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1996年外国映画の興行成績です。 金額は配給収入。1位「 ミッション:インポッシブル」36.0億円 2位 「セブン」 26.5億円 3位 「ツイスター」 24.0億円 4位 「イレイザー」 17.0億円 5位 「ザ・ロック」 14.0億円 6位 「ベイブ」 12.5億円 7位 「ノートルダムの鐘」 12.0億円 8位 「12モンキーズ」 11.0億円 9位 「ジュマンジ」 11.0億円 10位 「007ゴールデンアイ」 10.0億円 1996年(平成8年)の外国映画興行成績ですが、第1位が「ミッション:インポッシブル」。日本公開7月13日で監督はブライアン・デ・パルマ。主演がトム・クルーズ。「007ゴールデンアイ」は第10位で、前作「消されたライセンス」(89)から6年間のブランクを経て、キャスティングを一新し、鳴り物入りで公開された新作です。 かつて「ゴールドフィンガー」(64)の世界的大ヒットがきっかけとなって「007ブーム」が巻き起こった。当時はそのヒットとブームに便乗し、亜流作品がいくつも作られました。 映画では「サイレンサー沈黙部隊」(66)を初めとする軟派なスパイ マット・ヘルム(ディーン・マーティン)の「殺人部隊」「待伏部隊」「破壊部隊」。ジェームズ・コバーン主演の「電撃フリントGO!GO作戦」(66)と「アタック作戦」(67)。007と同じ英国情報部員チャールズ・バイン(トム・アダムス)の「殺しの免許証(ライセンス)」(66)と「続・殺しのライセンス」(67)が。 イタリア映画でも(マカロニ・スパイアクションというべきか?)「ベイルート作戦 危機突破」や「アッパー・セブン神出鬼没」(65)などなど。 そして私たちが夢中になって見たのがテレビ映画で「0011ナポレオン・ソロ」と「スパイ大作戦」。テレビでは映画に劣らずたくさんあって、「プロ・スパイ」や「アイ・スパイ」。「それいけスマート」「秘密指令S」。ソロとイリヤの漫才みたいな掛けあいに笑い、フェルプスのチームプレイにハラハラし、泥棒アレックス・マンディのスパイ活動を見守り、ジェイソン・キングの殿様言葉を可笑しがって、毎週テレビの前に座ったものです。「亜流」とは、1.独創がなく、一流の人の模倣に終始する人。また、その作品。エピゴーネン。 2.その流派に属する人。同じ仲間。 映画「ミッション:インポッシブル」は「007」の亜流作品だった「スパイ大作戦」を映画化したものです。それが本家本元の「007ゴールデンアイ」を大きく引き離して堂々の第1位。 この1996年当時に、スター俳優のトム・クルーズさんがテレビの「スパイ大作戦」を映画化するというニュースを知って、「どんな映画になるんだろう?」と誰もが興味津々だった(おそらく)のではないだろうか。 007映画の新作が封切られるということよりも、よほど大きな関心と興味が向けられたのではないだろうか。本家を抜き去って亜流のほうが世間の関心を集めました。 つまり私が言いたいのは、かつてあれだけの大ブームを起こして、映画界にスパイブームを作り出した「007」が、この1996年には亜流の「スパイ大作戦」に負けて第1位と第10位の差ができていたということです。 そして、それ以来、現在まで映画「007」はつねに亜流であるはずの「ミッション:インポッシブル」の後塵を拝している。1996年「ミッションインポッシブル」 36億円(配収)2000年「M:I-2」 97億円(興収)2006年「M:I-3」 51.5億円(興収)2011年「ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル」 53.8億円(興収)2015年「ミッション:インポッシブル ローグネイション」 51.4億円(興収) テレビの「スパイ大作戦」はスパイたちの潜入工作活動を描いた作品で、それは変装と侵入などで泥棒映画に近いものです。「泥棒映画」のエッセンスを取り込んだ、それを折からのスパイ映画ブームに乗って大ヒットさせたとも云える。 トム・クルーズはジェイムズ・ボンドを意識していたのではないか、と映画評論家の渡辺祥子さんが「ミステリマガジン」に書いていました。ジェイムズ・ボンド役をやれないのなら自分で、それに近い役を作り出してしまえと。イーサン・ハントはボンドをめざす。 私は映画007シリーズは第20作「ダイ・アナザー・デイ」を限りに打ち切るべきだったと思っています。東西冷戦が終わってスパイのいる場所がなくなった。そんな時代にたかがテロリスト相手に栄光ある英国海外秘密情報部員007号を活躍させようとしても、時代遅れでしかないのかもしれない。 2006年「カジノ・ロワイヤル」から新スタートした新生007映画。このジェイムズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)の生年月日は1968年4月3日ベルリン生まれの設定だとか。この年齢だと「スペクター」(15)では47歳ということですが、時代的に見て原作小説の007号ジェイムズ・ボンドや映画第1作「ドクター・ノオ」(62)のボンドとはまったくの別人であり、第二次大戦はおろか朝鮮戦争もベトナム戦争も中東紛争も、肝心要の東西冷戦も体験していない現代人です。 つまりジュリアス・ノオ博士やオーリック・ゴールドフィンガーの陰謀、スペクターの原爆奪取脅迫作戦もすべて無かったことにしての再スタートですが、私はこの設定は失敗だったのではないかと思う。 私が映画のプロデューサーだったとしたら、「007映画」を新スタートさせるとしたら、その第1作が「カジノ・ロワイヤル」だとしたら、背景となる時代を原作通りの1953年に設定します。東西冷戦下の007号の活躍を描く。さらに「死ぬのは奴らだ」を原作に忠実に、原作の雰囲気を重視してリメイクし、「ゴールドフィンガー」や「007号は二度死ぬ」「ムーンレイカー」など、日本では昭和20年代後半から30年代ですが、そんなレトロな時代の007号を新しくリメイクしたら面白いかもなんて、私の妄想です。
2017年01月16日
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「007ダイ・アナザー・デイ」(2002) DIE ANOTHER DAY監督 リー・タマホリ製作 バーバラ・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング脚本 ニール・パーヴィス ロバート・ウェイド撮影 デヴィッド・タッターサル音楽 デヴィッド・アーノルドテーマ曲 モンティ・ノーマン(ジェームズ・ボンドのテーマ)主題歌 マドンナ出演 ピアース・ブロスナン、ハル・ベリー トビー・スティーヴンス、ロザムンド・パイク、リック・ユーン マイケル・マドセン、ウィル・ユン・リー、ケネス・ツァン、エミリオ・エチェバリア 本編133分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画「007シリーズ」第20作。日本公開は2003年3月。 朝鮮の非武装地帯で北鮮軍のムーン大佐(リック・ユーン)はアフリカから不法に持ち出されたダイヤを武器と交換する取引をおこなっている。ムーン大佐暗殺のために007号はその現場に潜入するが正体が露見。戦いの末になんとかムーン大佐を倒すが、駆けつけた大佐の父 ムーン将軍(ケネス・ツァン)に捕らえられてしまう。 投獄されて厳しい拷問に耐えたボンドは14ヶ月後、中国の情報部員3人を殺害して捕まったムーン大佐の腹心だった男ザオ(リック・ユーン)と捕虜交換の形で解放されることになります。 北朝鮮に入り込んでいたアメリカの工作員が処刑され、それはボンドが拷問に耐えきれずに口を割ったからだとの疑いがかけられた。アメリカはこれ以上の機密漏洩をさせないためにボンドを捕虜交換で解放させたのだとM(ジュディ・デンチ)が語る。アメリカはボンドを疑っていると云うMに、「それで、あなたはどう思っているのか?」と尋ねると、Mは「あんたはもう不要だ」と。なぜ自決しなかったのかと云わんばかりのM。おめおめと生き恥をさらすなんてと云ってMは「00ナンバー」を剥奪してボンドを軟禁します。「あんたなんかもう役に立たない。不要だ」と、またも云ったかM。そのくせ、国家の危機となった時にボンドを頼るくせに。ピアース・ブロスナンの007号ジェイムズ・ボンドは適役だと思うし、けっしてわるくはないのに、このMだけは好きになれない。 結局、ボンドは監禁から脱けだして単身で名誉回復に乗り出すが、このあとのボンドが敵を追跡するのも戦いを挑むのも、自分のプライドのためであって、けっして上司Mの信頼を取り戻すためではない。部下を信頼せずに不要呼ばわりし、事態が悪化して危機がせまると利用しようとする、そんな身勝手な上司のためにだれが働くものか。 キューバの医療施設で遺伝子療法をやっている。遺伝子を完全に消し去って白紙とし、そこへ他人の遺伝子を入れることで人間がまったくの別人に変身する。 こうやって変身した悪役グスタフ・グレーヴス(トビー・スティーヴンス)が本作での007号ジェイムズ・ボンドの敵です。東洋人が遺伝子をいれかえることで西洋人に生まれ変わる。 グスタフ・グレーヴスはアイスランドでダイヤの鉱脈を発見してダイヤ王となったという経歴を偽装し、アフリカ産の密輸ダイヤに自分の刻印をいれてロンダリングする。 そして登場する太陽光を集束して熱線を放射する衛星兵器イカロス。第7作「ダイヤモンドは永遠に」(71)はダイヤモンドを多量にはめこんでレーザー光線を放射する衛星兵器でしたが、あれから30年後の本作では特撮技術が進歩したことで本物らしく見えるようになった。衛星兵器イカロスで朝鮮半島の南北境界線を焼き尽くし、北朝鮮軍が南に侵攻する道筋を作ろうとする悪役グスタフ・グレーヴスです。 アメリカのNSA(国家安全保障局)工作員ジアシンタ・ジョンソン、自称ジンクス(ハル・ベリー)が今回のメイン・ボンドガール。ボンドと行動を共にし、助けたり助けられたり。007号にひけをとらない現代的な闘うヒロインです。 そして悪女ミランダ・フロスト(ロザムンド・パイク)と、フェンシングのコーチ役でカメオ出演のマドンナ。キューバでボンドに手を貸す地元の実力者ラウル(エミリオ・エチェヴァリア)、香港のホテル支配人 中国情報員チャン(ホー・イー)など脇役もなかなか魅力的。 でも、光学迷彩で見えなくなるボンドカーはハイテクを超えたオーバーテクノロジーで、面白いけどやりすぎ感ありです。それにヴァーチャル・リアリティー・マシンも。ミス・マネペニーの恥ずかしい妄想がQに見られちゃった。
2017年01月15日
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「007トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997) TOMORROW NEVER DIES監督 ロジャー・スポティスウッド製作 マイケル・G・ウィルソン バーバラ・ブロッコリ脚本 ブルース・フィアスティン撮影 ロバート・エルスウィット音楽 デヴィッド・アーノルドテーマ曲 モンティ・ノーマン (ジェームズ・ボンドのテーマ)主題歌 シェリル・クロウ出演 ピアース・ブロスナン、ジョナサン・プライス ミシェル・ヨー、テリー・ハッチャー、ゲッツ・オットー ジュディ・デンチ、デズモンド・リュウェリン、サマンサ・ボンド ヴィンセント・スキャヴェリ、ジョー・ドン・ベイカー 本編119分 総天然色 シネマスコープサイズ第15作「リビング・デイライツ」(1987) 日本公開1987年12月第16作「消されたライセンス」(89) 1989年9月第17作「ゴールデンアイ」(95) 1995年12月第18作「トゥモロー・ネバー・ダイ」(97) 1998年3月第19作「ワールド・イズ・ノット・イナフ」(99) 2000年2月第20作「ダイ・アナザー・デイ」(2002) 2003年3月第21作「カジノ・ロワイヤル」(06) 2006年11月第22作「慰めの報酬」(08) 2009年1月第23作「スカイフォール」(12) 2012年12月第24作「スペクター」(15) 2015年12月 あのダイアナ妃が「彼こそがボンド」と絶賛したティモシー・ダルトンの「リビング・デイライツ」と「消されたライセンス」のあと、ボンド役が交代してピアース・ブロスナンになり、「ゴールデンアイ」につづいての2作目「トゥモロー・ネバー・ダイ」(1997)。 硬派なダルトンから、若くてスマートで身軽く、ユーモアもあるボンドとして登場したピアース・ブロスナンの第2作目として、「ゴールデンアイ」の若僧っぽさが消えて腕利きエージェントらしく貫禄のようなものも身につきました。 上司のM(ジュディ・デンチ)も彼に信頼を寄せている描写があるけれど、もう遅いって。前作で云った「女性蔑視の太古の恐竜、冷戦時代の遺物」発言は忘れることができない。言葉は気をつけないと一度口にしたら消えないものなんだぞ。 そんなわけで「何を云ってやがる」なMだけれど、この「トゥモロー・ネバー・ダイ」は映画「007シリーズ」では私にとってのベスト5入りのお気に入り作品になっています。ピアース・ブロスナンのボンドではいちばんの傑作。 けっきょく、このピアース・ブロスナンがボンドを演じた第20作「ダイ・アナザー・デイ」までが私にとっての「映画007シリーズ」であり、その後の現在までの4作品は「007映画」ではありません。 南シナ海を航行していた英海軍フリゲート艦「デヴォンシャー」が撃沈され、出撃した中国空軍のミグ戦闘機も撃墜されるという事件が勃発。英国と中国の間に緊張が走り、英国は報復のために艦隊派遣を決定する。 この戦争の危機を招いた事件をいち早く報道したエリオット・カーヴァーが発行する新聞「トゥモロー紙」。政府がまだ事実確認の最中であり発表もしていないのに、なぜカーヴァーが事件の細部を記事にできたのか? 不審を感じたMはカーヴァー主催のパーティーがおこなわれるハンブルクへ007号ジェイムズ・ボンドを派遣する。 007号の敵は巨大メディア王 エリオット・カーヴァー(ジョナサン・プライス)です。 記者が事件を意図的に起こしてそれを自分でスクープするというのが現実にもあるけれど、それをさらに大きくしたのが本作の悪役カーヴァー。 英国と中国に戦争をさせて、それで得た利権で大儲けしようと企むメディア王というのがいかにも現代の悪役らしいところ。現実的な麻薬密売組織やテロリストではなく、このようなイカレた奇想天外で誇大妄想狂的な陰謀をたくらむ悪役のほうが娯楽映画007シリーズらしくっていい。 エリオット・カーヴァー演じるジョナサン・プライスがいかにも「いかがわしさ」があって面白い悪役ぶり。このイカレっぷりはゴールドフィンガー(ゲルト・フレーベ)に匹敵すると云ったら褒めすぎか? 007号ジェイムズ・ボンドと中国情報部の女性エージェント ウェイ・リン(ミシェル・ヨー)が手錠でつながれた状態でオートバイを2人乗りして逃げる。それを敵のヘリコプターが追跡し空から銃撃する、このアクション場面から映画はいっきに盛り上がります。ヘリコプターがローターを縦にして地面すれすれに草を刈るように迫って来るのは怖く迫力があります。 カーヴァーのステルス艦に潜入したボンドとウェイ・リンが艦内で短機関銃の銃撃戦をくりひろげる。 盛り上げてほしい場面で盛り上げてくれる演出と音楽の効果的な使い方がとても上手です。ここ一番というシーンで入る「ジェームズ・ボンドのテーマ」にわくわく。007映画はこうでなくっちゃ。
2017年01月13日
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1996年外国映画の興行成績です。 金額は配給収入。1位「 ミッション:インポッシブル」36.0億円 2位 「セブン」 26.5億円 3位 「ツイスター」 24.0億円 4位 「イレイザー」 17.0億円 5位 「ザ・ロック」 14.0億円 6位 「ベイブ」 12.5億円 7位 「ノートルダムの鐘」 12.0億円 8位 「12モンキーズ」 11.0億円 9位 「ジュマンジ」 11.0億円 10位 「007ゴールデンアイ」 10.0億円 映画007シリーズの第17作「ゴールデンアイ」を見るのは5回目くらいですが、今回のブルーレイソフトでの鑑賞が最も面白く感じました。少なくとも先日の「スペクター」より格段に楽しめました。 でもやはり今作のM(ジュディ・デンチ)は嫌いです。 たとえば、自分の上司である部長が交代することになり、他から新しい部長が来た。前任の部長は現場からのたたき上げの人で、現場の苦労をよく知っていて、自分のことも高く評価してくれていた。 そこへやって来た新部長は、現場で働く者の経験からくる直感を信じず、すべて数字(データ)を重視する。しかもこれまでの部員たちを過去の遺物とまで云う。 ボンドに対して「女性蔑視の太古の恐竜で冷戦の遺物だ」とはっきり明言する。しかも「あなたをためらうことなく死地へ送り込んでやる」とまで云う。つまり、あんたなんかもう必要がない。はやく死んでしまってくれてけっこうだと云うことです。 人の上に立つ者の云う台詞だろうか? こんなことを部下に云うだろうか? こんなことを云われて、この人のために懸命に働こうなどと思うか? このMが嫌い。犯罪組織ヤヌスがロシアの宇宙兵器コントロールセンターを襲うのを手引きしたハッカー男ボリス(アラン・カミング)が007映画には不適当なキャラでうっとおしい、など気に入らない点がいくつかあるけれども、「案外いけるじゃないか」と見直した、今回の鑑賞です。 前作との6年間のブランクを経て製作された本作。ボンド俳優が新しくピアース・ブロスナンになって若返り、行動が身軽くなり、敵と短機関銃で撃ち合うなど、これまでになかったスマートなボンド像。そしてMを女性にした(発言が気に入らないけれど)こと、秘書のマネペニーも新しくなった、など、特に女性Mは現代までつながる新機軸です。 その一方で従来の「007らしさ」も残されている(これが今の「007」には失われている)。 ピアース・ブロスナンの若々しいスマートさと、その明るさとユーモア。 アクションシーンで入る「ジェームズ・ボンドのテーマ」(モンティ・ノーマンの曲)。特にサンクトペテルブルク市街地をナターリア(イザベラ・スコルプコ)を拉致して逃げるウルモフ将軍(ゴッドフリード・ジョン)の車をボンドが戦車で追う場面。建物を壊し、パトカーや軍用車を蹴散らして戦車が市街地を走るチェイス。こういう荒唐無稽ともいえるアクション場面で「ジェームズ・ボンドのテーマ」が流れると、これが「007らしさ」を感じて楽しくなる。大きな効果です。音楽の効果的な使い方、現在の「007映画」にはないもので、逆にいえば、なぜ現在の「007映画」にはそれがないのか? かつてボンドが膝を撃ったというKGB出身の武器商人ズコフスキー(ロビー・コルトレーン)にヤヌスの情報をもらいに行く。「ハリー・ポッター」のハグリッド役でおなじみの俳優ですが、とても良い味を出している。 ボンドに力を貸すCIAのジャック(ジョー・ドン・ベイカー)のとぼけた感じも面白いですね。 そして事件に巻き込まれた形のヒロイン、ナターリア・シミョノヴァ(イザベラ・スコルプコ)も魅力的だし、悪役の女殺し屋ゼニア・オナトップ(ファムケ・ヤンセン)のイカレっぷりも面白い。オナトップOnatoppという役名。ボンドが「女が上か?」と云うが、on top(騎乗位)からのシャレだろうか。 そんなわけで、いま見直すと案外に楽しく見ることができました。
2017年01月11日
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「007ゴールデンアイ」(1995)GOLDENEYE監督 マーティン・キャンベル製作 マイケル・G・ウィルソン バーバラ・ブロッコリ脚本 ジェフリー・ケイン ブルース・フィアスティン撮影 フィル・メヒュー特撮 デレク・メディングス編集 テリー・ローリングス音楽 エリック・セラ主題歌 ティナ・ターナー出演 ピアース・ブロスナン、ショーン・ビーン イザベラ・スコルプコ、ファムケ・ヤンセン ジョー・ドン・ベイカー、ゴットフリード・ジョン、アラン・カミング 本編130分 総天然色 シネマスコープサイズ 日本公開は1995年12月。前作「消されたライセンス」(89)から6年の間を経て製作された映画007シリーズの第17作です。 ブルーレイソフトで久しぶりに鑑賞したのですが、その色彩は現在の007映画とはあきらかに異なっていて鮮やかですね。イーストマンカラー(コダック社)の表示があるので当時はまだフィルム撮影だった。現在のようなデジタル撮影になったのはいつからなのか? 007号ジェイムズ・ボンド(ピアース・ブロスナン)と006号アレック(ショーン・ビーン)がダムの基底部にあるソ連の化学兵器工場に潜入する。爆薬を設置中に006が敵のウルモフ大佐(ゴットフリード・ジョン)に捕らえられて007の眼前で射殺されてしまう。007は銃撃戦の末に離陸中のセスナ機に乗り込んで脱出。敵の工場爆破にかろうじて成功する。 それから9年が経ち、ソビエト連邦が解体されてロシアとなった。 006を射殺したウルモフ大佐は昇進してロシア軍の将軍となっているがその実は国際犯罪組織ヤヌスのメンバー。彼はヤヌスの女殺し屋オナトップ(ファムケ・ヤンセン)とNATOの最新ステルス攻撃ヘリ「ユーロコプター・タイガー」を強奪し、ロシアの北極海にある宇宙兵器コントロールセンターを襲撃する。ソ連時代に開発されていた軍事衛星ゴールデンアイを起動させるシステム・キーを奪います。 施設職員はオナトップによって全員が射殺され、施設が事故を装って爆破されるが、ただ一人難を逃れたのがプログラマーのナターリア(イザベラ・スコルプコ)。 007号が属するMI-6では部長の座に新任のM(ジュディ・デンチ)が就き、ボンドは命令をうけてロシアへと向かう。 ボンドはCIAのジャック(ジョー・ドン・ベイカー)の助けを得て、地元の武器商人ズコフスキー(ロビー・コルトレーン)と接触し、犯罪組織ヤヌスに近づくが、その首領は死んだはずの006号アレックだった。コサックの血を引く彼は、彼らの民族を裏切った英国への復讐を企てていた。 前作「消されたライセンス」かぎりでボンド役を降りたティモシー・ダルトンに代わってピアース・ブロスナンが新ボンド役になった。同時に上司のMが女性になってジュディ・デンチが演じる。ボンド役が変わったことよりもM役が女性になったことのほうが画期的な位置づけとされる作品です。 このジュディ・デンチのMがこのあとも続いて、ダニエル・クレイグの新生007の「カジノ・ロワイヤル」(06)「慰めの報酬」(08)「スカイフォール」(12)まで演じ続けることになります。 考えてみれば、これらの新しい007映画が気に入らないのは、このジュディ・デンチがM役であるのが一因かもしれません。 その発端がこの「ゴールデンアイ」です。 情報分析官だったのがMI-6の部長に就任したのですが、これまでのような軍人出身ではなく官僚出身です。初代のM(バーナード・リー)は海軍提督(階級は中将)を退役した肝っ玉の据わった人物。部下の007号ジェイムズ・ボンドの日常素行をあきれながらも、信頼し高く評価している。ボンドもMを尊敬している、そんな強い絆が感じられました。 明日につづきます。
2017年01月10日
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映画「007スペクター」(2015)に「007らしさ」が感じられないと書きました。何をもって「007らしい」と云うのか?、「007らしさ」とは、人それぞれが抱いているイメージであり、人によってことなるのではないでしょうか。 私がイメージしている「007」とは、言葉ではうまく表現できないのですが、その根本にはイアン・フレミングの原作小説とさいとう・たかをさんの劇画作品があり、そのイメージが強いようです。 007ブームだった1966年~1969年頃。私が「007」に接したのはまずさいとう・たかをさんの劇画が最初であり、次いで原作小説(ハヤカワ・ポケットミステリ版と創元推理文庫版)を読んだ、映画を見たのはそのあとです。初めての映画は高校2年時の「女王陛下の007」(1969)。 イアン・フレミングの原作小説とさいとう・たかをさんの劇画、それに映画「女王陛下の007」。これが私の「007らしさ」のイメージ原点のようです。 その後、リバイバル上映された「ゴールドフィンガー」「ドクター・ノオ」「ロシアより愛をこめて」「サンダーボール作戦」を見て、これらのワクワクする楽しさと、テクニカラーの色彩の鮮やかさ。とにかくゴージャスな感じがしました。そういったゴージャス感とワクワク感が現在の「007映画」には感じられないのです。「007スペクター」の売りはジェイムズ・ボンドの最大の敵スペクターが復活したことだと思うのですが、せっかくスペクターを登場させながら、それがあまり活かされていない。 スペクターはかつてNATOの爆撃機をハイジャックして搭載していた原爆を奪い、それをもって英国やアメリカを脅迫した。そのような大きなスケールの犯罪を実行する巨大な組織。それが英国海外秘密情報部員007号の敵だったわけで、この度の「スペクター」にはそのような強敵ぶりが少しも感じられない。 ブロフェルドが本来のブロフェルドでなく、途中からそのように名乗っただけという。それもボンドの義兄がブロフェルドを名乗り、嫉妬のためにボンドを憎み、いたぶって喜んでいるという、個人的動機で行動するこの小物な悪党ぶり。 それと不満なのは、「007映画」に限ったことではないが、アクションシーンがつまらなくなった。 この「スペクター」でもカーチェイスや爆発シーンがあって、CGではなく実写の本物の大爆発だ、本物のカーチェイスだ、凄いだろうといわれても、少しも驚かないし感心もしなくなった。爆発やアクションシーンをさんざん見せられて慣れっこになってしまっている。どんなにスタントマンや俳優が命がけの危険な撮影をおこなっても、すごい!とは思わなくなった。アクション映画には不幸な時代になってしまったと云えるのでしょう。 映画007シリーズ。ダニエル・クレイグさんのボンド役降板が決まったそうで、次のボンドを誰が演じるのだろうか?、誰がやるにしろ、なかなか満足のいくものにはなりそうもない? 個人的にはヒュー・ジャックマンさんに演じてほしいと思うのですが。
2017年01月03日
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2016年の外国映画興行成績です。 金額は興行収入。1位「スター・ウォーズ フォースの覚醒」 116.0億円2位「ズートピア」 76.0億円3位「ファインディング・ドリー」 68.0億円4位「ペット」 43.0億円5位「オデッセイ」 35.0億円6位「007 スペクター」 29.0億円7位「アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅」 27.0億円8位「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」 26.0億円9位「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」 25.0億円10位「ジャングル・ブック」 24.0億円 007シリーズ第24作「スペクター」。日本公開は2015年12月。ダニエル・クレイグがジェイムズ・ボンドを演じる4作目です。 近年の、まるで007らしさがなくなった007シリーズの最新作ということで期待をせずに、廉価版が発売されたブルーレイソフトでの鑑賞です。007号の宿敵「スペクター」が復活する(正しくはボンドの前に初めて登場するのだが)ということもあって、少しだけ期待を持ったのですが。「007 スペクター」(2015)SPECTRE監督 サム・メンデス製作 マイケル・G・ウィルソン バーバラ・ブロッコリ脚本 ジョン・ローガン、ニール・パーヴィス ロバート・ウェイド、ジェズ・バターワース撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ音楽 トーマス・ニューマン主題歌 サム・スミス出演 ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ レア・セドゥ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス ベン・ウィショー、アンドリュー・スコット、モニカ・ベルッチ 本編148分 カラー シネマスコープサイズ「死者の日」の祭りで賑わうメキシコシティのスタジアムで爆弾テロをたくらんでいるスキアラという男をボンドが屋上から狙撃するが失敗、爆発で建物が倒壊する。ヘリで逃げるスキアラを追ったボンドが機内で格闘の末に突き落とす。 ロンドンのMI6本部へ戻ったボンドは新任のM(レイフ・ファインズ)から衆人環視の中で大騒動を起こしたことを叱責されて謹慎処分をうける。 その命令を無視してボンドはローマへと。メキシコで殺害したスキアラの未亡人(モニカ・ベルッチ)に接触する。組織に消されようとしていた夫人を救ったボンドは生命の安全を保証するかわりにスキアラが属していた組織の情報を得る。 世界で続発するテロの背後には大がかりな組織が存在する。仇敵ホワイトを追ってオーストリアへと向かったボンドは、そこで組織に逆らったことで毒を盛られて瀕死のホワイトから娘を守って欲しいと頼まれる。その娘マドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)が働く療養施設へと向かうが、彼女に早くも組織の魔手が伸びていて、ボンドは拉致された彼女を追跡して救い出す。マドレーヌから父ホワイトが属していた組織が「スペクター」だと聞かされる。 アクション映画として見るかぎりでは退屈することもなくそれなりに面白いのですが、これが「007」だと云われても、先日見た「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」(2015年8月)と色彩も雰囲気も似たような感じで、まるで「007らしさ」が感じられない。 主人公が属する政府の秘密機関が不要視されて廃止されようとする。ミッション:インポッシブルでは「IMF」がCIAによって解体され、イーサン・ハントは帰還命令を無視して独断で単独行動を取らざるを得なくなる。「007」最新の今作でもまったく同じようにボンドの「00セクション」は時代遅れとされて、MI6はMI5に吸収されようとしている。ボンドが命令を無視して独断単独行動をとるのも同じ。 イーサン・ハントとジェイムズ・ボンド、主人公の名前がちがうだけで、やっていることは同じです。 長くなるので、つづきます。
2017年01月02日
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これまでのジェイムズ・ボンドは正体を隠して敵に接近して(すぐに正体がばれるけど)いましたが、この「消されたライセンス」では初めから元英国秘密情報員だと言って麻薬王サンチェス(ロバート・ダヴィ)に取り入ります。 自分のような男はきっと役に立つだろう、と売り込んでボンドはサンチェスに雇われる。 隙を見て親友フェリックス・ライターの仇をとるつもりですが、ボンドをうさんくさくて信用できないという部下たちの意見をサンチェスは取り合わない。 組織の運営はお互いの信頼関係が大切だという方針のサンチェスにボンドは、部下たちをほんとうに信頼できるのか?裏切らない保証があるのか?、君を殺してその座を狙う者がいないのか?、というふうに疑心暗鬼に追い込んでゆきます。 敵の内部に入り込んで、お互いを不信感を持つようにしむけて、同士討ちをさせる。「荒野の用心棒」というより黒澤さんの「用心棒」式かと思うのですが、このような「007映画」はかつてありませんでしたね。 ジョン・グレン監督の「007映画1980年代5部作」といっていいのか?、「ユア・アイズ・オンリー」(81)「オクトパシー」(83)「美しき獲物たち」(85)、そしてティモシー・ダルトンの新ボンドとなった「リビング・デイライツ」(87)と「消されたライセンス」(89)の5作品。 ロジャー・ムーアのボンドである初めの3作も、それまでの荒唐無稽ファンタジー映画的な路線から、コメディ色を薄めてアクション重視で見せたのがジョン・グレン監督らしさだと思います。 そしてティモシー・ダルトンさんのボンドになって、シリアスさが目立つようになり、硬派でダークなボンド像を創り出しました。 そしてグレン監督007最終作の本作では、よりヴァイオレンス的表現が目立ちます。 フェリックス・ライターが麻薬王サンチェスに拉致されて鮫に足を喰われるシーンを初めとして、敵に買収された麻薬取締官をボンドが鮫の生け簀に落として始末し、サンチェスの部下(ベニチオ・デル・トロ)を粉砕器に落として細切れ肉にしたり、サンチェスを火だるまにしたり。ボンド自身もクライマックスでは傷だらけの血だらけ。 考えて見れば、第1作からずっとボンド自身が負傷したり、血を流すことがなかった。 スペクター首領のブロフェルドが失敗した部下を鮫の水槽に落として処刑したりすることはあっても露骨な残酷シーンはなかったです。 流血シーンといえば「女王陛下の007」(69)のスキー・チェイスでボンドを追ってきた敵が除雪機に巻き込まれて赤い雪を噴き出す場面くらいのもの。 そういう意味では、この「消されたライセンス」はシリーズ中では異色作です。 ティモシー・ダルトンさんの、前任者ロジャー・ムーアの軟派ボンドから一転して硬派でダークなボンドが登場し、オチャラケボンドがハードボイルドボンドに一変した。 本作の評価が低いのも、そういう急変化に観客がついて行けなかったのかもしれないし、硬派でシリアスな007映画がファミリー向け映画を期待した観客に受けなかったのかもしれない。 私自身は、この「消されたライセンス」はジョン・グレン監督の最高傑作だと思っています。 ティモシー・ダルトンさんのボンドとしては前作の方が颯爽としていて良かったのですが、アクション映画としては、青い空と海、クライマックスでのタンクローリーのアクションと吹き上がる炎、パイパー小型機で空から援護するヒロインなど、本作の方が痛快感があります。 ボンド・ガールのCIA捜査官(元陸軍パイロット)パム・ブービエを演じるキャリー・ローウェルさんの可愛さ。ショートの髪がよく似合う、こういうタイプはボンドガール初かもしれないし、足手まといにはならず、戦いではボンドを空からバックアップする、ボンドガールとしても映画のヒロインとしても現代風になった。 見落とされがちだけども、前作「リビング・デイライツ」からMの秘書マネーペニーがそれまでのロイス・マクスウェルさんからキャロライン・ブリスさんになって、ボンドだけでなく若返りました。 眼鏡がセクシーなきれいなおねえさんマネーペニーです。 本作でも情報部を追われたボンドを心配して、ひそかにQの援助を頼んだり、小さなシーンだけれどとても良い。ずっと出演してほしかったけど、ダルトンさんと同じく2作のみとなったのが惜しまれます。
2015年09月11日
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1989年外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」 44億円2位「レインマン」 32億6000万円3位「カクテル」 17億5000万円4位「ロジャー・ラビット」14億4600万円5位「ブラック・レイン」 13億5000万円6位「ツインズ」 12億4000万円7位「星の王子ニューヨークへ行く」 12億1000万円8位「ダイ・ハード」 11億5000万円9位「子熊物語」 7億6000万円10位「3人のゴースト」 7億3800万円11位「007消されたライセンス」 7億円12位「告発の行方」5億9000万円13位「ミッドナイト・ラン」5億3300万円14位「リーサル・ウェポン2 炎の友情」 5億1000万円15位「ワーキング・ガール」 4億円 ティモシー・ダルトンさんが007号ジェイムズ・ボンドを演じた2作目。ジョン・グレン監督は5作目です。 前作でシリアスな作風になったのをさらに進めてハードな007映画。 日本公開は1989年9月です。 製作者アルバート・R・ブロッコリさんは1996年6月に亡くなり、次作「ゴールデンアイ」からは娘バーバラ・ブロッコリと継子マイケル・G・ウィルソンが製作者となります。旧型?007映画としては最後の作品となり、次作からは新しい007映画となった転換点にあたる。 次作からはボンド俳優だけでなく、上司Mが女性になり、秘書マネーペニーも俳優(3代目に)が代わります。英国海外秘密情報部もユニバーサル貿易とされずMI-6が表面に現れて、原作者イアン・フレミングの東西冷戦期007世界から完全に離れてしまう。「007消されたライセンス」(1989) LICENCE TO KILL監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン脚本 マイケル・G・ウィルソン リチャード・メイボーム撮影 アレック・ミルズ音楽 マイケル・ケイメン主題歌 グラディス・ナイト出演 ティモシー・ダルトン、キャリー・ローウェル ロバート・ダヴィ、タリサ・ソト、ベニチオ・デル・トロ デヴィッド・ヘディソン、アンソニー・ザーブ、フランク・マクレー キャロライン・ブリス 本編133分 総天然色 シネマスコープサイズ ジェイムズ・ボンド(ティモシー・ダルトン)は親友フェリックス・ライター(デヴィッド・ヘディソン)とデラ(プリシラ・バーンズ)の結婚式に出席するためフロリダへ来ていた。 式の直前、南米の麻薬王サンチェス(ロバート・ダヴィ)が現れたという連絡が麻薬取締局から入ります。 長年サンチェスを追っていたライターはボンドと共に急行し、沿岸警備隊と協力してサンチェス逮捕に成功する。 しかしサンチェスは麻薬取締局の捜査官キリファー(エヴェレット・マッギル)を200万ドルで買収して脱走。仕返しのために結婚式をおえたばかりのライターを襲撃し、新妻デラを殺害。ライターを拉致してサメの生け簀に宙吊りにし、足を食わせて重傷を負わせる。 帰国しようとしていたボンドはライターの危難を知り、サンチェスへの報復を決意します。 上司M(ロバート・ブラウン)はボンドが秘密情報部員の任務から逸脱し、暴走するのを叱責。このまま諦めて新任務につくことを拒否したボンドは「殺しのライセンス」を取り上げられてしまう。 明日につづく。
2015年09月10日
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昨日のつづきです。 ジブタルラル海峡の断崖で英国情報部員が空から降下し、侵入訓練をおこなっている。紛れ込んだ敵によって断崖を登攀中の004がザイルを切られて転落死する。 その現場を目撃した007が暗殺者を追跡。ランドローバーで逃走する敵にボンドは屋根にしがみつく。ここでジェイムズ・ボンドのテーマ曲が入り、ワクワク楽しませてくれる場面で、007映画はこうでなくては。 アクション重視の場面ですが、ここ数作品ではこういうのが見られなくなっていて、若返ったボンドならではです。 断崖絶壁から海へジャンプして落ちる車からボンドがパラシュートで脱出。 下の海では豪華クルーザーのデッキで有閑マダムが退屈を持てあましている。ハッとするほどいい男がいないかなあ、なんて言ってると空からボンドが降ってくる。 いい男が現れて、あたしを死ぬほど驚かせてほしいな、というシーンです。「007リビング・デイライツ」 新ジェイムズ・ボンドのティモシー・ダルトンさん初登場の作品。 ロジャー・ムーアさんのボンドが長年続いたあとでの登場ですが、一吹きでそのイメージを払拭してしまった新鮮な魅力。(ロジャー・ムーアのファミリー向けなイメージに強くこだわっていた製作者アルバート・R・ブロッコリさんは、シリアスで暗い感じ、危険な感じがする新ボンドのダルトンさんが気に入らなかったようです) その冷たいダークな感じはジェイムズ・ボンドのイメージではないと言う人がいますが、決してそうではないですね。 007号は政府から殺人許可証を与えられた男であり、暗殺者であり、殺し屋である。その危険な職業を背負って生きる、暗殺と破壊工作のプロフェッショナルというキャラクターでは、これまでのロジャー・ムーアのほうがイメージからはずれていたはず。ダルトンさんには初期のショーン・コネリーの、「ロシアより愛をこめて」の頃の007号に戻ったかのようなシリアスさとロマンティックな雰囲気があります。 ところで、原題の「ザ・リビング・デイライツ THE LIVING DAYLIGHTS 」とはどういう意味なのか?LIVING は生命のある、生きているDAYLIGHTS は昼の光、日光、あからさまであること、公然、周知LIVING DAYLIGHTS は「生きている日光」?。ただ単語の訳だけみていても意味不明です。You scared the living daylights out of me! あなたは私をほんとうにびっくりさせた、という意味ですが、(人)をひどく[ものすごく・気を失うほど〕驚かす、という意味として scare [frighten] the living daylights out of または shock the living daylights out of のように使われます。 the living daylights(生きている日光?)の語源は「人の目」だそうで、古い俗語として「気を失わせる」という意味だったとか。それが転じて「生命」となり、「あなたは私の生命をびっくりさせて私の中から追い出してしまった」、つまり「私は死ぬほど驚かされた」という慣用句的表現になったそうです。
2015年09月09日
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「007リビング・デイライツ」(1987) THE LIVING DAYLIGHTS監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム マイケル・G・ウィルソン 撮影 アレック・ミルズ音楽 ジョン・バリー主題歌 a-ha出演 ティモシー・ダルトン、マリアム・ダボ ジェローン・クラッベ、ジョー・ドン・ベイカー ジョン・リス・デイヴィス、アンドレアス・ウィズニュースキー キャロライン・ブリス 本編131分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第15作。日本公開は1987年12月です。 前作で降板したロジャー・ムーアさん(「美しき獲物たち」当時57才)に代わって新しくジェイムズ・ボンド役をティモシー・ダルトンさんが演じる。ダルトンさんは1946年3月生まれだから41才で、軟派だったロジャー・ムーアから若くて硬派な新ボンドに一新されました。 英国海外秘密情報部007号ジェイムズ・ボンドのイメージは、私にはどうしても初めて見たジョージ・レイゼンビーさんなのですが、小説の印象はこのティモシー・ダルトンさんが最も合っているのかもしれないと思うし、とても良い。 故ダイアナ妃も「彼こそが最高のボンド」と絶賛なさったそうですね。 原作は短篇集「007号ベルリン脱出」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ刊)所収の「ベルリン脱出」です。 小説の原題は映画と同じ「THE LIVING DAYLIGHTS」。 東ベルリンから重要情報を得た英国情報部員272号が脱出してくる。 ソ連側は狙撃手を配置して、272号の脱出を阻止しようとしている。 ボンドの任務は、敵の狙撃手を撃って272号の西側脱出を援護すること 夜の闇のなか、狙撃ライフルを構えるボンド。そのスコープに映った敵の狙撃手は女だった。 それは昼間ボンドが見かけたオーケストラの女で、金髪の美しいその女を、ボンドは気に入っていた。 272号に狙いをつける女狙撃手。ボンドは一瞬早く引鉄を引くと、女の手からライフルを弾き飛ばす。272号は無事に国境を越えた。「狙撃手を殺せという命令だったのに、なぜ殺さなかった!上に報告するぞ」と現地員はボンドを批難する。「かまわんよ。あの女は死ぬほど驚いたろうし、それでじゅうぶんだと思うけどね」とボンドは答える。 現在、この本は持っていなくて(貴重な本だったのに)細部はわからないのですが、おおよそ以上のような話です。このシーンは映画でも冒頭で効果的に使われています。舞台は東ベルリンではなく東側チェコスロバキアに変えられていますが、このシーンがあることでスパイ映画らしい雰囲気が醸し出されています。 映画ではソ連のコスコフ将軍が西側に亡命しようとしていて、それをソ連の狙撃手が狙っている。ボンドがその狙撃手を射殺することでコスコフの亡命を援護する、という設定。 ボンドは赤外線望遠スコープにオーケストラの女性チェリストの姿を見て、とっさに射殺を避けて彼女のかまえるライフルを撃って妨害するにとどめる。なぜ殺さなかったのだ!上に報告するぞと現地員が批難するのに、ボンドが「殺す必要はない。死ぬほど驚いただろう、それでじゅうぶんだ」と言う。 このボンドの「死ぬほど驚いただろう」という台詞がタイトルの「ザ・リビング・デイライツ」になっています。 明日につづく。
2015年09月08日
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「007美しき獲物たち」(1985) A VIEW TO A KILL監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム マイケル・G・ウィルソン撮影 アラン・ヒューム音楽 ジョン・バリー主題歌 デュラン・デュラン出演 ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン タニア・ロバーツ、グレイス・ジョーンズ、パトリック・マクニー フィオナ・フラートン、アリソン・ドゥーディ 本編131分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第14作。日本公開は1985年(昭和60年)7月。 ジェイムズ・ボンドを演じるロジャー・ムーアさんは前々作「ユア・アイズ・オンリー」あたりから降板を考えたようで、前作「オクトパシー」も説得されての出演だったようです。この「美しき獲物たち」では共演のタニア・ロバーツさんのお母さんが自分より年下なのを知って、これで最後にする決心をしたそうです。 第8作「死ぬのは奴らだ」(73)で初めてボンドを演じたときは、前任のショーン・コネリーよりも3つ年上の45才。年下のコネリーに比べて若々しいボンドでしたが、さすがに10年以上を経ると、見ていても限界を感じるようになりました。 ロジャー・ムーアさんは1927年(昭和2年)10月14日生まれだから、本作の撮影時は57才。 シリーズでは全7作でジェイムズ・ボンド役を演じて、これは歴代最多記録です。(同様に、Mの秘書ミス・マネーペニー役のロイス・マクスウェルさんも本作が最後の出演となった) シベリアの氷雪に埋もれた003の遺体からICチップを回収した007号ジェイムズ・ボンドは、ソ連軍の追撃を振り切って帰還する。 英国海外秘密情報部でそのICチップを調べたところ、それは英国の防衛システム用に開発採用した新型マイクロチップとまったく同じものと判明。 そのチップの機密がなぜソ連に洩れたのか。開発企業は半年前にフランスのゾリン社に買収されていて、M(ロバート・ブラウン)の命令でボンドはゾリン社の社長マックス・ゾリン(クリストファー・ウォーケン)の身辺を調べることになります。 アスコット競馬場でゾリンの持ち馬が勝ち続けている。その勝ち方に不審を抱いたフランスの競馬クラブが探偵を雇って調査をしているのを知ったボンドは、探偵に接触して情報を得ようとしますが、会おうとした探偵はゾリンの殺し屋メイ・デイ(グレイス・ジョーンズ)に殺されてしまう。 金持ちの道楽息子に変装したボンドは、Mに紹介された競馬界にあかるいチベット卿(パトリック・マクニー)と共にゾリン主催の種牡馬オークションに参加することに。 内偵を進めるボンドは、ゾリンの広大な牧場と屋敷に招待された多勢の客の中で、ゾリンがアメリカ人女性ステイシー・サットン(ロバーツ)に小切手を渡すのを目撃する。 厩舎に忍び込んだボンドとチベット卿は、その地下室でゾリンの馬が勝ち続ける秘密と、大量のマイクロチップを発見します。 人体実験の結果に生まれた天才であり、しかし人格が破綻しているという悪役マックス・ゾリン。 世界の半導体市場を独占しようと、アメリカのシリコンバレーに人工地震を起こして水没させようと計画するゾリンをクリストファー・ウォーケンが楽しそうに演じています。 オープニングでの氷と雪を背景にしたスキーアクション。ゾリンの身辺調査をする探偵をフライ・フィッシングの毒針で暗殺した殺し屋メイ・デイがボンドに追われて、エッフェル塔の高所からパラシュートで飛び降りる。それを乗車拒否したタクシーを奪ったボンドが追跡する。スタントマンが大活躍するのが007映画の特徴ですが、前作「オクトパシー」あたりから特にスタントシーンが顕著になっているのは、主演ロジャー・ムーアの年齢による衰えを観客に意識させないようにしているのだろうか。 原題「A VIEW TO A KILL」の意味がよくわかりません。 イアン・フレミングの原作小説「007号の冒険」(創元推理文庫)所収の「バラと拳銃」は「From A View To A Kill 」で、映画では「From 」がなくなっていて、あってもなくても意味がわからない。「景色(a view)」から「殺し(a kill)」? いまは美しい景色が眼前にあるけれど、そのあとには死がやって来る、というような意味だろうか。 ゾリンの殺し屋メイ・デイ(グレイス・ジョーンズ)の存在感は、これまでのレッド・グラント(ロバート・ショウ)やオッドジョブ(ハロルド坂田)、ジョーズ(リチャード・キール)に匹敵する印象に強く残る悪役キャラクターです。 ロジャー・ムーアさん最後のジェイムズ・ボンドですが、当時はなんだかなーと思ったが、いま見ると決して悪くはない。頑張っているのがよく伝わってくるし、舞台となるフランスとカリフォルニアの明るく華やかな風景も良いです。
2015年09月06日
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シリーズ第9作「黄金銃を持つ男」(1974)でボンドガールを務めたモード・アダムスさんが再び出演して、女だけの宝石密輸団の首領オクトパシーを演じています。 父親スマイス少佐が金塊横領罪でボンドに捕らえられ、軍法会議にかけられる前に自殺する機会を与えてもらったことで、オクトパシーはボンドに好意を持っているという設定。 彼女の父親はタコの権威で、タコを愛し、研究していた人物。それで愛娘に「オクトパシー」と名付けた。 オクトパシー OCTOPUSSY タコは英名オクトパスOCTOPUSだから、OCTOPUSSYはタコそのもののことではないですね。 OCTOPUSSYを英和辞書で調べても載っていなくて、どのような意味でしょうか? OCTO+PUSSYということで、原作者イアン・フレミング氏の造語なのか? OCTOはラテン語で「8」を意味するそうです。タコは8本足だからOCTO。 ネットの翻訳サイトで直訳すると「8ニャンニャン」と訳されました。 PUSSYは「子猫ちゃん、お嬢ちゃん」というような意味で辞書に載っていますが、一般的には女性器のこと。可愛い女の子を「子猫ちゃん」というようなものか。 タコと女性器の類似から両方をくっつけた造語?、研究対象の愛するタコと、愛する娘をいっしょにした、可愛くて可愛くてならないので「タコお嬢ちゃん」という感じの命名だろうか。 ロジャー・ムーアさんが当時、女性記者から新作のタイトルを聞かれて「オクトパシー」だと答えると、その女性記者は赤面して「冗談でしょ」と言ったそうです。 モード・アダムスさんも最初は役名のオクトパシーが気に入らなくて、イアン・フレミングの原作がそのタイトルだからというのでやっと納得したとか。 カマル・カーン役のルイ・ジュールダンが「オクトプッシー」と発音するので可笑しかったとロジャー・ムーアさんがメイキングで語っています。 シリーズ第3作「ゴールドフィンガー」(64)のオナー・ブラックマンさんも役名のプッシー・ギャロアにとまどったみたいですが、お遊びとジョークだと割り切ったそうです。冗談なのに考えすぎるのはよけいに嫌らしいのではないか、とおっしゃっている。 OCTOは「8」の意味だそうですが、すぐに連想するのは「10月 OCTOBER」です。 話がそれますが、10月がなぜ「8のOCTO」なのか? OCTOBERは大昔の西洋では8番目の月、8月のことだったそうです。 紀元前ローマ帝国の頃、ローマ暦の一年は春のMARCH(軍神マルスが語源)から始まる10ヶ月だったそうで、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がJanuary(ヤヌス神が語源。1月)とFEBRUARY(贖罪神ファブラウスが語源。2月)を年初に加えて12ヶ月にしたことから8番目の月だったOctoberが2つ後ろにずれて10月の位置になった。 ついでにユリウス・カエサルは自分の誕生月の7月を自分の名(Julius Caesar)にちなんで改名し、英語ではJuly。これが有名なユリウス暦だそうです。 現在の9月はSEPTEMBERですが、これも元々は7番目の月であり、SEPTEM(英語でSEVEN)のことだとか。 暦のことは、ややこしくて書いた自分にもよくわかりません。 映画「007オクトパシー」に戻ります。 何度目かを見返して思ったのは、悪役のソ連のオルロフ将軍(スティーヴン・バーコフ)がカマル・カーンが取り戻してきた「ファベルジェの卵」を「手間をかけやがって!」と怒って叩き割ってしまいます。その破片の中から発信器を見つけるカマル・カーン(ルイ・ジュールダン)。 この怒りにまかせて叩き割ったファベルジェの卵は贋物ではなく本物ではないか? 009が東ベルリンのサーカスから奪ってきた贋物を007ボンドが持ってサザビーのオークションへと。 出品された本物とすり替えて情報部へ持ち帰る。贋物はカマル・カーンの手に渡る。 すり替えた本物を持ってボンドはインドへ向かう(出発時に、Mがそれは英国の所有だから貸出し伝票をきって行けと言う)。 インドまで出張してきたQが、その本物のファベルジェの卵に発信器(盗聴器兼用)を仕込む。 (この時点で英国情報部が贋物を作る時間はなかったはずだし、その描写もない) だから発信器が隠されていたなら、それは本物であるはずです。 カマル・カーンの手元にはロンドンのオークションで50万ポンドで落札した贋物と、インドでボンドから奪った本物の2つのファベルジェの卵があることになり、間違えて本物を叩き壊してしまったん? 映画の製作スタッフが混乱してわけがわからなくなった?
2015年09月05日
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「007オクトパシー」(1983) OCTOPUSSY監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング脚本 ジョージ・マクドナルド・フレイザー撮影 アラン・ヒューム音楽 ジョン・バリー主題歌 リタ・クーリッジ出演 ロジャー・ムーア、モード・アダムス ルイ・ジュールダン、クリスティナ・ウェイボーン、カビール・ベディ スティーヴン・バーコフ、ヴィジェイ・アムリタラ、ウォルター・ゴテル ロバート・ブラウン 本編130分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第13作。1983年イギリス映画で、日本公開は同年7月です。 前作から監督がジョン・グレンさんになり、1980年代の007映画5作品はすべてジョン・グレンさんが監督を務めています。前作ではそれまでのオチャラカ映画だったのをマジメな路線に軌道修正したのですが、ちょっと地味すぎたのか、今作は派手で豪華な作品になった。 タイトルの「オクトパシー」は、女だけの宝石密輸団の首領オクトパシー(モード・アダムス)からきています。彼女は、007号ジェイムズ・ボンドがかつて黄金横領の罪で捕らえたスマイス少佐の娘で、少佐は軍法会議の直前に自殺。彼女は父に自殺の機会を与えてくれたボンドに感謝している。 脚本はイアン・フレミングの原作小説から離れたものですが、このスマイス少佐の犯罪の部分だけが原作のもので、あとはオリジナルです。 原作は「007号ベルリン脱出」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ刊)という短篇集。 そのなかの、「007号の追求(原題OCTOPUSSY)」がスマイス少佐の犯罪の話。戦後すぐにナチスの金塊を発見し、山中に隠した彼はそれを知ったガイドを殺害する。その殺されたガイドがボンドにとって恩人だった。 もうひとつ「007号の商略」からはサザビーのオークションの場面を、この2編を映画に取り入れています。 イアン・フレミングの小説「007号シリーズ」のハヤカワ・ポケット・ミステリ版はすべて持っていましたが、40年ちかく前に捨ててしまって後悔しています。特にこの「007号ベルリン脱出」などは貴重な本だったのに。 15年くらい前にシリーズの改訳版の文庫が刊行されて、何冊か買ったけれども「オクトパシー」(改題された)は刊行されず、いまでは古書を探すしかない状態です。 映画は、東ベルリンで催されているサーカスからピエロ姿の英国海外秘密情報部員009が宝飾品「ファベルジェの卵」の贋物を盗み出して、瀕死の状態で西ベルリンの英国大使公邸に逃げ込み、息絶える。 最近、その本物の「ファベルジェの卵」がサザビーのオークションに出品されていて、英国情報部はソ連の外貨稼ぎだと見る。諜報資金にするためか?、情報部はそれを調べるためにボンドをオークション会場へ派遣する。「ファベルジェの卵」の価値は20~30万ポンドだという。それをカマル・カーン(ルイ・ジュールダン)という男と競り合ったボンド。ボンドのために値を競り上げられたカマル・カーンは50万ポンドで落札する。ボンドは009が入手した贋物とひそかにすり替えたので、カマルは贋物を持って帰った。 なぜカマルはそれほどファベルジェの卵を欲しがったのか?、ボンドはカマルが向かったインドのデリーへと追跡することに。 つづきます。
2015年09月04日
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「読後焼却すべし」 ジャマイカで荘園を営むハブロック夫妻がゴンザレスという悪党に殺される。 キューバ政府に雇われていたナチ残党のハマーシュタインが革命が迫ってきて国外に逃げるためにジャマイカで土地を手に入れようとしていて、その標的とされたのがハヴロックの荘園で、売るのを拒んだために殺された。 殺されたハヴロックはMの旧友で、仇を討ちたいと願うMは、ボンドにハマーシュタイン暗殺を依頼する。秘密情報部を私的に利用することをためらうM。 ボンドはMの依頼を引き受け、キューバを追われたハマーシュタインが住むアメリカ・カナダ国境近くのバーモント州の森へと潜入する。そこで両親の仇を討とうとするハヴロックの娘ジュディと出会います。「危険」 イタリアからイギリスに麻薬が密輸されていて、その組織撲滅に007号がローマへ向かう。麻薬密輸関係は秘密情報部の管轄ではないが、組織の背後でソ連が糸を引いている可能性があるので捜査を引き受けた。 イタリアでアメリカが二重スパイとして使っているクリスタトスという男に、ボンドは情報を買いに接近する。3万ドルの金と、その密輸組織の首領を殺すことを条件に彼は承知し、組織の首領コロンボの居所をボンドに教える。 ボンドはコロンボの愛人リスルに近づくが、コロンボの一味に捕らわれてしまう。そこでボンドが出会ったコロンボはクリスタトスが言ったような男ではなかった。 コロンボは男気のある人物で、密輸はやるが麻薬には決して手を出さないと言う。 本当の悪党はクリスタトスのほうで、ボンドは意気投合したコロンボの手を借りてクリスタトスの麻薬密輸アジトの倉庫を襲う。車で逃げるクリスタトスをボンドのワルサーが狙い撃つ。 創元推理文庫から刊行されたイアン・フレミングの小説「007号の冒険」(現在は「薔薇と拳銃」。私が持っているのは「バラと拳銃」)は短篇集で、「バラと拳銃」「読後焼却すべし」「危険」「珍魚ヒルデブラント」「ナッソーの夜」の5編が収められています。 映画「007ユア・アイズ・オンリー」(1981)は「読後焼却すべし」と「危険」の2編をもとに話ができあがっている。 ハヴロック夫妻が殺され、その仇討ちを決意した娘メリナ・ハヴロック。小説はジュディ・ハヴロックです。「危険」の悪役クリスタトスが映画でも悪役を務め、英国の情報収集船からATACを奪ってソ連に売り渡そうとしている。クリスタトスがボンドに密輸組織のボス コロンボを殺させようとするのは小説と同じです。ボンドとコロンボが意気投合するのも同じ、いっしょにクリスタトスの倉庫を襲撃するのも同じ。細部は異なるけれど、かなり原作小説に近い映画化です。 メリナ・ハヴロックを演じるキャロル・ブーケさんはシリーズ屈指の美人女優。その美貌は特筆すべきものです。組織のボス コロンボは英国の名優トポルさんが演じている。007映画にはちょっと不向きな感じがしますがトポルさんが良い味を出している。 映画の中で、両親の復讐を誓うメリナにボンドが「中国のことわざでは、復讐に出るには墓をふたつ掘ってから行けという」と言って諭しますがメリナの決心は揺らがない。「復讐にでるには墓をふたつ掘ってから行け」というのは、日本では「人を呪わば穴ふたつ」と言いますね。 由来は「平安時代に、加持祈祷を生業とした陰陽師が、人を呪殺しようとするとき、呪い返しに遭うことを覚悟し、墓穴を自分の分も含めて二つ用意させた」ことからきた言葉だそうです。 この「人を呪わば穴ふたつ」も原作小説でボンドが言っています。
2015年09月03日
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「007ユア・アイズ・オンリー」(1981) FOR YOUR EYES ONLY監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング(創元推理文庫刊)脚本 リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン撮影 アラン・ヒューム特撮 デレク・メディングス音楽 ビル・コンティ主題歌 シーナ・イーストン出演 ロジャー・ムーア、キャロル・ブーケ トポル、リン=ホリー・ジョンソン、ジュリアン・グローヴァー カサンドラ・ハリス、ウォルター・ゴテル 本編128分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第12作。日本公開は1981年7月です。 この頃になると、原作小説ではイアン・フレミングの長編を使い果たしていて、短篇集「007号の冒険」(「バラと拳銃」に改題。創元推理文庫刊)に収められている「読後焼却すべし」と「危険」をもとに脚本が書かれています。 前作「ムーンレイカー」ではジェイムズ・ボンドがスペースシャトルで宇宙へ行ったのが、いくらなんでもやりすぎだった、と反省したのかどうか知らないけれど、一転してコメディ色をおさえた地味な007映画になりました。 シリーズとしては、かつて荒唐無稽すぎた「007は二度死ぬ」(67)のあとの原点回帰として作られた「女王陛下の007」(69)のような位置になります。 1981年外国映画興行成績は以下のとおり。 金額は配給収入。1位 「エレファント・マン」 23億1000万円 2位 「007ユア・アイズ・オンリー」 21億5200万 3位 「スーパーマン2 冒険篇」 15億9200万 4位 「レイズ・ザ・タイタニック」 8億5000万 5位 「ブルース・ブラザース」 7億7000万 6位 「アメリカン・バイオレンス」 6億7000万 7位 「ハンター」 6億3000万 8位 「ブラックホール」 6億 9位 「ヤング・マスター」 4億9000万 10位 「クリスタル殺人事件」 4億7200万円 ギリシャのコルフ島沖で漁船に偽装した英国の電子情報収集船が機雷に触れて沈没する事件が起きます。船にはATAC(エータック)と呼ばれるミサイル誘導装置が積まれていて秘密漏洩防止のための自爆が間に合わずに船が沈んでしまった。 ATACは原子力潜水艦搭載ミサイルを標的地に誘導する最高機密装置で、東側の手に渡れば軍事バランスに大きく影響することになり、英国海外秘密情報部は海洋考古学者のハブロック卿に船の引き揚げを依頼。 しかしハブロック卿の作業船はゴンザレスという男の飛行機から銃撃を受けて、娘メリナ(キャロル・ブーケ)の目前で卿と夫人が殺されてしまう。 情報部の命令でジェイムズ・ボンド(ロジャー・ムーア)はゴンザレスの屋敷があるスペインへ向かい、そこでゴンザレスが眼鏡の男から現金が入った鞄を受け取る現場を目撃する。発見されて捕まったボンドの危機を救ったのは殺された両親の仇を討つために忍び込んでいたメリナだった。 メリナはボウガンでゴンザレスを射殺するが、2人は追われて、彼女の黄色い車シトロエン2CVで逃げることになり山道でのカーチェイスがくりひろげられる。 今作から監督が、これまで編集や第2班監督を務めてきたジョン・グレンさんとなり、このあと「消されたライセンス」(89)までの5作品を担当することになります。 シリーズ中最多となる5作品の監督を務めたジョン・グレンさんの作風は、派手さはないけれど堅実な職人風といった感じがします。 1980年代10年間の007映画はすべてジョン・グレン監督によるもので、私は「女王陛下の007」までの初期6作品とグレン監督のこの5作品がシリーズ中では最も好きです。 明日につづく。
2015年09月02日
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「007ムーンレイカー」(1979) MOONRAKER監督 ルイス・ギルバート製作 アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(創元推理文庫刊)脚本 クリストファー・ウッド撮影 ジャン・トゥルニエ特撮 デレク・メディングス音楽 ジョン・バリー主題歌 シャーリー・バッシー出演 ロジャー・ムーア、ロイス・チャイルズ ミシェル・ロンズデール、コリンヌ・クレリー、リチャード・キール 本編126分 総天然色 シネマスコープサイズ 1979年(昭和54年)イギリス映画で、映画007シリーズ第11作。日本公開は1979年12月。 アメリカからイギリスへボーイング747機に背負われて空輸されるスペースシャトル「ムーンレイカー」が何者かに奪われる事件が起きる。捜査をまかされた英国海外秘密情報部は007号ジェイムズ・ボンドをシャトルを製造したドラックス社へ向かわせます。 ドラックス社の社長ヒューゴ・ドラックス卿(ミシェル・ロンズデール)はアメリカの大富豪で、カリフォルニアにフランス風の宮殿を建てて住み、自費を投じた宇宙開発センターを経営する。知的で物静か、威厳があるが傲慢な男。 社を訪れたボンドに協力した秘書兼パイロットの女性(コリンヌ・クレリー)を狩猟場で猟犬に追わせ、餌食にする冷酷さ。コメディ映画的、ファミリー映画的な「007映画」となっているのに、このような残酷描写があるのは矛盾しています。 ドラックスの居間に忍び込んだボンドは金庫にあった図面からヒントを受けてヴェネチアのガラス工房へと向かい、さらに南米リオデジャネイロへと舞台が移ります。 事件の首謀者である悪役を簡単に見つけすぎる単純な展開ですが、見ている間はそんなこと考えない。視察に訪れたボンドを「生きて返すな」と部下に命ずるドラックス。陰謀の証拠も何もまだつかまれてないのに、藪をつついて蛇を出すとはこのことか。 そもそもなんで自社の製造したスペースシャトルを奪わないとならなかったのか?理由は「手持ちの機体が故障して使えないのでその代機にするため」だとか。自分から陰謀を露見させているようなもので、なんじゃこれは、です。 ドラックス卿の陰謀は、全世界の人類を死滅させて、自分たち選民だけの新世界を築こうという「ノアの箱舟計画」。容姿端麗、頭脳明晰な若い男女を選び出し、彼らをスペースシャトルで大気圏外にある宇宙ステーションへ一時送る。そして人間だけに効果がある、蘭の花から作り出した神経毒ガスで人類を抹殺し、その後の地球へ戻って新世界を創造しようというもの。 前作の「私を愛したスパイ」のストロンバーグの海底王国と似たようなもので、現在の人類を滅ぼして、自分の思うような理想社会を創ろうという計画は、かつての国際犯罪組織スペクターの金銭欲がからんだ大犯罪とは違って狂気からくるものだけに、「それでいくら払えばいいんだ」で通用しない。 映画が公開された当時は「ボンドが宇宙へ行くのは荒唐無稽すぎる」と思われましたが、その後スペースシャトル計画が現実化され、それが2011年に廃止されたいま、それほど奇異な感じはしません。 製作費 全世界興行収入「007は殺しの番号」 100万ドル 5956万ドル「007危機一発」 200万ドル 7890万ドル「ゴールドフィンガー」 300万ドル 1億2490万ドル「サンダーボール作戦」 900万ドル 1億4120万ドル「007は二度死ぬ」 950万ドル 1億1160万ドル「女王陛下の007」 800万ドル 8200万ドル「ダイヤモンドは永遠に」720万ドル 1億1600万ドル「死ぬのは奴らだ」 700万ドル 1億6180万ドル「黄金銃を持つ男」 700万ドル 9760万ドル「私を愛したスパイ」 1400万ドル 1億8540万ドル「ムーンレイカー」 3100万ドル 2億1030万ドル 本作はシリーズ過去最高の興行収入2億1030万ドルをあげたといわれていますが、製作費が莫大なものになっているので、利益率では過去最低となります。 不死身の殺し屋ジョーズ(リチャード・キール)が再登場してボンドを狙う。悪役の俳優が2作続けて出演するのは彼のみですね。金髪でお下げ髪の可愛い彼女ができて、「このヤロー、うまいことやったな」です。
2015年09月01日
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「私を愛したスパイ」にはジェイムズ・ボンドが海軍の制服を着て登場します。 ボンドの制服姿が見られるのはロジャー・ムーアさんでは本作のみで、ショーン・コネリーは「007は二度死ぬ」のみ。どちらも監督はルイス・ギルバートです。「私を愛したスパイ」と「007は二度死ぬ」は類似点がいくつかあって、英ソ米の原潜を拿捕する、米ソの有人衛星を拿捕する、大口をパックリと開けて飲み込む、という方法がよく似ています。 美術担当のケン・アダムさんによる大がかりなセットが建設されての撮影も共通項で、阿蘇山火口下のスペクター基地と、ストロンバーグの巨大タンカー内のセット。 巨大タンカー内に拿捕した原潜が3隻がそのまま収まる巨大なセットで、007シリーズ最大のものが製作されました。 ボンド役が板に付いたロジャー・ムーア、華のあるボンドガール、悪役の大物感。 水陸両用のボンドカーとヘリコプターからの銃撃アクション、悪役ストロンバーグの海底基地と巨大タンカー。エジプトとイタリアでのロケ撮影。 シリーズ低迷期の前3作に比べると格段に派手な大作になっていますが、考えてみると、悪役カール・ストロンバーグ(クルト・ユルゲンス)の意図がよくわからない。英ソの原潜を奪って、核ミサイルをモスクワとニューヨークに撃ち込んで世界大戦を起こさせて地上の人類社会を滅ぼそうとする。 ボンドが「それでいくら欲しいんだ?」と問うと、「勘違いするな」と言う。脅迫が目的ではなく、世界を滅ぼすのが目的。地上世界を滅ぼして海底に自分の王国を作るんだと。 それにしては海底王国はまだできあがっていないどころか建設の着手もされていない。それなのに核ミサイルを発射してしまっていいものか。世界大戦の核汚染下で自分たちはどこへ行こうというのか。黒いタコみたいなドーム型海底基地だけしかないのに。巨大タンカー内には多勢の部下がいて、彼らは親分の陰謀を納得して従っているのだろうか? このような人物設定がずさんなのは脚本がいいかげん? 不死身の殺し屋ジョーズにしても、鋼鉄製の歯でかみ殺す必要があるとは思えない。彼ほどの巨漢なら絞め殺す、つかみ殺すほうが手っ取り早いではないか。見ている間はそんなことは考えなかったのですが。 ボンドガールはメインのバーバラ・バックさんより脇役の、ストロンバーグの使用人ナオミ役のキャロライン・マンローさん(写真)の方が魅力的です。「ドラキュラ'72」(72)「シンドバッド黄金の航海」(73)「地底王国」(76)「スタークラッシュ」(78未公開)などの出演で知る人ぞ知る女優さんですが、現代劇より古代ファンタジーの女戦士が似合いそうな人です。
2015年08月31日
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「007私を愛したスパイ」(1977) THE SPY WHO LOVED ME監督 ルイス・ギルバート製作 アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(タイトルのみ) 脚本 クリストファー・ウッド リチャード・メイボーム撮影 クロード・ルノワール音楽 マーヴィン・ハムリッシュ主題歌 カーリー・サイモン出演 ロジャー・ムーア、バーバラ・バック クルト・ユルゲンス、キャロライン・マンロー、リチャード・キール バーナード・リー、ウォルター・ゴテル 本編125分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第10作。日本公開は1977年12月10日となっているのですが、この日付は納得がいきません。というのは、個人的なことですが、私が家内と結婚したのがこの年の10月であり、映画を見たのが結婚後だったとは思えないからです。「カプリコン1」と「ガントレット」「オルカ」も1977年12月17日公開とされていて、こちらは明らかに金沢ではそれ以前の公開で、私がまだ独り身の頃に見ている。同様に都会より地方での公開が早かったのか?と思うのですが、「007」のような話題作にそのようなことがあるだろうか? イギリスとソ連の原子力潜水艦がつづけて消息を絶つ事件が起こります。 何者かが衛星から原潜の熱を探知して潜航場所を露見させるシステムを開発して、売りに出したとの情報を掴んだ英国海外秘密情報部は、そのシステムのバイヤーがいるカイロへ007号ジェイムズ・ボンド(ロジャー・ムーア)を送り込む。 一方のソ連KGBは腕利きの諜報員トリプルXのコード名を持つアニヤ・アマソヴァ少佐(バーバラ・バック)をカイロへ派遣する。 原潜航跡追跡システムを収めたマイクロフィルムをめぐって、ボンドとアマソヴァはカイロで現れた共通の敵に対抗するために共闘することに。英国とソ連、敵国同士の諜報員が行動を共にするうちにしだいに惹かれあうようになってゆきます。 入手したマイクロフィルムに写っていた手がかりから原潜失踪事件の背後に海運王ストロンバーグが存在するらしいと判明。ボンドとアマソヴァは面会するために身分を隠してストロンバーグの海底(水上)ドーム基地へと向かう。 1970年代に入り、「ダイヤモンドは永遠に」「死ぬのは奴らだ」「黄金銃を持つ男」と低迷期がつづいた「007シリーズ」。 共同製作者ハリー・サルツマンと袂を分かったアルバート・R・ブロッコリは、これで自分の思うがままの007映画にできると思ったかどうか?、製作費を倍増して海外ロケを大がかりにおこない、敵役にクルト・ユルゲンスという大物俳優を起用したのが功を奏したのでしょうか、007映画シリーズはようやく安定軌道に乗ったようです。「死ぬのは奴らだ」でロジャー・ムーアさんが新ボンドとして登場したときは、秘密情報部員というより私立探偵のようでしたが、この「私を愛したスパイ」でボンドとしての彼なりのキャラクターができあがった。 一見、若返ったかのようなボンドだけれども、実際はロジャー・ムーアさんはショーン・コネリーより3つ年上でボンド俳優としては最年長。 いかにコネリーが年齢より老けて見えたかですが、ショーン・コネリーのような脂ぎった野性味がなく、洗練された上品さがあり都会的なボンドです(女性に対して図々しいのは相変わらずだが)。 コミカルな作風は、敵の殺し屋ジョーズ(リチャード・キール)は少々鼻についてイライラさせられるけれど、このマンガ的な展開がロジャー・ムーアさんの「007」なのでしょう。このあとも「007」はこの形を基本に続くことになります。 つづく。
2015年08月30日
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■フランシスコ・スカラマンガ(演ずるのはクリストファー・リー) 映画「007黄金銃を持つ男」(74)の悪役、殺し屋スカラマンガ。 黄金製の銃弾を使用し、暗殺の依頼料は100万ドル。身体的特徴は乳首が三つあり、サーカスで育った射撃の名手である。 中国領海内の孤島に住み、従僕にニック・ナックという小人を使っている。ニック・ナックには、自分を殺したら全財産をやると言ってあるらしく、彼とは良いコンビである。ボンドには、同じ殺し屋として親近感を持っているようだ。 愛人アンドレア・アンダース(モード・アダムス、写真)は自由になりたくて、ボンドにスカラマンガを倒してもらおうと考え、挑戦状に見せかけた黄金の銃弾を送る。 黄金の銃弾を好んで使う(トレードマーク)として世界の情報機関にその名を知られた、しかしその顔や容姿は不明で、身体的特徴として乳首が三つあるというのみ。 そんな銃の名手である謎の暗殺者と英国海外秘密情報部員007号ジェイムズ・ボンドが対決する話、のはずがそうはなっていない、不可思議な映画です。 たとえば、さいとう・たかをさんの劇画「ゴルゴ13」のゴルゴ13とジェイムズ・ボンドが対決する話があったとして、英国情報部のMがボンドにゴルゴ13を抹殺する任務を命じたとする。 ところが世界的なスナイパーであるはずのゴルゴ13が暗殺請負業ではなく、太陽エネルギーを高出力の電気に変える画期的発明を入手したことで、それを高く売りつけようと、そんな金儲けにやっきになっている。ゴルゴ13がボンドとの勝負より、金儲けを優先している、そんなストーリーです。 殺し屋スカラマンガとジェイムズ・ボンドが浜辺で対決する。お互いに背を向けて歩き始めて、決められた歩数を歩いて振り返って撃つ、という決闘。 ボンドが歩いて、撃とうと振り返ったらスカラマンガの姿が消えている。「ワハハハッ」とスカラマンガ。なんじゃ、これは!。 太陽エネルギーを利用した、環境にやさしいクリーンな、新しい発電設備というのは時代に合ったテーマなのだろうけれど、殺し屋スカラマンガと英国情報部員の対決はどこかへ行ってしまっておざなりに。 黄金の銃を持つ男は、金色塗装の拳銃(ワルサーP38、ルガーP08かコルト45ガバメント)を愛用する殺し屋というのにすればいいのに、映画では金色のライターとペン、シガレットケースを組み合わせて単発の拳銃になる、あまり実用的とも思えず、こんな物が何の役に立つのだろう?、あまり意味のないアイテムです。 スカラマンガの執事兼コック兼助手?としてニック・ナックという人物がいるのですが、スカラマンガに観客の関心を集めなければならないはずなのに、ニック・ナックの奇妙な存在感の強さのためにそちらへ関心が集まってしまう結果になっています。 全体にまるで危機感のない生ぬるい娯楽アクション映画となった「007黄金銃を持つ男」です。 本作を最後にして製作者ハリー・サルツマンさんが映画「007」から手を引きました。「ロシアより愛をこめて」と「サンダーボール作戦」「女王陛下の007」がシリアス路線を好んだハリー・サルツマンさんらしさのある作品だと思っているのですが、「007は二度死ぬ」「ダイヤモンドは永遠に」それ以降の「死ぬのは奴らだ」と「黄金銃を持つ男」のオフザケ娯楽、コメディ的マンガチックな路線が続いては、サルツマンさんが去ることになったのが納得できますね。 ボンドがスカラマンガの行方を吐かそうとしてその愛人アンドレア(モード・アダムス)の腕をねじ上げて痛めつける、そんな非情なシーンがちょっとだけあるのですが、全編をこの方向で行くべきだったのでは?
2015年08月29日
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「007黄金銃を持つ男」(1974) THE MAN WITH THE GOLDEN GUN監督 ガイ・ハミルトン製作 ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)脚本 リチャード・メイボーム、トム・マンキウィッツ撮影 テッド・ムーア、オズワルド・モリス音楽 ジョン・バリー主題歌 ルル出演 ロジャー・ムーア、クリストファー・リー モード・アダムス、ブリット・エクランド、エルヴェ・ヴィルシェーズ スーン=テック・オー、リチャード・ルー 本編125分 総天然色 ビスタサイズ 映画007シリーズ第9作で、1974年イギリス映画。日本公開は1974年12月です。シリーズ最低作とされて評価の低い作品ですが、2015年現在の視点から見て「凡作」「駄作」と決めつけてしまうのは誤った鑑賞ではないか、と思います。映画が作られた1974年当時の世相や流行など当時の時代を念頭におくべきではないかと。 1974年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入 1位 「エクソシスト」 27億3200万円 2位 「燃えよドラゴン」 16億4200万 1973年12月公開 3位 「パピヨン」 13億 4位 「ドラゴン怒りの鉄拳」 6億円 1974年7月公開 4位 「ドラゴン危機一発」 6億円 1974年4月公開 6位 「スティング」 5億6000万 6位 「ダーティハリー2」 5億6000万 8位 「アマゾネス」 4億1000万 9位 「シンジケート」 3億5000万 10位 「華麗なるギャツビー」 3億3000万円 1975年外国映画興行成績です。 金額は配給収入 1位 「タワーリング・インフェルノ」 36億4000万円 2位 「大地震」 16億円 3位 「エマニエル夫人」 15億円 1974年12月公開 4位 「007黄金銃を持つ男」 9億3800万 1974年12月公開 5位 「ゴッドファーザーPARTII」 8億1900万 6位 「最後のブルース・リー ドラゴンへの道」 7億7200万 7位 「エアポート’75」 6億6800万 8位 「個人生活」 5億5000万 9位 「アラン・ドロンのゾロ」 5億2000万 10位 「バニシング IN 60」 4億5800万円 1973年12月に公開された、誰もが予想もしなかった「燃えよドラゴン」(香港を舞台にしたアメリカ映画)が大ヒットし、それがきっかけでカンフー映画が大流行しました。主演ブルース・リーの過去出演作(香港映画)が輸入され、それらも大ヒット。 香港マカオ、タイなどが注目されて、欧米人にとっては神秘を感じる遠い異国の異文化の地であり、一種の憧れをもって見られた。「エマニエル夫人」はタイで、「続エマニエル夫人」(75年12月公開)は香港が舞台になりました。 そんな東南アジアがブームとなった1974年、流行に敏感な007映画も香港やバンコクが舞台となり、カンフーが取り入れられたのは当然のなりゆき。 悪の実業家に捕まったボンドがカンフー道場に連れ込まれて稽古台にされる。逃げ出したボンドが追われたところをカンフー少女2人組に救われるヘッポコぶりが可笑しい場面になっています。 英国海外秘密情報部に「007」と刻みが入れられた黄金の銃弾と挑戦状が送られてくる。 黄金の銃弾を好んで使うのは一件100万ドルで殺人を請け負うスカラマンガ(クリストファー・リー)であり、判明しているのは指紋と乳首が三つあるという特徴だけ。 Mは顔もわからない相手ではボンドが不利と感じ、現在関わっている太陽エネルギーを高出力の電気に変える「ソレックス」を開発して行方不明になっている研究家ギブソンを追跡する任務からはずれるよう命じる。殺されたら任務全体に影響するからと。 ボンドは「私が先にスカラマンガを見つければいいんでしょう」と、Mは「それができれば言うことはない」と容認します。 ボンドはかつてベイルートでスカラマンガに情報部の同僚が暗殺された事件を手がかりに現地へ向かい、暗殺に使われた黄金の銃弾を手に入れる。その銃弾をQの秘密兵器開発部は、マカオの銃職人が作ったものだと鑑定し、ボンドは香港マカオへと。 マカオの銃職人を脅したボンドは黄金の銃弾を受け取りに現れたスカラマンガの愛人アンドレア(モード・アダムス)の後を追います。 明日につづく。
2015年08月28日
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「007死ぬのは奴らだ」(1973) LIVE AND LET DIE監督 ガイ・ハミルトン製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)脚本 トム・マンキウィッツ撮影 テッド・ムーア特撮 デレク・メディングス音楽 ジョージ・マーティン主題歌 ポール・マッカートニー&ウィングス出演 ロジャー・ムーア、ジェーン・シーモア ヤフェット・コットー、クリフトン・ジェームズ ジェフリー・ホルダー、デヴィッド・ヘディソン 本編121分 総天然色 ビスタサイズ 映画007シリーズ第8作。1973年イギリス映画。日本公開は1973年7月、金沢では香林坊にあったパリー菊水で上映されました。 ニューヨーク国連本部でカリブの小国サン・モニクの首相カナンガ(ヤフェット・コットー)を監視中だった英国情報部員が殺され、ニューオーリンズの街頭で、カリブの島でも英国情報部員が連続して殺害される。3件の殺害事件に関連性があるのか?、その調査を007号ジェイムズ・ボンドが命じられる。 今作での007号の敵は一国の首相でありながら麻薬を栽培し、ニューヨークへ運んで売りさばく、というよりも、無料でばらまいて中毒者を蔓延させ、その後に高値で売るという商法を企んでいるカナンガ。 ソ連のスパイ機関スメルシュや国際犯罪組織スペクターのような強力な敵ではなくなり、現実的な麻薬密輸組織(小さいとはいえ一国の首相がボスだが)になりました。 この映画を初めて見た時は大いに不満を感じました。せっかくある原作小説の面白さと見所がまったく活かされていない。敵のボスが黒人でありその組織も黒人で構成されているのは同じだけれども、小説にあった(さいとう・たかをさんの劇画にも)007号の敵組織の不気味な恐ろしさがまったく感じられない。 敵のボスはミスター・ビッグ。大きな頭をした大男で、身長195センチ、体重127キロの巨漢。海賊の金貨をアメリカに密輸してソ連の国家暗殺機関スメルシュの資金源にしている男です。 この007シリーズ屈指の、ブロフェルドにも勝るとも劣らない悪役がなぜか映画では登場せず、ドクター・カナンガなどという男に変えられている。 カリブの海賊の金貨を密輸というのは時代遅れだというので麻薬密輸に設定を変えたというなら、仕方ないかもしれないが、悪役のキャラを変更したのは納得いかないところです。 それと最大の見せ場であるはずの、アメリカでのボンドの活動をバックアップするCIAのフェリックス・ライターが、ミスター・ビッグの子分が経営する生き餌会社に調査に行って、鮫がいる落とし穴に落とされて、片手と片足を喰われる重傷を負うエピソードが使われず、だけでなくクライマックス最大の見せ場であるボンドとヒロイン ソリテールが縛られて、鮫がいる珊瑚礁の海を引き回されて傷だらけになるシーンも映画では使われていない。 原作を使い果たしてオリジナル脚本になったのなら納得できるのに、ちゃんとした傑作の原作小説があるのに話を完全に変えてしまったのはなぜだろう?最大の疑問であり不満であるところです。 007号ジェイムズ・ボンドの盟友であるアメリカ中央情報局のフェリックス・ライターは原作小説では重要な人物で、フランス参謀本部第二課のルネ・マチスとともに印象に残る好漢なのですが、このフェリックス・ライターは映画シリーズでは、出るには出ているけれど、ぞんざいな扱いで、毎回演じる俳優がちがったりする。 映画「死ぬのは奴らだ」ではテレビの「原子力潜水艦シービュー号」の艦長を演じていたデヴィッド・ヘディソンです(第16作「消されたライセンス」にも同役で出演)。 フェリックス・ライターは、早川書房版ではフェリックス・ライターであり、創元推理文庫版ではフェリックス・レイターと表記されます。同じく早川版ではジェイムズ・ボンド、創元版ではジェームズ・ボンドと表記。
2015年08月27日
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映画007シリーズ第7作「ダイヤモンドは永遠に」(1971)。 前作「女王陛下の007」は新婚旅行に出かけたジェイムズ・ボンドと新妻トレーシーが、ブロフェルドとイルマ・ブントが乗った車から銃撃されてトレーシーが殺されたシーンで終わります。 それとは別案として、新婚旅行に出かけてゆくシーンで終了し、つづく「007ダイヤモンドは永遠に」のオープニングでトレーシーが射殺される、というのがあったそうです。「ダイヤモンドは永遠に」の出だしとしては、この案のほうが効果的だったのではないかと思うのですが、それは若いジョージ・レイゼンビーさんがボンドだったからこそです。 ショーンコネリー 1930年(昭和5年)8月25日生まれ。 ジョージ・レイゼンビー 1939年9月5日生まれ。 ロジャー・ムーア 1927年10月14日生まれ。「ダイヤモンドは永遠に」のオープニングで、怒りに燃えるジェイムズ・ボンドがブロフェルドの行方を追って、悪人たちを痛めつけて口を割らせるシーンがあります。日本からカイロへと、浜辺で日光浴している女性を締め上げて白状させる。 新妻を殺された怒りだとは説明されていないけれど、前作からのつづきだとそういう展開になる。 このオープニングに登場したジェイムズ・ボンドのコネリーさん(写真・上)を見て驚いた人が多かったのではないでしょうか。 そのあまりの老けぶり。コネリーさんはこの時40~41才のはずなのにそのようには見えない。50才以上、60才近いといっても通るくらいの老けかたです。これでは結婚するイメージとは遠いし、結婚して早々に花嫁が殺されて、その復讐にのりだす、という役は似合わない。なので作中では新妻の仇討ちとはひと言も出てこないのだろうか。 別の意味で貫禄が付きすぎて、上司のM(バーナード・リー)よりも貫禄がある。ボンドにとってMは頭が上がらない、尊敬する上司である、というのがどこかへ行ってしまっている。 バーナード・リーさんはお身体が悪いのか、顔色がすぐれないのがブルーレイソフトだとよくわかり、なおのこと上司と部下の関係が不釣り合いに見えます。 ショーン・コネリーさんは「風とライオン」(1975)「インディ・ジョーンズ最後の聖戦」(89)など、風格と威厳があって最高に良いのですが、年齢よりも老けて見える、それを活かした役のほうが魅力を感じます。 若い時から老け顔だったようで、シリーズ第1作「007は殺しの番号(ドクター・ノオ)」(1962)の時は31~32才なのに、とてもそんなふうには見えない。 やはり「007は二度死ぬ」(67)を最後にボンド役を引退すべきだったようで、いかに高額のギャラを提示されたからとて引き受けてほしくはなかった、というのが私の感想です。 若くスマートなジョージ・レイゼンビーさん(写真・下)の新ボンドで「ダイヤモンドは永遠に」を撮ってほしかったと思っています。
2015年08月26日
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「007ダイヤモンドは永遠に」(1971) DIAMONDS ARE FOREVER監督 ガイ・ハミルトン製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(創元推理文庫刊)脚本 トム・マンキウィッツ リチャード・メイボーム撮影 テッド・ムーア特殊効果 アルバート・ホイットロック音楽 ジョン・バリー主題歌 シャーリー・バッシー出演 ショーン・コネリー、ジル・セント・ジョン チャールズ・グレイ、ラナ・ウッド、ブルース・キャボット ジミー・ディーン、ノーマン・バートン 本編120分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画007シリーズ第7作で、日本公開は1971年12月25日。 以下は1972年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位「ゴッドファーザー」 3億6651万円 2位「007ダイヤモンドは永遠に」 3億900万円 3位「屋根の上のバイオリン弾き」 2億1992万円 4位「風と共に去りぬ」 1億9962万円 5位「レッド・サン」 1億9572万円 6位「ひきしお」 1億1397万円 この年の映画料金はまだ400~500円くらいです。お正月映画「007ダイヤモンドは永遠に」と「レッド・サン」の2本立て興業が1000円の特別料金で札幌だったか?でおこなわれたのが映画誌のニュース記事になっていたのを覚えています。通常料金が1000円以上に急激に値上がりしたのはこのあとすぐのことです。 前作「女王陛下の007」の日本での配給収入は1億6192万円。そして「ダイヤモンドは永遠に」が3億900万円の好成績となり、やはりショーン・コネリーが再度ボンド役として出演したのが影響したと思われます。 ジェイムズ・ボンドはショーン・コネリーでなければね、というファンが多かったのでしょうが、でもこの復帰がファンの期待にこたえる結果になったのだろうか?「女王陛下の007」一作きりでジョージ・レイゼンビーがボンド役を降りたことで再度ボンド役を演じる俳優をさがすこととなり、ヒッチコック監督の「サイコ」(1960)の、モーテルで殺されたマリオンの恋人役で知られるジョン・ギャビンと契約が交わされたのですが、配給会社ユナイトがショーン・コネリー復帰に強くこだわったことでご破算に(契約料は支払われた)。 南アフリカのダイヤモンド鉱山から隠して持ち出された原石が密輸され、市場に出ることなく隠匿されている。何者かが意図的に貯め込んでいるのか?それが一度に放出されれば世界のダイヤモンド市場が混乱はさけられない。 英国のダイヤモンド協会からの依頼をうけた海外秘密情報部は007号ジェイムズ・ボンドをダイヤ密輸の運び屋に変装させてアメリカの密輸シンジケートに潜入させます。アムステルダムに向かったボンドは密輸組織の女ティファニー・ケイスに接触する。彼女の信用を得たボンドは棺の遺体に隠された密輸ダイヤとともにルフトハンザ航空の旅客機でロサンゼルスへと向かう。そして舞台はラスヴェガスへと。 国際犯罪組織スペクターのブロフェルドが密輸されるダイヤを横取りして、大量のダイヤを集めている。ダイヤモンドを人工衛星の反射板に敷き詰めて、巨大なレーザー兵器として国際社会を脅迫する陰謀をたくらんでいる。 この映画の公開前にリバイバル上映された「ゴールドフィンガー」を見ていたので、「金塊よりダイヤモンドの方が豪華だ。作品も絢爛としていてゴージャス」と当時の映画ノートに書いたのですが、あれから40余年、いま見ると「ゴールドフィンガー」より豪華どころか、格段に落ちる出来です。 けっして退屈はしないし、クライマックスの海上にあるスペクター基地をヘリコプターで攻撃するシーンは、爆発などの特撮は褒められないがけっこう盛り上がる。でも、凄みに欠ける悪役ブロフェルドと、ボンドの命を狙いながらもドジを踏んでばかりの2人組の殺し屋(ユニークな味を出しているが)。露出度は高いけれどあまり魅力的でないボンドガール(個人的好みの問題?)。 製作費が前作「女王陛下の007」の800万ドルから720万ドルに下げられて、それがショーン・コネリーの多額の出演料で目減りしたせいか、低予算映画の感じが強くします。 ガイ・ハミルトン監督の演出にも緊張感がなくコメディを見ているようで、当時のスパイ映画ブームで粗製濫造された亜流作品を見ているような。マット・ヘルムや電撃フリント、テレビのナポレオン・ソロのような。本家の007がそんなんではいけないだろうに。つづきます。
2015年08月25日
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「女王陛下の007」(1969) ON HER MAJESTY'S SECRET SERVICE監督 ピーター・ハント製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)脚本 リチャード・メイボーム サイモン・レイヴン撮影 マイケル・リード編集 ジョン・グレン美術 シド・ケイン音楽 ジョン・バリー主題歌 ルイ・アームストロング出演 ジョージ・レイゼンビー、ダイアナ・リグ ガブリエル・フェルゼッティ、テリー・サヴァラス、イルゼ・ステッパット アンジェラ・スコーラー、ジュリー・エーゲ 本編142分 総天然色 シネマスコープサイズ 映画「007シリーズ」第6作。日本公開は1969年12月。 私にとって初めて見た007映画であるせいか、思い出深く、大好きな作品です。「ロシアより愛をこめて」や「ゴールドフィンガー」「サンダーボール作戦」も傑作だけれど、一番好きな作品は?と問われるなら、迷うことなく「女王陛下の007」と答えます。 これまでに何度も書いたので、いまさら書くこともないのですが、書き漏らしたことを少々。「007危機一発」 1964年 配収第4位 2億6038万円「007ゴールドフィンガー」 1965年 配収第1位 7億622万円「007サンダーボール作戦」 1966年 配収第1位 10億1857万円「007は二度死ぬ」 1967年 配収第1位 6億7997万円「女王陛下の007」 1970年 配収第4位 1億6192万円「007ダイヤモンドは永遠に」 1972年 配収第2位 3億900万円 第1作「007は殺しの番号」(62)日本公開1963年6月、は配収10位内には入らず、成績は不明。 映画館の入場料金が変化しているので一概にはいえないのですが、この配給収入を見ると、「007シリーズ」(スパイ映画ブーム)の人気があった最頂点は1965年~1967年で、「ゴールドフィンガー」から「007は二度死ぬ」までの約3年間余といえそうです。「女王陛下の007」はボンド役がショーン・コネリーから新人ジョージ・レイゼンビーに交代したことが理由だけでなく、それまでのスパイ映画ブームが去っていたこと、などで観客数が落ち込んだのでしょうか。 英国海外秘密情報部の「ベッドラム」と命名されたブロフェルド追跡作戦から外された007号ジェイムズ・ボンドは、面白くない心境(辞表を出すことを考えている)でポルトガルでの休暇をとっていた。 ある夜、海岸でフランス最大の犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領マルク・アンジュ・ドラコの愛娘トレーシーの入水自殺を制止する。自暴自棄になっている彼女はカジノでから賭けをやり、ボンドがその汚名を救ったことから彼女と一夜の関係を結ぶことになる。 トレーシーの父マルク・アンジュ・ドラコにすっかり気に入られたボンドは、彼から娘との結婚を迫られる。 ボンドはドラコの組織の力でブロフェルドの情報を入手する。 ブロフェルドは爵位の入手に躍起になっていて、英国系譜紋章院にその証明を依頼しているとの情報を得たことから、ボンドは系譜紋章院から派遣された准男爵サー・ヒラリー卿に成りすまして、スイスの山頂に構えるブロフェルドのアジトに乗り込んでゆく。 前作「007は二度死ぬ」を最後にボンド役を降板したショーン・コネリーに代わってオーストラリアのモデルで、俳優としては新人のジョージ・レイゼンビーが新ボンドに抜擢されました。 ショーン・コネリーの個性が強すぎて、その後を継いだレイゼンビーは何かと比較されることになり割を食った格好です。当時のマスコミは悪意をもって彼をむかえ、意図的にコネリーと比較し、あることないことを書きたてて、新人レイゼンビーをおとしめようとした。 私にとっては初めて見た007映画であり、なのでショーン・コネリーのボンドには何の思い入れもない。ジョージ・レイゼンビーさんの方がジェイムズ・ボンドのイメージに合っていると思っています。 当時、夢中になって読んだイアン・フレミングの原作小説もレイゼンビーさんのイメージと重ねて読んだし、彼の方が原作小説のボンドのイメージに適っています。 映画「007シリーズ」の第1作「007殺しの番号(ドクター・ノオ)」から第5作「007は二度死ぬ」までの編集を担当したピーター・ハント(「007は二度死ぬ」では第2班監督も)が監督に昇格した「女王陛下の007」。そのピーター・ハント監督は「コネリーでもムーアでもない。ジョージ・レイゼンビーこそがボンドだよ」と言い切っているし、「女王陛下の007」で編集と第2班監督を担当し、のちに第12作「ユア・アイズ・オンリー」から監督となるジョン・グレンさんもジョージ・レイゼンビーを絶賛しています。 ジョージ・レイゼンビーさんの演じるジェイムズ・ボンドはショーン・コネリーのような野性味がなく、精悍さもないかもしれないけれど、上品でスマートです。 彼は一作のみでボンド役を降りてしまったのですが、降ろされたのではなく、自分から言い出したこと。 当時はヒッピー全盛の時代で、「お国のために働くスーツを着た短髪の秘密情報部員」など時代遅れだと思ったようで、このシリーズの前途に見切りを付けていたようです。 インタビューで、あと1本出ていればよかった。そうすればあと7本くらい僕の007映画があったかも、などと言っています。
2015年08月24日
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「007は二度死ぬ」(1967) YOU ONLY LIVE TWICE監督 ルイス・ギルバート製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)脚本 ロアルド・ダール撮影 フレディ・ヤング音楽 ジョン・バリー主題歌 ナンシー・シナトラ出演 ショーン・コネリー、若林映子、丹波哲郎 ドナルド・プレザンス、カリン・ドール、島田 輝 チャールズ・グレイ、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル デスモンド・リュウェリン、浜美枝 本編117分 総天然色 シネマスコープサイズ 1967年イギリス映画。日本公開は1967年6月。 映画007シリーズの第5作です。 イアン・フレミングの原作小説では長編第11作にあたります。 前作「女王陛下の007号」で新妻が殺された傷心から秘密情報部員として使い物にならなくなり、解雇寸前となったボンドに最後のチャンスを与える意味で、Mは彼に万能暗号解読機を入手する易しい仕事を与えて日本へと送り込みます。 日本の公安調査局長タイガー田中は万能暗号解読機を渡す条件として、ボンドに福岡で世界の毒草を集めて悪の楽園を築いている植物学者を暗殺するよう依頼する。その男が思いもかけず「女王陛下の007号」で取り逃がした仇敵ブロフェルドだった。 映画は日本で大々的なロケがおこなわれ、当時は大きな話題になり、このこともあって映画は大ヒット(1967年度第1位。配給収入6億7,997万円)し、日本人で「007」を知らない人はいないだろうというのは、東京や神戸、鹿児島、阿蘇山、国技館や姫路城など、日本ロケがニュースになったからです。 アメリカの有人衛星が未確認飛行物体と遭遇した直後に消息を絶つ事件が起こる。アメリカはソ連がやったのだと言い、ソ連はやってないと言う。米ソの関係緊張を憂いた英国は問題の未確認飛行物体が着陸したとみられる日本に007号ジェイムズ・ボンドを送り込む。 ボンドは日本のタイガー田中(丹波哲郎)と名乗る人物が指揮をする情報機関の協力を得て、多量の液体燃料を輸入している「大里産業」が事件に関与しているのを突き止める。 ボンドは田中の部下アキ(若林映子さん)のトヨタ2000GTで大里産業の貨物船「ニンポー」が怪しいとにらみ、同船が荷積みをする神戸へと向う。 007号ジェイムズ・ボンドの、トンチンカンな描写があるけれども日本見聞録といったところか? ボンドがタイガー田中にもてなされて、風呂に入るシーン。4人の女性をはべらせて、背中を流してもらい、マッサージをしてもらう。その後はアキが交代して❤❤、となるのですが。 この場面は現代の目で見ると、女性差別を感じます。日本では女性は男に仕えるものという。 日本女性はおとなしく男のいいなりになると。いくらなんでも1967年の時点でさえ、そんな女性が日本にいるはずがなく大いなる誤解なのだろうけれど、欧米人の日本男性に対する羨望なのでしょうか。女性につくされる日本の男が羨ましいと。 冒頭でボンドが香港で銃撃される。ボンドが殺されたと見せかけて、軍艦上で水葬がおこなわれ、遺体は潜水艦に回収される。日本近海で潜水艦からひそかに上陸し密入国するボンドです。 新聞には「英国海軍中佐、殺される」のトップ記事が載り、殺されたことにして敵の目をあざむくというのですが、考えてみれば、すぐに正体が見破られたので、あまり効果があったとは思えない。 ボンドが阿蘇山を小型オートジャイロ「リトルネリー」に乗って偵察し、スペクターのヘリコプター編隊との空中戦。阿蘇山火口下のスペクター基地。日本情報機関の忍者部隊が大挙して襲撃するアクションなど、見せ場はいろいろあり、テンポ良く話が進む。 けっしてつまらない作品ではないし、娯楽映画としては楽しめる。でもこうなると「スパイ映画」ではなく、ファンタジー映画であり、007シリーズ最大の異色作といえそうです。 丹波哲郎さんの存在感はさすが。ジェイムズ・ボンドのことを「ゼロゼロ」とか「ボンドさん」と呼んでいます。 若林映子さんが美しい(ブルーレイソフトで見るのをお薦め)。颯爽と走るトヨタ2000GTの勇姿も見ものです。丹波哲郎さんと若林映子さんとトヨタ2000GTの映画といえそう。
2015年08月23日
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「007サンダーボール作戦」(1965) THUNDERBAL監督 テレンス・ヤング製作 ケヴィン・マクローリー(クレジットのみ)実際の製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)原案 ケヴィン・マクローリー ジャック・ウイッティンガム イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム ジョン・ホプキンス撮影 テッド・ムーア音楽 ジョン・バリー主題歌 トム・ジョーンズ出演 ショーン・コネリー、クロディーヌ・オージェ アドルフォ・チェリ、ルチアナ・パルッツィ、マルティーヌ・ベズウィック リク・ヴァン・ヌッター、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル 本編130分 総天然色 シネマスコープサイズ 国際犯罪組織スペクターがNATOの爆撃機を訓練飛行中に乗っ取って、搭載していた2発の原爆を奪う。1億ポンド相当の金塊を払わないと英国かアメリカの大都市を灰燼にしてやるぞ、との脅迫メッセージが英国政府に届きます。英国海外秘密情報部が原爆奪還にあたることになる、というお馴染みの物語です。 この映画についてはこれまでに何度か書いていて、今さら書くこともないのですが、何度目かを見直して感じたのは、そのスケールの大きさ。 画面がこれまでのビスタサイズからシネマスコープサイズになったことと、バハマ諸島ナッソーの明るい大海原が舞台となっていることで開放感が生まれたようです。 原題「サンダーボールTHUNDERBAL」とはどういう意味でしょうか? 辞書をくってもサンダーボルトやサンダーバードはあるがサンダーボールは載っていません。「雷の玉」だから落雷の時の火の玉だと思うのですが、勝手な推測では「神が怒りの鉄槌をくだす時の火の玉」ではないかと?「天罰」の雷電の火球だとすれば、スペクター相手の作戦名にピッタリでは? トム・ジョーンズが熱唱する主題歌がとても良いですね。前作「ゴールドフィンガー」のシャーリー・バッシーさんの熱唱にも劣らないくらいで、シリーズ中でも屈指の名曲です。 He looks at this world and wants it all. So, he strikes like Thunderball. 下線部は、彼はサンダーボールのごとく撃ちすえる、でいいのだろうか? 冒頭、007号ボンドがフランス支局の女性情報員と、敵のジャック・ブヴァール大佐の葬式をバルコニーから見下ろしている。棺の「JB」の頭文字を目にしてボンドが「自分の葬式を見ているようだ」と云う。 その葬式が偽装だと見抜いたボンドは、黒衣の未亡人に成りすましたブヴァール大佐を格闘のすえに首をへし折って、邸からジェットパックを背負って空高く飛んで脱出。追ってきた敵をアストンマーチンの後部からの多量の放水で撃退する。 その場面につづいて入るオープニングタイトル。青と赤の背景にシルエットで水中を泳ぐ女性たちを追うアクアラングの男たち。このタイトルバックにトム・ジョーンズの力強い主題歌が流れる。オープニングアクションからメインタイトルへと、華麗な主題歌が流れて観客に期待感を抱かせ、ワクワクと楽しくさせてくれる。これこそが「007」の醍醐味です。 トム・ジョーンズさんの主題歌は当初予定されたものではなく、はじめは「ミスター・キスキス・バンバン」という曲だったそうでシャーリー・バッシーさんが歌っていたのを公開日直前になって差し替えられたそうです。 曲名が映画のタイトルとは異なることと、タイトルの「サンダーボール」が曲の中に出てこないというので不安があったためだそうです。 主題歌にはならなかった「ミスター・キスキス・バンバン」はインストルメンタル曲として、映画のなかでアレンジされて使われていて、メロディが耳に残ります。 酒と煙草、夜遊びで不健康な生活を送るボンドがMの命令で保養所に入れられる。 その保養所でリッペ伯爵を蒸し焼きにしてやったあと、深夜ひそかに運び込まれた死体を目撃する。 ミイラのようにまかれた包帯をとって死体の顔を見たボンド。その顔が、原爆を搭載したまま乗っ取られた爆撃機に乗っていたフランス空軍のダーヴァル少佐のものだった。渡された資料の写真に彼と一緒に写っている美しい妹ドミノ(クロディーヌ・オージェ)。消息を絶った爆撃機に乗っているはずのダーヴァル少佐がなぜ死体となって保養所にいたのか? ボンドはMの許可を得て、さっそくその写真が撮られたバハマ諸島のナッソーへ飛ぶことになります。 Mの秘書マネーペニー(ロイス・マクスウェル)がボンドに「彼女が目当てなんでしょ。ご老体はだませても私はだませないわよ」。Mが現れて「ご老体とはわしのことか?」。気まずい顔のマネーペニー。ボンドはそそくさと部屋を出て行く。
2015年08月21日
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シャーリー・イートン Shirley Eaton 1936年1月12日 ロンドン生まれ。タニア・マレット Tania Mallet 1941年5月19日 ランカシャー生まれ。 「ゴールドフィンガー」(64)に登場する姉妹で、姉のジル・マスターソンを演じるのがシャーリー・イートン。ゴールドフィンガーに雇われて、カードゲームをする相手の手持ち札をホテルのベランダから双眼鏡でのぞいている。 イカサマを見破ったボンドと仲良くなったため、ゴールドフィンガーのボディガード、オッドジョブに全身に金粉を塗られて殺されてしまう。 妹のティリー・マスターソン(タニア・マレット)は、姉の仇を討つためにゴールドフィンガーを狙うが、オッドジョブの刃を仕込んだ山高帽をぶつけられて殺される。 けっきょく二人ともオッドジョブに命を奪われる悲劇の姉妹。 スイスのフルカ峠でティリーのフォード・マスタングとボンドのアストンマーチンの追いかけっこ。Qの特殊装備、タイヤのハブから回転する刃が出て、ティリーの車をパンクさせる。「これはひどい、欠陥タイヤだ」とは、ボンドも図々しい。 映画「007ゴールドフィンガー」のボンドガールは、オナー・ブラックマンさんのプッシー・ガロアがダントツの代表ですが、シャーリー・イートンさんとタニア・マレットさんも忘れられないヒロインです。 ボンドに力を貸したためにゴールドフィンガーに金粉を全身に塗られて殺されるジル・マスターソン(シャーリー・イートン)。ゴールドフィンガーからボンドへの「よけいなことに手を出すな」という警告として殺されます。(実行犯のオッドジョブが冷蔵庫の前でボンドの首筋を空手チョップで殴って気絶させるのですが、この時、加減がわからず、ハロルド坂田さんは本当に殴ってしまったそうで、コネリーが痛かったとぼやいている) 意識を回復したボンドがベッド上で金ピカにされた彼女の遺体を発見して驚く。このシーンは衝撃的なもので、公開当時、世界中の話題になったそうで、この金を塗られた美女が映画の宣伝として世界を駆け巡りました。 その妹としてティリー・マスターソンが登場し、姉を殺したゴールドファインガーをスイスの峠で狙撃するが弾がとんだ方向へそれて追跡していたボンドの近くに着弾。ボンドは自分が狙われたと勘違いする。この狙撃未遂のあと、ボンドのアストンマーチンと彼女のムスタングの峠道での追いかけっこになります。 右写真はティリー・マスターソンが峠から下の道にいるゴールドフィンガーを撃つつもりがボンドを撃ってしまう場面。使っている銃はアーマライトAR-7。「ロシアより愛をこめて」で007号がQから渡された装備のアタッシェケースに入っていたのと同型で、彼女のケースを見て「同じものを持っている」と言うと彼女は「スケート靴よ」とごまかす。 全長889mm。重量1130g 22口径(5.56mm) 使用弾 ロングライフル弾。 装弾数 8、10、15、25 赤外線照準器付き。セミオートマチック。分解して、パーツを銃床内に収納できる。 シャーリー・イートンさんは女優としてデータがありますが、妹役のタニア・マレットさんのほうは生年月日ぐらいで、あとはどんな経歴なのかわからない。「ゴールドフィンガー」DVDに収録の特典映像にも出てきません。役に抜擢されたときは、すでに週2000ポンドを稼ぐモデルだったとか? 映画「ゴールドフィンガー」の日本公開は1965年4月(英国は1964年9月)で、世界的な大ヒットとなり、「007ブーム」が起こったのはこの時からです。同年の12月に次作「サンダーボール作戦」が公開されて、ブーム絶頂期となります(1年間に新作007映画が2本公開された)。 サウンドトラックのレコード盤や関連書籍、ボンドカーのアストンマーチンのミニチュアやプラモが発売され、ボンドの人形、007のロゴ入りのシャツやパンツ、ジグソーパズルなど、関連商品がちまたに溢れた。 いま、これで何度目かを見て思ったのは、プッシー・ガロアが育てて率いる空中アクロバット飛行チームの5人のお嬢さんたち。彼女たちがフォートノックス上空を毒ガスボンベを積んだ5機編隊のパイパー機で飛行して散布する。ガスはプッシーが当局へ通報したことで無害ガスにすり替えられたけれど、彼女たちはそれを知っているのか?この5人のお嬢たちがこの後どうなったのかわかりません。 6万人の生命を救った最高貢献度のプッシー・ガロアと、その仲間としてお咎めなしにしてあげたいものです。
2015年08月20日
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「007 ゴールドフィンガー」(1964) GOLDFINGER監督 ガイ・ハミルトン製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング(ハヤカワ文庫刊)脚本 リチャード・メイボーム ポール・デーン撮影 テッド・ムーア音楽 ジョン・バリー主題歌 シャーリー・バッシー出演 ショーン・コネリー、ゲルト・フレーベ オナー・ブラックマン、シャーリー・イートン、セク・リンダー タニア・マレット、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル デスモンド・リュウェリン、ハロルド坂田 本編115分 総天然色 ビスタサイズ(ヨーロピアン) 映画「007シリーズ」の第3作。日本公開は1965年(昭和40年)4月です。 製作費100万ドルの低予算映画として作られた第1作「007は殺しの番号」(62)がヒットしたことで第2作「007危機一発」(63)は予算倍増(200万ドル)され、華やかでロマンチックなスパイ映画となった。そして第3作の本作はさらに増額された300万ドルの製作費がかけられて、フォートノックスの金塊保管庫のセットなど、美術担当のケン・アダムが腕によりをかけた絢爛豪華なものになりました。 ソ連のスパイや亡命といったスパイ映画から路線がそれて、荒唐無稽なファンタジー色の強い悪党退治の娯楽活劇映画として、007シリーズの型が本作でできあがったといえます。 英国一の大富豪オーリック・ゴールドフィンガー。その実は大悪党で、貴金属商として買い集めた多量の金(GOLD)を延棒に鋳直して、密輸で海外に持ち出している。チューリッヒ、ナッソー、パナマ、ニューヨークなどの保管金庫に2000万ポンドの金額に相当する金の延棒を蓄えているという。 そのゴールドフィンガーを捕らえて英国から持ち出された金塊を取り戻して欲しいとイングランド銀行から英国情報部が依頼を受け、007号ジェイムズ・ボンドがゴールドフィンガーを追跡することになります。 その追跡の結果、ゴールドフィンガーがアメリカのケンタッキー州にあるフォートノックスを襲う計画を企てていることが判明する。 ゴールドフィンガーはアメリカのギャングの親分どもを集めてその組織力を利用し、陸軍の機甲師団が警備している難攻不落のフォートノックスの金塊保管庫を破ろうという、奇想天外な犯罪計画。 メキシコでの任務を終えたボンドがマイアミのホテルで休養をしていると、CIAのフェリックス・ライターが「ゴールドフィンガーなる人物を監視しろ」というMからの命令をボンドに伝えに来ます。 プールサイドでゴールドフィンガーは高額賭けのカードゲームをやっていて、相手をイカサマでカモにしている。 ボンドがそのイカサマの手口を見破るのですが、イカサマの片棒を担がされていた女性ジル・マスターソンを口説いて、部屋でよろしくやっていると、ゴールドファインガーのボディガード兼運転手オッド・ジョブ(ハロルド坂田)がボンドを殴って気絶させ、ジルを裏切り者として全身に金粉を塗って殺害する。 英国情報部の本部へ戻ったボンドは、Mから「監視しろとは言ったが、ゴールドフィンガーの女に手を出せとは言わなかったぞ」と叱責されます。 この映画で最も印象に残るのは悪役ゴールドフィンガーのキャラクターです。 原作小説では身長150センチ足らずの小男となっていますが、映画ではドイツの俳優ゲルト・フレーベがでっぷり太った大きな男を演じている。 邪悪でありながら、その体格からかコミカルな印象があって、007映画では人気の高い悪役です。 標的となるフォートノックスには約6万人の住民がいて、その2割が警備に関係しているといわれますが、その6万人をゴールドフィンガーは皆殺しにするつもり。原作では上水道に致死性の毒を投入する計画、映画では飛行機で上空から即効性の毒ガスを散布する計画。 6万人の住民を服毒死させて、無人となった町に入り、金塊保管庫を襲うという、前代未聞の極悪犯罪計画です。 金塊保管庫内で核爆弾を爆発させて保管されている金塊を核汚染させる。そのことで自分が持っている金塊の価値を上げようという。今まで気づかなかったのですが、核爆発させると保管庫の金塊が消滅してしまうので、核爆発ではなく、通常の爆発で放射性物質をまき散らす爆弾といったほうが正確なのかも。 原作小説はフォートノックスから500トンから1000トンもの金塊を盗み出して、列車に積んで港まで行き、親善で寄港しているソ連の巡洋艦で運ぼうというもの。現実にこれだけの重量の金塊を運び出せるか?巡洋艦に積み込めるか?の疑問を感じてしまうので、核汚染で金の価値を高騰させようとする映画の設定のほうが理にかなっているようです。 映画の場合、牧場の干し草小屋へプッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)を連れ込んだボンドが柔道の投げ合いをやったあとで、彼女を押し倒して強引にキス。男嫌いのプッシー(なんて名前だ!)をとろけさせて味方にしてしまう。 ゴールドフィンガーに専用機パイロットとして雇われていた彼女はボンドに抱かれたことで悪の計画から寝返ります。このプッシー・ガロアの寝返りがなかったら6万人が死んでいたことになる。もし彼女の裏切りがなかったら大虐殺になっていたという紙一重の結果は、映画の脚本としては弱いのかもしれません。 悪役ゴールドフィンガー(オーリック・ゴールドフィンガーという姓も名も金がらみ。オーリックAuricは金の元素記号「Au」の語源だそうな)の特異なキャラクター。 プッシーPussy・ガロアという人前で自己紹介するには赤面ぜったいの名前。命名した原作者イアン・フレミングさん恐るべし。「ロシアより愛をこめて」のスパイ路線をはずれた、というより原作小説がそうなんだからどうしようもない。荒唐無稽ファンタジー活劇映画「007ゴールドフィンガー」は何度見ても楽しい作品です。
2015年08月19日
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ダニエラ・ビアンキ Daniela Bianch 1942年1月30日生まれ。出身はイタリア ローマ。 父はイタリア軍人(大佐?)。 幼い頃にバレエを習っていたそうです。身長が高くなりすぎた(身長170センチ。168センチとも))のでバレエをやめ、モデルに転進。 1960年のミス・ローマに選ばれ、同年にフロリダのマイアミでおこなわれた第9回ミス・ユニバースに出場し、2位(準ミス)に選ばれた。 1963年のイギリス映画「ロシアより愛をこめて」のボンドガール タチアナ・ロマノヴァ役に抜擢されて脚光をあびる。 他の出演作としては、「虎は新鮮な肉を好む」(65)「必殺の歓び」(65)「077 地獄の挑戦状」(66)「ドクター・コネリー キッドブラザー作戦」(67)「アルデンヌの戦い」(68)「国際泥棒組織」(68)などがある。 イタリアのB級(低予算)映画ばかりでアメリカ映画の出演がなく、女優としてはそれほど成功したといえないようです。私は「アルデンヌの戦い」と「国際泥棒組織」を見たけれど内容はまったく覚えていません。 その後、その名前を聞かなくなったのは1968年に映画界を引退したからのようで、「007ロシアより愛をこめて」この1本で007映画ファンのあいだで永遠のボンドガールとして大切に記憶されています。「ロシアより愛をこめて」のダニエラ・ビアンキさんは当時21才。 この昭和30年代は、日本でもそうですが男も女も若者は大人っぽかったですね。学校を出ると早く大人になろう、大人に見られるようになろうとした。青二才と見られたくなく、大人っぽい服装や容姿をめざしたようです。その逆に現代の日本人は若くて幼稚に見られるのを好むのか? タチアナ・ロマノヴァ。本人はタチアーナ・ロマノーヴァと長く伸ばして発音すると原作小説「ロシアから愛をこめて」(創元推理文庫 井上一夫 訳)に書かれています。「友だちは私をタニアと呼ぶわ」。 ソ連の殺人機関スメルシュが立案した英国情報部に大打撃をあたえる作戦。「カジノ・ロワイヤル」事件、「死ぬのは奴らだ」事件「ムーンレイカー」事件などで恨み重なる007号を抹殺するだけなら狙撃するなり暗殺するだけで済むが、それだけでは打撃にならない。ボンドにセックスがらみの不名誉な死をとげさせて醜聞をつくりあげることで英国情報部に世界的な赤恥をかかせようとする。 それにはソ連国家保安省のタチアナ・ロマノーヴァ伍長という美しい女を餌にして007号をイスタンブールにおびき寄せる。彼女は資料室で007号の記録書類にあった写真を見てボンドに恋をした。イスタンブールに転属になったので迎えに来てほしい、イギリスへの亡命を保証してくれたらソ連の最新暗号解読機スペクター(映画ではレクター)をその時に一緒に持ち出すから、と。このスペクター(外装だけで中に爆弾がしかけられている)に英国情報部はかならず食いついてくるだろうと。そして2人を殺して心中に見せかけてスキャンダル事件として暴露すること。 英国情報部側にすれば、トルコ支局長のダーコ・ケリム(映画ではケリム・ベイ)を通じて持ちかけられたこの突飛な話が本当なのか嘘なのか、たとえ罠だとしても新型スペクターは喉から手が出るくらいに欲しい。この賭けは、おりるには惜しいほど賞が大きい。そういうわけで007号ジェームズ・ボンドはイスタンブールへと向かうことになる。 映画では英国情報部員007号の敵は国際犯罪組織スペクターになっていて、ソ連と英国を争わせておいて007号を葬り去るとともに暗号解読機レクター(スペクターと同じ名前なので変えられた)を手にいれるという陰謀に変更されています。ソ連を悪役にするには遠慮があったようで、でも物語中ではソ連と英国のスパイ合戦はちゃんと描かれている。スペクターとの戦いだけでなく、亡命をめぐる、この英ソのかけひきがあるからこそスパイ映画らしさが出ています。 ボンドの敵がソ連のスメルシュから犯罪組織スペクターに変更されているのを除けば、あとは原作に忠実に製作されています。この「ロシアより愛をこめて」がイアン・フレミングの原作小説に最も忠実といえる作りになっています。 ボンドにとっては新型暗号機入手はもちろんだけれど、それ以上に自分に恋したと言ってよこしたソ連の女の子タチアナ・ロマノヴァに興味がある。助平なボンドのことだから、すぐに食いつく、その餌として謀略に利用されたのがタチアーナ・ロマノーヴァ。
2015年08月18日
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「007ロシアより愛をこめて」(1963) FROM RUSSIA WITH LOVE監督 テレンス・ヤング製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム ジョアンナ・ハーウッド撮影 テッド・ムーア音楽 ジョン・バリー主題歌 マット・モンロー(作曲ライオネル・バート)出演 ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ ロバート・ショウ、ペドロ・アルメンダリス、ロッテ・レーニャ ヴラデク・シェイバル、バーナード・リー、デスモンド・リュウェリン ロイス・マクスウェル、ユーニス・ゲイソン 本編115分 総天然色 ビスタサイズ(ヨーロピアン) 1963年イギリス映画。日本公開は、「007危機一発」のタイトルで1964年(昭和39年)4月です。 私が見たのは1972年8月のリバイバル上映で、邦題が「007ロシアより愛をこめて」に変えられたのはこの時です。 製作費100万ドルだった前作「ドクター・ノオ」に比べると倍増の200万ドルに増えたおかげか、華やかでゴージャス感のあるアクション映画になっている。このゴージャス感が007シリーズの魅力で、その意味では007らしさが出たのは、この第2作からです。 国際犯罪組織スペクターは英国海外秘密情報部の007号ジェイムズ・ボンドへの復讐(ドクター・ノオの仇討ち)と、ソ連情報部の最新暗号解読機レクターを手に入れる二兎を獲得する計画を立てる。 計画立案はスペクターのNo.5クロンスティーン(ヴラデク・シェイバル)。実行指揮はNo.3のローザ・クレッブ(ロッテ・レーニヤ)。 ソ連国家保安省の殺人機関スメルシュの大佐であるローザ・クレッブはひそかにスペクターに属していて、それを知らぬソ連の下級女性職員タチアナ・ロマノヴァ(ダニエラ・ビアンキ)を利用して007号ボンドをイスタンブールにおびき寄せる。タチアナが手引きしてレクターを盗み出し、ボンドと逃亡するのをスペクターの殺し屋レッド・グラント(ロバート・ショウ)が心中に見せかけて殺害、英ソの情報員の心中事件というスキャンダルを作り上げる、という計画です。 英国情報部長Mのもとにトルコ支局長ケリム・ベイから、タチアナ・ロマノヴァというソ連保安省で働く娘がボンドの写真を見て一目惚れしたので彼に会わせてくれと、ロンドンに連れて逃げてくれたらソ連の最新暗号解読機を盗み出すといって来たが、どうだろうかとの連絡を受け、Mもボンドも話がうますぎて敵の罠が見え見えとは思ったが、暗号解読機入手の機会でもあると判断し、ボンドはイスタンブールへと向かうことに。 はたしてロマノヴァが現われた。そして解読機も呆気ないばかりに盗み出せた。「はずかしめて殺すべし」というスペクターの魔手が、イスタンブールから西側へと走るオリエント急行内でボンドに迫る。「スパイ」とは敵国の機密を盗んで自国へもたらす者。他国のスパイが自国から機密を持ちだすのを防ぐ(防諜)ことを任務とする者の2種類。007号の場合は前者ですが、このようなスパイ本来の活動を描いたのがスパイ映画だとすれば、この「ロシアより愛をこめて」がシリーズ中では最もスパイ映画らしい作品といえます。 スパイの任務は犯罪組織を相手に戦うことではないはずで、そんなのは警察にまかせておけばいいこと。 英国海外秘密情報部員007号の敵は東西冷戦の時代だからソ連の情報機関と暗殺機関であるはずで、だから、本作では敵が犯罪組織スペクターになっているけれど、その背後ではソ連との諜報戦がおこなわれているのが描かれています。 この英ソ、東西陣営のスパイ戦がイスタンブールでおこなわれていて、トルコ支局長のケリム・ベイが良い感じで雰囲気を出している。演じているペドロ・アルメンダリスの好演が印象に強く残ります。 ボンドと2人でソ連の手先であるブルガリア人のクリレンコを暗殺するために、深夜に、まずケリム・ベイの息子たちが警官に変装して訪問し、2階の隠し窓から逃げ出すクリレンコを暗視スコープ付ライフル(アーマライトAR-7)で狙撃する場面のペドロ・アルメンダリスは最高です。 俳優ペドロ・アルメンダリスさんはこの時末期ガンに冒されていて、苦痛に耐えながらの撮影だったそうです。出演シーンを優先して撮影し、すぐに入院したのですが拳銃自殺をとげたことは有名なエピソード。 舞台となるイスタンブールの異国情緒ある風景とオリエント急行。オリエント急行内で殺し屋グラントとの格闘のあと、トラックで逃げ、ヘリコプターに追われ、モーターボートでの追跡戦。それが終わって、ローザ・クレッブの毒刃が襲いかかる。畳みかけるようなアクションの連続は、この映画を初めて見たとき、その面白さに胸を躍らせたものです。
2015年08月17日
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「007製作50周年記念版ブルーレイBOX」発売記念として、2012年10月におこなわれた「歴代ボンドガール総選挙」の結果は以下の通りです。 総得票数 10392票順位 役名 女優名 得票数1 タチアナ・ロマノヴァ ダニエラ・ビアンキ 1316票2 ヴェスパー・リンド エヴァ・グリーン 12533 キッシー鈴木 浜美枝 5104 エレクトラ・キング ソフィー・マルソー 4885 M ジュディ・デンチ 3906 ジンクス ハル・ベリー 3637 カミーユ オルガ・キュリレンコ 3308 メリナ・ハヴロック キャロル・ブーケ 2879 ウェイ・リン ミシェル・ヨー 28710 アキ 若林映子 27211 アニヤ・アマソヴァ バーバラ・バック 255票12 クリスマス・ジョーンズ デニス・リチャーズ 25013 ソリテア ジェーン・シーモア 23814 テレサ・ボンド ダイアナ・リグ 23315 メイ・デイ グレイス・ジョーンズ 22316 カーラ・ミロヴィ マリアム・ダボ 204 17 ハニー・ライダー ウルスラ・アンドレス 20318 マネーペニー ロイス・マクスウェル 18919 オーシャンクラブの受付嬢(カジノ・ロワイヤル) クリスティーナ・コール 17620 ナターリア・シミョノヴァ イザベラ・スコルプコ 17221 ローザ・クレッブ ロッテ・レーニヤ 171票22 ルペ・ラモーラ タリア・ソト 16323 ドミノ・ダーヴァル クロディーヌ・オージェ 15524 ゼニア・オナトップ ファムケ・ヤンセン 15325 ミランダ・フロスト ロザムンド・パイク 14926 メアリー・グッドナイト ブリット・エクランド 14327 ステイシー・サットン タニア・ロバーツ 14128 シルヴィア・トレンチ ユーニス・ゲイソン 13629 山小屋の女KGB(私を愛したスパイ) スー・ヴァナー 13030 ナオミ キャロライン・マンロー 11131 ホリー・グッドヘッド ロイス・チャイルズ 108票32 ジル・マスターソン シャーリー・イートン 10633 フィオナ・ヴォルぺ ルチアナ・パルッツィ 10034 ソランジュ(カジノ・ロワイヤル) カテリーナ・ムリーノ 9535 リスル(ユア・アイズ・オンリー) カサンドラ・ハリス 7936 マネーペニー(二代目) キャロライン・ブリス 7737 パム・ブーヴィエ キャリー・ローウェル 7038 マネーペニー(三代目) サマンサ・ボンド 6439 ティファニー・ケイス ジル・セント・ジョン 6340 マグダ クリスティーナ・ウェイボーン 6241 シガー・ガール(ワールド・イズ・ノット・イナフ) マリア・グラッツィア・クチノッタ 62票42 プッシー・ガロア オナー・ブラックマン 5843 パリス・カーヴァー テリー・ハッチャー 5844 ストロベリー・フィールズ(慰めの報酬) ジェマ・アータートン 5446 オクトパシー モード・アダムス 4547 アンドレア・アンダース モード・アダムス 4248 ビビ・ダール(ユア・アイズ・オンリー) リン・ホリー・ジョンソン 4249 コリンヌ・デュフォー コリンヌ・クレリー 3950 プレンティ・オトゥール ラナ・ウッド 27票 このアンケート結果からは見えてくるものが何もないようです。 第1位の「ロシアより愛をこめて」のタチアナ・ロマノヴァ、 ダニエラ・ビアンキさんは妥当なのですが、第2位以下はムチャクチャというか支離滅裂というか、シッチャカメッチャカな感じがします。 なかにはMのおばさんやミス・マネーペニー、ローザ・クレッブの怖いおばさんまでが含まれていて、ボンドガールの定義もなにもあったものではない。 ボンドガールとは「物語中に登場するボンドのガールフレンド、または敵の女スパイで、初めは敵であってもボンドの魅力に参って味方になる。またはボンドと同じ敵を追う諜報機関の女性諜報員で、ボンドと協力したり出し抜いたりしながら最後はボンドと仲良しになる。あるいはボンドとは最後まで敵であり戦って死ぬ悪役の女性キャラ」のこと。 明確な定義があるわけではなくても、ボンドガールとは以上のようなキャラだとすれば、ミス・マネーペニーとMはボンドガールからはずすべきなのでは。女性の登場人物がすべてボンドガールというのは間違っています。ある程度のボンドとの恋愛関係があり、観客のあこがれの対象であるのが条件ではないかと。 そんなわけで、私の個人的趣味で選んだ10人のボンドガールです。「ロシアより愛をこめて」のタチアナ・ロマノヴァ(ダニエラ・ビアンキ)「ゴールドフィンガー」のプッシー・ガロア(オナー・ブラックマン)「サンダーボール作戦」のドミノ・ダーヴァル(クロディーヌ・オージェ)「消されたライセンス」のパム・ブーヴィエ(キャリー・ローウェル)「ユア・アイズ・オンリー」のメリナ・ハヴロック(キャロル・ブーケ)「トゥモロー・ネバー・ダイ」ウェイ・リン(ミシェル・ヨー)「007は二度死ぬ」のアキ(若林映子)「オクトパシー」のマグダ(クリスティーナ・ウェイボーン)「私を愛したスパイ」のナオミ(キャロライン・マンロー)「オクトパシー」のビアンカ(ティナ・ハドソン。上の50位内には入っていない) こんなところ、でしょうか。
2015年08月16日
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ストラングウェイズ中佐が定時連絡を絶ち、女性秘書とともに行方不明となるのが映画「007ドクター・ノオ」事件の発端です。 英国秘密情報部のカリブ海域主任ストラングウェイズ中佐は「死ぬのは奴らだ」事件で007号ジェイムズ・ボンドといっしょに働いた人物。 やせた愛嬌のある男で、年は三十五、六、英国海軍特別班の少佐だった男である。片目に黒い眼帯をかけ、駆逐艦の艦橋になじみのありそうな精悍な顔立ちをしていた(「死ぬのは奴らだ」ハヤカワ文庫より)。 そのような人物が女と駆け落ちするとは信じられないと、ボンドは思っている。 ボンドがジャマイカへ派遣されたのはストラングウェイズ中佐とその秘書が失踪したから。みんなは二人が駆け落ちしたと思ってるらしいが、どうやら二人は殺されたようで、それはクラブ島の中国人、ノオ博士の仕わざだとボンドは思っている。ストラングウェイズはノオ博士のやってることに首をつっこんだ、だから殺されたと。 そしてボンドと地元の漁師クォレル(「死ぬのは奴らだ」にも登場)がノオ博士のクラブ島へこっそりと上陸し、そこで出会ったのがヒロイン ハニーチャイル・ライダー(アーシュラ・アンドレス)です。 事件には何の関係もなく、ただ貝殻を拾いにきただけ。海岸で貝殻を採っているときにボンドと出会います。キングストンへ持っていけば高く買い取ってくれるという。 彼女は、この事件に巻き込まれただけで、でも父親をノオ博士に殺されたと言う。 ノオ博士は「人間はどこまで苦痛に耐えられるか?」の実験をやっていて、彼女を捕らえて実験台にします。クラブ島には大きな蟹がたくさんいて、群れをなして集団移動する。蟹は進路にあるものを食い尽くしていく習性を持っていて、その進路にハニーを裸にして縛り付ける。 この場面も映画に予定されたのですが、氷詰めにして運んだせいか、蟹が思うように動いてくれず、怖い感じが出なかったので中止されたとか。けっきょく映画ではただの水責めになって、危機も何もなく簡単にボンドに救出される。 映画「007シリーズ」のボンドガールとしては上位の人気があると思われるハニーチャイルです。演じるのはアーシュラ・アンドレスさん。 現在、なぜか?「ウルスラ・アンドレス」と表記されます。 ウルスラ・アンドレス Ursula Andress 1936年3月19日生まれ。スイスのベルン出身。 かつては「アーシュラ・アンドレス」といっていたのですが、いつからか?「ウルスラ」になった。思い返してみるとフランス製西部劇「レッド・サン」(71年。この作品もテレンス・ヤングが監督している)からです。「ドクター・ノオ」DVDとブルーレイソフトに収録のメイキングでは「アーシュラ」または「アースラ」と発音されているので、いくらなんでも「ウルスラ」はないだろうにと思います。昔どおりのアーシュラ・アンドレスでいいんじゃないかな。
2015年08月15日
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ジャマイカとキューバの間にあるクラブ礁島(クラブ・キー)という島に、絶滅したとされるベニヘラサギという鳥の一群がいたと報告される。そこは英国保護領で鳥糞石(グアノ)採掘の島だったのが採算がとれないことで中止されて以来、長年無人島だった。鳥類保護団体(オーデュポン協会)がそこの一部を借りてヘラサギの禁猟区として監視員を置いた。 ベニヘラサギは繁殖して増え、その後の第二次大戦でグアノの値が上がり、ある男がジャマイカ政府と交渉して島を買い取った。鳥の禁猟区を侵害しないとの条件で、その男は安い労働者を送り込んでグアノ採掘で利益を上げたという。 この島を買い取ったという男がドクター・ノオ。 彼は鳥の保護区を大目に見て、学者がやってきて調査したりしても干渉しなかったのが、ある日、その保護区にホテルを建設して鳥好きの観光客を呼び集める計画がもちあがる。さすがにこれはドクター・ノオも見過ごせない。 ドクター・ノオは沼沢地用の車を改造して火炎放射器を取り付けて、鳥が怖がって逃げるような龍(ドラゴン)型の車を作って、鳥の巣を焼き払い、監視員のキャンプも焼き払った。この時の監視員の一人が大火傷を負って逃げ、龍に襲われたと報告した。 この報告がもとになって英国海外秘密情報部ジャマイカ支局長のストラングウェイズ中佐がクラブ島の調査を始めた。そのために彼と秘書はドクター・ノオの殺し屋に消された。「100万ドルだよ、ボンド君」 ジェイムズ・ボンドとハニーがノオ博士と会うことになり、エレベーターから出て、居間へ通され、そこの壁面いっぱいにガラスが張られ泳いでいる魚など海底の様子が見える。その光景に驚くボンドに現れたノオ博士が背後から言う台詞です。「いくらかかったろうと考えていたんじゃないかね」 ドクター・ノオは中国人の暗黒街組織に属していて会計係をやっていた。組織の抗争が起こり、そのどさくさにまぎれて100万ドルの金を持ち逃げした。追っ手に捕まって、両手を切断され、心臓に銃弾を撃ち込まれたが、彼は心臓が右にあったために一命をとりとめた。100万ドルを切手に代えて第二次大戦のインフレをのりこえ、ジャマイカのクラブ礁島を買い取った。 彼は島を買って、そこに王国を築き上げた。 ジュリアス・ノオ博士 ドイツ人と中国人の混血でドクター・ノオことノオ博士。ボンドは彼を「偏執狂だ」という。それに対して「偏執狂というのは天賦の才能と同じく貴重なものだ。そうだよボンド君、私は力に対する偏執狂だ」と認める。 他人に対する生殺与奪の絶対権力者をめざして、島に王国を築き上げる。 権力志向と、もう一つノオ博士が関心があること。 それは、「人間はどこまで苦痛に耐えられるか」ということ。 ボンドとハニーを捕らえて、その実験をおこなおうとします。 大群で群れをなして集団移動する蟹(クラブ)は進路にあるものを食い尽くして進むという。その蟹の通り道にハニーを裸にして縛り付け、どのくらい絶えられるか?と。 通気口を改良して作った障害コースにボンドを追いやります。 通気口には様々な仕掛けが施されていて、関門がある。ボンドは電流の通った金網をあけて中に入り、暗く狭いシャフト内を腹ばいになって進む。横穴、滑る縦穴に傷だらけになり、服が焦げつくくらいに加熱され焼けた壁面。うごめく無数の毒蜘蛛タランチュラの群れを抜けると、巨大怪物イカ クラーケンが待つ入り江に真っ逆さまに落ちる。 この障害コースをボンドが通る場面は原作小説「ドクター・ノオ」では最大の見せ場であり、印象に強く残ります。この場面が映画ではごくあっさりと省略されていて、ボンドは難なく脱出してしまう。 ドクター・ノオの王国であるクラブ礁島は鳥糞石(グアノ)の宝庫で、それを掘って財源にしているのですが、その重要なグアノ採掘も完全にまったく省略されています。 原作小説と比べると映画のほうはごくあっさりと単純な設定で、ドクター・ノオの人物像もあまり深みがありません。演じるジョセフ・ワイズマンは気分を出して役になりきっていますが。 クラブ礁島に上陸する者を脅すために登場する龍型の車両。ボンドの案内役クォレルは「龍」を信じて恐れているけど、ボンドはそんな物がいるはずがないと。 この龍型装甲車を、チャチだといってバカにする人がいますが、それは大きな間違いでしょう。 そもそもが鳥を追い払う目的で作った龍型装甲車です。火炎放射器でボーッ!と鳥の巣を焼き払う。これは「ドクター・ノオ」ではなくてはならないアイテムであり、それを登場させただけでも褒めないとならないのに。
2015年08月14日
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「007 ドクター・ノオ」(1962) DR. NO監督 テレンス・ヤング製作 ハリー・サルツマン アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム バークレイ・マーサー ジョアンナ・ハーウッド撮影 テッド・ムーア 音楽 モンティ・ノーマン、ジョン・バリー出演 ショーン・コネリー、アーシュラ・アンドレス ジョセフ・ワイズマン、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル ジャック・ロード、アンソニー・ドーソン、ジョン・キッツミューラー 本編110分 総天然色 ビスタサイズ(ヨーロピアン) 映画007シリーズの第1作「ドクター・ノオ」のブルーレイソフトを鑑賞しました。 1972年12月リバイバル公開され、私が見たのは翌年1月ですが、それ以来、テレビ放送、VHSビデオやレーザーディスク、DVDで何度も見ている作品で、今回のブルーレイでの鑑賞は劇場公開時に匹敵(それ以上かも?)する最高画質と思われます。 香林坊にあったパリー菊水でのリバイバル上映はモノラル音声だったと思うのですが、音が小さく、見ている間じゅう、ボソボソした感じがして、もう少しボリュームを上げて欲しいと思った記憶があります。 現在発売中のDVDは5.1チャンネルサラウンド化されていて(レンタルのものは旧盤でモノラル音声)、格段に良くなっているけれど、元がモノラルなので大した違いはないのかもしれない。 音声はともかく、画質は最高です。ジャマイカの抜けるような青い海と空の美しさ。これが50年以上も昔の映画かと信じられないくらい。外国映画のフィルム保存環境と修復技術はすばらしいものがあるようです。 アメリカのミサイル実験が何者かに妨害される事件が起き、その妨害電波がジャマイカ近くから出されたと判明。その調査にあたっていた現地の英国情報部支局長ストラングウェイズと女性秘書が乞食を装った3人の男に射殺される。二人が行方不明となり、交信が途絶えた非常事態を重んじた英国海外秘密情報部は、殺しの番号「007」を持つ情報部員ジェイムズ・ボンド(ショーン・コネリー)を現地に派遣する。 ボンドは敵の魔手をかわしながら、やがて浮かび上がったのは、クラブ・キー(クラブ島)を所有支配する謎の中国人ドクター・ノオ(ジョゼフ・ワイズマン)の存在だった。 1962年(昭和37年)イギリス映画で、日本公開は昭和38年(1963)6月。 昭和38年は東京オリンピックの前年にあたり、当時は「007号」も「英国海外秘密情報部」も日本ではなじみがないものだったのでは。 映画の中で「MI-6」(エムアイ・シックス)と台詞(日本語吹替も)でも字幕でも言っていますが、これは現在の新しい翻訳で、公開時の高瀬鎮夫さんの翻訳では使われていなかったはずです。「英国海外秘密情報部」と「ユニヴァーサル貿易」であり、「007」も「ダブルオーセブン」ではなく「ゼロゼロセブン」と言っていた。 当時、小学生だった私は、このような外国映画を見られる環境になく、のちに大ヒットした第3作目の「ゴールドフィンガー」が評判になっていた時でさえ「007」を見たことがなくて、ギャング映画かと思っていたくらいです。 一般には知られていなかったであろう「英国海外秘密情報部員007号」ですが、ミステリ小説ファンには知られていたであろうと思われるのは、日本でイアン・フレミングさんの原作小説が初めて刊行されたのが、第2作の「死ぬのは奴らだ(1954)」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)の、昭和32年(1957)9月だからです。 東京創元社の創元推理文庫から第4作「ダイヤモンドは永遠に」が出たのが昭和35年(1960)7月。 第1作「カジノ・ロワイヤル」(1953)が同じく創元推理文庫から昭和38年(1963)6月。 第3作「ムーンレイカー」(1955)が昭和39年(1964)3月。 第5作「ロシアから愛をこめて」(1957)が昭和39年4月に刊行。「ドクター・ノオ」(1958)は第6作にあたり、ハヤカワ・ポケット・ミステリから刊行されたのは昭和34年(1959)だから、映画化される数年前にはすでに日本のミステリファンたちが読んでいたことになります。 映画シリーズ第1作「ドクター・ノオ」。公開時の邦題は「007は殺しの番号」です。 製作費100万ドルの低予算で作られたB級作品で、主演のショーン・コネリーも無名俳優でした。 製作者のハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリにとっては成功するか失敗するか、まったくの未知数でしたが、このようなスパイ・アクション映画がそれまではなかったことで新たなジャンルを開発したことになり、大成功をおさめました。
2015年08月13日
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「007 私を愛したスパイ」(1977) THE SPY WHO LOVED ME監督 ルイス・ギルバート製作 アルバート・R・ブロッコリ原作 イアン・フレミング脚本 クリストファー・ウッド リチャード・メイボーム撮影 クロード・ルノワール音楽 マーヴィン・ハムリッシュ主題歌 カーリー・サイモン 出演 ロジャー・ムーア、バーバラ・バック クルト・ユルゲンス、キャロライン・マンロー リチャード・キール、ウォルター・ゴテル 本編125分 総天然色 シネマスコープサイズ 字幕翻訳:菊池浩司 吹替翻訳:桜井裕子 劇場公開以来、何度目かの鑑賞をすると、前には気づかなかったことに気づいたりします。 今作の悪役はカール・ストロンバーグという名の海運業者。海底に秘密基地(タコのような形のドーム)を設けていて、イギリス、ソ連、アメリカの原子力潜水艦を拿捕し、搭載している核ミサイルを発射して世界大戦を起こそうとしている。 現代では見られなくなった誇大妄想狂的な、世界征服をたくらむ悪役。昔はこのような悪役ばかりだったけれど、近年は現実的になったのか麻薬組織やテロ組織など、映画に夢がなくなったのか、そんなのばかりになった。 演じるのはドイツの大物俳優クルト・ユルゲンスさん。「眼下の敵」(57)でロバート・ミッチャムの駆逐艦長と虚々実々の戦いをするUボートの艦長の役が印象に残っています(写真)。「史上最大の作戦」「空軍大戦略」「ネレトバの戦い」など、かつては戦争映画で貴族的なドイツ軍人役で顔を見ましたね。 007シリーズの正統派悪役として、大物俳優の出演です。 イギリスの原潜とソ連の原潜が同時期に消息を絶つ。英国情報部は007号を、ソ連のKGBはトリプルXと呼ばれるアニヤ・アマソヴァ少佐(バーバラ・バック)を事件の調査に派遣します。 東西の諜報組織のエージェントが共通の敵を相手に協力する、東西陣営の緊張緩和時代に作られた007映画です。この頃から007の敵が東側のスパイではなくなってゆく。 面白い話ですが、悪役カール・ストロンバーグの計画がずさんな感じがして、英ソの情報機関にすぐに尻尾をつかまれます。 科学者を雇って原潜航跡追跡システムを開発させ、英ソの原潜を拿捕した、そこまではいいが、その追跡システムの機密を配下の女が勝手に持ち出して、競売にかけようとした。裏切り者としてすぐにサメの餌食にして処刑したストロンバーグですが、どこか間が抜けている。 その売りに出された原潜航跡追跡システムを収めたマイクロフィルムを追って007号とトリプルXがエジプトのカイロへと向かう。そこに現れたのがストロンバーグの殺し屋ジョーズ(リチャード・キール)。 娯楽アクションお気楽映画としては楽しく鑑賞できるけれども、突っ込み所が満載? 大男のジョーズ(リチャード・キール)。口に鋼鉄(合金か?)の歯をつけていて、相手に噛みついて殺すのだが、殺しの方法としては効率的ではないような。この人のような巨体の力持ちなら絞め殺す、殴り殺す、のほうが簡単だろうに。漫画チックな悪役ジョーズとして子供には受けるだろうけどね。 久しぶりにじっくりと鑑賞した「私を愛したスパイ」。お子様向けアクションというか、ファミリー向けアクション映画です。本作から製作者としてずっと一緒にやってきたハリー・サルツマンさんが手を引いて、アルバート・R・ブロッコリさんの単独製作になっています。
2015年04月28日
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1978年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位 「スター・ウォーズ」 43億8000万円 2位 「未知との遭遇」 32億9000万円 3位 「007私を愛したスパイ」 31億5000万円 4位 「サタデー・ナイト・フィーバー」 19億2000万円 5位 「ブルース・リー死亡遊戯」 14億5000万円 6位 「コンボイ」 14億5000万円 7位 「ジョーイ」 11億2000万円 8位 「カプリコン・1」 8億円 9位 「オルカ」 6億4000万円 10位 「ザ・ドライバー」 5億1000万円 映画007シリーズ第10作「私を愛したスパイ」のブルーレイソフトを鑑賞しました。 以下は2012年9月30日に書いたものの再掲です(手抜きでゴメンなさい) 10月19日に007シリーズ全22作を収録したブルーレイBOXが発売されるそうです。 これまでブルーレイ化されていなかった「007は二度死ぬ」や「女王陛下の007」「私を愛したスパイ」「オクトパシー」などが入っていて、いいなあと思うのですが、既発売の作品をいくつか持っていて重複してしまうので単品発売されるまで待つつもり。 シリーズ第10作「私を愛したスパイ」(1977)。日本公開は1977年12月10日となっているけれど、私はもっと早くて夏ごろに見ています(金沢ロキシー劇場)。地方の方が早かったのか? 英ソの原子力潜水艦が相次いで行方不明になるという事件が発生。東西の緊張が高まり、英国情報部は007号ジェイムズボンド(ロジャー・ムーア)に調査を命じます。 同じ頃、ソ連でも自国の原潜が消息を絶ったというのでKGBエージェントのアニヤ(バーバラ・バック)がその捜索にあたる。 英ソの情報部員2人は、それぞれが手掛かりを追う中で出会い、共同で捜査にあたることになる。 地中海に海底基地を持つ海運業のストロンバーグ(クルト・ユルゲンス)が拿捕した原潜の核ミサイルを使って世界大戦を引き起こし、世界征服をたくらんでいることが判明する。 ストロンバーグの巨大タンカー「リパラス号」船内に消息を絶っていた英ソの潜水艦を発見したボンドは捕虜になっていた原潜乗組員を解放し、潜水艦奪還と核ミサイル阻止をはかる。 予告編はこちらです。 別バージョンの予告編です。 Q開発のボンドカー水陸両用ロータス・エスプリが登場。鋼鉄の歯を持つ敵の用心棒ジョーズなど、娯楽映画として豪華な一作になっています。 監督はルイス・ギルバート。次々作から監督を務めることになるジョン・グレンさんが編集を担当している。 ボンドガールにはバーバラ・バックさん。そしてもうひとり、われらがキャロライン・マンローさん(写真)が敵のヘリコ・パイロットとして出演。ボンドのロータス・エスプリを空から追跡して銃撃する。このシーンは予告編でも見られます。ヘリコからボンドに向かってウィンクするのがたまらんですねぇ。 この頃のロジャー・ムーアさんのボンドは板についています。このあと「ムーンレイカー」「ユア・アイズ・オンリー」「オクトパシー」「美しき獲物たち」と続く作品の鑑賞は、私には至福の時を味わえるものです。 これこそが「007」の豪華絢爛な世界。最近の、007の楽しさを失ってしまった、ただのありふれたアクション映画に堕してしまった、名ばかりの007にはため息が出るばかりです。 2012年10月19日に「007シリーズ」全22作のブルーレイBOXが発売されると書いていますが、現在では各作品が単品で発売されていて、価格も1500円前後になっています。DVDもブルーレイも価格がそれほどかわらないので、買うなら断然ブルーレイがいいですね。 つづく。
2015年04月27日
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タニア・ロバーツ Tanya Roberts 1955年10月15日生まれ アメリカ ニューヨーク市ブロンクス出身「007美しき獲物たち」(85)のメイン・ボンドガールです。 タニア・ロバーツさんといえば、私の年代では「地上最強の美女たち!チャーリーズ・エンジェル」の第5シーズン(日本での放送は1982年)です。 ジュリー・ロジャースという役で、あとの2人はジャクリン・スミスさんのケリー・ギャレット、この人は第1シーズンからのお馴染みで、シェリル・ラッドさんのクリス・マンローは第2シーズンからのレギュラーです。「チャーリーズ・エンジェル」の時のタニア・ロバーツさんはたしか黒髪がダークブラウンの髪だったのに、今回見た「007美しき獲物たち」では金髪になっていて、なんか変な感じ。「007美しき獲物たち」ではステイシー・サットンという役で、祖父の「サットン石油」を相続したのですが、それを悪党のゾリン(クリストファー・ウォーケン)に乗っ取られてしまう。訴訟を起こして戦うのですが、ゾリンから500万ドルの小切手を渡されて手を引けと脅迫される。 この役は古いタイプのヒロインで、1985年の映画としては物足りないキャラクターです。「エイリアン」(1979)くらいから始まった戦うヒロイン、男に守ってもらうことを期待せずに、自分の身は自分で守れる強いヒロインの時代が始まっているのに、古い従来どうりのヒロインになっています。 新しい形のヒロインとして女殺し屋のメイデイ(グレイス・ジョーンズ)がいて強烈な印象を残しているので、そのように描かざるをえなかったのでしょうか? ところで、「美しき獲物たち」はロジャー・ムーアさんの「007号」最後の出演ですが、ロジャー・ムーアさんは共演のボンドガールたちのお母さんが自分と同じくらいの年齢だということに気づいて、自らボンド役を引退する決心をしたそうです。 何度目かの「美しき獲物たち」鑑賞ですが、いま見ると冒頭のエッフェル塔からパラシュートで飛ぶスタントなど、よく出来ています。ロジャー・ムーアさんのアクションにキレがなくなったけれど、華やかさはさすがです。現在の新しい007映画にはこの華やかさが感じられないんですね。
2014年11月26日
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1985年度外国映画興行成績です。(金額は配給収入)1位 「ゴーストバスターズ」 40億9900万円 2位 「グレムリン」 31億820万 3位 「ランボー 怒りの脱出」 24億5000万 4位 「ネバーエンディング・ストーリー」 22億 5位 「007 美しき獲物たち」 12億 6位 「スパルタンX」 11億1000万 7位 「ビバリーヒルズ・コップ」 10億2000万 8位 「コットンクラブ」 8億7300万 9位 「アマデウス」 8億200万 10位 「マッドマックス サンダードーム」 7億6300万円 この年は「ゴーストバスターズ」と「グレムリン」が大ヒット。それに比べると007シリーズ第14作「美しき獲物たち」はちょっと影が薄いようです。 配収トップ10に入るのは、腐っても鯛とは言い過ぎかも知れないけれども、よく言えばさすが007シリーズ、まだまだ人気があると言えるし、悪く言えば一頃のような人気がなくなったとも言えるようです。「007 美しき獲物たち」(1985)イギリス映画 A VIEW TO A KILL監督 ジョン・グレン製作 アルバート・R・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン原作 イアン・フレミング脚本 リチャード・メイボーム、マイケル・G・ウィルソン撮影 アラン・ヒューム音楽 ジョン・バリー主題歌 デュラン・デュラン出演 ロジャー・ムーア、クリストファー・ウォーケン、タニア・ロバーツ グレイス・ジョーンズ、パトリック・マクニー、アリソン・ドゥーディ デスモンド・リュウェリン、ロバート・ブラウン、ロイス・マクスウェル ウォルター・ゴテル、ドルフ・ラングレン 本編131分 総天然色 シネマスコープサイズ シリコン・バレーを水没させて、エレクトロニクス産業界を独占しようとする悪役マックス・ゾリン(クリストファー・ウォーケン)の陰謀。人体実験の結果生まれたという、少々どころかかなりイカレた悪役キャラです。 ゾリンのボディガード兼殺し屋メイデイを演じるグレイス・ジョーンズが強く印象に残り、この女殺し屋はボンドガールではなく、オッド・ジョブ(ハロルド坂田)やジョーズ(リチャ-ド・キール)の位置にあたるものです。 金持ち貴族の道楽者に扮したボンドが競馬場でゾリンに接近するのですが、DVDでは広川太一郎さんの愉快な日本語吹替えが絶品で、ボンドガールのタニア・ロバーツさんも吹替えの声のほうが可愛いです。 エッフェル塔や英国のアスコット競馬場、サンフランシスコの金門橋などゴージャス感がある仕上がりですが、今作が最後のボンド役となったロジャー・ムーアはやはり年齢を感じさせてしまうようです。「死ぬのは奴らだ」1973年7月28日公開 ロジャー・ムーア45歳「黄金銃を持つ男」1974年12月21日公開「私を愛したスパイ」1977年12月24日公開「ムーンレイカー」1979年12月8日公開「ユア・アイズ・オンリー」1981年7月11日公開「オクトパシー」1983年7月2日公開「美しき獲物たち」1985年7月6日公開 ロジャー・ムーア57歳「ダイヤモンドは永遠に」(71)のショーン・コネリーさんを見た時は年取ったなあ、と思ったのですがまだ41歳だった。 ロジャー・ムーアさんが「死ぬのは奴らだ」で初めて007号ジェイムズ・ボンドを演じたときは若々しくスマートな、英国情報部員というよりも私立探偵といった感じだったけれども、この時は45歳で、なんとショーン・コネリーさんよりも年上のボンドだったんですねぇ。
2014年11月25日
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映画「007シリーズ」の最高傑作は、第2作の「ロシアより愛をこめて(危機一発)」(1963)。これは、どなたにとっても異存のないところでしょう。 テレンス・ヤング監督の手慣れた演出は、主演のショーン・コネリーだけでなくヒロインのタチアナ・ロマノーヴァ役のダニエラ・ビアンキ、イスタンブール支局長のペドロ・アルメンダリス、敵の殺し屋を冷酷に演じるロバート・ショウなどの細かな表情やしぐさにまで丁寧に及んでいるのが見て取られます。 とくにダニエラ・ビアンキさんの顔の表情など、とても魅力的。 その実感のこもった熱烈なキスシーンは、見ていて思わず「おいしそう」とつぶやいてしまい、カミさんに叱られたことも(笑)。やるじゃないか、テレンス・ヤング監督。 映画におけるジェイムズ・ボンドの造型はテレンス・ヤング監督が「007は殺しの番号」(62)と、この「危機一発」(63)で作り上げたと言えます。 その流れを受けてのシリーズ第3作ということでの「ゴールドフィンガー」(1964)。 監督が交代してガイ・ハミルトンになって、ふつうのシリーズ物なら第3作ともなれば出来が落ちていくものだけれど、「007シリーズ」は第3作目によってもう一段ステップアップしている。 冷酷残忍な敵の首領。そのボディガード兼殺し屋の怪力男。 Qが開発した秘密兵器。魅力的なボンドガールと女好きなボンド。ところどころのユーモア。 絢爛としたゴージャスさと漫画的なおもしろさが増した、この第3作「ゴールドフィンガー」によって「007」の基本定型ができあがったと言えます。「ボンド君、シカゴのことわざにこういうのがある。“最初は行きずり、二度目は偶然、三回目からは仇同士” というんだ」 イアン・フレミングの原作小説でのゴールドフィンガーの台詞です。 メキシコでの任務を果たした後、マイアミでゴールドフィンガーのカードでのイカサマを見抜いて一泡吹かせる。 その後、英国のゴルフ場での最接触。ここでもゴールドフィンガーのインチキを見破って第2ラウンド。そしてロールスロイスに隠した金の密輸を追跡してスイスへと舞台が移り、ゴールドフィンガーの冶金工場に潜入して捕らえられたのが第3ラウンド。 行きずり→偶然→仇同士。ボンドにとっては最初から任務なのですが。 捕らえられたボンドがゴールドフィンガーの自家用ジェット機でアメリカへ。ケンタッキーの牧場が敵のアジトになっていて、ここからフォートノックスでの大陰謀(核爆発で金塊を汚染し、市場価格操作と西側経済を混乱させる)と活劇。ジェット機内での最後の一騎打ちへと。 本編110分。アクションとサスペンスとユーモアが詰め込まれていて退屈する暇がない展開です。110分という長すぎない時間もちょうど良い。 そんなわけで、映画「007シリーズ」の最高作は第2作「ロシアより愛をこめて(危機一発)」と第3作「ゴールドフィンガー」。 あと加えるならば第4作「サンダーボール作戦」(65)と、第6作「女王陛下の007」(69)。 この4作品がシリーズ屈指の傑作です。「007らしさ」といえばこの不動の4作品がその代表例ですね。 昨夜、もう何度目かの、10回以上は見ている「ゴールドフィンガー」をDVD鑑賞。 何度見てもおもしろく、最初から最後まであきることなく見てしまいました。 現在レンタルされているDVDは旧盤で、音声はモノラル。しかも画質もよくないし。 市販されているものはリマスター版で、発色も良く、画質もずっと向上され、音声は5.1chサラウンド。若山弦蔵さんの日本語吹替えが入っていて実売価格990円。ブルーレイは1490円です。 スイスの絶景や英国のゴルフ場、金塊貯蔵庫フォートノックスでのアクションなど、名場面を堪能するには古いレンタルDVDではダメですね。
2013年12月26日
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「永遠のサントラ BEST&MORE 999」の「007/ロシアより愛をこめて」を買いました。「007危機一発」のタイトルで日本公開されたのは1964年4月。原題は「FROM RUSSIA WITH LOVE」 以前に書きましたが、私が初めて見たのは1972年8月のリバイバル公開(香林坊のパリー菊水)で、この時に「ロシアより愛をこめて」に改題された。 この「ロシアより愛をこめて」(63)と「ゴールドフィンガー」(64)、「サンダーボール作戦」(65)、「女王陛下の007」(69)、007号の映画はこの4作品に尽きるといえそうです。 現在の最新作「スカイフォール」(12)などは、007の世界からほど遠い別世界の物です。 で、最高傑作ともされる「ロシアより愛をこめて」。そのサントラCDが999円(期間限定)で発売された。これは007ファンだったら買わずにいられない。 音楽担当のジョン・バリーさんによる「007の音楽の世界」を堪能できます。1. オープニング・タイトル 2. タニアとクレブ3. セント・ソフィアの出会い4. ゴールデン・ホーン5. ガール・トラブル6. ボンドとタニア7. 007のテーマ8. ジプシー・キャンプ9. グラントの死10. ロシアより愛をこめて11. 妖怪の島12. 嘆きのギター13. 水中へ~スマーシュのアクション14. ボンドとボンゴ15. 忍び寄り16. ライラのダンス17. ケリムの死18. 大団円 これは素晴らしい音楽の世界です。まさにジョン・バリーさんあってこその「007」ではないか。 緊張感をたたえた迫力あるスコアから、一転して流麗なラブ・テーマへと。 全18曲。約37分くらいの収録です。 エンディングに位置するマット・モンローさんが甘く歌う「ロシアより愛をこめて」が真ん中の10曲目に入っているのは、解説書によると、レコード盤の時にはA面、B面があって、B面のトップにも主題曲を入れる必要があったのではないか?、とのこと。 現在は映画本編のDVDが990円、ブルーレイが1490円。007ファンは、それに加えてこのサントラCDをコレクションに、というところでしょうか。
2013年10月12日
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映画007シリーズの第6作「女王陛下の007」原題「On Her Majesty's Secret Service」は私がシリーズ中で最も好きな作品で、最も愛すべき作品でもあり、ジョージ・レイゼンビーさんは現在まででも最高のボンド役者だと思っています。 最新作の「スカイフォール」(2012)までの全23作品がブルーレイソフト化されて、いまはすべて実売価格1490円(定価2500円だが、まさか定価で買っている人はいないだろう)です。 すこし前まではDVDの価格だったのが同じ値段でブルーレイが買える、映画ファンには嬉しい時代になりました。「女王陛下の007」を初めて見たのは劇場公開時で、日本公開1969年12月だけれど、私が見たのは翌年1970年の1月末くらいだったでしょうか?、香林坊にあったパリー菊水という映画館。 それ以来、テレビ洋画劇場での放送、VHSビデオでの鑑賞。これらはシネスコサイズの画面両端をトリミングしたもので、全体の半分しか映っていないしろもの。 のちにレーザーディスクでシネスコサイズ版を見た時は、ぼやけたVHSビデオに比べるとそのキラキラ輝く美しい画質に、これが同じ映画か?と驚いたものです。 いまは、ブルーレイを見て、もう一度さらに「これが同じ映画か?」と。 現在はデジタルリマスター・バージョンのDVD(990円)と、さらに精細で美しい、くっきり鮮やかな画質で生まれ変わったブルーレイソフト(1490円)が発売されている。 監督ピーター・ハント、編集ジョン・グレン、音楽ジョン・バリー。 この作品は位置的には第1作「ドクター・ノオ(007は殺しの番号)」「ロシアより愛をこめて(危機一発)」「ゴールドフィンガー」「サンダーボール作戦」「007は二度死ぬ」に続くものです。「007」が大ブームだった頃で、1967年の「二度死ぬ」が日本でロケ撮影されて大きな話題になったあとです。ボンド役を降りたショー・コネリーに代わって新たにジョージ・レイゼンビーさんが抜擢された。 当時から今まで、大根だとか、ボンドらしくないとか、けなされるレイゼンビーさんですが、私は彼こそ最高のボンドだと思っています。当時の撮影スタッフの評判も良く、編集のジョン・グレンさんなどは絶賛しています(DVD収録のメイキング)。 この「女王陛下の007」に大きな思い入れがあるのは、初めて見た「007映画」だということと、イアン・フレミングの原作小説のイメージに近いということ、当時の007ブームの雰囲気が濃厚に感じられるということ、でしょうか。 ブルーレイソフト「女王陛下の007」は、40年以上昔の作品としては、すばらしい画質・音質です。これまでのすべてのソフト化で最高の「女王陛下の007」。もしかすると劇場公開のときより優れているかもしれない。 劇場公開時はモノラル音声だったのが、5.1ch DTSになっている。 高画質は俳優、とくに女優さんには肌のシワやシミが見えたりしてつらいことかもしれない? 007映画は観光映画という面もあるので、風景が美しいのは良いことですね。
2013年09月11日
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映画「007は二度死ぬ」(1967年イギリス)は丹波哲郎さんと若林映子さん、トヨタ2000GTの映画である、と書きましたが重要なアイテムを抜かしていました。小型オートジャイロのリトルネリーです。 Qがボンドの要請を受けて運んできた一人乗りの小型オートジャイロ。 4個のトランクに分解して収めてあり、それを組み立てる。 丹波哲郎さんのタイガー田中があっけにとられて、「おもちゃのヘリコプターか?」と言うのを聞いたQが憤慨します。 上部にある2枚のローターブレードは回転して揚力を発生させるだけのもので、推進力は座席の背部にあるプロペラが担当します。 そのために離陸するには滑走が必要なんですね。映画でも一般道路をブーンと走って滑走路にして離陸するシーンがある。 そんなわけでヘリコプターではなくオートジャイロに分類される機体です。 このリトルネリーは面白いですね。ボンドが乗って怪しい地帯を上空から偵察に行って、スペクターのヘリコプター4機編隊に襲われる。 リトルネリーとヘリコの空中戦が展開され、リトルネリーの秘密装備によって敵機を全滅させます。 機首に7.7ミリ機関銃が2門。熱感知追尾ミサイル2基。 後方に向けて火炎放射器。煙幕発生装置。他に落下傘投下式空中爆雷を搭載。 実際の航続力はどれくらいでしょうか?、燃料がそれほど積まれないようなので、長距離飛行にはむかないのでは? スピードもそんなに速くなさそうです。座席にキャノピーはなくて、操縦するボンドはヘルメット着用だけれど顔面はむき出しです。 007映画の楽しさのひとつにこのような実在する特殊メカの登場があります。「サンダーボール作戦」ではボンドが背負って空を飛ぶジェット・パック。背負い式ロケットです。 他にスペクターが海中で使う水中戦車(複座の潜航艇)、気密性のある船体ではなく、アクアラングを着けた潜水員が乗って移動に使うものです。「オクトパシー」に登場する小型ジェット機のアクロスター。主翼が折りたたみ式で馬匹運搬車内に格納し、引き出して主翼を展張し、道路を滑走路代わりにして発進する。 これも搭載燃料量の関係から航続力は短そうです。
2013年06月10日
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1967年 外国映画興行成績です。 金額は配給収入。1位 「007は二度死ぬ」 6億7997万 2位 「グラン・プリ」 5億1751万 3位 「プロフェッショナル」 4億6417万 4位 「風と共に去りぬ」 3億1771万 5位 「夕陽のガンマン」 3億1517万 6位 「おしゃれ泥棒」 3億29万 7位 「戦争と平和(完結篇)」 1億9000万 8位 「続・荒野の七人」 1億8772万 9位 「パリは燃えているか」 1億8683万 10位 「続・黄金の七人 レインボー作戦」 1億8000万円 常々思うのですが、この時代は面白い映画、良い映画がそろっています。 娯楽映画がネタ切れの現在とは大きな違いがあります。昨今の映画は見た目が派手なだけで内容がなく、ただのアトラクションに成り下がった感じがする。 第1位の「007は二度死ぬ」(1967年6月日本公開)は当時の大きな話題作であり、日本でロケ撮影されたこともあって大ヒットしました。 昨日、ブルーレイソフト(1480円)を買って、何度目かの鑑賞をしたのですが、精細なブルーレイの映像で見ると、また違った趣があります。 衛星軌道を回っているアメリカの宇宙船が接近してきた謎の宇宙船に飲み込まれる。 のちにソ連の宇宙船が同じように飲み込まれて消息を絶ち、米ソがそれぞれに宇宙を支配しようとの陰謀を企んでいると相手国をなじり合う。このままでは米ソの戦争は避けられない状況に。 謎の宇宙船が着陸したのが日本近海だと英国情報部はにらみ、007号ジェイムズ・ボンドを調査に派遣。ボンドを香港で殺されたように偽装し、敵の目をあざむいて、ひそかに潜水艦から日本に上陸させます。 ボンドが最初に向かったのは東京の蔵前国技館。大相撲がおこなわれていて、連絡の相手は横綱佐田の山関。 日本情報機関の連絡員アキ(若林映子さん)に導かれて、その上司のタイガー田中(丹波哲郎)に接触し、日本情報機関の全面的協力を得ることになります。 日本情報機関の隊員たちは「忍者」で、クライマックスは阿蘇山火口の下に隠されたスペクター秘密基地に大挙して強襲攻撃をかける。背中に刀を背負った忍者たちの奇想天外?荒唐無稽なアクションが展開。 冒頭でボンドが東京に現れたシーンで、アサヒビールやナショナルのネオンサインが映し出され、SF映画「ブレードランナー」の強力わかもとを思い出させます。 現代の目から見た1967年の日本の、外国人の目から見たちょっと珍妙感のある世界が映し出される。 このようなシーンを見て日本を馬鹿にしているとか、ありえないとか言う人がいるけれど、そうではないですね。それを言うなら我々日本人は欧米だけでなく世界の国々の文化や国情をどれだけ正しく理解しているか?、これはお互いさまだし、娯楽映画にそんな目くじらを立てるものではないでしょう。 国技館の大相撲は満席で、エキストラの観衆8000人を集めて、じっさいの取り組みを見せたそうです。当時の007人気ではエキストラ応募は大盛況だったのでは? ブルーレイで見ると、若林映子さんがとても美しく、彼女が軽快に乗り回すトヨタ2000GTがピカピカ輝いているし、とても良い。 結局の所はこの映画、丹波哲郎さんと若林映子さんとトヨタ2000GTの映画である、と言っても過言ではないような。 Mとミス・マネイペニーは香港まで出向いてきて潜水艦内でボンドに指令を与えます。ロンドンや英国本土がいちども出てこない異色な一編でもあるようで。 脚本はロアルド・ダール。英国の作家で、児童文学「チョコレート工場」やミステリ作家として知られています。ゲイリー・クーパーとのロマンスで有名な女優パトリシア・ニールさんの旦那さんです(1983年離婚)。
2013年06月09日
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イアン・フレミングの「007シリーズ」原作小説は、長編では次の12冊があります。「カジノ・ロワイヤル」 1953「死ぬのは奴らだ」 1954「ムーンレイカー」 1955「ダイヤモンドは永遠に」 1956「ロシアから愛をこめて」 1957「ドクター・ノオ」 1958「ゴールドフィンガー」 1959「サンダーボール作戦」 1961「わたしを愛したスパイ」 1962「女王陛下の007号」 1963「007号は二度死ぬ」 1964「黄金の銃を持つ男」 1965 かつて早川書房と東京創元社から刊行されていたのですが、現在はほとんどが絶版。かろうじて創元推理文庫の「カジノ・ロワイヤル」と「ロシアから愛をこめて」を書店で見かけるくらいです。読みたいと思っても入手が困難な状態が続いています。 この原作小説が日本で刊行されたのは昭和38年(1963)くらいからです。 当時は東西冷戦真っ最中の時代。英国海外秘密情報部007号ジェイムズ・ボンドの敵はソ連の息がかかった者たちですね。 第1作「カジノ・ロワイヤル」の悪役ル・シッフルはフランスにおけるソ連スパイ。 第2作「死ぬのは奴らだ」のハーレム黒人暗黒街ボスのミスター・ビッグもソ連とつながっているし、「ムーンレイカー」のドラックス卿も、「ドクター・ノオ」のノオ博士もソ連とつながっている。「ゴールドフィンガー」のオーリック・ゴールドフィンガーだってノックス砦から強奪した金塊をソ連の巡洋艦で運び出そうとします。 第8作の「サンダーボール作戦」で国際犯罪組織スペクター(最初はスペクトルと訳されていた)が登場するまでは、ボンドの敵はソ連と国家保安省殺人機関スメルシュでした。その代表作は第5作の「ロシアから愛をこめて」です。 映画では第1作の「007は殺しの番号」(1972年のリバイバル時に「ドクター・ノオ」と改題)はソ連とは関係がないし、第2作の「危機一発」(同じく72年リバイバル時に「ロシアより愛をこめて」に改題)ではソ連の国家保安省のローザ・クレッブが出ても、祖国を裏切ってスペクターの幹部になっているという設定に変えられています。 映画では、当時はまだ冷戦時代だったとはいえ国際的な関係を考慮してソ連を敵にするのは遠慮したと思われます。 1987年の映画第15作「リビング・デイライツ」にはソ連KGBのプーシキン将軍(ジョン・リス・デイヴィス)が登場し、ボンドとは旧知の間柄。「スパイに死を」計画がプーシキンの指導によるものか確認しに現れたボンドに、「それは20年前に廃棄された作戦だ」と言い、自分は関与しないことだと語る。 第17作「ゴールデンアイ」(95)と第19作「ワールド・イズ・ノット・イナフ」(99)には元KGBのヴァレンチン・ズコフスキー(ロビー・コルトレーン)という人物が登場してボンドに情報を与えて協力します。 KGBのゴーゴル将軍(ウォルター・ゴテル)という人物も第10作「私を愛したスパイ」(77)からシリーズの常連キャラとして登場していて、ボンドの敵というよりも良きライバルのようなもので、西側とは事を荒立てず共存共栄を目指す考えを持っている人物です。 映画では、ソ連は敵ではなく、共通の敵に対して協力しあう関係になっています。「ゴールデンアイ」と「ワールド・イズ・ノット・イナフ」に登場の元KGBのヴァレンチン・ズコフスキーを演じているロビー・コルトレーンという英国の俳優さん(写真)は「ハリー・ポッター」でハリーやハーマイオニーと仲良しの、森の番人ハグリッド。これは今ままで気づかなかった。
2013年04月09日
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1988年の外国映画興行成績です。 金額は配給収入 1位 「ラストエンペラー」 24億5000万円 2位 「ランボー3 怒りのアフガン」 23億5000万 3位 「危険な情事」 17億3500万 4位 「ウィロー」 14億9000万 5位 「ニューヨーク東8番街の奇跡」 10億7600万 6位 「ロボコップ」 9億1000万 7位 「インナー・スペース」 8億8700万 8位 「クロコダイル・ダンディー2」 7億9000万 9位 「007 リビング・デイライツ」 7億7300万 10位 「フルメタル・ジャケット」 7億6200万円 この年の第1位「ラストエンペラー」などは忘却の彼方の作品で、今一度見ようとは思わないし、今後一生見ることがないでしょう。 それに比べて第9位の「007 リビング・デイライツ」はこれからも何度も見る作品です(私にとっては)。「007 リビング・デイライツ」(「The Living Daylights」)は007シリーズ第15作。日本公開は1987年12月で、お正月映画です。 何度目かをブルーレイで鑑賞したのですが、これこそ007映画といえるものです。まったく007らしくない最新の「スカイフォール」を見た後に、これを見るとその面白さが際立っています。 冒頭シークエンスのアクション。ジブラルタル海峡のNATO軍基地での潜入訓練中に、紛れ込んだ敵に断崖を登攀中の004がザイルを切られて殺される。 現場を目撃した007が軍用ランドローバーで逃げる敵を追跡し、狭い坂道を疾走する車の屋根にしがみついて追いすがります(流れるテーマ曲が効果的)。 このスタント・アクションには必然性があって、ストーリー展開上で必要のないものでは決してありません。見ていて白けるものではないですね。「007リビング・デイライツ」は前作「美しき獲物たち」(85)を最後にボンド役を降りたロジャー・ムーアさんに代わってティモシー・ダルトンさんが4代目ボンドを演じました。 若くて颯爽としたボンド。ちょっとダークな硬派な感じもあって「殺し屋007号」としてカッコ良いと思います。地味ながらも華がある、この感じが今のダニエル・クレイグさんにはないようです。 ソ連のKGB内での権力闘争がテーマで、コスコフ将軍という重要人物が英国に亡命を申し出ます。 東欧チェコスロバキアのクラシック演奏劇場からコスコフを無事に亡命させるのがボンドの任務で、ボンドは劇場の2階窓からコスコフを狙撃しようとする女性チェリストの手元を撃って「死ぬほど驚かせる(リビング・デイライツ)」。 ボンドはコスコフを護衛し、天然ガスのパイプラインを通してオーストリアへ亡命させることに成功したものの、この亡命には裏があった。 保護されたコスコフはKGBのプーシキン将軍が「スパイに死を」という英米の情報部員抹殺を計画しているという情報を英国情報部に教え、Mは007号にプーシキン将軍を暗殺するよう指令を与えます。 コスコフはプーシキン将軍に公金横領の尻尾をつかまれていて、邪魔なプーシキンをボンドを利用して消してしまおうとの魂胆です。 コスコフの背後には国際武器商人のウィティカーがいて、2人が企んだこの偽装亡命を知ったボンドは2人を追ってタンジールからアフガニスタンへ。対ソ連抵抗組織ムジャヒディンの協力を得て対決します。 見せ場たっぷりの娯楽大作に仕上がっていて、さすが職人監督ジョン・グレンさんの手慣れた仕事ぶり。 でも007号の敵が、これまでのような世界征服を企むような大組織ではなくて、武器商人や公金横領したソ連高官など、現実的といえるかもしれないけれど、それだけ小物になった。現在まで続く敵の小物感は本作あたりから始まったのか。
2013年04月08日
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映画007シリーズの最新作「スカイフォール」(2012)をブルーレイで見ました。 危惧したとおり、やはりこれは私には「007」ではなかったです。 冒頭シークエンスのアクションは毎度おなじみですが、新007シリーズ第1作「カジノ・ロワイヤル」(2006)の爆弾男を追っかける高所でのアクション、第2作「慰めの報酬」(08)のカーチェイス、そして今作ではNATOの潜入諜報員のリストの入ったハードディスクを奪った犯人を追っての追跡戦。 街中での車からオートバイ、列車の屋根上へとアクションが移って、一見すると凄いスタントなのですが、まるで意味のないアクションシーンです。物語の展開上で必然性がなく、「この人たち何をやってるんだろう?」とシラケるばかりです。「カジノ・ロワイヤル」からずっとこの調子で、スタントマンがせっかく命がけで頑張ってくれても、それが生かされていない。 かつては、このようなことはなかったですね。「007シリーズ」ではスタントマンが大活躍し、その危険な撮影に驚かされたものです。「サンダーボール作戦」ではスペクターの女幹部フィオナのオートバイが作戦失敗したリッペ伯爵の車に高速で走りながらロケット弾を撃って炎上させる場面。これはDVDのメイキングでも紹介していましたが、炎上して大破する車から脱出が遅れてスタントマンがそれこそ危機一髪だったそうです。「女王陛下の007」ではアルプス山上のスペクター基地から脱出したボンドを追跡するスペクター団員たちの天才的なスキー技術。「死ぬのは奴らだ」ではモーターボートの追跡アクション。「黄金銃を持つ男」では車が一回転して河を飛び越えるスタント。「私を愛したスパイ」では断崖絶壁からスキーで飛び降り、ユニオンジャックの落下傘が開く。「ユア・アイズ・オンリー」では断崖絶壁の登攀と、落下してザイルでぶら下がる場面。「オクトパシー」では疾走する列車の屋根上でのアクションなど。 すべてストーリー展開の成り行き上で発生するスタント・アクションで、必然性のあるものでした。 それでこそ見ている人をハラハラさせるわけで、スタントマンも大いに危険を冒す価値があるし、やりがいもあったのではないか。 最近作の見ていてシラけるスタントなど、せっかくのスタントマンの技術が泣こうというものです。 物語も全体に暗くてワクワクするようなゴージャス感もないし、肝心のジェイムズ・ボンドに華がない。 50周年記念で「原点回帰」を目指した作品といわれるけれど、その原点とは「ジェイソン・ボーン」のことか? 製作方針が「ジェイソン・ボーンのような007」を目指すとすれば、「007らしさ」のない「007映画」が続くのだろうか?
2013年04月07日
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映画「007シリーズ」の第7作「ダイヤモンドは永遠に」(1971)で、前作の第6作「女王陛下の007」(69)に引き続いてブロフェルドが登場します。 ジェイムズ・ボンドが新婚早々の花嫁トレーシーを殺害され、その復讐に燃えるというのが感情として当然なのに、冒頭で少し怒りを露わにするだけでそれほどの執念が感じられません。 第16作「消されたライセンス」(89)で、ボンドの親友であるCIAのフェリクス・ライターが敵に襲われて重傷を負い、その妻が殺害される。その時に見せたボンドの怒りと復讐心に比べれば、ボンド自身の最愛の女性が殺されたにしては、この「ダイヤモンドは永遠に」は物足りない内容で、もっと激しい怒りがあってもいいはずです。 南アフリカからダイヤモンドが密輸されている。スペクターがその密輸組織からダイヤを横取りして、人工衛星の反射板に取り付けてレーザー兵器とし、世界各国を脅迫する、その陰謀を阻止するという話です。 この「ダイヤモンドは永遠に」ではスペクターの首領ブロフェルドを俳優チャールズ・グレイが演じています。影武者を用意していて、ボンドが冒頭シークエンスで倒したブロフェルドが影武者だったというのが新趣向でしょうか。 英国海外秘密情報部の宿敵スペクターはこの「ダイヤモンドは永遠に」を最後に出なくなりました。組織が壊滅したのか、第12作「ユア・アイズ・オンリー」(81)の冒頭シークエンスでボンドがヘリコプターから煙突へ落っことして始末してしまったのがブロフェルドらしき坊主頭の男。 これがブロフェルドだとはっきり言ってないけれど、それらしき男で、これでスペクターもブロフェルドも完全に映画007リーズから姿を消しました。 チャールズ・グレイさんは第5作「007は二度死ぬ」(67)で、日本在住の外交官?ヘンダーソンの役で出ていました。ボンドにスペクターの情報を提供する日本通の男。 イアン・フレミングの原作小説「ダイヤモンドは永遠に」はダイヤ密輸ギャング団がボンドの敵であり、スペクターやブロフェルドは出てこない。原作では第4作にあたり、スペクターの初登場は第8作の「サンダーボール作戦」からです。 かつて中学生から高校生あたりの少年を対象にした「ボーイズライフ」という月刊誌(小学館)があって、さいとう・たかをさんの劇画「007シリーズ」が連載されていました。「死ぬのは奴らだ」 1964年12月号~65年8月号「サンダーボール作戦」 1965年9月号~66年3月号「女王陛下の007号」 1966年4月号~12月号「黄金の銃を持つ男」 1967年1月号~8月号 この劇画化4作品では007号の敵は「死ぬのは奴らだ」から「女王陛下の007号」まで3作ともハーレム暗黒街を牛耳る黒人犯罪組織の首領ミスター・ビッグです。 ミスター・ビッグはさいとう・たかをさんお得意の凄みのある悪役で、本来のブロフェルドではなくこのミスター・ビッグが首領として「サンダーボール作戦」と「女王陛下の007号」に登場します。 第4作目の「黄金の銃を持つ男」だけがスカラマング(スカラマンガではない)という殺し屋が敵ですが、さいとう・たかをさんの劇画007の悪役はミスター・ビッグに尽きると言って良いほどです。
2013年04月05日
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映画「007シリーズ」の悪役エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド。 英国海外秘密情報部の宿敵である国際犯罪組織「スペクター(SPECTRE)」の設立者であり、首領です。「スペクター」は「The Special Executive for Counterintelligence, Terrorism, Revenge and Extortion」の略で、「対敵情報活動・テロ・復讐・強要のための特別機関」という意味。 エルンスト・スタヴロ・ブロフェルドは1908年5月28日にポーランド人の父とギリシャ人の母の間に、ポーランドで生まれたという設定です(原作者イアン・フレミングの生年月日と同じ)。 ワルシャワ大学で経済学と政治学を学び、のちにワルシャワ工学院で工学と無線を学ぶ。25才で郵政電信省の中央郵便局に勤める。 当時は第二次大戦の直前で、郵便局で自分の手を経る電報から重大情報(緊急、極秘の)を得て、それを外国に売るというスパイ活動で巨利を得る。「対立した世界では、迅速確実な通信手段が力の核心になる」「他人にさきがけて真相を知ることこそ、平時戦時にかかわらず、あらゆる歴史の正しい決定の背後にあって大きな名声をつかむものだ」 そのような考えを持って、国際政治社会の裏側でスパイ組織を作り上げて、のし上がった男です。 スペクターとブロフェルドが007の敵として登場するのは原作小説では「サンダーボール作戦」(第8作)からです。 映画では第1作の「007は殺しの番号(ドクター・ノオ)」(62)のノオ博士がスペクターの一員ということですが、首領のブロフェルドが初めてスクリーンに登場し、実体のある組織としてボンドの前に現れるのは「危機一発(ロシアより愛をこめて)」(63)からです。 ブロフェルドは膝に白猫を抱いているだけで顔は見せない。顔を見せるのは「007は二度死ぬ」(67)が最初で、俳優はドナルド・プレザンスが演じました。「女王陛下の007」(69)ではテリー・サヴァラスさん(写真)です。 ブロフェルドはデ・ブルーシャンという名を名乗り、爵位を申請する。 Mは「爵位を欲しがるとは、ブロフェルドもとんだ俗物だ」と言い、その家系調査をおこなうという名目で007号ジェイムズ・ボンドが紋章院のヒラリー・ブレイ卿に変装して、スイスアルプス山上のスペクター秘密基地にブロフェルドを訪問します。 前作「007は二度死ぬ」で顔を見知っている二人なのに、おたがいに気がつかないのは?というのは野暮ですか。ブロフェルドは整形しているらしく、ドナルド・プレザンスさんとテリー・サヴァラスさんは顔だけでなく体型も異なるようだけれど、ボンドを見ても007号だとは気づかないようで(前任のコネリーさんとは別人の007号だし)、これはご愛敬というものでしょう。「女王陛下の007」は1969年イギリス映画。 この頃のテリー・サヴァラスさんはまだテレビの「刑事コジャック」(73~78)でお茶の間に知られる前ですが、映画ではその個性のある顔を見かけていた俳優です。「バルジ大作戦」(65)のM24戦車長の軍曹、「特攻大作戦」(67)の変質者の役。 1969年の「女王陛下の007」の時期には、「マッケンナの黄金」(69)、「狼の挽歌」(70)、「戦略大作戦」(70)があって大忙しだったのでは?「狼の挽歌」(70)はチャールズ・ブロンソン主演のマカロニアクション映画ですが、テリー・サヴァラスさんの組織のボスは「女王陛下の007」(69)のブロフェルドと同じような感じの役でした。
2013年04月04日
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映画「女王陛下の007」のボンドガールを演じたダイアナ・リグさん。 フランス暗黒街を牛耳る犯罪組織ユニオン・コルスの首領マルク・アンジュ・ドラコ(ガブリエル・フェルゼッティ)の愛娘トレーシーです。 テレサ(トレーシー)・ディ・ヴィンチェンツォ。イタリアのジュリオ・ディ・ヴィンチェンツォ伯爵と不幸な結婚をし、お父さんのマルク・アンジュ・ドラコが手切れ金を出して離婚させる。 子供を重病(脊髄膜炎)で亡くした後、自暴自棄の生活を送るようになり、見かねたマルク・アンジュがボンドに「娘に言い寄って結婚してくれないか」と頼みます。 ボンドの宿敵スペクターのブロフェルドはマルク・アンジュの敵でもあり、ブロフェルドの潜伏場所をボンドに教える、その条件としてボンドに娘と結婚しろ、と。 トレーシーはボンドと恋愛するのだけれど、ボンドが父とそのような取引をしていたことを知って怒ります。ボンドは「それは誤解だ」と言う。 ボンドは英国情報部を退職してトレーシーとの結婚を真剣に考える。 その結婚式の直後にブロフェルドに襲われてトレーシーは命を落とします。「女王陛下の007」(1969)の次作が1971年の「ダイヤモンドは永遠に」で、その冒頭で愛妻を殺したブロフェルドへの復讐に燃えるボンドが描かれます。 ショーン・コネリーが復帰したものの、往年の精悍さがなくなっていて、復帰は明らかな失敗です。 ジョージ・レイゼンビーさんが一作のみでボンド役を降りずに、続けて「ダイヤモンドは永遠に」もやるべきでした。そうなれば、若くてスマートなボンドが引き続き見られたわけで、次のロジャー・ムーアさんはどうなっていたか?、007映画史の大きな転換点です。 ダイアナ・リグさんのトレーシー。007映画の全ボンドガールで彼女ほど重要な役は他にありませんね。「女王陛下の007」はトレーシーを中心に作られていて、ただのお飾り的なお色気担当役ではなく、人物設定もしっかりしています。 ダイアナ・リグ(Diana Rigg)さんはテレビ映画の「おしゃれ(秘)探偵」がありますが。、石川県で放送されたか不明だし見たことがありません。「女王陛下の007」以外の出演作では、「世界殺人公社」(69)と「ジュリアス・シーザー」(70)を見たのみ。この2本は映画館で見ただけで、その後いちども見ていないのでどんな内容だったか記憶になく、ダイアナ・リグさんの印象は「女王陛下の007」のみと言ってもいいほどです。 おもに舞台女優として活躍し、映画出演は少ないようです。
2013年04月03日
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