仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2013.02.13
XML
カテゴリ: 宮城
多賀の里に城が築かれるとき、都から多くの者がやってきた。そのうちに悪賢い役人がいて、ため池で水を汲んでいる白萩のような美しい娘を見つけた。娘は走って逃げ出したが、役人は後を追って家までついてきて、親たちに娘を嫁に出せと言う。

親が断ると役人は腹を立て、城に戻ってから、築城の人柱に娘の父親を名指しする。父親は里でも評判の正直者で、人柱を選びかねていたほかの役人達も、神様にお供えするのだから信で惜しまれる人間でないといけないとして頷いた。

この知らせを聞いた娘は、こんなことになるなら私があの男に嫁ぐよう頼んでくると言って走り出そうとしたが、父は娘を止めて、自分が立たなくてもいずれ誰かが人柱になる、自分がこの役を引き受けるしかないと語った。母と娘は生きた心地もせずただ父にすがって泣き伏した。

その日、あの役人は朝早くやってきて父を急き立てて連れて行った。里の者たちは一人残らず後に続いて見送った。女達はすすりなき、男達は拳を握って、細い道を黙々とのぼっていった。城の入口まで来ると役人は里のものたちの前に立ちはだかり、父は役人の後についていった。

まもなく人柱の儀式を知らせる太鼓が里に鳴り響いた。

それから二、三日たった日の夕方、あの役人が里にやってきた。父を葬れば母娘だけ、今度こそ娘を手に入れようと考えて、戸をたたいた。しかし家の戸は固く閉ざされ、返事をする者もない。気が付くと里人が押し黙ったままぐるりと役人を取り囲んでいる。

里人たちは黙って西の方の丘を指さした。みんな怒りにふるえて鋭く指さした。役人はあたふたと丘に登っていった。行ってみると丘の登り口の大きなしだれ桜の木の下に、母娘が抱き合って立っている。樹下の大きな石の上から城の方へ体を伸ばして、手をさしのべるようにしているのが母親で、その母を抱くように立っているのが娘だった。

しかし役人が近づいてもふたりとも身動きもしない。役人はさらに近づいて娘の腕をとったが、冷たくこわばっている。二人は立ったまま死んでいるのだった。

父を見送って役人に追い出された後、母娘は父の姿を見るためこの丘に登ろうと走ってきたのだ。そして登り口にたどり着いたとき、父の最期を知らせる太鼓を聞いたのだった。二人は叫びながら立ちつくし、悲しみのあまり息絶えた。



その後、日が過ぎるうちに母娘の姿は朽ちていったが、母の左足と娘の右足の足あとだけは、石の上に一寸もめりこんでくっきり残った。何年経っても、苔も生えず、ぬめぬめとした不思議な光をたたえている。

この石は母子石とよばれて、塩竈と多賀城をむすぶ坂の登り口に今でも残っている。

■日本児童文学者協会編『県別ふるさとの民話40 宮城県の民話』偕成社、1982年 から
 (当ジャーナルで縮約)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2013.02.13 21:15:50
コメントを書く
[宮城] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

コメント新着

おだずまジャーナル @ Re[1]:荒巻地区の新町名と宅地開発史(12/14) 荒巻昭和人さんへ コメントありがとうご…
荒巻昭和人@ Re:荒巻地区の新町名と宅地開発史(12/14) 団地名なつかしいですね。広告に使われて…

プロフィール

おだずまジャーナル

おだずまジャーナル

サイド自由欄

071001ずっぱり特派員証

画像をクリックして下さい (ずっぱり岩手にリンク!)。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: