仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2009.08.14
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カテゴリ: 東北
総選挙が近い。マニフェストにもいろいろ言いたいことがあるが、今回は小選挙区について気になっていたことを記したい。

現在の市町村の区域と小選挙区を併せてみると、一の市が複数の小選挙区に分断されているケースがあることに気づく。大都市で区制を敷く仙台市が、区の区域で分かれていることは別格として、宮城県内では、大崎市がそのケースだ。

言うまでもなく平成の広域合併でそうなったもので、具体的には、以下の通り、市域が3つの小選挙区に「分断」されている。
(宮城県選挙管理委員会サイトの 区域図

 第四区(塩竈市など)  大崎市(旧古川市,旧三本木町,旧鹿島台町,旧松山町)
 第五区(石巻市など)  大崎市(旧田尻町)
 第六区(気仙沼市、登米市、栗原市など) 大崎市(旧岩出山町,旧鳴子町)

中選挙区時代でも、旧古川市などが仙台市、塩竈市や県南部とと同じ第一区だったのに対し、玉造郡の岩出山町と鳴子町だけは、県北部の第二区に編入されていた。96年総選挙から導入の小選挙区の設定の際は、田尻町を含む遠田郡を石巻市などと合わせて第五区としたもので、無理な設定ではない。その後に、2006年に大崎市が成立したのだ。この時、田尻町では、古川市に付くのか、それとも遠田郡4町、或いは志田郡東部2町(鹿島台、松山)を加えた大崎東部6町の枠組みを目指すのか、町論が割れたようだが、結局古川市中心の枠組みを選択した。



そこで、選挙区に関する現行法制度はどうなっているのか。衆参両院議員と都道府県議会議員、それと指定都市の議会議員の選挙に際しては、選挙区を設けて行うべきこととし(公職選挙法12条、15条6項但書)、具体的に選挙区を定めている(衆院小選挙区につき同法13条1項、別表第一)。そして、同条第3項は、別表第一で具体的に定めた小選挙区の区域について、市町村合併の度に頻繁に法改正するわけにはいかないとの理由だろうが、市町村区域に変更があっても小選挙区の区域は従前による、と定める(本文)。現実に、別表第一には、未だに「古川市」や「玉造郡」が残っている。そして、同項但書で、「2以上の選挙区にわたつて市町村の境界変更があつた時は、この限りでない」、として、第4項で、市町村合併の結果、一の市町村区域が複数小選挙区に分裂する状態となる場合の選挙区については政令で定めるとされる。

とすると、「この限りでない」場合すなわち大崎市のように一市町村が複数小選挙区に分裂する状態となる場合を、どのように律するのか、が問題だ。政令に委任しているのだが、その政令(同法施行令第2条)では、その境界変更に係る区域が属すべき選挙区は、総務大臣が定めるとされる。注意すべきは、「境界変更に係る区域」(例えば旧田尻町区域)が属する選挙区を定めろ、と言っているのであって、新しい市町村(大崎市)の区域全体がいずれか一つの選挙区に属するように定めよ、とは言っていない。分裂状態を追認しても良いのだ。現実問題として、総務大臣が新市町村の一体性を重視して、従来の区域を変更するような決定をすることは、代議士の地盤を変更することになるから、難しいだろう。従って、結局のところ、大崎市における旧田尻町のような区域が出現し、新市の区域の一体性は確保されないまま残ることになる。実際に、このような場合に行われる総務大臣の決定が、従来の選挙区線引きを継続するケースが多いのか、或いは新市の一体性を重んじて選挙区線引きを見直すケースが多いのか、わからないが、たぶん後者は少ないだろう。そもそも法には、市町村区域を重視して小選挙区を設定せよとは一言も書いていないし、施行令第2条の総務大臣の定めに際して考慮すべき例示として人口、地勢、交通が列挙されるが、市町村の区域の一体性については触れられていない。以上を総じて言えば、小選挙区の区域設定は市町村合併で左右されないことが予定されていると言える。

この点、同じく選挙区を設けて行うとされる県議会議員の場合では、公職選挙法第15条は、選挙区は郡市の区域によると明言し(同条1項)、さらに、一の郡市の区域では人口が一定数に足りない場合は隣接する(飛び地はダメ)他の郡市と合わせて選挙区を設定すること(同条2項、3項)まで定めている。実際に、宮城県議会の選挙区を県条例で見ると、きれいに郡と市の単位で分かれている。ただ、唯一の例外が宮城郡で、同郡七ヶ浜町が隣接する多賀城市と同一の選挙区を構成し、他の宮城郡2町は別個の一選挙区である。法第15条第4項の例外規定(郡域が飛び地の場合など)に基づくもので、条例第2条にも根拠規定として同項を明示している。

このように、法は、地方議員については選挙区設置の基準まで細かく縛っておく一方で、国政の選挙区についてはどう定めるかの明定がなく、むしろ動かさないことを予定している。もっとも、手続に関しては、衆院選挙区確定審議会設置法があり、国勢調査の結果を踏まえて、格差が二倍を超えないように調査審議して勧告する、と定めている。

ところで、この国政選挙と地方選挙の相違点を論点として取り上げるとするならば、衆院の小選挙区の場合は、法律で区割りも定めるのだから(別表第一)、同一法形式の中で「定め方」の規定を設けることには意味がない。これに対して県議選の場合は、選挙区の具体的確定は県の条例に任せているのだから、上位の法によって「定め方」を指示することは当然だ、として立法の態度を擁護する立論が可能かと思われる。その根底には、地方制度の有りようを含めて、国法全般を定めるべき万能の立法府の構成法の定めなのだから、市町村の合併などという立法後のノイズが優先するはずはない、という発想がある。

しかし、そもそも代表者の選出のあり方は、まさしく自治的に定めるべき事項に属するのであって、地方自治の本旨に従い(憲法第8章)、国法の規制のない中で各自治体が自主立法たる条例で決めるべきものとも考えられる。市町村合併ノイズ論に対しては、市町村という基礎自治体の区域とは別個のものとして国政選挙に固有に妥当する区域が存在するとは考えられないとの反論が可能だ。

基本的には上記のような姿勢(国政選挙区は立法裁量だが動かさないのが基本。県議の選挙区は郡市を基準に決めよと法で縛る)だが、両者のリンケージとも言える規定も見える。それは、公選法第15条第7項で、人口基準に満たないため複数の郡市の区域を合わせて県議の選挙区を定める場合(15条2項、3項)には、行政区画、衆院小選挙区、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に定めよ、と条例を定める立場の県に命令している。わざわざ衆院小選挙区を明記しているのだ。上で述べたように、施行令2条が市町村の区域を尊重せよとは明記していないことと好対照である。これも、市町村が住民に最も身近な基礎自治体であることを重視すれば、衆院小選挙区の方が市町村の区域を基礎として定めるべきであって、いかにも中央政界の事情を優先するもので、この一方向的なリンケージは、本来ならば逆ではないかという気がする。

ともあれ、現実の世の中は現行の公選法を前提にして動いているわけだから、憲法論議は止めて話を戻そう。

長々と選挙区に関する制度を述べたが、つまり、そういうことで市町村合併の影響で、複数の小選挙区に分裂する市町村が存在するということだ。宮城県では大崎市だ。東北の他県でも合併が進んだから結構あるだろう、と思って調べたが、意外と少なくて、盛岡市と青森市の例だけだ。

盛岡市では、玉山区が2区、それ以外の旧盛岡市は1区に属している。別表第一で岩手県では、第一区に盛岡市、第二区に岩手郡とあるのでそのままという訳だ。

青森市では、大半は1区だが、旧浪岡町が弘前市などと同じ4区に属している。





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最終更新日  2009.08.14 01:20:31
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