仙台・宮城・東北を考える おだずまジャーナル

2024.02.24
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カテゴリ: 国政・経済・法律




●(2月22日朝日新聞県内版)
岩沼市議会が、出席停止議員の報酬を停止日数に応じ減額する規定の廃止を決定した。21日の議会運営委員会で、条例改正案の提出が了承され、22日の本会議で可決される見通し。
そもそも岩沼市議会では、議員の言動に対する懲戒処分が繰り返されて問題となっていたが、出席停止の場合の報酬減額は2012年に決められた。こうした規定は全国でも少数だという。2023年仙台地裁が、出席停止処分を裁量権の逸脱として違法と認定。議員報酬の減額分の支払いを市に命じる判決を相次いで下し、確定。今回の条例改正は地裁判決を受けた動きとみられる。
●(2月23日河北新報県内版)
岩沼市議会は22日、出席停止の懲罰を受けた市議の報酬を減額する規定をとりやめる条例案を、全会一致で可決。
昨年の3月と5月に、少数会派の市議に科した出席停止の懲戒処分を裁量権の乱用として取消などを命じた2つの仙台地裁判決が確定。2012年12月に設けられた報酬減額規定にも出席停止が対象となっており、昨年12月の市議会改選後、議員が見直しに動いていた。
酒井信幸議長「裁判を踏まえて時代にそぐわないと判断した」。




経緯を簡単に整理する。2016年9月に大友健市議が、市議会での発言が品位を欠くとして、23日間の出席停止処分を受ける。市議は処分取り消しと報酬支払いを求めて仙台地裁に提訴。地方議会の出席停止処分が審査対象となるかが争点だったが、2018年1月地裁は訴え却下。2審は審査対象と認め、市側が上告。最高裁は2020年大法廷で60年ぶりに判例を変更し、審査対象となるとして審理を差し戻した。そして、2023年3月仙台地裁は処分取り消しと議員報酬支払いを命じる判決(確定)。

大友さんは、2023年12月24日の市議選で再選されている(得票数3位)。

むかし憲法で学んだ「司法権の限界」論では、(議会の)自律権や部分社会の法理として、議会(や団体)の自立性を尊重し裁判所は立ち入らないのが基本だ。地方議会は、民主主義に立脚して多数派少数派のダイナミックな渡り合いがあるのはむしろ当然で、政治に司法が介入するべきでないという実質論的な事情もある。しかし、その社会の構成員から除外する処分(議員懲罰なら除名)はさすがに司法も判断するべきだ、ということだったと思う。

60年ぶりに判例を変更したという。最高裁の判断の内容をちゃんと勉強すべきだろうが、割愛。そして、こうした問題の本論とはちょっと離れるのだが、議員報酬について考えた。

判決に従って岩沼市議会としては出席停止処分自体を取り消して議員報酬も支払ったのだろうから、その点では条例が支障にはならないのだが、条例改正の問題は、 「出席停止処分中の議員に報酬を支払わないことの是非」に直結した別の議論 だ。朝日は、こうした条例は全国でも少数という。

ここで、改正前の岩沼市の条例では、出席停止中の議員報酬を減額するというので、その内容を見ると、以下のようだ(下線は当ジャーナル)。


議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例(抜粋)
 (議員報酬、期末手当の減額)

3 議会活動ができない事由が 公務災害による療養 のとき、又は議長が特に認めたときは、第1項の規定にかかわらず議員報酬の月額の全額を支給する。
(略)
第6条の2 第2条の規定にかかわらず、地方自治法第135条第1項第3号に規定する一定期間の 出席停止の懲罰を受けた議員 に係る議員報酬を 減額する
2 前項の規定により返納金が生じた場合には、第3条第4項の規定を準用する。
(平24条例30・追加)



一般職の公務員なら、懲戒処分で停職ならその間無給になる。制裁として賃金を与えないことが主旨だ、また、減給処分より重いのだから当然とも説明できるし、ノーワークノーペイ原則にもかなう。

では、議会議員はどう考えるべきだろうか。労働者としての大切な生活給を制限される一般職とのバランスから、政治的地位にある議員は不支給が当然だ、との論法があろう。他方で、多数派が少数派をつぶそうとするなどまさに政治の世界であって(多数派が議案通すために少数派を出席停止させる事例←司法が介入してくれるようになったから考慮しなくていいとの反論もあるか)、懲罰を受けるのもいわば議員の仕事で、他方で議会の外での政治活動継続も役割として期待されているのだから報酬支払うべき、という民主主義機能面からの論陣も成り立ちそうだ。

問題を定式化し、「(出席停止処分などの)議員活動が制限された場合の議員報酬の支払」について、まず、国会議員の場合を含めた法制や解釈をいくつかの場面に分けて確認しよう。

(1)懲罰による場合
 地方議会における議員の懲罰は、戒告、陳謝、出席停止、除名の4種類だ(地方自治法135条)。国会議員の場合は、憲法58条の議院自律権に基づき、国会法122条で、戒告、陳謝、登院停止、除名の4種がある。国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律では、 除名 に関してだけ記載があり(4条、11条の2)、歳費等は辞職と同様の扱いとなる。規定がない 登院停止は歳費等を支給 する扱いだ。
 地方議会については、懲罰による出席停止期間中の報酬を減額や不支給とする条例規定を認める解釈(昭和32年自治庁)が示されている。

(2)理由のない欠席の場合
 じつは(登院停止とはちょっと異なるが) 理由なく登院しない議員 の歳費を4割減額する法案が、昨年参院に提出されたことがある。NHK党のガーシー議員の問題をうけてのことだ。法案には、登院しないことに加えて、何らかの懲戒処分を受けることを要件とし、また出席すれば支給する、などの「配慮」も盛り込まれたようだ。結局、ガーシー議員が除名され(最初は陳謝の処分、次いで除名となった)、法案も審議されなかったようだ。
 地方議会の報酬条例で、議会や委員会に不出席の議員の報酬を不支給とする規定を設けることはできるというのが公権解釈(昭和24年地方自治庁)のようだ。現に都道府県議会レベルでも事例がある。宮城県議会の場合も、議員報酬条例に規定がある(3条の2)。なお、欠席が公務災害や出産などの事情による場合は、除外としている。岩沼市の条例でも上記引用の通り。

(3)当選無効となった場合の無効確定までの期間
 どう考えるべきか難しい問題だが、地方議員について50年ほど前に自治省が返還請求できないとの解釈を示していたが、大阪市の事例で、昨年12月に最高裁判決が支給すべきでない(返還求めよ)の判断を示して、国会議員にも及ぶのかを含めて反響を呼んだ。
■前回の記事  当選無効と議員報酬の返還を考える (2024年2月12日)

(4)逮捕などの場合
 これも難しい問題。国会議員には不逮捕特権(憲法50条)もあるほどで、少数派を政治圧力から守る法制や解釈が重要であると言えそうだ。ただし、地方の場合はその要請はそれほどでもない(団体自治を重視)ともいえるし、現に拘束される期間は議会外を含め議員活動ができない訳だし、逮捕が不当であった場合は事後救済策を措置すればよいという考え方が可能と思われる。住民意識にも適うだろう。
 宮城県議会の場合は、昨年(2023年)に条例に次の規定が追加された。


第三条の三 前条の規定にかかわらず、県議会議員が被疑者又は被告人として、逮捕、勾留、その他の身体の拘束を受けたときは、当該身体の拘束を受けた日から身体の拘束を解かれた日までの期間(以下「拘束期間」という。)に係る議員報酬の支給を停止する。ただし、拘束期間の始期が議員報酬の支給日の直前であることその他の理由により当該支給を停止することができない月の議員報酬については、この限りでない。
2 (略)〔おだずま注:日割り計算にする規定〕
3 第一項の規定による議員報酬の支給停止(以下「支給停止」という。)は、当該支給停止に係る行為に関し次の各号のいずれかに該当する場合にこれを解除する。
一 公訴を提起しない処分があった場合
二 無罪の裁判が確定した場合



■関連する過去の記事(類似の論点を含むもの。地方議会に関するもの。他にもあるかも知れません)
当選無効と議員報酬の返還を考える (2024年2月12日)
国会議員の懲罰を考える (2023年03月19日)
別れさせ屋と不法原因給付 (2013年2月15日)
山形県の無免許元教諭の返還額を考える (2016年2月25日)
山形県教委の教員任用無効の法理を考える (2016年2月23日)
チケット不正転売禁止法の謎 (2019年6月16日)
仙台厚生病院の提訴の件(続き) (2016年7月25日)
仙台厚生病院が市議を提訴した件を考える (2016年7月23日)
条例の取消を求めて提訴 青森県の新渡戸記念館の廃止で (2015年7月1日)
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今度はラン問題の大江町議会 (2012年4月11日)
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またも議員飲酒運転か (2011年11月26日)(大江町議)
仙台市議会と定員問題を考える (10年8月26日)
警部補飲酒運転と山形県議会 (08年4月23日)
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村山県議問題を考える (07年7月11日)
山形県議会議員の飲酒運転問題を考える (07年5月25日)
鳥取県の人権侵害救済条例について真剣に考える (05年10月13日)





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最終更新日  2024.02.24 12:31:04
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