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黒い。黒い少女だった。麦わら帽子もワンピースもミュールも全てが黒一色に染め上げられている。肌は痛々しいほど白く、その爪は服装と同じ色のマニキュアで塗られている。麦わら帽子で隠れていて顔はよく分からないが、しかしやはり黒く染まった唇が楽しそうに笑っているのだけが見えた。顔を見なければいけない。そう思った。確信が得られないから。しかし、レレナの体は動かない。確信を得たくない。そんな気持ちがどこかにあってレレナの両足を地面に縫いつけていた。動くことができない。レレナはでくのぼうのように立ち尽くし、立ち尽くし、・・・そして絵里香がこちらを向いた。彼女の表情が凍りつくのが見えた。絵里香の反応に彼女に話しかけていた黒い少女も不審を抱いたらしい。絵里香の視線を追うようにしてレレナのほうに目を向ける。そして、レレナは、黒い少女の顔を、見た。頭の中が真っ白になった。封印していたはずのかつての日常の景色を引きずり出していく。ツキさんの呆れたように自分を見る目つき。月島さんの、情けなくて、けれども優しい笑顔。そして・・・。 「吸血鬼のひめごと」シリーズは、主人公の半吸血鬼レレナ・パプリカ・ツォルドルフが再び吸血鬼などが存在する非日常世界に関わっていくことになるというストーリーです。イタリアから日本の湯ヶ崎町へやって来たレレナはそこで吸血鬼の月島亮史、幽霊少女の雪村舞、亮史の使い魔・黒猫のツキたちと出会い、とても幸福な日々を過ごしました。彼らはある事件で半吸血鬼となってしまったレレナを家族同然に受け入れ、一緒に楽しい生活を共有することになったのです。しかし、幸福な日々はそれほど長い間続きませんでした。ある組織との戦闘で彼らはレレナ一人を残して滅んでしまったのです。残されたレレナは、戻ることのない幸福な日々に喪失感を感じながら日本で普通の高校生活を送ることになります。消えない喪失感、半吸血鬼という正体を隠さなければならない不自由な日常。そうした中、レレナは外国人であることや正体を隠さなければならないハンデを乗り越え、それなりに幸せな学校生活を送れるようになりました。池之端絵里香という親友もできました。しかし、吸血鬼・朧やその敵「貪」と関わったことでレレナは再び非日常世界へ足を踏み入れることになっていきます。 思いがけなく現れたかつての親友・雪村舞、「貪」と行動を共にしている今の親友・池之端絵里香。「幸福な過去」と「守りたい現在」の間で、レレナは「自分はどうすれば良いのか?」分からなくなってしまいます。そんなレレナの苦悩とは関係なく、「貪」は復讐に燃える吸血鬼・クロサキ、何でも食べてしまう少女・高城千霧、天性の殺人鬼・海棠万里など強力な仲間たちを集めて襲撃をかけることになり、レレナたちは追い詰められていくことになります。レレナにとって「あの頃の幸福な日々を取り戻したい」という願いはとても大きなものです。一方、絵里香にとっても「両親と一緒にいたい」という思いは何事にも代えられないもので、そのためにレレナと敵対することになっても「貪」に協力しています。そうした厳しい状況の中、自分たちの最も大切な思いや願いを犠牲にしてでも互いを守り合おうとするレレナと絵里香の深い友情が大変感動的で面白かったです。それにしても雪村舞の再登場にはビックリしました。白いイメージの強かった舞ですが、正反対の黒い服装も意外と似合う気がします。 ジャンルは友情ハード・アクション・ファンタジー。アクションや友情ストーリーが好きな人にお薦めです。<終>吸血鬼のひめごとシリーズ吸血鬼のおしごとシリーズ「吸血鬼のひめごと」シリーズは、「吸血鬼のおしごと」シリーズの続編です。あらかじめ「吸血鬼のおしごと」シリーズを読んでから読むといっそう楽しめます。
2008年07月28日
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「・・・クビだ」出社していきなりエニーネはそう言い渡された。「明日から来なくていい」上司はきらりと眼鏡を光らせながらもはっきり言って、駄目押しに大きく頷いてみせた。同僚たちは関わり合いになりたくないのか誰も反応を示さない。孤立無援である。上司は「大得意の専務を思いっきりぶん殴っておいて、いいから出てけッ!」とものすごい勢いだ。エニーネは「私の可愛いエニーネたん。君のありそうでなさそうな未発達の胸が、胸があああ!」と恍惚声を上げる変態セクハラ専務を殴っただけで会社を解雇されてしまったのだ。エニーネ・マロル・コルバント、16歳。懲戒免職となり退職金もない。しかも今は不景気なので身元保証人もいない16の小娘を雇ってくれる奇特な企業があるはずもない。途方にくれたエニーネはとぼとぼと街を歩くしかありませんが、不幸はそれだけで終わらず「ぱぽぅ!」と鳴く不思議なイキモノに攻撃されて大量の冷水を怒涛のごとく叩きつけられてしまいます。さらに不幸の終わりの見えないエニーネは大嫌いなイキモノと一緒に生活しなくてはならなくなって・・・。 「ディスパレイト!」シリーズは、主人公の薄幸勤労少女エニーネが探偵業を営む異生物使い(ディスパレイト・ハンドラー)不思議青年トルクと出会い、奇妙な探偵生活を始めることになるというストーリーです。ディスパレイトとは不思議な異界の生命体のことで、そこにいるだけで物理法則を歪め予測困難な超常現象を発生させます。トルクは、このディスパレイトの力を借りて仕事をこなす探偵なのです。と言ってもトルクに召喚されたディスパレイトたちは毎回予測不能な行動ばかりとったり、暴走したり、役に立つという以上にやっかいで困った存在でもあります。そして、エニーネは言葉も通じないわけの分からない謎の生物ディスパレイトが大嫌い!しかし、お金も住む場所すらないエニーネに選択肢はなく、ディスパレイトがたくさん飼育されているランドリュース興信所で住み込みで働かなくてはいけなくなります。ディスパレイトが苦手で探偵もしたことがないエニーネは「風俗で働くよりマシ」と自分に言い聞かせて頑張ることになるのです。 「ディスパレイト!コンプ」の続きとして、この「或る異生物使いのこと」を読んだのですが、続きなのにストーリーの雰囲気が全く違っていてビックリしました。一番違っていたのが主人公が悩める少年軍人トルクから不幸な勤労少女エニーネに変わったことです。これによって「兵器として育てられたトルクが愛する少女を救うため軍を裏切り困難な戦いに身を投じていく」というストーリーが、「不幸な少女エニーネが生活のため仕方なく変な職場で働く」というストーリーになったように思います。ものすごいシリアスな展開から急にコメディ風になったので大変驚きました。また、トルクやテレスといった前巻からの登場人物たちも無表情だったのがニコニコ笑顔に変わったり、健気な薄幸少女が変なディスパレイトオタクになっていたり、かなりのイメージチェンジです。最初は少し戸惑いましたが不幸なのにやたらと前向きなエニーネ、つらい過去を乗り越えて元気に頑張っているトルクとテレス、可愛くて愉快なディスパレイトたちの抱腹絶倒な活躍が笑えてとても楽しかったです。 ジャンルは、不思議生物アクション・コメディ・ファンタジー。コメディやアクションが好きな人にお薦めです。<終>ディスパレイト!シリーズ
2008年07月21日
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庭園には群青色をした夜が重たく垂れこめていた。涼しい風が湿った夜の匂いに満ちて、庭園の隅にぽつんと立つドールハウスに吹きつけていた。「我々は・・・」「我々はけして離れまいよ・・・」老女のようにしわがれた、しかし響きは心細そうな小さな子どものようでもある不思議な囁き声がドールハウスの寝室から聞こえてきた。「久城・・・!」「離れないと息の根を止めてやるぞ!」「機嫌はもちろん悪いとも」「・・・できる。灰色狼には不可能はひとっつもないのだよぅ・・・」寂しそうな寝言と子猫が寝返りをうったかのような衣擦れの音が聞こえてきた。豪奢なベッドには、輝く見事な金色の髪を広げ一人の少女が眠っている。精巧なビスクドールに命を吹き込んだような輝くばかりの美しさだった。そして、少女・ヴィクトリカが寝返りをうつたびに寝巻きのフリルがめくれてすべすべとしたお腹が現れる「・・・ぐじゃっ!」ヴィクトリカがくしゃみをした。朝はまだまだ先で・・・。 「GOSICK(ゴシック)」シリーズは、主人公の久城一弥とヴィクトリカがヨーロッパの闇に関わる怪事件を次々と解決していくというストーリーです。第一次世界大戦から10年、日本からヨーロッパの小国ソヴュールの聖マルグリット学園にやって来た一弥は周囲に溶けこめず孤立していました。なじみのない日本からの留学生、噂で語られる死神に似ているということでヨーロッパ出身の生徒たちに敬遠されていたのです。一方、ヴィクトリカはあまりにも賢すぎる頭脳と人形めいた美貌、それに似合わぬ老女のような声、「灰色狼」と呼ばれる謎の一族の血を引いていることで人々に恐れられ、聖マルグリット学園で幽閉同然の生活を強いられています。彼女の母親は世界大戦で暗躍して以来行方不明、貴族の父はヴィクトリカの能力を利用しようと企み、奇妙な髪型の兄はヴィクトリカをひどく恐れています。そして、孤立している一弥と異能・異形で学園でもひとりぼっちのヴィクトリカは出会ってから急速に仲良くなり、ヴィクトリカの頭脳で謎めいた事件を次々と解決していくのです。互いに惹かれていく二人ですが、素直になれないヴィクトリカと堅物すぎる一弥の恋愛はなかなか進展しません。 立て続けに起こる殺人事件を何とか解決し、無事に学園まで戻ったヴィクトリカと一弥。しかし、旅の疲れか?お腹を出して寝たせいか?ヴィクトリカは熱を出して寝込んでしまいます。一弥は、一日中寝込んで退屈しているヴィクトリカのために花をプレゼントし、その花にちなんだ不思議な物語を読んで聞かせることになります。そんな中、病気でも優秀な頭脳を発揮するヴィクトリカは、不思議な歴史物語に隠された謎を魔法のように解き明かし一弥をビックリさせるのです。「許可」がなければ学園から出ることができないヴィクトリカ、戦争に翻弄させる二人、両親の思惑に運命を握られる、大陸を越えるほどの恋愛、など今回の短編集はヴィクトリカと一弥の過去・現在・未来を象徴するかのような歴史ミステリーでした。自分たちと同じように歴史に飲み込まれながらもくじけず闘った人々の思い出。そうした人々の思い出を自分たちに重ね合わせ、二人きりで語り合うヴィクトリカと一弥の姿がとてもロマンティックで大変面白かったです。また、ストーリーの最後の方には次の事件の始まりを予感させる訪問者たちが登場するので続きが気になります。次巻はいつ出るのでしょうか? ジャンルは歴史ラブストーリー・ミステリー。ラブストーリーやミステリーが好きな人にお薦めです。<終>GOSICK(ゴシック)シリーズコミックやドラマCDもあります
2008年07月14日
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信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!信じられない!九条鈴璃は学校からの帰り道、とても憤慨していて・・・。 「Room no.1301」シリーズは、主人公の高校生・絹川健一が「自分は恋愛に向いていない」と悩むことになるというストーリーです。クラスメイトの大海千夜子から告白された健一は思ってもみなかったことに驚いたものの、千夜子に押し切られとりあえず付き合うことになります。ところが、千夜子と付き合うことになったその日のうちに健一は、行き倒れになっていた不思議系の女性・桑畑綾に襲われ幽霊ビルの13階という存在しないはずの場所に連れ込まれて綾とHしてしまうのです。そして、幽霊ビルの13階で暮らすことになってしまった健一は胸丸出しでペロペロキャンディ付きの帽子を被っている綾、Hしないと眠ることができない「誰とでも寝る女」有馬冴子、実の姉・絹川蛍子、など女性たちとわけの分からないうちに次々と関係を持つことになってしまいます。変人揃いの13階の住人たちとの交流を深めていく一方、健一と彼女であるはずの千夜子の仲はさっぱり進展していきません。健一と千夜子は両思いで仲が悪いわけでもないのにどうしてか?うまくいかないのです。そうして健一は事あるごとに「自分は恋愛に向いていない」と悩むことになります。 今回の「しょーとすとーりーず・すりー」Room no.1301短編集は、13階の住人であり健一のクラスメイトで友人の八雲刻也に関わる人々の話と千夜子の親友・鍵原ツバメの話です。本編には全然登場しないけれど毎回あとがきで大暴れしている刻也の彼女・九条鈴璃、成績優秀・容姿端麗そして清廉潔白という周囲からのイメージに意外なコンプレックスを感じている刻也の妹・八雲狭霧、刻也が入った喫茶店に居合わせたボーイズラブ小説「ああんっ!メガネ様」の担当編集者・薫沢歌織、など本編では登場機会の少ない刻也を周囲からの様々な視点で描いています。健一と刻也をモデルとしているとしか思えない小説「ああんっ!メガネ様」の内容についても少し明らかになります。また、健一と千夜子の邪魔になっているのでは?と時々思う存在・鍵原ツバメも活躍します。一見真面目に見えるけれどむっつりすけべ、本当に真面目で立派な人物、存在が信じられないほど不埒で下品な男、不器用で心配ばかりかける困った兄、ボーイズラブの主人公になりそうなカッコイイ少年、など人と見方によって意見が分かれる八雲刻也の評価がとても面白かったです。 ジャンルは不思議シリアス・コメディ・ラブストーリー。ラブストーリーや不思議なストーリーが好きな人にお薦めです。<終>Room no.1301短編集シリーズRoom no.1301シリーズコミックも出てます
2008年07月07日
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