仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2005.12.03
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カテゴリ: 国政・経済・法律
小学校低学年の児童が殺害される痛ましい事件が連続して報道されています。被害家族や学校関係者の心中を察しますと、このような卑劣極まりない犯罪が根絶することを願います。

 有名ジャーナリストAさんが、アメリカの立法例を挙げて、幼児に対する性犯罪者をGPSで常時監視する、一般人が誰でもインターネットでモニターできる、という制度を紹介しています。被害者の名前のついた法律ですが、事件の衝撃を物語るとともに、犯罪多発社会における個人法益保護システムを重視するアメリカ人の風潮も感じられます。
(ちょっとそれますが、1992年ルイジアナ州バトン・ルージュで日本人留学生が射殺された事件も、正当防衛として当然というのがアメリカ人の一般的反応だった。日本でなら相当性、つまり過剰防衛でないか、が議論されるでしょう。)

 GPSは最も「先進」的だと思いますが(他には、性欲減退手術を施すという検討もされているという)、犯罪者の氏名等を公開するのは、欧米や韓国でも導入されいてます。もう自発的更生や矯正という観点は放棄したかのようです。

 現在の日本の対応は、前科者の情報を関係者で通報・共有し合うなどの程度。それも昨年の奈良市の小一女児の事件で前進したもの。一般的(常時的)公開や、ましてやGPSなどは、これまでの人権感覚と日本人の治安意識からは、ちょっと考えられないというところだったでしょう。しかし、ジャーナリストAさんも指摘するように、そんなこと言っている場合ではないのかも知れません。

 ところで、昨年(平成16年)の司法試験の憲法の問題に数年後の姿を示すかのような出題がなされています。そこで、解説と模範答案を書店で立ち読みしてみました(仙台駅前M書店さん、いつもスミマセン。でも結構本を買っていますから...)。

 出題は「13歳未満の児童の親権者が請求した場合には、国は、子供に対する一定の性犯罪の常習犯(前歴者)で、その請求者の居住する市町村内に居住する者の氏名・住所・顔写真を開示しなければならない、という趣旨の法律が制定されたとする。憲法上の問題を論ぜよ。」というもの。
 模範答案の論理の流れを参考に、私の意識も少々勝手に肉付けをしてみますと、次のような答案になります。
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(2) プライバシー制約立法の合憲性審査基準が問題となるが、プライバシーは人間の人格的自立に関わるから、最も厳格な審査基準(やむにやまれぬ重要な利益を目的とし、目的達成のための必要最小限度の手段であること。芦部説)が妥当。
(3) そこで、この基準に従い、本件制約立法の目的と手段を検討する。まず目的は、子供を性的犯罪から保護する重要な利益。この犯罪は幼少者の精神にも重大な影響を及ぼすことが指摘され、また、通学や生活全般にわたり幼少者を犯罪から防止するための監視活動などを、保護者や学校・地域社会に強いることも事実上できない。従って、やむにやまれぬ重要な利益である。
(4) 次に手段について。
(4-1) 任意の住民に開示するという手段が、上記目的の達成のためになるか(関連性)が疑問。なぜなら、前科者の更生意欲を決定的に減退させるはずで、前科者は他の市町村に転出すれば結果的に目的を果たさないようにも思えるから。しかし、前科者の転出が合理的に予測まではできないから、一応関連性は肯定。
(4-2) 目的に奉仕する手段としての必要最低限性はどうか。たしかに、請求者を限定し、また、対象者を常習者で前歴者に限定し、さらに一般的公開(広報誌やインターネット等)ではなく請求者への個別開示とする、などの配慮がみられる。しかし、開示対象を個人情報の中でも、顔写真のみならず住所氏名まで対象としている点は問題になる。なぜなら、顔だけで人物は特定できるとも言えるから。この点、たしかに子供が不審者に遭遇した際に逃避するためには顔がわかれば足りるとは言える。しかし、体力や注意力に劣る子供が、どのような場面でもその顔の人物から逃避に成功しうるとは限らない。従って、親権者が、立ち入りを回避すべき時間、場所、状況などを子供に効果的に説明するために、住所と氏名は必要最低限の情報と言えるだろう。また風貌を代えて犯罪行為に臨むことも容易に想定されるから、この点からも必要といえよう。よって必要最低限度性を肯定。
(5) 以上から、本件の法律は憲法に反しない。以上
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 試験の答案なら、合憲性審査基準に当てはめながら利益衡量する姿勢を示せばよくて、合憲か違憲かの結論は二の次ですが、現実の問題として考えると、深刻です。

 私自身は、この種の問題にはかなり自由主義的な意見を持っていました。つまり、人権制約に反対という姿勢です。この答案でも違憲と結論づけたでしょう。
 また、例えば、公園や繁華街に監視員や監視カメラを置くべし、などという意見があると、国家への行き過ぎた期待と財政膨張の点からも反対でした。

 でも、これだけ事件が頻発してくると、もう限界だろうか。社会全体で防ぎ合うという純朴な農耕社会モデルはもう通用しないのか。


 マスコミも、被害者の心情への配慮なのか、一般大衆迎合なのか、この問題に対しては人権擁護の立場を鮮明にはしないようです。むしろ欧米にならって導入の検討を進めよという論調もみられる。人権擁護法や人権救済条例(鳥取県)については随分騒いでいますが、人権侵害の重大さで言えばどうなのか、と思いますが。

■以前の日記(ちょっと論点が異なりますが)
鳥取県の人権侵害救済条例について真剣に考える (10月13日)






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最終更新日  2005.12.03 20:50:56
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