仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2006.12.31
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カテゴリ: 国政・経済・法律
住基ネットに関して今月(12月)重要な下級審判決が相次いでおり、首長の対応も含めて議論が盛り上がった。マスコミは概ね違憲判決の意義を重視し危険性を改めて指摘する論調だが、私の考えはちょっと違う。

危険性は認識するべきだが、削除を命じる判決は勇み足に過ぎて不当だし、付随的に言えば最高裁の判断をさせない箕面市長の対応は正しくない。

危険だという感覚をもって全てを断罪しようとする風潮こそ、不健全な議論であり危険である。また立法の趣旨と運用の欠陥とは冷静に分別して考えるべきだ。さらに、裁判批評の局面で言えば、憲法判断に入るのは踏み込みすぎ、もしくは踏み込んだのは許容するとしても違憲判断は間違いである。

このような視点で、当ジャーナルの見解を以下に整理する。

1 訴訟の動向

12月7日、箕面市の藤沢市長が市議会で、住基ネット訴訟の上告断念を表明した。そして11日には、名古屋高裁金沢支部で住民側敗訴の判決が出た。
 ■毎日新聞 
  ○ 箕面市長上告断念 (12月7日)
名古屋地裁金沢支部判決 (12月11日)
 ■朝日新聞サイトの記事
  ○ 名古屋地裁金沢支部判決 (12月11日)

大阪高裁の控訴審判決(11月30日)は、拒絶している住民への適用はプライバシー権を保障した憲法13条に違反するとの判断を示した。高裁レベルで初めて個人情報の削除を認めたもの。藤沢市長の表明は、04年市長選で、住基ネット参加の選択権を個人に与えると公約したことを受けたとみられる。

これにより住基ネット訴訟で個人の離脱を認める判決が、全国で初めて確定する見通しとなった。市議会で、藤沢市長は「住基ネットには情報漏えいなどの危険があり、判決を支持する」と述べた。同じく敗訴した同府吹田、守口両市は「今回の判決は法に基づく行政事務執行の原則を揺るがし、容認できない」として上告を決めている。

高裁金沢支部の判決(11日)は、全国で初めて個人離脱を認めた第1審(金沢地裁)判決を取り消して、請求を棄却した。この訴えは、住基ネットに同意なく登録されたのはプライバシー権を侵害し違憲だとして、石川県の住民28人が県と地方自治情報センターを相手に個人情報削除を求めたもの。昨年5月の1審判決は、憲法13条違反として原告個人情報の削除を命じ、県側が控訴していた。一審で国に対する損害賠償請求は棄却されたため、控訴審では個人情報削除のみが争われた。

判決では、住基ネットで扱う氏名、住所、生年月日、性別などの本人確認情報の利用について「公権力が私生活情報を広範囲に収集し、個人を把握・監視することが可能となり、市民運動への参加など国民の言動を萎縮(いしゅく)させるおそれがある」と指摘。同情報が不当に利用された場合は、プライバシー権の一つで自己のプライバシー情報の取り扱いについて自己決定する権利「自己情報コントロール権」に基づき行政側に個人情報の提供禁止を求めることができると判断。

その上で、行政側が住基ネットで同情報を利用する妥当性を検討。住基ネットの目的は住民サービス向上と行政事務の効率化という「公共の福祉」に沿っており、目的以外の利用は住民基本台帳法で禁じられていると指摘し、プライバシー権を侵害しないと判断。

さらに、一部住民が住基ネットから離脱することは、全住民の情報がシステム上で利用できるという住基ネットの前提が崩れ、行政による事務処理の効率性が損なわれるなどの重大な支障をもたらすとも指摘。情報漏洩(ろうえい)へのセキュリティー対策については「技術、運用面の対策が講じられており、漏洩の危険は認められない」とした。

本人確認情報と行政が持つ他のデータベースとを突き合わせる「データマッチング」や、住民票コードを使って個人情報を集める「名寄せ」の危険性があるとした原告側の主張に対しては、「行政側が法律を守る限り実現しない」と退けた。



2 箕面市長の対応について

 住基ネットの是非の前に、箕面市長の対応は誤っていると思う。いかに公約であったとしても、そして、市民の過半が住基ネットに反対だとしても、法律上も事実上も全国レベルのネットワークが問題となっているのだから、判断は最高裁に求めるべきだった。
 少々口を悪くして言えば、地元で違憲判断が出たことを政治的成果として欲しくないのだ。将来にわたって箕面市民だけが取り残される恐れすらある。
 もっとも憲法裁判所がなく具体的訴訟を前提とした違憲審査で、なおかつ行政訴訟は処分権主義に服するという現行の法制上からは、しかたのない結果とも言える。一過性の政治演出を許す結果となる。憲法を別として行政訴訟の根本的問題でもあるが、特に今回は全国のネットワークが問題となる場合だけに、その問題を顕在化させた。
 また、国と地方の関係も実は問題だ。建前は地方の事務とされているから(例えば本来的に国の事務であるパスポートの情報ネットワークなら事情が異なるだろう)だ。表面だけの地方分権が図らずも露呈された。

住基ネットを考える(その2) へ続く〕





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最終更新日  2006.12.31 15:47:59
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