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雨の日だった。ふたりでいつものヨットハーバーの前にあるカフェにいた。真夏がすぐそこまで来ているのに、少し肌寒くて、灰色の波を見ていると哀しい気持ちになる日だった。店内に流れるイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」がせつない気持ちを充満させていた。ほんとうはそのとき哀しかったのかどうか、今でははっきり思い出せない。後から自分の記憶が、その時のシーンを哀しかったのだというカテゴリーにやきつけてしまったのかもしれない。ガムからもらったその日の手紙。よく読んだ。よく読まないと、特にその日の手紙は、どんなふうにでもとれるような書き方だった。何度も読んだ。ガムは黙って「ホテル・カリフォルニア」を聴きながら、ヨットのさおばかりが揺れる波間を見ていた。私は、答えた。「ずっとともだちでいようよ。そのほうが、ずっと長くいっしょにいられるよ」ガムは何も言わずに、じっと私を見た。見つめるには長い時間だと感じられるくらい、見つめた。私は何か言わなければとあせって、さらに言うべきでないことを言った。「ガムとずっとともだちでいたいよ」沈黙が哀しい旋律を際立たせた。永遠のように思われる時間が流れたあと、ガムが低く答えた。「つまり、ぼくは、ともだちにしかなれないってことだね」違う。違う、ぜんぜん、違う。「ともだちがいいんだよ。そのほうがいい…」違う。ぜんぜんよくない。ともだちなんてつまらない。まったくつまらない。「そのほうがずっと幸せでいられるじゃない」「わかった。・・・明日から、ぼくはミツキのともだちになる」待って。決めないで。もう一回言って。ともだちじゃいやなんだって言って。お願い。そうしたら私も答える。もうともだちはやめようって。そうしたら… そうしたら…私の瞳はたぶんガムにすがっていた。でもそれをガムはもう見なかった。ガムは立ち上がった。「もう帰ろう」その声はいままで聞いたガムの声でいちばんやさしい声に感じられた。
2005.06.30
2002年 黒沢清監督my favorite作品です。手放せない詩集のように取り出しては繰り返し観ます。自分が何者かわからない、なんのために存在しているのかはっきり確信がもてない、存在しているのかどうかの証しがつかめない、どこに向かって生きていくために存在しているのか目的がわからない、そんな気分に時としてとらわれてしまうことのある人はきっと好きな作品だと思います。雄二(24才・オダギリジョー)はオシボリ工場でバイトしている青年。倒れそうな一軒家での貧しい一人暮しですが、大切に育てられたのがわかる礼儀正しい印象です。雄二はいつもなにかにイラついていて、時に自分がわからなくなってしまう。小さな頃はずっと夢の中で未来が見えていた。ところが最近は何も見えない、見えてもまっくらだったりする。雄二が唯一心を許しているのが工場の先輩、守(27才・浅野忠信)守は猛毒の赤クラゲを徐々に真水に慣れさせて東京で生きていけるようにしようと飼育している。暴走しがちな雄二に「待て」と「行け」の合図を決めて優しく見守る守。ところが、守は「オレはもう卒業だ」とクラゲを雄二に託し、工場の社長を殺して、独房で自殺してしまう。「行け」の合図を残して。残された守の父・真一郎(藤竜也)と雄二の生活が始まります。真一郎はリサイクル業を営み、やはりとても貧しい。守を理解できなかった真一郎は、その代わりのように親身に雄二の面倒を見る。クラゲを捨ててしまった雄二は、東京のどこかで生きていると信じ、毎日大量のえさを川に撒き始める。黙ってそれを見守る真一郎。「クラゲはどこかで生きています」「オレはどうやって信じればいいのかわからん」ある日、夢で未来が見えた雄二。それはどこか荒野のような場所で暴風に立ち向かいながら、行き先もわからないままひたすら進んでいかなければならない夢。雄二がじれったくてしょうがない真一郎。「どうして自分の目の前を見ないんだ?」未来の見えないいらだちに、雄二は真一郎とけんかして飛び出してしまうのですが、他に居場所のないことを悟り、泣きながらもどってきます。「許して」「許す。私はキミたち全部を許す」(この場面が秀逸です)ところがクラゲは生きていたんですね。川で、大量発生して。屋根に上って見ようとした雄二が言います。「ここからは何も見えないことがわかりました。 ”行け”の合図はとっくに出てたのにオレは何をやってたんだろう」海に向かうクラゲを「東京を逃げだすんですよ」と言う雄二。「オレたちは見捨てられたのか?」と真一郎。「きっとまた帰ってきますよ。オレはそう思います」「10年先か?20年か?オレの人生はそんなに長くない。待てない」とクラゲを追いかけて走る真一郎。河口まで追いかけてクラゲに刺され倒れた真一郎を雄二は必死に助ける。その時雄二が遠くをふっと見ます。とても抽象的な目で、未来を見ているような、なにかがわかったような、何もわからないことがわかったような、そんな目。(メイキングを見ると、ここで監督も泣いているんです)エンディングで、やんちゃな高校生のグループが歩いていきます。歩道から、車道に出てどんどん歩いていきます。車道なので交通整理しているスタッフが増えながら、黙々とまっすぐ前を向いて歩いていくんですが、毒のあるクラゲが東京で生きていく覚悟を持ったような、あるいは、東京を出て広い海に帰っていくような、そんなこころにグッとくるシーンです。 誰にも未来ははっきりとは見えない。 明るい未来なんて、誰もつかんではいない。 でも内面に毒を持ちながら、 それでも見えない未来に向かって歩いて行かなければならない、 そう覚悟しながら、誰もが生きている。とてもテンションが低くて、はっきりしない暗い作品なのですが、「化学反応を起こす作品」と藤さんが言っていたように繰り返しみるほど、後からどんどんジワジワくる作品です。 意外な登場人物:雄二の妹のカレシ役の エリート系サラリーマン。 最近気づきました。ハナワくんでした(^^)
2005.06.22
お待たせしました。観てきましたよ~まず、非常におもしろくて、あちこちで笑い声がたえない映画でした。『オペレッタ狸御殿』に続き、またまた個性的でしたね。原作は直木賞の奥田英朗さん監督は三木聡さん(トリビア、笑う犬などの構成)これに加えて、役者さんたちも、全員濃い人ばっかり。これが笑わずにいられるかというメンバーでした。精神科医・伊良部一郎は、松尾スズキさん。原作では、伊良部はもっと脂っぽい、暑くさいイメージですが、松尾さんのは、[ギャグだけど so cool ]な伊良部でした。(体型もスリムだし)また別の味が出てて、飄々としててよかったですね。で、話題はさっそく、オダギリ演じる田口にすすみま~す(笑)田口は、奥さんに浮気されて、離婚されて(=捨てられて)も3年たった今も未練タラタラの男。とてもやさしい性格で言いたいことも言えない。感情を爆発させて怒ることができない。そんな性格の反動からか、ある日から継続性勃起症という病気になってしまう。オダギリの映像に、かなりたくさんの●が入ります(^^;)オダギリの演技は笑いの提供に徹しているのですが、笑いながら切なかったです。そういうところをうまく表現していました。大学病院でモルモット扱いされるところは特に大笑いでしたが、ネタバレになるので、このくらいにしますね。今回のオダギリには、「何をやっても自分は自分」みたいな、これまで積み上げてきた自分に対する自信みたいなのも本人は自覚してやっていないだろうけど、感じられました。とにかく、個性的な芸達者で固められていて、全編がとても濃い作品です。やはりこの作品も評価が二分するのでしょうか。たぶん、単純に観ていいんだと思うんですけどね。。。 では、また次回です~
2005.06.16
畏れ多いことながら・・・pinoco_aさんの運営サイト ★e-mate club★ http://www.e-mate-club.comの、「SOHO.在宅ワーカーブログ集」でここを紹介してもらっています。数多いライターが存在している中でずうずうしくもこんな立派なサイトで紹介していただくとは、もったいなや、ありがたや・・・!pinoco_aさんは、私などが想像もつかない優れたPCスキルをお持ちの方なのですが、「オトコつながり=趣味の一致」ということで、親しくさせていただいてます。私のようなライターは、守秘義務があり、こんな仕事をしているとか、具体的に話せないのですが、セールス系はとてもおもしろいですよ。自宅で書くだけのライターでありながら、実にさまざまな業界の社会勉強をさせてもらってます。いろいろな方たちの、魅力的な生き方に接し、いつも感銘をうけています。学術系もまたおもしろいもので、いながらにして、多彩な勉強をさせてもらえるなんてそうないですよね。多いときは、6000~10000字(原稿用紙15~25枚)を連日書くことにもなり、もうおなかいっぱいで(^o^;ついついここが滞りがちになってしまうのですが。。。この頃はほとんど「オダギリ応援サイト」になりつつありますが、それ一色にしてしまうと、とても濃い内容のサイト(!!!)が、たっくさ~んありますので、情報はそちらにお任せすることにして、私は、ひっそり・・・と彼の作品のレビューなんぞを書いていこうと思っているわけでして。ま、そんな感じで、日々が過ぎていきます。これからもみなさま、どうぞよろしくお願いいたします~
2005.06.15
(picked upコーナー→PUに略します。よろしく!)やっとみてきましたよ~~~ん!!「オペレッタ狸御殿」日曜に線路男に邪魔されてからフラストレーションがぐつぐつと煮えたぎっておりましたが、「生ジョー挨拶・なし」ではあるものの、堪能してまいりました~!!まだ公開中の作品なので、ネタバレのないようにレビューしまっす!<絢爛豪華・波乱万丈・奇天烈・ハチャメチャ・ラブムービー>という前評判でしたので、それなりに想像はしておりました。だって鈴木清順ワールド炸裂ですから!でもね、舞台を見慣れている人、ディズニーミュージカル映画などが違和感なく見れる人、宝塚にすんなりとけ込める人、歌舞伎や狂言に慣れている人、「踊るマハラジャ」が結構好きな人、などなど…なら、ぜんぜんOKです。むしろ恋愛ストーリーの非常に純粋な形に感動すると思います。ただ、「映画はかくあるもの」という観念がかたまっている人ははっきり言って、バカらしくてついてこれないでしょう。だから、おすすめはしませんが、・・・・・ …私はもう一度見たいです!(^^)ボンボン育ちで世間知らずでひ弱な雨千代(オダギリ)と冒険好きでおちゃめで決断力のある狸姫(チャン・ツィイー)がとってもいい相性なんです。父を凌ぐ美しい若者になったため城を追われた雨千代と、わけあって中国から招かれた狸御殿のお姫さま。うぶな美男・美女カップルが一目で惹かれあい、そして、雨千代は恋を知り、男として強くなっていく…命がけの恋になる(と言っても、オペレッタ風の、ですが)…ストーリーは大悲劇に終わりそうでも、最後にはオペレッタの鉄則にしたがってハッピーエンドでメデタシ。CGがすごかったですね。美術もすごかった。リアルさをまったく拒否した、わざとチープさを演出するための美術・CG効果で、かえって「アート」を表現しています。とにかく鈴木清順監督・82歳の脳みそ、恐るべしっ!!あと、見逃しがちなんですが、狸楽団のメンバーとして、ひっそりと(?)「あの永瀬正敏!」さんが出ていました。まさか?!って感じ。要チェック。ジョーくんはこの作品にはずいぶん悩んだようでした。「セリフとセリフの間の役者の仕事、をまったく やらせてもらえなかった。 演じていることが、どこにどうつながっていくのか全然よめず、 監督の意図が最後までわからないところがあった」と答えています。ただ、あの、松田優作が、清順作品に出てから、二年間立ち直れなかった、というエピソードは有名なので、続々と作品が公開されるジョーくんはけっこう強いのかも、などと嬉しく思ってしまいました。(←あほっ!(≧∀≦)心配してた(?)歌と踊りもこなしていたし…(´▽`;)ゝよかった、よかった。来週のレディースデイ(木曜)は「インザプール」を報告します。お楽しみに。(楽しみになんかしてない? はいっ m(__)mではでは。おつきあいありがとうございました~
2005.06.09
散った桜の花びらがふたりでさした一本の傘に貼りついて、あじさいの紫が梅雨の晴れ間に輝いて、まぶしい光が波にキラキラはねて、ふたりの上に時間が流れていった。あるときは、講義が終って地下鉄の階段を下りていくと、見覚えのあるジーンズの足がだんだんに見えてきたことがあった。ガムの足だってすぐわかった。「どうしたの?」「うん、…もうじき来るかなぁと思って」「来なかったらどうするつもりだったの?」「来ると思ったから」「どのくらい待ってたの?」「もういいよ。早く行こう」ちっちゃな子どもみたいな、子犬みたいな、そんなガムが大好きだった。でも、好きになってはいけないと自分に決めていた。恋ではないと自分に言い聞かせていた。ひとつ年下の浪人生で、ひとりっこでおかあさんとのふたり暮らしで…。 この恋はどこから見ても幸せになれるはずがない。周りには、画に描いたような恋人として理想的な男子学生がいっぱいいる。自分から辛い選択をしてはいけない。今度の恋は幸せな未来に直結していなくちゃいけない。もう16、7みたいな青臭い恋はしない。ガムには高校生のときから続いている彼女がいて、そのコとの付き合いが深いことはガムからじかに聞いて知っていた。だけど、毎日のように会って話している私には触れてみようともしない。いつまでたっても手をつなぐだけで、肩を抱こうともしない。ガムのほんとに好きなのは、その彼女なんだ。私はちょっと高嶺にいたはずが、偶然身近に降りてきた何でもわかってもらえるごく親しいともだち。ほんとに好きな彼女のかわりに心の隙間を埋める役割のひとつ年上のおねえさん。それでいい。いろんなことを毎日のように話して、お互いのことをよく理解しているつもりだった。婉曲な表現をしてもその奥の意味はわかりあえてると勘違いしていた。でも肝心なことはふたりともほんとはなにもわかっていなかったんだ。自分の気持ちさえもぜんぜんわかっていなかったんだ。=======================仕事に行き詰まり、ここに逃げてしまった・・・・(>_
2005.06.07
今日はちょっとノリが悪いです。実はどっかのおバカ男が線路に入ったせいで新幹線が朝から全面ストップ。美月はジョーくんの舞台挨拶のチケット(in京都)を無駄にしました。自分のせいじゃないこういうことはほんとムカつく~!生ジョー、見れなかったよーーー! くやしぃ~~!では、気を取り直して、ピクトアップコーナーいきましょう。-----☆さおだけ屋はなぜ潰れないのか?☆-----今話題の会計士作家、山田真哉の「身近な疑問から始める会計学」の本です。この人の本、売れてますね~女子大生ミステリーシリーズ(これも会計学本)もあるし、あちこち雑誌にも出てるし。さおだけ屋は、もの心ついたときから存在している。しかし、誰かが買っているのを見たことはない。しょっちゅう、買い替えが必要なものでもないし、壊れたら、金物やさんに買いに行くはずのものなのに、なぜ、さおだけ屋はずっと潰れないのか?そんなところから、会計学を教えてくれます。読むと会計やビジネスがわかった気になります。で、その気になって「日系ビジネスマガジン」を読んでみたら…・・・・やっぱ、さっぱりわからんかった・・・・(笑)そんなに簡単にわかるわけないよね~でも、読めば楽しい本ですよん。-----☆「血と骨」☆-----いわずと知れたビートたけしの金俊平。強靭な肉体と知恵、金銭欲、性欲、一生誰も愛さず、誰にも愛されず、孤独の中で圧倒的な生命力を維持しながら、生き続けたひとりの男の生涯。妻役の鈴木京香もよかった(いつもと違ってイロっぽくないのがうまかった)娘役の田端智子もよかった。愛人役の、中村優子(清子役)濱田マリ(定子役)もよかった。でもいちばんよかったのは、やはりオダギリジョー(武役)武が出ているのは、たった20分ほどなんだけど、その短い間にものすごい存在感が残る。金俊平が15のとき人妻を寝取って、生まれた息子が武。生まれたその時点から、誰にも祝福されず、母と、母の夫を不幸にし、母を死なせ、誰からも大事にされずに、今までたらいまわしにされてそれでも生きてきたヤクザの役です。身体中刺青で、それがまた色気があるんだけど、でも知的なヤクザなの。すさんでるんだけど、優しさを残してるやくざなの。去って行くとき、彼の人生の悲哀が背中に漂ってて、涙が流れてきたよん。そして、そのあとのはかない彼の人生をも暗示させる去り方だったなぁ。自分ではどうしようもない人生の哀しみを生まれながらに運命として背負った男の背中・・・・ 泣かせるぅ…!またまたオダギリになって終わりましたけど、彼はいろんな作品で、いろんな顔を持っています。ただの美形男ではなくて演技派なのです。そこんとこ、わかってくれるとうれしいな。ぜひ一度見てみてください。ではでは、また来週~
2005.06.05
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