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平成25年短答式試験問題[刑事系科目]〔第20問〕 次の【事例】における甲の罪責に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。【事 例】 甲は,深夜,帰宅しようと歩いていたところ,道端に見ず知らずのAが重傷を負って倒れているのを見付けた。甲は,周囲にA以外の誰もおらず,Aには意識があるものの,動ける状態ではなかったことから,これに乗じて,Aの傍らに落ちていたAのかばんの中から金品を持ち去って自分のものにしようと考え,Aに対し,「もらっていくよ。」と言って,同かばんからAの財布を取り出して自分のかばんの中に入れた上,Aを救護することなくそのまま放置してその場を立ち去った。甲は,自宅に戻り,Aの財布の中を見たところ,現金約1万円のほか,①大きさや重さは五百円硬貨と同じであるものの,中央に穴が開けられ,模様もない円形の金属片10枚,②クレジットカードと同じ大きさであるものの,外観上何ら印刷が施されておらず,4桁の数字が手書きで書かれ,磁気ストライプらしい黒いテープが貼られているプラスチック製の白色カード1枚を見付けた。甲は,①の金属片はAが自動販売機等で商品を購入する際などに使うつもりで持っていたものだろうと考え,同金属片10枚を1本100円の缶ジュースの自動販売機に順次投入して購入ボタンを押し,出てきたジュース10本と釣銭合計4000円を自分のものにした。また,②の白色カードは,他人のクレジットカードの磁気情報をコピーして不正に作成されたカードであったが,甲は,そのことを認識した上,同カードに書かれた4桁の数字がその暗証番号に違いないと考え,後日同カードを現金自動預払機に挿入して現金を引き出すつもりで,同カードを自宅に保管しておいた。【記 述】1.甲が上記重傷を負ったAを放置して立ち去った行為には,単純遺棄罪が成立する。2.(略)3.(略)4.(略)5.(略)【解説】1 誤っている単純遺棄罪(刑法217条)における「遺棄」とは、移置のみならず、置き去りも含まれる(1)。しかし、甲とAとの間に法律、契約、事務管理、慣習、条理、先行行為あるいは保障人的地位、支配領域の設定等の作為義務を認めるべき関係は認められないので、単純遺棄罪は成立しない。(1)西田・各論28頁さすがに,法科大学院の未修1年次の学生でも,この解説のようには間違わないのではないでしょうか。単純遺棄罪(刑法217条)にいう遺棄とは,被遺棄者を場所的に移転させること(移置。安全な場所から危険な場所,危険な場所から更に場所を移すこと)をいいます。一方,保護責任者遺棄罪(同法218条)にいう遺棄には,被遺棄者を場所的に移転させること(移置)のほか,置き去りのような被遺棄者を危険な場所に遺留して立ち去る行為も含まれると解されています(前田雅英 編集代表『条解 刑法』[第2版](弘文堂,2007)596頁以下参照)。そして,このような理解が判例・通説の立場であるとされています。これを本事例についてみると,甲は重傷を負ったAを放置して立ち去ったにすぎず,Aを場所的に移転させてはいないため,甲には単純遺棄罪は成立しません。これに対して,上記解説は,単純遺棄罪にいう遺棄には移置のみならず置き去りも含まれるとしたうえで,本事例において甲がAを置き去りにした行為について単純遺棄罪が成立するかどうかを検討しています。しかしながら,本問では,甲の罪責を判例の立場に従って検討することとされているため,判例の立場に反して,単純遺棄罪にいう遺棄に置き去りも含めて甲の罪責を検討することは許されません。したがって,単純遺棄罪にいう遺棄には移置のみならず置き去りも含まれるとする上記解説は,明らかに誤っています。なお,上記解説には西田・各論が引用されていますが,同書に誤りがあると誤解されるといけないので,以下に該当箇所を引用します(西田典之『刑法各論』[第四版](弘文堂,2007)28頁以下)。「通説・判例によれば,217条,218条にいう『遺棄』とは,要扶助者を場所的に移動させることにより新たな危険を創出する場合(移置=作為犯)と,保護しなければ生命の危険が生じうる要扶助者を放置したまま立ち去る場合(置き去り=不真正不作為犯)を意味するが,いずれも行為者と要扶助者との間に場所的離隔を伴う場合である。…(中略)…しかし,通説は,これらのすべてを処罰すべきであるとはしない。不作為による遺棄については,218条の保護責任者遺棄においてのみ処罰可能だとするのである。その理由は,『置き去りのように不作為犯的形態のものが遺棄罪を構成すると考えられるのは,つまりは,行為者に保護義務のあるばあいだからである』として,218条にいう保護責任と不作為犯における作為義務との同一性に求められている(団藤453頁,大塚59頁)。判例も,218条の遺棄には置き去りを含むことを認めているが(最判昭和34・7・24刑集13巻8号1163頁〔26〕),他方,不作為による単純遺棄を認めた例がないから,通説と同様の立場をとるものといえよう。」(下線筆者)これを見る限り,おそらく,上記解説の執筆者は,中略部分より前の箇所だけを読んで,単純遺棄罪における遺棄には移置のみならず置き去りも含まれると解説しているのだろうと予想されます。しかし,下線で示した部分を読めば分かるように,西田・各論においても,判例・通説は単純遺棄罪における遺棄には置き去りは含まれないとする立場を採っているという内容が明確に記述されています。ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。比較的短文の事例についてどのような犯罪が成立し、あるいは、どのような犯罪が成立しないかという点を検討させる形式である。個々の犯罪の構成要件について正確な理解のみならず、当てはめに際しての的確な判断が求められるが、法科大学院教育との関係では些か平易に過ぎる設問ではなかったかと思われる。本問の解説の執筆者は,現役の法科大学院の実務家教員であるにもかかわらず,上記のような誤った解説をしたうえで,本問を些か平易に過ぎると評価しています。私は,上記の解説やコメントを読んでいたら,このような教員に教わらざるを得ない法科大学院の学生のことが不憫にさえ思えてきました。それでは。
2019.03.31
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平成25年短答式試験問題[刑事系科目]〔第9問〕イ.財産刑には,罰金,没収及び追徴が含まれる。【解説】誤っている刑法第9条は、「死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。」と規定しているところ、財産刑は、罰金と科料であり、没収・追徴は付加刑である。本肢にいう追徴とは,刑法上,没収できる物が没収できないときに,没収に代わり,その価額の納付を強制する処分であり,刑そのものではありません(金子 宏・新堂幸司・平井宜雄 編集代表『法律学小辞典』[第4版補訂版](有斐閣,2008)878頁参照)。そして,上記解説に引用されている刑法9条に規定されている通り,付加刑は没収のみです。そうすると,本肢は,財産刑に刑そのものではない追徴を含めているため,誤っていることになります。したがって,没収と追徴はどちらも付加刑であるとする上記解説は,明らかに誤っています。上記解説の執筆者は,本肢の正誤の根拠として刑法9条を挙げており,同条には付加刑は没収のみであるとはっきりと規定されているにもかかわらず,なぜ,追徴は付加刑であるとする誤った解説をしてしまっているのでしょうか。正直,これには言葉もありません。それでは。
2019.03.30
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司法研修所刑事裁判教官室 編『プロシーディングス刑事裁判』[平成30年版](法曹会)124頁2019年(平成31年)1月30日に発売されました。
2019.03.29
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大塚裕史・十河太朗・塩谷 毅・豊田兼彦『基本刑法Ⅰ 総論』[第3版](日本評論社)536頁2019年(平成31年)3月27日に発売されました。
2019.03.28
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宇賀克也『行政法概説Ⅲ 行政組織法/公務員法/公物法』[第5版](有斐閣)658頁2019年(平成31年)3月27日に発売されました。
2019.03.27
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西田典之 著・橋爪 隆 補訂『刑法総論』[第三版](弘文堂)520頁2019年(平成31年)3月26日に発売されました。
2019.03.26
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弥永真生『リーガルマインド 商法総則・商行為法』[第3版](有斐閣)200頁2019年(平成31年)3月25日に発売されました。
2019.03.25
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近藤光男『商法総則・商行為法』[第8版](有斐閣)298頁2019年(平成31年)3月23日に発売されました。
2019.03.24
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潮見佳男『民法(全)』[第2版](有斐閣)752頁2019年(平成31年)3月23日に発売されました。
2019.03.23
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司法研修所刑事裁判教官室 編『プラクティス刑事裁判』[平成30年版](法曹会)176頁2019年(平成31年)1月30日に発売されました。
2019.03.22
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伊藤 真『刑法各論(伊藤真試験対策講座7)』[第5版](弘文堂)608頁2019年(平成31年)1月30日に発売されました。
2019.03.21
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堂薗幹一郎・野口宣大 編著『一問一答 新しい相続法 平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説』(商事法務)296頁2019年(平成31年)3月14日に発売されました。
2019.03.20
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平野裕之『新債権法の論点と解釈』(慶應義塾大学出版会)480頁2019年(平成31年)1月25日に発売されました。
2019.03.19
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平野裕之『コア・テキスト 民法Ⅲ 担保物権法』[第2版](新世社)304頁2019年(平成31年)1月19日に発売されました。
2019.03.18
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平成25年短答式試験問題[民事系科目]〔第67問〕5.当事者本人を尋問する場合において,その当事者が,正当な理由なく陳述を拒んだときは,罰金又は過料の制裁を受ける。【解説】誤っている民事訴訟法209条1項。当事者本人に宣誓を命ずることは裁判所の裁量であるが、宣誓した当事者本人が虚偽の陳述をした場合には、裁判所の決定により、10万円以下の過料の制裁が科される。偽証罪(刑法169条)などの刑罰をもって処せられる証人とは異なり、当事者本人の場合は過料の制裁にとどまっている。この解説も酷いです。民事訴訟法209条1項は,宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。と規定しています。しかし,本肢では,当事者は正当な理由なく陳述を拒んでいるだけであって,虚偽の陳述をしているわけではないので,同条項の要件には当てはまりません。この点,同法208条は,当事者本人を尋問する場合において、その当事者が、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓若しくは陳述を拒んだときは、裁判所は、尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができる。と規定しています。これは,証拠方法が当事者本人であるという特質を踏まえ,当事者が所持する文書の不提出と類似の制裁(同法224条1項参照)を定めたものです(伊藤眞『民事訴訟法』[第5版](有斐閣,2016)452頁参照)。このように,正当な理由のない当事者の陳述拒絶に対しては,尋問事項に関する相手方の主張についての真実擬制が規定されているところ,本肢では,当事者尋問においてその当事者が正当な理由なく陳述拒絶した場合に「罰金又は過料の制裁を受ける」としているので,誤っていることになります。したがって,本肢の正誤の根拠としては同法208条を指摘しなければならないにもかかわらず同法209条1項を指摘している上記解説は,明らかに誤っています。ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。細かい条項に関する問題ではあるが、いずれの記述も条文の知識を直接問うものであり、基本的知識に属し、容易に正解に到達できる。本肢の内容は,受験生にとっても基本的な条文知識に関するものですが,同時に,実際に民事訴訟手続に携わる弁護士にとっては必須知識だと思います。それにもかかわらず,なぜ,現役の弁護士である本問の解説の執筆者が上記のような誤った解説をしてしまうのでしょうか。非常に理解に苦しみます。それでは。
2019.03.17
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平成25年短答式試験問題[民事系科目]〔第33問〕ア.未成年者Aに対し最後に親権を行う者が遺言で未成年者BをAの未成年後見人に指定した場合,Bは未成年であってもAの未成年後見人となる。エ.未成年後見人は,未成年被後見人の財産を管理し,かつ,その財産に関する法律行為について未成年被後見人を代表するが,未成年被後見人の行為を目的とする債務を生ずべき場合には,未成年被後見人の同意を得なければならない。【解説】ア 誤っている未成年者に対して最後に真剣[原文ママ]を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる(民法839条1項本文)。未成年後見制度は、判断能力が不十分で財産管理能力がないことから、財産管理能力のある者を法定代理人とすることにより未成年者を保護する制度であるから、未成年者は、後見人となることはできない。エ 正しい真剣[原文ママ]を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない(民法824条)。未成年後見人は、同条に規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する(民法857条)。一定の事由がある場合には、更に後見監督人の同意が必要である(同条ただし書き)が、未成年者の同意が必要であることに変わりはない。したがってこの記載は正しい。この解説の執筆者も,ちゃんと六法で条文を確認していないのではないでしょうか。まず,未成年者は,後見人となることができません(民法847条1号)。したがって,肢アの正誤の根拠となる同法847条1号を指摘していない上記解説は,明らかに誤っています。次に,同法824条は,親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。と規定していますが,同法857条は,未成年後見人は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。ただし、親権を行う者が定めた教育の方法及び居所を変更し、営業を許可し、その許可を取り消し、又はこれを制限するには、未成年後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。と規定しており,上記解説にいう同法824条を準用していません。同法824条を準用しているのは同法859条2項であり,同法859条は以下のように規定しています。① 後見人は,被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。② 第八百二十四条ただし書の規定は、前項の場合について準用する。したがって,肢エの正誤の根拠となる同法859条を指摘せず,その代わりに同法824条を準用していない同法857条を指摘している上記解説は,明らかに誤っています。法科大学院では,教員は学生に口煩いと思われるほどいちいち六法で条文を確認することを教えているはずです。それにもかかわらず,上記のように誤った解説をしてしまうのは,教える立場であるはずの解説者自身がしっかりと六法で条文を確認していないことの証左ではないでしょうか。現役の法科大学院の実務家教員ならば,短答式試験問題の解説を執筆する際には,自分でも六法を繙いて条文を確認することを徹底すべきだと思います。それでは。
2019.03.16
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平成24年短答式試験問題[民事系科目]〔第55問〕 AがBを受取人として振り出した約束手形を,Bは,白地式裏書によってCに譲渡し,Cは,この手形をそのままの状態で金庫で保管していた。Cの金庫からこの手形を盗み出したDは,記名式裏書によってこれをEに譲渡した。Eは,この手形を取得する際,Dが権利者であると重過失なく信じていた。Eは,この手形を記名式裏書によってFに譲渡した。現在の所持人は,Fである。この手形の裏書欄の状況を簡略化して示したものが【図】である。 この手形に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。 【図】 第1裏書 B → (白地) 第2裏書 D → E 第3裏書 E → Fア.(略)イ.(略)ウ.(略)エ.(略)オ.判例によれば,Dは,この手形について遡求義務を負うことはない。【解説】ウ 誤っている本問において、Eは、Dから裏書を受ける際に、Dが権利者であると重過失なく信じている。そして、上記アの解説記載のとおり、本問では裏書の連続が認められる。よって、D[原文ママ]には、手形の善意取得が認められる(手16条2項)。(以下,略)オ 誤っている上記ウの解説記載のとおり、本問では、Eに善意取得が認められる。そして、手形法7条は、手形行為独立の原則を規定しており、かかる規定は、裏書にも適用される。よって、本問においても、DからEへの裏書には手形行為独立の原則が適用され、DE間の裏書は、前提となるCD間の譲渡無効の影響を受けない。よって、DはEに対して遡求義務を負う。肢オについての上記解説の内容は,何ら誤っていません。しかしながら,肢オには「判例によれば」という条件が付されているので,判例に従って正誤の判断をしなければなりません。この点,最判昭和33・3・20民集12巻4号583頁は,適法な代表者でない者によって振り出されたA会社名義の約束手形を上告人が被上告人に裏書譲渡し,さらに被上告人が当該手形を他に譲渡したところ,満期に支払を拒絶されたため,手形を受け戻したうえで上告人に対して遡求義務の履行を求めた事案について,「原審の認定した事実関係の下においては、上告人は本件手形の真正な裏書人であるというのであるから、被上告人が所論のように本件手形振出人の代表者名義が真実に反することを知つていたとしても、上告人の裏書人としての手形上の責任は何ら消長を来たさないものというべきである。」と判示して,上告人に当該手形についての遡求義務を認めています。したがって,上記解説は,肢オの正誤の判断は判例によることが明示されているにもかかわらず,かつ,正誤の根拠となる判例があるにもかかわらず,それを示していないという意味において,解説の仕方に誤りがあると言えるのではないでしょうか。司法試験・予備試験の短答式試験において判例による解答が求められた場合に当該判例を知らなくても正解できればよいという結果論は,あくまでも受験生にのみ通用する話です。なぜなら,受験生にとっては短答式試験で何点取れるかが1番の問題なのであって,どの判例を知っていてどの判例を知らないかはマークシート上には表れないからです。一方,短答式試験問題の解説は受験生の勉強に資するためのものですから,現役の法科大学院の実務家教員が解説するのであれば,選択肢の正誤の判断において判例によることが明示されている場合には,的確に当該判例を指摘すべきだと思います。ましてや,それが判例百選に掲載されている判例ならば,なおさらのことでしょう(神田秀樹・神作裕之 編『手形小切手判例百選』[第7版](有斐閣,2014)94頁)。なお,上記昭和33年判決は,もちろん本問出題時における最新版の判例百選にも収録されていました(落合誠一・神田秀樹 編『手形小切手判例百選』[第六版](有斐閣,2004)96頁)。それでは。
2019.03.15
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伊藤 真 監修『司法試験・予備試験 伊藤真の速習短答過去問 行政法』[第2版](法学書院)224頁2019年(平成31年)1月17日に発売されました。
2019.03.14
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近藤光男『現代商法入門(有斐閣アルマ)』[第10版](有斐閣)390頁2019年(平成31年)1月15日に発売されました。
2019.03.13
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笹井朋昭・木村太郎 編著『一問一答 成年年齢引下げ』(商事法務)224頁2019年(平成31年)1月12日に発売されました。
2019.03.12
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2011年3月11日に東日本大震災の被害に遭われた犠牲者の方々に向けて謹んで哀悼の意を捧げます。
2019.03.11
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神田秀樹『会社法』[第二十一版](弘文堂)444頁2019年(平成31年)3月8日に発売されました。
2019.03.10
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芦部信喜 著・高橋和之 補訂『憲法』[第七版](岩波書店)488頁2019年(平成31年)3月9日に発売されました。
2019.03.09
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宇賀克也『地方自治法概説』[第8版](有斐閣)494頁2019年(平成31年)3月8日に発売されました。
2019.03.08
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本山 敦・青竹美佳・羽生香織・水野貴浩『家族法(日評ベーシック・シリーズ)』[第2版](日本評論社)260頁2019年(平成31年)1月10日に発売されました。
2019.03.07
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秋山靖浩・伊藤栄寿・大場浩之・水津太郎『物権法(日評ベーシック・シリーズ)』[第2版](日本評論社)208頁2019年(平成31年)1月10日に発売されました。
2019.03.06
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河村 博『―実務家のための― 刑法概説』[9訂版](実務法規)692頁2019年(平成31年)1月1日に発売されました。
2019.03.05
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二宮周平『家族法(新法学ライブラリ 9)』[第5版](新世社)528頁2018年(平成30年)12月29日に発売されました。
2019.03.04
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平成24年短答式試験問題[公法系科目]〔第29問〕ウ.行政罰は,間接的に行政上の義務の履行を確保する機能を果たすことから,行政罰が適用できる場合,代執行以外の手段によってその履行を確保することが困難とはいえないため,代執行をすることはできない。【解説】誤っている行政罰は、特に補充性を必要とするものではないので誤り。この解説も支離滅裂なことを言っています。本肢は,行政罰を適用するための要件として補充性が必要かどうかを問うているのではありません。行政代執行法2条は,以下のように規定しています。法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。そして,本肢では,行政罰が適用できる場合であっても,ここにいう「他の手段によつてその履行を確保することが困難」なことという要件を満たすかどうかが問われているのです。この点,同条が「他の手段によつてその履行を確保することが困難」なことを要件としているのは,比例原則の要請によるものであり,「他の手段」は直接的に義務の履行を確保するものでなければなりません。そうすると,行政罰の存在は,間接的に義務履行確保の機能を発揮するとしても,直接的には義務の履行を確保する手段であるとはいえないので,「他の手段」に含めるべきではありません(宇賀克也『行政法概説Ⅰ 行政法総論』[第6版](有斐閣,2017)229頁参照)。したがって,たとえ行政罰が適用できる場合であっても,同条にいう「他の手段によつてその履行を確保することが困難」なことという要件を欠くことにはならないので,本肢は誤っていることになります。このように,本肢の解説としては同条にいう「他の手段」と行政罰との関係について説明すべきところ,上記解説は,「行政罰は、特に補充性を必要とするものではない」として本肢の正誤とは全く関係のないことを述べているため,明らかに誤っています。ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。行政強制については、法科大学院においても、授業で取上げる課題であり、本問はいずれも基本的な理解を問うており、適切である。本問の解説の執筆者は,本問は基本レベルの問題であると認識しているようですが,翻って,その基本的な理解すらもできていない上記解説は,大いに問題があるため極めて不適切であると思います。最後に,本肢と同じ出題趣旨と考えられる肢を含む短答式試験問題の過去問がありましたので,参考までに紹介します。平成22年短答式試験問題[公法系科目]〔第27問〕 A市は,道路法所定の道路管理者として,国の所有する土地を借り受け,これを市道(以下「本件道路」という。)として管理している。Bは,その自宅前の本件道路上に屋台用の軽トラックを置き,周囲に杭を打つなどして交通妨害行為を繰り返している。(以下,略) (参照条文)道路法(略)ア.(略)イ.(略)ウ.Bの妨害行為について罰則の適用があるとすれば,これにより,行政代執行法第2条の「他の手段によつてその履行を確保することが困難」であるという要件を欠くことになる。エ.(略)【解説】ウ 誤っている代執行は、行政代執行法2条により、「他の手段によって履行を確保することができるとき」はできないとされている。ここでいう「他の手段」に何が含まれるのかは定かでないが、行政罰の存在は、間接的に義務の履行を確保するにすぎず、直接的に履行を確保する手段といえないので、「他の手段」に含めるべきでない(宇賀Ⅰ212頁)。それでは。
2019.03.03
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平成24年短答式試験問題[公法系科目]〔第19問〕ア.ある事項を条例によって規制する結果として,地域ごとに取扱いに差異が生じることがあり得る。憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上,このような地域ごとの差異は憲法自らが容認しているといえる。【解説】正しいいわゆる徳島市公安条例の適法性に関する最大判昭和50年9月10日(刑集29巻8号489頁、判時787号22頁、判タ327号120頁、憲法百選Ⅱ235事件)は、法の規定は、条例が、法と別に一定の規制を課すことを排斥するものではなく、具体的規制で両者の規制が重複する場合でも、法は条例の及ばない範囲に適用されるとしており、その限度で地域ごとに差異が生ずることは憲法の容認するものとの趣旨であるから、この記述は正しい。したがって、正解は選択肢1である。この解説が指摘している最大判昭和50・9・10刑集29巻8号489頁(徳島市公安条例事件)は,以下のように判示しています。「地方自治法一四条一項は、普通地方公共団体は法令に違反しない限りにおいて同法二条二項の事務に関し条例を制定することができる、と規定しているから、普通地方公共団体の制定する条例が国の法令に違反する場合には効力を有しないことは明らかであるが、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえないのである。」しかし,この判示から直ちに本肢の内容を読み取るのは,少し難しい気がします。この点,最大判昭和33・10・15刑集12巻14号3305頁(東京都売春取締条例違反事件)は,「論旨(一及び二の後段)は、売春取締に関する罰則を条例で定めては、地域によつて取扱に差別を生ずるが故に、憲法の掲げる平等の原則に反するとの趣旨を主張するものと解される。しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違憲ということはできない。」と判示しています。したがって,本肢の正誤の根拠としては,徳島市公安条例事件判決よりも東京都売春取締条例違反事件判決の方が直截的であるため,最も適切な判例を指摘できていないという意味では,上記解説は誤っていると思います。ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。出題判例の何れも、条例と憲法の関係に関する最高裁判決の基本的なものであって、判例百選等の学習によって習得すべきである。東京都売春取締条例違反事件判決は,現時点における最新版の判例百選にも収録されていますし(長谷部恭男・石川健治・宍戸常寿 編『憲法判例百選Ⅰ』[第6版](有斐閣,2013)72頁),もちろん本問出題時における最新版の判例百選にも収録されていました(高橋和之・長谷部恭男・石川健治 編『憲法判例百選Ⅰ』[第5版](有斐閣,2007)72頁)。本問についてこのようなコメントをする以上,上記解説の執筆者には,少なくとも判例百選に収録されている基本的な最高裁判例については,最も適切な根拠判例を的確に指摘してもらいたいところです。それでは。
2019.03.02
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平成24年短答式試験問題[公法系科目]〔第17問〕ア.「板まんだら」事件判決(最三小判昭和56年4月7日)は,宗教上の教義や信仰に関わる紛争について裁判所は厳に中立を保つべきであるとして,これらの事項が訴訟の前提問題に含まれている場合には,当該訴訟は法律上の争訟に当たらないとしたものである。【解説】正しい宗教上の教義や信仰にかかわる紛争についての司法権の中立性からくるその限界について判示した板まんだら事件判決(最三小判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁、判時1001号9頁、判タ441号59頁、憲法百選Ⅱ203事件)の判旨そのままであって、正しい。したがって、正解は選択肢1である。この解説は,法務省から正解が発表されているにもかかわらず,本肢の正誤さえも間違えています。最判昭和56・4・7民集35巻3号443頁(板まんだら事件)は,「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとつており、その結果信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされてはいるが、本件訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものと認められ、また、記録にあらわれた本件訴訟の経過に徴すると、本件訴訟の争点及び当事者の主張立証も右の判断に関するものがその核心となつていると認められることからすれば、結局本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであつて、裁判所法三条にいう法律上の争訟にあたらないものといわなければならない。」と判示しています。すなわち,宗教上の事項が請求の当否を決するのに不可欠の争点となっており,紛争の核心をなしている場合には,形の上では法律上の紛争ではあっても,裁判所が法令の適用により終局的に解決することができないものとして,訴えを却下すべきであるとしているのです(魚住庸夫・最判解民事篇平成元年度286頁以下参照)。そして,同判決には,上記判示部分を含めた判決文のどこにも本肢にいう「宗教上の教義や信仰に関わる紛争について裁判所は厳に中立を保つべきである」とする判示は見当たりません。したがって,板まんだら事件判決が判示していない内容を同判決が判示しているとする本肢は誤っていることになります。同時に,本肢を正しいとしたうえで,本肢の内容は板まんだら事件判決の「判旨そのまま」であるとする上記解説も明らかに誤っています。この点,最判平成元・9・8民集43巻8号889頁(蓮華寺事件)は,以下のように判示しています。「宗教団体における宗教上の教義、信仰に関する事項については、憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、これらの事項については、裁判所は、その自由に介入すべきではなく、一切の審判権を有しないとともに、これらの事項にかかわる紛議については厳に中立を保つべきであることは、憲法二〇条のほか、宗教法人法一条二項、八五条の規定の趣旨に鑑み明らかなところである(最高裁昭和五二年(オ)第一七七号同五五年四月一〇日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号四三九頁、前記昭和五六年四月七日第三小法廷判決参照)。かかる見地からすると、特定人についての宗教法人の代表役員等の地位の存否を審理判断する前提として、その者の宗教団体上の地位の存否を審理判断しなければならない場合において、その地位の選任、剥奪に関する手続上の準則で宗教上の教義、信仰に関する事項に何らかかわりを有しないものに従ってその選任、剥奪がなされたかどうかのみを審理判断すれば足りるときには、裁判所は右の地位の存否の審理判断をすることができるが、右の手続上の準則に従って選任、剥奪がなされたかどうかにとどまらず、宗教上の教義、信仰に関する事項をも審理判断しなければならないときには、裁判所は、かかる事項について一切の審判権を有しない以上、右の地位の存否の審理判断をすることができないものといわなければならない(前記昭和五五年四月一〇日第一小法廷判決参照)。したがってまた、当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、宗教団体内部においてされた懲戒処分の効力が請求の当否を決する前提問題となっており、その効力の有無が当事者間の紛争の本質的争点をなすとともに、それが宗教上の教義、信仰の内容に深くかかわっているため、右教義、信仰の内容に立ち入ることなくしてその効力の有無を判断することができず、しかも、その判断が訴訟の帰趨を左右する必要不可欠のものである場合には、右訴訟は、その実質において法令の適用による終局的解決に適しないものとして、裁判所法三条にいう『法律上の争訟』に当たらないというべきである(前記昭和五六年四月七日第三小法廷判決参照)。」つまり,本肢は,蓮華寺事件判決が判示している内容を板まんだら事件判決が判示していると言っているのです。確かに,本問の解説を見られる範囲でいくつか確認してみましたが,本肢の内容が板まんだら事件判決の判示事項ではなく蓮華寺事件判決の判示事項であるとまで明確に言及している解説は1つもありませんでした。しかしながら,上記解説は,そもそも本肢の正誤さえも間違えており,さらにその間違えた正誤の解答に従って解説しているので,当然ながら解説の内容も誤っています。これは,現役の法科大学院の実務家教員による解説としては,あまりにいい加減すぎるのではないでしょうか。ちなみに,本問の解説の執筆者は,本問について以下のようにコメントしています。出題判例の何れも、司法権に関する最高裁判決の基本的なものであって、判例百選等の学習によって習得すべきである。上記解説を読んでしまうと,全く説得力がありません。本肢の内容が蓮華寺事件判決の判示事項であるとの指摘までは求めませんが,せめて,板まんだら事件判決の判決文に照らして本肢のどの部分が誤っているのかくらいは的確に示してもらいたいところです。それでは。
2019.03.01
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