仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2010.03.09
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カテゴリ: 国政・経済・法律
先週の宮城県議会では、外国人地方参政権問題が取り上げられた。

今月1日、選挙権付与に前向きな立場の民主党系会派からの質問に対して、村井知事は現在立法すれば憲法違反の問題があると述べたという。翌2日には、自民党系会派から、参政権付与の論陣が張られ、自民党県連幹事長でもある議員が、「知事が言うとおり、現憲法下で付与すれば憲法違反の疑いが濃厚だ」「(付与を主張する民主党や社民党の国会議員は)立法府に在籍する人の発言とは思えない」などと発言したという。
(3日付けの河北新報の記事による)

構図としては、国政で与党が法案を提出する動向であるのを背景に、参院選も意識して両党がつばぜり合い、というのが基本だろう。ただ、事情を複雑にしているのは、県政与党の自民系会派と知事の関係だ。環境税の導入を目指す知事に対して、先月の県会議代表質問では、与党自民党系会派からも説明不足などの異論が噴出したが、プルサーマル計画をめぐる論戦などを通じて、知事が自民よりの姿勢を明確にし、与党との距離の近さを印象づけたとされる。
(6日付けの河北新報記事から)

地方参政権問題についても、村井知事が自民よりの姿勢を明確に示すという政治的配慮があったようだ。

なお、参考情報として、河北新報の記事にあるように、宮城県議会では平成6年3月に定住外国人の地方参政権を確立するよう国に求める意見書が可決されている。宮城県議会の議事録(HP検索)によると、この意見書の理由には次のように述べられている。
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定住外国人の地方参政権を確立すること

 現状では、定住外国人は日常生活をする上で最も係わりの深い地方参政権の途も拓かれていない状況にある。
 よって、政府におかれては、定住外国人の地方参政権を確立するよう強く要望する。
 右、地方自治法第九十九条第二項の規定により意見書を提出する。(以下略)
------------

この際、当ジャーナルとして、外国人地方参政権についての見解を整理しておく。


1 憲法論議について

冒頭に記した自民系会派の県議の論陣は、端的に「永住外国人に地方参政権を付与する」立法は直ちに違憲無効となるとする立場だ。いわゆる与謝野見解であり、自民党の中に根強く息づいていると思われる。国民主権を厳格に解すれば、たしかにこう考えるのが当然といえるのかも知れない。

憲法15条(論者により14条や93条2項も根拠とされる)の解釈として、理論的には3つの立場があり得る。私も以前に講演で使ったことがある。

A 憲法は(外国人に選挙権を与える)立法を禁じている〔禁止説〕
B 憲法は立法を容認している〔容認説〕
C 憲法は外国人に選挙権を保障している(立法を命じている)〔保障説、要請説〕


(なお、部分的容認説については、地方に限ってと言う意味で「部分的」と形容される説明もあるようだ。)

たしかに、国民主権を厳格に解すべしとしても、国法が地方のあり方を規制できる(法律と条例の関係を考えよ)ことも踏まえれば、地方「住民」の解釈は緩やさが許容できるからだ。もっとも、平成7年判決傍論は、「住民」は日本国民が前提としているのであり、永住外国人が「住民」に含まれるとしているのではない。あくまで、立法政策の問題として許容されるのではないか、という考え方だ。

C説はさすがに少数だろうが、学説上は、現行の立法(国籍条項)を直ちに違憲とする見解と、違憲とまではせずに、政治的な義務として憲法が立法府に要請しているとみる見解がある。(さらに、地方自治の本旨を強調するならば、国法のあり方にかかわらず、地方自治体がホーム・ルールとして条例で選挙権者の範囲を決めうる、という見解も理論上はあるだろう。)

ところで、県議の主張はA説的に理解できるとして、平成6年の宮城県議会の意見書については、どう説明するのだろう。県議が主張の強い根拠とする最高裁判決の前年の意見書だ。

私は、平成7年判決については、自民党県議や村井知事が力説するように、A説を確認したものとまでは言い切れないと思う。あくまで、「我が国に在留する外国人には15条や93条2項の保障は及ばない」としているのであって、憲法が保障はしないが、かと言って、国会が外国人に地方参政権を与える立法まで禁止している、とは言い切れないと思うのである。C説ではない、としているだけなのだ。



最高裁は、一般永住者に関する訴訟ではA説的に論じているように見えるが、特別永住者に関しては特別の配慮から立法政策を示唆している点からしても(それ自体が傍論だとしても)、少なくとも特別永住者については立法が登場した場合にそれを違憲無効とまではしないと考えられる。


2 憲法を持ち出すべきでない


憲法論議はさておくとしても、私は、自民系県議が最高裁判決を持ち出して声高に憲法違反を主張するのは、かなり違和感を感じる。1つには、だったら県議会の決議は何だったのか、という感覚がある。そして、より本質的なところでもう1つは、一見、国家の根本から論じており、憲法を持ち出して不動の論理を装っているが、実に不動的で政治的な論法であることに気づいていない点だ。

多数政治を本義とする一議員ならまだしも、首長たる知事がこの論法に与するのは、いかに県議会の中で与党との関係を確認するための配慮だったとしても、軽率に過ぎるのではないか、と私は感じる。

つまり、国家の根本を論じるからこそ、なぜ参政権に反対なのかの理由を述べるべきなのだ。現在の県議や知事の論法は、要するに「(参政権が良い悪いの前に、)憲法が禁じているからできないでしょ。ま、憲法を改正したら別だけど(そんなことできないんだから)。」という式の議論だ。最高裁がC説に立って判示するなら別だが、そうでない以上、この問題は、現実に立法がなされて、それを前提とした訴訟がなければ、A説かそうでないかの決着はつかない、と思う。政治の世界で現実に民主党が法案を通す可能性もあるわけだから、付与反対の論陣としても、憲法論以外に、しっかりと国民の賛意を得るような理由を用意すべきである。


誤解を恐れずに言えば、政治の世界で持ち出す憲法ほど「政治的」なものはない。共産党が頻繁に持ち出してはばからないのも、少数ゆえのカウンター攻撃だと、おそらく自ら認めているからだ。

かりに民主党を中心に両院で可決させた場合に、自民党の反対論者は、そんな法律違憲だから大丈夫だ、と反対派の国民に説明できると思っているのだろうか。

〔次の記事( 外国人の地方参政権を考える(その2)(10年3月9日) )へ続く〕







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最終更新日  2010.03.09 23:50:27
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