仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2005.12.12
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カテゴリ: 国政・経済・法律
各紙が10日(土)に報道しています。昨年、立川の自衛隊宿舎に無断で立ち入り、3度にわたり集合郵便受けや各室郵便受けに「イラク派兵反対」のビラを配ったとされる住居侵入被疑事件。一審は無罪。二審東京高裁の判決で有罪というものです。

各紙の見解が分かれていて、とても興味深かったので、整理しますと...(ODAZUMA Journal整理。比較のため用語の統一などをした。)
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■朝日(社説)  被告は門扉のない出入口から入っており、一審判決が可罰的違法性を否定したのは常識的。高裁判決は、居住者意思に反したことを強調するが、可罰的違法性の点は、表現の自由も他人の権利を侵害できない、と形式論だけ。これでは、身近な表現手段であるビラ配りが自由にできなくなる(息子の事故の目撃者を探すビラなど)。イラク派兵反対は政治的表現活動の一態様で民主主義社会の根幹をなす、という一審判決のみせた考慮が感じられない。表現の自由を閉ざす方向に流れないかが心配。
■毎日 10日(土)は報道に加えて、「表現の自由を守るため勝たねばならない」との被告3人の記者会見の模様を写真付きで伝えている。11日(日)は特に記事ないもよう。
■読売 10日(土)は報道だけ。11日(日)は特に記事ないもよう。
■産経(記者による「視点」)  被告らの表現の自由によって居住者の平穏な生活が軽視されるべきではないとの高裁判断に好意的。「立入りの目的が正当でも居住者の意思に反し平穏が乱されるなら罪を問われるのが法の趣旨」との土本教授の解説を紹介し、表現の自由をもってしても居住者の平穏に暮らす権利が矮小化されるべきではない、と解説。
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というわけで、リベラルか体制擁護か、一般に言われている全国紙のスタンス(座標軸)に、ピッタリきれいにハマッていますね(一応その順番に並べてみました)。

社説 にとりあげている。
 以前から感じていることだが、河北新報は司法分野の記者が充実していると思われ、各分野の判決について河北独自の記事や解説が出ることが多く、大変頼もしい。河北新報応援団(いつから?)として誇りに思っています。

 さて、その河北の社説だが、要約すれば...(OJ要約。少し論理を補正)
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ビラ配りだけで逮捕・有罪とするのは、国民が期待する法の運用からかけ離れている。確かに住居侵入の可能性はあるが、問題は刑罰を科すほどかどうか。例えば盗みや性的いたずらが目的なら罰することもやむを得ない。しかし今回の事件はイラク派遣反対という単なる意思表示で(目的が悪質でなく)しかも表現の自由に関わる。居住者への迷惑が小さく、政治的表現活動は民主主義社会の根幹と指摘した一審無罪判決は健全。高裁判決は、表現の自由も他人の権利を侵害して良いとはならない、と(形式的に)指摘するものの、肝心の、どこで限度を超える権利侵害があったかが明らかでない。事実関係をみれば、そうは思えず(防衛庁の抗議や警察の警告もないのに摘発された実態)、仮に犯罪行為があったとしても微罪処分(起訴猶予・不起訴)が適当なケース。基本的な市民の自由を尊重し、裁判所は司法の信頼のためにも国民の側に立つべきだ。
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一般には難解な判決の理論を、常識という土壌からアプローチして一般人に解説しようとする姿勢と、具体的な事実関係と量刑バランスを論じているのが大変説得的で、その点は素晴らしい。観念論中心の朝日が、突然「息子の交通事故の目撃者を探すビラ」など言い出すのと比べても、冷静で論理的にわかりやすく解説し、しかも利益考量に配慮していて、河北の方が数段上である。すばらしい。

ただ、結論としては、この事件については二審判決を支持したい。すなわち、河北の説明する判断構造と、指摘する利益への配慮は基本的に正しいと思うのだが、最後の価値判断として、私は可罰的違法性を認めるべきと思う。(私見の理由は最後に記します。)
もっとも、このような微妙なケースに新聞メディアとして自由を擁護する主張をするのは、ある意味健全なことだし、しかも、結論ありきの単なる観念的権力批判、あるいはメディアの自己保身ではなく、説得的に説明している点は、繰り返しますが、とても感心しています(この点、朝日と異なる)。


さて、以下は私が有罪を支持する理由です。(今日の日記の要点は上の段落にありますので、ここから先は気軽に、と。刑法各論の保護法益の議論を思い出します。)

1 住居侵入罪(刑法130条)の「人の看守する邸宅」該当は問題がない。問題は「侵入」にあたるかどうか。

3 そこで「侵入」の意味を検討するに、そもそも住居侵入罪の保護法益が問題となる。この点、住居の平穏とみる立場もあるが(結果無価値)、個人法益に対する犯罪である以上、管理権者の意思に反して立ち入ることと解すべきである。従って、管理権者(居住者・看守者)の承諾ないし推定的承諾の有無が問題となり、これがないのに立ち入るのが「侵入」となる。
(従って、河北社説が、盗み目的なら可罰でビラ配布目的なら不可罰、という考え自体は反対ではないが(行為無価値的発想)、承諾の有無がまずもって重視されねばならない。行為者の目的にのみ重心を置いて、そこに憲法的価値(表現の自由)を引っかけて利益考量して実質的に違法性がないとする論法だ。理論的に反対。なお、ここは刑法学説も分かれるが、最高裁判例は管理権説だと思う。)
4 今回の事件をみるに、居住者は立入りを禁止する表示板を掲げ、警察に被害届を出すなどしている事実がある。とすれば、「侵入」に該当する。
5 住居侵入罪が成立。

以上です。価値判断的にも、私はやっぱり住居侵入罪成立を認めます。リベラルな私も憲法上の表現の自由は最大限の尊重をすべきと思いますが、ここは居住者の個人法益保護でしょう。内容のまともなビラなら拒否されても入って良いの? 実質的に考えても、被告らが思いを伝えるのは他に方法があるのだし。





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最終更新日  2005.12.12 23:47:34
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