仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2016.02.23
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カテゴリ: 東北
山形県で、県立高校の保健体育科教諭が32年間にわたり、無免許のまま授業を続けていたという。これまで4校でのべ7700人の生徒を指導した。22日、県教委は採用時に遡ってこの55歳の女性教諭の任用を無効にしたと発表。

山形新聞によると、この女性は県外の大学で教職課程を履修したものの、免許状の申請をしないで1982年度末に卒業した。翌83年度の採用試験を受けて84年4月に採用された。その後、2009年度から教員免許の更新制度が導入されて、10年に一度を基本にして更新が必要となった。この女性の場合、2016年1月までに手続を完了させねばならないこととなったのだが、更新の際に必要な免許状の写しを提出できなかったため、勤務校の校長が本人に確認してわかったという。

なお、県教委では、更新制度導入に備えて、08年8月に調査票を配って免許状の登録番号などを確認したのだが、この女性は提出しなかった。また、14年9月にも全教員に免許状のコピー提出を求めたが、女性は実家にあって手許にないなどと逃れていたのだという。勤務校では10回催促したと言うことだが、本人が一番悪いのはもちろんとしても、確認できないままに違法状態を長引かせてきた学校や県教委の責任は重い。

ところで、なぜ大学卒業時に免許状を取得していなかったのかと素朴に疑問に思うのだが、山形新聞によれば、この女性はその頃体調不良で大学が一括して行う免許状申請の手続きができなかったのだとか。別の仕事を経験して、卒業した83年に採用試験を受験した。県教委は当時の資料を検証したが、本来あるはずの免許状の写しが無く、当時の関係者もいない。

県教委では、これまで支払った給与1億数千万円の返還と教職免許法違反での告訴を検討するという。これまで担当した授業については、文科省の見解に基づき、学習指導要領に従った指導であったことから有効と判断して、(元)生徒の補修などは不要としている。

こんなことは、極めてまれなケースだろう。しかし、あったのだ。

県教委が任用を無効としたことについては、行政法上の非常に興味深い論点を含んでいるように思う。以下、述べてみる。

まず、任用行為無効の点について。

公務員の任用は、欠格条項に該当しないことなどの法定の要件を備えなければならないことは当然である。例えば、禁錮以上の刑に処せられて執行猶予中などは欠格事由だ。教員の場合は、教育法規上免許が必要なのだがら、これも採用時に資格として持っていなければならない。ただし、現実に、いったん任用が成された後に欠格が明らかになることがあり得ないではない。(今回の山形の件は、発覚したものとして過去最長のケースかも。)



従って、理由がなく支出されていた給与も当然に返還すべきことになる。もっとも、その者が労働をしていた事実はあるから、理論的には労務提供によって利得を得た役所側も、根拠なく受けた不当利得を(金銭で)返還すべき義務を負うことになり、任用された者の負う不当利得(給与)返還義務と相殺される余地があると考えられる。

次に、この者が行った行為の有効性について。

本来は無効の任用だから、教育活動もすべてなかったことにするのが、筋である。しかし、それではあまりに影響が大きい。7700人全員高校に戻ってこい、とは実際にできない。そこで、最低限、学習指導要領に従って授業内容は適切だったということを前提にして、この先生の授業や単位認定や生徒指導は、適法だったものとしているのだ。学習指導要領を持ち出すのはいかにも苦しい理由付けだが、それもこれも(元)生徒のためだ。この先生を擁護するためではない。

ここで間違っていけないのは、この女性が(教員免許状を申請し忘れただけで)本当は正規教員と同様の能力があるから、授業を追認したという理由ではないということ。長年がんばった女性のための配慮、などではないのだ。車の運転は昔から知っているからとか、今まで全く事故もないから、といくら言われても(それが実際そのとおりだとしても)、ちゃんと運転免許を取得していない人間にハンドルを握らせるバス会社が許されるはずがない。あくまで、(元)生徒の不利益を回避するためだけなのだ。かりに、新任直後の1か月目で無免許が発覚したというのなら、サッサと別の本当の先生に一から授業をやりなおすようにするだろう。

行政法総論でいうならば、先行行為が無効である以上、その後には何も生まれないはずだが、事実上の公務員の法理を持ち出して説明、だろうか。

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(画像は直接記事内容と関係ないです。山形市内の名店ですね。)





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最終更新日  2016.02.24 06:10:21
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