仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2015.10.19
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カテゴリ: 宮城
今夜も宮城の県議選について記したい。投票率についてだ。前回2011年は41.69%で過去最低。これを下回る低投票率が懸念されている。これは、震災と関係があるのだろうか。

東北大学の河村准教授は、県議の役割が薄れつつあることを指摘している(日経新聞10月17日)。復興については県が直接市町村長や被災者から意見を聞き取る機会が増えたので、地元の声をくんで伝える県議の役割が低下したというのだ。

その河村先生は、告示日前日の15日毎日新聞朝刊で、大要、次のようなコメントを行っていた(当ジャーナル要約)。


投票率は候補者の努力次第。組織選挙重視では無党派層は投票に行かない。
18歳選挙権で影響受けるのは、地方議員(選挙区小さい。少ない得票で当選するから)。中でも、高齢者中心の既存組織依存型の議員のダメージ大きいだろう。候補者は、より多くの人から票をとれるよう、自分の意見を幅広く主張してほしい。
投票に行かず後でデモをするのは良くない。地方自治は民主主義の学校だが、ここでどう政治に要求を伝えるか学ぶべき。限られた自治体財源で、候補者がどんな政策の優先順位を持っているかが投票の鍵。


選挙の意義や有権者の投票を促すという意図の記事だったろうが、記者の視点や聞き方のためだろう、識者の話としてはずいぶんと浅く終わっている。今回の争点や見所はおろか、宮城の特性や被災地選挙の特色などにもほとんど触れられていない。

震災や復興が、投票行動にどう影響していると考えられるか。河村氏は、衆院総選挙を題材にして、被災地の選挙の特殊性に関して、次のようなことをある雑誌で述べておられた(当ジャーナル要約及び補筆)。



昨年末の総選挙では、被災地でさえ復興策について与野党ともあまり話題にしなかった。むしろアベノミクスの方が話題になった。その背景に、 自分が被災者だと思っている人の割合が岩手や宮城では高くないこと (岩手では被災者ではないと思う人の方が多い。宮城は同程度。)がある。有権者の関心が高くなければ候補者は話題にしないのだ。

もっとも、政党や候補者が復興を大事だとみて訴えれば論戦になる。しかし、自民党は、多数が反応する経済を最優先したのは、上記のように合理的な対応。対する民主党は、抜き打ち解散に準備不足で、反応層が限定される復興策より、反アベノミクスを訴えること(地方に恩恵がないこと)しかなかった。さらに、第三極の政党はそもそも被災地に地盤がなく、被災者の受け皿にならなかった。このように、復興関連の争点は、風化して消えたと言うよりは、 政党・候補者側の都合で消えてしまった

震災直後は復旧復興の推進が合意争点(有権者にとって重要な争点だが、大多数の賛否が一致しているため投票先判断の決め手にならない争点)であった。合意争点ではあっても、この時期には、少なくとも、政党・候補者側として訴える必要があった。

復興財源や法制の見直しが進んで全国的に意識は低下したが、 対立争点だけが残った感 がある。例えば、廃棄物処分場などのNIMBY施設、また宮城県の震災遺構。これらは政治判断が求められる。仮設住宅の期限、集中復興期間の延長の是非なども、論議すべき論点だったが、自民党は明言を避けることに終始し、民主党は明確なメッセージを出せなかった。 対立争点も、政党の都合で先送りされてしまったのだ (この一文おだずま補筆)。

自主再建がすすみ、仮設住宅に残された被災者が少数者になり、政治に頼らざるを得ない者ほど政治に声が届きにくいというジレンマが生じている。選挙制度としては 小選挙区制の宿命 でもある。今回の総選挙では、復興が語られないという現実が、この課題を顕在化させているのでないか。



これは衆院選の分析だから、今回の県議選との関係で言えば、(1)国政選挙であること、(2)小選挙区であること、の大きく2点で前提は異なる。

しかし、復興の非争点化あるいは先送りという構造的な問題(政治的及び選挙制度的の両面で)は地方選挙においても、分析されるべきテーマのような気がする。

例えば、指定廃棄物、まちづくり、防潮堤、などだろう。さまざまな民意があるだろうし、解決すべき方向もいつくか考えられるだろうから、候補者として多様な訴え方が「可能」だ。しかし、河村先生の指摘であるような「政党・候補者側の都合での非争点化ないし先送り」が、今回の宮城県議選でも、見られているようにも思える。石巻や気仙沼のように3人以上の定数がある場合でも、これらの課題の具体的な分岐が各候補者の主張にどれだけ見えるだろうか。

復興を旗印にした新しい候補者が少ないこと(特に、石巻牡鹿選挙区は前回と全く同じメンバーでの椅子取りになっている)も影響しているが、震災前からの地盤や支援者をベースにした選挙になっていることが背景にあるだろう。選挙公報を見ても、復興を頑張りますという点なら誰しも語っているが、具体策で色を出しているのは、本当に2人か3人程度である。



他方で、はっきり主張が分かれるとすれば、例えば安保法制だ。安保はたしかに対立争点だろうが、地方選挙の場で取り上げることが果たして適切なのかという点がある。逆にいえば、これを争点化して票をとることは、政治への関心喚起や投票率の維持などの効用はあるとしても、今後4年間の県政や行財政の資源配分のありかたには全く影響しないから、それで民意を問うことは地方選挙のいわば無駄使いとも言いうる。これも、政党・候補者の都合だろう。


投票率が前回より落ちるとなると、30%台か。もともと宮城県は選挙の投票率が全国的にも顕著に低く、これまで当ジャーナルで何度も論じてきたが、震災がそれを加速させているとなると、一層暗い気持ちになる。

投票率を上げるために一番必要なのは、政党・候補者の誠実な主張である(できれば当選後の誠実な履行または説明も)。誠実とは、政治プレイヤーのご都合であるべき争点をゆがめたり先送りしたりしない、ということ。

今回の選挙の結果によっては、有権者側の政治意識だけでなく、他地域より明らかに劣るとして、宮城の候補者や政党の側の「質」を問わねばならないのかも知れない。

■関連する過去の記事(宮城県議選、宮城の投票率など。他にもありそうですが)
県議選 河北新報の情勢分析を検証してみる (2015年10月18日)
宮城の小選挙区を展望する (2014年11月18日)
宮城の首長選挙の投票率を考える(再び) (2012年7月9日)
名取市長選挙 衝撃の低投票率 (2012年7月8日)
宮城県議選 高点順得票で激戦を分析 (2011年11月15日)
低かった投票率 宮城県議選 (2011年11月14日)
県議選の印象 (2011年11月14日)
県議選 石巻はどうか (2011年11月11日)
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宮城県議選 激戦区を追う (2011年11月9日)
首長選挙の投票率を考える (2011年2月21日)(県内市長選との比較)
石巻市の有権者にイエローカードだっ! (10年7月14日)(全国最低レベルの投票率)
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村井氏が引き上げた投票率 (09年10月26日)
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前代未聞の総選挙 宮城と近県の投票率はどうか (09年8月30日)
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超激戦の県議選 (07年3月31日)
宮城県知事選 投票率中間発表 (05年10月23日)
宮城県知事選挙 投票率を予想 (05年10月23日)
今回の総選挙、宮城県の投票率の低さを考える (05年9月13日)





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最終更新日  2015.10.19 22:51:25
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