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アイザック・アシモフス・サイエンス・フィクション・マガジンからのセレクション。「さようなら、ロビンソン・クルーソー」ジョン・ヴァーリィ90年生きた経済相が、命の洗濯をすべく10年の幼年期休暇へ。しかし太陽系経済戦争の進展は予想以上に早く、主人公はヴァカンスの半ばで目覚めさせられる。すっかり退行して自分が何者であったかも覚えていないピリが、本来の自分(であったもの)に目覚めていく過程がミソ。「夢の期待」サリイ・A・セラーズ不老不死で生きるのに疲れ果て、自殺しようとしても体が自然に再生してしまう女性。とある事故に遭い全身の臓器を移植されついに死んだかに見えたが…「キャプテン・クラップ・スナックス」ジョナサン・ファースト親の言うことを聞かない子どもは、悪い大人に捕まりますよ、という教訓。巧言令色少仁。「魚の夢、鳥の夢」エリザベス・A・リン核戦争後の世界。人類の居住地は極端に限られていた。鳥のように自由に空をはばたくことを夢見る少年は、飛び降りて火傷を負ってしまう。移植した皮膚は魚のうろこのようになるが、少年はそれでも鳥になる夢をあきらめない。「皆既食の時期」フレッド・セイバーヘーゲン猿も木から落ちる、弘法も筆の誤り。それに気づいた若い科学者が危機を救った。「美食の哀しみ」アイザック・アシモフ本物のスパイスが姿を消し、(味の素のような)合成物だけになった世界の話。主人公は異星から本物のにんにくをとってきて見事料理大会で優勝するが、真相を知った審査員はその場で嘔吐し、彼を追放してしまう。「時の嵐」ゴードン・R・ディクソン地球上の時間が滝のように轟々と流れる世界。人々はそれについていけず、ついには世界の終りに遭遇してしまう。タイム・ストリーム。《集英社文庫》小松左京/かんべむさし編さようなら、ロビンソン・クルーソー …海外SF傑作選1 【中古】afb
2012.04.20
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『ふりだしに戻る』の続編。世界の歴史の改悪は防ぐことができた。ダンジガー博士も生まれないようになった。しかしルーブの執念はすさまじかった。とうとう、もう一人の能力者を捜しだし、ダンジガー博士を現代に復活させることに成功する。しかし…今度の使命は「第一次世界大戦の防止」。なるほど、これなら改悪とはいえまい。サイモンは自分が亡命した19世紀から、再び20世紀、ただし初頭のニューヨークへタイム・スリップする。キーマン「Z」と接触することには成功したが、目的は果たせなかった。しかしルーブはあきらめない。またもや歴史を変えるべくタイムスリップするようもちかける。今度は「タイタニック号沈没の防止」。一度は断ったサイモンだったが、自分の息子が第一次世界大戦で戦死すると知っては、無視できなかった。ジョタ・ガールの思わぬ協力も得て、氷山との衝突は回避できたかにみえた、その刹那…歴史を変えることは不可能なのだろうか?ここで物語は「ふりだしに戻る」。と言っても前編ではなく、本書の冒頭のことだ。時代は20世紀後半。何人かの人が集まり、「二つの歴史の記憶と証拠」を持ち合って話し合っている。どれも「状況証拠」にすぎず、決定的なものではないが、うち一人は、「ケネディがダラスで暗殺されなかった歴史」の記憶があるという…追記。『キャリー』は架空の書物や記録を引用して物語の信憑性を高めようとしたが、本書は本物の写真を使って、あたかも語り手が撮影したかのように読者をいざなう。過去を現前させるための細部まで気配りのきいた老練な筆遣いにしばしの間酔えばよい。目を見開き、耳を澄ませば、馬車の足音、初期の飛行機の響き、サーカスの芸人の日常等々がリアルに立ち上がってくるはずである。
2012.03.07
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『ある日どこかで』に影響を与えた本の一冊。図書館から借りて読む。主人公の下に、ある日、慎重にではあるが、過去に遡ってみないかという提案がなされる。過去に遡る方法は難しいけれど簡単で、要は昔のことについて詳細に勉強し、自己催眠によってタイムスリップするというものだ。逡巡したものの、男は最終的に同意し、未来を改変しないよう慎重に行動しながら、少しずつ大胆になっていく。お偉方は喜んだ。過去で一個人が多少大胆にふるまっても、大まかな歴史の流れは変わらない、ということが実験的に明らかになったからだ。次のステップは、慎重に、ごく慎重に過去を改変して、アメリカに都合のいいように未来の歴史を書き換えることだ!だがそれはついに実現しなかった。その理由は本書を読めばわかる、そういう仕組みになっている本である。つまり、フィクションでありながら、ノンフィクション(手記)としての体裁をとっている。かつまたこれは推理小説であり、ロマンスでもある。はてさて何に分類したものか。一種のファンタジーか。いやいや、やはりここは王道に立ち返って、SFの範疇に入れるべきだろう。【送料無料】ふりだしに戻る(上)【送料無料】ふりだしに戻る(下)
2011.09.18
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マゼラン星雲のとある惑星に、「新地球」を見出した市長たち。他の者たちが定住生活に安らぎを見出す中、市長だけは適応できずにいた。そんな時、ヒー星からニュースが来た。反物質宇宙がこの宇宙と衝突するのだという。そうなれば宇宙消滅の危機。これを救う手だてはあるのか?結末はいかにもキリスト教的だが、そこにいたる過程がスリリング。時の凱歌価格:336円(税込、送料別)
2011.05.14
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渡り鳥都市の中でも最大級の「ニューヨーク」が、その賢明な市長とともに、燃料や食料の補給のためにあちこちの惑星に立ち寄る。ユートピア星、ヒー星、アコライト星…物語の定石としてどこへ行ってもトラブルに巻き込まれ、知恵を絞って苦境から抜け出し、別の惑星に向かい、最後には「故郷」を見出す。渡り鳥都市は、だいたい地球の警察からは嫌われている。もともと地球に属していたくせに母星に敬意も税金も払わず、宇宙海賊になっていたりするからだ。もちろん「ニューヨーク」は宇宙海賊ではないが、地球にその尾っぽを捕まえられているわけではない。もっと自由な存在だ。それでも彼らに地球精神はある。地球精神とは何か? さよう、ほとんど自由と精神の開拓者魂のようなものだ。要するにアメリカSF。シリーズの中で最も長い本編は、実は一番最初に書かれた小説でもある。他の三編はプロローグであり、プロセスであり、エピローグにすぎないというわけ。なお平井和正のウルフガイ『狼よ、故郷に還れ』のタイトルが、ここから来ていることは言うまでもない。【中古本】 地球人よ、故郷に還れ (ハヤカワ文庫 SF 315 宇宙都市 3)
2011.05.13
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『宇宙零年』の続編。反重力と抗死薬は西側世界のものになったが、東側との絶えざる抗争で両陣営ともに警察国家の道を歩みだし、先駆者たちの営為にもかかわらず、その技術はいったん失われる。それが再び見出されたのは200年後。なんだかキリスト教の発生と教会の歴史のようだが、まあそれはおいといて、独力で開発された技術は、少し違った。地面ごとある土地の一角が透明な球形のドームの中にすっぽり入り込み、宇宙に飛び出す。それはまさに天翔ける渡り鳥のイメージであった。で、この物語の主人公は、1000年以上後まで地球に残ったグループであったのだが、好奇心のためにある専制的な渡り鳥都市に収容され、地球を後にしてしまう。その後、渡り鳥同士の交換トレードで「ニューヨーク」に放出された少年は、不老長寿の抗死薬を服用できる有用な「市民」となるべく志願し、努力する。いろいろあって自分をトレードに出したかつての渡り鳥都市の不穏な動きを嗅ぎつけた少年は、自らの力で問題を解決。その功労が認められ、「市民」として生きることを許される、という結末。典型的なアメリカ的成長物語としてのジュブナイルSFで、そちらの方に分類しようかとも思ったが、全体の整合性をかんがみ、ここに紹介することにした。星屑のかなたへ価格:273円(税込、送料別)
2011.05.12
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発端は21世紀初頭。西側世界はソビエトに敗北しようとしていた。資本主義が社会主義に勝利するためには、新しいフロンティアを開拓するしかない。「地球はソビエトにくれてやる。だが宇宙は俺たちのものだ」宇宙は広く、人生は短い。人類が宇宙に出ていくためには、時間とスピードが必要である。そのために考え出されたSF的アイディアが反重力と抗死薬。このふたつのテーマを巡って、地球と木星の衛星とで物語が交互に展開されていく。非常に音楽的な構成であり、未来に希望を抱かせるコーダでこの一編は終わる。古き良き時代の宇宙叙事詩の幕開けである。なお、矢野徹さんに『地球0年』というのがあるが、タイトルはこの小説の邦題から採ったものだろう。【送料無料】宇宙零年価格:428円(税込、送料別)
2011.05.11
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『SF万国博覧会』で紹介されていた本を図書館から借りる。この分野の本に関しての覚書はそういうパターンが多くなると思う。ブラナーは、今まで『テレパシスト』や『星は人類のもの同盟』などを読んだことがあるが、それらよりはるかに面白かった。「ロビンソン・クルーソー」のヴァリエーションが、もともと人をひきつけるモチーフであることが大きな理由だが、材料をもとにした調理の手際がすばらしいのだ。ブラナーはもともとイギリス人だが、物語的には、ジュール・ヴェルヌのロビンソン小説『二年間の休暇(十五少年漂流記)』と、『神秘の島』を思わせる。実際、この二つの物語をSF的に敷衍した一種のサバイバル小説だ、と言えないこともないのである。はるかなる未来。超新星で滅び行く植民星「ツァラトゥストラ」を命からがら脱出した二つの宇宙船は、何とか人間が住める原始的な未知の惑星に着陸。ひとつは山の中で、ひとつは海岸の近くで、それぞれ新しいコロニーを作る。だがそのあり方はずいぶん違っていた…。極限状態に置かれた人間の心理、その中で格闘する主人公たち、と類型的ではあるが読みどころ満載の物語。先ほどヴェルヌの小説に似ているといったけれども、彼のロマンに出てくる「超人」が活躍するのも本書の魅力である。原始惑星への脱出
2010.08.25
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彼女の小説は、これまで怪奇幻想小説に分類してきましたが、これはSFに入れてもいいと思います。女戦士ジュアルは、銀河を支配するライオニーズ帝国の女王。この男まさりの武将が恋に陥った相手はエジード。ライオニーズ帝国に反乱をおこしたハヴァニ帝国の主将であった……。様々な新兵器を繰り出して戦うふたつの帝国、そしてその先頭に立たされるジュアルとエジード。敵ながらの恋、戦乱、そして人類最期の日。その来たるべき夜に神殿より下される最期の審判とは?「ノースウェスト・スミス」で知られる女性作家唯一の長篇スペース・ファンタジーを、ここに定評の名訳でおくる!まあそのとおりで、これから読もうという読者に新たに付け加えることもないのですけれど、しいて言えば、やっぱり、ムーアには松本零士がよく似合う、ということでしょうか。
2010.08.09
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直訳すれば「心の掛け橋」だろうが、「宇宙の寄坐」の方が個人的には適当なように思える。超科学的宇宙旅行とテレパシーをモチーフにしたファースト・コンタクトテーマの小説で、最初に投げられた布石から、アイディアが波紋のようにあるいはマトリョーシカの入れ子のように広がっていくさまは、SFならではの展開である。構成も野心的で、これがもうちょっとパンクになればディックに、ワイルドになればアルフレッド・ベスターになるところを、ハードSFという枠の中に、ともかくもきっちり抑えようとしている律儀なところがこの作者らしいところだ。
2010.05.19
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『終わりなき戦い』がホールドマン版『宇宙の戦士』なら、こちらはホールドマン流『月は無慈悲な夜の女王』か。ネビュラ・ヒューゴー同時受賞作との共通点はセックスと戦争と陰惨なリアリズム。ただし本書には考えるコンピュータは登場しない。戦争も月VS地球ではなく地球の周りを回る人工的小惑星世界―地球間のものであり、結末に救いがないわけではないが、かなり悲惨だ。「新世界」の女子大生が地球への一年間の留学を許され、革命に巻き込まれ、レイプされ、恋人を殺され…いや、もうよそう。図書館から借りた本だが、二度と読むに忍びない。
2010.05.18
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サイバーパンクは苦手だ。ロボコップ、ターミネーター、キカイダー、銀河鉄道999、せいぜいそれくらいで十分だ。第一後味がよくない。アシモフのSFとは対極に位置する小説で、読んだあとのバッドトリップが恐ろしい。ここに収められた11篇も、疾走する文体だか何だかしらないが、古きよきSFを愛する不具にとっては、ヘビィメタルのライヴを聴いているようなもので、『ライ麦畑でつかまえて』のなりそこないみたいな偽悪的「文学」性にはとてもついていけない。小説としては、村上春樹の方がよっぽど本物である。もちろん中には「接続された女」のように読んでよかったと思える作品もあるが、少なくともこの本にそんな傑作はなかったように思う。処分本No.201。
2010.05.10
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いかにもありそうな現代小説と、ホラーやSFや寓話が同居しているショートショート集。車や女性、現代生活、囲碁、サラリーマンなどをテーマにしたものが多い。一服の清涼剤だが、個人的には豊田有恒さんの解説が一番面白く読めた。処分本No.200。
2010.05.06
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発端は『コロサス』の続編に近い。コンピュータが政策を決定する体制に反旗を翻した主人公たちは、しかし一人の裏切り者のために地球を追われ、『宇宙の孤児』となる。新しく見つけた「地球」は天国かと思えたが、このままでは『大地は永遠に』と同じ運命をたどる。文明を維持するために彼らが選んだ方法は、新しい「金星」の海に棲息する水棲人社会に自らの意識を同化させることだった。…ペーパーバックにして二百頁たらずの薄い本だが、この中にコンピュータ社会で実現される最大多数の最大幸福、人口爆発と自由の維持、人間の意識や精神と肉体である脳の関係など、きわめてSF的なスペキレーションが矢継ぎ早に展開される、フランケ畢生の力作。-----ドイツSFもなかなか捨てたものではないと思いましたが、ショートショートならともかく、ノベルとしてこのような結末を受け入れるには抵抗があります。処分本No.198。
2010.05.05
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トーランとの千年戦争はベトナム戦争のメタファであり、それにウラシマ効果と人口爆発とその解決策としての同性愛というスパイスをふりかけた、アンチ『宇宙の戦士』小説。エピローグがマンデラにとってハッピーエンドなのが救い。処分本No.197。
2010.05.05
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地球に不時着した宇宙人。宇宙船は壊れて修理不能。世は石器時代。しかたない、この星の文明が発達するまで冷凍睡眠するしかない--。目覚めたのは現代。宇宙旅行など技術的にはまだまだ先の話。再び眠りにつくために十分な量の薬は、もうない。だが地球人の協力者がいた。医者だった彼は、残った数滴の液体から薬の成分を分析し合成に成功。その代わり自分も宇宙に連れて行ってくれと頼み込む。著者の楽観主義にはついていけない場面もあるが、核とともに生きる現代人のお伽話あるいは寓話として一読の価値はあろう。処分本No.196。
2010.05.05
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SFは必ずしも文学ではないけれど、いい作品は、職人芸である。「禽獣」筒井康隆川端先生も真っ青の、スラプスティックな「ドリトル先生」。「時尼に関する覚え書」梶尾真治時間軸を逆に成長する「遡時人」少女との恋愛。「父の樹」神林長平植物人間という言葉からあなたは何を連想するか。「黄色いアヒル」東野司「パソコン日記」栗本薫対を成すコンピュータ・ホラー小説。とくに東野さんの小説は20年前に書かれたとは思えない。「銀河好色伝説」中井紀夫タイトルから連想してください。「食人獣」草上仁古典風でまっとうな短編。この人の短編集はいろいろ読んでみたいな。「赤い月の都」川又千秋もうひとつの楽園追放物語。「想い出と夢の間」光瀬龍SF界の松本零士さんの「帰らざる時の物語」。「神の仕掛けた玩具」橋元淳一郎きわめて人間くさいハードSFにして宇宙小説。一身障者として戦慄を覚えた。…覚え書を書いたので、処分本NO.189。
2010.05.04
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これまた著者最後のフィクション。海洋小説とアトランティスをモチーフにしたSFと『霧の国』の流れを汲む心霊小説を力技でまとめあげた一篇で、ひとつひとつ取り上げると同じテーマの別の作品には及ばないが、これはこれでおもしろい。もっともいささか時代がかっているのは否めず、『海底二万里』より通俗的なので、処分本No.188に指定。マラコット深海
2010.05.03
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スペース・オペラ「キャプテン・フューチャー」シリーズは、「ズッコケ三人組」シリーズと同じように、基本的にどの巻から読んでも差し支えない。ただ本書は『輝く星々のかなたへ!』に続く作品となっていて、併せて読むほうが望ましいだろう。もちろん単独で読んでも十分楽しめるし、シリーズの中でも五指に入る傑作である。この巻では、フューチャーメンは悪人を追うものではなく、逆に警察機構から追われる身である。太陽系政府主席殺人の濡れ衣を着せられたカーティスが、どのようにして名誉を挽回したか。また月のラジウム鉱山を狙う悪党たちをどうやって撃退したか。そういうことは、わざわざ日記に書くほどのことではない。追記。このシリーズでは、太陽系のあらゆる惑星、衛星に先住民がいるという設定になっている。地球の月も例外ではなかった。嗚呼。処分本No.187(旧版)。こちらは合本版。輝く星々のかなたへ!/月世界の無法者
2010.05.02
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原理主義的で禁欲的なヘブライ的新宗教が人々の精神生活を支配する未来の地球。そんな息苦しい社会の片隅で、主人公は不感症の妻と義務的な「おつとめ」を強要されていた…と書くとまるで『1984年』だが、オーウェルの小説と違って、男は地球から巧妙な手段で逃げ出すことができた。男ばかりと思われたその星で、彼は訛りのあるフランス語らしきものを話す「異人」の娘と恋におちる。相思相愛で結ばれた二人だったが…ファーマーの処女長編であり、SFにおいてセックスがタブーであった時代に新境地を拓いた、画期的な作品である。ただ、それ以後の「解放された世界」を知っていると、描写そのものは、いささか物足りないかもしれない。処分本NO.186。
2010.03.26
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『デューン 砂の惑星』で有名な著者の初の長編小説とか。内容的には、東西の対立が続く21世紀の世界で、海底を舞台に繰り広げられる原子力戦争という設定。『沈黙の艦隊』を泥臭くしたような、一時代前のSF。処分本NO.185。
2010.03.24
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人類より賢い機械が出現したらどうなるか、というシュミレーション小説あるいはディストピア小説のプロローグ。例によってフランケンシュタインコンプレックス丸出しで、冷戦下の影響を受けているが、一読の価値はあると思う。なお、コロサスとは紀元3世紀ごろ、エーゲ海のロードス島の港口に建っていたと伝えられるヘリオスの巨大な青銅像だそうである。処分本NO183。コロサス ボビングヘッド:映画X-MEN/FUNKO Colossus Wacky Wobbler
2010.03.17
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著者の最長編小説にして最高傑作の、日本を代表するサイバーパンク。AKIRAとナウシカとコマーシャリズムの残骸を足して3で割ったような小説。ただし超能力とは全く無縁だし、人口密度はきわめて低い。壊滅戦争が起こってしまった後の、頽廃的な世界そのものの描写を楽しむ本。アド・バード
2010.03.06
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同僚の美術の先生が読んでいたのを、借りた本。著者についてはスペース・オペラ好きの方なら言わずもがな。100頁足らずの薄い冊子だが、タイムトラベルテーマSFについての紹介と、アメリカSF史の紹介の文章は、若き日の野田氏の薀蓄もさることながら、その真摯な姿勢に好感が持てる。ところで、宇宙塵って、今でも発刊されているのかしらん。
2010.01.06
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作品の前提となる世界観は、ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』と同じである。ただ、カミングスによればわれわれがいる宇宙こそミクロコスモスであるという。というわけで、ミクロコスモスからマクロコスモスへの脱出劇は、今読んでもなかなかいい。だが着いてからのアイディアは…向こうの人間に原始人に見られるというのは『ガリバー旅行記』の大人国を踏襲、大頭人は『火星のチェス人間』のカルデーンの二番煎じとあっては、新味も薄れようというもの。ただ、1920年代にフェミニズムについてあれほど突っ込んだ発言をしているのは、注目に値するかもしれない。処分本No.170。
2009.11.06
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破滅テーマと時間テーマと反ユートピア小説とメロドラマとミステリーが一体となった未来社会学的なシュミレーションSF。舞台は核戦争後300年たった地球で、人々は一年間の強制労働期間を除いて、均一かつ安楽に生活している。レーニンや毛沢東が舌なめずりしそうな社会主義的理想郷。彼らの生活を支えているのはロボットである。だがロボットといっても機械ではなく、核戦争直前の過去から拉致されてきた人間だった。催眠教育を受け、ロボットとして未来人の生活を支える。ネタを明かせばそういうことだが、ここにひとつ異変が生じた。シマの娘が、ロボットに恋をしたのだ。しかもその娘自身、放射線障害で死んだ実の娘の身代わりとして過去から連れてきた少女だった…タイムパラドックスと多元宇宙が暗示的に示唆されている結末に不満は残るが、三一好みの反戦小説ではあろうか。
2009.08.12
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数年前にテレビでもネタにされたことがあるので、内容的には結構有名だと思う。ただあの番組を作った人がこの本の存在を知っていたかどうかは定かでない。ソ連に対抗して競うように進められたアメリカの宇宙開発は、月に一番乗りする技術は十分あったけれども、ロケットの調整が時間的に間に合わなかった。そこで、万一事故が起きたら大変だという観点から、急遽無人ロケットを発射させ、月面着陸の放映は宇宙航空士教育用特撮映画を流すことにした…というのはフィクションとはいえ生々しいお話で、結構つリこまれてしまった。なお、作者は『まぼろしの支配者』の草川さん。つまりSF作家である。本書は、一種のパラレルワールドものと言えるだろう。ただネットで検索するといろいろな本が出てくるので、かえって驚いてしまった。寝ているうちに、もうひとつの世界にスリップしてしまったのだろうか。
2009.08.08
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図書館の相互貸借サービスを利用すれば無料だが、インターネットで買うと1万円もする古書。ツィオルコフスキー。言うまでもなく、ロケットの父である。本によると、猩紅熱にかかって聴覚障害者になり、小学校の先生をしながらたくさんの学術論文と、3編の科学的空想小説を書いたそうだ。空想的科学小説ではない。科学的空想小説である。ジュール・ヴェルヌも真っ青の「科学的に正しい」サイエンス・フィクションなのだ。エーテル空間など当時の「常識」の部分を除けば、ロケットの理論、人工衛星、無重力、宇宙服、宇宙での光合成と排泄物のリサイクル、太陽熱の活用等、とてもロシア革命前夜の本とは思えない。冒頭は科学者たちの会合から始まる。その名前がまたふるっている。ニュートン、ガリレオ、フランクリンなど各国のお歴々が勢ぞろい。そこにロシアのイワーノフがとうとうと自説を開陳し、やがて一同引きずり込まれていく…作風的にはやはりジュール・ヴェルヌに似ている。ただ、例の偏執狂がいないところがツィオルコフスキーらしい。どこまでも啓蒙的なのだ。唯一、太陽とともに移動する月の「動く植物」が登場するあたり、ヴェルヌが踏み込めなかった世界に一歩、足を踏み入れたという感じだろうか。そういう意味では、この本も空想的科学小説と言えるのかもしれない。願わくば火星に近づくだけでなく、着陸してほしかったけれど。また、ヴェルヌの小説は常に人間くさいが、この本の舞台は1916年から百年後の世界で、世界連邦が実現し、もう70年も戦争のない(どこかの国みたいな)ユートピアである。2017年までもういくらもないが、そのときまでに世界は少しでもツィオルコフスキーの理想郷に近づいているだろうか?
2009.07.30
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これも、図書館に寄贈していつのまにかなくなっていたら、新装版として復活していた本。1ダースの作品のうち、「ぶっそうなやつら」「町を求む」「沈黙と叫び」はミステリー風。「おそるべき坊や」「ユーディの原理」「帽子の手品」はスリラー。のこり半分がSFだが、そのうち「電獣ヴァヴェリ」「ノック」「シリウス・ゼロ」は接触テーマ。最後の3篇が(全体がそうだけど、とくに)「狂気」をテーマにしている。「さあ、気ちがいになりなさい」はよくある人間の知性と昆虫の知性の問題。「みどりの星へ」は「帰郷」のヒントにさせていただいた。「不死鳥への手紙」は、長寿ミュータントから人類へあてた手紙の形式をとった書簡体小説。「銀河鉄道999」のテーマにも通じるようで興味深かった。なお、『太陽の黄金の林檎』の翻訳者は詩人だったが、こちらは日本を代表する掌編SFの名手星新一さんの邦訳。解説は漫画家の坂田靖子さん。まさにうってつけの組み合わせである。さあ、気ちがいになりなさい
2009.07.27
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図書館に寄贈していつのまにかなくなっていたら、新装版として復活していた。もう20年以上も前に、傾倒した本である。読み返してみると、(昔のように熱狂的というほどではないにせよ)確かにいい。この短編集には全部で22篇収められているが、「霧笛」「サウンド・オブ・サンダー」「草地」「歓迎と別離」そして表題作などは、どれも忘れがたい作品である。もうひとつ。珠玉の短編集、という言葉がある。たいていの場合、それは嘘だ。あるいは誇大広告である。玉石混交。玉のなかに、ひとつ、ふたつくらいは石が混じっているものだ。実を言うと、このアンソロジーの中にも、これは石かな、と思わせるものがないでもない。だが、いやいややっぱり玉だ、と思い返すのである。なぜか。翻訳がうまいからだ。端的な例を挙げよう。「The Great Wide World Over There」。これを「山のあなたに」と翻訳するセンス。これにしびれた。うまいはずである。訳者は小笠原豊樹。本名だとわからない人もいるだろうが、詩人の岩田宏さんのことである。頁をめくれば、ブラッドベリの詩情とよくかみ合って、たちまちのうちに映像的かつ音楽的な日本語の世界が眼前に広がってくる。そう。ブラッドベリのアメリカ文学史における位置付けなどという堅苦しい議論はさておいて、読者はただ、楽しめばいいのである。太陽の黄金の林檎
2009.07.27
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ジャケ買いという言葉はあまり好きではないが、古典的名作を若い世代に復活させる役割は果たしていると思う。太宰治の『人間失格』や夏目漱石の『こころ』がいい例だ。SFのかつての名作も、ジャケットをかえて復刊されるものがぼつぼつ、でてきた。いいものはいつになってもいいのだ。さて、本書はそういう類の本ではないが、宮崎駿さんが表紙を書いているので、ジャケ借りした図書館の蔵書だ。人類が宇宙に進出し、さまざまな星に散らばって、独自の社会形態を築いているはるかな未来。オンボロ船の船長パウサートは、ふとしたことで三人の超能力姉妹と知り合い、彼女たちのふるさと惑星カレスへと向かう。だが、そこは禁断の惑星だった。なぜなら、銀河帝国の中枢部は他の銀河系からやってきた人工頭脳によって傀儡と化しており、そのことに気がついている唯一の存在が惑星カレスの「魔法使いたち」だったからである…ドタバタしたスペースオペラだが、宮崎アニメを念頭におきながら読んでも、ちっとも違和感はない。SF好きな読者の慰安にはもってこいの一冊ではなかろうか。惑星カレスの魔女
2009.05.21
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フレドリック・ブラウンの代表作は? とたずねられれば、多くのファンは『火星人ゴーホーム』か『発狂した宇宙』と答えるでしょう。ご多聞に漏れず、かつてブラウンの邦訳されたほとんどの作品を読んだ不具も、彼を彼たらしめているもっともブラウンらしい作品は、と問われればやはり上記の二作品を推します。けれど、どれか一冊だけをとっておけ、と言われたら迷わずに本書を選びます。まず主人公の年齢設定が秀逸です。物語開始時で57歳。これなら年をとっても読み返すことができます。そしてハインラインばりの強固な意志をもつ主人公の見事な行動力とストーリー展開、そしてかの巨匠の作品にはない種類のペーソスと挫折。センチメンタル一歩手前で抑制された、ユーモアの利いた美しい言葉の数々。翻訳がまたすばらしく、福島正美訳の『夏への扉』と双璧を成すといっても過言ではないでしょう。また、多少のタイムラグはありますが、冷戦後の世界を描いているという意味で、1953年に書かれた小説にしては、政治的に予言的な箇所もちらほら。昔図書館に寄贈したのですが、いつの間にか除籍になっていました。ということで最近復刊されたのを、あらためて購入しなおした次第です。以下参照。天の光はすべて星
2009.03.13
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レビューとしては不具の下手な感想を書くよりも、厚木淳氏の「ノート」から引用した方が親切だろう。「SFは人類の未来への賛歌であるが、同時にまた未来への挽歌でもありうる。スペース・オペラ系統の作品が主として前者に属するとすれば、ミュータント・テーマ系統の作品は後者に属するものが多い。本書もこのタイプのSFで、1950年代以降のSFの傾向を示す典型的な作品のひとつである。「本書は不死性を便宜的な手段としてではなく、メイン・テーマとしてとりあげ、そういう変異人種の発生がもたらす社会制度や医療制度の革命的な変化、黄金の血を享受できるひと握りの支配層と、彼らの延命のための材料と化し去る大多数の人間という極端な階層分化、そして両者の仲介をする医師の王国の出現を描いている。作者の目は不老不死の人間そのものよりも、むしろ、そうした新人種の狩り立てを通して未来社会の地獄絵図を描くことに向けられており、そこにこの作品が持つ不気味な迫力が生まれている。逆にいうならば、H・G・ウェルズが描いた「透明人間」は、あくまでも怪物的な個人でしかなかったが、現在では「不老不死人」を興味本位に描くだけではSFとしての存在理由を獲得できないのだ。迫力といえば、この作品が吸血鬼テーマの裏返しであることに読者はお気づきだろうか? 中世紀以来、吸血鬼の跳梁に戦々恐々としてきた人類が、今や吸血鬼と化して新人種の血を求めているのである」つぎに作中の語録をふたつ、抜き出してみよう。「片輪の信念を持った完全な人間は、完全な信念を持った片輪の人間よりましだ」「生命というものは、当人がそれによって利益を受けるためのものではない。人から生命を奪うのでなく、人に生命を与えることによって、持ちこたえられるものだ」惜しいことに、第4(最終)章の障害者に対する記述が差別的だという理由でだろうか、1964年刊行後、すぐに絶版になってしまった。…
2009.02.15
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ウェルズやヴェルヌといった古典中の古典を別にすれば、本格的エンターテイメント系SFの随一の傑作はやはり本書だと思う。惜しいことに一度読んだら鮮烈にネタが焼き付いてしまうので、あまり何度も読み返すには及ばないのが欠点といえば欠点か。夏への扉映画『バックトゥザフューチャー/BACK TO THE FUTURE《PPC004》』ポスター◆
2009.02.13
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スターホーム:地球=アメリカ:イギリス。星は人類のもの連盟=土地は白人のもの連盟。レギュラ星人=フウイヌム。地球人&スターホーム人=ヤフー。本書は、以上のメタファーで語られるスペキュレイティブ・フィクションである。ほとんどそれに尽きると思う。ついでに、フウイヌムもまた一種の被造物にすぎないことを付け加えれば、個人的な覚書としては十分である。
2009.02.07
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『虎よ! 虎よ!』で有名なアルフレッド・ベスタ―の短編集。原題は『地球のダークサイド』。「時間は裏切り者」死んだ女が生き返っても、こちらは年をとってしまっている。「マホメットを殺した男たち」過去を変えることによって現在を変えることはできない。なぜなら…「この世を離れて」混戦電話から始まる恋もある。たとえ彼女が並行世界に住んでいても。「ピー・アイ・マン」不条理な世界を条理化しようとして孤軍奮闘するサイコな男の喜劇。「花で飾られた寝室用便器」最終戦争の爆発ショックで、500年後の未来にタイム・スリップした男女の邂逅。そこはハリウッド映画を戯画化したような悪夢の世界だった…「そのままお待ちになりますか?」世知辛い世の中、悪魔と契約してこの世の春を謳歌するのも楽じゃない。「かくて光あり」を裏返しにしたようなキリスト教文明圏的ブラック・ユーモア。「昔を今になすよしもがな」この世にたった一人残ったイブと、この世にたった一人残ったアダムの邂逅の物語。
2009.01.30
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「すべての夏をこの一日に」レイ・ブラッドベリ残酷で優しい子どもの世界を描いた詩情あふれる掌編。「地球の緑の丘」ロバート・A・ハインライン盲目の詩人ライスリングの物語。ものすごくベタな古典的作品で、逆に普遍的だと思われる。「クリプティック」ジャック・マクデヴィット宇宙の隣人は必ずしも平和的な種族ではないかもしれないというお話を電波天文台にかけて少々ひねったもの。「帰ってきた男」ステイーヴン・キング『ジキル博士とハイド氏』の流れを汲む、『寄生獣』系の侵略テーマSF的ゴシック小説。「夜来たる」アイザック・アシモフ「すべての夏をこの一日に」を裏返しにして理屈っぽく仕上げたような、この人らしい小説。「闇と夜明けのあいだ」アルジス・バドリス異星に適応するにはふたつの道がある。ひとつは、惑星の環境を変えること。もうひとつは、環境に合わせて自分自身の生物学的位相を変えること。現実的に考えれば、国と国とのつき合いにおける問題に置き換えられるテーマである。「楽園にて」R・A・ラファティアメリカのほら吹き爺さんによる、エデンの園惑星発見の裏話。最後のオチが落語的。「宇宙の影」フィリップ・ホセ・ファーマー宇宙船が不測の事故で光速を突破したらどうなるか、という疑似シュミレーション小説。「夜のオディッセイ」ジェイムズ・イングリス放浪するのは人間ではない。ボイジャーのような無人宇宙探査船である。生物が全く登場しない、SFだから成り立つユニークな一編。「ローマという名の島宇宙」バリー・N・マルツバーグニュー・ウェイブ系SFへのアンチテーゼともとれる、楽屋オチ的SF。「そして目覚めると、わたしはこの肌寒い丘にいた」ジェイムズ・ティプトリー・Jr.この人の小説はタイトルの詩情と中身の硬質さとの落差が激しい。本編もフィリップ・ホセ・ファーマーの『恋人たち』に挑戦するような猛々しさに満ちている。要するに、犬と猿が愛し合っても子どもなんか生まれませんよ、ということか。「ブルー・シャンペン」ジョン・ヴァーリイアンソロジーのオオトリにふさわしい中編。宇宙開発が日常化した近未来を背景にした普通小説で、しかも恋愛ものである。1981年という時点で共産主義の敗北と拝金主義の横行を予言した先見性については、単に小説の世界観として必要だったからかもしれない。けれど、そこで扱われているテーマは普遍的である。…不慮の事故で両手両足を失い、脊髄にも損傷を受けた女性。この時代ではしかし、ボディガードを着用することで、一見普通の社会生活を送ることができる。問題はその補装具が目の玉が飛び出るほど高く、彼女の才能を切り売りしても、リース料金に追われている、ということだ。そんな彼女に恋人が出来た。彼は女性を心から愛している。裸を見ても動じない。問題は、彼が貧乏だということ。そして彼女の給料では、リース料金と二人の生活費の両方を稼ぐことは難しいということ…。世界に彼と二人きりなら、ボディガードなしでも生きていけるかもしれない。けれど…悩んだ彼女がとった結論については、本編をお読み下さい。…「規則その一。むこうからたのまれないかぎり、かたわに手をかさないこと。なにかをするのにいくら苦労しても、そのままほうっておきなさい。むこうは人に頼むことをおぼえなきゃならないし、あなたはむこうにできるかぎりやらせることをおぼえなきゃならない」「ぼくはいままでかたわとつきあったことがなかったんだ」「規則その二。ニガーは自分をニガーと呼んでもいいし、かたわは自分をかたわと呼んでもいい。でも、五体満足な白人がどっちかの言葉を使ったら、ただじゃすまないわよ」
2009.01.21
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「イカロス・モンゴルフィエ・ライト」レイ・ブラッドベリこれから宇宙に飛び立とうとする男の詩的な夢だったという落ち。「月を盗んだ男」チャールズ・シェフィールドハインラインの「月を売った男」へのオマージュ。地球が再び宇宙開発に乗り出すように、おたずね者になって宇宙に飛び出した男の話。「だれだ?」「犬の星」アーサー・C・クラーク宇宙時代の猫や犬と人間のかかわりを素描した掌編。「犬の星」からはは『ブラック・ジャック』に出てくるラルゴを連想した。「わが名はジョー」ポール・アンダースン『火星ノンストップ』参照。「いこいのみぎわ」レスター・デル・レイ『愛しのヘレン』の作者のセンチメンタルなお話。ポンコツの宇宙船でお茶を飲む老パイロットとその妻の生活。しかし現実の波は厳しく…。悪人の登場しない、悪く言えば凡庸な、よく言えばほのぼのした宇宙小説。「プロ」エドモンド・ハミルトン宇宙飛行士になったわが息子の旅立ちのときをひかえた、往年のスペースオペラ作家の複雑な胸中。「かくて光あり」ジェイムズ・P・ホーガン創世記を逆手にとって、なぜビックバンによってこの宇宙ができたかを「解き明かした」画期的な小説。お役所仕事への風刺がきいている。「無辺への切符」デーモン・ナイトどこでもドアは世界的に有名な未来の発明品だが、開けたらどの惑星にたどり着くかわからないゲートがあったとしたら? しかしトリップを繰り返すことによって…「空間の大海に帆をかける船」バリントン・J・ベイリーこの大気が海だと考えて、異次元空間から突如つかみどころのない船が出現したら、魚である地球人はどう反応するだろう?「バースデイ」フレッド・セイバーヘーゲン宇宙は広く、星々は遠い。はるかかなたの惑星に移住するためには、いくつもの世代をかけねばならない。そのためには優秀なリーダーが必要だ。リーダー育成のために船のコンピューターが出した「残酷な」帝王学の教授法は…「鉛の兵隊」ジョーン・D・ヴィンジアンデルセンの同名童話へのオマージュであると同時に、鉛がサイボーグ、踊り子が宇宙飛行士を暗示しているフェミニズム小説でもある。ウラシマ効果とサイボーグというネタは清原なつのも使っていたが、二人ともサイボーグになってハッピーエンドという構想はややショッキングだった。
2009.01.20
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「しばし天王の祝福より遠ざかり」ソムトウ・スチャリトクル宇宙人の学校教材にされて半永久的に同じ一日を繰り返す地球人の話。「時間層の中の針」ロバート・シルヴァーバーグ人生を改良するために過去に手を加え続ける男の執念。手塚治虫の『ザ・クレーター』にも同じモチーフのお話があった。「遥かなる賭け」チャールズ・シェフィールド妻の難病を治すために冷凍睡眠にして未来に託した男。『ブラック・ジャック』にも似たお話があった。「ミラーグラスのモーツァルト」ブルース・スターリング&ルイス・シャイナー各時代の偉人に同時代的に遭遇できる多時間企業が世界を席巻。「ここがウィトネカなら、きみはジュディ」F・M・バズビイ意識だけが不随意に時間転移する一組の男女の純愛物語。「若くならない男」フリッツ・ライバー 逆まわりに時間が流れる世界の中で、若くならずに逆行して歳老いていく男の告白。「カッサンドラ」C・J・チェリイ未来の悲惨な状況が現前の風景に重なり合って見える女性の悲劇。「時間の罠」チャールズ・L・ハーネス侵略テーマSFと時間テーマSFの稀有な融合。最後はもちろん…「アイ・シー・ユー」デーモン・ナイトいつでも誰でもどこでも過去を覗けるが故にプライバシーというものがなく、ゆえに治安が保たれている逆ユートピア社会。「逆行する時間」デイビィッド・レイク来るべき大破局を避けるために未来へと飛び立ったタイム・トラベラー。しかし世界が選んだ道は、二十世紀から紀元一年までを繰り返し逆行―順行することだった。「太古の殻にくるまれて」R・A・ラファティ ほら吹き爺さん版『象の時間・ネズミの時間』。『わが内なる廃墟の断章』フィリップ・ホセ・ファーマー 宇宙人のお節介のおかげで、時間は順行するのに意識は逆行してしまう地球人。このままでは早晩みな大きな赤ん坊になってしまう。起死回生の打開策はあるのか?「バビロンの記憶」イアン・ワトスン過去のある時期を現代にそっくりそのまま再現した大学都市。当然そこへ入るためには催眠教育で当時の人になりきって…
2009.01.19
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SFの舞台は、多かれ少なかれ著者の母国のカリカチュアになりがちだ。本書もアメリカの医療保険の実態を反映しているように思うが、……しかしそれよりも臓器移植が当たり前になり、ES細胞を用いた再生医療技術が行き詰まりを見せている現在、未来の切り札として万能細胞が注目されている現在の状況を考えれば、遠い将来、遥か彼方の植民惑星で、地球からの贈り物が革命的変化をもたらすという設定もあながち荒唐無稽とは言えないのかもしれない。処分本No.166。
2009.01.04
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核戦争後の世界は、女の国と戦士の国にわかれていた。何のために? ふたたび戦争の惨禍を起こさせないために。戦士の国というと聞こえはいいが、本当は女の国から荒々しい男の遺伝子を放逐するための制度だったのだ。男たちに肉弾戦以上の戦争をさせず、彼ら同士で殺し合わせるために。戦争が嫌なら女の国に帰って来ればよいのだ。…という作品の背後にある世界観が半分も読まないうちに透けて見えた思考実験小説。世のありようが変わらぬまま、女性が男性にとってかわった日本を戯画的に描く『フェミニズムの帝国』と違って、核戦争の苦い教訓をもとに、世界の変革を大胆に唱えた本書は、興味深い諷刺小説でありまたSFである。ファンタジィがしばしば現実から逃避した世界を描くのに対し、現代のSFは現実の門に続いている。黎明期にはファンタジィと未分化だったSFだが、これも時代の流れだろうか。女子供を馬鹿にした男たちへの優しい復讐の物語であり、米つぶのついたソーセージを従僕の男が食べるなどあちこちに隠喩がみられる本書ではあるが、目論みがはっきりしているので一度読めば十分。処分本No.163。
2009.01.02
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テレパシィ能力をもつ男女が宇宙をまたにかける山師となり、銀河系政治や経済を左右するようになり、やがて二百年来の仇敵である共産主義勢力と…段ボールの奥底からでてきた冷戦時代の遺物のようなSF。「第四心域」とか、まるでヴォクトの八方破れのハッタリを聞かされているようでつらかったです。久しぶりに処分、本No.162。まだ読んでない人、読む価値はありませんよ。
2008.12.31
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ヴィンテージSFセレクション胸躍る冒険篇、だそうな。『火星ノンストップ』ジャック・ウィリアムスン火星人が地球から大気を吸い上げようとした…その気流に乗って単葉機で惑星間移動を試み、邪悪な陰謀を阻止した男の物語。『時の脇道』マレイ・ラインスター並行世界SFのヴァリエーション。もしもいろんな進化・発展を遂げている(あるいは、遂げていない)並行世界が、同時多発テロ的にこの世界に現出したら?『シャンブロウ』C・L・ムーア昔早川文庫から出ていたムーアの幻の傑作。松本零士の挿絵にふさわしい、宇宙のサッキュパスに魅入られたわれらが主人公ノースウェスト・スミス。さてその運命やいかに?『わが名はジョー』ポール・アンダースン半身不随の身体障害者になって生きるか、グロテスクだけれども健康な異星人となって生きるか。本アンソロジー随一の傑作。『野獣の地下牢』A・E・ヴァン・ヴォクト『ターミネーター2』を思わせる出だしの恐怖が、マリオネットのような悪役アンドロイドへの同情心に変わるラスト。「かわいそうなフランケンシュタイン」。『焦熱面横断』アラン・E・ナース水星が自転しない惑星だと信じられていた時代に書かれたSF。男たちはなぜ永遠の昼の側の水星を横断しようとするのか? 答え「そこに山があるからだ」。『ラムダ・1』コリン・キャップ地球の裏側に到達する最短距離は? もちろん地球を貫通すること。ただし亜空間であるタウ空間を通って。けれどもしその途中で事故が発生したら? 荒唐無稽ながら手に汗握る忘れられた佳品。 火星ノンストップ
2008.12.27
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まるで革命家のためのバイブルだ。『宇宙の戦士』で見せた国家主義はここにない。作者はただアメリカ独立戦争のSF版を書いただけなのかもしれないが、それでも――右にせよ左にせよ、ハインラインが好んで描くのは受けて立つ方であり、自由と独立のために闘う人々であることは誰しも認めるところだろうと思う。初めて衝撃を受けた学生時代から久しぶりに読み返してみたが、電話やコンピュータの描写などの古臭さにもかかわらず、その精神はちっとも古びていないと感じた。語り手の左手の義手というあからさまな隠喩はさておくとしても。武士道と義理人情を混同した時代錯誤にも目をつぶろう。驚くべきはアメリカが日本に奇襲させたことをハインラインが認めていて、しかも悪びれた様子がないことだ。なんと恐るべき率直さ!今だからわかること。ビル・ゲイツはきっと本書の愛読者だったにちがいない。月は無慈悲な夜の女王
2008.11.19
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並行世界SFと英雄叙事詩と推理小説を一緒にしたような物語。『都市』もいいが、個人的には円熟したシマック晩年の本書の方が不具好みである。何故基督の生存証明書が星空の彼方から来た魔物どもに効果があったのかがよくわからないけれど、――基督もまた天空から来たということか。それはともかく、主人公と従者と隠者と魔女と亡霊と小鬼と悪魔の一行の珍道中・珍問答を楽しみ、またいかにも職人芸の自然描写を味わえるだけでも、一読の価値のある本である。
2008.11.18
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歴史家は過去の出来事を探索する。しかし意識を未来に投射することで来るべき理想的な未来のありようを知ることができるとしたら?また意識だけを未来に投射した被験者がそこから去りがたく感じて、いつまでも留まっていたいと思ったりしたら?しかもそれが一人ではなく、男と女だったとしたら?今から三十年前にバーチャルリアリティの世界を予言し、恋愛小説とミックスさせた奇才プリーストの傑作長編SF。処分本No.161。
2008.10.22
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原題『ジプシー』。ナチに追われるように彼らの能力を利用しようとする者たちから逃げ回る一家の物語。なぜ追われるのか。彼らの能力をうまく使えば戦争に勝つことができるから。手塚治虫の漫画を読むようなパラレルワールドものSFの傑作。
2008.08.17
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サンは太陽。ダイバーはダイビングのダイバー。すなわち『太陽への超接近』。時は未来。地球人は銀河星系の送れてきた一員として遇されている。ちょうど明治維新のころの日本と同じ状況である。地球上の「宇宙人居留地」をめぐって、開化派と攘夷派が真っ向から対立している…そういう世界。地球人が星系文明種族の一員として認められた理由のひとつは、イルカやチンパンジーといった「類族」を、人類が知性化させることに成功し、仲間として認めていたから。どの種族もそういうことをやっていて、それが文明の証だったから…そういう世界。ところで星系種族の共有知識は「ライブラリイ」に収められているが、地球人は孤立していた。にもかかわらず高い文明を有し、どうやらそれは太陽に棲むプラズマ知性体が与えたものらしい。そこで地球人たちは異星人とともにサンダイビングを試みるのだが、そこにはある陰謀があった…そういうお話。大昔のスペースオペラと、太陽に関する1980年当時の最新知識が混交したSFならではのごった煮小説。ミステリー的要素もあり面白くないといえばうそになるが、二度と読み返すことはないだろう。処分本NO.156。
2007.12.02
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自動車をテーマにしたSFは、どうしても暗いものになりがちだ。ここに収められた20篇も、ご多分にもれずそのほとんどが交通事故やら渋滞やらカーキチやら大気汚染やら人間対自動車の戦争やらを描いている。例外は、チンチン電車がカーモータリゼーションに勝利した世界を描いたほら吹きラファティの「田園の女王」と、人々に車を着るかヌーディストになるかを迫るヤングの「二十一世紀中古車置場のロマンス」くらいではなかろうか。もっとも個人的にはアシモフの「サリーはわが恋人」が一番好きなのだけれど、このアンソロジーには載っていない。処分本NO.155。
2007.11.27
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宇宙殺人の濡れ衣を着せられた主人公。彼がもってもいない秘密を探ろうとするさまざまなグループと接触しつつ、逃亡と流浪の果てに異星人の力を借りて秘密と超能力を手に入れる。その能力を使って、同じ超能力をもつ地球の支配者と対峙するのだが…裏表紙のアオリ文句には「ハードSFの味つけ」とあるけれどハードボイルドの間違いではなかろうか。アーノルド・シュワルツネッガー主演のB級映画に似合いそうなストーリー。処分本NO154。
2007.11.26
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