらく不十分だろう、と思います。
2021.03.02
カノブツ。遅ればせながら見終わりました。脚本は「心の傷を癒すということ」の桑原亮子。ももクロのれにちゃんが好きなので見てたのですが、なんだかボンヤリした内容の物語でした。断片的には面白い要素も散りばめられてましたが、見終わってみて、結局どんな話だったのか、いまいち整理しきれない(笑)。とくに終盤の展開は分かりにくく、描くべき内容が全6話に収まりきれてなかった気もする。脚本家は、周到にいろんな伏線を配置してたようだけど、それがスタッフに共有されていたのかどうか怪しい。視聴者にとっては、かなり分かりにくいドラマでした。◇あらためて、物語の内容を時系列で整理してみます。7年前、女性漫画家の小鳥遊玲は、南貝荘の部屋で『氷の武将』の連載に取り組んでいましたが、右手が動かなくなったため、連載終了を決意します。しかし、玲の想い人であった編集者の中路は、「君が描かないなら別の漫画家に引き継がせる」と告げます。絶望した玲は、父親の開発した不老長寿装置コールドスリープに入って、自分自身の肉体を凍らせてしまいます。それ以来、南貝荘の部屋には、玲の幽霊=生霊が現れるようになり、押し入れの中はお札だらけになりました。それから7年後、漫画家を志望するミャンマー人のエーミンが、南貝荘に入居して玲の幽霊と共同生活をはじめます。一方、漫画『氷の武将』は、かつて玲のアシスタントだった千春が、ゴーストライターとして連載をつづけていました。しかし、千春は、玲から引き継いだ漫画も、想い人の中路のことも、自分のものにできずに苦しんでいました。千春は連載を断念しそうになりますが、エーミンと玲の協力によって危機を乗り越え、それ以降は、ゴーストライターとしてではなく、自分の作品として連載しつづける決心をします。かたや玲の幽霊は、生前(?)の自分のことを完全に思い出して、いったん姿を消します(成仏?)。しかし、1年後、プロの漫画家になったエーミンのもとへ、コールドスリープから蘇生した玲がおとずれます。…以上が物語の大筋です。◇これは、たぶん、冷たい海の底に沈んでいた氷の武将が、南の海で蘇生するまでの物語なのだと思います。冷たい海を象徴するのが、「コールドスリープ」という肉体冷却装置であり、南の海を象徴するのが、インド洋に生息するという「ウミウサギ」の貝殻です。ウミウサギの貝殻は、玲から千春の手に渡り、それが南洋の彼方からミャンマー人のエーミンを引き寄せた。そんな図式になっています。そして、この物語の内容を暗示するのが、『氷の武将』という劇中の漫画であり、その舞台となったのが「南貝荘」というアパートなのです。たぶん「氷の武将」は「氷の微笑」のパロディなのでしょう…(笑)ちなみに、不老長寿装置「コールドスリープ」を開発した玲の父親は、いつも亀を連れていますが、これはたぶん「浦島太郎」とか「亀は万年」の隠喩なのでしょう。◇結局のところ、中路をめぐる恋の行く末については、決着が示されません。おそらく、千春が中路と結ばれて、玲はエーミンと結ばれたのだろうと思います。千春は、ウミウサギと、連載漫画と、中路とを、すべて玲から受け継いで、自分のものにしたわけです。『氷の武将』の登場人物に当てはめるならば、玲は武将であり、千春は鎖奈ということになります。(玲=鎖奈ではないのです)武将は、鎖奈に向かって、「そなたの心のままにワシの首をもっていけ!」と託すのですね。その結果、千春は、玲のすべてを受け継ぐのです。◇しかし、恋の行く末よりも、もっと大事だったのは、玲と、エーミンと、千春と、中路の、4人の連帯の物語です。エーミンは、海岸を眺めながら、水平線のうえに4つの丸いものを描きました。これは、おそらく白いウミウサギなのですが、つまり、南の海で蘇生した4人が、たがいに協力しあって生きていく未来を暗示しています。ここらへんの伏線は、とても分かりにくいのですね。◇ちなみに、終盤には、ミスリードになるような台詞があり、これは物語のなかで覆されていくのですが、ここらへんの展開も、かなり分かりにくいです。ひとつは、「わずかな可能性に期待するより、落選したほうが100%あきらめがついて楽だ」という玲の消極的な言葉。これは、漫画賞を獲得しようとするエーミンに投げつけた言葉なのですが、実際は、かつて連載を放棄して漫画を諦めた自分自身のことを言っています。けれど、じつは玲は、けっして漫画を諦めて自殺したのではなく、いったん凍ることで未来の自分に託したのだということが、やがて明らかになります。◇もうひとつ、ミスリードになっていた台詞は、「僕の好きな人が、僕のことを全然好きじゃない」「この世は、少ない幸せを椅子取りゲームみたいに取り合ってる」というエーミンの消極的な言葉。お寺の僧侶でもあるコンビニの店長も「それが世の理だ」と言います。しかし、これを覆すのが、草野とドゥアンの恋のエピソードです。「草野が妻子を連れていた」というのは勘違いで、じつは妹と甥だった、という話です。これをきっかけに、それまで「起・承・承・承」の漫画しか描けなかったエーミンは、はじめて「起・承・転・結」の漫画を描くことに成功します。そして、ここから玲との関係も「転」に回りはじめるのですね。玲とエーミンが、ミャンマー風の仏塔パゴダで何を祈ったか分からないのですが、日本の仏教(コンビニ店長)には実現できなかったことが、ミャンマーの仏教(パゴダ)の力で実現できたのかもしれません。このへんの流れも分かりにくかったです。◇最終的に、エーミンが漫画賞に入選したのかどうか分からないし、蘇生した玲の右手が治癒したのかどうかも分かりません。玲が「父をモデルにした漫画を描く」と言った意味も分からない。そもそも右手が動かなくなった原因は何だったのでしょうか?そして、なぜコールドスリープから蘇生できたのでしょうか?凍っていた玲の体は、エーミンへの思いの力で暖かくなっていたともいうのですが、ドラマを見ていると、たんにエーミンの体温を吸い取っただけのように見えてしまう。実際、エーミンはどんどん冷やされて弱っていったのだし、玲はそれを恐れて、いったんコールドスリープに戻ったのです。もしかすると、その後も玲の体はどんどん暖かくなって、ついには凍っていた右手も溶けて、2人で新しい作品に着手できるようになったのかもしれません。しかし、そう解釈するには、かなりの脳内補完が必要ですね…(笑)。森崎ウィン/高城れに(ももいろクローバーZ)/和田正人/村上穂乃佳/中島広稀/白鳥玉季/高橋努/ブラザートム/古舘寛治
2020.10.23
腐女子、うっかりゲイに告る。最終話。けっこう複雑な内容なので、本放送のときは明瞭に認識できなかったけど、あらためて最終話を見て感じたのは、たんに同性愛の存在を肯定しただけじゃなく、最終的には「性愛」よりも「友愛」を上位に置いたということですね。◇フレディー・マーキュリーがメアリー・オースティンを愛したように、あるいはマコトさんが「僕は妻を選ぶ」と言ったように、純と紗枝のあいだの友愛も、性愛を超えていくのだろうと思います。実際、「性愛」は時間や老いとともに枯れてしまうけど、「友愛」はけっして枯れることがありません。最終的に勝利するのは後者なのだし、そこにこそ「神様が腐女子である」ような世界も実現するはずです。◇最近、渡辺満里奈が、夫の名倉潤との関係について話していて、ビル・ウィザースの「Lean on me」に勇気づけられたと言ってた。キャロル・キングの「You've Got A Friend」にせよ、ビル・ウィザースの「Lean on me」にせよ、「友愛」を歌っているところに「性愛」を超えた普遍性がある。そのことが、とても現代的な意味をもっていると思います。
2020.08.03
「逃げ恥」と「アシガール」の再放送が終わって、ちょっとしたレス状態になっていたけど、昨日の「腐女ゲイ」第5話でぜんぶ吹っ飛びました(笑)。やっぱり何度見てもすごい。なんか、去年の初見のときより衝撃が大きいかも。深夜枠のミニドラマのレベルじゃないんですよね。この作品は、いわゆる「意識高い系」の若い視聴者だけでなく、全世代の一般視聴者も対象にしてガッチリ放送すべきだと思う。そして、何が「普通」で何が「異常」なのかを、全国民にあらためて考え直させるべきだと思います。日本が生んだ傑作ドラマとして、海外でも放送してほしいですね。
2020.07.12
ふじょゲイ、最終回。すばらしい出来でした。これは、やっぱり海外でも上映すべきだなぁと思う。原作への波及効果とか、ファーレンハイトのスピンオフとか、いろんな展開さえ期待できそうな潜在力もあります。≪神様は腐女子である≫の名言は笑っちゃったけど、案外、西洋だったら画期的なコペルニクス的転換ともいえます。日本の場合は、多神教ですから、どこかの神社に腐女子の神様がいても不思議じゃないけどねえ。いずれにせよ、これは令和時代の最初の名作として記憶されることになるでしょう。とても美しいドラマでした。
2019.06.09
今季はこれといって目立ったドラマがなかったけど、そんななかで手ごたえを感じたのは、深夜枠のショートドラマでした。しかもティーン向けの学園ドラマなんですね。TBSの「賭ケグルイ season 2」NHKの「腐女子うっかりゲイに告る」どちらの作品も、すごくシャープな作りになっていて、視聴率のことなど気にせずに、作るべきものを確信をもって作ってるという感じ。その気概が画面の端々から伝わってきます。深夜枠であることや、公共放送であることが、かえってメリットになっているのでしょうね。「賭ケグルイ」は、season 1は未見だったのですが、これほど狂ってブッ飛んだ内容だとは思いませんでした。予想を超える新しさを感じさせてくれて痛快だったし、松村沙友理の演技が際立っていたのも印象に残ります。「腐女子ゲイに告る」は、まずは、やっぱりNHKのドラマの作り方がうまい。かなり鋭く深くエグった内容でありながら、けっして野島伸司や遊川和彦のように仰々しくやるのではなく、あくまで抑制された表現に徹している面に説得力があります。安易に社会学的な論評は加えませんが、ドラマとして優れているのは間違いありません。2作品ともに、非常に先端的な内容で、これなら海外でも通用するだろうなあという気がします。◇◇◇一方で、日テレ「あなたの番です」や、NHKの「ミストレス」あたりも、まあ、それなりに楽しんではいるのですが、おそらくアラサー女子あたりに向けて作っているであろう作品が、上に挙げたティーン向けの作品にくらべると、だいぶ内容的にバカっぽいというのを否定できない。(^^;クオリティの面でも劣っているように見えます。NHKの「ミストレス」なんて、やれ、海外ドラマのリメイクだという触れ込みで、しかも片岡敬司×吉田紀子というもんだから、どんなに凄い内容なのかしらと身構えてたのに、蓋を開けてみたら… たんなる昼メロでした。まあ、あえて夜の時間に昼メロを放送するって趣向はいいんだけど、わざわざ海外から輸入するほどの内容じゃなかったよね。(^^;それなりに楽しんで観てますけど、「くだらねー」と言ってしまえばそれまでのドラマです。◇日本社会は、大人になればなるほど、だんだん文化的なものを鑑賞する精神的な余裕を失って、しまいにはバカっぽい娯楽作品しか受容できなくなるのかも。ティーン向けの作品が文化的に高いレベルにあるのに、成年向けや爺婆向けの作品が、昼メロ&時代劇的なバカっぽさに堕していくというのは、なにやら情けない気もしないではありません。もしかしたら日本のテレビドラマの不幸は、「作り手はいるのに視聴者がいない」ってことなのかしら?
2019.05.26
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