仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2006.04.15
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カテゴリ: 雑感
私の大学(学部)時代の教授だった方が亡くなった。河北新報の訃報の記事で2、3日前に見た。今月3日に逝去されたという。81歳。

 先生は西洋政治史講座を担当されていた。3年生の時に聴講したと思うが、多数の学生は同じコマの別の法律系科目を受講しており、先生の講義に入る学生は少数派だった。マイクも使わず朗々と話す。時折メガネをはずして一際強い声で話すのは、ポイントとなる箇所だ。終わり時間に近づくにつれトーンは上がってくる。

 戦間期のヨーロッパ、特に英国を中心として解説されたと思う。中身はすっかり忘れた。確か、ネビル・チェンバレンがヒースロー空港に降り立った時に、傘をどうしたとかいうエピソードを取り上げた記憶が、かすかに残る。何が歴史の転換点だったのか、また、歴史をどう見るべきか、を考えさせる講義だったように思う。

 当時の私は、政治学と歴史とジャーナリズムの違いもよく弁えず、それでも政治系科目は好きだったので、漫然と場当たり的にレポート書いたりしていた。そんな私だったから、西洋政治史の講義も歴史を知る感覚で聞いていたのだろう。(後に大学院で政治過程論や行政学のモデルを勉強して、政治学のサイエンスたるゆえんがやっと分かった気になった。単純に嬉しくて、政治学って歴史と違うのがわかりました、なんて某教授に言ったら「君、歴史学だってサイエンスだよ」と一喝されたこともある。)

 でも、亡くなった先生の講義を選んだのは、別の事情もあった。先生とは、講義以外にもお世話になったからだ。学外のサークル組織の関係で、先生と接することがあった。学生にとっては豪華な食事に誘っていただいたり、セミナーハウスで夜遅くまで他の学校の学生たちと話し合ったこともある。普段は夜8時には就寝するという先生が、「久しぶりに楽しく夜更かししたよ」と言ってくれた。
 階段教室の講義の後、決して多くない学生の中に私をみつけてくれて、最近はどうだ、とか声をかけていただいた。

 その西洋政治史の私の答案は79点だった。後でサークル関係の人から聞いた話だが、先生が一通り採点をした後に何故か私の答案が気になって読み返し、一度つけた80点を考え直したのだという。当時は80点以上を「優」とか「A」と呼んで、その個数が学業の出来不出来の1つのバロメーターだった。私にとって数少ない貴重な「優」が1個減ったわけで、先生なんで読み返すんですか...と思ったものだ。

 大学4年の秋、先生にエレベーター前でばったり会って、進路を問われた。政府系の国際協力関係のJに就職しますと話したら、「そうか。君は英語も得意だし。」と先生が言ったのを、よく覚えている。私は決して外国語が得意ではないが、学外の活動を覚えていてくれて、私の選択と進路を祝福してくれたのだ。これがお会いした最後だったのではないか。
 その実、私は進路についてクヨクヨ悩んでいて、いやむしろよく考えていなかったのか、結局Jには、外交官試験を受けるからと真っ赤なウソをついて内定を辞退した。


 また、最近の書評で見て知ったのだが(→たしか、 この本 です。)、先生は巡洋艦に乗り組み海戦に参加し、撃沈救助された経験をお持ちの海軍軍人だった。推察するに、若かりし時代の体験も踏まえて、戦争と社会を学問の立場から明らかにしていこうと、お考えになったのではないか。そして、日本の若い世代に歴史を見る正しい眼を伝えようと考えたのではないだろうか。

 毅然とした雰囲気の中にも、学生のことを温かく見てくれた、すばらしい先生だった。もっと、外交史のこと、戦争のこと、そして日本の社会をどう見るか、我々はどうすべきなのか、聞きたかった。
 恵まれた環境にあるその時に、凡人はその有り難さに気づかないものだ。


 池田清先生、ありがとうございました。





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最終更新日  2006.04.15 06:30:53
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