仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2011.08.28
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カテゴリ: 東北
東北地方で近年まで連綿と語られてきた。奥浄瑠璃と称される語り物文芸で、田村丸三代にわたる壮大な英雄譚である。坂上田村麻呂と鎮守府将軍藤原利仁が史実をはるかに越えて融合、創出された物語で、舞台は岩手県宮城県にとどまらず、京都など国内随所、海外にも広がる奇想天外なものだ。

奥浄瑠璃は、近世東北で盲法師(ボサマ)などによって語られた。芭蕉も元禄2年医塩竈の門前町で聞いている。現在は、田村三代記を語り伝える人はもはや居ない。昭和時代に、鈴木幸龍氏(石巻市)や北峰一之進氏(一関市)が最後の語り手だった。

■阿部幹男『東北の田村語り』三弥井書店、2004年

田村三代記は、この本で初めて知った。明治末年生まれの祖父の世代なら、接しているかも知れない。田村麻呂伝説、平泉、塩竈多賀城なども綴られ、空想とは了解しつつも、一種の奥州仙台エアリアのアイデンティティを形成するとともに、観光スポットの理解方法として認識されていたのではないか、と感じた。

具体的に言うと、達谷窟、華足寺(登米市鱒淵)、零羊崎神社(石巻市)、箆峯寺(涌谷町)、長谷寺(水越)などの縁起と密接に関わるほか、各地の伝説や伝承にも残されている。

■利府町  赤沼明神(塩竈末社で染殿明神とも。田村語り中の悪玉の出産に関係)、子安観音堂(悪玉御前とも)、沢乙化粧坂(悪玉の上京に際し化粧)など
■石鳥谷町  松林寺地蔵菩薩堂が安産として信仰される
■仙台市泉区  洞雲寺(千熊麻呂が学んだ)、円福寺(悪玉出生)

阿部氏の著作は、田村語りの生成過程や背景などを丹念に調べるもので、神話世界から蒙古襲来などの史実も踏まえ、作品としての基層と契機を分析する。幅広い視野に敬服する。海外世界観を含めた東北宇宙についての実は奥深い見方が、語りという文化に集約、定式化されて、一般的な階層の人々にまで、精神文化にひとつのスタンダードとして受け入れられ、広まっていたのではないか、と読後感として受け止めた。





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最終更新日  2011.08.28 10:34:57
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